2023フォッサマグナツアー

2023年10月25日 (水)

『Auro-3D入門』<実践編>(No.7 グランドスラム邸)-ATMOS配置のSPで、Auro-3Dを聴くとどうなる?

学園祭の振替休日を利用して、グランドスラム邸に行って参りました。もう何度目かな?結構、自宅から時間がかかるんですけど…(笑)。

 

今回は、実は「お招き」を受けまして、「泊りがけで来い」と宿泊先まで用意してくれて手ぐすね引いて待っておられました(「お招き」というより、「招集」か?=笑)。というのは、例の、Dirac Liveの新技術、ARTActive Room Treatment)のセッティングに来い、というわけで(汗)。これは現状、StormAVプリを持っている方だけの特権!ですから、同じAVプリを持っている(ただし、プチ自慢しておきますが、彼のは16ch版、私のは32ch版!)者同士としては、「早くART仲間が欲しい」(ここまでは「一人ぼっち」だったので・・・)こともあって、「出張要請」を受け入れたというわけです(どなたのところにも呼ばれたら必ず行く、というほどヒマ(笑)ではないので、念のため=汗)。

 

まあ、実は私の方にも訪問の狙いはあって、それは、何と言っても、「Auro-3DAtmos用に、それぞれ専用のSP群を第二層に配置したから、そのキャリブレーションをしてから比較試聴どう?」という、イマーシブオーディオファンなら誰もが興味を持つテーマが用意されていたのです。

 

グランドスラム邸にはこれまで4回ぐらい訪問しており、その度に、詳細な訪問記を旧Philewebに書きました。例えばその一つとして文章だけの燃え残り(笑)が以下にあります。

https://philm-community.com/auro3d/user/diary/2021/12/18/9817/

 

そのシステムの概要については、もう繰り返しませんが、この前のフォッサマグナツアーの時の写真やデータが以下にあります。

 http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2023/08/post-29b26d.html

 

ですから、<実践編>としてはあまり新味がない(笑)のですが、今回の訪問時には上記から、1.サラウンドバックを無くして、「グランドスラム」で第一層は5chを形成(ただし、この構成は「期間限定」だそうで、来年4月以降はセンターは「グランドスラム」ではなくなるそうですから、<LCRそろい踏み>を体験したい方はお早めに!)。その分、LCRLPとの距離を1Mぐらい離した(5.2.5.1)2.Auro用の第二層・三層のSPをすべてSignatureモデルにした(?)―という大きな変更点がありました。もちろん、最大の変更点は、ATMOS用の4台の第二層のSPATMOS用語でいうところの、トップフロントLRとトップリアLR)と切り替えて、Auro-3D(Matic)用の第二層・三層用の5台のSP(ハイトLCR、サラウンドハイトLR)を鳴らせるようにした点です(Jeffのパワーアンプを取り付けたそうです。機種は?グランドスラムさん補足して!!!)。もちろん、これらのSP群は各フォーマットが定める文法通り、ATMOS用は「真下」に向けて、AURO用はLP頭上に向けてセッティングされていることは言うまでもありません。

 

<真下を向いている805はATMOS用、LPに向かっているのがAuro用の805>

Img_2367

ここで、念のため強調しておきたいのは、<普通は・並の人は(笑)>ハイトLR・サラウンドハイトLRFOR AURO)と、トップフロントLRとトップリアLRFOR ATMOS)は、同じSPを共有しているはずです。私の知る限り、ここにわざわざ別々のSPを配しているのは、他にはDonguri邸と、WOWOWのスタジオだけです。

Img_2389

ただ、Donguri邸は二度ほどお邪魔したことがありますが、AURO用とATMOS用のSPが全く異なるメーカー・方式であるのに対し、グランドスラム邸はバージョン違いではあるにせよ、同じB&W805であるという点が優れています。つまり、Donguri邸は、同じ曲をAUROシステムとATMOSシステムで聴き比べようとしても、比較の対称性に乏しいため、出音の違いが、フォーマット(方式)の違いのせいなのか、SP自体が異なるからなのかが残念ながら正確には弁別できません。

Img_2368

この点、両フォーマットの違いを研究する上で、グランドスラム邸は格好の実験場だというのが、私が今回「釣られた」最大の理由でした(笑)。

 

<Auro-3Dの文法通り、第一層のSP群の垂直上にAuro用の805を設置してある>

Img_2371

初日の到着後、すぐにキャリブレーションを始めたかったのですが、グランドスラムさんは前日までSPを理想の位置に動かすのにかかりっきりだったらしく、肝心のStormAVプリの準備(ファームウエアのアップデート)も、Dirac Liveの準備(最新ソフトのダウンロードと、ARTのライセンスの購入)も全く(笑)してない(泣)。

Img_2384

つまり「完全おまかせ状態」だったので(汗)、まずそこから初めて1時間。ようやくAuro-3D配置からキャリブレーションに入ると、Bass ControlDLBC)まではできたのですが、ARTが構成できない。理由は、測定後に「!」のサインが出る、つまりこれは「適正に測定できていないのでやり直せ」ということ。で、その後何度やってもうまく行かない。そうこうしているうちに宿のチェックインタイムが迫ってきたので、「明日の朝早くからもう一度」ということになって、一旦切り上げました。

 

宿では色々「面白い話」があったのですが、流石にそれは割愛(笑)。翌朝、再度取り組みましたが、同様にエラー表示が出て進まず。気分転換に(汗)と思って、ATMOS用のSP配置をConfigureして、これでキャリブレーションを開始してみたら、なぜかこちらはスムーズに進み、ATMOS用のDLBCARTの補正Setを作ることができました。その後、ARTDLBCの聴き比べを念入りにしたのですが、この部分はグランドスラムさんから別に詳しく報告があると思います。この時点でとりあえず、Auro-3DMatic)用とATMOS用のDLBCは完成したので、ART同士でないのは少し残念でしたが、この二つで私は、今回の自分の「問題意識」による実験に進みました。

 

まずは、<実践編>らしく、お部屋のスリーサイズを。W5.3ML7.9MH3.92.9M(勾配天井)。音響のプロに設計・施工させたという素晴らしい音響特性(たぶん=笑)と防音性能・剛性を備え、さらに「マイ電柱」でダメ押ししているという、個人のリスニングルームとしては<やり尽くしている>環境です(汗)。

 

<フロントハイト群とVOG用のJeffのデジタルパワーアンプ(?)2台をスクリーンケースの上に設置>

Img_2388

次に、前回のフォッサマグナツアーで、グランドスラム邸に来た時に感じた「問題点」について。さすがに、「総括」には「いい点」しか書きませんでしたが、課題曲の中でグランドスラム邸において「課題」を残したと(他の参加者はともかく)私が感じていたのは、『New Year’s Concert』でした。これはコメント欄にチラッと書いたのですが、この中の少年少女の合唱が入っている曲において、バルコニーにある合唱の高さとオケの高さにあまり差がない(オケが高すぎる)という問題でした。

 

その原因は、巨大で背の高い「グランドスラム」が、LPに近すぎたのです。ツアーの時には、グランドスラムさんはかなりサービス精神を発揮したらしく(笑)、LPを地上5chSPからほぼ等距離にしたそうです。つまり、以前に私がお邪魔した時よりLPを前に出して、LCRとの距離を縮め、その代わり、斜め後ろに置いたサラウンドとの距離を稼いだというわけです。その距離3M

 

「等距離原則」はサラウンドのSP配置の王道の文法ではありますが、グランドスラム邸では一つ大きな問題が。

 

<サラウンドSPと、サラウンドハイト(Auro)、トップリア(ATMOS)>

Img_2369

こういう巨大なSPは、見かけ上の「点音源」とみなせるまでLPから離すのが鉄則で、でないと、音源が「縦長」になってしまいます。いわゆる、「近接効果」というやつです。拙宅のSonetto VIIIクラスであれば3Mで十分でしょうが(事実、拙宅は約3Mです)、あの巨大な「グランドスラム」では3Mでは「近接効果」が目立ってしまっていました。このトレードオフにグランドスラムさんも気が付き、それを今回は以前のポジションとほぼ同じ距離となる、4Mのところに戻したとのことでした。「等距離」原則は、AVアンプのDelayを使って誤魔化すことで妥協したそうです(笑)。

 

その効果はてきめんでした。ちゃんと、合唱がオケよりやや上方に定位していました。「合格です」(笑)。もちろん、「その代わり、LPに近くなったサラウンドからの近接効果が強まるだろ?」というのは論理的にはあり得る指摘ですが(汗)、後ろ側にはアンビエント音が中心で、定位させる音像がない音源がほとんどなので、こちらは私は気になりませんでした(拙宅もサラウンドのSonetto VIIIからLP2M弱しかない)。やはりAuro-3DMatic)は「フロント重視」のフォーマットですから。

 

さて、ここからは<実践編>的な内容を離れて、「実験レポート」です(笑)。

 

・・・・・・・・・・・・

 

問題意識

 

今、最も普及しているイマーシブオーディオフォーマットであるATMOSと、我らが()Auro-3Dは、特に第二層に於いて、両フォーマットが定義する「正しい」SP位置・角度が大きく異なっている。普通の家では()、このどちらかのフォーマットのSP配置を選んでセッティングしており、いったん天井や壁に固定した第二層(&三層)のSP群を動かすことはできないのが一般的だろう。しかし、ソースはどちらも簡単に入れ替えて再生することができる。

 

そこで、1.ATMOSソースをAuroシステム配置で再生した場合、2.Auro-3DソースをATMOSシステム配置で再生した場合-は、各フォーマットの規定する「正しい」SP配置で再生した場合と、どの程度音質・音場・音像が異なるのかを検証してみたい。

 

方法論

 

まず、ATMOS配置とAuro配置それぞれに対してキャリブレーションを行い、Stormに異なるセッティングデータを保存した。これにより、両フォーマットを切り替える作業は、単純にSPを切り替えるだけではなく、両SP位置でのキャリブレーション済みの音場補正環境を適用している。このため、両フォーマット間を切り替える際に、LPからの第二層への距離の違いによる位相の狂いや、再生SP数が異なることによる、音情報の欠落が発生しないようになっている。補正ソフトは、両者ともDirac Live Bass Control(DLBC)を使用し、補正範囲、SWとのクロスオーバー値などはすべて同一にしてある。

 

そのうえで:

 

