Auro-3Dソフト関連

2025年2月26日 (水)

5chソースの、Auro-Matic化 再論

表題に取った「Auro-Matic」とは、このサイトの常連さんには言わずもがな、ではあるが(笑)、<これからイマーシブ>という方がGoogleの検索などでここに辿り着くことが最近結構あるようなので、改めて。

 

Auro-Matic」というのは、Auro-3DNative ソフト(Auroコーデックでエンコードされたもの)ではないソース(2ch5.1chなど)を、<Auro-3D風に>仕立てるUp Mixの名称。これは有名な所でいえば、「Dolby ATMOS」と「Dolby Surround」の関係と同じと考えていただいていい。

 

だから、「Auro-3D対応」というAVアンプを持っている方であれば、もれなく「Auro-Matic」も使える(ただし、それが使える設定をしていれば=笑)。

 

先日の入交さんによるWOWOWのセミナーの時も、オーディオショップの方から質問が出たが、Auro-3DNative SoftにはClassic系が多いため、それ以外のジャンルの音楽がお好きな方が、対応AVアンプとスピーカー配置を整えたうえでAuroの「世界観」?を味わいたい場合は、どうしても「Auro-Matic」のお世話になることになる(AVショップの方でもこの二つを弁別していない方もおられるが、「Auro-3Dを聴く」のと「Auro-Matic」を聴く、のは全くの別物です)。

 

斯く言う私自身も、Auro-3Dのシステムを揃えたばかりの頃(Marantz88052018年の春=約7年前=がスタートだった)は、Auro-3DNativeソフトが世の中にほとんどなく、ノルウェーの2Lレーベルが出しているBDを輸入して取り寄せてはいたが、当時はノルウェーの作曲家・演奏家によるアヴァンギャルドな作品が多く(汗)、保守的なClassic好き(笑)としては「二度目は聴かない」(泣)ものが少なくなく、お気に入りのSACD MultiAuro-MaticAuro化したものを主に楽しんでいた。

 

そうした経験を基に、もう何年も前になるが(初出がいつだったかのデータが無い)、Phileweb Communityという、今は亡き「オーオタ交流サイト」で(笑)、Auro-Maticについては自分なりに「ケリをつける」(笑)論考を書いている(これはPhil-Mで保存されているコピー)

 

そこの結論部分だけを以下に引用する。

・・・・・・・・・・・・・・・ 

Auro-Maticがイケてる「普通のソフト」の条件>

5.1ch2ch(やはり、元のチャンネル数が多い音源の方が、効果は出やすい)
・音数の多いもの(大編成のオーケストラなど)
・アヴァンギャルドな演奏(ストラビンスキーなどの20世紀音楽。例えばシェーンベルグはピアノソロでも最高!)
・オルガン、合唱(つまり、バロック系のミサ曲なんてバッチリです)
・金管楽器(ビブラフォン含む。木管も悪くないですが、金属音の方がどうもAuro-Maticがより得意とするようです)
・教会などの高さのある(またはOpen Air)録音現場(これなら、RockでもJazzでもイケます。オペラはオペラハウスでのLiveならホール感を伴う声楽を楽しめる=風呂場のカラオケ状態?)

 

<ダメなものの条件>

Pops Jazzのスタジオ録音盤のボーカル(どうしても口が大きくなる) 
On 録音されているピアノソロで、ホール音があまり収録されていないもの(アタック音などが甘くなる。高音の「硬質感」がやや損なわれる傾向。これは音のFocus2chに比して、どうしても落ちるためと思われる)
・天井の低いJazz Clubなどでの録音(リアリティが落ちる。かぶりつきの緊迫感が無くなり、ゆったり聴けるようになってしまう=笑)
Rockは録音による。空間感を演出するような壮大なサウンドはOKだが、タイトな音像を求める、シンプルでストレートなスタジオ録音は×(野外ライブはイケる!)

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

基本的な印象は今も変わってはいないのだが、上記記事を書いた時と今では、自身のシステム的にかなり異なっており、特に、ちょうど一年前に主力の5台のSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプ駆動に改造したことによる「音の変化」はとても大きいものがあると日々感じている。どう違うかと言えば、簡単に言えば、改造のご指南を受けたMyuさんにもはっきり指摘していただいているように、それは駄耳の私でもはっきりと分かる、「まるでスピーカーとパワーアンプをグレードの上のものに総入れ替えしたような」、馬力と瞬発力という、およそSonusらしくない側面(笑)を中心とした再生能力・品質の向上である。

 

この「向上」は、Sonetto VIII単体の能力向上なので、当然のことながらSWDirac Liveなど、「他の力」を借りていない状態どうしの比較の方が差がはっきり出る。拙宅では、「2chソースを2chで聴きたいとき」は、かつてはAmator IIIOctave Class Aの組み合わせを使っていたが、チャンデバ調整後は、Sonetto VIII2台とLPで理想的なポジショニングを作った環境に移動して聴くようになっている(2ch派のMyuさんには、「これ以上、何が要るの?」(笑)とまで言っていただいているが!)。

 

しかし、5ch再生に於いては、これまでは「5ch5chで聴きたいソース」の場合も、Sonetto VIII5台+SW3台+Dirac LiveART)というセットで聴くことが多く、Sonetto VIII5台だけの「Pure 5chセッティング」で聴くことはほとんど無かった。その理由は、ARTによる「締まった低音再生」が捨てがたいのと、正直に言えば、Dirac Liveを使わない場合の「様々なパラメーターの手動調整」に自信が無かった&面倒臭かった(汗)からだ。

 

ところが、この春の「伊豆合宿」(笑)で、チャンデバ調整でf特も変化することが分かり、MyuさんとTomyさんのご指南を受けて、曲がりなりにも満足のいくパラメーターを見つけることができ、しかもf特だけでなく聴感上の出音の変化もちゃんと確認できたので、「これで、Pure 5ch を組んだらどんな音がするかな?」と、相変わらずの好奇心(笑)が抑えきれず(春休みでヒマもたっぷりあるし!)。

 

残念ながら、拙宅のSonetto VIII 5台(LCRSLR)は「完全等距離配置」にはなっていない。LCRLPから約2.9m、SLRは約1.3mの位置にある。これまではユニット間の位置(でっぱり)の差だけをパラメーター入力し、「あとはDirac Liveにお任せ」(笑)で、ch別のDelay(距離)と音圧を自動調節してもらっていた。ただ、今回、新たなパラメーターを「発見」したので、SLRにも新たな数値を入れる際に、「もしかして、これって、5chだけなら単純にLCRとの距離差を測定して足し算や引き算をすれば、手動でも調整できるのでは?」と気が付きまして。

 

で、早速手持ちのレーザー測定器でミリ単位でLPからの距離を測定し、それをDelay値に反映させ、さらに、チャンデバいじりのお陰で「距離が半分になると音圧は6㏈増える」、ことも勉強していたので(笑)、それも考慮して音圧のパラメーターもSLR用に調整した。

 

SWは、定在波などの問題があり、手動での調整が難しい(はっきり言って完全無響室でない限り、どんなゴッドハンドでもARTには絶対に勝てないのが明白)ため、今回はパスし、5.0chのシステムとした。SWを使わないのであれば、3Way 5ch をすべてデジタルチャンデバ・マルチアンプ駆動にしているメリットを活かせば、Dirac Liveを使わないでもかなりの補正ができると考えたからだ。

 

そもそも、Dirac Liveのお仕事は、1.f特の補正、2.位相の補正、3.定在波の抑制(ART)-なのだが、1は、今回の5台だけならチャンデバの調整で何とか誤魔化した(笑)し、2は、デジタルチャンデバはミリ単位でユニットを「動かせる」わけで、この目的はユニット間のタイムアライメントを揃えることにある。理論的に<各SPからの直接音だけで考えれば>(DLは複数SP と反射音まで計算したLPにおける位相合わせをするのがウリではあるが)タイムアライメントを合わせれば、位相もある程度は整う「はず」(笑)。3は、恐らく結構差が付くポイントだろうと想像できるが、まあSWという大物を外せばそこまで不快な音にはなるまい、と判断。

 

で、試行錯誤を経てなんとか完成させまして(チャンデバいじりは、どこかで見切りをつけないと「無限ループ」に陥る=汗)。客観的な評価は近々来ていただくお客様にお任せするとして、主観的には(笑)、「これは、5台ある、3Wayスピーカーを、すべてチャンデバ・マルチアンプ化している者しかできないテクニック」であるという点だけで、もう満足(笑)。

 

これまで一応、一通り手持ちの5chソフトを片っ端から聴いてみての結論を言えば、以前書いた、<Auro-Maticするとダメになるもの>はさらにそのダメさが際立つこととなった。チャンデバ・マルチアンプの、「一音一音が、とてもはっきりする」という2chで確認できていたメリットが、5chでも発揮されるようになったため、「ボーカルとかシンバルの音のくっきりした定位」、なんていうところに聴きどころがある、Pops/Rock系は、5chソフトでもAuro-Maticにすると、「せっかくの鋭い音・定位感が鈍る」(繰り返しますが、これはMaticであって「Auro-3D」ではありません。Auro-3DのNativeソフトであれば、2chや5chよりはるかに正確で立体的な定位感が得られます)。かつては、どちらかというと5chソフトなら大抵のものはAuro-Maticで再生した方が個人的には好みだったのだが、今回改めて聴きなおしてみて、「これは5ch Nativeで聴くべき!」と判定したソースがかなり増えた。もちろん、Auro-Maticにするとステージが広がるという<メリット?>は相変わらずあるのだが、この<メリット>がとても重要なジャンルの音楽では必ずしもないことがよりはっきりしたのだ。

 

Rockの典型的なテスト音源は、高校時代の思い出の(笑)、Pink Floydの天下の名作、『狂気』

P (これは、いくつかのSACD Mulitがでているが、この写真上にある、Analog Productionの盤が一番音がいい=アナログじゃないけど=笑。ちなみに、これはATMOS版(下)も出ているが、音質自体は私はSACDの方が好み)

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Pops/JazzのMultiの名盤もいくつか聴き込んだ

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写真にあるもの以外にもいろいろ聴いたが、Auro-Maticからはやや脱線するかもしれないが、Pops/Rock/Jazzだと、SWって無い方がいいのでは?と改めて思わされる曲が多かった(拙宅のシステムでは、Auro-Maticにすると必ずSWが参入するセッティングになっている)。ここで拙宅のシステムの名誉のために(笑)お断りしておきますが、一般に映画用をメインにしておられるお宅のSWの音を想像して「そりゃそうだろ、そんなこと、今頃気付いているのか、このご仁!」と思っている方がおられるかもしれないが(汗)、拙宅の低域はSWにある5つのユニットを含め、全部で33のウーファーユニットをDirac LiveARTという技術が統合的にコントロールしていて(まだStormAVアンプでしかARTは世に出ていないので、聴いたことがある人はとても少ないと思うし、日本のオーディオ雑誌ではほとんど取り上げられていないが)、一般的な「音楽にSW? 邪道でしょ、それ。低域が膨らんじゃって」というイメージとは正反対で、はっきり言って、その辺のフロア型2chシステムより、3台のSWが入っているウチのシステムの方がTightで解像度の高い音が超低域まで出ます(断言!証人多数!!!)

