チャンデバ・マルチアンプ化関連

2025年3月14日 (金)

And in the End…

これは自分のシステムに関する、当面の締めの記事です。

 

拙宅のAuroシステムの主力であるSonetto VIII 5台を、デジタルチャンネルデバイダー・マルチアンプ駆動化してから、ちょうど一年。これから先の1年は本務(Auro-3Dは余技です、私にとっては=笑)に集中するためあまりハードいじりに時間をかけたくないので、今年度内に「いったんケリをつける」覚悟でこの春休みに集中的に取り組んだことをここに整理して、現時点でのFinishとしたいと思います。

 

23月に、「おなじみさん」を中心にしたオフ会を拙宅で開催し、5人の方に来ていただきました。そのうち、初めてのお客さんは一人だけでした。

初めてのお客さんはともかく、何度目かに来たお客さんには、「前ほどの感動が感じられない」とか「ソナスらしさが消えている」とか「SPユニットが無理して音を出している感じがする」「前より音のフォーカスが甘くなっている」などと言われたのですが、それにショックを受けることは全くなく、実は「お、なかなか鋭いな!」と納得していたのです。というのは、自分自身、その原因に対してそれぞれ心当たりがあったからです。

そこで、一連のオフ会終了後、友の会の仲間に「背中を押していただいたので」(笑)、私が重い腰を上げて取り組んだことは、大別すると以下の3点です。

 

1.Mid用パワーアンプのシングル化

2.サラウンドとサラウンドバックのパラ化

3.チャンデバ設定の再々再々…調整(笑)と、それを反映したDirac LiveART)の設定

 

・・・・・・・

1については、High用のパワーアンプとしてA-0を導入したのに伴い、これまでSTA-9BTL化してMidに使用していたことはすでにご報告済みです。 

 

実は、チャンデバ化する前は、このステレオパワーアンプであるSTA-9を、「敢えて、片チャンネルだけ使う」、つまりモノーラルアンプとして中高域用に使っていました。

 

そのメリットは、「理論的には」二つあり、一つは、アンプの電源部に余力が出ることによる<力感の向上>、もう一つは、チャンネルセパレーションの向上による<混入ノイズの減少>だそうです。

 

このうち、私の駄耳でも確認できたのは後者の方で、それは以前もどこかに「余韻がきれいに出る」と書いた記憶があります

 

実は、これはチャンデバ化改造で大変お世話になったMyuさんにも、私がSTA-9BTL化してMid用にしたときに、「個人的にはシングル使いの方が遠近感がより出ていて好みだ」と言われていたのですが、「せっかくHigh用のパワーアンプを3台追加購入して、STA-95台フリーになったのだから、今回はすべてBTLで運用してみたい」という、単なる好奇心が当時は勝ったのでした。

 

しかし、昨年秋にA-0をツイーター用に導入した後、いろいろとチャンデバをいじってみているうちに、Midが少しSonusらしくない、「荒々しい」=逞しすぎる?=音がするのが目立ってきました。これはおそらく「相対的な感じ方」で、以前は気が付かなかったものが、A-0の「静謐な感じ」との比較で気になるようになったのだと思っています。

 

Jazzメインの方であれば、「荒々しさの表現力」は大切なポイントだと思いますが、「教会のオルガンや合唱」が好きな私にとっては、「静謐さ」のほうに軍配が上がるのは当然です。

 

一応、今回の組み換えの際に、「念の為」(笑)、STA-9のBTL出力をLowに使うのも試してみましたが、やはり前回の実験のときと同様の結論(StormPA-16のほうがSolidな低音)となり、STA-9は「シングルでMid用がベスト」、という判断となり、5台とも組み換えました。

 

結果として、荒々しさより、Silkyさが特徴の「Sonusらしさ」が少し戻り、S/Nと遠近感の表現力が向上しました。

 

・・・・・・・

2の「サラウンドとサラウンドバックのパラ化」とは、サラウンドSPとサラウンドバックSPLRごとにまとめて、パラレル接続する、という意味です。

 

実はこれ、かなり前に入交さんに教えていただいたテクニックなんです。現状、拙宅では、「入交教の信者の証」として(笑)、サラウンドの開き角(方位角)を90度、つまり、LPの真横にしてあります。ただ、このポジションは第一層が7ch、つまりサラウンドバックも使っているときに有効というのが入交さんの主張で、第一層が5台のSPによる再生になる場合は、御存知の通り、ITUの規定するサラウンドの開き角は110度が標準であることは言うまでもありません。

 

私は、最近はSACD MultiDVD-A5chソースもほぼAuro-Maticで聴くので、この場合は拙宅のStormだと「強制的に」(笑)第一層は7ch(+6ch13ch)に拡張してくれるため、特にこのままで不満は感じていなかったのです。

 

しかし、拙宅のシステム環境では、ダウンロード購入したAuro-3D9.1chソフト(5.1.4)をRoon Bridge経由で再生するときだけは、なぜか、Stormの方で第一層だけは7chに拡張してくれず(?)、5.1.5.111.1ch再生になってしまうのです(不思議なことに、同じ9.1chソフトをOPPO205Magnetar 800のネットワーク機能を使って再生すると、ちゃんと、7.1.5.113.1chに拡張します…)。

ただし、11.1chのソフト(7.1.4)は、Roon Bridge経由の再生でも、Stormの方で、7.1.5.1の13chフルに拡張されるのです。

 

P(これ、上がInputs、下がOutputs。Roon Bridge経由の9.1ch再生だと、LB・RB(左右サラウンドバック)にInputが無く、Outputもないのが分かる。これがMagnetar経由の再生だと、OutputsはLB・RBからも出力がある=拡張される)

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なにかRoonの設定変更等での解決法はないか、とずっと探ってきましたが、未だ見つからず(ご存じの方がおられましたら、ご一報ください!)。

 

NASにあるAuroソフトは、Roon Bridge経由で再生したほうが音がいいので、オーオタとしては当然こちらを使うのですが、せっかく最近Sonetto IからIIにパワーアップさせたサラウンドバックSPから「全く音が出ない」のは、その状態が<オリジナル>とはいえ(笑)、なんとなく釈然としない感じが続いていました・・・

 

実は拙宅のサラウンドのSonetto VIIIにはキャスターが付いているため(笑)、やろうと思えば、110度の位置に移動させることはできます。つまり5ch用の理想の位置にサラウンドSPを置くことは物理的には可能です。しかし、前の記事で書いたことが自分に跳ね返るのですが(汗)、Lは問題ないが、Rは、110度に設置すると、リビングからキッチンに行くドアの真ん前に立ちふさがる(笑)のです。「キャスターがせっかく付いているんだから、いちいち動かせばいいじゃん!」といわれそうですが、実践的には音楽を聴いている途中で、のどが渇いて冷蔵庫に行くたびにSPをゴロゴロ動かすのは、「勘弁」したいところです(汗)。

 

P(SR=90°とSBR=135°。110度は、この間、ドアの真ん前!)

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という「悩み」を以前、入交さんにお話したところ、この「パラレル接続=サラウンドへの入力をサラウンドバックにも送る」という解決法を教えていただいたのです。こうすれば、現在のサラウンド(90度)とサラウンドバック(135度)の位置はそのままに、両者の間、つまり、112.5度の位置にサラウンドSPを置いたことと同じ効果があると。

 

でも、これも前に書いたことで、「幽霊」はダメですよね?と入交さんに言うと、「人間は真横より後ろの定位感は甘いのです。特にClassicを聴くのであれば、そこには普通はホールからの反射音や残響音しか入っていないはずでこれらは音像定位とは無縁なため、全く問題ありません」。

 

まあ、「教祖様」(笑)が太鼓判を押してくれれば、それを信じて実行するのが「信者」というものですが(笑)、実はこの助言を受けてから1年近く、捨て置いたんです(汗)。

 

その理由は、「パラレル接続にすればいい」って簡単に言いますけど(汗)、それってスピーカーとアンプのケーブルを繋ぎ変えるってことですよね?それをまさか、9.1ch AuroRoonで再生するときだけにいちいちやるんですか?11.1ch Auroのときはまた戻すと?BDの時も?

 

・・・やってらんねぇ(笑) それならまだ、ドア前にゴロゴロとSPを移動するほうがマシですよねぇ(笑)。

 

しかし、今回、見つけてしまったんです!私のStormって、サラウンド(だけじゃないが)を複数台設定できるということを。これは、自宅でのパーティー文化のあるアメリカなんかでは、大きな部屋に10人ぐらいのお客さんを入れてみんなで映画を見る、なんていう使い方があるのに対応している機能のようです。つまり、サービスエリアを広げるために、1chのソースを複数のSPで再生する機能がBuilt-inされているのです。

 P(これ、右側にある、"Configuration"に注目。Rs(右サラウンドのこと)とLs(同左)が、1と2と、二つある!)

20250312-114929

しかも、アンプと複数SPをパラレルに接続する方法では不可能な、当該SP間の音圧やf特などの調整もバラバラに行える(AVプリから別々にバランス接続されているため)ことが判明しました。拙宅の場合、サラウンド(Sonetto VIII)と、サラウンドバック(Sonetto II)が同じSPではないため、パラ接続しても「正確には」1台とみなせることはないのは素人的にもわかっていて、それゆえ以前のサラウンドバックがAmator IIIだったこともあって、この「パラ接続」は見送っていたのです。

 

しかし、Dirac Liveがきっちり別々に測定したうえで、「Sonetto VIII」と「Sonetto II」を<1台のサラウンドSP>として調整してくれる機能がある(実は、この機能は、映画を見る際にスクリーン上下のSonetto IVirtual Centerを形成しているものと同じだった…)ことを知り、これなら面倒な配線も切り替えも必要なく実現できるため、Why not? と今回やってみたわけです。

 

で、無事、Roon Bridge経由の9.1chソースの再生でもサラウンドバックからも音が出るようになり、イマーシブ感がUP!これで、配線の繋ぎ変えも、ゴロゴロとSPも移動することも無く、PC画面からConfigを切り替えるだけで第一層が5chのときは112.5度の位置にVirtualサラウンドSPを置く設定に変更できるようになりました。

P(上記と同じソフトをRoon Bridge経由で再生したところ。Inputsは5ch設定になっているためLRBが無いが、OutputsのLRSが「4ペア」出力されている点に注目。これは、3Wayマルチアンプ出力+もうワンセットのLRS=サラウンドバック用のSPに出力があること示している)

20250312-184058  

・・・・・・・

3つめの、チャンデバ設定の再々再々…調整(笑)と、それを反映したDirac LiveART)の設定ですが、前も書きましたが、このところ、「チャンデバいじり遊び」をやりすぎて(笑)、<怪人二十面相>状態、つまり、「どれが本当の自分の顔だったのか?」がわからなくなってきた部分がありまして(汗)。

 

自分でも、「なんか、前の音とは違っているな、ちょっとたまに嫌な音がするなあ」ぐらいの認識はあったのですが、この春休み中のオフ会で、Siltechさんと、K&Kさんに「前来た時より、音がおかしい」というようなご指摘を受け、自覚・納得する部分があったのです。

 

そこで、1の、STA-9のシングル使いにすることでBTLに比してゲインが二分の一になるので、理論的には6㏈下げる必要があることもあり、この際、昔Myuさんと一緒にユニット別のImpulse応答をみて設定したDelay値(これが王道。その後f特をみながらこれをいじったのは完全に邪道…)に戻し、これを基本としながら、サラウンドのDelay値は、LCRとの距離差をレーザーセッターで測定したうえで、理論値を計算し、それを当てはめました。音圧に関しては、測定値をベースにしつつも、それを自分の耳で微調整しました(入交さんもこの方法を推薦されている。オーナー=人間=の耳は、マイクとは異なり、形や向き、感度に至るまで左右差があるため)。

 

そしてこのマニュアルで設定したパラメーターを入れたうえで、Dirac Liveの測定を行い、ARTを適用したのです。

 

お恥ずかしい話ですが(汗)、実はこれまでは、「Dirac Liveは何でも調整してくれるのだから、パラメーターはDefault値のままで測定だけして後はお任せでいいんだ」と思い込んでいたのです。ゆえに、前回DLを回してARTを設定したときには、その前に「遊んでいた」メチャクチャな(汗)パラメーターのまま、DLを適用していました(理論上、ウーファーだけが数メートル前にあるようなパラメーターだった・・・)。ここだけの話(笑)、3月のオフ会のお客さんたちにはこれを聴かせていた・・・(大汗!)

先日、別件で、Dirac Liveのカスタマーサービスとメールで遣り取りをすることがあり、そのときに、念の為に(笑)、「チャンデバで使っているんだけど、ユニット別のパラメーターはそっちで設定してくれるんだよね?」と確認してみたんです。

 すると、「DLはマルチアンプシステムのユニット別の測定とそれを元にした調整はしていない。<完成されたMulti-Wayスピーカー>として認識して、そのf特や他のSPとの位相調整は行うが、ユニット間のDelayや音圧の差は、DLを適用する前に、マニュアルで調整することを推奨する」との回答が来たんです!

 

「正しい」パラメーター入力後にDirac Live(ART)を適用した音は、Beforeの設定を残しているのでPC上で簡単に切り替えて聴き比べができますが、DLらしい、「パリッとした空気感」がより出たのがわかります。Stormのチャンデバ機能を使う場合は、Dirac Liveに完全お任せするのではなく、ちゃんと測定の上でパラメーターを設定してから、AI補正に委ねる必要があることを理解した次第です・・・(Trinnovはどうなんだろう?)

 

・・・・・・

一連のオフ会<後>にこれら3つの改良?をしたのは、言うまでもなくオフ会<前>にやってみて変な音になって元に戻せなくなったら目も当てられないからです。幸い、この3つの効果はとても大きく、今は、<ものすごくまともな音、クセのない普通の良い音(笑)>になりました。

 

この春休みに、せっかく来ていただいたお客様方には大変申し訳ない(大汗)。また機会があれば「違い」を確かめにお越しください!

2025年2月12日 (水)

「画竜点睛」を、ついに描きました!

これまで、私の伊豆の別宅においでいただき、そこのシステムをご覧になった方なら、<必ず>思う(口に出すかどうかは別にしても・・・汗)のが、「ここまでやったら、あと一か所だけなんだから、TOP=VOGSonetto にしたいよね・・・」ということでしょう。

 

まあ、そんなことは、Ownerが一番日々(笑)感じていることで、「Complete癖のある男の子」なら誰でもやりたいとは思いますよ、そりゃ。

 

ただ、「言うは易し、行うは難し」で、いや正確に言うと、「行う」は<技術的には>それほどは難しくはありません。一階の出窓の下、ソファの後ろに隠してあるパワーアンプから、天井までスピーカーケーブルを引けばいいだけのこと。大工に頼めばすぐだし、器用な方ならご自分でも脚立に乗ってやることができるでしょう(天井が普通の家より高いのでちょっと怖い思いをするとは思うが=笑)。

 

ただ、それはつまり、この「美しい部屋」の壁の隅々にモールが蛇のように這うことになり、Ownerの私はそれはどうしても<美的に>許せない。いくらその方が「理論的には」音色が揃って音が整う(はず)と言われても、その代償として音楽を聴くたびにモールが目に入って、「あーあ、せっかくのXXホーム自慢の珪藻土のシミひとつない白壁が台無しだ・・・」と毎回思うようでは、耳で聴くのではなくて、「脳で聴く」音楽を堪能できないというのが私の<哲学>(笑)。

 

13分の1に過ぎない1スピーカーの音色の多少の違い(1chだけ違うSPと言ってもわざわざシルクドームという、同じ素材・方式のツイーターのものを選んでいる)より、見た目の違和感の方が「脳で感じる音」を悪化させると頑なに信じ(笑)、これまで、誰に何と言われようがTOPには無線Activeスピーカーの、DynaudioXEOを使い続けてきました。

 

とはいえ、「ソナスから無線Active SP出てくれればなあ…」と思い続けて数年。出たんですよ、昨秋! 

 

これです!(なぜか、輸入代理店が違うような・・・?)

 

早速、購入完全前のめり(笑)でカタログを取り寄せて調べてみたんですが・・・

 

「うーん・・・」

 

<うーん、その1>

私が12台まで揃えているSonetto シリーズは、「すべて同じツイーターを使っている」という点が最大の特徴で、このDuettoというのも同じツイーターなら、と期待して詳細にチェックしてみると、まず、カタログ上で径が1ミリ違うのです。Sonettoシリーズが29ミリ径のシルクドームなのに対し、このDuetto28ミリ径と、たった1ミリだけですが小さいようです。

 

「まあ、これはもしかすると測定誤差かな?イタリア人の仕事だし・・・爆」とPreferredに捉えつつ、さらに少し調べてみると、Sonettoの方には、「高域には、ソナス・ファベール独自の「アローポイントDAD (Damped Apex Dome)」テクノロジーに基づく」とカタログにあるのに対し、Duettoの方には、「ドーム周囲にウェイブ・ガイドを設けてワイドな音波放射を実現」との表記があって、どうもチト違う。見た目もSonettoのツイーターには、「橋」(笑)が架かっている(これは、Amator IIIも同じ)のに対し、Duettoのツイーターは、何もなし。

 

まあ、ここまで見ればいくら素人の私でも、この二つのツイーターが同じではないことぐらいは分かりました(泣)。

 

<うーん、その2>

これ、カタログをよく読むと、無線で送れるソースはBluetooth経由だけで、それ以外はソース機器から「有線で」片側のSPに接続しないといけないようです。Bluetoothって、スマホじゃあるまいし、ワシのStorm AVプリにはそんなもん、付いてませんがな・・・。AVプリからの出力はXLRしかないので、それをRCAに変換し、またそれにBluetoothアダプターを付ければもしかすると可能かもしれませんが、そんなんで音質はどうなんでしょうか?さすがに、「音がでればそれでいい」レベルのオーディオではない(汗)ので・・・

 

ということで、結局、カタログ検討の段階でDuettoの試聴すらする気が失せ、当初の前のめりが、すっかり「後ろのめり」に(笑)なったのが、昨年末。

 

そこで一旦は諦めたんですが、今年に入ってセミナーの準備などをしているときに、なぜかふと、「パワーアンプもSPと一緒に3Fに乗っければ、長いSPケーブルを部屋中に張り巡らせる必要はないのでは?」とひらめきまして。つまり、AVプリの出力をパワーアンプの入力まで飛ばせればSonetto Iをパワーアンプと一緒に天井に乗っけりゃイケるんじゃ?と。

 

そこで思い出したのが、かつて、螺旋階段の上の踊り場にSW(最終的にはELACのRS500 )を設置した際に、そこまでAVプリからXLRケーブルを引くのではなく、無線で飛ばしたこと!これはTomyさんに教えていただいたアイデアで、日本ではなぜか売ってないのでアメリカのAmazonで探して装置を取り寄せたんです(アメリカでは、部屋が広いので、SWの場所までケーブルを延々と引きたくない、というニーズは結構あるらしい)。この装置はXEOと同じ2.4GHzの電波を使っているため、Bluetoothに比べ音質もCDクオリティで、Delayも少ないというメリットがあるのです。実際、私の「第二層のSW」は、Dirac Liveが対応できる範囲でのDelayの距離(20Mぐらい離れていると認識されている=汗)に収まっています。

 

「これと同じようなものを探して、AVプリ(出力側)とパワーアンプ(入力側)に応用して接続すれば!天井に電源はある(天窓の電動ブラインド用のタップから分岐)ので、パワーアンプもオーディオトランスミッターのレシーバーも電源は取れるはず!」と探したところ、ちゃんと今回は日本のAmazonにもありまして、速攻でポチったのが、1月の上旬。

 

