『Auro-3D入門』(実践編)

2024年11月21日 (木)

Tomy邸RevisitedーTrinityの成果!

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先日、入交ご夫妻にお会いしに関西に行った「ついでに」(イヤ、これはどちらが「ついで」であったかは・・・笑)、Tomy邸にお邪魔してきました。ただ、今回は前回の訪問時と異なり、せっかくの「単独訪問」ではありましたが、残念ながら時間的制約があって、2時間ほど聴かせていただいただけでしたが。

 

それでも、十分報告に値する工夫と変化が随所にみられました!

 

私が今回、Tomy邸に伺うのは少なくとも3回目で、前回お邪魔してから14か月ほど経過しておりますが、その間の「改良・改善」については、ご本人自ら、以下に詳しくお書きになっておりますので、この先をお読みになる前に(笑)、ご一読ください。

 

https://philm-community.com/tomy/user/diary/2024/10/09/27911/

 

この記事で書かれている中で、1の「ムンドルフのエアーモーションツイーター」を追加した、という点だけは、前回お邪魔した時には既についていて体験済みだったのですが、さらに「ネットワークの改良」を行っておられる、という点が前回との違いで、2の「フロントワイドの変更」、3のリアサラウンドとトップミドルの変更-などに関しては、<初体験>でありました。

 

さて、Auro-3Dのみならず、5.1chも含め、ClassicVocalJazzといろいろなソースを聴かせていただきましたが、全体の印象を一言でいえば、「広くなった。厚くなった」

 

私は一応「会長」(笑)として、いろいろな方のAuroシステムをなるべく聴かせていただくよう努め、それをこの拙ブログで報告することで、「Auro-3Dを巡る公共圏」を活性化させようと日夜努力している(笑)わけですが、訪問記というのは、誰でもそうだと思いますが、自分のシステムを<基準点>として、その比較の中でしか評価をすることができませんよね(まったく音の評価をせず、機器の紹介と、「聴いてきた」という事実だけを書くなら別ですが=汗)。

 

私は一応、伊豆にメインのソナス+StormAuroシステム、東京の書斎に「混成SP=(笑)」+DenonAuroシステム、リビングにKEFPioneerAtmosシステムという3つのマルチチャンネルシステムを所有しており、どなたかのところを訪問した場合は、必ずこれらとの<比較>を無意識的に、あるいは意識的にしていることは言うまでもありません。

 

前置きが長くなりましたが(汗)、正直言って前回のTomy邸は、「Jazzはいいけど、他はちょっと私の好みじゃないなあ・・・」という感想であったことは、行間を読める方であれば(笑)前回の記事からもくみ取れると思います(Tomyさん怒らないで!この後アゲルから!)。

 

今回は、「教会音楽もオケもオペラもイケるじゃん!!!」という、All rounder的なシステムに「成長」しておりました(まあ、私の好み、という極めて主観的な尺度ですが=汗)。

 

まず、「広くなった」方ですが、これは一番効いてそうなのは、ネットワーク関係のGrade Upかもしれません。音的な「広さ」というのは、私は高域の伸び・透明度と、奥行き感の表現力に特に感じるタイプなのですが、自分の最近のチャンデバ体験からも、「ネットワークパーツのクオリティアップ」は特に高域に於いてわかりやすく、結構な威力だろうな、と想像がちょっとつくようになっているからです(笑)。

 

特にAdd-onされているSTとの間のネットワークの改善は効いてそうです。以前お邪魔した時は、「これほどの広さを感じなかった=STを加えた恩恵をそれほどまでは感じなかった」ので。

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また、これも自分の経験から自信を持って言えることですが、すべてのSPPolkという同じブランドに揃えた=音色の統一感が増した、というのも、確実に聴感上の「広さ」につながっていると思います。音色が混在していると「あらゆる音が前に出てくる」(書斎で日々経験しております=汗)感覚になるので、Jazzなんかだといい時もありますが、ピアノの奥行きや教会の尖塔の高さを感じたければ(笑)、SPの同一化を進めた方が効果的なんです。

 

加えて、Tomyさんご自身の記事には書かれていませんでしたが、もしかすると、これも影響がありそうです!