でも、このクオリティの超低域ってPops/Rock/Jazzではほとんど不要で、むしろ、ここの解像度が上がることで恐らくエンジニアが意図せざる暗騒音が聞こえてしまって、不快な思いをすることが多々あるのです。Pops/Rock/JazzLFEを使っているものは、たいてい「下品」な(笑)、映画のような効果音(EDMのような)が多く、普通の2ch録音はSWを入れることをエンジニアは想定していないはず。だからSWをいれてしまうと、「想定外」の音が出てくることが起きるようです。

いずれにせよ、数年前の印象に比して、拙宅のシステムアップは、<Maticはダメなソース>を増やす方向に働いたようです。

 

逆に、<Auro-Maticにするとイケてるソース>については、拙宅で聴く場合は、少し減ったような気がしています。

 

例えば、マーラーの『交響曲第8番』(いわゆる、『千人の交響曲』)。私は前にもどこかに書いたと思うが、実はマーラーは苦手(汗)で、あまり聴かないのだが、先日の入交さんのWOWOWのセミナーでこの曲が「Auro-3DNative (22.2chだったかも?)で再生されていて、「・・・」と唸ったのです(いい意味で!)。Cmiyajiさんが、「これ、Auro-3Dで販売してくれないかなあ」とおっしゃっておられたが、全く同感。マーラーはキライですが、この曲のコーダだけは好きです!

 

さて、この『千人』であるが、先に書いた「Auro-Maticにイケてる音楽の条件」のほとんどを備えている曲です。

 

・大編成のオーケストラ

・オルガン、合唱・金管楽器(ビブラフォン含む。木管も悪くないですが、金属音の方がどうもAuro-Maticがより得意とするようです)

・教会などの高さのある(またはOpen Air)録音現場

 

有名な、ショルティの『千人』は2chなので、2chの大編成Classicは圧倒的にAuro-Maticに軍配があがることには変わりはないのだが、5chについては、拙宅のシステム変更を経て少し印象が変わり、オリジナルのPotentialに気づくこととなりました。

 

以前は、このような「Matic映え」する条件が揃った曲は、5chでも<圧倒的に>Auro-Maticの方が素敵に聴けたのだが、今回、手持ちの『千人』(キライ、と言いながら実は何枚も持っている。だって、<オフ会ご用達>ですもん、マーラーは・・・リクエストされた時用に=笑)の中で、特に比較的録音が新しく、優れていると思われる、ギルギエフのLSO Liveとトーマスのサンフランシスコ交響楽団(いずれも録音は2008年)のSACD MultiNative 5ch Auro-Maticで最後のCodaを聴き比べてみると・・・

 

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5chでも、部屋の空間容量を十分に「音(と振動)」で満たす大音量で再生すると、なかなかの感動力! これ、以前の5ch再生だったらここまでボリュームを上げると「うるさく」感じて、聴くに耐えない感じだったのだが、ちゃんとパラメーターを調整した5chはうるささを感じない。これだけの音量にすると、Live録音ならではの位相情報の再現と部屋の中の反射音も盛大になるからだろうか、微妙なビブラートがかかったような音質と、拙宅の天井の高さをちゃんと感じさせる空間表現もなかなかのものだった。

もちろん、この曲はPops/Rock/Jazzとは違って、グランカッサやオルガンが入っているので、20Hz前後と思われる帯域の再生品質に於いては、言うまでもなくAuro-Matic13ch+3SWART)の方が勝っている。しかし、Dirac Live無しのオリジナル5chSWも無し)の方が、張り詰めた緊張感のような部分でAuro-Maticを上回る空気感が感じられ、「こりゃ、一長一短、あるな」と今回初めて思った。

 

ただ、5ch Nativeの場合は、ある程度の音量を上げないとここまでの「実力」を感じられないので、集合住宅にお住まいの方や夜に音楽を聴く趣味のある方にとっては、(モンテモンテさんが指摘されているように)「音量が低くても、空間的な広がりを感じられるAuro-Maticに分がある」と思うだろう。

 

結論的に言って、5ch Nativeなら(2ch Nativeの場合は、どんなハイエンドでも大編成のClassic音源なら私の耳にはAuro-3DMatic含む)には及ばない。入交さんがセミナーで指摘しておられたように、音源が2か所しかないための「マスキング効果」でどうしても音数=楽器=が消えるし、いくら部屋を工夫しても、2台のSPだけではホールの反射音を完全には再現できていないと感じる)、

1.五台とも同じSPを使っている 

2.ITUの完全等距離配置になっていてLPで5台間の位相の狂いがない 

3.設置環境(壁との距離・角度など)も5カ所が完全に同一条件で、LPにおける5台のSPから届く音の各f特に差がない

―というような条件を満たしたうえで(拙宅はデジタルチェンデバシステムを使ってある程度調整したが=それでも2.3の条件は完全には満たせていない=汗、それが無い場合は上記3つの物理的条件を整えるしかない)、さらに(笑)、

4.部屋にある程度の高さがあり(これは5chの場合、高所からの音は部屋の天井からの反射音に頼ることになるが、そこに十分な距離が無いと「残響音」として感じられないため)、

5.そしてある程度Liveである(Dead過ぎる部屋だと天井や壁からの反射が少なすぎて、ホール感が出せない)というルームアコースティックの状態において、

6.<大音量再生>ができる環境

であれば、AVアンプの世話(補正)になる必要もなく、5chソースを「Auro-Matic」で拡張する必要はないかもしれない(笑)。

ただ、ここまでの条件を揃えるのはスペース面、経済面、家庭環境面などで無理(典型的なのはウチの東京の書斎!)、というほとんどの(笑)方は、5chソースもAVアンプを使った「Auro-Matic」で聴くことをお勧めします!

2025年1月18日 (土)

Chopinのピアノ・Bachのオルガンー王道のAuro-3Dソフト登場!

今、今年に入って初めて伊豆に来ています。年始は土日問わず仕事が立て込んだので、約3週間ぶりかな?

 

といっても、来月の「セミナー」の準備のため、伊豆のご近所の入交さんと相談をする「仕事」が結局あるのですが(汗)。

 

今回、伊豆での楽しみは「温泉」や「金目鯛」だけではもちろんなく、年末にダウンロード購入したAuro-3D音源を伊豆のメインシステムで聴き込むことです!!!

 

いくつかあるので全部は紹介しきれませんが、その中でも特に今回は、Auro-3D初心者の方にもお勧めな、ClassicのBig Namesを入手しましたので、ご紹介します。

 

これまでAuro-3Dの音楽ソフトって、特に先行していたノルウェーの「2L」のものが典型なのですが、「音はいいけど、聞いたことのない現代音楽ばかり・・・」というものが多かったのですが(汗)、ここ1、2年、あちこちのレーベルでAuro-3Dファイルをダウンロード販売するようになり、チラホラと、私のようなClassic初心者でも知っている、Big Namesのスタンダード曲を録音してくれる演奏家が現れてきているのは、同慶の至りです。

 

その中でも今回は、出色のものを見つけました!

 

まずは、Chopinです!!!(これ、昔、英語のリーダーの時間に、「チョピン」と訳した奴がいて、「教養のなさを曝け出しているな」とクラス内で英語教師にからかわれていたという強烈な、<アカハラ>の記憶があるなぁ・・・今のご時世なら超問題発言だったワ)

 

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https://spiritofturtle.com/collections/auro-3d-9-1-immersive-audio/products/chopin-a-private-story-download-kopie?variant=49929104064839

 

私のように「ピアノ好き」を公言している人なら、Chopinは「神」ですよね(笑)。でもなぜか、今まで私の知る限りでは、少なくともChopinの珠玉のピアノ曲だけを集めたAuro-3D録音のアルバムは無かったと思います(あるのをご存知の方がいれば、是非、教えてください!!!)。

 

これはバラードだけ、とかノクターンだけ、マズルカだけというChopinのアルバムにありがちな「シリーズもの」ではなく、このピアニストの個人的な好みによるランダムな選曲集です。超有名曲からあまり演奏・録音されていない曲まで含まれていますが、個人的には、Chopinベスト3に入れている、「Fantaisie-Impromptu」が入っていて、これをAuro-3D Nativeの立体的な音像・音場で聴けるだけで、完全に元取れてます(笑)。

 

お次は、Bachです(これはアメリカに留学していた頃、NYの現地の奴らは「バック」と発音していた・・・単にNew Yorkerが無教養なのか?それとも英語圏では彼は「バック」なのか?)

 

Bach: Six sonata for organ

 

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https://spiritofturtle.com/products/bach-six-sonatas-for-organ-bwv-525-530?_pos=1&_psq=Bach+Six+sonata+for+organ&_ss=e&_v=1.0&variant=50306643755335

 

Bachは元々教会でオルガン奏者として働いていたこともあるため、彼の作品で恐らく最も力を入れて作曲した楽器の一つがオルガンであることはどなたからも異論はないと思います。

 

ゆえに珠玉の名曲が綺羅星のようにありますが、その中では、残念ながらこの「Six sonata for organ」はそこまでの超有名曲ではありません。しかし、しかーし!

 

Bachのオルガン曲もまた、私の知る限り(かなり狭いか?)、Auro-3D録音ってありましたっけ???

 

はっきり言って、私が本格的にAuro-3Dにのめり込むきっかけになったのが2Lの『LUX』で、あれにもオルガンは「伴奏」として使われています(メインは合唱)。ヨーロッパに学会などで出張があると、学会が休みになる日曜日に近所の教会に行って、信者のフリをして(笑)、教会のオルガンを聴くのを密かな楽しみにしている私にとって、Auro-3D=オルガン再生専用フォーマット!!!と当初思い込んでいたぐらいですから!

教会で聴くオルガンの、あの身震いするような「神々しさ」は何十年と2chオーディオに取り組んできても一度も「自宅では」体験できなかったのに、それを初めて「教会ではなく自宅で」擬似体験させてくれたのが、Auro-3Dだったんです!

 

つまり、Auro-3Dのオルガンの音に出会わなければ「友の会」もこのブログもなかったわけで、そのオルガン曲の「シンボル」のようなBachの作品が、いままでAuro-3Dで録音されていない?のは理解に苦しむところだったのです(泣)。

 

もちろん、先のChopinともども、伊豆に来る前に書斎の「寄せ集めAuro-3Dシステム」でもすでに何度か聴いていましたが、システムと部屋の差はやはりピアノソロより、オルガンの方が絶大に出ます。

 

伊豆のAuro-3Dシステムでオルガンを聴き慣れると、その辺のしょぼいコンサートホールとか教会のオルガンの音が貧弱に聴こえるようになっちゃって・・・本末転倒(笑)

 

私は何度も書いてますが、音楽については素人なので、曲の良し悪しとか演奏の良し悪しは語れませんが、「教会で聴くオルガンの世界観」はちゃんと表現できています。お手持ちのAuro-3Dシステムのクオリティが高ければ高いほど、オススメです!