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セミナー前に届いたのですが、さすがに仕事も残っていて時間が取れず、セミナー後、「春休み」(笑)に入って伊豆に来てから開封しました。これは「LR」として2ch送れるタイプなので、SW用(1ch)ではないようですが、私が今回TOPに設置したいSPSonetto I2台(ただし、Mono)なので、ステレオパワーアンプを使うのに2chの入出力があればSplitしなくていいので便利です。アンプは今、サラウンドバックのさらに後ろにAtmos映画用に置いてあるUL-6XEOに置き換えれば、そこに使っているSTA-9を回せると計算。

 

さて、いざ伊豆に来て早速やろうかと思ったのですが、XEO3の代わりに今、サランドバックとして使っているSonetto Iを乗っけるのはいいとして、じゃあ、Sonetto Iの後のサラウンドバックはどうなる?ってことにこちらに来てから気が付く始末・・・(まさかUL-6じゃあ、Sonus Completeという目的は果たせないし・・・完全にボケ始めているナ=泣)

 

実はこの秋にSonettoシリーズにG2が出て、私が揃えているSonettoシリーズが「旧モデル」になった時に、「在庫処分で安くなっているなら、サラウンドバックをSonetto Iから、同じブックシェルフ型のもう一回り大きなIIか、いっそフロア型のSonetto IIIに代えちゃおうかな?」(理由は後述)という、「ボーナスを前にした悪魔のささやき」が聞こえてきて(笑)、輸入代理店のノアさんに「まだ在庫ありますか?」と問い合わせたことがあるんです。

 

その時は、畏れ多くも(笑)社長の牧野さん(拙宅にお越しになったことがある)からわざわざメールをいただき、「IIIならありますよ」と。で、ダイナのSさんにお幾ら?と伺うとさすがに新品だしそこまでは安くはならなかった(汗)・・・で、「いやー、いくらなんでも、ダウンロード版のAuro-3Dソフト(=9.1ch)ではほとんど鳴らないSPにそこまでカネかけても・・・IIでいいんじゃ?せっかくAmator IIIの純正SPスタンドもあるし」などと迷っているうちに、年末の<師走>になりまして、多忙の中、すっかり忘れてしまっていました。

 

その時思い切ってIIIを買っていれば、今頃Iが余っていたはずなのですが、さすがに今ではもう「旧モデルの在庫品=新品」はないようです。

 

「じゃあ、程度のいい中古でもいいか」(私は素人なので<長期保証が付かない中古品>は買わない主義)とネットを検索するとIVIII(つまり一番小さいものと大きいもの)なら中古である程度出ているようですが、お目当てのIIIIIは見つからなかったんです。

 

「今回の伊豆滞在中には無理だな」と諦めムードになってふて寝をして、タブレットでダイナのHPを見ていたところ・・・ここは中古も扱っているのですが、普段は中古のページを見ないため、ぱっと見した時には「SonettoIIIII、ここもないなあ」と思って、他のサイトに移ろうとしたら仰向けで見ていたためか、手が滑ってどこかを押したらしく、そしたらダイナの中古の「裏サイト」(ウソです、単に「2ページ目」があって、そこに行くにはクリックをしなければいけないのが分からなかっただけ・・・笑)が出て、何と、あるではないですかIIが。

 

しかも、「店頭展示品」と書いてあるので、これはつまり、保証は買った日からまるまる1年付くはず!

 

翌日、開店を待って(笑)電話を入れて、まだ在庫ありというので、即決(牧野社長、すみません=笑)。信頼マークのダイナですから試聴もせず、「今、カード決済するから明日の朝、伊豆に届けて!」と(爆)。

 pImg_0085_20250212124301

 

で、昨日の午前に届きまして(前の晩のうちにはしごを買っておいた!)。

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あとは大工的な苦労話も多々ありますがこれはオーディオとは関係ないのでパス。ということで、TOPXEO 3Sonetto ISurround Back: Sonetto ISonetto IIという、今回のSystem Upが完了しました。

 

Before

P

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After

P (トランスミッターもSTA-9も無事収まりました!)

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AVプリ→TOPXLRアウト→RCA変換→RCA into 2変換→オーディオトランスミッター(LR)→同レシーバー(LR)→STA-9Sonetto I2台)

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設置上の変更点は、前のXEOより横幅が広いので、レールの幅を広げたことと、前のXEOがリアバスレフだったのに対し、Sonetto Iはフロントバスレフなので、ウーファーの下についているバスレフポートを塞がないように前よりかなりBox(梁)から離したこと。

 

ついでにSonettto IIIの記念写真(笑)

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ちなみに、今回交換した3台のカタログSpecは:

 

XEO 3:14センチウーファー  (リアバスレフ)  48Hz22kHz

Sonetto I15センチ (フロントバスレフ) 45Hz25kHz

Sonetto II16.5センチ (フロントバスレフ) 42Hz25kHz

 

うーん、最低域がきれいに3Hz刻み(笑)。たかが3Hzですが、この帯域における3Hzの差は、音質の差だけでなく、重量・大きさの差や金額の差(汗)に結構なることは、皆さまよくご存じの通り(笑)。

 

さて、まだ<慣らし>の最中でDirac Liveでのきちんとした「調整」をしていない段階なので、「音」がどう変わったかを断定的には言えませんが、いくつかの「決め」ソースをざっと聴いてみたところでは、1.オーケストラや合唱などで、やや「迫力」を増した(気がする=笑)、2.頭の後方上部あたりの音像がしっかりした(気がする=笑)、3.空間(特に天井感)が少し高くなった(気がする=笑)-程度で、駄耳には<激変>というほどではありません(汗=入交さんなら両者の「違い」に敏感だろうけど)。

 

ただ、今回のSystem Up、物理的に(?)改善された点が二つあるのは確かです。

 

一つは、TOPの最小再生音の閾値がなくなった、ということ。これはどういうことかというと、XEOはトランスミッターやSP内蔵のパワーアンプ部の保護のためか、入力が「無い」時にはSleep Modeに入るという機能が常に働く設定になっています。「無い」と書きましたが、これには電気的な「閾値」があるようで、例えば、Boleroの始まりの部分のような超ピアニッシモ(笑)の部分では、入力「無」と判定されてしまい、Activeになりません(つまり、TOPからは音がでていない状態)。これはOwnerは前から気になっていたのですが、お客さんにはずっと「内緒」にしてました(笑)。

 

今回StormSTA-9との間をつなぐ無線装置はこのような「おせっかい」な機能は無く、ずっと電源が入りっぱなしなので、ちゃんと「超ピアニッシモ」の部分も、超微弱な音(LRではなく、TOPは元々相当音量が小さいのは皆さん、よくご存じですよね)が確実に出て、超弱音のホール音を演出してくれているはず(笑)です。

 

もう一つは、サラウンドバックのツイーターの位置が、Sonetto VIIIで構成されるLCRSLRより、少し上がった、という点です。

P(ツイーターの高さが10センチほど違う) 

Img_0084

 

これは先日のセミナーでも入交さんが少し言及されていましたが、7.1.5.1のフルバージョンのAuro-3Dの正規の配置では、ATMOSのようなトップリア(Auro式の表現なら「サラウンドバックハイト」と言えるかな?)がありません。Auro配置では、真横にあるサラウンドSPの真上(=サラウンドハイト)が、第二層では「最後尾」となるわけです。つまり、耳の後ろの上の方には音源が無いのです。

 

しかし、特にClassicの生演奏を聴く方はよくお分かりのように、普通のClassicの演奏会場って、階段式の後ろ上がりですよね(例外で有名なのはウィーンのムジークフェラインかな。昔の記憶ではカーネギーホールも?)。ということは、Jazzはともかく、少なくともClassicでは我々がLive会場で体験する「後ろからの反射音」って、やや上方からだって意識してました?

 

つまり、Auro-3Dの13chでは、「耳より後ろ」からの音は、第一層のサラウンドバックLR<だけ>で担っているのです(11chシステムでは、サラウンドとサラウンドハイトの4台が「耳より後ろ」に置いている場合があるが、これはLRとの開き角が60度以上になるため「中抜け」リスクが高まるとして、入交さんは推奨していない配置)。もちろん、後方上部からの音の形成には、「耳の真上」にあるTOP(VOG)も分担しているのですが、あくまでもSBとの間で形成されるファントムであり、リアルのSPがあるフォーマットとの違いははっきりあります。ここがフルバージョンAuro-3Dの正規配置の「数少ない」?弱点で、先日もWOWOWのセミナーで同じソースを22.2chと切り替えたときに気づいた方もおられるかもしれませんが、22.2chとAuro-3Dで一番差が出るのは実はココなんです。

 

この欠点を解消する方便の一つとして、入交さんは、「第一層はツイーターの高さを耳の位置に揃える、というのがマニュアル的ではあるが、実は、サラウンドバックだけは少し高めでも(の方が?)良い」と常々おっしゃっているんです。実際、WOWOWのあのスタジオも、サラウンドバックSPの設置位置が階段席の上方にあることもあり、ツイーターの高さは他の第一層のSP群よりある程度高い場所にあるのに気が付きましたでしょうか?

 

だから私は今回、この効果を狙ってSonetto IIIIIを探していたんです。Iだとまだちょっと低くて効果が薄いかな、と思って。拙宅のサラウンドバックSPTAOCのキャスター付きのSP台の上になるので、フロア型でもSPスタンドでも、通常設置状態より20センチぐらい高くなるため、狙い通り、今回、サラウンドバックのツイーターの位置を「耳より10センチ近く」高くすることができました。

 

先ほど書いた、「今回の変更にともなう、音の変化」は、多分にこれら二つの「物理的な改善?」も貢献していると思います。

 

もちろん、今回の苦労の最大のメリットは、「心理的な改善」であることは言うまでもありません(笑)。

 

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(醜いモールが見えない壁は、やはり美しい!)

 

かつて、グランドスラムさんに、「My電柱の効果は?」と尋ねたところ、「オーディオルームを作った時からだからBeforeと比べられないので効果は分からない。ただ、電源に関しては<これ以上はない>という安心感はある」とおっしゃっておられましたが、私も今、同じ思いです。

 

これで、Auro-3Dで再生するシステムにおける13chのツイーターが全く同じもの(Sonus FaberのSonettoシリーズVIII×5、II×4、I×5) になり(拙宅では、TOPは2台パラレルで使用しているので、台数的には14台) 、少なくとも「音色の統一」度合いに於いては、<これ以上は(ほぼ)ない>という、安心感というか達成感(脳内ドヤ顔=爆)。

 

今は、ムッチャ、いい気分!!!でAuro-3Dの音楽を聴けています。 これで4月から心置きなく、日本を離れられる!(離れたくなくなる?=笑)

 

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追記(2月15日)

 

これは、単独記事にするほどでもない、「一部マニア向け」の内容なのですが、当方としては備忘録にしておきたい(何をしたか、書いて残しておかないとすぐ忘れてしまう・・・)内容なので、「追記」とします。

 

今回、「ハード的な変更」をした点をこの記事で書いたのですが、それだけで<完了>するほど、私の現行システムは単純なものではなくなっています(汗)。これだけ特性の異なるSPを入れ替えれば、当然、Dirac Liveもやり直さなければ、f特も、音圧も、位相も、狂った状態で聴く羽目になります。

 

「やり直す」と書くのは簡単ですが、拙宅の場合、まずSP数が23台あり、これらのSPで構成される、Auro-3D、音楽用ATMOS、映画用ATMOSはすべて使用するSPの位置や台数が異なるので、これらのフォーマット別に<イチイチ>(笑)Dirac Liveのキャリブレーションをしなければなりません。しかも、拙宅の「ウリ」の一つである、Dirac LiveのARTを設定するには「測定箇所を減らす簡易版」を許さない(汗)ので、やるとなったら1台1台、Sweep音を聴き終わってマイクを何度も移動する、というBoringな作業が半日は続くんです・・・

 

で、今回、「どうせ測定をやり直さなければならないなら」と、以前、チャンデバ調整をした際に、この道の大先輩である、ご近所のMyuさんに、「クロスオーバー周波数、減衰特性、ゲインは調整されたとありますが、タイムアライメントの状態を確認して欲しかった」とのコメントをいただいたのですが、これに関する「実験」をしてみようと。これ、素人の私はその「真意」が汲み取れず、その後直接お会いした時に教えを請うと、ナント!、f特って、Delay値を変更しても変わるものなのだとか!

 

このロジックは、2Way以上のSPで出音が「重なっている」周波数帯に影響があることなのですが、この二つのユニットの出音のタイミングによっては、この重なり部分の周波数(=音)が、相互に高めあったり、逆に弱めあったりすることが起きるということ(=定在波の節と腹の原理)。ゆえにこのユニット間の出音のタイミング(=Delay値)を調整すると、f特が変わるというんです。

 

実際にはこの方法でf特をいじるのは恐らく「邪道」で、まず、タイムアライメントを合わせてから(=出音のタイミングを同じにする)、他の手段を使ってf特を調整するのが「王道」のはずです。

 

しかし、今回、私がやってみたのは、タイムアライメントを合わせるのではなく(汗)、Delay値を変えることによってf特がどの程度変わるかを実験してみたいという知的好奇心からの所業です(Tomyさんに入れ知恵していただきました笑)。

 

さて、前置きが長くなりましたが、結果を以下に示します(このグラフは、私が測定したデータを見やすいようにMyuさんが加工してくれたものです)。

P

Auro3d-before-and-after_20250213202158

青がBefore、赤がAfterです。Afterでやったことは、1.MidのDelay値を11㎳から15㎳に増やす、2.Highの音圧を3㏈下げる―です。

 

「邪道」は重々承知ですが(Delay値を動かしすぎ=笑)、かなりf特の直線性は変化しました(だからと言って、音が良くなったとは限らない=汗)。理論(机上の知識)が実証でき、私の知的好奇心は満たされました(笑)。その後、これをベースにDirac Liveで補正をしたので、正確なタイムアライメント調整については、「そっちでやってくれているだろう」と、大船に乗った気分で(爆)、音楽を聴いています。さて?肝心の音質の変化については、月末にお客さんを予定しているので、「第三者委員会」(笑)の評価を待ちましょう!

 

再追記(2月20日)

コメント欄でTomyさんに指摘された通り、前回の調整はDelay時間(ミリセコンド=ms)をいじったので、距離に換算するとメートル単位で動かしたことになっていました(汗)。このまま晒しておくのもあまりにおかしいデータなので(笑)、今度は、距離(ミリメートル=mm)単位で調整してみました。1ミリ単位でMidを動かしてf特を測定したところ、スコーカーから7ミリツイーターを出す(LPに近づける)ときが最もf特が改善されました(以下)。

 

ただし、私はいい加減な人間なので、マイクとSPとの距離も、高さも適当なので、前回の結果との厳密な比較の対称性は取れていません(汗)。単に、カーブの変化状況だけに注目してください(笑)。クロスオーバー(3.5Khz)付近のDipが改善されていますが、200Hz付近のDipは変わらずですね(前回、ここが改善されたのは、やはり距離換算で「1メートル以上」スコーカーを動かしたからのようです=200Hzの波長は約1.7メートル=汗)。出音も、今回は結構はっきりと変わりました。少し、もやが晴れて鮮度が上がった気がします。チャンデバいじりは面白いですね!音響とか、マルチWay SPの仕組みなどに対して、ものすごく勉強になります。

 

Delay

 

 

 

 

2024年12月26日 (木)

今年の仕上げ3連発―Magnetar導入、チャンデバ調整(またまた・・・)&Amator III再配置(その2)

【チャンデバのまたまたの調整・・・】

 

シーズン中(笑)は伊豆に来ると行っても月にMax2回程度、しかもせいぜい一泊か二泊なので、こちらに来るとどうしても「お気に入りのAuro-3D音源」を中心に聴いてしまう。つまり、いつも同じような曲ばかり聴くことになるのだが(汗)、今回は冬休みモードに入ったため、夏休み以来の1週間以上の長期滞在をしているので、久しぶりに聴く音源がいくつかあったのですが、その中に、「えっ?」という音に違和感を感じるソフトが出てしまいまして(汗)。

 

それはGattiの『春の祭典』(Auro-3D9.0ch BD版)です。このアルバムはLiveで、最初に演奏されている『牧神』と次の『La Mer』の方は、伊豆に来るとよく聴く「定番」なのですが、最後に入っている『ハルサイ』の方は・・・。先の「フォッサマグナツアー」の課題曲に自ら選定しておいてなんですが(笑)、「オーディオ的に聞きどころが多い曲」であるのはわかりますが、「音楽」として聴く分には保守的な私にはちょっとアヴァンギャルドすぎて(汗)。

 

でも、今回はたっぷり聴く時間が取れたので、久しぶりにこのBDを最後まで聴いたのですが・・・

 

以前の設定で聴いたときの記憶(恐らく夏休み=汗)に比して、金管楽器に力がほとんど感じられない。これはMilesのトランペットを愛するJazzファンなら「なんじゃこれ?」というレベルかも・・・

 

「こりゃ、何かの特性が狂っているな」と、慌てて、Dirac Liveで測定・調整をしてみました。

 

P. DLが示したLCRの合成f特@LP

4000-dirac-live-f

一見して誰でもすぐわかるのが、3Khzを中心に大きなへこみがあるということ。これを、さすがに「BBC Dipでしょ」?とごまかすことはできまい()。どう見ても、Dipというよりは大きなPitかCraterかTrenchである()

 

なるほど、これが「金管の音に迫力がない」原因なのか、とデータ的にまずは納得。

 

前回、ツイーター用のアンプにSoulnoteA-0を導入した際にチャンデバ設定を調整し直したときは、 自分が一番好きな楽器である、ピアノとチェロを使い、最後の仕上げにボーカルソースを使って「自分の聴感だけ」で決めただけで、測定は一切しなかった(過去に測定したデータを参考にしたまで)。「f特を見ながら調整する」なんて、「自分の耳に自信がない人のすること」と思っていたからだ(ピアノのベテラン調律師はマイクとPCを持ちこまないですよね?=爆)。

 

しかし、「自分の耳」はやはり偏った音色が好きなんだな、と今回つくづく反省した(泣)。CO4000に引き上げたら、<ピアノの高域の残響音はきれいになったし、チェロとボーカルは魅力的になった>、と「私の耳」は判断したのだが、これは後付けで考えれば、3Khzに大きな穴が開いて、ピアノは恐らく基音を再生するMidと、倍音を再生するHigh(なぜか、10Khz近辺が持ち上がっているし)の役割分担が明確になったことの「メリット」が出た?(デメリットも必ずあるが、駄耳では気が付かなかっただけだろう)および、チェロとボーカルに関しては元々3Khzまでも音が出ていないソースなのだから、事実上LowMidによる2Wayスピーカーとしてのまとまりの良さという「メリット」が強調されたのではなかろうか。

 

こうした、「偏った、自分の好きな楽器の音」を追求しただけのセッティングは、そればかりを聴いている間はなんの疑念もなく楽しめていたが、今回、普段聴かないようなソースを再生してみて、その「デメリット」が露呈したということだ。

 

ということで、さすがにこのままでは次の「オフ会」では披露できない()。お客さんのすべてが必ずしもピアノ・チェロ・ボーカルだけが好きとは限らないからだ()

 

ということで、やむを得ず(汗)、チャンデバ設定の見直しをする羽目となり、今度は同じ轍を踏むまいと、きっちりREWによる測定を踏まえることにした。

 

ちなみに、ここで「そんなの、全部Dirac Liveに任せればいいじゃん」と発想する人は、トーシローです(=実はついこの前までのワタシではあるが=笑)。確かにDirac Liveをフルに適用すれば、f特の凸凹はかなり補正してくれる。このように:

 

P <CO:4000で、Dirac Live後にREWRchを測定したもの。この太い線が補正後のLPにおける実測値>

4000art_20241226075901

 

さすがDirac Live! きれいに3Khz付近の大穴を埋めている。でもこれは、「かなり無理をさせている」ので、この3Khz付近の歪み率が高くなってしまっている。「出しにくい音域を、無理に出させている」からであろう。

 

つまり、Dirac Liveは、可能な限り元のf特などのデータが良くなるように調整した後の、「最後の仕上げ」に使うべきなのだ!