1.ATMOSソースである、Pink Floyd『狂気』BD*を、ATMOS配置とAuro配置で聴き比べる。

*このソースは、7.1.4で録音されており、グランドスラム邸では、ATMOS配置の場合は、5.2.4で再生される。これをAuro配置で再生する場合も、「Auro-Matic」では再生していない(StormAVプリはATMOSのオリジナルフォーマットを変更できない)。つまり、Auro配置も同様の5.2.4HCTOP無し)で再生される。

2.Auro-3Dソースである、『LuxBD*を、Auro配置とATMOS配置で聴き比べる。

*このソースも、7.1.4で録音されているが、Storm AVプリはAuroフォーマットのソースはすべて拡張モードで再生するため、グランドスラム邸では、5.2.5.1で再生される。これをATMOS配置で再生すると、5.2.4となる。

 

実験結果

 

1.『狂気』-比較試聴に使ったのは、On the RunTimeの冒頭のチャイムの部分。On the Run冒頭の、シンセサイザーで合成された<シャープな風切り音のようなもの>が、Atmos版では上空の第二層を回るように収録されているのだが、ATMOS配置の方が、「回る半径が大きい」。写真にあるように、グランドスラム邸では、Auro用のLRの「フロントハイトSP」の位置より、ATMOS用の「トップフォーワード」LRの方がLPに近い。つまり物理的距離はATMOS用のSPの方が近いのにも関わらず、ATMOS配置による再生の方が、上部で「遠く」に位置すべき音が、「正しく遠い」位置にあるように聞こえる。逆に言えば、Auro配置でATMOS音源を聞くと、「全体的に前に出てくる」。同様の感覚は、爆発音の後に、<走り回る足音>のパートでも確認できた。

 

そして、もう一点顕著な差を感じられたのは、<空港ロビーでの女性アナウンス>のパート。英語の発音がはっきり聞こえるのはAuro配置の方なのだが、「空港らしさ」(何を言っているのか、良く聞こえない感じ=笑)をよく醸し出しているのは、ATMOS配置の方であった。つまり、これもAuroより「遠くに、かすかに」聞こえるのである。

 

しかし、肝心のこのパートのPink Floydのメンバーによる「演奏」に注目すると、印象が変わってくる。Auroの方がとにかく全体に前にグイグイくる感じなので、シンセサイザーやドラムの音などはこちらの方が迫力を増す。これは完全に好みのわかれるところであり、私はATMOS配置の「効果音の巧みさ」が気に入り、グランドスラムさんはAuro配置による「音楽の迫力」に軍配を上げた。

 

2.『Lux』-比較試聴に使ったのは、冒頭の曲。私の大のお気に入りである()。まずはAuro配置で聴かせてもらう。実はこの曲は以前も(何度も?)グランドスラム邸で聴かせていただいている。しかし、これまではSP配置がATMOS用しかなく、つまり、第二層のSPはすべて真下を向いている、アレ、である(汗)。その時の印象に比して(そしてもちろん今回も同じATMOS配置によるこのAuroソフトの再生に於いて)、「高さ感」が格段に向上した。グランドスラムさんが拙宅にお見えになると、「高さ感があって、神々しい音場感」といつも褒めてくださるのであるが、今回のAuroセッティングでグランドスラム邸の音場もかなり<いい線>に行ったと思う。

 

そしてもう一つ、格段の差が付いたのが、コントラバスとオルガンの低音再生である。これは教会録音なので、(前面の)壁全体から(実際、パイプオルガンの低音出力は、床から天井まであるパイプの共振音)<面で>音が迫るのがRealなわけだが、Auro配置・システムで再現するこの音場感と音の迫力が、ATMOS配置では全く出ていない。前方上方の音空間における低音が「さみしい」のである。さらに、1で書いたように、ATMOSだと高域の音が「遠くなる」。この曲は女性(少年少女?)のソプラノ合唱が主旋律を担当するのであるが、ATMOS配置でこの曲を聴くと、先の低音不足と相まって実に「そっけない」()感じとなり、「感動させる力」が落ちるのか涙腺が全く緩んでこなかった…。

 

ご存知のように、この2LBDは、7.1.4によるATMOSソースも収録されているが、今回はこれは聴かなかった。理由は、時間が無かったこともあるが、これはすでに実験済みで、自分の中でははっきりと勝負がついているからである(お手持ちの方はすでに自分のシステムで実験済みであろうし)。やはり48kHzATMOSフォーマットと、96kHzAuro-3Dフォーマットの差は、それが11ch分になるからか、埋められないものがある(そもそも、「音質」の差があり、ある意味Fairな判断ができない)。

 

考察

 

今回の二つの音源<『狂気』(ATMOS)、『Lux』(Auro-3D)>を、Auro用とATMOS用のSP配置で聴き比べた結果を総括すると、この二つのSPレイアウトの違いは、一見では、定義されているものとないものの違い、つまり、ハイトセンター・TOPVOG=第三層)のあるAuro-3D、トップミドルLR(第二層)のあるATMOSに注目が行きがちであるが、私の結論では、それ以上に、第二層に配されているSPの「向き」の違いが大きいような気がする。

 

ここでもう一度整理すると、ATMOSでは、第二層の6台のSP(一般的な民生用では、トップフォワードLR、トップミドルLR、トップリアLRの6台が最大)はすべて「真下」に向けるよう指示されている(天井に埋め込む、シーリングSPを推奨=Donguri邸はこれ)。一方のAuro-3Dは、第二層の5台(フロントハイトLCR、サラウンドハイトLR)をLPで起立した時の頭の位置に向けるように指示されている。そして、「普通の人」(笑)は、トップフォワードLR=フロントハイトLR、トップリアLR=サラウンドハイトLRとして、ATMOS用なのかAuro用なのかはっきりさせずに、どっちつかずのいい加減な(泣)設置をしている人がほとんどであろう(特にデノマラとヤマハのマニュアルはあいまいな書き方がしてある。ご自分の第二層のSP群をATMOS用にしたい方はDolbyのHPを、Auro用にしたい方は、このブログの左上にある「Auro-3Dマニュアル」をご覧いただきたい)。

 

いうまでもなく、SPというのは、正面軸上(ツイーターが耳の位置の高さ)で聴くように普通は設計されている。これは、音は球状に拡散するため、軸上から離れれば離れるほど、音圧が下がっていくからである。さらに、音波は高域ほど直線性が強く、低域ほどより球状に拡散しやすいため、軸上から外れて聴くと、高域が低域に比してロールオフして聞こえることはよくご存じのことだろう。スピーカーの真横で聴けば、ほとんど中低音しか聞こえない()

 

ということはつまり、ATMOSの指定のスピーカーセッティング(特に「向き」がLPに向いてない点に注目)では、直進性の強い高域は、LPに於いては、直接音が少なく、反射音が多くなり、そして減衰するわけである。特に高域で反射音が多く、音が小さくなるというこの特徴が、今回の試聴で、私が「遠くの音は、ATMOSの方がより遠くから聞こえる」ように感じた原因と考察するのはある程度合理的であろう。

 

音楽用途をメインとして設計されたAuro-3Dに対して、ATMOSは映画用をメインとしているわけであるが、ATMOSは「遠くの雷鳴」のような効果音はAuro-3Dより出しやすいようだ。この特徴を活かせば、今回私が『狂気』で聴いたような、空間に散らばる星を眺めるような(まさに、『STAR WARS』の世界!)音場表現には優れるはずである(今回は時間が無くて聴けなかったが、音楽でも、恐らく、『クリムゾンキングの宮殿』のATMOS版などは非常に魅力的に再生するに違いない)。

 

ただ、こうした「映画的な」手法でエンジニアリングされた一部の音楽を除けば、Auro-3Dの、フロント6台のSPが全てLPに向いていることによる「平面波効果」によると思われる、奥行き感と同時に押し出し感・実体感に優れる表現は、まさに音楽向きだといえよう。つまり、今回確認したように、Auro-3DMatic)の音の魅力を最大限に引き出したければ、第二層のSP群の「向き」はとても重要であることを強調しておきたい(真下向きの第二層のSP群で、第一層のSP群との空間に「平面波」が正しく形成できるとは考えにくいため=)

 

逆に、ATMOS映画の効果音を十全に堪能したい場合は、指示通りに第二層のSP群は「真下に向ける」べきであることがよく分かる結果となった。

 

まさに、「二兎を追う者は一兎をも得ず」である。

 

参考文献()

 https://philm-community.com/auro3d/user/diary/2020/08/17/9758/

ほか

2023年10月19日 (木)

SWを高い位置に設置するって、どうよ?

夏のフォッサマグアツアーから、2ヶ月近くが過ぎましたが、参加された皆さんは、何を学ばれましたでしょうか?そして、それをいかにご自分のシステムアップに繋げられましたでしょうか?(企画者的には、NOと言ってほしくはないが…汗)

 

もちろん、「ウチのシステムは完璧であることを再確認!皆さんのシステムから学ぶことはなにもないことがわかりました!」と言い残して去って行かれた方もおられましたので(爆)、「何も自分の課題は見つからなかったので、その後、自分のシステムに何も手を入れる必要を感じていない」という幸せな方もおられるとは思いますが、残念ながら私のシステムは、その域にはまだまだのようでして・・・(泣)。

 

もちろん、「すぐに手を入れられる課題」と「今さらすぐには手を入れられない<永遠の課題>」という違いはありますよね(笑)。後者の典型的なものは、「部屋」でしょう。正直言って、今回のツアーで「オーディオやるなら田舎に限るなあ(=失礼!)」とつくづく思いましたもん(爆)。あんな立派な部屋を都心に作るなら、土地代だけで億単位。さらにそこで「あの音量」を出すなら都心では隣家まで壁と壁の距離が1Mほど(笑)なので、防音を完璧にしないと殺人事件が起きかねない(汗)。それにまた法外なおカネが・・・と考えるとまあ、これは「気づかなかったことにしたい<課題>」でございましょう(笑)。

 

また、ご自分のシステムとの「音質の違い」に気付き、「隣の芝生効果」で血迷っておられる方もいるかも知れません(私も一時は迷い込みましたから=笑)。ツアー開始前にも書きましたが、「音質」というのは、料理で言えば「味付け」なので、個々人の好みがあり、「初めてオーディオシステムを買い揃えた」というレベルでない限り、長いオーディオ歴の間に自分の好きな「音質」の機器を揃えてきておられるわけですから、普通は、「あれはあれ、これはこれ」と思えるものなのです。ただ、時に、「いやあ、あの音、ウチとはぜんぜん違う種類のものだったけど、結構良かったなあ。どこかいいとこ取りできないか?」となることはありますよね。

 