 

【おまけーネットワーク環境のしょぼさに改めて気付かされてしまった・・・】

 

今回、東京の書斎でダウンロードしたAuro-3Dファイルを、SSDのUSBに入れて伊豆に持ってきて、こっちのNASに入れたのだが(これって、「合法」ですよね???)、その際、ちょっと遊び心が出て、Magnetar 800のUSB入力に挿したものと、NAS経由のものを聴き比べてみて、びっくり。

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再生機器(メディアプレーヤー?)は同じMagnetarなのに、USB経由の方が断然音がいい。音がいいというよりは、クリアだ。いわゆるベールが一枚剥がれている感じ。

 

この差はどう考えても、USB経由は、「USB→Magnetar→HDMIケーブル→Storm」とシンプルな経路でデジタルデータが送られているのに対し、NAS経由は「NAS→LANケーブル→スイッチングハブ→LANケーブル→Magnetar→HDMIケーブル→Storm」と複雑な経路を通っているという違いにあるとしか思えない。

 

最近、私の周りでも、100マンを超える<オーディオ用>NASとか、同じく100マンを超える<オーディオ用>スイッチングハブなどを導入するオーオタ仲間が出始めているが、「流石にそれはやりすぎじゃ?デジタルドメインでそこまで音が変わるかよ」と内心冷ややかに見ていたのだが・・・

 

なんせ、今のハブもケーブルも完全にPCグレードで、昔から使っているやつだから、ノイズ対策なんて全くしていないだろう(PCはデータがデジタルビット落ちしなければ、データ外の「ノイズ」なんて関係ないもんね)。「これを一式<オーディオ用>のにしたら結構差が出そうだな」と予感させるには十分な体験でした(問題は、先立つものだねぇ・・・)。

 

ちなみに、伊豆のダウンロードファイルの現在の主力再生方式は、「NAS→LANケーブル→スイッチングハブ→LANケーブル→Mac Book Pro(Roon Server)+Windows PC(Roon Bridge)→HDMIケーブル→Storm」なのですが、MagnetarへのUSB直挿しとの比較では、さすがにRoonの方が音の深みと音像の立体感で優っている(=安堵!)。恐らくこれは、NASのデータをStormに送り込むまでのメカニズム?、つまりMagnetarのNASのデータ転送・再生機能(これは「おまけ」の機能のため、さすがにそこまでお金はかけてないでしょう) VS Roon (Mac OS? CPU?+Windows? Intel?)のチカラ+クオリティの差なのでしょうね?(ここを極めたい方は某氏(笑)のように、TAIKOまで行っちゃうんだろうなあ・・・)

 

そういえば、この前ダイナの島さんのところで、評論家の土方先生を呼んで「ネットワークオーディオ講座」をやったらしい。ちょうど、お二人に今度のセミナーでお会いできるので、「とりあえず、何から始めればいいのか?」をちょっと聞いてみよっと!

2024年12月22日 (日)

『Mr. Big』のAuro-3D、正しく再生できていますか?


すでに入手されている方も少なくないとは思いますが、「何、それ?」という方のために(笑)。これは、以前、どこかにチラッと予告的に書いた気がするのですが、単独記事として見出しには取っていなかったようなので、改めてご紹介します。

 

まずは、Disk Unionのネット上の販売ページからの引用:

 

MR.BIG、 最後の武道館公演収録した映像商品と新作のスタジオ・アルバムがついに発売!

1989年デビュー以来、日本で愛され続けたロック・バンド”ミスター・ビッグ”。去年7月に惜しまれつつも、最後の日本ツアーを開催。往年のファンから若い層まで幅広いファンへ最後の勇姿を見せたバンドの映像商品と話題となっていた新作の発売がついに発表された。

9月6日に発売される『ザ・ビッグ・フィニッシュ・ライブ』は2023年7月26日に日本武道館で開催された追加公演最終日の模様を収録。バンドとして初のアルバム『リーン・イントゥ・イット』の全曲演奏に、恒例のバンドメンバーの楽器パート替え演奏、ビリー、ポールによる超絶ソロプレイ、そして伝説となったビリーの最後の挨拶と感動的なフィナーレを余すところなく収録した2時間半の長編映像となっている。ボーナス映像には伊藤政則氏による独占インタビュー、武道館公演の舞台裏などファンには堪らないコンテンツを収録予定。さらにバンドのライブ収録としては初のイマーシブ・オーディオ(3Dオーディオ)で録音。当時の臨場感を自宅で体感できる特殊音声をブルーレイに収めている。

(中略)

●武道館に多数のマイクを設置しバンド初のイマーシヴ・オーディオ録音を実現

※イマーシブ・オーディオはDolby ATMOSとAURO 3Dフォーマットで収録
●ステレオは96bit/24kHzの高音質音源を収録
●イマーシブ録音にはWOWOWの入交英雄氏が参加

(以下、略)

 

 

といことで我らが入交さんが手掛けた作品で、以前のBob Jamesとは違って(笑)、ちゃんと武道館で彼の指示でAuro-3D用のマイキングがされて収録されたもので、Rockの作品でAuro-3D録音になっているのは恐らくこれが世界初。

 

さて、これ、上記記事には、「96日に発売」とありますが、ちょっとトラブルが合ったそうで(入交氏談)、本国アメリカでの発売が11月にずれ込み、予約注文していた私の手元に届いたのは、11月末でした(汗)。

 

それにしてもそれから約1ヶ月も経過しているのに、なぜ今頃になって記事にするかと言うと(いつも、早いだけが取り柄なのに!)、このBD、ちょっと再生にトラブルが出やすいようなので、それをきっちり検証してから記事にしようと思ったからです。

 

このBDが届いた、11月下旬から12月中旬は、「季節労働者」の私にとって、1年で最も繁忙期で、毎年、伊豆に行く時間を取ることができません。書斎には一応、ボロですが(汗)Auro-3Dシステムは組んであるのですが、残念ながら2台あるBDプレーヤーが両方とも古く、UHD対応していないので、この『Mr. Big』は再生できなかったのです。

 

とはいえ、「まあ、3週間後に伊豆に行ってから聴けばいいや」とは思えないのが、Auro3D」のハンドルネームを名乗っている所以でもあるわけで(笑)。1日だけ時間が空いたある日、意を決して二階のリビングにある、シャープの4K対応録画機を取り外して、書斎のシステムに繋いでみたのでした(リビングのTVラックから出すのはおおごとになるので、連れ合いの冷たい視線が・・・汗)。

 

このSharpの機器は、4B-C20AT3 という型番のもので、4K放送が始まった頃に、4K対応テレビとともに購入したものなので、もう5,6年ほど前の製品です。HDD録画専用機ではなく、ディスク再生機能もあり一応UHD BD対応です。

 

ディスクを入れて、Topメニューで「Auro-3D」を選ぶと・・・

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あれれ、ソースがDTSとしてしか認識されず、5.1chソフト扱いになっちゃっている(汗)

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これはもしかしてソフトが不良品かな?と疑い、12月中旬に伊豆に行ったときに向こうのOPPO-205で確認するのを待とうという判断に。

 

で、1週間ほど前に伊豆のシステムでやってみたのですが、

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あっさり、Auro-3DとしてUnfoldされました。「DTS-HD MA」として認識され、96Khz11.1ch(7+4)として再生できました(一部、「13.1chで収録されている」、という情報が出回りましたが、あれは誤報です。制作された入交さん本人に確認しましたので!)。

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これでソフトは無罪確定。でも、「これまさか、AVアンプ側の問題じゃないよな?」という疑いは残ったので、わざわざ、OPPO-205を今度は書斎に持ち帰って、繋いでみましたよ(こういうところは、我ながら「科学者Mind」に呆れる・・・笑)。

 

すると、無事、書斎のDenon 3800HでもOPPO-205との接続なら、この『Mr. Big』がAuro-3Dとして認識され、再生できることがわかりました。

 

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ということで、このOPPO-205はこのまま書斎で使うこととし、伊豆にはMagnetar UDP800という、最新型のユニバーサルプレーヤーを導入(OPPO-205との音質比較など詳細は別項にて)。

 

こちらをISP MK2に繋いで『Mr. Big』 のディスクを挿入すると、「ロード中」と表示され読み込みにかなり時間がかかる(一度だけ、「データディスク」と認識されてしまった・・・)。

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ただ、無事、Auro-3D11.1chとして再生されました。

 

入交さんによると、このディスクは、「三層構造」で記録されているとかで、初期のUHDプレーヤーだと「二層」のUHDBDまでしか対応していないものもあるそうで(しかし、OPPO-205Sharpのものより古いはずなのに・・・)、その場合は「Auro-3D」としては再生することができないそうです。すでに発売元にも同様の報告がいくつか届いているそうですので、もし、このアルバムをAuro-3Dで楽しみたいとお考えの方は、ご自分の持っている再生機が「三層構造」のUHDBDに対応しているかを確認したほうがいいと思います。

 

最後に(笑)、『Mr. Big』の、伊豆のシステムで聴いた「Auro-3Dハイレゾサウンド」の感想ですが・・・まあ、武道館の雰囲気は出てますね。一応、エンジニアリングした入交さんがすこし遊び心を入れて、ギターの音を回すような、恐らくLiveの現場ではなかったかもしれない(?)、音響上のAuro-3Dらしい?演出をされていますので、そういう「いかにもイマーシブ」感(笑)を映像とともに楽しみたい方にはいいと思います。

 

ただ、映像をオフにして、LCR同一SPのセッティングでストイックに音質的にどうなの?と聴きこむと、PAを使った人工的な大音響が、武道館の中で鳴り響いているのを収録したのですから・・・会場の臨場感にはリアリティがあるものの、EギターやEベースには「Referenceとなる原音」がない(結局GアンプやPAスピーカーで音が変わる)ので、「音質」を語れるものがあるとすればオンマイクを仕掛けてあるドラムの音ぐらいでしょうか?(笑)

2024年10月 6日 (日)

「音楽の秋」?-Auro-3Dソフト3連発

暦の上では9月から「秋」のはずで(汗)、「晩夏」から「初秋」にかけては、宝塚やオペラのLiveで耳を鍛えておりました(笑)が、皆さんはどうお過ごしになられましたでしょうか?

 

10月に入り、少し仕事も落ち着いたのを機に、秋の夜長を楽しむためにAuro-3Dのソフトを3本購入してみましたので、紹介したいと思います。

 

最初の2本は、TRPTK https://trptk.com/ からダウンロード購入しました。

 

まずは、これ。

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まあ、私はアルバムをビジュアルで選ぶタイプではないのですが(汗)、ピアノ好きなのでAuro-3Dのピアノ曲だとたいてい買ってます。ただ、ピアノ好きの「鉄板」のショパンとかラフマニノフとかが、Auroフォーマットではこれまでは必ずしも多くなかった気がするのですが、このアルバムは、なんというか、Classicピアノ名曲集みたいで、マイナー好きな?Auro-3D録音としてはかなり珍しい(笑)。

 

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見てください、この錚々たるLineUp! Classic初心者の私でも、作曲者は全員知っている名前(知らない曲はあるが…)。喫茶店などでよくかかる「名曲」もちらほら。なので、これはAuro-3D初心者の方にもお勧めできるアルバムです!「ピアノソロなら2chで十分でしょ?」と思われる方にこそ、こういう聴きなれた名曲で虚心坦懐にこの21世紀の音楽フォーマットと20世紀のそれとの違いを体験していただきたいですね!