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これは光HDMIケーブルなのですが、ソース機器とAVプリとの間の銅線HDMIケーブルをこれに変えると、相当な音質アップがあったそうで、実は私も今取り寄せているところです(今週末、伊豆で実験してみます!)。

 

次に、「厚くなった」方ですが、これはFWの強化が最大の貢献者でしょう。Tomyさんのお持ちのAVプリは、Monoprice HTP-1という輸入品で、実はこれ、FWを「常に」(つまり、Atmosでも、Auro-3Dでも、5.1chでも)in-Effectにできるという、世にもまれな(笑)機能があるらしいんです。

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ご存知のように、Auro-3DにはFWは定義されてないので、私のStormDenonも、Auro-3DNativeソフトの場合は、「拡張モード」を使ってもFWから音を出すことはできません(13.1chのフルスペックまでの拡張に留まる。ただし、Stormは、5.1chソフトであれば、AVプリ側で認識している全スピーカー=拙宅の場合だと、9.1.7.118ch=を鳴らすモードがあります)。

 

しかし、このAVプリは、Auro-3Dソースでも第一層をFW込みの9chから出力をさせられるようです。ただし、ヤマハやPioneerなどと同じく、Auro-3Dのデコードはできるが、HCTOPの二つのSPAVアンプ側が対応していないので、Auro-3DMatic)は、最大9.1.4となるようです。

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このFW自体は、前回の訪問時にもあったはずなのですが・・・今回は一回りも二回りも大きなものに変更されていて、大幅にBeef Upされていました!f特までは比較していませんが、当然、SPのエンクロージャーもウーファーユニットも大きくなっているでしょうから、中低域の音の厚みが増したことは間違いありません。特にオケものを聴かせていただいた時、コントラバスやチェロやビオラの中低域部の厚みを前よりもかなり感じたのは、このFWが貢献しているに違いない、とにらみました(笑)。

 

「塵も積もれば山となる」-とは言いますが、オーディオの世界でも同じなんですね(「チリ」に例えては申し訳ないが=笑)。好奇心・探求心・向上心のTrinityの成果を体験できました!

2024年7月22日 (月)

Donguri邸Revisitedー「もう、これで打ち止め」、とまた言われましたが・・・(笑)

ちょうど1年ぶりに、Donguri邸にお邪魔して参りました!

 

我々友の会のAuro-3Dオタクは留まるところをみなさん知らないようで(笑)、donguriさんも前回、【実践編】でご紹介した時から<かなりの変化>を遂げておられます。

 

彼はPhil-Mに結構マメにアップデート報告をされておられるので、詳細はこちらのサイトをご覧になっていただければと思いますが、私が、この1年の間の変化で気がついたところだけをざっと列挙すると:

  • ルームアコースティック(自作品多数=笑。ご本人によると、特に、LRの背後へQRDを導入し、音場が奥に広がったことが大きかったとのこと)
  • センターハイトSPの位置の調整(HLCRの高さと距離を揃えた)

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  • SWの強化(B&W DB4S 2台体制に=LRの下のお手製の棚の中に格納されている)
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  • AVアンプの強化(SR-8015から、同じMarantzの最新のCinema 30へ)
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  • Dirac Liveの導入(Bass Controlまでのフルヴァージョン。これだけで800ドル!)
  • LR駆動用パワーアンプの変更(Accuphase E-370 のメイン利用から、LINN4chマルチパワーアンプAKURATE 4200へ。この結果、LRのみならず、Cも同じパワーアンプ使用となった)Img_2709

 

「ざっと」なのにこんなにある(笑=恐らくまだある!)。たった1年で(笑)。「もう打ち止めです」とはご本人のセリフだが、それって、1年前に805D36台揃えたのを機にお邪魔した時も同じことおっしゃっていましたよ!!!(完全に「オオカミ少年」、いや中年=爆)

 

今回は、清里でのピアノコンサートの「ついで」(笑=時系列的にはこちらが先なのですが、まずは礼儀として訪問記を優先!)に立ち寄ったために午前中しかお邪魔する時間がなかったので、着くなり挨拶もそこそこに(笑)、いきなり最近一番のお気に入りのReferenceソフト、Auro-3D Native9.1ch)のピアノソロのLiveアルバム  を使い、早速検聴モードに突入!