幸い私の場合は、若い頃は性格の正反対の二つの「音」を求めて二兎を追っておりましたが、今では、すっかり「達観」し(笑)、伊豆のメインシステムの世界観はいくら他流試合を重ねても揺るぎない「諦めの境地?」であります(爆)。

 

さわさりながら、実は、私自身も、今回のツアーに参加して、<課題>が見つからなかったわけではありません。それが幸か不幸か(汗)「全く手が届かないものでもなさそう」で、かつ、「好みの違い」と片付けられるものよりもう少し音楽再生における本質的な問題(と自分には思える)。ゆえに、この二ヶ月、「なんとかあの世界に近づく方法はないか」と悶々としておりました。

 

その、私にとっての「課題」が見つかってしまった現場は、軽男GT4でした。あそこで聴いた入交氏録音の13chハイレゾの(しかも、軽男邸はCHCがなかったにも関わらず)、関口教会録音のNakuraさんのバスマリンバの「音の世界」が、未だに忘れられない・・・

 

「総括」記事にも書いたように、天井や壁からの反射音・残響音の中にも重低音は含まれている、という「現実」の音場を、そのまま再現できる能力があるシステムにしか出せない「臨場感」。しかもこれが映画の効果音などではなく、教会における音空間なので、ここでの「臨場感」はそのまま、「祈り」「敬虔な気持ち」という本物しか持てない<震えるような音楽的感動>に限りなく近似する…Auro-3Dに取り組むようになってから、すっかり「バッハに代表される宗教音楽好き」になってしまった私にとって、スルーするにはあまりにも重要なツボの、「決定的な差異」でした。

 

「この感じを、なんとか拙宅でも出せないものか・・・」

 

実は今回取り組んだ作業のイメージ自体はかなり前に妄想したことがありました(汗)。以前、『トップガンマーヴェリック』を池袋のIMAXシアターで観た際に、巨大なSWが天井に吊ってあるのを見た時です。<クリックすると右上に見える>

Photo_20231019104101

「ウチには梁が二本あるし、螺旋階段の踊り場もあるから、高い位置にSWを置こうと思えば置けなくもないな」とまでは脳内シュミレーションをしたのでした。ただ、それは「ジェット機の爆音を頭の上から響かせたい」映画ならではの演出用に過ぎず、映画の効果音の再生にはほとんど興味がない(笑)私にとって、当時は「高いところから出る重低音」が音楽再生に必要とは思えず、「真剣に検討」するには至りませんでした。

 

しかし、フォッサマグナツアー後、私はこの、かつて考えたアイデアに取り憑かれてしまいました(汗)。「高いところから出る重低音が音楽再生に必要な場合もある」ことに気づいてしまったからです。

要は第二層以上の高い位置から重低音を出したい!それなら前回の記事のレス欄でTomyさんも指摘されていたように、「小型SPしか吊るせないのなら、SWで補え!」というわけです(ただし、彼は「SWも吊れ」とは言っていないが…笑)。伊豆の拙宅の環境なら設置場所はイメージできるのですが、問題は「絶対に落下が許されない」SWをどう固定するのかと、そこまでどうやってAVプリからの出力回線をつなぐか、です。幸い、拙宅には一番設置が容易で安全そうな螺旋階段の踊り場があるので、そこに置くのであればSWの固定の問題はとりあえず回避できるのですが、拙宅の問題は、AVプリからそこまでケーブルを床や壁、天井に這わせるとしたら、最低20メートルぐらいにはなりそうだという点です・・・

 

何度も書いていますが「部屋の美観も音楽鑑賞の内」、と考える私にとって、拙宅の自慢の(笑)、美しい珪藻土の壁に20メートルもモールを這わせるのは絶対パスです(笑)。じゃあ、比較的AVプリから近い梁の上にSWを置くか、となれば、今度は設置方法が不安です。そもそも、まずはお試しをしてみて、それで効果が確認されたら本格的に検討したいのに、梁の上では、万一を考えると気軽には「お試し」で置くことができません。梁の幅は15センチほどしかないので、SWのような重量があって床面積の広い物体を安定的に設置をするには大掛かりな工夫を要するのです。しかも見た目も悪く(&怖い=笑)、なおかつ不可逆になる可能性があります。

 

ということで、消去法で取り敢えず置いてみるなら螺旋階段の踊り場だな、というところまでは方針が決まったのですが、前述の通り、今度は部屋の対角にあるAVプリから遠すぎる(直線距離でも10数メートル)という問題点が・・・

 

そこでひらめいたのが、「無線SW」なら行けるんじゃないか、と。拙宅ではすでにTopVOG)はDynaudioWireless Active SPを使っていて、一応、問題なく作動しているため、同じような発想で作られたSWはないかと、探してみました。

 

ところが無いんですよ、これが。たまにあったと思ってよく見ると、「5.1chセット」とか、今流行りの「サウンドバーとのセット」しかないのです。これは恐らく、Delayのタイミングを全SPで揃えるためだと思います。いうまでもなく、Wirelessは必ず変調・復調によるDelayが生じます。全SPが同じタイミングで遅れるのであれば、音楽再生では全く問題ない(AV用なら映像だけシンクロさせれば良い)のですが、一台だけ遅れるような場合は、AVアンプ側でその遅れを補正できる範囲内でなければ使い物になりません。事実、拙宅のDynaudioWirelessは、以前使っていたパイオニアやマランツでは補正の限度(つまり、距離。大体15Mぐらいが限界だった)を超える遅れがあり、今のStormAVプリになってようやく、完璧にDelayの補正ができる状態になったのです。

 

この問題があるため、2ch単独で使用することの多いブックシェルフやフロア型にはWirelessが存在しても、必ず他のSPと組み合わせて使用するSWにはWirelessが商品化されないのだと思います。ただ、私は幸い、StormAVプリはこの距離補正のDelayの範囲が他のメーカーのものよりかなり広いのを知っているので、「あればなんとかなるはず」と思って、探し続けていました。

 

でも、やっぱり無い()。正直諦めかけていたとき、先月末にTomyさんが拙宅にお見えになりまして。

 

ご存知と思いますが、TomyさんはSWを「SW大国アメリカ」から取り寄せておられるほどの、<事情通>。もしかして、ご存知かもと、無線SWって売ってないかと伺うと、「通常のアクティブSWを無線化するキットならある」と!

 

早速US Amazonを探してくれ、値段も約130ドルと、まあダメ元で取り寄せてもそこまで痛くない価格だったので、早速ポチりました。

 

米国からの荷物を待つこと数週間。この度ようやく届いたのが、これ。

 

PImg_2342_20231019104401

 

Img_2325 実は、今月末にはモンテモンテさん、来月初めには、DonguriさんとX1おやじさんという、相次ぐ来客の予定があり、「本来であれば」来客前にTryをすると、せっかく曲がりなりにも完成していたシステムのバランスを崩すリスクがあるので、「避けるべき」というのはわかりますが(汗)、モノが届いてしまったら、Can’t wait!ですよねぇ、普通は()

 

衣替えのためにあわただしく伊豆に行った折に、やっちゃいました(汗)。フロア左右にあったFostex250Aの右側の方を、二階の踊り場まで運んでみました。コンセントと電源ケーブルの距離の関係で、踊り場の受信側のSWの位置はTentativeです。ここだと地上からの高さは、完全に第二層と同一面です。

 

P<送信側のTransmitter(上)と受信側のReceiver>Img_2340 Img_2341 Img_0018

 

発信機は、AVプリに取り付けるとさすがに距離がありすぎるらしく、シンクロが不安定になるので、元々SWが置いてあったところまで床下にXLRケーブルが這わせてありますから、そこにRCA変換器をかましてTransmitterを接続(出力側、入力側ともRCA)。

 

この時点で不安点が二つありました。①もう一組この部屋で使っているWirelessDynaudioとの混信の可能性。②無線化によるDelayの程度が、AVプリの制御範囲かどうか。

 

①に関しては、以前、東京のリビングで同じDynaudioXEO5というフロア型のものを使っていた時に、キッチンにある電子レンジを使うとものすごいノイズが入り、結局一階の私の書斎に移動した経験があります。伊豆にももちろん電子レンジはありますが、幸い、あちらはほぼ私一人(と愛犬)で独占している家なので、私が音楽を聴いている間に誰かが電子レンジを使う、ということがありません。ただ、DynaudioTransmitterも、今回購入したSVSも同じ2.4GHz帯を使うので、同時使用することになるAuro-3D(Matic)再生時には混信するリスクは結構あるのでは、と不安だったのです。

 

ということで、SVSを接続すると、まずはテストトーンで音出し。動作確認後、今度は、13chソースを再生しながら、VOG(=Dynaudio)と、SW3(=FostexSVS)だけでしばらく聴いてみました。幸い、混信は確認できず(どうやら、異なるバンドか変調方式を使っているようです)。

 

ここまで確認したら次は②の問題のチェックです。これはDirac Liveでキャリブレーションをしなければ、AVプリのDelay補正内に収まっているかどうかがわかりません。実は昔、KEFWirelessを第二層に並べようかと思ったことがあり、KEF専門店にお邪魔して、同じアンプからWiredWireless同時に鳴らしてもらってDelayがどの程度出るのかを確認したことがあるのです。その時は私のだ耳でもはっきりわかるDelayがあり、「Wiredの混在するマルチにはとても組み込んでは使えない」と断念した記憶があります。Dynaudioはこの点優れていて、これを購入した理由の一つがDelayの少なさでした。これはTransmitterの方式や性能に左右されるようですが、今回取り寄せたSVSなる怪しげな(笑)ブランドは私は初耳ですし、DynaudioTransmitterに比べてあまりお高くもなかったので(汗)、「もしかしたら性能が悪くて使い物にならないかも」と思っていました。

 

キャリブレーションの結果、測定値を見ると(写真を撮るのを忘れた…)、Transmitterによる遅れは、25msぐらいでした。距離にすると数メートル分の遅れという感じで、かなり優秀です(確か、Dynaudioのは十数メートル分遅れていたような記憶が)。これならデノマラのAVアンプでも対応できる程度です。ちょっと気になったのは、キャリブレーションはSWに対してでもSweep音で行うので、超低音から超高音まで出力させます。SWなので、500Hzぐらいから上は再生能力の限界を超えるため音が聴こえなくなるのですが、最後の高域入力(恐らく10KHz以上)のところで、ノイズが出ていました(Wired250Aの方は出ない)。どうやらこの帯域ではTransmitterが対応できず、ノイズを発生させているようです。このTransmitterは「SW用」とはっきり書いてあるので、高域再生には限界があるのでしょう。いうまでもなく、実用上は問題ありません(ARTだと150Hzでハイカット)。

 

さて! 待望の試聴です。

 

まずは当然、軽男邸で感動した、13chのバスマリンバから。

 

うーん…

 

こういう場合、「期待バイアス」というか、「せっかく苦労したんだからバイアス」(笑)が入って、<完璧!感動!>とか主観的に書く人が多そうだけど(=雑誌は特に!=笑)、一応(社会)科学者の端くれの私は(汗)、職業的に客観的に判断すると、<Nearly Closeではあるが、軽男邸と「同等」とは言えない>かなあ(泣)。

 

やはり25センチ(?)ツイン(?)ウーファーに頭の上がぐるりと囲まれているのと、25センチ径のSW一台とじゃあ、同等の音場となるはずないか…

 

気を取り直して、同じく13chの『熱海の花火大会』

 

…こっちはかなり良かった。やっぱり花火の破裂音は「上から」出るのが自然ですね!こういう、「当たりまえ」のリアリティが再現できると、オーオタ(笑)冥利に尽きる!