 

さて、同時にダウンロード購入したのは、これ。タイトルに、Piano, Violin, Viola, Celloと私の好きな楽器が揃っていて、さらにトドメは最後のLive(笑)。で、ポチリました。

 

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で、感想は、というと・・・うーん、これはいわゆる「ミニマルミュージック」というジャンルの音楽だと思います。同じようなフレーズが延々と、淡々と、起承転結なく(笑)1時間以上も続きます。病院の待合室で静かにBGMとして流すならよさそうですが、「まなじりを決してオーディオと対峙」する場合、私はClassicは保守的なメロディアスな音楽が好きなので、個人的にはちょっと・・・。

 

まあ、正直に言えば「ちょっと失敗したかな…」とは思いますが、これまでもAuro-3Dのソフトではこのような「恐らく二度と?聴かないカモ???」というのを、ダウンロードでもBDでも何度も購入した経験があります(汗)。ただ、その度に私は、「これはAuro-3DMajorなものにするための、お布施」だと思うようにしていて、腹を立てないようにしているんです(笑)。オーディオの新技術もそうですが、「生まれたばかりのもの」というのは、そのPotentialに気が付いたサポーターが「人柱」になって、<先行利益・開発者利益>を取らせてあげないと「育たない」。20数ユーロという「寄付」をAuro-3Dそのものにしたと思えば(税制控除はないですが=笑)。

 

さて最後にご紹介するのはBDの実ディスクです。

 

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これ、「とっくに持っているんだけど、会長のくせに、今頃ですか?」(笑)という人は少なくないと思います。これが2Lから出たのはもう1年ぐらい前でしょうか?HoffさんというJazzピアニストのソロ集で、昨夏のフォッサマグナツアーの課題曲の一つに入れた、『Polarity』のピアノも担当している方です。

 

実は私、これ、すでに持っています(Piano好きですから!)。ただし、ダウンロード版を。最近はAuro-3DNativeソフトをダウンロード販売するところが増えて、Flac版とBD版で音質の差も私では感じないレベルなので、両フォーマットある場合はより簡単に入手できるダウンロードに走りがちですよねぇ(笑)。

 

しかし、ここに落とし穴があることに最近気が付きまして(大汗)、それはすでに記事にしました

で、実はこの『Home』も、ダウンロード版は9.1ch(5+4)に対し、BD版は11.1ch(7+4)なんですよ!!! そうと知ってしまったからには、第一層を頑張って7chにしている者にとっては、この差に目を瞑ることは絶対にできないのは言うまでもありません(爆=例えて言えば4K環境を整えている方は、お気に入りのBD映画がUHD化されたら絶対買い増ししますよね?=まさかそんなことしてるの私だけ???)。

 

ということで、先日海外郵便で届いたのですが、まだ東京の書斎の環境でしか聴いていないので、実質的には現状、「無意味」(書斎は、5+5+1の11.2ch環境)ではあるのですが(汗)。早く伊豆のフルシステムで聴き込みたいです(笑)。

 

なお、この『Home』というアルバムは先にも書きましたがJazz Pianoソロで、ほとんどが恐らくこのHoffさんのオリジナル曲の中で、「Summer Time」と「Moon River」という、私のようなJazz音痴でも知っている名曲中の名曲がHoff流のアレンジ(彼は私の主観では、キースっぽい「静寂系」)で収録されているので、オーソドックスなJazz Fan も十分楽しめると思います。

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2024年9月10日 (火)

Auro-3Dに関する、中上級者向けFAQ集-入交氏とのDiscussionから

先日、伊豆のご近所さん(笑)の、入交さんのご自宅兼仕事場へお邪魔して参りました。

 

今日、初めてこのブログに辿りついた方は、「誰、それ?」かもしれませんので、彼についてのリンクをいくつか張っておきます。

 

入交氏のAuro-3Dに関する活動 

https://note.com/live_extreme/n/n217764a0805b

 

https://online.stereosound.co.jp/_ct/17665156

 

同、ATMOSに関する活動 

https://www.dolbyjapan.com/interview-creator-irimajiri

 

まあ、彼のフルネーム(入交英雄)で検索して戴けば、まだまだたくさん出てきます。一言でいえば、「日本のイマーシブオーディオ制作に関しては第一人者のお一人」と言い切れる、博士号をお持ちのベテランエンジニアの方です。

 

彼はこの「Auro-3D友の会」および私Auro3Dが、その設立時からお世話になっている方で、もし、ここのブログに、他にもあまたある一素人の個人のオーディオブログと差別化を図れる点があるとすれば、ここの記事は全体的に「入交氏による(暗黙の?)監修ないし、ご指導ないし、意見交換の下」書かれているものが少なくない、という点に尽きます。

 

もちろん、入交氏が考え、実践されていることが<すべて正解>であり、<これ以外は認められない>というものではないとは思います。私は社会科学の人間なのでこの分野では言うまでもなく、たとえ、音響工学や音響心理学?といった理系的な分野でも、<真理は一つ>と言い切れるほど、「この世と人間」は単純なものではないですよね(笑)。

 

ゆえに読者の方は、ここに書いてあることは「一先達の独自の理論や実践」として批判的に捉えてご自分の<理論構築や実践作業>の参考にしていただければ結構なのですが、ただ、一つだけ言えることは、2ch音響などとは違って、Auro-3Dなどの「イマーシブオーディオ」はまだ緒に就いたばかりであり、体系的な理論や方法論が<すでに確立している>とは言えないということです。「芸術」などとは異なり、このような分野の場合は、「まずは先達が歩んだ道をなぞってみる」ところから入るのが<合理的・科学的な手順>というものですから、私はまずは現時点でのフロントランナーの一人である、入交氏の理論と実践を皆さんに紹介し、自分もそれをなぞってみているのです。

 

さて、重要な前置き(笑)を終え、本題です。

 

まずは今回訪問させていただいて、いつもの通り、いくつか、彼が今「制作中」の音源を聴かせていただきました。

 

残念ながら、現時点では発売すら未定で、「誰の、何を聴いた」と書くわけにはいかないものがほとんどでしたので、はっきりとは書けませんが、ベーゼンドルファーインペリアルによるピアノ曲集が、もしかしたらAuro-3Dでも出るかも?(でるといいなあ・・・絶対買う!!!)ぐらいは匂わせておいても叱られないかな?(笑)

 

そうそう、これはもうすぐだそうですからいいでしょう。

 

山本剛トリオのライブ盤「Shade Of Blue

https://diskunion.net/jazz/ct/news/article/1/116730

 

Auro-3Dが、近々、出るそうです!!! 「Auro-3DにまともなJazzがない」と、ずーっとお嘆きだったアナタ、いよいよですぞ!震えて待て(笑=そういえば、Rockでは、先にご紹介した、「Mr. Big」のAuro-3Dライブアルバムですが、 諸事情=汗により、発売が9月から11月ごろにずれ込むそうです…)

 

で、今回聴かせていただいたもののいくつかは私の部屋のシステムでも聴かせていただいたことのある作品だったのですが、全然、入交邸の方が音がいい。「え、なんでこんなボロシステムの音がウチのよりいいの?」と思わず口を滑らせてしまいました(爆=大汗)。

 

だって、入交邸で今回聴かせていただいたシステムはGenelecの、ちょっと古めの(笑)小型の2Wayパワードで、少なくともアンプとスピーカーだけを見れば、1ch当たりにかかっているコストは絶対ウチの方が…???

 

「いや、Auroさん、これはマスター音源ですから。192/24で記録された未編集のもの、つまり全く音質劣化の無いものです」と。

 

P(このようなプロ用の編集・再生ソフトを使って聴かせていただきました)

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まあ、当然だが(汗)、上流にボトルネックがあっては、下流でどんなに頑張っても挽回はできないのだ、ということを改めて認識。やはりもっともっとHigh QualityAuro-3D音源が欲しいよなあ(笑)、ということで、以下のQAに発展しました。

 

ここから先が本題で、これまで私自身も含め、「友の会」で実践を積んできている方々から寄せられていた、「やってみてのギモン」を、この際まとめて入交さんにぶつけて、「彼の意見」を伺ってきました。つまり中上級者向けのFAQ集です。

 

 

まずは、上記の流れからクオリティに関連して:

 

Q:現状、BDでも配信でも、Auro-3Dの13chソフトはすべて48/24止まりであるが、原理的に、13chのハイレゾはできないのか?

 

A:BDでは、仕様上の転送速度から、96/24なら11chまでしか入れられない。配信(ストリーミング)の場合も通信速度がネックで、一般家庭のインターネット速度では、これ以上の品質=データ量のものを送るのは難しい(事実、Donguriさんの報告では、先の「オルゴール博物館」のストリーミングで、数度、止まったそうである)。理論的には、ダウンロード販売されるソフトであれば、ダウンロードの時間を無制限に取れるとすればもっとハイレゾの13chソフト、例えば192/24でも一般の方でも入手できるとは思うが、その場合、今度はAVアンプの仕様を変更する必要があり、現行モデルでは再生できないはず。さらにいえば、転送速度がBDより速いUltra HD BDを使えば、理論的にはハイレゾ13chを出力することは可能かもしれないが、現状ではそのためのフォーマットが出来ていないし、同様にデコーダー側も対応する必要がある。

 

Q:では、理論的に、現状の2種類のハイエンドフォーマットである、HCとTOPの無い11chの96/24と、13chフルの48/24では、どちらがオーディオ的に優れているのか?

 

A:これはソースにもよるだろう。高さを含めた空間容量の大きいコンサートホールの音場感の再現性というような面では、レゾリューションが多少低くても13chの方が、高さ感、奥行き感などにおいて高い表現力があるはずだ。

 

Q:では、11chの96/24を、AVアンプの拡張機能を使って13chに拡大したものはどうか?

 

A:これは、Extendしたものの方がOriginalよりよい結果になると思う。例えば、HCの位置から音を出したい場合、ファントム再生(=11.1ch)より、合成されたものでも実SPから音が出る方が音像面や音質面のクオリティは上がるからだ。

 

次に、SP設置を巡るQA

 

Q:『マニュアル』に記述されている、ハイトの「垂直配置原則」と、LPからの「等距離配置原則」が相矛盾するが?

 

A:これは、第一層については、LPから等距離に配置する。そのうえで、その各SPの真上に第二層を配置して欲しい。こうすることで、第一層に配したSPの方が、その上の第二層群のSPからの音より先にLPに到達するという「先行音効果」が得られ、第一層に配置された音像定位が不自然に上がることがない、という、Auro-3D(Matic)の特徴が活かされる。ゆえに、AVアンプに内蔵されている音響補正ソフト(Dirac Live、Audyssey、 YPAOなど)による、距離補正(Delay)の部分は、手動で第一層の各SPと同タイミングで、その直上のSPから音が出るようにすべき(つまり第一層のSPと直上のSPを<同一距離>とする)

 

Q: 第一層のSP配置において、開き角と、等距離で、どちらをより優先すべきか?

 

A:これは「開き角」を優先すべき。距離が多少ずれているだけなら、Delayはかけない方がよい。普通の方の耳はそこまで聴き分けることはできないし、むしろDelayをかけることで、LPがピンポイントになってしまい、LP以外では位相が狂って音場が乱れる方がデメリットが大きい。

 

Q:すべてを同一SPでは揃えられない場合、ハイト群のSPを選ぶ際にどのような点に配慮すべきか?

 

A:まず、ポイントソース(点音源)のSPを使うのが望ましい。具体的にいえば、フルレンジか、同軸2Wayなど。この方が立体的な音場がきれいに再現できる。これが無理な場合は、2Wayで、なるべくツイーターとウーファーが近接しているタイプのもの(疑似的に点音源と見なしやすいもの)を選ぶべき。3Way以上のSPは使わない方がいい。 第二層以上のSPは最低域の再生能力はあまり欲張る必要はない。音の広がり感に影響が大きい周波数帯域は、300-2000Hzあたりなので、できればこの帯域は1つのSPユニットが担当しているものがいい。この帯域内にクロスオーバーがあって二つのユニットに再生が分割されると、位相が狂うために音場が乱れる

また、同様に位相の観点から、バーチカルツイン型のSPは避けたほうがいい。SPメーカーが「センター用」として売っている横長のSPでも、ツイーターやウーファーが二つ、中央から対称の位置に付いているようなものも良くない。理由は、同じ周波数帯の音を同時に出すSPユニットが二つ以上あって、それらの位置が離れている場合、その二つのユニットから完全に等距離にはならないオフセットの位置では位相が狂うから。

位相を揃える観点からできれば、同じメーカーの同じシリーズのもので揃えるのが望ましいが、同じシリーズでもユニットの大小によってクロスオーバー周波数が異なって設定されている場合があるが、これも揃えるよう気を付けたい。いうまでもなく、位相が逆相にしてあるユニットがあるSPは、第一層も含め、使うべきではない。

とにかく、イマーシブオーディオの場合、位相の狂いは空間感を大幅に損ねるので位相整合には最大限注意すべき。

 

音色の統一感に関しては、同じシリーズで揃えられない場合も、ツイーターの素材(ベリリウムとか、ダイアモンドとか、シルクとか)は揃えた方がよい。

 

Q:ATMOSとAuro-3Dを共存させたい場合、SPはATMOS配置とAuro-3D配置のどちらを優先させるべきか?特に、ヤマハやパイオニアなど、HCとTOPが設定できない「Auro-3D対応AVアンプ」の場合など?