 

ということで、まずはCO値を変えて測定してみたが、多少の変動はあるものの、どれも「大きな穴」が残ったままだった。

 

REWによるRch計測@LP(2.5M)-25dB

 

CO:4000 (Default

Mid:LPF:24 -10dB

High:HPF:48 -2dB

 

CO:3500

Mid:LPF:24 -10dB

High:HPF:48 -2dB

 

CO:3000

Mid:LPF:24 -10dB

High:HPF:48 -2dB

 

(以上、測定画像は割愛)

 

ただし、f特的には大きく変わらなくても、聴感上の音質は結構変わる。ゆえにここで一旦、「自分の耳」をもう一度信じて(笑)、これらCO値の違いによる音の違いを今回は「金管楽器」でチェック。最初に「気づき」を与えてくれた、「ハルサイ」は使うとしても、どうもこれをくり返し聴くのは個人的にはツライ(笑)。他に「金管楽器」といえば、Classic初心者のワタシ的には、Brucknerの交響曲しか思いつかない(古典派とロマン派ぐらいしか知らないので・・・)。ということで、8番も試聴用にした。

 

P.Img_2996_20241226081201

 

4000では金管楽器の高域に力強さが足りない、3000だとピアノの高域の澄んだ感じが損なわれる。3500が一番バランスが取れている。

 

ということで、ここから先は、CO3500に固定して、あとは「f特上の大穴を埋める」べく、スロープとユニット別のGainを調整してみる。

 

この後、「チャンデバ地獄」をたっぷり味わい(汗)、さまざまな試行錯誤をした(お陰でかなり経験値は上がった・・・)のだが、それを全部書くとキリがないし、チャンデバ弄ったことのない人には興味もないことだろうから(関心を持ってくれるのはMyuさんくらい?)、わかりやすい変化のあったものだけを紹介していく。

 

まず、「コペルニクス的転回」(笑)を見せたのが、スロープをHighMidで入れ替えてみた変化。つまり、DefaultではMidLPF24で、HighHPF48にしていたのだが、これを入れ替え、MidLPF48に、HighHPF24にしてみたのである(3500-1)。

 

3500-1

CO:3500

Mid:LPF:48 -10dB

High:HPF:24 -2dB

 

このアイデアを思いついたのは、各ユニットの周波数別の歪み率を調べていたときで、どうも、このSonettoのスコーカーは周波数が4000あたりより高くなると歪率が増えてくる(1%を超えてくる)。一方、このツイーターは比較的低めの周波数帯(2500あたり)でも歪み率が高くない(1%を大幅に下回る)。ということはMidのスロープを急峻にし、Highのスロープを緩やかにして繋いだほうが全体の歪み率が下がるのでは、と素人なりに発想したもの。

 

で、その結果のf特がこれ。

 

P: Before

3500_20241226080201

P: After

35001_20241226080201

 

不思議なことに(汗)、ほぼ3Khz近辺の大穴が消えている!!!歪み率を良くしようと思って弄ったスロープが、f特にも効くとは!まさに「瓢箪から駒」である(笑)。

 

気を良くして次のステップに進む。

 

今のままだと、10Khzあたりに大きな山ができており、全体的にかなり<High上がり>のf特になっている。御存知の通り、一般のメーカー製ハイエンドSPではやや<High下がり>に調整するのが、最近のトレンド。10Khzあたりに山があるのは、いわゆる「音の良い三つ山」と古典的に呼ばれるイコライザーを使って補正する際の有名なテクニックではあるが、いくらなんでもこれはチト山が高すぎる。

 

そこで今度は、MidHighの各ユニットのGainを以下のように変えて試してみた。

 

3500-2

CO:3500

Mid:LPF:48 -10dB

High:HPF:24 -7dB

 

3500-3

CO:3500

Mid:LPF:48 -7dB

High:HPF:24 -4dB

 

3500-4

CO:3500

Mid:LPF:48 -10dB

High:HPF:24 -4dB

 

各測定結果のグラフは割愛するが、この中で「f特1等賞」を取ったのはこれ。

 

P (3500-4

35004_20241226080801

特に中高域はなかなかでしょ?これ、イコライザーは何も使ってないのですよ。しかも2.5M離れたLPでの実測値であって、「無響室1M」という実験室の結果ではありません。これ、超ハイエンドのSPを持っている方のお宅にお邪魔して、LP地点で実測したものと比べてみても、かなりいい勝負をすると思います!

 

ここでさらにダメ押し的にDirac Live ART様のお出ましでございます(爆)。

 

P. (一番下の赤いラインがDirac Live ART全域適用後の、LPにおけるf特。紫は無補正。青は、ART150Hz以下だけに適用したもの)

3500art_20241226080801

 

流石だわ(笑)。Dirac Live10KHzあたりを均してくれるのは当然としても、やっぱり500Hzから下のフラットさは半端ではないです。普通のお宅なら、LPでは床や壁、天井の反射や家具などによる吸音、さらには定在波の影響でもっとむちゃくちゃ波打ってますよ。恐るべしART

 

P (これ、個人の部屋の2.5MLPでの測定で、スムージング1/6なのに、この低域のフラットさ!=分かる人には分かるARTの凄さ!)

3500art-6-octjpg_20241226080901

 

ただ、問題は、結局、「これで、音はいいの?」ですよね~(笑)

 

これはMyuさんのブログにもコメントしたのですが(偶然、彼も制作中の自作ハイエンドSPを測定した記事をUPしておられたので)、このデータを見てしまってから音を聴くと、どうしてもデータ的に優れている(つまりフラットに近い)もののほうが、<イイ音>に聴こえてしまうのが、聴覚も脳に支配されている人間のサガかと(笑)。

 

ただ、個人的には、Dirac Liveフル帯域適用(赤線)のセッティングより、低域にARTだけを効かせたもの(青線)のセッティングのほうが、「出音」がVividで好みではあります(データ的には前者のほうが圧倒的にフラットで優れているが)。

 

まあ、これからしばらくはこれで様々な音源を聴き込こんでみますが、もしかすると、「舌の根」ならぬ「耳の根」?も乾かぬうちに(笑)、また<問題ある音>を発見してしまい、「チャンデバ地獄」のループに陥るかもしれません・・・(笑)。取り敢えず言えることは、今聴いている「ハルサイ」は、自分史上ベスト(断言!)。ご関心のある人は年度内に是非聴きに来てください!

2024年12月 9日 (月)

チャンデバ・マルチアンプ化の最後の仕上げ―というか、「何もしない」という判断(笑)

今回の記事は、はっきり言って、スピーカーとアンプとの関係の一面を理解したいという関心がない方にとっては、チャンデバ・マルチアンプに取り組んでいる人以外には役に立たず、それどころか理解もされない可能性すらあります(汗)。

 

にもかかわらずここに書くのは、自分のSPシステムに対し今後起こりうるかもしれない<悲劇>の可能性に対し自分なりの理解の上に<決断>をしたことを、頭がボケる前にマニフェスト的に明文化しておきたいからです。そして「自分の理解と判断の論理的プロセス」を言語化することで脳に固定したい。「なんとなくわかっているつもり」のことでも、文字化しようとするとできないのは、「本質的なレベルではわかっていないから」というのは、仕事の属性から日常的に経験しています(笑)。

 

今回はいつも以上に文章が長く(汗)、写真が少ないので(笑)、長い文章を読むのが脳に苦痛だと感じるという方は、ここから先に進むのはやめておいた方がいいです(爆)。ただ、最後の【おまけ】だけは読む価値あるかも?!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

さて、チャンデバシリーズの前回の記事で、「実はまだこれで「終わり」ではない。検討すべき事項がもう一つだけ残っている。続きは次稿」と書きました。これがその<続き>であり、本当の<終わり>になるはず!?

 

この、「検討すべき事項」とは、私はチャンデバ・マルチアンプに手を染めるホンの数か月前までは知らないことでしたが、チャンデバ・マルチアンプに取り組んでいる人の間では、完全な「常識」のようです。

 

この「常識」とは、「アンプをスピーカーユニットに<直結>する」と表現される、マルチアンプ化の作業過程で、文字通り「電線だけで直結」することのメリット・デメリットを検討し、その対策を最終判断することです。

 

ここから先は、私が今回の判断をするにあたって参考にさせていただいた多くの先達のご意見や、ネット上の様々な情報、さらにはメーカーに直接問い合わせていただいた回答などを自分なりに咀嚼してまとめたものです。繰り返しますが、私は社会科学が専門なので、音響工学・電気工学・電子工学などの分野には全く知識がないばかりか、どんなに丁寧に書いてある文字情報や絵解きや数式を見ても、また、諸先輩方がどんなに丁寧に説明をしてくださっても、<完璧な原理的な理解>には達してないことには自信があります(笑)。

 

ゆえに、私の理解が間違っていたり、書き方が不適当であったりする部分も十分あり得ますので、これをお読みになっておられる先達の方で間違いに気づかれましたら、遠慮なくご指摘いただけると助かります。

 

  • 「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの、音質的なメリット・デメリットとは何か?

 

今回、既製品のSonetto VIIIの各スピーカーユニットを取り外し、個別に性能を測定し、それらをデジタルチャンデバを使って再構成する、という一連の作業を経て素人の私が大いに学んだことは、<各スピーカーユニットの性能は本来はバラバラである>ということです。単純に再生可能なf特だけでなく、能率も、歪率もです。そして、市販のマルチWayPassiveスピーカーは、これらを、内蔵の「ネットワーク」という装置で、各ユニットのf特や歪率の「おいしいところ」を取り出し、それを同じ音圧出力になるように調整している、ということです。

 

この「ネットワーク」に一般に使われている材料は、コイル、抵抗、コンデンサーが御三家のようです(それぞれがどのような役割をしているのかは、「にわか」の私が下手なことを書くより、ご関心がある方はご自分でググってください=笑)。

Img_0178_20241209102801

で、この普通のPassiveスピーカーを、チャンデバ・マルチアンプ化するということは、これらの「御三家」をすべてすっ飛ばして、アンプと各スピーカーユニットを一対一の関係で「電線で直結」する、ということです。

 

これは私のやや得意とする自動車(工学というほどでもない、素人に毛が生えた知識・経験)とのアナロジーでいえば、「MT」と「AT」の違いに例えるとわかりやすいかと思います。車では(ただし、現代の電気自動車は違うかも???)、エンジンの回転を、タイヤを回転させる動力に使っているわけですが、MTはこの二つを単純化して言えば「直結」しているのに対し、ATは、この二つの回転の間に「流体」が入っています。

 

ここで「エンジン」を「アンプ」、「タイヤ」を「スピーカーユニット」、「流体」を「ネットワーク」に置き換えて例えることが大雑把には可能だと私は理解しています。

 

つまり、「直結」のメリットは、「MT」のメリットと似ています。損失が少なく、ダイレクト感があります。アンプ(エンジン)とスピーカーユニット(タイヤ)の性能がそのまま出ます。MTのクラッチ操作の楽しみは、チャンデバの調整の楽しみ(苦しみ?=汗)に例えられるでしょうか。

 

クルマ好きの方で、ATMTも乗ったことのある方であれば、こう例えれば、両者のそれぞれのメリット・デメリットは表裏の関係にあることをよくご存じでしょう。

 

つまり、ATはエンジン特性の荒々しさ・変動をうまくいなして、タイヤをスムースに動かす点でMTより優れています。「ATの乗り心地の方が滑らかで好きだ」という人は少なくないのと同様、Passiveスピーカーの方が、アンプの粗をうまくカバーし、各スピーカーユニットの固有の嫌な音を抑えて音を出しているように感じられて、こちらの音の方がいい意味で「角が取れた、大人の音」がすると私も強く思います。

 

しかも、クルマでもATの味付け(動作特性調整)でSportyにも、Gentleにもできるように、Passiveスピーカーでは、「ネットワーク」の<味付け>で、そのメーカーやエンジニアが狙った音質・音像・音場を出力できる性能に最終的に仕上げていて、これはハイエンドになればなるほど、ここに心血(時間とコスト)を注いでいることは明らかです。

 

ということは、このメーカー・エンジニアがそのスピーカーの特色を出すために心血を注いだ「ネットワーク」を外して、ユニット直結にしてしまうというチャンデバ・マルチアンプ化への改造は、単に「メーカー保証が受けられなくなる」だけに留まらず、そのメーカー・エンジニアに<絶縁状>(笑)を突き付けるようなものかもしれません(汗)。そして、いうまでもなく、<絶縁後>の音の行く先は、オーナーの完全なる責任の下にあります。<荒波の中に海図なき航海に出る>(これを避けようと、『改造』の場合は、Cmiyajiさんや最後に紹介するフウさんのように、オリジナルのデータ=海図=をなぞる方が多い)ようなもので、下手をすると「漂流」したり、「難破」したりするリスクがあることが、最大のデメリットでしょう。

 

この「絶縁」後の音質の変化は、やったことのある方しかわからないとは思いますが、「見た目は全く変わらない」のに、「同じスピーカーから出ている音とは思えない」ほどです(汗)。それがよい方向への変化なのか、悪い方向なのかは、人の主観ですが、<生々しくなる>、とだけは確実にいえます。モネの『睡蓮』が好きか、パリ郊外にあるモネの「庭園」が好きか、は人それぞれですが、後者の方が「生々しい」(=というか「生」そのものだが!)から「やはり本物の自然には芸術は勝てない」と考える方もいれば、「本物には情緒が感じられない。ロマンを掻き立てる絵の方が好きだ」、という方も多いですよね。

 

とにかく、チャンデバ・マルチアンプ化改造を経験して、良くも悪くも、「ネットワークの有無で音が変わる、換言すればネットワークが<オリジナルのスピーカーユニットの音>を変えている」ことだけは、身をもって知ることができました。

 

  • 「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの、工学的なメリット・デメリットとは何か?

 

ここに書くことは、実はついこの前まで私は知らなかったことなんです(大汗)。「そんなことぐらい、勉強してからチャンデバ・マルチアンプ化しろ!」と先達には叱られそうです(笑)。

 

まず「工学的なメリット」の方ですが、直結はアンプとSPユニットの間に電力を消費する「コバンザメ」(笑)が無いのですから、アンプが発生させた電力を電線以外では損なうことなくSPユニットに届けられる点にあります。このことは、人間の耳でその差が知覚できるかどうかは別にして、「論理的には」同じアンプ出力でも直結の方が「音圧」は上がる、ということだけは確実な「メリット」と言い切れるでしょう。

 

次に「工学的なデメリット」ですが、「直結」にすると、最悪、スピーカーユニットのボイスコイルが焼き切れる可能性があるそうです(知らなかった・・・幸い、未経験=汗。以下の記述は私の理解力では確信を持てないので伝聞調になります=笑)。

 

スピーカーがどうやって音を出すかは、昔から本質的な原理は変わっていないそうで、フレミングの右手だか左手だか(笑)の法則とやらで、コイルに電気を流すと磁気が発生して、そこで発生する磁力を利用して、振動版を動かして空気を揺らすのだとか。

 

で、この「コイル」というのは要するにボビンと呼ばれる輪っかに「糸巻状に電線を巻き付けてあるもの」だそうで、この電線が熱で焼き切れたり、熱でボビンが変形してしまうリスクが、「直結」だと高まるんだとか。

 

どうして電流を電線に流すと「熱」が出るのかというのは、いわゆる「電熱器」の要領で、要は電流というのが電線の中を流れにくくなると熱を発生するらしい(汗)。ではどうして「流れにくくなるか」というと、1.電気が通りにくい「不純物」?が多い素材を使っている、2.道の細さに対して、とても一気に通りきれないような大量で強力な?電気が襲ってくる―のいずれからしい。

 

スピーカーユニットのボイスコイル用の電線には1を使うはずない(多分=汗)ので、トラブルの原因は必ず2になる(多分=汗)。

 

で、この「大量で強力な電気?」の発生するメカニズムには、二通りあるそうで、一つは、「クリップ」、と言われる現象、もう一つは「直流(DC)漏れ」と呼ばれるものだそう。

 

まず、「クリップ」ですが、これは出力波形がきれいな正弦波にならず、頭打ちになる状態を指す。音質的には「歪み」となり、ひどい場合は人間の耳でもわかる(ギターのディストーションはコレ)。いろいろな原因があるようですが、自分のシステムで問題になる可能性のあるクリップのメカニズムは、「パワーアンプでは最大出力を超える場合、出力信号がクリップする」ことで、ということは出力の小さいアンプで大きなスピーカーを鳴らすとクリップしやすくなるらしい。

 

私は入力でも出力でも過大入出力で機器が処理できる限界を超えると「クリップ」という状態になり、それが「歪み」を生む、というのは経験的に(汗)知っていましたが、出力の小さなアンプの方がクリップさせやすいとは知らなかった・・・むしろ出力の大きいアンプの方が、過大出力をスピーカー側が処理しきれず、「クリップ」させると思っていました(そのようなクリップのメカニズムもあるらしいが)。

 

では、この「クリップ」がなぜスピーカーを壊す可能性があるのか?これは特にツイーターが危ないらしい。

 

というのは、入力信号がクリップすると、元の信号には存在しなかった高周波(超高音?)や高調波(電源の周波数=50Hzとか60Hz=の整数倍の音波?)が生まれてしまうらしい。そしてツイーターには普通ローパスフィルターは入れていないため青天井の周波数の入力を許容してしまうので、この「クリップ」が継続的に発生し続けるとボイスコイルが過熱して損傷する可能性があるのだとか。

 

次に「直流(DC)漏れ」ですが、私はかつて、Sonetto VIIIのスピーカーユニットの「逆相接続問題」(既製品のPassiveネットワークでは、中高域ユニットが低域ユニットに対し逆相になっている)に悩まされたことがあり(これもSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプ化改造に踏み切った大きな理由の一つ)、その時にスピーカーユニットが正相接続されているのか、逆相接続されているのかを確かめる方法として諸先輩方に伝授いただいたのが、「乾電池のプラスマイナスをそれぞれスピーカー端子の+と-につないでみる」という方法。

 

これをやると、スピーカーユニットが前か後ろのどちらかに動いてくっついたまま(汗)になる(その動く方向を見ると、正相か逆相かを判断できる)。つまり振動はせずに前か後ろに動いたのちに固まってしまうのだが、この状態が、直流がSPに流れている状態。普通は交流(AC=+と-が交互に入れ替わる)の電流がSPに行って、だからスピーカーユニットは「前後に振動」して人間には「音」として聴こえる。直流だと人間には「音」として聴こえないはず。

 

もし、この直流がスピーカーユニットに流れ続けると、ずーっとコーン紙が片側に貼りついた状態になるのだが、これは直流は常に一定の電流が流れ続けるためらしい(交流はプラスからマイナスに変位していく電流のため振幅があり、一瞬ゼロになるポイントすらあるそうだ)。つまり、直流は交流と違って「一息つかせてくれない」(笑)。このため、持続的なエネルギーで加熱しやすく、ある程度のパワーを持つ直流が流れ続けるとボイスコイルに巻かれている細い電線が焼き切れてしまうらしい。

 

では、なぜ、このような「直流(DC)漏れ」が起きるかというと、私には詳しいメカニズムはよくわからないのだが(汗)、要するに、ソース機器やプリアンプやパワーアンプの品質が悪いか、保護回路が付いていないか、または古くなって保護回路の部品が劣化して来ると「漏れる」可能性があるんだそうだ。だから、「ある程度の高級ブランド品を10年程度で買い替えていれば問題はない」、というようなことをあるオーディオショップのベテランに教えてもらった(安かろう悪かろうの途上国?の製品や20年以上のヴィンテージ品をレストアもせずに使っているとアブナイとか・・・)。

 

  • 結局、拙宅のシステムで「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの最大の懸念は何で、最終的にどうしたのか?