 

まずは、前回から大幅に増殖しているルームアコースティックの効果と、Dirac LiveDonguri邸でどの程度の力を発揮しているのかを見極めたく、Dirac LiveOn/Offを試させていただく。使用曲はMozart Piano Sonata No.9

 

Offから聴かせていただいたが、拙宅(伊豆)に比してピアノとの距離感をかなり感じる。お部屋はLPから正面の窓まで、3Mもないのだが、かなり奥行きのある音場になっている。恐らくこれはQRDの効果なんだろうな、と納得(流石に、QRDの「有無」の実験まではできなかった=汗)。

 

ただ、「こりゃ、かなり前と変わったけど、ちょっとピアノが<遠すぎない?>」と内心思ったのだが(笑)、次にDirac Liveをオンにしてもらうと、きちんと「適切な位置」までピアノが出てきた。

 

そして、やはりDirac LiveDirac Liveであった(笑)。私がDirac Live欲しさでStormを導入した時の最初の驚きと全く同様、空間が澄んで、音数が増えて、おたまじゃくしが空間を乱舞するのが見えるような解像度と、低音に芯が通るのを感じた。私はお邪魔する前に仮説を立てていて、「Dirac Liveは拙宅のような左右非対称などの悪条件がある部屋において効果が高いのであって、Donguri邸のような専用室でルームアコースティックに気を配られている部屋では効果が薄いのでは?」との予想だったのだが、完全に見込み違いであった!(まあ、これはグランドスラム邸でも経験しているのだが、再確認させられた) こりゃ、M1邸も軽男邸もいつまでも様子見してないで、やるしかないですよ!!!(笑)

 

ただ、最近聴き込んでいるこのReference曲を聴き進めていくと、拙宅に比してホールのノイズが目立たないことに気がついた。「ノイズが目立たない」というのは、もちろん<音楽鑑賞にとっては褒め言葉>なのだが、オーディオマニア的には(笑)、「おお、ここに微かな足音が!」を発見するというのはオタク的喜びでもある(爆)。つまりは解像度ということになるのだと思うが、天下のダイヤモンドツイーターなのに、ちょっと変だと思い、率直にそれをDonguriさんに伝えると、どうやらDirac Liveのキャリブレーションを完全にデフォルトでなさっておられるらしい。

 

これはあちこちに何度も書いているし、ついこの前もグランドスラム邸で<何度目かの>秘技を披露(笑)してきたばかりなのだが、Dirac Liveはデフォルトでは、スピーカーがなんであれ、f特の補正をほぼフラット(正確にはやや低域上がり・高域下がり)に補正しようとする。これはf特がボコボコの安物のSPなら音質改善につながるかもしれないが、grandslamや805D3といった、マニアからも一目置かれているようなSPは、その音色の「個性」は中高域に宿るのである。ここを均してしまっては、完全にそのSPの「個性」を殺してしまう。SP選びとはつまりは「音色」選びであり、オーナーはその「音色」が気に入ったからこのSPを選んだわけだから、その「大事なところ」をいじってはいけないと私は強く思っている。

 

ということで、Donguriさんの許可を得て、またまた(笑)、Dirac Live出張サービスモードに! PCで計測済みデータを読み出し、1Khz以上はf特の補正はしない(ただし、位相などの補正は有効なまま)設定に変更。再計算後、新しいキャリブレーションファイルを読み込ませて再度、試聴。

 

うーん、うるさくなった(=ホールノイズが=爆)!こうこなくちゃ、このアルバムは!!!

 

ピアノの音も冴えに冴えた。やはりダイアモンドツイーターによるピアノ再生はいつ聴いてもAddictedである(笑)。ピアノの音が冴えたおかげで、S/Nがものすごく向上したように感じられた。

 

Donguri邸のS/Nは、最初に聴いた時から「こりゃ、以前とは比べ物にならんな」と思っていたのだ(ご本人によるとパワーアンプの交換が決定的だったらしいが、ルームアコースティックの度重なる工夫や、MarantzのハイエンドAVプリメインへの交換なども総合的に寄与しているのは間違いなかろう)が、Dirac Liveによるf特補正を1Khzまでに絞ったおかげで、中高域の「もや」が晴れ、さらに「下方リニアリティ」(これは、ご近所でお世話になっているMyuさんの用語。弱音の解像度、というような意味と私は理解している)が向上した感じがした。これなら、深夜に、奥様を起こさないような音量でピアノを聴いても、十分感動できるであろう!