 

A:これはAuro-3Dの規定するSP配置にしてATMOSも聞くようにした方が圧倒的に優れている。理由は、ATMOSが定義しているトップフロントの仰角の45度は、大きすぎて、第一層のLCRとの間に明確な音像定位を形成することができないから。業界内では、ATMOSのエンジニアリングポイント(制作エンジニアが実際にモニター室で座る場所)からのトップフロントスピーカーの位置は、「仰角35度」として設計されていることが知られている。つまり、エンジニアリングの段階では、仰角35度のSP位置で音場・音像設計をしているのに、それをユーザーが聴くときに45度の位置にトップフロントが置かれていては「Director’s intention」通りの音場・音像の再現ができない。だからAuro-3Dが定義しているフロントハイトSP群の「30度」の方が、ATMOSでもよりよい結果が得られるといえる。

2024年9月 6日 (金)

イマーシヴオーディオ用のDirac Liveの使いこなし?-ATMOS&Auro-3D

またまた、前回と論理的に地続きのネタです(笑)。

 

あれ以来、久しぶりにATMOS Musicソースを聴き込んでいるのですが、Abbey Roadばかりでは耳が痛くなってくるので(もう耳が若くはない…)、オケものをということで、取り出してきたのが、これ。

 

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まあ、これも「定番」のATMOS音楽ですね。ただ、言うまでもなく、カラヤン存命中にはATMOSはおろか、Auro-3Dもなかったわけですから(歴史的にはAuro-3Dの方が古い)、このアルバムのATMOSはカラヤンが残した録音テープ(何トラックぐらいで当時は記録したのだろうか?カラヤンは録音芸術に積極的だったことはよく知られているので、間違いなく当時としては最高品質の録音機器を使い、最大限のマルチトラック収録をしたであろうことは想像できる)を、現代の若手?エンジニアがRemixしてATMOS化したもの。

 

本稿の本題とは逸れるが、このATMOS版の『カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニック交響楽団によるベートーベン交響曲集」(=ものすごい、Authentic! 皆が平伏するキーワード3連発ですよね=笑)は、ただ2ch16ch(そう、これ、9.1.6ATMOSフルバージョンです!)に拡張しただけじゃあないようです。

 

ジャケット裏には、「DOLBY ATMOS transports you from the ordinary into the extraordinary」と書かれているように、録音エンジニアさん、「気合入ってます」(笑)。

 

で、今回、せっかく真面目にATMOS・カラヤンのベートーベンの交響曲全曲を聴くんだから、我らがインマゼールのAuro-3Dによる全集との聴き比べを。

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といっても、音質、音像、音場などの「勝負」はやる前から見えていて(汗)、そりゃ、録音の年代が数十年違うし、片や「なんちゃって」ATMOS、片や「本気」Auro-3Dですから、この比較はFairではない。

 

ただ、聴き比べてはっきりわかったことは、このカラヤン・ATMOS版は、<残響音>?を盛りに盛っている、ということ。これ、録音された場所は全曲同じなのか(ムジークフェラインザールなのか、もしかして一部、教会?=カラヤンは教会での録音も好きだったことは有名)は、老眼で(汗)ライナーノーツの細かい英文を読む気にならないので置いておきますが(笑)、直接音再生の主体であるLCRに比して、サラウンドバックとかトップリアあたりに入っている音は、<やたらDelayがかけてある>んです(笑)。

 

だから、残響時間の長いとても広い空間で3D録音されたかのような!(私は、残念ながら、未だムジークフェラインザールには行ったことが無いので、その音場感が分からない) 例えば、第7番の印象的な第一楽章の最初のフォルテなんて、「前から後ろへ音が流れていく」のが分かるぐらい(笑)。インマゼール・Auro-3D版より全然長い残響時間!

 

言うまでもなく、当時の録音は、まさか、入交さんがやっておられるように天井とか後ろ向き(つまり背後からの残響音録音用)にマイキングはしてますまい。当時の録音エンジニアはほぼ2ch用しか考えてない(まさかこれ、4chがオリジナルじゃないよね?)はずなので、当然、録音は直接音主体のはず。そのように収録された「音」を、ただ16ch化しただけなら、<ホテルの大宴会場のBGM>にしかならない(=つまり、同じ「音」をただ多くのSPから出しているだけ=笑)。

 

それでは耳の肥えたイマーシヴオーディオミュージックファンからは「金返せ」となるのは目に見えているので(これがRockとかPopsなら、ギターやシンセの音をぐるぐる回す、とかのお遊びを入れて「なんちゃってATMOS化」を図るのだが、Classicはこの手は使えない)、どうやらエンジニア君はかなりDelayを工夫して入れることでATMOSらしく?したようです(笑)。

 

これだけを聴いているとわからないのだけど、これを最新のAuro-3D録音と聴き比べると、今回「いかにカラヤンATMOSが<不自然に>音場を盛っているか」が分かってしまった(汗)。

 

ついこの前もオルガンを聴きにサントリーホールに行ったばかりですので、我らがインマゼールの方が、圧倒的にリアルな現場感があると断言できます。カラヤンATMOSは、サントリーホールの3倍くらいの広さの石造りのホールで収録したのか?ウソっぽい=爆。

 

まあ、ATMOSは本来、映画用なので、映画音響であればこのような「あざとい」編集はお手の物(まさか、映画用のエンジニアがこれ、手がけたんじゃないでしょうね?=汗)だろうが、Classic音楽としては、ちょっとやり過ぎじゃ?(いくら風呂場のカラオケ好きの私でもToo Much!

 

さて、すっかり「本題」を忘れるところだった(大汗)。

 

実は、このカラヤンATMOSを真剣に聴いてみて、なんとなく、「重いなあ、これ」という感じがしたのです。つまり全体的にどよーんとした音で、<コロコロとした軽み>がない。「ベートーベンなんだから、当然だろ。モーツァルトじゃあるまいし!」とは言うなかれ(笑)。

 

ベートーベンだって、交響曲9曲の全楽章すべてが「暗い」わけじゃない(笑)。彼の人生は全般的に確かに「暗かった」ようだけど(汗)、たまにはFunkyな気分の時もあったはずで、当然、そういう時に作曲した楽章もありますよね?

 

でも、このATMOS版、どうも全般的に暗く、重い(気がした)。「これ、もしかして録音が古くて、高域がハイエンドまで録音されていないんじゃ?」と勝手に想像し(アナログテープが原盤で、DiscBDだから理論的にはハイレゾしてるはずだが)、「よし、Tomyさんがよくやっておられる、Dirac LiveTarget Curveの調整をやってみよう」と。で、ここから先はDirac Liveを使っている人には参考になると思うので、今回記事にしたわけです(汗)。

 

Dirac Live歴の長い?私は、これまでの研究結果から、現在は原則、以下のようにしています。

 

1.第一層のメインSP(拙宅の場合は、Sonettto VIII5台)は、1Khz付近より上は補正しない

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2.それ以外のSPDirac Liveのデフォルト(全帯域補正=ほぼフラット化)

 

他にもいろいろ細かい自分なりの工夫はあるのですが、今回の中心テーマである、「高域」だけの設定のお話にここでは留めます。

 

基本的に1はいじりたくない(チャンデバ化までした自分のシステムの「基本性能」を信じたい!)ので、やるなら2です。そこで2のSP群のTarget Curveを以下のようにしてみました。

 

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いわゆる、「ふた山」f特ですね。「BBC Dip」も取り入れてみました(笑)。

 

結果ですが、少し(というか、かなり)音に「コロコロ感」(笑)が出てきました。そしてどんよりしていた空がカラっと晴れたように、空間が広がったような気がします。

 

Auro-3Dの<マニュアル的には>、13台同一SPで揃えろ、とあることはもう耳タコだと思いますが、「言うは易し行うは難し」の典型の一つであるのは言うまでもありません。で、多くの方が第一層のSPに比して、比較的小型のSPを第23層に配しておられるのが現実ですよね。それを同じメーカーや、さらには同じシリーズで揃えておられる方ばかりではないのも、また「Reality」です。その場合、ではどのようなSPを第23層用に選ぶのがいいのか、については、残念ながらAuro-3Dの教科書には書いてありません(汗)。

 

そこで我々のような「人柱」が実践経験の中で、何らかの解を見出していくことが期待される(?)わけですが、実はこれは、前にも書いたことがあるのですが、多くのAuroシステムを拝聴させていただいた経験からは、個人的な好みでは、やや高域に華があるSPを第2、3層に使う方がいい結果になっているような気がしていて、それを今回は応用し、これらSP群の高域を持ち上げてみた、というわけです。

 

さて、このATMOSでの効果に気を良くして、ついでにAuro-3D用のセッティングでも、第2,3層に同様のTarget Curveを適用してみたところ、<台風一過の晩夏の日差しの下、家を取り囲む木々からの木漏れ日を感じながら、エアコンを入れた涼しい部屋で静かに聴くAuro-3D&ATMOSによる、清々しい『田園』>を満喫しながら、これを書いております(笑)。修正したTarget Curveは保存していつでも適用できるので、暗い冬が来るまではしばらくこのCurveで楽しもうかな、と(笑)。

 

Dirac Liveに高いお金を払った方は、是非、Default以外の設定も楽しんでみてください!いいカーブが見つかったら、是非ご報告を!

2024年8月31日 (土)

本格的比較試聴: 13/48  VS  11/96  @伊豆のメインシステム―「オルゴール博物館」でのAuro-3D音源無料Archiveを使って

子供のころから、「有言実行」をモットーとしております、Auro3Dです(笑)。

 

前回の記事のコメント欄で宣言しました通り、台風の中(汗)、今、伊豆に来ておりまして、「宿題」について真剣に比較試聴をしてみました。

 

以下、科学的レポートのノリ(笑)で:

 

1.問題意識

Auro-3DNativeソースのハイエンドLine Upには現在、①13.1chDiscreetで音が割り当てられている(ハイトセンターと、トップの2chにも、それ以外の11chと同様、マイキング時点で高い位置に設置したマイクで拾った音をエンジニアリング段階で割り当てて再生させている)、48Khzのバージョン(以下、13/48)と、②11.1ch74)に音が割り当てられている、96kHz のバージョン(以下、11/96)がある。後者を、Auro-3DExtend機能を使って、疑似的に13.1chとした場合(ハイトセンターと、トップの2chからの音は、エンジニアの意図とは無関係に、他の11chソースから人工的に生成されたものが再生される)、果たして両者にはどのような「音」の違いがでるのだろうか?