 

「直結」のリスクのうち、「クリップ」を防ぐには、対処法としては、「パワーアンプの出力をなるべく大きなものを使う」ことしかない。

 

現状、Sonetto VIIIは、

 

ウーファー用に、PA-16 200W8Ω)

スコーカー用が、STA-9BTL290W  (4Ω)

ツイーター用に、A-0 10W8Ω)

 

を当てており、どう見ても(汗)、ツイーター用だけがやたら出力が低い。

 

問題は、この出力で、ハイパスのCO値を4000Hzに設定したSonetto VIIIのツイーターが、「実用上」、クリップしているのか? である。

 

そこで、いろいろと調べましたよ(笑)。

 

  • Classicのみならず、JazzPops/Rockも「私以上の大音量で」(笑)お聴きになられるチャンデバ・マルチアンプ化でお世話になったMyuさんが、かつて「9W」という最高出力のアンプでドーム型ツイーターをドライブして2年弱もの間お使いになっていたが、その間、一度も「クリップ」を感じたことはない、という証言を得た。

 

そして何より、私が普段よく聴くAuro-3Dの様々なNative音源(オーケストラあり、リストのピアノソロあり、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲あり・・・)を、普段聴く音量より「気持ちさらに大きめ」で再生しても、<私の駄耳では>汗、クリップ=歪みなどを感じることは全くなく、むしろ、リストのピアノ曲における高音の強打のパートでは、今までSTA-9(=120W )をつないでいた時よりも、最大出力10WA-0の方が「澄んだ、透明感のあるフォルテ」が聴けて、「もしこれがクリップしている音なら、私はこちらの方が好きだな!」と思えたことが決定打となった。つまり、クリップに起因するツイーター損傷事故の発生リスクに関しては、「現状で問題なし」と判断

 

次に、「DC漏れ」については、これが起こると、真っ先に危険な状態になるのはこれもツイーターだそうだ。というのは、低域再生能力がある=たくさん空気を動かす=強力な磁力が必要=ボイスコイルに大電流が必要=使用されている線材が太い=ため、ウーファーやスコーカーは一時的な「DC漏れ」程度では使用されている線材が焼き切れることは起きにくいらしい。

 

ということで、諸先輩方の進める対処法は、「ツイーターとパワーアンプの間にコンデンサーを挿入する」という方法。この「コンデンサー」というのがどういう機序でDC漏れの防波堤になるのかは皆さんに教えてはいただいたが、自分の言葉で書く、というレベルまでは呑み込めていないのでここでは割愛。もちろん、チャンデバ・マルチアンプ化をしている方がすべて「コンデンサーを挿入」しているわけではなく、入れずにチャンデバ・マルチアンプで運用している人も少なくない。

 

P ツイーターを「DC漏れ」から保護するには、こういうものを挿入する必要があるらしい(これは過日お邪魔したTomy邸のもので、単なるイメージ=笑)

Img_2907_20241209102801

ここは、オーナーの<判断>が別れるところであり、私もここらでその決断をしなければいけない。

 

ただ、一つ言えることは、コンデンサーを入れれば、それは「真の直結」ではなくなる、ということ。アンプとスピーカーユニットを「直結」するメリットは上述した通りだが、そこに「何か?」を介入させれば、確実に「出音」は変化する(劣化する、かどうかは主観によるのでここでは触れない)。

 

つまり、ここで比較衡量しなければならないのは、「コンデンサーを挿入する」場合のコスト(ここでは金銭的なものだけでなく、手間や見た目の変化なども含む)と、「コンデンサーを挿入しない」場合のリスク(その確率とコスト)のどちらがより大きいか(メリットはその逆概念)。

 

整理すると:

 

【コンデンサーを挿入すると】

 

1.音質が変化する

2.コンデンサー代・手間(市販品はないため、自作の必要がある)がかかる

3.DC漏れが起きた場合、ツイーターを保護する

4.クリップの防止にはならない

 

研究の成果(笑)では、1、2,3はすべて関連していて、「音質の変化」の度合いやベクトル(それがオーナーの趣味と合った方向への「変化」なのかどうか)は、使用するコンデンサーの種類・品質=価格に左右される。そして「保護」性能は、コンデンサーの容量を増すほど高まる=コストが上がる。

 

具体的に、お詳しい先輩方にいろいろなブランドのコンデンサーを紹介していただいたが(私には初めて聞く名前ばかり=汗)、一番安ければ数千円程度、ハイエンドクラスだと10万円を超える(定価数百万円のSPはネットワークの部品にこういうレベルのものを使っているらしい)。現実的には、ツイーター用なら35万円程度のものがいいのでは?と。

 

さて、ここで比較衡量タイムである。

 

1の問題はオーディオとしては最重要ポイントではあるし、コンデンサーを選べば「好ましくない音」への<変化>だけでなく、「私の好みの音」への<変化>もあり得るのだろうが、その「好ましいコンデンサー」に巡り合うためにメーカーのエンジニアのラボには何十ものコンデンサーがあって、それを入れ替えながら試聴を繰り返すらしい(笑)。だが、私にそのようなことができるか?というと、答えは明白である(泣)。だからあるコンデンサーを挿入して、その音質の変化が自分の好みの方向かどうかは、「やってみなければ確実なことはわからない」という、完全な「賭け」であると判定

 

2のコストと、3のリスクは、「リスクの被害の大きさと、その発生確率に対し、コストが見合っているか」を検討するのがビジネスの常識ですよね(笑)。

 

ツイーターのコイルが焼損した場合のリスクは、1.ツイーターをReplaceするコスト(代金と手間)、2.その焼損が、他の機器・家具などに与えるリスク―に弁別される。

 

このうち、1に関しては、かつてSonetto VIIIのスコーカーに「歪み」を感じ、ユニットを交換してもらったことがありますが、その時のコストから想像して、ツイーターの交換も10万円は行かないと思われます(幸い、ダイヤモンド素材じゃないので!)。A-0に現在つながれているツイーターは全部で5台ですが、これらが「すべて同時にコイルが焼き切れる」ということは考えにくい(雷でも落ちれば別だが=汗)ので、「一度の事故」でのツイーター交換用の損害額はMax10万円。それに対するコンデンサーの備えは、5台分必要(どれが焼損するかはわからないため)なので、導入コストは金額のみだと約25万円。

 

次に2に関しては、コイルの焼失時に他への損害を与える可能性を検討すると、まず、コイルの焼失というのは、「煙が出る」ことはあっても、「爆発的な火災」にはつながらないことが調べて分かりました。つまり、他のユニットやエンクロージャーや、さらには家具・家までも焼失するような出火の仕方はしない。つまり損害はツイーターそのものに限局されている。

 

では、ツイーターと電線でつながっているパワーアンプを損傷するリスクはないのか?

 

これについては、A-0の機能について、Soulnoteのエンジニアに問い合わせたところ、「弊社のA-0に実装されている過電流検出機能およびDC検出機能もアンプとスピーカーの両方を保護する役割を果たします」との明確な回答をいただいた(ただし、「通常でも±0.1V程度の直流成分が出力されることがあるため、ツイーターには、良質なフィルムコンデンサ(10㎌程度)を間に入れる方が良いかと思います」とのアドバイスが付いたことも付言しておく)。これを受け、私としてはパワーアンプが損傷するリスクは低いと判断。

 

さて、最後は、「事故の発生確率」である。ツイーターのコイルが焼き切れるようなことが、音楽を3回再生すると一度は必ず起きるのなら、「絶対に」(笑)コンデンサーを入れる(笑)。

 

これについては、先に紹介したMyuさんのチャンデバ・マルチアンプシステムに於いて、コンデンサーレスで、アンプとツイーターを「電線だけで直結」した状態で、2年間弱運用されて、「一度もツイーターは飛ばなかった」という事実は大きい。繰り返すが彼は私以上に(?)大音量を出されることがあり、しかも、恐らくほとんど毎日のように再生をしておられたはず。一方の私の伊豆の別宅は、月に多くて2度、電源を入れるだけである。使用頻度と事故発生が比例的な関係にあるとすれば、確率論的に言えば、現状の使用頻度であれば、拙宅のツイーターのコイルが焼き切れるのは、30年間でも1度もないことになる(笑)。

 

さらに、拙宅のツイーターを駆動するA-0は、このメーカーの技術的信頼性は私には評価できないが、少なくとも最新設計の製品を「すべて新品」で揃えたものである。ということは先に紹介したベテランオーディオ店員の談によれば、少なくともこの先10年は、アンプ側の過電流検出機能およびDC検出機能という保護回路が誤作動を起こす確率は極めて低いということになろう。

 

ここまで理詰めで来ても、最終的にどうするかは「オーナーの性格・哲学」というもので決まる。事故が起きる可能性は、ゼロではないからだ。いつかTVで、「1000万円かけて地下に核シェルターを作った」という方が紹介されていた。この場合、私は「1000万円分、楽しい思いに使って、核ミサイルが飛んで来たらサヨナラする」(笑)という考え方をするタイプである。

 

結論的に今、私は何の迷いもなく「真の直結」で5台のSonetto VIIIが奏でる、<澄んだ高音>を楽しんでいる。ただし、数年以内に1台でもツイーターが飛んだら、「羹に懲りてなますを吹く」(汗)で、その後は5台すべてにコンデンサーを入れようと決めてはいるが(笑)。

 

【おまけ】

 

昨日、オーディオ評論家の 傅 信幸(ふう のぶゆき)氏のメインの2chシステムである、「カタツムリ」をグランドスラムさん、Myuさんと共にお邪魔して、聴かせていただきました。

Img_2969

その音の感想をここに詳細に書くのは、このブログの趣旨から外れますし、「Auro-3D耳」になりきっている私(汗)がハイエンド2chの音をうんぬんできるような資格はないと謙虚(笑)に思っておりますので、耳の肥えたグランドスラムさんやMyuさんにお任せしたいと思いますが、この記事は最初から、このネタで締めるつもりで上梓するタイミングを見計らっていたのです(笑)。

 

ここを読んでおられるような方ならよくご存知と思いますが、「カタツムリ」(その後の、名が体を現わしていない「偽カタツムリ」と弁別するため、敢えてNautilusとは書かない)は、天下のB&Wの4Wayのチャンデバ・マルチアンプによるスピーカーシステムです。傅さんはオリジナルのアナログチャンデバを、アキュのデジタルチャンデバに交換しておられますが、CO値やスロープ設定などは、私のSonetto VIIIと異なり(大汗)、ほとんどオリジナルを踏襲しているそうです。もう一点、拙宅と大きく異なっているのは、パワーアンプを、Jeff4chマルチをLR用に各1台を当てているため、4Wayのスピーカーユニット4台を「同一のパワーアンプ」で鳴らしている点です。傅さんによると、以前は上下で異なるパワーアンプを使っておられたそうですが、同一にしたときに、「位相が揃って、音の輪郭がはっきりした」とおっしゃっておられました。

 

Wayではありますが、「敢えて」(笑)3つとも異なるパワーをつないで「遊んでいる」ものとしては、「でも、ウチのはDirac Liveでユニット間も位相補正しているから」(傅さんは電子的な補正はされていない)と内心強がりながらも(汗)、ちょっと刺さるお話でした。

 

そして、この記事の締めに傅邸訪問エピを持ってきた最大の理由は(笑)、「これ、コンデンサー入れてます?」との質問をしたことです(実はお部屋に招き入れてもらって、挨拶もそこそこに伺った!)。

 

「ツイーターとの間だけには入っています」

 

このスピーカーシステムは、各ユニットの入力部分に別々にアクセスすることができない構造になっていて、オリジナルの状態で太いケーブルが一番下の黒い四角い「台」のような部分の後ろから出ていて、そこに4台分8本のカラフルに色分けされた電源ケーブル(=意外に細い!「電線病」の方が見たらひっくり返りそう!!!)がまとめられているんです。ゆえに、オリジナル状態でこのうちのツイーター用の電線の先のエンクロージャーの中に、コンデンサーが入っているようです。さすがメーカー製!安全First!!! (だって、これ、ネジを使わない構造のエンクロージャーになっているので、万一の時にスピーカーユニットを交換するのにBWのエンジニアしかできず、作業がものすごい大変なんだそうで…だからメーカーとしては、スピーカーユニットの修理に追われたくないだろうと想像!)

 

P 太いXLRケーブル4本のそれぞれの下に見える、「細い」(笑)カラフルな電線が、それぞれ4つのスピーカーユニットにつながっている

Img_2968

 

さて、先に「音質には触れない」と宣言しましたが、自分の持ち込み音源を再生してくださいました(いい選局、とお世辞をいただきましたし=笑)からには、一応オーオタの端くれとしてやっぱり書きたいので(笑)、私の駄耳による様々な印象のなかで、一点だけ(本当はいろいろ書きたいが、長くなるので自重!)。

 

今回お邪魔した三人組が普段聴いている音量よりやや低めの出音に最初に触れたとき、「フルレンジみたいだな」と思いました。しかも、上下に音域の伸びたフルレンジ(=これは理論的にはあり得ない)。これはマルチWayスピーカーに対しては恐らく最高の誉め言葉の一つでしょう(今の私のように、アンプを変えたらツイーターの音の美しさが目立つようになったのを喜んでいるようではダメなんですよね=汗)。

 

Wayなのに、1Wayに聴こえる。ご本人は全く語られませんでしたが、これを実現するために揃えた機器やケーブル類の吟味や調整にかけた時間とコストと「鬼気」が出音ににじんでいて、試聴中、正直申し上げると<少し寒気がした瞬間>がありました。間違いなく「マルチWay, マルチアンプシステムの究極の到達点」の一つを体験させていただきました。

 

最後に、これに触れないわけにはいかない。以下の写真を見てください。コレ、我々が無理やりお願いしたものではないんです。グランドスラムさんとは旧知の仲とはいえ、私とは数回会合で食事をご一緒させていただいた程度、そしてMyuさんとは初対面、かつ3人とも初訪問なのに、傅さん自らが記念にと我々を手招きし、こんなフレンドリーな姿態で被写体になってくださったのです。高名なオーディオ評論家なのに、全く偉ぶるところがない。そしてとても細かいところまで気配りをされる(帰り際、寒空の中にもかかわらず、外に出て我々を見送ってくださった)。

こうした人格が音に出ていました。

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2024年11月17日 (日)

Soulnote A-0を3台取り寄せ、チャンデバの調整をしてみました

これは前回の続報です。

 

自分の頭の整理のためにも、前回の記事で書き散らした、「なぜ、今回、ツイーター用のパワーアンプを交換したいのか?」をまずは箇条書きに。

 

  • 音源(単独楽器のフォルテ部分)によって、たまに「強すぎる音、嫌な高音」がしていた
  • 残留ノイズ音レベルがやや高めであった
  • STA-9Mid専用に使いたい(BTLまたはSingle
  • Low, Mid, Highをそれぞれ異なるパワーアンプを使って各ユニットとその受け持つ帯域の特徴を最大限活かせる組み合わせにしてみたいという、「高校生の頃からの好奇心」(笑)。

 

そのうえで前回の2chによる、A-1との比較試聴を経て、今回、A-0を3台取り寄せて、LCRSLRの5つのツイーターにつなぎ替え「マルチとしての最終形」としたうえで、この状態で確かめてみたかった残る懸念点は(気に入らなければ返品・中古売却→新たなアンプ探しの覚悟=汗)、

 

1.10Wの出力で問題ないのか?

2.Auro-3DNativeソフトで再生した時、他のSPとの音質的な違和感はないか?

3.Auro-3DNativeソフトで再生した時、A-1と迷った「奥行き感」の表現力に問題はないか?

4.A-1と迷ったポイントである、相対的に「やや華やか<過ぎる>」音(中低域の再生音もA−1に比してやや腰高になっていた)を、チャンデバ側の設定を変えることで解消できないか?

 

の4点であった。

Img_2935

さて(笑)。

 

まず、1に関しては、スピーカーユニットを単体で取り寄せて自作されるレベルのマニアの皆さんには既知の問題だと思うが、ついこの前まで「初心者」を名乗っていた(汗)私には、「出力ワット数の小さいアンプのほうが、危ない。スピーカーユニットを壊しやすい」ということを諸先輩方に教えていただくまで知らなかった(汗)。私は「ツイーターは繊細(=壊れやすい?)そうだから、300Wとかの出力のあるパワーアンプではヤバイだろう」と思って、小出力アンプから探していたのだが、これはとんでもない誤解だそうで・・・

 

SPユニットを壊す、というのは「コイルを焼き切る」ことだそうで、それが起きるのは直流電流が入って一定時間以上継続的に入力された時。そして、この直流がパワーアンプから出てしまうのは、出力が飽和(クリップ)するときで、これはつまり、アンプの最大出力を超える出力を出そうとすると起きる現象だそうである。

 

つまり、「小出力アンプを使って大音量で聴くとき」が<一番危ない>。出力に余裕のあるアンプでは頭打ち=飽和=が起きにくいので、むしろ安全とか。うーん、知らなかった・・・よく、「最大入力200W」とカタログに書いてあるハイエンド系SPに、「最大出力1000W」のハイエンド系パワーアンプを繋いでいるマニアがおられるが、私はいつも「スピーカーが吹っ飛んでコーン紙が破れるんじゃ?」とフォルテパートでは内心ドキドキ(ちょっと盛ってます!)しながら試聴させていただいていたのだが・・・むしろ、伊豆のAmator IIIOctaveで、Octaveの出力が低い方のモード(最大出力15Wぐらいかな?=音質的には繊細感が増す)で、リストのピアノ曲を「普段、Auro-3Dシステムで聴くレベルで」(笑)再生していたときに、一度、フォルテッシモでOctaveがシャットダウンしたことがあったのを思い出した。あのときのほうがよほど「危なかった」んですねぇ・・・(大汗)。

 

先の記事のレス欄でも、いつもご相談に乗っていただいている元エンジニアのK&Kさんからも、「Auro3Dさんの場合、TWを比較的低い3KHzあたりから使われること、TWがソフトドームなので能率がやや低めだと思われること、Auro3Dさんが大音量派でピアノなどは生演奏よりも大きな音量で聴かれることを考慮するとクリッピングが起きる可能性を完全には否定できません。一番危険なのはピアノの高域の強烈な打鍵のような気がします。」とのご心配をしていただいているので、今回、正規の(笑)Auro-3Dフルシステムに3台のA-0を組み込んで、手持ちのAuro-3D Nativeソースの中から、なるべく多種多様な演奏・楽器のものを選んで、「自分が聴ける(笑)最大音量」でフォルテの部分を中心に次から次に再生してみた。

 

万一、5台中1台でも、一度でも「落ちた」ら、または何か不快な音(歪?)がしたら、「全部返品するか売却して、もう少し高出力のまた別のアンプを探そう」、という<悲壮な覚悟>だったが(汗)、幸い、大丈夫だった・・・まずはFirst Step、クリア(笑)。

 

そうなると次は「音質」の再確認である。前回すでに2の懸念についてはやってはみたが、それは所詮、A-0で駆動する1台のSonetto VIIIと、PA-16で駆動する1台のSonetto I or IIとの比較に過ぎない。実際に13.1chシステムに組み込んでの「音色の違和感」はないか、これも上述の「飽和」の有無の実験と併せて<耳をそばだてて>チェックしてみた。これをチェックするのに最もふさわしい音楽のパートは、先の「飽和」チェックポイントの直後に往々にしてくる、「残響音が空間に消え入るところ」である。LCRを中心にした直接音による再生が終わるころ、サラウンドバックやハイト群のSPDelayされた残響音を受け持つのだが、ここで音色が大きく異なると、バイオリンのソロだったはずが残響音でビオラになったり(笑)、ドラの音だったはずが、残響音でシンバルになっていったり(笑)するのだ。

 

自身による多様な「検聴」の結果、問題は感じなかった(Amator IIIOctaveの方がよっぽど浮く=汗)。

 

3については、これも前回の記事で予想した通り、私の駄耳では、Auro-3DNativeソフトとシステム自身に内在する「2chとは技術的にも・理論的にも比較にならない」奥行き感・立体感が十分感じられて全く問題なし。まあ、Ch数を半減するのならともかく、たかがアンプを変えたぐらいでAuroシステムの最大の特徴である立体感がいきなり損なわれるほどの違いが出るわけ無いだろうとは思ったが(笑)。

 

最後に、今回個人的に最も「楽しみに」していたのが、4の音色の操作の可能性の追求であった。これはプチ自慢になるが(笑)、CO値をいじるだけで、「全体の」音色が変わる、というのは、Passiveの普通のスピーカーを買い替え続けた「苦節40年以上」の間、全く知らなかったことである(恐らく、これを読んでいる方でPassiveしか使ったことがない方は、以下の部分は「驚き」以外の何物でもあるまい)。これまで私はスピーカー選びの際に、カタログに乗っている「クロスオーバー周波数」が何を意味するのかすらあまり意識せずに(汗)、ただ、自分の耳で聴いて気に入ったSPを選んできた。しかし、この春に諸先輩方の多大なご協力を得て生まれて始めて「チャンデバ・マルチアンプ」の世界に足を踏み入れてから、このCO値が全体の音色に多大な影響があることに気付かされたのである(Passiveの場合は、出音の音色を変えたかったら、ソース機器を変える、アンプを変える、ケーブル類を変える、などのテクニックを駆使されると思うが、CO値の変更による音色の変化の大きさはこれらの比ではない)。

 

例えば、わかりやすく2Wayで考えてみてほしい。CO値が2kHzのもの(=A)と、3kHzのもの(=B)があるとして、この両者が全く同じユニットを使っている場合、2.5kHzの音は「同じに聞こえる」だろうか?