 

この二つのソースの効果の差の原因を考察すると、今回設置した「上部SW」は、前方上方にあるため、前方上方に音源があるもの(=花火)の再現性は高い一方、部屋の上部360度一面が重低音の出どころ(=教会オルガンやマリンバ)のソースに対する「臨場感・リアリティ」の再現性はもう一つだったのかと。

 

よく、超低域は指向性が弱いから、SWはどこにおいても構わない、というような説を聞きますが、この「超低域」の定義が何ヘルツぐらいなのかはわからないが、少なくとも拙宅のBass ManagementCO値である、70Hzぐらいだと、方向感は分かるんですよね。で、ここからがこの前の記事との関連なのですが、仮に40Hz以下なら方向感がわからないと仮定して、「花火」の再現も40Hz以下がちゃんと再生できる超大型SW一台をフロアにおいてあればOKかというと、そこには一つ大きな問題が。

 

花火は(映像があればもっとはっきりするが)、「上」で爆発します。破裂音にはかなり高い周波数帯域から、超低域まで含まれますが、「上」に置いてあるSPフラットに40Hzまで再生できる能力があればこのシステムでいいのですが、そんな低域再生能力がある「小型SP」なんてないですよね?仮にあったとしても、それはものすごい振動版が重くてストロークの深い、パワー食いの奴になるため、第二層に求められる「小音量再生」には向かないタイプのSPでしょう。

 

これだと「花火再生専用システム」(笑)になっちゃって、教会音楽のバリトンが上方に消え入るような繊細な残響音の再生はムリでしょう(汗)。ではということで小音量再生を重視するSPを選ぶと、その低域はフラットには70Hzぐらいまでがせいぜいでしょう(私のSonetto Iなど)。すると、それ以下の帯域をフロアにあるSW一台だけでカバーするわけですから、花火の火薬の破裂の瞬間の高音は「上」から、その爆風が空気を振動させて発生する超低音は「下」から聞こえてきます(=これまでの拙宅=泣)。打ち上げ花火の現場に行ったことのない方は日本人ならおられない(笑)と思いますが、打ち上げ花火の「衝撃波」って、上空から体全体で浴びますよね?そして、その時、地面(砂浜?)は揺れないはずなんです。でも、拙宅で再生すると、地鳴りのような響き・振動が伝わってくる(汗)。「下」に振動体がある証拠です。打ち上げ花火ではこれはあり得ない。本来は、「心臓を撃ち抜くような衝撃」を上から感じないとおかしいのです。ここに気が付いてしまうと、それまで自分の「経験」で補って脳が感じていた「臨場感」がいきなり失われ、「嘘っぽさ」が気になって気になって…いくら超大型のSWを入れようが、超低域に指向性がないと言われようが、それが床に置いてある限り、あの「打ち上げ花火の音場感」の<正確な再現>は絶対にできません(断言!)。

 

まあ、「花火」(やそれに類する映画などの効果音)は、私にとっては重要ではなく、やはり、再現したいのは「頭上から降り注ぐ重低音による囲まれ感」なのです。これは音楽(ある特定の?)にとっては、かなりの「差異」です(一度も経験したことがない方はわかるまいが…)。今回、私の聴感では、前方1台だけの高所SWではこの目的を達成するには拙宅の空間容量に対しては不十分である、という結果となったことを認めざるを得ません。

 

こうなると取りうるオプションは二つ。

 

1.「人間は重低音の方向感を<絶対>感じられない」というテーゼを信奉し(笑)、おとなしくフロア層にSWを戻す(泣)

2.3M近くの高さで部屋を横断する、二本ある梁を利用し、そこに「意地でももう一台」設置する(汗)

 

どうするかは、もう少しいろいろな音源を聴き込んでから決めようと思っています。今回はセッティングとキャリブレーションで時間切れになり、チェックした音源は、13chのマリンバと花火だけでしたから。オルガンや、大編成のオーケストラなどでも「高所SW一台」の成果の有無をチェックしてみたいと思っています(『トップガンマーベリック』も?)。

 

ただ、これは聴感上わかるかどうかは微妙ですが(笑)、論理的には、「高所SW」の存在は、ARTに対しては一定の効果があるはずです。ARTの作動機序を考えると、十分な低音再生能力のあるSPSW)が、多数、アシンメトリーに部屋に散在している方が有効性が高まるはずだからです。この「散在」は、いうまでもなく水平面だけでなく垂直面でもあったほうが、三次元的に存在する定在波対策として効果的なのは論理的に明らかですから。

 

今回、踊り場に置いたSWは仮置きなのでケーブル類がむき出しですが、それゆえに可逆的です(少々、移動に際して腰に来るが=汗)。もしこれを「Permanentの設置」とするのであれば、私の主義として(笑)ケーブルを目立たないように穴をあけるなどの工夫(工事)をしますので、もう後戻りはできなくなります。さらにもう一台梁の上に設置するのであれば、これは「仮置き」が不可能な場所なので、最初から本格的な工事をする必要がありますが、さて…

 

最後に、今回はっきりした「高所SW設置」のデメリットを一つ。それは、移動させたFostexSWがもう10年選手なためか(ただし、一度メーカーでアンプ部のOHしているが)、SWのボリュームを上げると高周波のフロアノイズが目立つのです。螺旋階段の上は、LPからかなり遠いので、かなりボリュームを上げないとDirac LiveのキャリブレーションでSignal Level too Lowの警告が出てしまうため、それまでLPの近くでボリュームを絞って置いていた時には目立たなかった「サーノイズ」が、無音時に私には少し気になるようになってしまいました(これは聴こえ方には個人差があると思います)。まあ、この対策は、「質のいいSWに買い替える」ことで解決できるのは明らかなのですが・・・。

2023年9月12日 (火)

フォッサマグナツアー「総括」!(笑)

今回のフォッサマグナツアーにおいて、X1おやじ邸、グランドスラム邸、M1おんちゃん邸、軽男GT4邸という4つのAuro-3Dシステム(ここでいう「システム」とは、機器のみならず、部屋やSPレイアウトなどを含めた用語)を、同じ音源を使って連続的に聴き比べるという、滅多にない経験をさせていただいた。それらを個別に云々することはすでに事前にほとんど「実践編」で書いている(もちろん、かなり機器の入れ替えはあったが、本質的な傾向には大きな変化はない)し、すでに他の参加者から多くの報告が出ている

 

ゆえにここでは、これら4システムに拙宅を加えた5つのシステムで連続的にAuro-3DMatic)を聴いたことから経験的に得られた「印象」を、串刺し的に備忘録的にまとめておきたい。個人的には、これまでこの4氏のシステムはそれぞれ複数回聴かせていただいているのだが、今回は皆さん、遠方からの来客があるためか、とても気合が入って(笑)、これまで以上にアップグレードされていたこともさることながら、特筆すべきは、やはり「同じ音源を連続的に」聴いたということにつきると思う。今回の連続オフ会では、「課題曲」を事前に設定し、各人が自分のシステムで「予習」してから臨むというスタイルを取った。いうまでもなく、「聴き比べ」というのは、異なる音源をそれぞれのシステムで聴いたのでは、システムに起因する「音」の違いか、音源そのものの違いかが分からなくなってしまう。さらに、比較試聴の時間的な間隔が開けば開くほど、「音の記憶」というのは霞んでくるものだ。


その意味で、今回のツアーの最大の意義は、「同一音源による連続試聴」にあり、これに普段から聴き込んでいるが念のためツアー前後に確認した拙宅の「音」を加えた、5つの異なるシステムを通じての「Auroシステムに普遍的な総括」を試みる。


一般にオーディオの「音」の評価軸は、基本的には3軸あると言える。「音質」(音色)、「音像」(定位)、「音場」である。

 

このうち、「音質」はオーディオ的にはもっとも重要なものであろうし、それゆえ最もオーナーの好みによる味付けがなされる部分であり、しかもその多くは機器の選択に現れることから、ここの違いを云々しても、オーディオ雑誌ならともかく、「Auro-3D友の会」的にはあまり「学び」の多いところではないため、以下では基本的には割愛する。ただ、特にSP間の音質の違いが、全体の印象に大きな影響を与えている場合には、多少は言及してみたい。

 

さて、今回の「総括」の対象とする、5システムの概要を、私が特に重要だと思う要素別に一覧表にまとめてみた。

 

Photo_20230912151701

 

ちなみに、この表内における部屋の「音響・剛性・容量」は、この5システム内の相対的な位置づけである。また、いうまでもなく、最後の列は、私の完全なる「主観」であるので、あまり他の方には参考にはならないかもしれないが、一応、選んだ手前、最後に解題を付ける。

 

さて、個別のシステムに関して個別の曲を取り上げて微細な印象を書くと極端に長くなるし、そもそもそのほとんどはすでに「実践編」で書いているので、ここでは全体を聴き終わっての共通の「気づき」をピックアップしていく。

 

  • 「空間」の大きさやSPとの距離は補正しきれない

 

今回比較試聴した5システムは全て、何らかのソフトで距離補正はされていたので、LPSP間の「時間的な距離」は全て揃っていたはずである。しかし、いうまでもなく主に部屋の広さに起因する各システムの「物理的な距離」はまちまちであったのだが、この、「物理的な距離感」というのは、見たまま、「音」に反映されていたな、という印象である。

 

これはTomyさんなどに教えていただいたのだが、人間が、音の遠近感を認知するメカニズムは、音の大小に加え、直接音と反射音の比率に関係があるそうだ。音源が近ければ直接音が多く、遠ければ反射音が多い。

 