 

2.方法論

21.使用機材

詳しくはここにある通りであるが、第一層7ch (内、メインの5chSonetto VIIIのチャンデバ・マルチアンプ駆動)、第二層5ch、第三層1ch2台SW3台による、13.1ch環境で、VOGDynaudio以外はすべてSonusSonettoシリーズの同一ツイーターで揃えている。AVプリはStorm ISP MK2。

 

22. テスト環境

床面積は約25畳程度、空間容積は通常家屋の40畳の部屋程度。平行する壁の少ない、アシンメトリーな部屋であるが、SP配置はAuroマニュアル通りのほぼ完ぺきなセッティング。なお、スクリーンは使用せず、LCRを同一スピーカー環境として「音」だけを聴き比べた。

 

23.入出力条件

出力に際しては、Dirac LiveARTを適用している。入力に関しては、2台のPCMac &Windows)をHDMI接続し、それぞれブラウザーからKORGLive ExtremeTest Site にある「オルゴール博物館」での自動ピアノ・マリンバ・巨大オルゴールの演奏録音ソースに接続し、20240831-125529_20240831153701 Macでは「13/48」を、

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Windowsでは「11/96」を

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再生できるように調整し、それぞれをLPで操作できるPC画面上のクリック一つで切り替えれるようにしたうえで、両方のPCで同時に再生を開始した。

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これにより、いちいちPCのセッティングを変えることなく、同じ曲の同じ部分を1,2秒の間で切り替えて二つのフォーマットで比較試聴することを可能にした。11.1ch版は13.1ch再生にExtendし、再生時には音量などのパラメーターには一切手を触れず、同一条件とした。

 

3.実験結果

31MCの声

Onマイクで拾われているMCの声はCのみから出ており、11/96の方が声そのもののリアリティが高い。

 

曲と曲の間での、ややOff マイク的になる司会と奏者とのやり取りや、「準備をしている会場音」(ロールの巻き戻し音やコンプレッサーの音、スタッフの足音や咳払いなどの暗騒音)の空間感は13/48の方がリアルであった。

 

32Pianoの音

このPianoの音は、現場で生演奏を聴いてきているので、「本物」の音の記憶を頼りに試聴した。

マスカーニ 「間奏曲」にて

 

13/48の方がピアノ自体に奥行きが感じられ、「音像」に関しては圧倒的にリアリティがある。

 

「音質」は11/96の方が、ハンマーが弦を叩く瞬間の音などはよりくっきりしていて、解像度の高い音がする。ただ、打鍵音が空間に収まって、徐々に減衰して倍音が重なっていく「音場感」は、13/48の方が優れている。

 

33.マリンバの音

①ラフマニノフ 「くまんばちの飛行」にて

 

LCの間に定位している感じはどちらも同様。音質としては、強く叩いている打鍵音に耳を傾けると、11/96の方がより実体感がある。

 

2台のマリンバ ドビュッシー 「アラベスク」にて

 

これは13/48の方が奥行き感が出るのがはっきりわかった。

 

音質は、①とは異なり、やわらかいマリンバの音だとほとんど11/9613/48の違いが分からない。

 

34.リモネール (超大型オルゴール)の音

 

これは現場で本物を見てきているが、2階までの高さがある、見上げる感じの装置である。

 

「チャルダッシュ」にて

 

13/48の方が立体感が増し、上部のシンバル?音も11/96よりはっきりと聴こえる。

 

さらになぜか?低音も13/48の方がしっかり伝わってきた。

 

4.考察

 

今回の結果は、先日、東京の書斎のボロシステムでの結果と大筋では大差が無かったが、やはり「音質」の差についてはこちらのシステムの方がはっきりわかるので、音源によっては11/96のアドバンテージが感じられた。

 

しかし、私の駄耳では、「音質」の差はブラインドだったらどちらがどちらと100%は当てる自信は無いが、「音像・音場」の差であれば100%ブラインドでも当てる自信があるほどの差があった。これは、書斎のシステムが11.1ch5+5+1)であるのに対し、伊豆のシステムはフルシステムなので、より奥行き感などの表現に優れるのかもしれない(SP配置が書斎に比して正確であることも大きい可能性大)。

 

東京の書斎に比して意外な発見であったのは、特に最後のリモネールと2台のマリンバの共演において、低域の再現性に明らかな差があったこと(書斎のシステムでは気が付かなかった)。低音の質も量も、明らかに13/48の方が上回っていた。今回の二つのソースはどちらもLFEには音の入っていない13.0ch11.0chソースであるため、ミキシングの段階で両者のLFEの音量が異なっているということはあり得ない。拙宅ではARTによって3台のSWも低域再生に寄与しているのだが、その出力がNative13ch Extend 13ch で変わるということも考えられない。

 

ゆえに、この原因は、もしかすると、Native13chの方が、「平面波」がより正確に形成されるためかもしれない。

 

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今回の実験レポートは以上ですが、前回も書いたように、私の「Auro耳」は、かなり「空間表現」に敏感で、それを高く評価する傾向にあることは否めません。Donguriさんも指摘されておられたように、機材や部屋が違うと(さらに「耳」が違うと=ご自分の耳で拙宅での実験を追試したい方はいつでも再現できますのでご連絡を!)、異なる結果になる可能性は十分にあるため、同様の実験をされた「友の会会員」の方のレポートをお待ちしたいと思います。特に、Stormでは、Auro信号を検知するとすべて13chにExtendする仕様になっているため、「では、11.1chのNativeソースを、11.1chで再生した場合との音の違いはどうか?」との問題意識を私のシステムでは実験することができませんので、是非、デノマラのハイエンドAVアンプをお持ちの方はこれもやってみていただきたいと思います。

ただ、11chをExtendして13ch化するというのは、素人の勘では(汗)、HCの音は、HLRから半分ずつ、TOPの音は、SHLRから半分ずつ取ってきて合成しているのだろうと思っているので(つまり両サイドのSPのセンターにファントム再生させるつもりの「音」を抽出し、実SPからも再生させている)、11chとそのExtend版である13chの「音質、音像、音場」は、HCやTOPに使用しているSP2台に他に比してよほど性能の低いものを使っているのではない限り、大差ないのではないかと私は見ております。

ゆえに私の<研究結果と考察>を是とするのであれば、ATMOSのスピーカーレイアウト(つまり、HCTOPが無い)でAuro-3Dソースを聴いても、その(個人的には)最大の魅力である、空間表現力は十全には発揮しきれない、ということが言えると思います。

私自身は、<Auro聴くなら、Native 13ch一択>であることを再確認した次第です(笑)。

2024年8月17日 (土)

Auro-3D 13.1chの、有料ストリーミング配信を聴きました!!!(恐らく、世界初の商業クオリティのもの?)

すでにここでも何度も紹介しているWOWOWKORGのコラボ?のプロジェクト、Jazz not only Jazz 公演のLiveAuro-3D13chフォーマットで収録したものを、解禁日の昨晩、無事伊豆のシステムで聴くことができました!

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11.1chのハイレゾAuro-3DソースならBDであまたあるが、13.1chフォーマットの音楽ソフトは私の知る限り未だ販売されていない(実験的なものは存在するが、商業ベースに乗るクオリティのものはまだないはず)ので、私的には13.1ch一択!!!

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技術的な詳しいことは、オーディオ評論家の生形三郎氏が記事にしているので、そちらを読んでみてください。

 

録音を担当・指揮された、WOWOW技術センターのエグゼクティブ・クリエイターである入交英雄さんは、常々、「Auro-3Dで最も重要なスピーカーは、センター」と言い続けておられるだけあって、彼が手掛けるAuro-3DソフトはLCR3台が同じSPであることを前提にエンジニアリングされているようで、このストリーミング配信でも彼の<哲学>が垣間見れたような気がします。

 

まず第一部?は、JazzというよりはPopsみたいに私には思えたのですが、ボーカルはセンターだけに入力がある、という「入交流」(笑)。

 

次にピアノ好きな私の本命の上原ひろみは第二部(1時間40分過ぎから、2時間5分あたりまで、約25分間の出演)のトップバッターだったんですが、Lとセンターの間に彼女のYAMAHAのピアノを定位させている(これも入交さんがよくやるテクニック!)。

 

彼女はシンセサイザーも演奏することがあるのですが、これはセンターを中心に左右上下に広がりのある音像になっていました。

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これ、最初のゲストのボーカルも上原のピアノも、センターレスか、センターがLRと異なるSPの場合は、「Director’s intention通り」には再生できない録音になっています。この辺は入交流は<容赦ない>というか(笑)。SACDマルチやLive映像付きの音楽BDなんかだと、センターレスのユーザーやセンターがLRとは異なるものを使っているユーザーが少なくないのを<勘案して>(笑)、センター<だけ>に音を入れたりL(またはR)とCとの<間>に主要な楽器の音像を定位させるようなことはせず、モノによってはボーカルをCには全く入れず2chと全く同様にLRだけに振ることでセンターに定位させたりピアノやドラムをLかRのいずれかを中心に配置したりして、<センターSPはただのアンビエント音しか入っていない!=センターが無くても違和感が無いように、その役割を最小限に留める>、なんてソフトも少なくないのですが・・・(汗)。

 

言うまでもなく、今回の配信サービスはLive映像付きなので、拙宅には一応スクリーンもありますから、スクリーンとプロジェクターを使って、「映像を見ながら音楽を楽しむ」というスタイルを取ることもできるのですが、そうすると拙宅の場合はセンターSPがスクリーンで隠れてしまい、サウンドスクリーンではないので「センター」はスクリーンの上下に設置してある小型ブックシェルフでVirtual Centerになる設定になってしまいます。つまり、スクリーンを出すと、CをLRと同じものを使うことができないのです。


私は最初のゲストのボーカルがセンター「だけ」から出ていることを確認したので、スクリーンを使うことなく、LCR同一SPという「正しいAuro-3Dのスピーカーレイアウトによる13.1ch再生」で<聴く>ことに徹しました(笑)。

 

目を瞑って耳に集中して「音楽だけを聴く」と、何度も足を運んだことのある、NHKホールの空間感が正しく表現されていることに気が付きます。まさにこれは「臨場感」、つまり実際にこのコンサートに行って聴いた気分が味わえました。

 

これ、有料でそこまでは安くはありませんが(汗)、23日まで配信していて期間中繰り返し聴けます(週明けには東京の書斎のシステムでも聴いてみよう!)から、興味のある方は是非! 特にATMOSには無いSPである、センターハイトとトップ(VOG)の2台をAuro-3D用に設置している方にとっては、世にも希少な、<ホンモノのNative Auro-3D 13.1ch>ソースですよ!!! Don't miss it!

2024年8月 2日 (金)

Live 3連荘!―Jazz、Rock、Classic!!!

今回は、Liveコンサート(まあ、一つは「Auro-3D版Live」だが)に3日連続で、しかもJazz、Rock、Classicの3大ジャンルを横断するという、自分の短くもない(汗)人生の中でも初めての経験を(笑)、「オーディオ的観点から」紹介してみたいと思います。

 

まず、初日は、これ。

 

P (HPより引用)

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実は上原さんのコンサートは、個人的には今回が2回目で、1年ほど前にTomyさんとご一緒しています(その時は、矢野顕子とのDuo Piano)。で、今回はSiltechさんとご一緒しました(笑)。いうまでもなく、上原さんも出演する、来たるLive収録のAuro-3D 13.1ch配信(8月16日―23日)の<予習>(本物のLiveと、伊豆のシステムでの「Auro-3D Live」の比較検証のため!)を兼ねての参戦です。

 

場所はBlue Note Tokyoで、Siltechさんが取ってくれた席は、なんと!下記の写真の角度(上原さんがばっちり見える!)で、ピアノまでの距離約2M!!!

 

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前回Tomyさんとご一緒させていただいたコンサートは、確か有楽町の国際フォーラムの大ホールで、ステージまでこの何十倍の距離があったので、当然、PAを通しての音を聴いたわけですから、まあ個人的な判断基準では、「音楽を聴きに行った」というより、「上原・矢野のPLAYを見に行った」(笑)という感じでしたが、今回は違います!