 

これは2.5kHzの音をシンセサイザーで合成して再生した場合は、「理論的には」同じに聞こえないとおかしいことはおわかりになるだろう。しかし、実際の楽器の「ラ」なら「ラ」の音は、フルートとクラリネットでは異なることは経験的に知っている。これは基音の「ラ」(例えばこれを2.5kHzと考えてみる)以外に、様々な付帯音・倍音が付いてくるのが、「楽器」というものだからである(電子的合成音とはここが異なる)。

 

では先の例で、2.5kHzを基音とするフルートの音は、ABSP(繰り返すがユニットは同一)で、どのような音色の違いが出ると予想されるだろうか?

 

これは非常に急峻なスロープを使った場合、Aでは基音と付帯音の殆どの部分はツイーターが受け持ち、Bではウーファーが受け持つことになるのだが、この違いが、音色に大きな違いをもたらす。

 

簡単に言うと、Aのフルートの「ラ」音は、Bより華やかになり、逆に言えば、Bの「ラ」の方が落ち着いた音になるのだ。要は基音近辺の付帯音も、Aはツイーター主導、Bはウーファー主導になるからだ。だからSPメーカーでパッシブネットワークの設計者は、「高域に華やかさを持たせたい」ならツイーターのCO値を下げ、「落ち着いた音を出したい」のなら、上げるはずである。このCO値の操作による音色の操作は、もちろん、ユニットそのものが分割振動を起こすような帯域は普通は使わないので、ユニット自体のf特による限界はあるが、先にも書いた通り、笑えるぐらい音色が変わる。しかも、スペアナでみた場合は、どちらもほぼ同じf特カーブとして現れるのに、である。人間の耳は、測定機より敏感なのだ!

 

春先から「この技」を知ってしまったワタシ(だから、Active化した際、「これからはSPを買い替えなくても、パラメーターをいじるだけで永遠に音色の変化を楽しめますよ」、と先達に言われたのだった)は、今回の不満点(A-0だと綺羅びやかなのはいいのだが、やや全体に腰高な音色。私はピアノの右手は華やかなのが好きだが、左手の重みで感動するタイプ=だから以前どこかで書いたように、ドビュッシーの「沈める寺」が好き)を、なんとかこのテクニックを駆使して解消できないか、と今回の挑戦を「楽しみに」していたというわけである(笑)。

 

チャンデバ未経験者向けの前置きが長くなったが(汗)、以下のような4種類のHighMidとの間のCO値を5台のSonetto VIIIに全て適用して瞬時に切り替えて試聴できるようにした。つまり、3500から5000まで、500Hz刻みにした4つのセッティングを作ったのである。これまでのDefault3500だったので、これを引き上げることでMidによるカバー領域を増やす=高域の音色を落ち着かせることを狙うのだが、その塩梅は実際にやって自分の耳で聴いてみないとわからない。

 

PImg_2933

 

ちなみに、Sonetto VIIIのパッシブネットワークのMid-HighCO値は3000である。これはチャンデバ化・アンプ直結にしたときに、Default値では高域にキツさを感じ、ツイーターのカバー領域を減らしてスコーカーのそれを増やして対応しようとして、3500に上げたのである。今回、パワーアンプの入れ替えで、キツさはなくなったのだが、「軽さ」が出てきているため、もう少しMidに頑張ってもらえば改善できるのでは、との狙いがあって、更に上方のセッティングを作ってみた。なお、今回、CO値の上限を5000としたのにはもちろん合理的?理由があり、以前、Myuさんと一緒に厳密にユニット単体のf特を測定した際に、Sonetto VIIIMid5000あたりから6000にかけてピークアウトしており、その先は恐らく分割振動だろうということで、使えるのはせいぜい5000までとみているからだ(ちなみに、Mid上限のスロープはLR24Highの下は、LR48)。

 

P (青いf特がスコーカー、緑がツイーター)

Img_2934

 

ということで、比較試聴に際しては、基本的にはAuro-3D音源を用い、Classicならピアノ、バイオリン、チェロ、ハープシコード、アリア、マリンバ、ビオラダガンバなどの単体音源と、弦楽四重奏、協奏曲、交響曲のすべてを使い、Jazzはピアノ・ダブルベース・ドラムのトリオを中心に、RockだけはAuro-Maticを使用してグランドスラムさんご推薦のNobu’s Collectionを中心に「超念入りに」(笑)比較試聴した。

 

その結果、やはり現行の3500では、ハイ上がり過ぎて、ピアノの華やかさやRockのシンバルやシンセサイザーなどでは「くっきり感」が出るものの、私の好きな音源である女性ボーカルやチェロ、ピアノの左手あたりは音が軽すぎて、しっとり感と重厚感に欠ける。逆に5000にすると、本来小太鼓の軽快な音のはずが、ティンパニーに聞こえちゃったり、ピアノの右手の華麗さ・コロコロ感が失われたり、バイオリンの倍音が、ビオラに聞こえちゃったりした。Rockのバスドラムなんかはものすごく腹に来るのだが。

 

ということで40004500が決勝に残り、微差なのだが、より高域に華やかさを残す4000にすることとした。4500の魅力の中低域の迫力・重みは、4000のままでも、Mid用に用意しているSTA-9をこれまでのSingle接続ではなく、BTLにすればある程度カバーできるのでは、と考えたからだ。

 

ということで、High用のパワーアンプをSTA-9からA-0に変更したことに伴い、チャンデバ側の設定を以下のように変更した。

 

Low (PA-16) CO350(パッシブは270だった)Gain:0dB 

→変わらず

MidSTA-9Single) CO:3503500 Gain:-4dB 

→(STA-9 BTL) CO:3504000Gain:-10dB

High (STA-9, Single CO:3500 Gain:-7dB 

→(A-0SingleCO: 4000 Gain:-2dB

 

オーナーの贔屓目による(爆)感覚では、以前より、中低域が太くなり、高域には華がある。そして全体的にS/Nが上がって、空間の広さと見通しが良くなった(気がする=汗)。

 

プラシーボかどうかは、またどなたかの「検聴」を待つ必要があるが(笑)、実はまだこれで「終わり」ではない。検討すべき事項がもう一つだけ残っている。続きは次稿。

 

【おまけ】

 

一段落してこの記事を書きながら、自分が設定した「CO:3504000」を採用しているパッシブSPって世の中にあるのかな?と思っていくつかの主要SPメーカーの3Wayスピーカーのカタログを調べてみたのだが、見当たらない。「これはもしかして、私の耳がおかしいのか?」と少々不安になったのだが、メーカーのHPではないところに、以下のような情報が。

 

B&Wのスピーカーはクロスオーバー周波数を350Hz4kHzに標準化しています」

 

実はB&WHPも見たのだが、あそこはCO値を公開していないらしい。念の為、モニター的に評価の高い800シリーズのハイエンドと、僭越ながら(笑)、私のSonetto VIIIのカタログ上のデータを比べてみると:

 

801D4  (13Hz 35,000Hz)

TW 25ミリ、SQ 150ミリ、WF 250ミリ×2

CO3504000)?

 

Sonetto VIII (36Hz 25,000Hz)

TW 29ミリ、SQ 150ミリ、WF 180ミリ×3

CO2703000

 

うーむ、偶然なのだが私の聴感によるCO値の選択と、天下のB&Wのエンジニアのそれが同じ結論になったということは、つまりこれは、チャンデバ化とユニット別に異なるアンプの組み合わせによって、Sonetto VIII801D4化したってことか?(それはさすがに化けすぎ?=爆)

2024年11月11日 (月)

ツイーター用のパワーアンプ探し

1.Prelude

 

これは、チャンデバ・マルチアンプ化をしている人だけの独特な悩みであり、また歓びなんだろうとは思う。

 

チャンデバ・マルチアンプ化をすると、「理論的には」例えば3Wayシステムの場合、この1台のスピーカーを鳴らすに際し、3種類のアンプを使い分けることができる。ウーファー用、スコーカー用、ツイーター用にそれぞれアンプが必要だからである。

 

ただ、教科書的には、「同じパワーアンプでドライブすべし」とあるようで、私の周りの、そして今回も大変にお世話になっているチャンデバ・マルチアンプ化先達の方々(Myuさん、Cmiyajiさん、K&Kさん)も、ほぼ同じようなパワーアンプで3・4Wayを構成されておられる。

 

伊豆の場合も、これをやることは物理的には可能は可能だ。3Wayが5台あるので、15ch分の「同一」のパワーアンプがあればいいのだが、拙宅にはStormの「PA-16」という、16chのマルチパワーアンプがあるからだ。

 

しかし、天邪鬼な(汗)私はこれを良しとしない(笑)。世の中に<マルチアンプシステム>というのが存在すると知った高校生の頃から、「もし、自分が将来このようなシステムを持てるようになったら、アンプは全部異なるものを使いたい!」と心に決めていたのである(爆)。

 

アンプの比較試聴を一度でもした方ならわかると思うが、「こっちのアンプはボーカルが色っぽくていいんだけど、低音の締りがイマイチ。こっちはシンバルの音が鮮烈なんだけど、女性ボーカルの声が若すぎて嫌。これは低音はゴリゴリ来るんだけど、バイオリンの倍音が…」てな感じで、一つのアンプで、低・中・高音域すべてが自分好みの満点、って難しい。よほどコストをかければ別だろうが。

 

「これらのアンプのいいとこ取りをできたら、比較的ローコストでハイエンドアンプ以上になるかもなあ」とは思っても、パッシブSPではそれは不可能。入力は基本1箇所(まあ、最近はバイアンプもあるが)だからだ。

 

と、偉そうに書いても、現状は、拙宅の改造版Sonetto VIIIは、LowStormPA-16で、MidHighにはSTA-9を繋いでいる。つまり、2種類しか使っていない。Low用に選択したStormは、STA-9のシングル使いとBTLとの比較試聴を経て念入りに選んだので、ここはそこそこ満足している。いわゆるSolidHigh Speed系の、いかにも最新設計デジアン!って感じの音だ。私の好みの低音は、基音はSolidで、倍音(特に下方への)は柔らかい感じのもの。拙宅では、基音はSonetto VIIIのウーファーが担当し、ELAC3台のSWに床や部屋を震わせつつ(笑)倍音・付帯音の柔らかさを出すのを担当させているので、ARTの効果とも相まって、Auroシステムでの計30個のウーファーユニットを同時に駆動させる低域再生の品位にはかなり自信がある(笑)。

 

Midは、今はSTA-9の片チャンネルを使っていて、まあ上を見たらきりがないが、そこそこOK。このSTA-9もデジアンなのだが、カタログ的にはA+D級とか書いてあって、結構熱を持つ。そのせいか、デジアンなのに意外に温かい音を出してくれるので、ボーカルやチェロの再生音は甘い音の好きな私の好みの範疇に収まっている(逆に低域も甘いので、低域用としてはStormに軍配を上げた…)。

 

ただ、実はかつてバイアンプで運用していたときに、Mid-HighSTA-9BTLと「Single使い」(ステレオパワーアンプの片方だけを使うこと)で聴き比べたことがあって(これは確か昔のPhilewebで記事にしたかと)、「迫力を持って音が前に出るBTLVS「繊細で品位のある立体感を表現できるSingle」と両者の一長一短を知っていることから、いつかSTA-9Mid専用にして、BTLSingleをアンプ直結で聴き比べてみたいと思っていた。

 

最後にHighは、現状はSTA-9Mid用の残りの片チャンネルを使っているのだが、パッシブ(バイアンプ)時代には顕在化しなかった不満点が、チャンデバ・マルチアンプ化後は実は気になってきた。

 

それは2つあって、一つは、ちょっと音が強すぎるな、と感じる時があること。もちろん、チャンデバで調整してHighの出力音圧はMidLowと合わせてはあるので、Highの音圧が高いというわけではない。ただ、なんかちょっとエグすぎると感じる時があって、パッシブネットワークを通していたときは比較的Mildに抑えられていたパワーアンプとユニットのそれぞれの素の特性が、直結になったことで現れているからだろう。PopsRockだと(または映画の効果音)、「改造後、ものすごい音になったね!」と言われる理由の一つにこのHighの特性があるのだろうとは思うのだが、若い頃ならともかく(汗)、ピアノやバイオリンに優しく撫でてほしい(笑)ジジイの耳には時に、ちとキツい。今はDirac Liveでf特をいじってすこし誤魔化してはいるが…

 

もう一つの不満点は、ツイーターからの残留音が前より目立つようになっていること。これは高域聴力の落ちた私のようなジジイにはLPでは全く聴こえない程度ではあるのであるが、20歳の息子に指摘された(汗)。ウルサイと(泣)。確かに、ジジイでもツイーターに耳をつけてみると「シー」という音がちゃんと聞こえる。これはMyuさんによるとAVプリの残留音を拾っている可能性が高いとのことだが、実は先に書いたバイアンプ時代、Mid-High用にSingleBTLの比較をしたときに、STA-9自体にやや高域ノイズが乗っていることには気がついていた(故に最終的によりノイズレベルの低いSingleを選択した)。

 

それでもパッシブネットワークを通しているときは、Midより能率が高いHighの出力音圧を抑えるためのアッテネーターを通っているためにそこまで目立ってはいなかったのだが、ダイレクト接続になってアッテネーターレスになると・・・(泣)。

 

実は、「STA-9はチャンデバのHighに使うとちょっとノイズが目立つ」というのは、今回ご助言をいただいた「3人組」のお一人であるCmiyajiさんからも伺っていた。彼のSPJBLのハイエンドをチャンデバ化改造されたものなのだが、その時、JBLを象徴するホーン型ユニット用のパワーアンプ選びの際にSTA-9も試聴されたそうである。いうまでもなく、ホーン型は高能率であることで有名だが、高能率のユニットというのは、ソース機器やパワーアンプの残留ノイズという、低能率ユニットなら拾えない音まで再生してしまうのだ。それまで使っていたアキュフェーズのA級パワーアンプがホーン型ツイーターとダイレクトに接続したらきつい音が出るようになったとのことで、その入れ替え候補として取り寄せたSTA-9は、ノイズレベルが必ずしも低くなかったので、ボツだったそうだ。

 

2.1st Candidate: Nmode  X-PW1-MKIII

 

上記のような不満、あるいは改善点候補は誰でも多少は抱えているものの、何かのきっかけがないとなかなか踏み切れないものだ。今回は、この夏、Nmodeというブランド?から新しい「ボリュームつき」パワーアンプが発売された、というニュースを聞いてから、「やる気」が動き出したのである。

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ご存じの方もおられると思うが、このNmodeというアンプは、元Sharpのエンジニアが立ち上げたブランドで、「1Bitアンプ」というのが技術的なウリである。私がこのアンプのことを意識するようになったのは、もう1年以上前だと思うが、きょやさんのリスニングルームにお邪魔した時から。彼はNmodeFundamentalといった、ガレージメーカー?のアンプがお好きで、それをいくつか聴かせていただいたのである。その時の印象は一言で言えばClean&Solidなのだが、ただしこれは、Taikoとか、TrinnovとかDiatoneといった錚々たる機器で固められたシステムの一部だったので、このCleanさがこのアンプだけのものかどうかは私には分からなかったが。

 

さて、雑誌かネットかでこのパワーアンプのことを知った私は、「もしかすると、これは私が求めるツイーター用のパワーアンプにピッタリでは?」と直感。なんといっても、「1Bit変調?」という言葉は、SACD/DSDを想起させますよね?(仕組みがどの程度共通しているのかは、全くわからないが・・・)。個人的にはPCMのチャッキリした音より、DSDのやわらかみのある音の方が好きなので、ド素人が勝手なイメージで、「アンプの音も丸い高域が楽しめるのでは?」と。

 

しかも、値段が安い。これをMonoとして使って、5台分買ってもハイエンダーの2chのパワーアンプの足元にも及ばないコスト(笑)。マルチWayのマルチアンプで、マルチチャンネルシステム(この3つの用語の違い、理解して読んでくれてますか?=汗)を組んでいる者にとって、アンプを変える場合、今回なら5台分必要になる。2chでパッシブならステレオパワーアンプ一台買えば音が出るでしょうけど、拙宅の場合は5chを鳴らすだけでも、15ch分のパワーアンプが必要なので、某ハイエンダーみたいに1100万円以上するモノーラルアンプで構成するなら・・・私ならポルシェにするわ(笑)

 

ゆえにPriceと、できればSpaceWeightの少なさは結構重要なファクターで、その代わり、今回はツイーター用なので出力ワット数はそこまで重要じゃない(はず、と、素人的には最初は考えた・・・続きは後編で=汗)。

 

ということで、これは条件面では「ドンピシャ」だったし、きょやさんにもご推奨(ただし、この商品ではなく、Nmodeそのものを)いただいたのですが・・・

 

とりあえずまずはお試しでと思って、Amazonで「明日着く」と出ていたので、伊豆に行ったときに思わずポチり(笑)。

 

翌日、早速繋いでみると・・・ナント!