この「直接音」と「反射音」は、もちろん音源そのものにも含まれてはいるのだが、エンジニアが「直接音」として録音した音は、本当に直接届くものと、その「直接音」が、部屋のあちこちに<反射して>「実質的な間接音」としてLPに届く音に分かれるわけである。

 

この「実質的な間接音」は、LPSPの物理的な距離によってその量が変わる(これを避けるにはヘッドフォンを使うしかない)わけで、無響室でない限り反射をゼロにはできない普通の部屋で聴くオーディオの場合、我々はこの「違い」を聴き分けてしまうのである。

 

つまりLPにおいて「同じ音量・音圧」でも、1M前の SPから発せられた音と、3M離れた所にあるSPから発せられた音は<確実に異なって聴こえる>。そして曲や演奏によって、離れていて欲しい音源と、近くにあって欲しい音源とに分かれる。つまり、大編成のクラシックを客席で聴く感じを出したい場合と、小編成のジャズを演奏者の汗の届く距離で聴く感じを出したい場合とでは、いくらハイテクの音場補正ソフトを使おうが、その再生にふさわしいSPとの物理的な距離は異なる、のではないだろうか。ということは、二兎を追うなら2セットのSPを揃えるか、都度SPを動かすかしかなく、それらが無理な状況の場合は、どちらかに特化するか、またはその中間を狙うしかない。「中間」に置けば、平均的な音場感は得られようが、「特化」しているものにはその特化音源に関する限りは敵わない。ここはジレンマである(笑)。

 

  • サラウンドSPの位置は特に音像・音場に影響を与える

 

ご存知の通り、Auro-3Dのマニュアルでは、サラウンドSPの位置は、110度を標準と規定しているが、90-135度の間と非常に許容範囲が広い。すでに何度も書いている通り、実際にAuro-3Dを録音して作品を世に出しておられる入交氏は、「サラウンドバックを使えるのであれば、サラウンドは90度に置いてほしい」と主張している。

 

今回の5つのシステムは、サラウンドバックの有無も含め、サラウンドSPの位置はかなりまちまちであった。拙宅のようにキャスターを付けて好きなところにゴロゴロと()移動させることができないのが普通なので、普段、どのオーナーも自分のサラウンドSPを固定した位置での音像・音場しか聴いていないはずである。その意味で、今回のツアーではサラウンドSPの位置が違うと、特にAuro-3DNativeのソースの一部では、「そこにピアノが?」とか「そこからシンバル?」とか、「そこにバンダの管楽器が?」という感想を、ちゃんと予習して来た方は(笑)誰もが持ったと思う。

 

もちろん、どこに定位するのが<正解>かは、録音エンジニアに聞かない限りわからないので、それぞれが「自分のシステムの定位感こそが<正解>」と思い込んでいれば皆幸せ()ではある(私も入交さんの来訪を受けるまでは、<幸せ>だった・・・)。

 

ただ、今回改めて感じたのは、第一層で言えば、LCRの開き角とか、サラウンドバックの開き角などより、よほど、サラウンドSPの位置は音像・音場に対する影響が大きい、ということである。LCRに比して、サラウンドSPの位置は、部屋の都合(汗)などで決めてしまう場合も多いとは思うが、自分の「決めソフト」(自分がはっきり理想とする音像・音場があるソフト)を持って、慎重に位置や角度を選ぶべきであろう。

 

  • 平面波の形成

 

「平面波」はAuro-3DMatic)の中核理論の一つで、私は入交邸にお邪魔するたびに、小さな「目玉おやじ」だけでSWがないのに、結構な低音を感じられるのに驚く。これはフロントのLCRHLCRの6台が、その低域再生能力にふさわしい距離で配置されているからに他ならない。いうまでもなく、小さな口径のウーファーの空間制御範囲と、大きな口径のそれとは異なる。ここはまだ私は研究不足で、何インチ径のウーファーなら何センチ間隔で設置すべし、と数学的に明示できないのは残念だが、「平面波が形成されている時の低音」の感じ方はまさに「面」として津波が迫ってくる()ような感覚があり、これは「第一層主導の低域再生」(つまり、第一層のウーファーやSWに頼っている部分が多いケース)とは質的に異なることが、今回、改めて確認できたと思う。

 

  • センタースピーカーの重要性

 

これは繰り返し書いていることだが、Auro-3DMatic)再生において、センタースピーカーは要である(入交氏が「一番重要」と宣言)。特にNativeソースはセンター「のみ」に音源が振られているものが少なくないので、LCRが同一であるシステムの優位性は明らかなことを再確認した。

 

  • 第一層のツイーターの高さ

 

「第1層にあるスピーカー群の音響上の中心は耳の高さに水平に揃った位置にあるべき」と<マニュアル>にもはっきり書かれている通り、これがきっちり守られているシステムとそうでないシステムでは、上方定位感の再現性に違いがあった。また、Auro-3DMatic)のもう一つの重要な理論的要素である、「先行音効果」にも影響があり、耳の高さよりLCRの音響上の中心が高い場合は、本来定位すべき位置より音像が上ずってしまいがちである。ここでいう「音響上の中心」とは、一般的には2Wayであればツイーター、3Way以上であればツイーターとスコーカーの真ん中あたりだろうか。スピーカーが大型だったり、ソファがかなりLowで沈み込んで聴くようなスタイルだと、「耳と水平」にはなりにくい(ちなみに、拙宅はダイニング用の椅子を使っている=爆。まったり聴きたかった私は、高級()リクライニングチェアを用意してあったのだが、玄人筋の方々に完全にダメ出しされ、今や部屋の片隅に・・・)。参考までに私のご近所の自作SPの大家のMyuさんは、「玉座」(椅子の下に台を設置して耳の高さを上げている)を自作されている()

 

  • 第二・三層のSPの品質

 

「最高の音色バランスと音響イメージを得るために各チャンネルに同じスピーカーを使用することをお勧めします」

 

と、<マニュアル>には見たくないことが(笑)書いてあることは皆さんご存知だろう(汗)。しかし、新築の部屋にゼロからAuro-3Dだけを考えてSPを買いそろえるのならともかく、普通は2ch5.1chなどのシステムから拡張してAuro-3Dシステムを組んでいるわけであろうから、LRや第一層に大型・高額のSPを配置しているケースがほとんどであり、今回の5システムも例外ではない。

 

かといって、すでにLRにド級のシステムを備えてある方が、Auro-3DMatic)に取り組もうとする場合、スペース的にも財政的にも()、同じレベルのSPをさらに11台も揃えることは不可能だからと言って、「無いよりはましだろう」という程度の(汗)SPを配置することは少し考えた方がよさそうだ(むしろ、Auro-3DMatic)再生の質が落ち、Auro-3DMatic)不要論者になりかねない。映画の効果音再生であれば、「無いよりはあった方がまし」であろうが、音楽再生の世界では、合唱団に一人でも「音痴」が入っていると、途端に全体のレベルが落ちる=笑=のは誰もがよく知るところ)。今回一連のシステム群を比較試聴して、つくづく分かったのは、第二・三層に、「いいSPと再生環境を与えれば、それに見合った成果=音が得られる」という、ある意味当たり前の結論であった。

 

再生音の品位や高域特性に優れたSPを第二・三層に配せば、天井が高くなったような音場感が得られるし、低域再生能力に優れたSPを第二・三層に配せば、より臨場感が増すことが確認できた。これはつまり、第二・三層のチャンネルにも、かなり広帯域で、品質の高い「音」が振られていることを意味する。私は決してオーディオ業界の回し者ではないが()、やはりコツコツとでも、第二・三層のSP再生音のレベルアップを図っていくことは、Auro-3DMatic)による音楽再生において決して無駄ではないことを肝に銘じる経験であった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

最後に、上記表の一番下のコラムは、言うまでもなく私の主観的な評価()です。異論は多々あると思いますが(汗)、なぜ私がこう判断したかを簡単に書いておきますので、ご自身の印象と比べてみてください。

 

X1おやじ邸

 

Polarity: この曲はLRにはピアノとベースが、サラウンドバックLRにドラムが配置されているという、ちょっと変わった録音で、普通のお宅ではどうしてもここにはLRに比してしょぼいSPが入っているのだが、サラウンドバックまで巨大なWilsonとモノラルパワーアンプが配されているX1邸ならではの迫力と音のクオリティ。後ろ向き(つまり前にドラム、後にピアノとベース)でも十分鑑賞に堪える再生音だった。

 

四季: この曲はX1さんは「録音が悪い」と指摘しておられたが(汗)、駄耳の私はそれよりこの演奏が、Bowingを鋭く強く弾く、やや特殊な奏法であることに注目。この音を高いクオリティで出すシステムは、車で言えば、トルクフルなエンジンと強力なブレーキが必要で、X1邸はまさにそれを備えていることを見せつけていた。

 

レクイエム: これは私が持参した入交氏制作のサンピエトロ寺院録音版。本当に「神の怒り」とはかくもあろうか、という迫力ある音が鳴り響くだけでなく、弦や合唱の美しさも兼ね備えていた。サラウンドのWilsonから出るバンダの管の咆哮が震えるぐらい感動的だった。

 

グランドスラム邸

 

ラデツキー行進曲: この「拍手」がホールを囲むさまは、やはりB&Wの「ちょんまげ」ならでは。Wilson5台そろい踏みの第一層が奏でるウィーンフィルは、美しくも力強かった。

 

Miles: この曲はLCRに「モノーラル」のようにテナーサックス、トランペット、アルトサックスが配されているのだが、これをLCR同一のハイエンドSPで温かみと熱量を持って聴けたのは幸せであった。

 

南佳孝: 冒頭の雨の音のリアリティの高さは、やはりB&W。センターから出るボーカルも、左右に振られたピアノやドラム、ベースもすべて一級品の音であった。

 

M1おんちゃん邸

 

春の祭典: 序奏部分の神秘的な表現は、さすがD3の音。「踊り」のパートはしっかりとした平面波を感じられる低域の面的押し出しがあった。

 

リスト: これは「課題曲」に入れていなかったのであるが、私のお気に入りのAuro-3D Nativeのピアノソロ。BWDシリーズのピアノの再生音は一種、「麻薬的」な魅力があり、それがぐるりと6台でLPを囲んでいるのだから、文句のつけようがない。

 

四季: これはX1邸に肉薄する迫力と、X1邸とは異なるきらびやかな弦の音色があり、好みは分かれるかもしれないが、私には甲乙つけがたい。またX1邸よりSPとの距離が短い点が、この室内楽ではある種の魅力となっていた。

 

 

軽男GT4

 

バスマリンバ: 第二層の低域再生能力の高さは、「熱海の花火大会」では二度目の経験で、織り込み済み()。今回驚いたのは、名倉の関口教会におけるバスマリンバのAuro-3D Nativeソフト(入交氏制作)。考えてみれば当たり前だが、あんな上部にも超低域の反響というものがあり、それが正しい場所で再現できると、ここまで臨場感が出るのかと身震いした。

 

Eagles: ここはセンターレスではあるが、この曲はボーカルがCには控えめでLR主体であるため、センターレスのデメリットが目立たない。キックドラムのさわやかな抜け感はJBLの38バスレフならではの音、シンバルの鋭くも耳に痛くない再生は、さすがホーンだった。12弦ギターの音も往年のRockそのもの。

 

Himmelborgen: これは教会の鐘の音の再現性が注目点なのだが、第一層第二層とも、ホーン型ツイーターであり、やはりホーンは金属系の音の再生のリアリティでは右に出るものはない。このシステムで「ブルックナーホルン」が聴いてみたい!