 

ピアノはピカピカに磨き上げられたYamahaのコンサートサイズのもので、蓋の反射版の角度も、心なしかClassicのコンサートよりは閉じめ?に見えました(先日の清里でのPianoコンサートに比して)。

 

ただ、Blue Note Tokyoに行かれたことのある方はご存知と思いますが、ここはPA(JBL)も入っています。ステージの中央上部(4−5Mぐらいの高さ)に、Line Arrayスピーカーが2台並んでいましたので、私の勘だと恐らくピアノの音はここから後部座席に届くように再生されていたと思います。ここ以外にもステージの奥と左右にもありますが、ここからは恐らく、エレクトリックベースの音を中心に再生されていたように感じました。ただ、2Mの近さでしたので、我々の席は多分、ピアノとドラムスはほとんど、PAを通さない直接音で満たされていました。

 

上原さんの演奏は相変わらずEnergeticで、直接音主体の「Jazzらしい」音質・音像・音場が楽しめました。私はまだたった2回しか彼女のコンサートに参戦していない「にわか」ファンですが、前回と同様に<とても楽しそうに>、活き活きとニコニコとPLAYされているのを再確認できました。彼女が日本以上に、特にアメリカで人気があるのは、作品(基本、彼女のオリジナルです)や演奏の素晴らしさもさることながら、この「キャラクター」がアメリカではMustな資質だよなあ、と、米国留学の最初に自動車免許を取りに行った時、写真撮影の際に、やたら、「Smile!!!」と声をかけられた記憶が蘇りました(日本の免許証の写真は笑って歯が見えると撮り直しになるのに=笑)。

 

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翌日は、これです。

P (HPより引用)

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Mr.BIGというアメリカのロックバンドの日本公演のLiveを、WOWOW(入交さん)がAuro-3D録音をしたBDが、9月6日に発売されるそうで(私の知る限り、Rock のAuro-3D録音版が出るのは初めてかと)、その「完成披露試写会」に来ないかと入交さんにお招きを受け、初日の初回に、私とグランドスラムさんとCmiyajiさんの3人で参戦してまいりました(笑)。

 

正直申し上げますと、私はこのバンド、全く知らなかったのですが(汗)、このLiveで34年に渡る活動を終えるとかで、「ベストアルバム」的なLine Upだったらしいのですが、私でも「聴いたことあるな」という曲が2曲はあったので、結構Smash Hitsをかつては飛ばしたバンドのようです(別の日に参加されたSiltechさんはよくご存知のようでした)。

 

WOWOWのスタジオにお邪魔するのは今回が3回目ですが(2回目は事実上、「Auro-3D友の会」設立の契機となったもの)、前回同様、ムジークのプロ用アクティブスピーカーに囲まれた、VOGのDelay以外は無補正で機能するように距離や角度を完璧に調整してある、作品を市場に出す前にチェックを行う「モニタースタジオ」です。

 

Live会場は武道館で、私はこのMr. Bigのコンサートには参戦していませんでしたが、もちろんここでのロックコンサートは大学進学で上京してきて以来、何十回?と行っている、聴き馴染みのある「空間」です。この「空間感」が、かなり忠実に記録されているようで、目を瞑ると、武道館のあの巨大な空間の中にいる感じが極めて精緻に再現されているのに驚きました。これは是非、BDが発売されたら、伊豆のセットで再生して記憶の中で聴き比べたいと思います!

 

上演終了後、Q&Aタイムがありましたので、元記者・現学者として、このような機会に沈黙するタイプではない私(笑)は、挙手の上、入交さんと以下のやりとりをしました。

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Q: 発売されるBDのフォーマットは、96/24の11.1chだと思うのですが、今日聴かせていただいている13.1ch版のレゾルーションは48/24?

 

A: 96/24です。

 

Q: この作品は、最初からAuro-3Dで録音するためのマイキングをして臨んだのか?それとも、Bob JamesのBDのように、通常の録音ソースを活用してAuro-3D化したものなのか?

 

A: 最初からAuro-3Dのマイキングで収録したものです。

 

Q: 途中で、ギターサウンドが空間をぐるっと回ったり、サブボーカルがサラウンドSPから再生されたりしましたが、これは実際のLiveでもこのような演出がされていたのか、それともAuro-3D化する際に入交さんのミキシングで入れたのか?

 

A: 実際のLiveではあのような音像にはなっていません。Auro-3D用に私のミキシングで入れたものです。

 

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さて、さらにその翌日(笑)。最後はこれ

 

P (最後のカーテンコールは写真撮影が許可されていた)

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「交響曲の王道」と題されているだけあって、普通はどちらか1曲で客を釣って(笑)、もう一曲は渋―い、玄人受けする、私レベルではさっぱり聴いたのことのない(汗)曲を組み合わせるものですが、今回の2曲は、天丼と鰻丼がセットになっているような(笑)。有名曲好きで(というかそれしか知らない…)、さらに甘口好きな私に取っては、自分の中の好きな交響曲ベスト5に両方入っている選曲で、高校生ぐらいの頃から死ぬほど(笑)聴いている2曲なので、一音たりとも「知らない音」は無く、指揮者代われそう(実際、客席で指だけで「振ってました」=爆)。

 

今回、このコンサートに足を運んだのは、演目もさることながら、会場が、「ミューザ川崎シンフォニーホール」だったということも大きいです。関東地方にお住まいの方でClassic好きの方なら、「知らぬものはいない」ホールで、その理由は「音が良い」とされているからですね。

 

恥ずかしながら実は私は今回、ここのホールに行くのは初めて。東京の西部に住んでいるものにとって、「川崎」って、ものすごく遠いイメージなので、「そんな遠くまではるばる行かなくても都心にいいホールはいっぱいあるし」(笑)という感じで、これまでわざわざこのホールに行こうとは全然思わなかったのです。でも、演目に惹かれて調べてみると、川崎って東京駅から東海道線で15分ぐらいで着いちゃうんですよね。しかも駅から雨に濡れずに1、2分で歩いて行ける。「こりゃ、仕事帰りでも7時からのコンサートに間に合うわ」と認識を改めました。

 

ということで、今回の目的は音楽鑑賞に加えて、「ホール鑑賞」(笑)。ここが「音が良い」と言われる秘密は、絶対にオーディオ(ルームアコースティック)にも活かせるだろうと、会場を見て回ってきました。

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まずすぐに気がつくのは、オケが「すり鉢の底」のようなところにある。オペラのオケピのようだ、というとちょっと言い過ぎですが、<オーディオ的に考えると>これは「音量」の確保、という点ではメリットが大でしょう。音の逃げ場が少ないですから。

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その代わり、オケと同じ高さのフロアの面積が比較的小さく、さらに「第一層」(笑)の一番後ろの客席のすぐ後ろが壁になってしまっています。<オーディオ的に考えると>ここはマズイ。LPのすぐ後ろに壁、というのがダメだというのは、どのオーディオの教科書にも書いてありますよね。確実に反射音で音が濁ります(距離が短いので、「ホール音」として分離して知覚できず、ただ直接音をゴースト化してしまう)。一応、この「壁」はQRD風の、音を拡散させる工夫がされていましたが。

 

Classicに造詣の深い友人から、「ミューザで聴くなら2階席」と聞いていたので、今回は2階のやや右サイドの席を確保していました。ここだと、後ろの壁からは遠く、左右の壁との距離もたっぷりあるので、反射の悪影響は少なそうでした。

 

もう一つ、ルームアコースティック的に興味深かったのは、天井の「穴」(笑)

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エアコンのダクトにしては大きすぎるしたくさんありすぎるので、これは恐らく吸音トラップなんでしょう。「天井吸音」というのはかつてGRF邸でも体験していますが、もしかすると「いい音響」の一つのKeyかもしれませんね。ただ<個人的には>天井からのホール音が好きだからAuro-3Dというフォーマットに惹かれているのですが(笑)。

 

最後に、音楽的に興味深かった点を一つ。

 

今回のブラームスの1番はもう何度かLiveで聴いていますが、モーツァルトの40番は、たぶん、中学生の頃に母親に連れられて行って以来のLive。その頃には全く気がつかなかった、「現場ならではの発見?」があったんです。

 

私は中でも、ちょっと幻想的な感じがする第二楽章が好きなのですが、あの冒頭のパッセージって、3小節がセットになっていると思うんですが(音楽的素養がないので、間違っていたらご指摘ください=汗)、あれ、最初の1小節がビオラ、次の1小節が第二バイオリン、最後の1小節が第一バイオリンという風に、弾き分けているのをご存知でした?これ、全部同じ音程なので、普段映像レスの音源しか聴かない私は、完全に3小節全部同じように演奏(例えば、第一、二、ビオラの合奏とか)されているものだと思い込んでいました(ビオラのド、とバイオリンのドの音色の違いに気が付かなかったワタシ=汗)。

 

ご存知のように、一般的なオケの楽器の配置だと、ビオラが指揮者の右サイド、第二バイオリンがほぼ正面、第一バイオリンが左サイドになってますよね。ということは、このパッセージ、音が右から左に流れていくんですよ。このパッセージは何度か途中でも出てくるのですが、なるほど、だからなんか幻想的な感じ(「牧神」と通じるところがある。当日配布されていたパンフには、この曲はロマン派に片足突っ込んでいる、というような紹介のされ方がされていたが、さもありなん!)がするんだな、と。

 

で、改めて手持ちの40番を伊豆システムで聴いてみました。定番のベームのウィーンフィルのと、ラトルのベルリンフィルを(どちらも2ch)。と、確かにどちらも最初の1小節(つまり、ビオラパート)は、右サイドから音がするようにエンジニアリングされています。次の2つの小節は私の駄耳(または拙システム)では、はっきりと「中央と左」のようには分かれては聴こえませんでした。

 

でもミューザでは、目を瞑って聴いてもこのパートがはっきりと右から左に音が流れているのがわかったんです。<オーディオ的に考えると>私の席はオフセンターでしたからこのような音像定位はセンターに陣取らない限り(特に2chなら)はっきりとはわからないはずなのですが、こういうところがミューザが「音がいい」と言われる所以の一つなのかもしれないなあ、と思いました。

 

これは是非Auro-3D録音版が出て欲しいところですね。恐らくRCLの順にきっちりと1小節ずつ主音が割り当てられるでしょう。そうするとオフセンターで聴いても右から左に音が流れるのがわかるはずです。サービスエリアが広いのが、Auro-3Dというフォーマットのメリットの一つ、というのは、入交さんが常々おっしゃっていることですから。

 

さて、3日連続で異なる種類のLiveを聴いて、「Auro-3D」聴き(笑)の私の耳には、やはり小さなLiveハウスでのJazzはあまりAuro映えしないだろうな、と感じざるを得ませんでした。最近、すっかり「前からの音より横や後ろからの音に敏感」(笑)になっている<Auro耳>には、大きな空間にこだまする、観衆の拍手や叫び声を含めた大音響(RockやPopsかな?)による包まれ感や、中規模な空間に漂う倍音(Classicのホール音)の乱反射して消え入る様が、その音楽性のキモになっているような音源は、Auro-3Dと親和性が高いのは間違いないと三日連続のLive体験で改めて思いました。Jazz ClubのLiveも確かにオーディエンスのプレゼンス感などは2chよりSACDマルチの方がよく出ていて好きなんですが、Auro-3Dの強みの一つである、「高さ感」の演出はそこまで重要ではないので、キースの「ケルンコンサート」のようなもの以外は、Auro-3D(Matic含め)のメリットをそこまでは活かせないかな、と感じました。ただ、「奥行き感」はAuro-3Dだと確実に2chより出るので、たとえばピアノの立体感、のような部分に耳が行く方はAuroにメリットを感じるでしょうが、まあ、Jazz好きの方はたいてい、JBL+マッキン的な(笑)、「音が前にずんずん出てくる、かぶりつきで聴いているかのような音場・音像」を好まれるので、「ピアノがちょっと遠くで鳴って、余韻がホールに吸い込まれる」ような音場・音像はお好きでない方が多い気がします。

いつか、Jazzの素晴らしさを最大限に発揮しているNative Auro-3Dソース、というのが出てくると、Auro-3DファンをJazz好きの領域にも増やせるキラーコンテンツとしてとてもいいのですが!