 

「シャー」という盛大なノイズが・・・(汗)

 

こちらはパワーアンプとして使おうと思っているので、ボリュームは最大にしている。この状態で、AVプリの残留ノイズを拾っているようだが、それにしてもひどい。STA-9の比じゃない。Mono4ΩのSPだと26Wの出力とあるけど、ピアニッシモなんかとても聴けたもんじゃないので、やむを得ず気にならないレベルまでボリュームを絞ると、今度はツイーターが音圧不足。

 

「もしかして初期不良?」と思って、販売店に連絡すると、結構まともなオーディオショップだったため、「こちらでチェックするので返送してくれ」と。で、向こうでは「問題なし」とのこと。ただ、先方のテスト環境はパッシブスピーカーにステレオで繋いだものだったので、どうやらツイーターユニットにダイレクトにMonoで繋いでいる当方の方が残留ノイズに敏感な環境らしい。

 

一旦スイッチがはいると、「じゃあ、もう止めた」とは私は思わないタイプ(笑)。そこで、チャンデバ仲間のMyuさんとCmiyajiさんに相談すると、Cmiyajiさんもかつて、前述したように現在私が使っているSTA-9の試聴機を取り寄せたそうですが、やはりダメ(=同意=汗)で、次にご友人の推薦で、SoulnoteA-0を試してみたそうで。すると「はっきりとした差で、残留ノイズが減ったし高域も嫌な音が出なくなったので、採用決定! Auroさんもこれを試してみたら?」とのご助言をいただいた。

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さらにMyuさんの「無帰還アンプというのが面白そうだから、どうせなら上位機種のA-1と2台同時に貸出してもらったら?」とのご提案を受け、今度は「ポチる」というフライングを避けて(汗)、販売店を通じて2台同時に試聴機を送ってもらったのです。

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3.Competition: STA-9, A-0 vs. A-1 for Tweeter

 

ということで、「文化の日」の連休に、客観性(科学性?)を担保するために、私が信頼するご近所のチャンデバ仲間のK&Kさん、Myuさん、Cmyajiさんにも伊豆の拙宅にお集まりいただき、表題の比較試聴を行いました。

 

まず最初に、スマホの簡易騒音計で、3人がお見えになる前の朝の部屋の暗騒音を計測してみました。平均39dBでした。これは東京の深夜の書斎より3dB近く静かです(以前どこかに書いたと思うのですが、伊豆の暗騒音の原因である、トイレ用のコンプレッサーはオフにしました=汗)。

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比較は以下のような手順で行いました。

 

① Sonetto VIII2台だけ使った、LRステレオConfigurationDirac Liveなし。ただし、ユニットの位相を合わせるためのDelayと、音圧を揃えるための出力調整はしている)を使用。Img_0296

② 事前にA-0A-1(どちらもVolumeMax)それぞれをツイーターにつなげて、Pink Noiseを出力させ、LPにおけるツイーターの音圧がデフォルトのSTA-9を使った場合と同じになるように、音圧計で測定の上、AVプリ側の減衰値を決め、PC上で切り替えられるように登録しておいた。

③ つまり、①High: STA-9Mid: STA-9, Low: PA-16、②High: A-0Mid: STA-9, Low: PA-16、③High: A-1Mid: STA-9, Low: PA-16の3つをLRともつなぎ替え、同じボリューム位置で同じソースを聴き比べた。ソースについては、御三方の「決めソフト」をご持参いただいた。

 

まず、音を出す前の残留ノイズは、STA-9A-1>A-0であった。言うまでもなく、どれもNmodeに比べれば「耳をツイーターに近づけなければ聴こえない」レベル(笑)。

 

さて、御三方には入れ代わり立ち代わり、LPに座っていただいて、持参していただいた「決めソフト」を聴いていただいた。感想はニュアンスにズレがあるといけないので詳細には私が代わりに書かない方がいいと思うが、コメントの大意(笑)は:

 

Myuさん: A-1の方が良い。立体感で勝る。

Cmiyajiさん: A-0の方が良い。音の生々しさで勝る。

K&Kさん: ピアノも含め全体のまとまり感はA-1の方が優れていた。一部の女性ヴォーカルではA-0のまったり感に魅力を感じた。

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「一勝一敗一引き分け?」、つまり、完全にEvenである(笑)。ただし、STA-9との比較では、私を含めて4人とも、「音質的に、A-0/1の方が良い」という点では一致した。

 

以下は、私の「決めソフト」による試聴記:

 

・・・・・・・・・・・・・・

ベートーヴェンの「熱情」では、音圧計では同じMax値なのに、A-0が最も「フォルテ」に聴こえる。ピアノはA-0が一番華やか。1000MB&Wっぽい(笑)

 

しっとりしたA-1の味わいも捨てがたい。

・・・・・・・・・・・・・・

 

うーん、玉虫色(爆)。

 

ここで追加的に考えるべきことがある。マルチのSPの音色を決定する場合、実は「それ単独での音の善し悪し」だけでは決められない。2chなら、その「気に入った音」となるアンプなり、SPユニットなりを「左右に揃えるだけ」でいいのだが、13chAuro-3Dに於いては、「上下左右にある、他のSPとの音色の統一性、違和感の少なさ」というものもとても大切な要素なのだ。

 

御三方を交えた実験の際には、単に、ツイーターにどのアンプを使った「2chステレオの音」が一番好きか?を伺っただけであった。つまり、同じツイーターを使っているが異なるパワーアンプ(PA-16)でドライブしている、HLCRやサラウンドハイトなど他のSPと「音色が最も近いものはどれか?」を伺ってはいない。

 

ゆえに御三方が帰ったあと、私がやったことは、Auro-3Dの単一楽器の音源(ピアノ、ハープシコード、男性ボーカル、マリンバ、ハープ、フルート、バイオリンなど)を使い、LにはSTA-9を、CにはA-1を、RにはA-0をそれぞれ繋ぎ、ピンクノイズと音圧計を使って3つのツイーターのLPでの音圧を同一に調整したうえで、これら1台づつと、HLCRを交互に再生し、音の違いを「音色だけに注目して」ひたすら聴き比べてみた。

 

これらHLCRを含む第二層は、すべてStormPA16というマルチパワーアンプでドライブされており、当面、これを変更する予定はないため、いくら気に入ったからといえ、「音色が第二層とかなり異なるアンプ」を第一層用にあてがうわけには行かない。そんなことをしたら、「すべて同じツイーターで構成されている」拙宅のAuroシステムのアドバンテージが無くなってしまう。<高域の音色の部屋全体での統一感>は私が最もこだわっている点のひとつなのだ。これがマルチシステムを「部分的にアップグレード」する際の難しい点であり、2chシステムしか持っていない方はこれには気が付かないであろう。お店で聴いて気に入ったから買って帰れば良い、というものではないのである、マルチの場合は。猫や犬の多頭飼い(笑)と同じで、一部のSPやアンプを入れ替えるなら「先住犬」との<相性>という大問題が必ずある。それを忘れて、単純に<ショップで気に入った犬>を連れ帰ろうものなら(笑)

 

結論的に言うと、HLCRとの音色の親和性はA-0に軍配が上がった。A-0のはつらつとした音色は、PA-16PascalClass Dモジュールの音により近い。A-1はいわゆるアナログ的な深みのある音ではあるが、大人しく、角がなく、これはこれで個人的には好ましいのであるが(汗)、間違いなく全体の音色の統一感は損なわれるだろう(Amator IIIOctaveAuro-3Dシステムから排除したときの論理と同じ)。

 

お米と同じで(笑)、私はパリッとしたのも、柔らかいのもどっちも好きだが、両方混在してるのはイヤだ(笑)。同様に音色は「どちらかに揃っている」ことが私にとっては重要(鈍感な方もいるとは思うが、私は他人のマルチシステムを聴いても、サラウンドやサラウンドハイトの音色の違いにすぐ気が付くタイプ=汗)。ただ、音色よりむしろ少し気になったのが、「遠近感」において、A-0の方がやや劣っていたこと。逆に言えば、A-0の方が「音が前に出てくる」タイプで、Jazzなんかだったらこちらの「押し出し感」の方が好きな方は多いだろう。ただ、私はどちらかというと、「奥行き感」が出てほしいタイプなのだ。

 

少し迷っていたのだが、これはMyuさんやCmiyajiさんがお帰りになったあとにK&Kさんと話をし、また先日お会いした入交さんとお話をしていて、「アンプやSPを選ぶ場合に、<遠近感>の有無は2chなら確かに重要項目だが、しかしAuro-3Dなら、ハード面、ソフト面両面で強烈な<遠近感>がBuilt-inされているので、そこまで気にする必要はないのでは?」ということに気付かされた。今回、貸し出していただいたアンプは2chなので、5chすべてを交換してマルチ音源で試すことはできていなかったことを忘れていたのである。2chによる試聴結果(ふつうのショップでの試聴なら絶対こうなる)だけで、マルチ用のハードを決めるべきではないことを改めて自覚した。私のオーディオライフの本命は、マルチ、なかんずく13chAuro-3Dなのである!!!

 

こうなるとA-0で決まりか?となったのだが、ただ、最大の懸念点は、A-0の出力が10W8Ω)しか無い点。現行のSTA-9120WPA-16200W)なのだが・・・長くなるので、続きは次稿で。

 

2024年5月27日 (月)

Sonetto VIII 5ch 完全チャンデバ化プロジェクト(その7:検聴オフ会編)-そして誰も何も言わなくなった?(笑)

普段は、オフ会の記事というのは、自分がお邪魔した先で「発見したこと」を書くのであって、お招きした場合は、こちらとしては普通は「何の発見もない」のであえて書かないのを常としていたのですが、今回だけは別格(笑)。

 

どう別格かというと、この2月に始めた当初、多くの方から「無謀だ、やめとけ!」と言われた(汗)「Sonetto VIII 5ch 完全チャンデバ化プロジェクト」で、「やる気だけはあっても、知識も経験もない」私のサポートにおいて中核的な役割を担ってくれた、御三方(Myuさん、K&Kさん、Tomyさん)のうち、海外におられるTomyさんを除くお二人への「完成お披露目」であったことに加え、同じ「既製品チャンデバ化仲間」である、Cmiyajiさんもお招きし、さらにさらに、プロのピアニストであられるお連れ合いにも来ていただいたからです。

 

特にこの、「プロのピアニスト」をお迎えするというのは、Auro-3Dの録音エンジニアの入交さんをお迎えした時と同じぐらい、緊張しまして(汗)。ピアノ好きとしては、もし、「この音、全然ピアノに聞こえない!」なんて言われようものなら、もうオーディオ止めるしかないだろうな、という「悲壮な覚悟」で臨んだのです(大汗)。

 

結論から言えば、そのような「ダメ出し」は幸いありませんでした。ここに当日皆さんからいただいた「社交辞令」を書き連ねるのは私の趣味ではないので控えますが(笑)、以下に自分の備忘録として、印象に残ったことをいくつか紹介したいと思います。

 

1.まず、今回の「お披露目」のための<勝負セッティング>ですが(笑)、これは、前回の「再調整編」 で試行錯誤した中の「3番」のパラメーターを全5台に採用し、Dirac Liveのキャリブレーションを行なってARTでの補正をしました。

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記事にも書きましたが、この「3番」はMyuさんの一押しでしたが、私は、チェロやボーカルなどの音の厚みがやや物足りず、Sonusらしくない、と感じていたものです。しかし、その後、Siltechさんのところの「課題曲」に使った 、「Eye in the Sky」をReferenceにしてパラメーターをいじって試してみたところ、この「3番」が最も<空間感>に優れていることがわかりました。

 

ここで、一晩考えたのです(笑)。音質を取るべきか、音場か。そして私が出した結論は、拙宅のSonetto VIII5台は、Auro-3D用なのだから、やはりその最大の特色である、<音場>を優先させるべきだろう、というものでした。この際、<音質>は2chAmator IIIOctaveに任せようと、割り切りました(笑)。

 

その「成果」を今回ご参加の皆さんに感じていただいたソースは、これでした。

 

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私は実は、「マーラーは苦手」でして(汗)、これまでほとんど真面目に聴いたことがありません。もちろん、よそ様のオフ会では結構よく聞かせていただけるので、オフ会後に自宅のシステムと聴き比べるために、手元に幾つかは置いてあります。ただ、どうしても私の駄耳には冗長に感じられ、構築的な、凝縮された魅力に乏しい、というイメージで(ファンの方、すみません。一個人の感想です!)、敬して遠ざけておりました。

 

にもかかわらず今回、これをオフ会メニューの一つに加えたのは、Myuさんがブログで、この曲の名盤として私でも知っているショルティ盤を紹介しておられ、 そこのレス欄で、「うちのAuro-Maticによる再生と聴き比べましょう!」というようなやり取りをさせていただいたからでした。

 

このマイケル・トーマス盤は、SACDマルチなので、これをさらにAuro-Maticにするととても「映える」ことを経験的に知っていますので、これを選びました。試聴に使用したのは、第二部の最後の3パートで、新システムの「空間表現力」がいかんなく発揮されたようです。

 

2.何曲か聴いていただいている途中、K&Kさんに、「これ、ちょっと低域盛りすぎじゃない?」と言われたのですが(汗)、むしろ今までのDirac LiveDefaultのターゲットカーブがピラミッド型すぎると私も感じていて、今回それを修正し、低域を控えめに設定していたのです。その証拠(笑)を以下にお見せしたいと思います。

 

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これは、LCRに対するARTによる補正画面ですが、測定されたf特がかなり下の方まで暴れていなかったので(これはチャンデバによる成果かもしれません)、補正の上限を思い切って250Hz近辺にまで下げました。つまり、ウーファーのLPF値よりかなり下だけを補正させたということです。しかも、最下限まで直線的な補正をしようとするデフォルトのカーブを大幅に修正し、ターゲットカーブを測定値のf特なりの素直なものにしました。

 

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これは、SW3台の測定値とターゲットカーブです。これも同様に、測定値なりのターゲットカーブに修正し、低域をなだらかに落としています(つまり、補正によって全く持ち上げていない)。

 

このように、むしろこれまでのDirac Liveによるデフォルト補正よりかなり低域を「スピーカーなり」にしているのですが、K&Kさんに指摘されるまでも無く、低域は今回、かなりしっかりと出ていたと思います。

 

恐らく、その原因は、アンプをウーファーに直結したことによる、ウーファーの制動力の向上だろうと思っています。言い換えれば、ユニットの性能限界ギリギリまで使うことができているかと。先のクルマのアナロジーで言えば、MTだとレブリミットのレッドゾーンまでエンジンの回転数を上げることができますよね(ATは基本出来ない。エンジン保護のためその前に自動でシフトアップする)。もちろん、これはエンジンブローと紙一重ですが、ギリギリのところを使えば、最も速くクルマを駆動することができるのは、ちょっとドライビングをかじった方ならご存知でしょう。実は今回、SWとDirac Liveを全く使わない、無補正の2chと5chConfigも用意して、皆さんにお聞かせしたしたのですが、「これ、本当にSW使ってないの?」(笑)と真顔で何度も尋ねられたぐらい、これまでのSonetto VIIIでは決して再生することができなかった低域が出ていたのです。

 

3.上記で触れましたが、今回、SWもDirac Liveも使わずに、チャンデバのパラメーターで音圧やユニット別の距離補正をしただけの「無補正」の2chと5chシステムを組んでみたのですが、これが思ったより評判が良く、まあ自分でもなかなかイケてると思いつつも、「ヤバい、これではDirac LiveとSWにこれまでかけてきたコストと時間が・・・」と焦ってしまいました(笑)。

 

流石に、私の耳では、(超)低域の解像度だけは、SW3台を束ねるARTに軍配をあげていますが、無補正の生々しさも捨てがたく、長らく「Dirac Live教」の熱烈な信者だったのに、ちょっと「信仰」が揺らいでいます(笑)。もちろん、それはあくまでも2chや5chまでの世界に限った話であって、13chもあるSPの音圧、Delay、位相を全て手動で合わせることは拙宅のシステムでは絶対に不可能なので、Auro-3D(Matic)を聴く際の、Dirac Liveへの「信仰」笑には、いささかの揺らぎもありません!

 

それにしても、この「無補正の、チャンデバ・マルチアンプ化された」Sonetto VIIIの音は、当日、同じ2ch同士で、Amator IIIと比較試聴していただいたのですが、もはや同じメーカーのSPとは思えないぐらいの<違い>ができてしまいました。当初の心づもりではこの事態だけは避けたかったのですが(汗)、前回の「再調整編」のレス欄でTomyさんと議論させていただいたように、途中で「改造前と同じ音色・音質にするのは原理的に不可能」であると気がつき、最終的には、「Sonetto VIII5台は徹底的にチャンデバらしい音にしよう」と開き直りました(笑)。

 

今回の来客は皆さん、ご自分のシステムがチャンデバ・マルチアンプですので、ある意味「聴き慣れた音」でしょうから、評価は悪くなかったのでしょうが、もし、Sonus大好き派の方が聴いたら、恐らく、泣き崩れる(笑)か怒り出す(汗)と思います・・・まあ、自分的には、むしろ最近影が薄くなっていたAmator IIIのレゾン・デートルが強調される結果となったので、まあ同じ部屋に2セット持つ意味を再確認できたかな、と前向きに受け止めています(笑)。

2024年5月 2日 (木)

Sonetto VIII 5ch 完全チャンデバ化プロジェクト(その6:再調整編)-過ぎたるは猶及ばざるが如し

癪である(笑)。この記事を書くこと自体が(泣)。

 

つい先日、「調整完了」と題した記事を書いた、その舌の根も乾かぬうちに…前回の記事の最後に、「あとは鳴らし込んで」と書いた通り、Auro-3Dの様々なソースで聴き込みを開始して三日。「嫌な音」がするソースが見つかってしまったのです。

 

この「嫌な音」というのは、自分だけの感覚的なものなので、言語化するのが難しいのだが、最初、私はスピーカーが「歪んでいる」のだろうと、ユニットを疑った。詳細は割愛するが、その後Myuさんにご助言を求めて、あれこれ「実験」をするうちに、ユニットのせいではなく、どうやら、私のチャンデバ設定のせいだということが分かってきた。

 

そこで、仕方なく、「振出しに戻る」(泣)。以下は、チャンデバをいじったことの無い人にはほとんど実用性はない内容なのだが、個人的には「Multi-Wayスピーカーそのものの仕組み」というものに対して、ものすごく理解が深まった、と<負け惜しみ>を言っておこう(笑)。

 

GWの初日に、最終?設定の「決め手」となったのは、前回の記事に書いたようにチェロの再生音だった。チェロの胴鳴りをSonetto VIIIが「魅力的に」増幅する設定として選んだのは、下記であった。

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ちなみに、Sonetto VIIIのデフォルトのCOは、270Hz3000Hzである。この値をチャンデバで設定して、24B/octでつなぐというのは、もちろん、改造後の一番最初にやったことであり、クリーンではあるが、恐ろしいほどつまらない音が出た。当然である。既製品は、中高域のユニット二つを「逆極性」にしているのだから。PC上の操作で、この二つのユニットをInvertにすると、「いい音」になることは確認済みだ。

 

しかし、今回、チャンデバ・マルチアンプ化の改造に踏み切った最大の「合理的理由」は、Sonetto VIII3ユニットをすべて「正相接続」にして、Auro-3Dを構成するこれら5台以外の8台の2Wayスピーカー(=すべて正相接続)と極性を合わせたかったからである。ゆえにここは絶対に譲れない。全ユニット正相接続を前提に、如何に魅力的な音を鳴らすSPに仕立てるか。これが今回のプロジェクトの最大の課題であり、「迷走」の出発点である(笑)。

 

先の記事に書いた通り、ボーカルを中心に調整を進め(この段階ではf特も計測した)、今回伊豆に来て、Auro-3Dシステムに組み込んで<最後>(となるはずだった…)の調整に使ったのが、鈴木秀美「バッハ無伴奏チェロ」SACDマルチをAuro-Maticにしたものだった。Auro-3DNativeソフトにもこの有名なチェロの演奏は収録されており、もちろんそれも使ったのだが、昔から一番聴きなれているこのアルバムを最後には使ったのである。

 

朗々と鳴り、伊豆の部屋全体が美しく共鳴しているような感覚を得られていた。

 

満足して、一晩ぐっすり寝て、翌朝から他のソフトを聴き始めた。

 

その中に、私の「決めソフト」の一つである、名倉のマリンバ演奏がある。言うまでもなく、これは私がご指導を受けている、入交英雄氏の作品である。東京の関口教会という、残響音6秒という丹下健三設計のコンクリート造りの尖塔の中で録音されたものだ。

 

マリンバというのは不思議な楽器で、基音が1Khzほどありそうな音階の鍵盤?を叩いているのに、「逆倍音」?なのか、かなりの超低音も付帯してくる。もしかするとこれはマリンバ、というより、関口教会独特の現象かもしれないのだが、この高域と低域が合わさって得も言われぬ波動が生まれ、普段はそれが私の琴線に響くのだが、今回はどうも、琴線に届くどころか、「胸騒ぎ」を招くような、不快な音波が発生しているような感じを受けた。

 

他にもいくつかのAuro-3Dソフトを聴いてみると、もう一つ、「嫌な音」が乗る音源が見つかった。『The Horn in Romanticism』である。

 