 

Auro3D

 

主観極まれり、なので流石に割愛()。拙宅にいらしたことがある方なら同意いただける方もおられるだろうし、「ほんとかよ?」と興味を持たれた方は是非、ご自分の耳で確かめにいらっしゃってください!!!会員の方であればいつでも歓迎しますので。

2023年9月 9日 (土)

Auro-Maticについて

Auto-3D友の会会員の皆様

 

フォッサマグナツアー終了後、少々ご無沙汰しておりました。

 

伊豆にて疲れを癒し(大汗)、東京に戻った後、新聞掲載原稿の最終ゲラチェックと北京研修旅行の準備に追われまして、本日、台風でフライトがキャンセルになるリスクがある中、なんとか無事に戻って参りました。

 

中国に入ったのは10年ぶりぐらいなのですが、この間の変化は他の国の30年分はあろうかというもので、完全に「浦島太郎」状態でした。これは旅日記ではないので詳細は割愛しますが(笑)、このブログ関連で一つだけ紹介すると、普段日本で使っているメールやウェブサイトがほとんど使えないのには閉口しました。Googleなどアメリカ系のインターネットシステムやLineなどが使えないことは聞いてはいましたが、今や規制がさらに加速しているようでほとんどの検索機能のあるサイトは中国で購入したSIMや、ホテルのWifiからはほぼ全滅でした。ここのNiftyのブログも例外ではなく、Nifty自体がメールも含め、すべてブロック対象になっていました。Portal系ではYahooだけが使えました(ただし検索機能は使えない)。中国当局の目が行き届くところだけ許されている感じです。

 

幸い?Phil-Mは見ることだけはできたので、皆さんの活発なフォッサマグナツアーの振り返り報告はおおよそ拝読しました。もうかなりOut of dateになっているので、そこへの書き込みは控えることにしますが、印象的なコメントは近々UPする予定の「総括」の参考にさせて頂こうと思っています。

 

ただ、Phil-M内の一連の議論の中で一つだけ気になるテーマがありましたので、遅ればせながら私も側面から(笑)参戦させていただきますね。

 

それはAuro-Maticについての話題です。皆さんはよくご存知のように、「Auro-3Dを聴く」と一括りに言っても、そのソースがAuro-3DNativeソースか、2ch5chのソースを「Auro-3D化」して聴くのかでは全くの別物であり、我々は後者を「Auro-Maticで聴く」 と呼んでいますよね。私個人は、「Auro-3Dを聴く」、と言えば、Nativeソースを聴くことという意味で使っていますが、どうもこの辺がごちゃごちゃになっている記述が散見されました。つまり「Auro-3Dを聴いた印象」を語る中に、Auro-Maticの評価と、Auro-3Dの評価が混同して扱われている部分があるようです。

 

Auroシステムに不案内な方が混同するのはやむを得ないとしても、我ら「会員」は少なくともここはきっちりと弁別し、間違った書き込みをされている方がいたら、会の趣旨に鑑みて注意を喚起していきましょう!

 

さて、「同じソース」を2ch5chAuro-3Dという「異なる録音方式」で収録してある2LBDなどで、そのすべてをNativeのチャンネル再生で試聴したことがある方の中で、「2ch5ch再生の方が、Auro-3D再生より優れている」、とお聴きになった方は流石に会員の中には居られないと思います。万一、そう聴こえる場合は、よほど今のご自分のAuroシステムが「不完全」な証拠だと断言できます(汗)。何も教会音楽ではなくても、リストのピアノソロや、バッハの無伴奏チェロソナタといった、楽器一つだけによる演奏の再生でも、Auro-3D Native録音版の優位性は明らかです(私はこれについて興味深い経験があります。入交氏録音の、13chフルバージョンの中に、「森の音」を録音したものがあります。これには鳥の鳴き声がかなり含まれているのですが、これを再生すると、私の愛犬はキョロキョロと反応を示します。一度実験精神を発揮して、2chにダウンミックスして再生してみたら、何の反応も示さなくなりました。再現性の高さ・リアリティにおいてどちらに軍配が上がるかは、人間より、全く事前の思い込みのない犬の方が敏感で正直なようです)。

 

問題は、現状では「名演奏」は2ch5chソースにしかない、という点です。だから我々がAuro-3Dの普及に尽力し、マーケットが大きくなることで高いギャラが出せるようになり、「名演奏」のAuro-3Dでの収録を夢見ていることは言うまでもありません。

 

それが実現するまでは、やむなく(汗)Auro-Maticも利用するわけですが、その評価については、千差万別で、我々会員内でも意見の一致を見ないようですね。

 

私は色々な方のリスニングルームにお邪魔していますが、きょやさんやtaketo さんのように、ほとんどの音楽をAuro-Maticで聴く、という方もいれば、そもそもAuroシステムは映画用のAtmosのついで(笑)につけているだけで、Auro-3DNativeソフトをほとんど持っていないし基本的には2ch2ch5ch5chといったオリジナルch数の再生しかしない、という会員の方もおられますし、私のようにソースによってAuro-Maticの有り無しを使い分ける、という方も少なくないでしょう。

 

このようなAuro-Maticの使い方や評価の違いの原因を探るのは、我々、同好の士にとっても有意義な研究だと思いますので、各自で継続的にやっていただいて、その成果をまた皆さん個々人が発表していただければのちに続くものは助かると思います。僭越ながらまずは簡単に整理してみると、大前提として、そもそも「個々人の好みの音像・音場・音質が異なる」、ということを所与とすれば、同じシステムで同じソースを再生しても、ある人はMaticが好み、ある人は2ch5chが好み、と分かれるであろうことは想像に難くありません。

 

またそもそも理念的に(笑)、原理主義的な方と、結果(主観)が全て、という主観主義的な方に分かれます。前者は、「Director’s intentionの再現こそ、オーディオの究極の目的」というタイプで、基本的に「オーディオマニア」に多いですね。ただし、ここで忘れてはならないのは、この「Director’s intentionの再現」というのは、録音エンジニアが使っているのと同じ機器と同じ部屋を揃えない限り、Fictionないし、単なる「目標」に過ぎず、実現は殆ど不可能だという点です。つまり、2chソースを2chシステムで再生しても、Auro-Matic で再生しても、「自分好みに改変して聴いている」という点において、録音エンジニアから見れば「五十歩百歩」であるという認識は持っておく必要はあると思います(入交氏との議論)。

 

その上で、考えられる変数としては、1.部屋や補正に起因するルームアコースティックの違い 2.Auroシステム内におけるSP数の違い 3.同、設置位置の違い 4.同、スピーカーの同一度合いの違いーなどが考えられます。もちろん、出音には、システムの機器自体のグレードも大きな変数ですが、ここで議論しているMaticの適否、という問題にシステムの機器のグレードの違いはあまり関係ない(=例えば、機器のグレードが高いほど、Maticに向くとは限らない?)ような気が個人的にはします。

 

私はこういう問題意識を持っていたので、今回のフォッサマグナツアーに、わざとAuro-Matic による再生をする曲をいくつか選んだつもりです。ご自分のシステムによるMatic再生音と比較して、どなたのところのMaticが良かったか悪かったか、を少し思い出していただいて、その違いの原因は上記1−4のどれか、またはそれ以外の要素か、を考えてみていただければというのが狙いでした。

 

もちろん、繰り返しになりますが、個々人の好みによっては、どのシステムのMaticもダメだったとか、逆にどのシステムでもMaticは素晴らしかった、という感想が有り得ますが、こういう両極端な感想ではなく(汗)、「差異」を感じられた方は、その「違い」を産んだ原因について考察していただければ、と思います。

 

私がここで結論めいたことを言えるはずもありませんが、主観主義者の私は(笑)、拙宅のシステム環境で聴く限りでは、非Auro-3DソフトのMatic適性については、「録音による」と感じていて、広い空間でオフマイク中心に録音されたものは、2chであれ、5chであれ、「Matic映え」するというのが、「個人の感想です」笑。もちろん、同じ曲でもシステムが異なればMaticとしての聴こえ方も違っていることが今回、よく分かったのですが、残念ながらその「決定要因」を析出して、お示しできるまでには自分の研究は進んでいません。

 

最後に、2ch5chAuro-Matic化することによる定位感の低下も話題になっているようですが、これは録音エンジニアの入交さんもはっきり仰っておられましたが、オーディオ再生において究極の音像定位を求めるのであれば、一音源につき、一つのSPを充てるのが究極の解決策です。つまり、ボーカルはセンターSP「のみ」に、オケを再生するならオケを編成する楽器の数だけSPを入れる。その意味で、今回のツアーの課題曲の一つであった、Kind of Blueは、マルチ5ch再生やそのMatic再生が、どんなに優れた2ch再生(アナログレコード音源でも)より、定位感では優れます。この録音は、L=テナーサックス、C=トランペット、R=アルトサックス「だけの音」が入っているわけですから、LCRを同一SPにて再生できる環境をもつシステム(3つの楽器の音を3台のSPで再生する)に、定位感で敵う2ch3つの楽器の音を2つのSPで再生する)は絶対にありません。

 

Maticも同様で、1台ではなく複数のSPで同じソースを再生すれば、定位感は原理的には多少は落ちなければおかしいですが、それも<正しく設置されているAuroシステムであれば>「先行音効果」によって定位感の低下はほとんどないはずなので、Maticにすると定位感が大きく損なわれる場合は、恐らくSP配置と距離補正に問題があるか、ないしは、LR以外のSPにLRと同一でないものを使っている場合は、相互に位相がずれている可能性が考えられます。入交邸のような、全SPをフルレンジの同一のものにし、第一層をLPから完全等距離に配置したうえで第二層を完全に第一層の垂直位置に設置することで電子的な補正を全く使っていないシステムにおいては、2chソースや5chソースをAuro-Maticにしても定位が乱れるというようなことは全く発生しないですよ(私のシステムも程遠いですが・・・汗)。