2024年7月24日 (水)

入交氏のAuro-3D 13ch 音源の「現場と演奏」を確認してきました!

矢継ぎ早の投稿ですが(笑)、私は季節労働者なので、今、夏休みモードなんです!(だからといって、こんなことばかりしていてはマズいのだが・・・汗)

 

今回は、前回のDonguri邸訪問に先立って行った、清里におけるピアノコンサートにまつわる、Auro-3D的エピソードを少々(笑)。実は、これ、すべて我らが!WOWOWの入交さんと関係しているんですよ!

 

まず、会場の清里の「オルゴール博物館」。

 

すでにピンと来ている方も多いと思いますが、ここは、今年の228日、KORGLive Extremeという方式で、入交さんがエンジニアリングをしておられた「世界初の?映像(フルHD)+音声AURO-3D (Auro Codec/96kHz/5.1.4ch)フォーマット」による、Liveストリーミングが行われた発信元の会場です。

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わたしはもちろん参加試聴させていただいたのですが、伊豆のインターネット環境の問題か途中でブチブチと途切れたし(泣)、また当時は「Sonetto VIIIのチャンデバ化作業」に追われていたこともあり(汗)、ここのブログで記事にするのは見送ってしまいました。

 

幸い、我々友の会のDonguriさんがPhil-Mに記事をUPしてくれましたので、そちらで知ったという方も少なくないかもしれません。

 

今回、この同じホールでのコンサートとのことで、一応(社会)科学者の端くれとして(笑)、「伊豆の拙宅のシステムで再生された、Auro-3D Nativeによる音場・音像・音質感と、現場の本物の音の違いはどの程度あるのか?」という問題意識を抑えきれなかったというのが参加を決めた理由の第一。

 

そして、さらに興味を引いたのは、ピアノピアニストピアノ曲

 

「オルゴール博物館」にあるグランドピアノは、アメリカのアンピコというメーカーの「チッカリング9フィートモデル」というものです。これは今はもう存在しないメーカーだそうで、日本ではかなり珍しいピアノではあるようです。1926年製ということで、約100年前のもの。長らく放置されていたらしいのですが、最近、弦?とハンマーをすべて交換して、蘇らせたものだそうです。

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私は、楽器の中ではピアノの音色が一番好きで、ピアノ曲であれば、ショパンでも武満徹の曲でも、ビルエバンスでもポリーニでも久石譲でも(笑)、何でもOKなんです。で、最近、ピアノにはとてもお詳しいKKさんの影響でピアノのメーカー別の音色の違いにもちょっと関心を持つようになり(笑)、この前のLive Extremeの際に、自動演奏装置によってここのピアノが鳴らされていた「音」が結構気に入って、「本物を聴いてみたい」と思ったというのが、理由のその二。

 

そしてピアニストの福井真菜さんという方。特にどこかのレーベルに所属しておられるわけではなく、ソロのプロなので、そこまで知られている方ではないかと思います。で、「なんでそんな方をお前が知っているの?」というと、それは、先日入交さんに誘われて参加した、OTOTENで彼女の演奏を聴いたからです(以下の写真はその時のもの)。

 

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ただし、OTOTENですからもちろん「生演奏」ではありません。入交さんのAuro-3D Native 13ch 録音です。

 

彼が、福井さんのピアノ演奏を録音した(会場はオルゴール博物館ではない)ソースをGenelecのブースで聴いたのですが、その演奏が気に入ったんです。司会をしておられたオーディオ評論家の山之内さんが、「いつもあんなにゆっくりとしたテンポで演奏されるんですか?」と会場にゲストで来ていた福井さんをイジっていた(笑)ぐらい、独特な演奏で、<甘いもの>なら何でも好きな私の好みにぴったり(爆)。フランスものを中心にしておられるようで、その時もドビュッシーの曲が一番多かったと思うのですが、演奏時のこだわりが、「微妙なタッチのために素足でペダルワークをする」ことだと伺い、これは一度見てみたいな、と(笑)。

 

あまりに気に入ったので、終了後ご挨拶をさせていただき、「今度、Liveコンサートはいつ、どこ?」と伺うと、「清里のオルゴール博物館」だとおっしゃるではないですか!何たる偶然!!!

 

そして最後の決め手は、ピアノ曲。ドビュッシーの「沈める寺」というのは、ピアノ好きな方なら知らぬ方はいないであろう名曲で、いままで何度も聴いているはずでしたが、今回、OTOTENで入交プロヂュースによるAuro-3D Native、しかもGenelecGLMという最新システムと最強モニターSP群の組み合わせで聴かせていただいた「沈める寺」に、鳥肌が立ちそうなぐらいの感動を覚えまして(笑)。特に最低域の鍵盤を「ドーン」と鳴らす部分がとても印象的な録音になっていました。「この曲にこんなに感動的な低音が入っていたとは!」と、家に帰ると早速Streamingも使って他の演奏者の録音(ただし2ch)のものをいくつか聴いたのですが、正直、入交録音版ほどの感動が得られない。せいぜい、グラモフォンのメナヘム・プレスラーというお爺ちゃん(笑)が演奏するTakeがそれに近いぐらい。

残念ながらこの曲はこれまで私はLiveで聴いたことが無かったので、「こりゃあ、生でどの程度の低音が出ているのか、実体験するしかない」と、「オルゴール博物館」での福井さんの演目の中に「沈める寺」が入っているのをネット検索で確認し、チケットを取ったというわけです(笑)。

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ということで前置きが無茶苦茶長くなりましたが(汗)、偶然にもすべて入交さんつながりで、ここに行くのがDoomedであったかのような(爆)。

 

さて、当日は関東地方では公立学校が夏休みに入ったばかりというタイミングでしたが、さすがに家族連れが来るような選曲ではなく(武満も入っていましたし=汗)、指定席方式ではなかったのでちょっと早めに行ったこともあり、なんと、一番前、ピアノが置いてあるのと同じフロアで距離約1.5M!!!の、演奏者の真横の席に陣取ることができました(まるで、KKさんのご自宅の音楽室みたいな距離感だった・・・あそこはスタインウェイだけど)。

 

<私の席からの写真!!!> クラシックで(ジャズならまだしも)、プロのピアノ演奏をこの距離で聴いたのは初めて!

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入場前にピアニストの福井さんが出迎えてくれ、私のことを覚えていてくれたようで「あら、本当にいらっしゃってくれたんですね!」と握手(笑)。

 

正面に「リモール」と呼ばれる巨大なオルゴールがあり(残念ながらこれは聴けなかった)、その前に「チッカリング9フィートモデル」が置いてある。演奏開始までに時間があったので、中を覗かせてもらうと(普通のコンサートホールではいくら演奏前でも舞台には上がれないですよね!)、弦やハンマー、その他の金属パーツはピカピカで、中身は新品のよう(交換したばかりなので当然か=笑)。

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時間になると照明が落とされ、福井さんが入場。本当に<はだし>で入ってきた(冬ならどうするんだろう?=笑)。自己紹介の後、着座されると、右足の親指と人差し指(とは言わないな=汗。第二指というのかな?)の間に、3つある中の一番右側の真鍮(恐らく)のペダルを挟むように。

 

ここから先は私のような音楽的素養の無いものには、楽譜の解釈なり、演奏のテクニックを描写する語彙は残念ながらありません(泣)。

ただ、音場感としては、天井が高く、かなりLiveな会場のAtmosphereは、Auro-3DLive配信を拙宅で受けたときと極めて近い印象を持ちました。

 

音像感(定位)は、これは目の前1.5Mですし、圧倒的にLiveの勝ちです。目を瞑っても指が左右(音像的には<前後>です)に動くのが分かる。右手は手前(私から1.5Mのところにある弦をハンマーで叩いている)、左手は奥(私から2.5Mは離れている)。この1Mの音源の位置の差は、私の席でなら誰でも聞き取れると思いますが、さすがに、Streamingによる拙宅のAuro-3Dシステムではここまでの再現性は無かった(まあ、Mikingにも拠るのかもしれないが)。

 

音質も、これも言うまでもないです。もし2月末に聴いたものが、Live Streamingではなく、Onマイク、Offマイクを多用したマルチ録音ソースを、エンジニアが「これでもか!」というぐらい、f特も位相も定位も盛りに盛って(笑)ミキシングして作り込んだ録音ソースとの比較であれば、<Liveあるある>で(汗)、自宅のシステムの方が音(音像定位と音質)がいいかも?、という感想を持つこともあるかもしれないが、1.5Mの距離にあるグランドピアノを小柄なピアニストが腰を浮かせて全体重をかけて弾く(というより「叩く」)フォルテを、「完璧に再現できる」オーディオシステムなんて何億円かけても、いくら我らがAuro-3Dシステムでも、作れるはずがない(笑=一応、コンサートの翌日、donguri邸を辞した後伊豆まで車を走らせて、ミシェル・ベロフのSACDマルチによる同曲をAuro-Maticにしてほぼ同じ音量の下で聴き比べてみたが…)。

 

最後に、「沈める寺」の低音パートですが(これを聴きに行った=笑)、「チッカリング9フィートモデル」、結構深い低音がでていました。会場が木造の教会のような作りで、前述の通りピアノが置いてある木製のフロアと観客席が地続きなので、床の振動も多少感じられ、Literallyに(笑)、「腹に響く」低音を体感できました。これはちょっとだけ、伊豆の拙宅でも、Auro-3Dが形成する「平面波」と、強力なSW3台のサポートを得ての「体感する低音」を彷彿とさせるところがありました。高級なプロ用モニターヘッドフォンでも20Hzは出るそうですが、やはり、このあたりの周波数は「耳で聴く」だけでなく、床や壁の共振およびそれらによる空間の空気の振動込みで「体で聴く」感じの方がRealityがありますよね!

 

これは事前にKKさんと情報交換したことなのですが、この世の中には、通常のグランドピアノの鍵盤を、さらに低い方に9鍵のばした、「ベーゼンドルファーのインペリアル」というピアノがあるそうで、KKさんによると楽譜上は「沈める寺」ではこの延長された鍵盤を使うことはないそうですが、このピアノを使えば倍音としては作用して低域の量感が増すらしいです。OTOTENで聴かせていただいた入交さんの録音の「沈める寺」が、この「インペリアル」を使ったものかどうか、今度お会いしたら是非伺ってみたいと思っています。

 

結論的に言って、「Auro-3DによるLive Streamingの再生音」と「現場の再生音」の比較では、音場感はまあまあいい勝負ができているが、音像定位はやはり「現場」に軍配(ただし、これはLive同士の比較だから。人為的に作り込まれた録音芸術作品との比較であれば話は別)、音質は低域に限ってのみそこそこ、という印象を持ちました。

 

それにしても、あの、福井さんのAuro-3D Naive ソフト、発売してくれないかなあ!もう一度、今度は伊豆のシステムで聴いてみたい!!! 入交さん、頼みますよお(笑)。