高校生の頃、地元名古屋のオーディオショップに入り浸っていたころ、ブルックナーの交響曲が好きだと言ったら、「ソフトドームにホルンは鬼門」ということを店長が言っていたが、確かにSonetto VIIIのツイーターはシルクドームであり、1000Mのようなハードドームや、JBLのようなホーンのツイーターほどには、管楽器は鋭く吠えない(笑)。それは分かっていても弦楽器の美しさにシルクドームを選び続けているのであるが、それにしても、改造後のSonetto VIIIからは耳障りなホルンが聞こえる。何かに共振をして、それが音を汚している感じがした。

 

先にも書いたがユニットの故障ではないとすれば、パッシブネットワークで使っていた時はこんな音は出ていないのだから、これは単純に私のチャンデバ設定のせいである。

 

そこでもう一度オリジナルのパッシブネットワークのCO値を再確認したうえで、私の「チェロ偏愛設定」で思いつく「嫌な音を出す原因」としては以下の2点。

 

  • ウーファーのハイカットを上げ過ぎている?(270500)ただしこれは、ウーファーユニット単体のf特を見る限りでは、「余裕で出せる」帯域のはずだが・・・
  • スコーカーとツイーターのクロスオーバー帯域を重ねている→オリジナルは3000だが、私の「チェロ偏愛設定」(笑)では、スコーカーのハイカットを3500とし、ツイーターのローカットを2500として、25003500の間は両ユニットから100%出力をダブらせていた。f特を見る限りは、この設定の方がフラットになるのである。

 

そこで、「チェロ偏愛設定」を1として、他に、2-4までの3つの設定を新たに作ってみて聴き比べることにした。

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試聴に際しては、チャンデバの設定の違いの音だけに集中するため、Sonetto VIII2台による、LRステレオ再生のセッティングを作り、SW無しのLarge設定、もちろんDirac Liveも無しの完全な「素の状態」とした。マルチソースも再生時には2chDownMixして試聴した。

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まずは問題の、名倉『Bach ParallelsAuro-3D

 

低域は、パッと聴きでは、確かに1の方が2より「ふくよか」で量感がたっぷりあるが、長く聴いているとやや「気持ちが悪くなる」感じの音であることが分かった。2の方が残響音がすっきりとスムースで、「あく」がない感じ。チェロなら1だったのだが、マリンバ(残響音たっぷりの関口教会録音)では、2の方が聴きやすい。

 

高域で、フィナーレに鉄琴(またはトライアングル?)を打ち鳴らす曲がある。ここは2の方が、「金属の硬質感」がはっきりわかる。重なりの多い1だと少し、寝ぼけた音になる。ここでツイーターのCO3500に上げて重なりの無い3にすると、やや硬質感が落ちる。自分の好みは2である。4にすると「木質感」が落ちる。

 

次に、ピアノとボーカルを試したいと思い、Thomas Quasthoff「魔王」p. Argerich: 2ch Stereoを聴き比べた。

 

独唱は、1より2の方が、ドイツ語の子音がはっきり聞こえるし、高音の声に艶がある。4は子音はよく聴こえるのだが、どうも歌い手の「熱」を感じない。

 

ピアノは、1は音が低すぎて華やかさが薄い。2,3の比較では、打鍵時の「強さ」の点で、2が3より勝る。4はあっさりしすぎている。

 

結論的に私が選んだのは、2である。これは、ウーファーのハイカットを350に引き下げ、スコーカーとツイーターの重なりを3000-3500500Hzに減らしたものである。どうやら、このウーファーは中低域までは使わない方がよく、このスコーカーは3000Hzあたりから上が「おいしい」ところで、それ以下は「味が落ちる」ようだ、というのが私の駄耳による印象である。

 

よくよく考えてみると、2の設定って、Sonetto VIIIのオリジナルのCO値である、2703000に限りなく近い・・・天邪鬼な性格(笑)の私は、「せっかくチャンデバ化で<自由に設定できる権利>を持ったのだから、ソナスの職人よりいい音の設定を見つけてやる!」と意気込んで、わざとオリジナル値から大きく外れてみようといろいろと試したのであるが、結局、「プロが決めたCO値は伊達じゃない」という結論に落ち着いたようで、ちょっと癪ではある(笑)。

 

その後、丸一日、2ch状態で、クラシックだけでなく、JazzRockPopsなどを聴き込んでみたが、これまでのところは、「嫌な音」は感じられない。ただ、今回私はCO値の違いによる「音色」の違いFocusして聴き比べをしたが、Myuさんには、次のステップとして、Delay値(=位相)の違いによる「ボーカルの立体感」の違いFocusしてみては、という宿題をいただいた。まだ「完成」までの道のりは長いようである。

 

ただ、ここまでで時間切れ。GW後半は東京で用事があるため、戻らなければならない。取り敢えず、この新たなチャンデバ設定をベースにした、月末の来客に向けたAuro-3D用セッティングのためのDirac Liveのキャリブレーションをしなければ、Auro-3DMatic)をお客さんに聴かせることができない。Auro-3D(Matic)が聴けない伊豆の拙宅なんて、ハンドルネームの名折れである(爆)。これは来週また伊豆に来てやることにしよう。

 

最後に、先達のMyuさんから頂いた「金言」を紹介して締めたい。

 

<自分で調整できて「見え過ぎて困る」のがマルチアンプ方式なのです()

2024年4月29日 (月)

Sonetto VIII 5ch 完全チャンデバ化プロジェクト(その5:調整完了編)-Auro-3Dシステムの構築

GW前半、ここ伊豆における「当面」最後の仕上げをしました。

 

今回、3月末にボーカルを中心にチャンデバを調整して作った音を再確認し、それを再修正するとともに、その設定を基にDirac Liveのキャリブレーションを行って、Auro-3Dシステムを再構築しました。

 

まあ、こう書くと簡単そうなんですが(汗)、様々な問題が。

 

まず、実際に約1か月ぶりに聴いてみると、「どうもイメージが違う…」。これ、チャンデバの先達のMyuさんには聞いていたのですが、「チャンデバ調整あるある」の一つだそうで、つまり、「前に気に入った<はずの>設定の音が、別の日に聴くとどうも気に入らない」。これは聴き手の体調やその時の気分が一定ではないことと、もしかすると、気候の変化(気温や湿度など)も関係しているかもしれないとのことで、これすなわち「音を出すたびに調整をいじりたくなる・・・」(しかも、困ったことに、普通のオーディオ機器と異なり、チャンデバはいじれる部分がたくさんあり、しかも、超微細な調整が可能)という、「沼」または「無間地獄(極楽?)」と呼ばれる状態だそうです(笑)。

 

もう一つ、今回、私を悩ませたのが、「ソースによって、好ましい設定が異なってくる」という問題。先達によると、一般的には「ボーカル」を使って調整するのがよいとされているようです。これは人間は人間の声を一番聴きなれている、ということからだと思います。人間の声の基音は男性が500Hz、女性が1000Hzと言われるそうで(言うまでもなく、個人差アリ)、この辺りの帯域は、2Wayでも3Wayでもウーファーとスコーカーのクロスオーバー値とスロープ値の設定次第で大きくf特上も変化しますし、聴感上の変化も大きいところです。ゆえに、誰でも自分自身の<かくあるべし>を持っているので「違和感」に気づきやすいですし、個人の「好み」の音色もはっきりでやすい帯域だと思います。

 

しかーし、本当に「ボーカルだけ」で調整してしまっていいのか? 私が伊豆のAuroシステムで聴くソースは、実はボーカルものは少なく(特にAuro-3DNativeソフトにはボーカルものは少ない)、敢えて好きな楽器を挙げれば、オルガン、チェロ、ピアノなんです。このうち、オルガン再生のキモは(超)低音なので、これはチャンデバ設定でどうこうより、はっきり言ってSWの能力とARTが何とかしてくれるので、ARTをかます前の素の状態でオルガンを聴いてもダメダメ過ぎてReference音源にはなりえません(汗)。

 

しかも前回は、改造版Sonetto VIIIの<5だけによる5chサラウンド再生を聴きながら調整>をしました。しかし言うまでもなく、ここ伊豆ではSonetto VIIIではAuro-3Dがメインで、5chソースもほぼAuro-Maticでしか聴きません(2chAmator III)。

 

ということで、最終段階ではより伊豆での使用実態に近い状態で、自分の聴感で追い込むことにしました。チャンデバ化した5台を組み込んだAuro-3D13chシステムをConfigureし(ただし、Dirac Liveのキャリブレーションは無しの「素」の状態)、チェロやピアノソロのAuro-3D音源を13chで再生しながら、5台のチャンデバ値をすべて同時に変更して比較試聴(位相やDelayなどは無茶苦茶なため、音場・音像は無視して、音色だけに集中)を繰り返しました。

 

試行錯誤のプロセスは割愛しますが、ここで困ったのが前述した「ソースにより最適な設定値が異なる(ような気がする)」という点。チェロは私はふくよかな胴鳴りが欲しいタイプで、この胴鳴りとは共鳴現象ですが、現代のハイエンドSPは自らの「箱鳴り」は極力抑えて、ソースに収録されている「胴鳴り」の音だけを「正しく」(笑)再生するのがトレンドですよね。でも私は、チェロに関しては「箱鳴り」も動員して<胴鳴りをさらに盛ってくれる>SPの方が断然好きなんです!ソナスとかハーベスが好きな人って、みんなコッチ系ですよね?(笑)。

 

これがCO値やスロープで微妙に変わるんですよ…。で、最後、3つほどに絞ってから、もう一つの好きな楽器であるピアノを再生してみました。私はピアノの音は完全に高音フェチで(笑)、もう何度も書いてますが、<ちょんまげ>君の音には麻薬的な魅力を感じています(デザインが嫌なだけ)。恐らく、私の好きなピアノの高音とは、基音が3Khz前後の音で、あとはその倍音の再現性(というか盛り付け・・・)で好みの音かどうかが変わるんだろうと思っています。

 

ところが、どうやらチェロの低音とピアノの高音は「二律背反」的な関係にあるようで・・・(泣)。こっちを立てればあっちが立たず(オーディオマニアの皆さんはよくご存じと思いますが、なぜか?低域と高域の再生音質・音色は相互作用が働くんですよね…)。両方ベスト、という組み合わせは、少なくとも残念ながら今回は見つけることができませんでした。

 

さてここで迫られる選択は、1.両方ほどほどに鳴る設定2.ピアノの高域はとてもいいが、チェロはイマイチな設定3.チェロはとてもいいが、ピアノの高域はイマイチ(誤解のないように付言しておきますが=汗、先に書いたように、チャンデバ化したSPに共通する、<ピアノの再生音の透明感>はいささかも失われてはおりません。イマイチと言っても単に「相対的な」感覚です)な設定-のいずれか、になります。もちろん、これらの設定をすべてPCに保持して、都度読み出すという芸当がStormはできますが、これはさすがに面倒だし、そもそも、ブラームスのソナタのように、チェロとピアノ両方入っている曲って結構多い(爆)。

 

ということで今回、私が選んだのは3の設定。ピアノは東京の書斎の1000Mで聴くからいいや(チト遠いけど=笑)、ということで。そもそも、ソナスを選んだ時点で、「弦楽器を耽美的に聴きたい」からこれにしているわけですから、初志貫徹、というところです(笑)。

P1P1

これで、ユニット別のDelay、音圧、CO値とスロープなどのチャンデバ設定はいったんケリをつけました。前回の「宣言」通り、今回は全く測定はせずに、自分の耳だけを頼りに良し悪しを選びましたが、2ch Stereoならともかく、Auro-3Dの場合は最後にDirac Liveを通さないと13.3chの総合的な位相・音圧・f特はとても制御できませんので、この過程でDirac Liveが各SPのf特他の「測定」をしてくれます。

 

これが、上記チャンデバ設定後の、Sonetto VIIIRチャンネルの素特性です。

PP2

 

自分でいうのも何ですが(笑)、なかなかですよね?(これは「先達」に伺ったのですが、「キレイなf特だからといって、必ずしもいい音ではないが、<いい音>のf特は必ずキレイである」という法則?があるそうです) 以前、KKフィルターを介して無理やり3ユニットを正相接続していた時は、300Hz前後に大きなゆるやかな谷(というか盆地?)があったのですが、チャンデバ化によってパッシブネットワークをすっ飛ばしたらこの通り、かなりフラットになりました。また、2500Hz付近に小さな谷がありますが、これはCO値やスロープ値を変えるとここをフラットにできることは実験済みなのですが、私の耳には、どうしてもここに穴?がある方が活き活きとした音に聴こえるので、このf特を見せつけられても、「聴感優先」はブレません(笑)。

 

この「素特性」に対してDirac Liveが補正をかけるわけですが、今回はSonetto VIII5台の中高域に関しては「自分で作った」音に自信がある(爆)ので、これまで1Khz以下を補正対象としていたのを、今回は500Hz以下にしてみました。

PP3

500Hz以下もデフォルトでは20Hz付近までフラットにする補正を推奨して来るのですが、今回の一連の改造・チャンデバ使いこなしで勉強したことの一つである、ユニット特性の両エンドを無理に伸ばすと歪が増えるということを考慮に入れて、フラット化するのは50Hzぐらいまでとし、それ以下はユニット特性なりに落とすTarget Curveとしました。

PP4

50Hz以下は、拙宅にはそこそこ高品質で強力なSW3台入っていますので、それに任せることとし、Sonetto VIIIを含むすべてのSPSmall設定にしました。するとここにDLBCARTが介入してCO値並びにSWLPFとウーファーのHPFやスロープを調整するので、事実上はSonetto VIIIは「4Way」と見なすことが出来ましょう。

 

他のSPf特補正は従来通り1KHz以下としつつも、Low-Endの補正はユニットなりに落として無理をさせないカーブに設定しました。

PFh

(↑フロントハイト群)

Back_20240429113901  

(↑サラウンドバック群)

Top

(↑トップ群)

Sw_20240429113901 

(↑SW群)

 

さて、これらの「合成音」としてのAuro-3D(Matic)やいかに。

 

連休前半最終日(といっても、私は10連休なのだが=笑)の今日、朝から一日中、様々な音源を聴きましたが、チャンデバ・マルチアンプ駆動に今回のDirac Liveの設定変更で低域をLeanにした(Defaultはかなりピラミッドバランス)ことと相まって、相当「筋肉質」なSonusになりました…ロココ調の服が似合うエレガントなアイドルが、一枚脱ぐとアスリート体形って感じ???

 

まあ、正しく「オーディオ的に」言えば、定位感・分解能が向上し、パワーアンプによる制動力が増して一音一音が力強くなってます、主観的には。ここで具体的な曲名や細部の印象を書くのは「眉唾」ものでしょうから(汗)控えます。今後いらしていただけるオフ会仲間に予断を与えたくはないので(笑)。

 

5月の下旬に「チャンデバ仲間」の来訪を予定しておりますので、あとは鳴らし込んでエージング(要るのか?=笑)を進めるのみです!

2024年3月24日 (日)

Sonetto VIII 5ch 完全チャンデバ化プロジェクト(その4:調整編)


先の「改造完了編」UPしてから約二週間が経ちました。私は幸い長い春休みがある仕事なので、最近はほとんど仕事そっちのけで(笑)春休みを終えるまでになんとか「聴けるレベル」に仕上げたいと思い、日夜努力をしております(汗)。

 

今回は、出音面で「ある程度の成果」が上がったので、その<途中報告>なのですが、普通はそれに続く<調整完成編>が期待されるところですが、残念ながらそれは恐らく、皆さんが待てど暮らせど、UPされないであろうとご覚悟ください(笑)。例によって、3師匠(Myuさん、KKさん、Tomyさん)の薫陶を受けながらここ2週間ほど(この間、Tomyさんには東京で1度直接お会いし、また2Zoomでご指導を受け、KKさんには東京と伊豆で2度お会いしたうちの1度は伊豆に「一泊合宿」で来ていただき、ご近所のMyuさんに至ってはもう何度お越しいただいたか…感謝、感謝、感謝!)、チャンデバ調整に関わるテクニックに留まらず、その背後にある思想・理論までご教示を受け(理解していない点も多いダメ学生ですが=汗)、マルチアンプ駆動方式の調整の<深淵>の一端を理解するようになったがゆえの結論です。これは絶対に「完成=終わり」のない世界です(大汗)。私は「スピーカーメーカーのエンジニアが、よく<完成品>として思い切ってSPを世に出せるなあ。発売日が決まっていなかったら、永遠に<調整>しつづけたいだろうな」と理解するに至りました(笑)。例えばアンプなら、ある程度開発上の目標値があって(某メーカーのダンピングファクターのように=笑)、それを<技術的に>クリアしたらGOサインが出ると思うのですが、SPの調整というのはDataで表現のできない「音色」という感性値(f特をまっすぐきれいにする、というのが目標にならない=それが音が良いとは限らないため)があり、そしてそれはチャンデバの設定を変えるとコロコロ変わるという…だからどこのスピーカーメーカーにも、最終的に「音色」を左右する設定値を決める責任者(Sound Master?)は「一人だけ」なんですね(合議なら、絶対に意見の一致はみない!)。

 

実は、以下に紹介するほとんどの内容は、はっきり言って、「チャンデバって何それ?」とか、「マルチアンプ駆動とバイアンプ駆動ってどう違うの?」というレベル(実はコレ、ついこの前までのワタシ自身です=汗)の方にとっては、面白くも何ともありません。ただ、知ったかぶりをして言えば、「この世界に足を踏み入れて、初めて<スピーカーの仕組み>や<スピーカーの制作者の意図>を理解できるようになる」ということを知りました。KKさんに「チャンデバの解説書は理系的な内容のものばかりなので、Auroさんのような文系の方で取り組まれ、それを書く能力がある方の記録は貴重ですから、是非ブログに記事にされて残しておいた方がいい」といわれました。ここから先は、もし、あなたが、<スピーカーの仕組み>や<スピーカーの制作者の意図>を理解したいと少しでもお考えであれば、マルチアンプ駆動に取り組むかどうかに関わらず、多少は興味深い内容を含んでいると思います。以下、4章構成で、超長文です。Are you ready?(笑)

 

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第一章 KKさんによる基本的な物理特性を整える設定と調整

 

細かい音色の調整に入る前に、「基本的な物理特性」を調整するところから、マルチアンプ化は入る。Sonetto VIIIは3Wayなので、これは3人でやるバトンリレーのようなもの。しかもこの3人は、体格も年齢も性別も(?)、もちろん足の速さも走り方も全然違う。これを何の練習もルール決めもせずに走らせても、途中でバトンを落としたり、フライングしたりして、すぐに「失格」になってしまうのは明らかである。

 

ゆえにまず最初に行うことは、この3人の性格・能力・体格などを測定することなのだ。

 

さすがにそのための方法論をここに詳述するのは割愛するが、これはMyuさんに厳しく(笑)ご指導を受けた。この測定に於いて最も大切なのは、Dataの比較の対称性を担保するために、「常に一定の条件で測定する」ということなのである。その再現性を確保するためのRigidさは、驚くべきもので、「工学部出身の人って、こういう頭の構造しているんだな…」と、社会学部出身のアバウトな頭(汗)の私は感心するばかりであった。

 

今回のマルチアンプ化対象SP5台あるので、そのすべてのユニットの特性を測定したのだが(合計15Data)、そのうちの1セットのものだけを以下に紹介する(ユニット別の誤差を見るため最初は軸上1Mで測定したが、それは割愛し、これはチャンデバ調整用にLPにおいて測定したもの)。

 

【ウーファー】

1_20240324140901

【スコーカ―】

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【ツイーター】

3_20240324141101

さて、この三者三様の走者のバトンをどうつないでスムーズにリレーを完成させるか! 