 

「定位感」に重きをおくかどうかは、再生する音楽とそれを聴く人の好みによります。クラシックの場合、特にオケもので、たまに、ものすごくはっきりとフルートの位置がわかる、というような録音がされているものがありますが、これは本物のコンサート体験ではあり得ないです。オケの中の特定の楽器の音をオンマイクで拾って、録音エンジニアがその音を意図的にある位置に「置く」という、非常に人工的な録音になっているわけです。コンサートでは目を開けて聴いているので視覚情報が混入しているので、「そこでバイオリンがリードしている」ことが「わかる」のであって、決してそれを「耳だけで聴き分けているのではない」ことは、目を瞑ってコンサートに臨めば誰でもわかります。10M以上も離れたホールの中の席で、フルートの右側にオーボエ、左側にクラリネット、なんてのが聴き分けられるはずはありません。指揮者の席なら別でしょうが(笑)。

 

つまり、「クラリネットがここで鳴っている」とわかるような、録音エンジニアが創出した「不自然な、人工的な定位感」をオケの演奏で感じたいなら、Maticはダメですが、私には、このようなソースの場合はMaticの方が、「ウソっぽさ」が消えて、臨場感・本物感(コンサート会場で聞いている感じ)がありますね。これも好き好きであって、優劣ではないですが。

 

みなさんは、Auro-Maticを、どう考えて、どう使いこなしておられるでしょうか?是非伺いたいものです。

 

2023年8月27日 (日)

フォッサマグナツアー 第三日目(最終日)

本日は、M1おんちゃん邸および軽男GT4邸が会場でした。参加者は、kawausoさん、donguriさん、X1おやじさん、グランドスラムさんと私Auro3Dの5名でした。

 

M1おんちゃん邸

 

M1-20230828-110918

Img_2073

Img_2074 Img_2075

 

 

軽男GT4邸

 

Gt-20230828-111045 Img_2077 Img_2078 Img_2076

2023年8月26日 (土)

フォッサマグナツアー 第二日目

第2日目は、会津のグランドスラム邸です。参加者は、モンテモンテさん、Cmiyajiさん、Kawausoさん、きょやさん、X1おやじさん、donguriさんと私Auro3Dの七人でした。

Grand-20230828-110819

Img_2068 Img_2069 Img_2070 Img_2071

2023年8月25日 (金)

フォッサマグナツアー 第一日目

初日はX1オヤジ邸です。参加者は、きょやさん、Donguriさん、モンテモンテさん、Kawausoさん、Cmiyajiさんと私Auro3Dの6人でした。

 

X1-20230828-110646 Img_0090_20230825210401 Img_2063

2023年8月23日 (水)

告:2023年「Auro-3D友の会」夏のイベント「フォッサマグナツアー」を開催します!

昨夏の「WOWOWスタジオツアー」、今春の「入交氏ご自宅スタジオツアー」に続く、「Auro-3D友の会」イベント第3弾として、「友の会」の誇る「北の巨人」(笑)を歴訪する、4連荘オフ会を企画し、いよいよ明日の前夜祭(?)を皮切りに三泊四日のツアーが始まります。

 

具体的には、X1おやじ邸(燕三条)、グランドスラム邸(会津)、M1おんちゃん&軽男GT4邸(仙台)という順で、日本海から太平洋に日本列島を縦断することから、「フォッサマグナツアー」と私が命名しました(実際のフォッサマグナとは少しずれていますが・・・汗)。

 

前回、「WOWOWスタジオツアー」を企画した時と同様、今回の「フォッサマグナツアー」でも、課題曲を選定いたしました。これらの曲は、今回のホスト4か所のAuro-3D用リスニングルームで必ず演奏していただくようお願いしてあります。共通の「課題曲」を設定することで、ツアーに参加される方々が、自身のシステムで事前に「予習」され、ホストのシステムとの音の違いをより明確に感じていただき、その違いがどこに起因するのかを各自が考えることで、自分のシステムの見直しにつなげられるのではないかと期待しています。

 

課題曲の選曲に当たっては、今回は次の原則を立て、ホストの方々と相談しながら進めました。

 

1.ジャンル的な偏りと楽器の偏りをなるべく排する

2.フォーマットも各ジャンルでNativeMatic用をそれぞれ用意する

3.なるべく有名な曲を選ぶ

4.なるべく今からでも入手可能なものを選ぶ

 

ということで、以下の選曲となりました。かなり曲数を絞りましたし、10分を越えるような長い曲は外しましたので、トータルの演奏時間を1時間ぐらいに収めました。

これに加え、ωプレーヤーの入った私のMac Bookを各会場に持参しますので、滅多に聴けない入交氏制作の、真の13chフルAuro-3Dソフト(先日のOTOTENにおけるWOWOWのブースで使われたものと同じ音源: Nakuraのマリンバや熱海の花火、ベルディのレクイエム、Jazzなど)を皆さんにお聴かせできればと思っております。

 

実際の参加者の感想は、それぞれが発信されるでしょうから、それをお読みになれば今回参加できなかった方も追体験できると思いますので、楽しみにしていてください。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2023フォッサマグナツアー課題曲一覧】 赤字はAuro3D的聴きどころ

 

1.       Auro-3D Nativeソフト

()        Magnificat』 (教会音楽:合唱・オルガン・女性独唱)から2曲目~3曲目冒頭の合唱が始まるまで(演奏時間約7分)

https://shop.2l.no/collections/frontpage/products/magnificat-nidarosdomen

教会録音・オルガン・合唱、という、2L版Auro-3D得意の三種の神器(笑)そろいのこのアルバムは、まずは全体的に、「空間感」に注目したい。高さ感、奥行き感、静寂感、余韻の消え入り方などからなる、「空間感」。もう一つの聴きどころはやはり女性独唱パートの声の「神々しさ」(笑)。これらを総合して、涙腺が思わず緩むような演奏を期待したい。(5.1.4)

 

()        Polarity』(Jazz Piano Trio)から、4曲目(演奏時間約5分) 

https://shop.2l.no/collections/acoustic-jazz/products/polarity-hoff-ensemble

この曲は第一層は7chなのだが、入交氏がプロデューサーかと思うほど、わざと(笑)、サラウンドバック(リア)SPに単独に音源(ドラム)が振ってある(逆にサラウンドにはあまり音が振られていない)、珍しい曲。サラウンドバックの有無による音像定位、およびサラウンドバックSPと他のSPとの音色のつながりに注目。(7.1.4)

 

()        Himmelborgen』(教会音楽:男声+女性合唱)から、2曲目(演奏時間約8分)

https://shop.2l.no/products/himmelborgen-uranienborg-vokalensemble?_pos=1&_sid=4cf31d1e2&_ss=

この曲は混声合唱が教会の尖塔に吸い込まれていくような高さ感もさることながら、何といっても、LP頭上からの鐘の音がどう聴こえるかに尽きる。残念ながらVOGにはDiscreetでは音が入っておらず、サラウンドハイトLRに音が入っていて、頭上でバーチャル定位させている。ただし、プリによってはこの「意図」を組んで、拡張モードでVOGにも鐘の音を合成して入れているものもある。この、サラウンドハイトLRとVOGの再生能力に左右される、鐘の音の「リアリティ」が注目点。(7.1.4)

 

()        New Years Concert 2023』(Classic、ワルツ、少年少女合唱付き)から、第二部5曲目「上機嫌」(演奏時間約4分)

https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=1737&cd=00XE000071743

これは、私のブログではおなじみの(笑)、ハイトSP群の設置位置・角度および能力が問われる曲。ムジークフェラインのバルコニーからの少年少女のコーラスがどの高さに定位するか、また、上下のSPの音色があまりに違うと、LRを異なるSPで再生する2chと同じで、美しいBoy(Girl)Sopranoの音色に濁り(歪み?エグ味?)を感じることがある。(5.0.4)

 

同、最終曲「ラデツキー行進曲」(同約5分)

これは、「曲」というより、「手拍子」に注目。全SPから、「手拍子」という、ほぼ同じ音量・音質の音が再生されるという点で、珍しい音源。つい最近、ムジークフェラインに行かれたTomyさんが今回は不参加なのがとても残念なのだが(笑)、会場にいるオーディエンスの一人として、手拍子に包まれている感じに注目。

 

()        『四季』(Classic、室内楽)から、「冬」第一楽章 Vivaldi (演奏時間約4分)

https://spiritofturtle.com/products/vivaldi-the-four-seasons-download?_pos=4&_sid=2907d01ca&_ss=r

この曲はオーディオ的には聴きどころが多いが、Auro-3D的には、やはり「空間感」、特に奥行き感と、弦楽器の余韻が空間に吸い込まれていく感じに着目したい。(5.1.4)

 

()        「柔らかな雨」(男性ボーカル) 南佳孝 (演奏時間約4分)

https://minamiyoshitaka.com/discography/cd33/

https://recochoku.jp/song/S1007366461/hires_single

これは入交氏制作のボーカル曲の音源なので、「聴きどころ・チェックポイント」は拙宅でご本人から厳しく指導を受けた(笑)。まず、最初の「雨の音」は本物の降雨を録音したものだそうで、これが「サーノイズ」に聞こえてはまずい(笑)。第一層と第二層のスピーカーが正しく垂直関係にあると、雨も「正しく」上から振ってくる(笑)。また、ボーカルがセンタースピーカー「のみ」に振ってあるので、その再生品位が全体の印象を決定づける。声がSPに貼り付いていないか?センターレスと声のリアリティの違いを出せているか?間奏部のピアノは、LとサラウンドL SPの間にきっちりと音像が定位するかどうか?(5.1.4)

 

2.       Auro-Matic聴き比べ用2ch・5chソフト

()        『春の祭典』から第一部序奏~乙女達の踊り(Classic・オーケストラ) ストラビンスキー (演奏時間約7分)

https://www.prestomusic.com/classical/products/7965169--stravinsky-loiseau-de-feu-le-sacre-du-printemps

序奏は、「牧神の午後への前奏曲」を彷彿とさせる神秘的なメロディだが、ここは、Maticにすると特に「奥行き」が出る点に注目。入交氏もおっしゃっておられるが、Maticにすると2(3)階建になるので、「高さ感」が強調されると思われがちだが、第二層の仕事は結構、奥行き感の演出に効いていることが実感できるパート。「踊り」の部分は、「Matic」にしたときは「平面波」効果で、低域の迫力が違ってくるはず。(5.0)