 

ここでまず最初にやらなければならないことは、この3人のパワーが異なっているので、その足並みを揃えなければならない、ということである。つまり、この3ユニットの音圧をある程度揃えて、並べなければならない

 

そのために、これらの測定結果から、最も音圧レベルの低いウーファーを基準とした「差」を算出し、それをチャンデバの設定画面に反映させる。

 

MyuさんとKKさんにご教示いただき、何とかユニット別の音圧差を算出して、設定画面に入力した。

 

次にやるべきことは、各ユニットとLPとの距離の調整である。これ、普通の人には恐らく意味不明だと思われる(笑)。普通のオーディオファイルは「スピーカーとLPの距離の調整」なら当然やっているだろう。人によってはミリ単位で。しかし、そのスピーカーがフルレンジでない限り、つまり、二つ以上のSPユニットで構成されている場合、そのユニットが完全に同一平面にあるわけではないのをご存じだろうか。

 

この写真は、今回対象となっているSonetto VIIIである。これをよく見てほしい。上からツイーター、スコーカー、ウーファーの順に並んでいる(実際はこのウーファーはさらに下に二つ同じものがある)。同じバッフル面に取り付けられているが、実は各ユニットの音の発振ポイントがズレているのだ。一番上はドーム型なので、その中心を発振ポイントと見なせるのだが、これはかなり前に出ている。スコーカーは真ん中のボイスコイル部分を発振ポイントと見なすのでこれは逆にかなり奥に引っ込んでいる。その下のウーファーも同様である。

Img_0124

さらに、この「LPから3ユニットへの距離」というのは、正確に言えば、「耳の位置から各ユニットへの距離」なのである。耳の位置は、高さが大体ツイーターとスコーカの間にあり、スピーカー本体との距離は約2.7M離れている。つまり、これら3ユニットと「耳」は<三角形>を形成しているわけだ。ゆえに仮に同じ面にあったとしても、3ユニットへの耳からの距離は微妙に異なることは中学の時に習った三角関数から明らかである。

 

この距離をそれぞれ正確に測定してチャンデバ設定画面に入力しないと、LPにおける、高音、中音、低音の到達時間が微妙にずれるのである。これはすなわち音の「にじみ」につながる。TV映像でいうところの「ゴースト現象」である。一般にはタイムアライメントを揃えるというが、これをすることで、LP(=耳)における位相も揃えやすくなるのだ(ただし、位相はクロスオーバーでも変動する)。

 

一般のメーカー製のSPでここまでユニット別の距離調整ができる仕組みになっているものは、私の知る限りでは、グランドスラム邸やX1おやじ邸にある、Wilsonのハイエンドクラスのものしかない(K&Kさんはご自分で改造されたが!)。あれはスコーカーやツイーターなどが個別に動かせるようになっており、マニュアルにはLPとの距離に応じて、適切な位置に動かすための「距離とパラメーターの対照表」があるそうだ!(あのスピーカー、とても優美な音を出すのに、ガンダムチックなデザインが個人的には残念だったのだが、今回、初めてWilsonのあのデザインの必然性が理解できたのである)

 

失礼ながらWilsonのハイエンドモデル以外の吊るしの2Way以上のSPをお使いの方で、Dirac Liveのような補正ソフトを使っておられないか、または小生のようにマルチアンプ化にデジタルチャンデバをかまして改造した人以外の方は(K&Kさんのように自力で物理的に改造した人は別!)、このユニットの発振源に凹凸があることによる、タイムアライメントや位相の狂いからは逃れられない。ほとんどの方はこの違いによる出音の違いに無自覚なのである(やればその「違い」に気が付くのだが…)。

 

タイムアライメントや位相の調整はすでに何度も紹介している「Dirac Live」の得意分野ではあるが、ソフトに頼る前にできるだけ物理的に調整した方が「Dirac Live」による補正の精度も上がるので、「ここで手を抜くな!」(笑)、というのは、3師匠の一致した意見であった。

 

問題はこれをどうやって測定するか、である。ここでTomyさんが教えてくれたのが、今回紹介していただいた測定ソフトであるREWには、Referenceスピーカーと対象ユニットとの距離差を算出する機能がある、ということ。この仕組みを使って、実際にはKKさんが紙と鉛筆で(笑)、測定値から計算をしてくれ、5台のSPユニットそれぞれ(合計15Units)へのLP(耳)からの距離の差を算出することができ、それを設定画面に入力した。

 

さて、次に行う必要があるのは、クロスオーバー(CO)とスロープの設定である。

 

CO値というのは、つまり、「どこで」バトンを次の選手に渡すか、の「位置」である。そして、スロープ値というのは、バトンを渡した後にどのように減速するのか、また次走者がどの程度手前からバトンを受け取るまでに走らなければならないか、を決めることに似ている。

 

このCO値は、前走者が息切れしてスピードが落ちる前の地点に決定すべきだし、次走者が十分にスピードに乗った地点でもなければならない。スロープ値はバトンがスムースに渡ることと同時に、前走者と次走者がバトンを渡す際にぶつからないような助走距離に決めなければならない。

 

これらを決めるには、先に添付した3ユニットのf特カーブを「正しく」解析する能力と経験が必要になるため、ここでヘタレなワタシ(汗)は、日立のスピーカーを改造してチャンデバシステムを実践しておられる、3師匠のうちのKKさんをお招きした。

 

今回は幸い、パウロ・テッツェンとかいうソナスのSound Masterが設定したCO値(270Hz&3000Hz)が公表されているので、まずはそれを使い、スロープ値は正相接続では一般的な24dB/octで始めてみた(距離および音圧は上述した方法で測定したパラメーターを入力し、今回の一連の実験では固定値とした)

4_20240324141601

 

そのLPにおける(以下同様)f特が以下である(Basicと命名)。

5_20240324141601

50HzDipは定在波で、100Hz200HzにおけるDipはその倍音部分である。それを無視しても、350Hzおよび2.5KH付近のDipが気になる。肝心の出音の方は(私の役割はこれだけ!=爆)、このf特で見る以上にかなりのハイ上がりで、よく言えばB&Wみたい、悪く言えばソナスとは似ても似つかない(汗)、解像度バリバリのハイレゾ感満載の音で、これはもう若くはないワタシの耳にはキツイ。

 

その後、変遷の詳細は割愛するが、TomyさんおよびMyuさんによるアドバイスを取り入れ、下記のようなパラメーターにしてみた。

 

6_20240324141701

Midはそのままで、LowHighのクロスオーバー値を動かしてMidの領域とOverlapさせてみたのである。

 

そのf特は以下(Overlap 1と命名)

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うーん、かなり美しい!LPにおける定在波の影響を除けば、物理特性的にはプロレベルでは?=自画自賛!(一連のf特のグラフはすべてスムージング1/6)。スタート時で指摘した、350Hzおよび2.5KH付近のDipはかなり改善されている。実際の出音も、高域の刺々しさが和らぎ、ちょっと「ソナスの音が戻ってきた」(笑)。バイオリンの倍音の柔らかい美しい響きなどは残っており、KKさんに言わせると「解像度の高い、ウルトラモダンソナス」である!

 

取り敢えず、二日間に渡った作業の最後に、このパラメーターを5台すべてに適用したうえで、Dirac Liveを走らせてみた。

 

その音は今回はKKさんから頂いた感想メールの一部を転載することにする。

 

「空間の解像度が上がって各楽器の音がすごくはっきり聞こえます。エリック・クラプトンのアンプラグドのライブから Tears in Heaven Layla を聴きましたがギターのピッキングの音が鮮明でしたしLayla で左後方のピアノの奥行き感空間表現がとても気持ちよかったです。それとCredo のバスドラムのトレモロのくっきり感にビックリしました。サラ・オットのスキャンダルの床踏み鳴らし音もいい感じでした。」

 

KKさんからはどうやら「合格」がいただけたようである。しかし、ここで終わらないのが、チャンデバ道の「泥沼」というものであった(汗)。

 

個人的には「もう少しだけ、女性ボーカルが年増になって、色気を増して欲しい」と思っていたので、彼がお帰りになった後、さらに以下のような作業を継続した。

 

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第2章 自身による好みの音色の調整

 

方法論的には、f特がこれまでで最もフラットになった、(Overlap1=上記設定)をベースにして、f特では表現できない「感性的」な側面を重視するため、f特は測定せず(自らの<印象>を損なう=データを見て心証を変更してしまう可能性があるため)、自らの聴感の「好み」だけを信じて進める。いくつかの比較試聴をして、一度の実験に於いて最終的に気に入ったものだけ、f特などの測定をすることとした。

 

具体的には以下のような変更を加えて、試聴を繰り返した。→試聴曲「バッハ 無伴奏チェロ」2chステレオ版を使い、LR2台のみのパラメーター(COとスロープのみ。DelayLevelは固定)を変更していく。

 

①変更点:Highの低域再生負担を減らすため、HPFを上げた。それに伴い、MidLPFも上げた。(Overlap1-1

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→大きな変化はないが、ややチェロの高音部の元気さが減退した印象

 

②Midの特性がおわん型であることから、①に対してMidの両端に急峻なスロープをかけてみた。(1-1-1

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→やや腰高な音色になった。もう少し「思索的な深み」が欲しい。

 

 

 

③ ②に対し、スロープを元に戻したうえで、LowLPFを上げてみた(ウーファーユニットの特性がかなりフルレンジ型であるため)。それに伴い、MidHPFも上げた。(1-1-2)

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→腰高感は解消され、チェロらしい深みがでてきた。低域が充実したためか、①での懸念であった高音部の活気も出ている。

←LowのLPFを上げるのは良い効果があるようだ!

 

④ ③のCO値のまま、LowLPFHighHPFを急峻にしてみた。(1-1-3)

Highをいじったこともあり、ここで試聴曲を「シューベルト、菩提樹」(男性ボーカル)に変更。

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③に比して、ボーカルの勢いが弱い。声の艶がやや失われた。

 

 

⑤ ④からLowだけ、スロープを戻してみた。(1-1-4)

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→ボーカルの勢いが戻り、中低域が充実したためか、ハイトーンのボーカル部分に③の1-1-2より艶も出た。

 

⑥ ⑤に対しLowLPFをオリジナルに戻したうえで、スロープを緩やかにした。(1-1-5)

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→ボーカルが若くなりすぎる。重み、深みが失われた。

 

 

⑦ ⑥に対し、Highのスロープを元に戻してみた(1-1-6)

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→ボーカルがややあいまいになる印象が出た。⑥の方が人間の声の実体感がある

 

ここまでの設定の中で最も気に入った⑤(1-1-4)の設定で、チェロを聴く。勢いも深みもあってなかなか良い感じ。今回の出発点の(Overlap1)と改めて聴き比べて、チェロは重心がこちらの方が低く、好み。「菩提樹」はこちらの方が声に艶があり、色気を感じる。好み。

 

→総括すると、どうもLowとMidの間の部分を調整すると、中高域も含めた全体の音色に与える変化が大きいようだ。

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ここで、(1-1-4)f特を測定して、スタート地点の(Overlap 1=オレンジ)と比較すると、かなり右下がりになっていた(紫)。中低域はともかく、高域はほとんど同条件のはずなのに、このような変化が出るのは不思議だ!

最後の仕上げ(?)として、この1-1-4に対し、Dirac LiveARTを適用(f特補正は1Khz以下)してみたのが、以下。

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やや右下がりのf特で、低域のDipARTが低減してくれているのがはっきりと分かる。

 

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3章 Myuさんによる検聴

 

前記のTryErrorを重ねた後の段階で、SP自作&チャンデバの大家である、ご近所のMyu師匠をお招きして、「検聴」をお願いした。彼は2ch派ではあるが、チャンデバ歴はもう何十年(?)で、SP自作仲間(すべてマルチアンプ駆動の方々)と普段からチャンデバ設定に関しては切磋琢磨をしておられる。しかも私と同じデジタルチャンデバの使い手である(KKさんはアナログチャンデバをお使いなので、そこまで細かい設定の変更・試行錯誤はしておられない)。私の周りでは確実にデジタルチャンデバいじりの経験値が最も高い方なのである。

 

さて、最初から今回の目的はお伝えしてあったので、彼も心得ておられ、「必殺の検聴ソース」ご持参でお見えになった。彼は2ch派なのですべてStereo曲。同じ設定にしたLRで、SWを使わないLarge設定を用意した。

 

「設定上の説明はあとで伺いますので、何も言わずに、Auroさんがいいと思ったセッティングをいくつか聴かせてください」

 

そこで、ご持参のソフトに対し、こちらが比較してもらいたいセッティングを番号化して聴いていただいた。それは以下のとおりである(もちろん、彼には事前には知らせていない)。

 

①Overlap1、②.Basic、③.1-1-4、④.1-1-4Dirac Live ART(1Khz以下のみ補正)

 

チャンデバの音色の追い込みはボーカルで行うのが普通だということで、使用ソースはすべてボーカルであった。ブラインドテストということで、LPに座られて、真剣そのもの(笑)。

 

第一回戦の曲は、白鳥英美子さんの「さくら」。4つのセッティングに対し、同じパートを何度も繰り返し再生する。

 

私が「一つだけ落としてください」というと、「では2番を」。

 

次の準決勝曲は、幸田浩子さんの「Ave Maria」。同様にここで脱落したのが、「3番」。

 

そしていよいよ決勝戦。この段階でMyuさんは、「1番と4番は優劣がつかない…」とこぼしておられた。

 

勝負曲は、Stingの「Practical Arrangement」。初めて、男性ボーカルである。ここまでの試聴では、同じパートを何度も何度も繰り返し、じっくり聴いてから「落伍者」を慎重に選んでおられたMyuさんであったが、この決勝戦はあっという間にケリがついた(笑)。

 

1番のセッティングでは、Stingのボーカルと、DuetJo Lawryさんのフレーズが終わるまで聴いておられたのだが、4番のセッティングにして、前奏に続いてStingのボーカルが始まった瞬間に、「これが優勝です!」と(笑)。

 

「女性ボーカルでは1番と4番の差が分からなかったが、男性ボーカルは4番が<音の焦点>が合っていることが一瞬にして分かったので」

 

その後、彼のお好きなAdeleを流しながらDiscussionをしたのだが、この<音の焦点>があった状態というのは、ボーカルに於いては「口の輪郭がはっきりし、声が力強くなる」状態だという。実際に駄耳でも聴き比べてみたが、確かに4番の方が声の実体感というか生々しさが勝っていた。Myuさんによると、この<音の焦点>は、システム(特にSP)のグレードによっては合わせることが不可能なレベルのものもあるそうだが、<音の焦点>を合わせることのできるものであれば、物理的なSPの位置を追い込むことで普通は実現するものだという。角度や位置をミリ単位で行うものだそうだ(汗)。

 

拙宅の場合は、来られた方は皆さん唖然とされるように(汗)、SPの下にキャスターが付いていて日ごろからゴロゴロ動かしている(爆)。一応、測定でLPと正三角形になる位置にマーキングはしてはいるものの、私が東京に戻っている間に、タイマーで動くルンバ君がぶつかって微妙にずれていることがよくある(笑)。つまり「ミリ単位の調整」なんて、全くしてない(汗)。

 

女性ボーカルではどっちもどっちだったようだが、それはどちらも<音の焦点>の合い具合に差が無かったということらしい。ところが男性ボーカルにしたとたん、4番は焦点がぴったり合っていることに気が付いたという。

 

これはどういうことか?

 

1番と4番は微妙なパラメーターの違いはあるものの、私に言わせればそれは微々たるもので(恐らく私には聴き分けられない)、最大の違いはDirac Live ARTの有無である。今回の補正は1Khz以下で、しかもART150Hz以下にしか作用しない。だが恐らく、これが女性ボーカルに比して音域が低い男性ボーカルで、その有無による「威力」の差が出たのでは、というのが二人の結論となった(言うまでもなく、150Hz以下のDipが改善されれば、その倍音成分もすべて改善されるため、その影響は中音域にまで及ぶ)。

 

実はMyuさんは拙宅に何度もこれまで来ていただいているが、基本的には「Dirac Live懐疑派」(笑)である。「Dirac Liveが無い方が音の鮮度が高い」と言われる。そのMyuさんが、ブラインド試聴でDirac Liveアリに軍配を上げたのは、Dirac Live派の私としては内心嬉しかった(笑)。私のシステムは13chによる音楽再生がメインなので、Dirac Live(音場補正)抜きでは調整しきれるはずがないため、ある意味やむを得ず(?)Dirac Live派なのだが、Pure 2ch派のMyuさんが今回2chにだけ適用したDirac Live ART(ただし、音が出ているのはLRだけであるが、ARTの動作原理的に、他の11台+SW3台が反射波除去のために作動していたことは指摘しておきたい)による音をブラインド試聴で高く評価されたという事実は重い(笑=ちなみに東京の書斎では2chシステムにもDirac  Liveを適用している。先日、TomyさんとKKさんも聴かれたばかりで、往年の1000Mが、悪条件の中でそこそこの音を出していることを評価していただいた)。

 

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4章 今後の課題

 

今回のMyuさんによる検聴は、あくまでも改造を終えた2台のSonetto VIIIだけによる、2chシステムStereo再生によるものである。私がもし、Stereo音源再生Onlyの人間なら、ここまでで十分、万々歳である。しかし、言うまでもなく、前述の通り、拙宅のメインシステムはAuro-3Dである。この13chのマルチチャンネルシステムに於いて、今回改造しているSonetto VIIIはそのうちの5chを占めるに過ぎない。もちろん、第一層のLCRSLRであるから、他のチャンネルに比してAuro-3D再生に於ける音質・音像・音場表現の中の重要度が高いことは自明ではあるが、しかしこの5台のSPだけが他とは比較にならないレベルの高みに登ってしまったとしたら(まだそれほどではないかもしれないが)、Totalとしては手放しに喜べることではない。映画のようなチャンネル間の音のつながりがそれほど重要ではないコンテンツならともかく、私はこの13台を「音楽再生」に使いたいのだ。音楽再生では、恐らく主役は今回の5台ではあるが、ホール感を醸し出す反射音の再生を担当する他のスピーカーとあまりにも音色が異なって、前から聴こえるホルンの余韻が、後ろや天井でバスーンに変わったり、サックスになってしまってはマズいのである。

 

拙宅では以前、Amator IIIOctaveのセットを、Auro-3Dのサラウンドバックとして組み込んでいたのだが、曲によってはどうも「そこから音が聞こえてしまう」感じがあった。つまり音色が微妙に異なるので、スピーカーの存在が分かってしまうのである。Auro-3Dの醍醐味の一部は、「スピーカーが消えて空間が鳴る」ことにあるので、これでは興ざめなのである。このため、私は拙宅で最もコスパの悪い(=要するに高い=汗)このコンビを、Auro-3Dシステムから外したのである(今は寝る前に聴く2ch専用として余生を送っている=笑)。

 

この二の舞は避けなければならない。今回、KKさんと一緒に作ったセッティングを、失礼ながら若干自分好みに修正したのは、Auro-3Dシステムにこの5台を組み込むことを考えてのことだったのである。

 

いうまでもなく、その後、この「1-1-4 ARTセッティング」をSonetto VIII5台に適用したものをAuro-3Dシステムに組み込んで、Auro-3DNativeソースや5chソースのAuro-Maticを聴き続けている。まだ完成して1,2日で、それほど時間を割けていないので、自分の気になるすべてのソースを一通り聴いたわけではないが、今のところ、あまりその他のソナスのSPとの音色の違和感はない。

 

チャンデバ化による解像度のUPの恩恵は顕著で、特に、以前、シバンニさんにご紹介いただいた、Brethmark1曲目などは、背筋がぞっとする感じを自分のシステムでは初めて味わった。これは最初に環境音が収録されているのであるが、全ユニットが完全に正相接続で揃ったことによる、SP間を動く音源のくっきりした定位感と、アンプによるスピーカーユニット一台一台に対するダイレクト駆動によって解像度が上がったことに伴うそのリアリティ。

 

ほんとかよ、と思われる方が多ければ、この夏にでも「お披露目会」を開催しようかな(笑)。5台のマルチアンプ駆動SPを中核としたAuro-3Dの音に興味のある方、おられます?