 

()Hotel California」 (Rock) Eagles (演奏時間約7) 

この曲は、5ch版には、Don Henlyのボーカルは、LRとCの3か所に振られている。2ch版は言うまでもなくLRだけである。両者をMaticにすると、2ch版でもセンターSPにもボーカルが振られる。5chのMaticはもちろんLCRにボーカルが入っている。どちらが好みか?(エ)と比較すると面白い。(5.1)

 

ウ)『Kind of Blue』 (Jazz)より、「So what? Miles Davis (演奏時間約10) 

この名曲を選んだ理由は二つ。一つは、これは教会録音であるため、普通のスタジオ録音やJazz Club録音のものより残響音・反射音が多く収録されており、「Auro-Matic映え」すると考えられるから。

もう一つは、このマルチ版は、LCRにきっちりと3人のプレーヤーを分けて録音されているという、珍しいものだから。特にCに主役のMilesなので、Cの能力・音色次第で、印象が大きく変わるアルバム。(5.1)

 

(エ)『Come away with me』(Jazzボーカル)より、「Dont know why  Norah Jones (演奏時間約3) 

この曲を選んだ意図は、2ch版と5ch版で、Maticにしたときのアルゴリズムが違うことを体験してもらうため。Norah Jonesのボーカルは、どちらの版でもLR「だけ」に振られている(マルチ版のCにはアンビエント音しか入っていない)。つまり、どちらもVirtualセンターを狙って録音されている。しかし、これをMatic化すると、2ch版はセンターSPにもボーカルが振られる(LCR)のに対し、5ch版ではセンターSPにはボーカルが振られない(LR)のである(これは、Maticはマルチソース=Atmosや5ch=の場合、オリジナルのチャンネルへの音の配分は変えずに2・3層化するアルゴリズムになっているため)。両者の聴感上の違いはかなりある。どちらが好みか?(5.1)

 

番外

 

Marlena Shawの『Live in Tokyo』

Jazz Liveで、センターボーカル(Cに「のみ」ボーカルが入っているという意味)のSACDマルチは珍しく、Maticにしたときに、ボーカルの定位が全く変わらない(つまり、どちらもCのみから音が出る)というメリットがあり、そこに、Auroならではの「空間感」が加わるところが聴きどころ。(5.1)

                                                                                                                                                                                    以上

 

2023年7月24日 (月)

フォッサマグナツアー下見?ーM1おんちゃん&軽男GT4邸再再(?)訪問

M1おんちゃんさんに数ヶ月前に「チケットありますけど、興味ありますか?」と言われ、その場で軽いノリでOKしたまま、正直言うと先月OTOTENでお会いしてRemindされるまで忘れていた(汗)、超有名大物日本人歌手のコンサートに、一緒に盛岡まで行ってまいりました!アンコール曲の最後は、予想通り、「緑の街に舞い降りて」でした(わかる方だけのネタです・・・)。

 

これは「Auro-3D友の会」のブログで、一応我々はそのメンバーですから(汗)、無理やりそっちに寄せると(笑)、やはり今どきの大コンサート会場らしく、ありました、このSP(どうやらコンサート前でも写真NGだったらしいので、歌手名は伏せています・・・)。

 



 

Auro-3D独特の音響原理の一つである、「平面波」理論を応用した、Line Arrayスピーカーですね。今回の会場は巨大な体育館のようなところで、ステージは会場のど真ん中にあり、周りがアリーナになっていたので、このLine Array SP4つのコーナーに、土俵の下がりのように設置されていました。

 

その音はというと・・・我々の席が前から3列目でほとんどかぶりつきだったこともあり、耳に刺さること刺さること。しかも、姿は見えないが、どう見ても(=感じても)すぐ近くに巨大なSWがある<気配>がして、AEDの電気ショックってこんな感じかも?(試したことはないが=笑)というぐらい、心臓に<振動>が届く!(汗)

 

「もしかして、X1さんのところの、アレ、ってこんな感じ?」と一足早く体験してこられたM1さんに伺うと、「迫力はこんな感じです!」だそうで・・・でも音質はこちらは酷いもので、低域は膨らむわ、遅れるわ、高域は後ろの壁や天井から「やまびこ」が戻ってくるわでオーディオ的には無茶苦茶でしたが(汗)、まあ、「人間国宝級」の方が目の前で歌って踊っているのを「見に行った」と思えば、孫の代まで語り継げる貴重な経験をさせていただいたわけです!M1さん、ありがとう!!!

 

さて、盛岡の帰りに仙台に泊まり、翌日はお約束の仙台チームへの表敬訪問です。ただ、以下は、M1さんとも相談したのですが、来月末のフォッサマグナツアーに参加されるメンバーに、事前のImprintなしに虚心坦懐にホスト4人のシステムの音を聴いていただきたいとのこちらの狙いから、いつもの「訪問記」のような「検聴」スタイルは取りません(グランドスラム邸と軽男GT4邸はツアー後、「実践編」で紹介させていただこうと思っています)。

 

ただ、最終日の仙台組は2箇所で時間が他の半分なので、ホストによる機器の説明の時間を多少でも節約できるよう、事前に簡単なシステム紹介ができればと思って少々。

 

・・・・・・・・・・・・・・

【軽男GT4邸―シュールな体験(笑)】

 

朝、ホテルのロビー前のロータリーにHNにしているGT4でお迎えに来てもらったのですが、一応このホテルは仙台一高級とされる某外資系なので、ちょっと(というかかなり・・・)浮いてました(笑)。X1さんの911より全然うるさいし(汗)、しかもYellowだし!!!(X1さんのは大人のWhite

 

そこへさっそうと乗り込む短パンにTシャツのおじさん・・・すでにかなりシュールなスタートとなりました(汗)。

 

「せっかくだからちょっとドライブしましょうか?」と軽男さん。もちろん、車好きの私がNOと言うはずもなく、かるいワインディングを走っていただきました。そのカーブのいなし方はまたX1さんの911とは違う(ブレーキのタイミングやGのかかり方と車の挙動が違う=これ以上は詳しく書きませんが、ご関心のある方は、続きはツアー中の懇親会で!)のですが、ショスタコービッチのバイオリン協奏曲を流しつつ、黄色いGT4で山道をかっ飛ばすという、またまたなんともシュールな組み合わせで・・・(笑)

 

軽男邸はちょっと仙台市の郊外(と書けば聞こえはいいが、まあ、田舎ですな!)にあり、農機具が収められている納屋にピカピカのGT4が入っていくのが、またまたシュール(笑)。 

しかし何がシュールかって、やっぱりこれですよ、これ。

 

p Img_2033      Img_2041 

Img_2035_20230724073901  

一本40キロ超えるそうですが、それを5本も全部自分一人で上げたそうです・・・こんなのが落ちてきたら「怪我」では済まないですよね・・・今回私がここへ来た最大の理由は、フォッサマグナツアーのツアコンとして、「ゲストのヘルメットはいくつ必要か?」「傷害保険は入っておいたほうがいいか?」(爆)を下見してチェックすることだったのです!(ギャグじゃないです=汗)

 

杞憂に終わりました。わざわざ屋根裏に登らせていただいて確認したのですが、底部にあるスパイク用の穴を利用して金具を取り付け、私のような優男が押したぐらいではビクともしないような固定をしておられました。今後、さらに、HLCRもロープで縛るそうですから、皆さん、安心して、このシュールなお部屋にお入りください!!!

 

Img_2037_20230724073901 Img_2032 Img_2031

Img_2036_20230724073901

もちろん、「課題曲」をいくつか聴かせていただきました。私のPCに入っているωプレーヤー経由の入交ソフトもいくつか再生させていただきました。音の評価は、前述したようにツアー前にはしないお約束ですので控えますが(本当は、ムッチャ、書きたい!)、センターレス(設置はしてあるものの、HCもレスです)によるAuroシステムの一つの典型(現状、4.2.4.1かな?)であるとともに、ここまで巨大なウーファー(しかもダブル)を備えたハイトSP群(フロア型!)を使っている個人のお宅は、日本広しといえどもここだけ(?)と言ってもいいでしょう。その効果がAuro再生音のどこにどう出るか、皆さん、楽しみにしていてください!(彼の全システムLineUpは「名簿」で確認してください)

 

【午後は、M1おんちゃん邸へ】

 

ここは春にお邪魔したばかりで、「訪問記」もUPしているのですが、オーディオマニアというのは悲しいもので(汗)、<手を入れずにはいられない!>性格の方が多いらしく(彼は特に!=笑)、3か月足らずでかなりの変化を見せていました。

 

一番目立つのはサラウンドSPJBLから(これが軽男邸のハイト群に!)、803D3に入れ替えられている点です(うーん、世の中にはこれをいつか<メイン>にするのを夢見ている人も少なくないのに・・・サラウンドですよ、これ)

Img_2046

それ以外にも2ch用には「大物」が続々入荷(笑)しているのですが、それはこのブログの趣旨からして割愛。

 

Auro-3Dに関連しそうなものとしてもう一つ、パナソニックのZR-1というBDプレーヤー(本当はレコーダーです)を追加し、Oppo205と併用されておられます。

 

このZR-1、画像がキレイなばかりではなく、音も205より断然いいとか。205オーナーとして心穏やかでなかったので、聴き比べをさせていただきました。

 

LBDディスクをAuro-3D再生。今回のツアーの課題曲である、『Polarity』と『Magnificat』。確かに、ZR-1の方が、音に重みが出ていて、特に低音の沈み込み方が深い。どちらもHDMI経由のデジタル出力ですから、DAC性能の違いなどではないはず。考えられるとしたらPick Up部分の読み取り精度の違いぐらいでしょうか?メカ音痴の私にはロジックはよくわかりませんが、自分の耳で感じ取ったことにウソはつけません。心穏やかでは余計いられなくなりました(汗)。

 

M1邸には「フォッサマグナツアー」の課題曲はすべてそろっており、皆さんより一足先に全部聴かせていただきました。他にも、SACDマルチをNative5chと、Auro-Maticとで聴き比べをし、第1層がB&W、第2層がJBLのM1邸における5chマルチNativeとAuro-Maticの違いについて二人で「ある一定の法則と仮説」(笑)のようなものを見出しましたが、それは私は今はここには書きません。当日、M1さんご本人からプレゼンがあるかもしれませんので、乞うご期待!