 

さて、さらに聴き進めていくと、ARTによるSolidな低音再生にすっかり耳が慣れてしまっている私(汗)には、ちょっと低域に甘さ(この言葉は、善悪、両義的に使っている)が感じられたので、またまたお節介を(笑)。

 

測定されたLR805D3f特をよく見ると、50Hzあたりに山があり、そこから下は急峻に落ちている。恐らくこの辺に定在波のPeakがあり、その下がバスレフポートのf0?になっているのだろう。これを見た時、私の頭の中では、「ARTならこのPeakは打ち消されるな…」とイメージしてしまったのだが(汗)、Dirac LiveBass ControlDLBC)はデフォルトではSWとのCO値を70Hzにしてあった。つまり、この50Hz近辺は805ではなく、SWに担当させよう、というのがDLBCの作戦のようだ。

 

私はまたまたDonguriさんにお断りをして、実験的にもう一つの補正ファイル(MarantzAVアンプには複数のSlotに補正データを入れることができる)をつくらせていただくことにし、SWとウーファーとのCO値をデフォルトの70Hzから50Hzに下げたものを作ってみた。

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で、早速試聴。

 

狙い通り、低域がSlimになって、私的には締まった感じがしてARTっぽくてそこそこ好みなのだが、やはりこれも事前の予想通り、量感がかなり減少し、オケのコントラバスの通奏低音が細くなってしまい、音楽的な「感動力」が下がってしまった(汗)。実はこの作戦(=SWとのCO値を、Diracのデフォルトより下げる)は、伊豆で最近実行して気に入っているのだが、あちらはチャンデバ化に伴い、ウーファーの低域再生能力(=質)が上がった(気がする=汗)ことに対応したもの。Donguri邸では、805のウーファーの再生可能最下限域を無理に使わず、質のいいSW2台でカバーする方が音楽再生用途としては優れているようだった。

 

これ以外にも色々な曲を聴かせていただいたのだが、長くなるので割愛。最近、すっかりS/Nに耳がいくようになっているのだが、今回のDonguri邸の音は、とてもS/Nに優れた清明で見通しの良い音だった。Dirac Liveもいじらせていただいて、自分としてもまた一つ経験値を上げられた訪問だった。

 

Donguriさん、今度はチャンデバ化した拙宅の、「ホール音」の<うるささ>(爆)を聴きにきてくださいな!

2024年7月18日 (木)

アンプのセパレート化と蓄電機の威力を再確認しました!

今回のネタは、手持ちの機器を「配置転換」し、設定を切り替えただけのお話なのですが、その効果が当初想定したより大きかったので、記事にしてご紹介しようと思い立ちました。

 

私の東京の書斎の、狭小なスペースに無理やり作ってある、「なんちゃって、Auro-3Dシステム」については、以前も【実践編】で紹介しました。

 

そして最近、ハード的にはサラウンドハイトを図らずも(笑)入れ替え、結果的に強化したということも記事にしています。

 

このお部屋の音は人様にお聞かせするほどのものでもないのですが(千客万来・熱烈歓迎=爆=の伊豆の別宅と異なり、これまで、Taketoさん、Tomyさん、K&Kさんしかお招きしていない)、「都市部の狭小なスペースでもAuro-3Dを楽しめるんだ」、ということをアピールするために恥を忍んで(笑)、紹介してきました。

 

SPも機器類もほとんど余り物の寄せ集め(大汗)で、新品で揃えたのは、Auro-3Dの再生ができるミニマムのAVアンプである、Denon3800と、SP取り付け金具(爆)ぐらい。

 

まあ、当初は「実験用、お遊び」という位置付けだったのですが、Dirac Liveにカネを注ぎ込み始めて(すでに800ドル以上、払わされている…)、徐々に音のクオリティが上がってきたのは感じてはおりました。

 

そんな中、「書斎のボロシステムもどげんかせんと!」と思わされたのは、ここでもご紹介した、Auro-3D nativeの、Royal Concertgebouwでのピアノソロのライブソフトを東京の書斎で再生したことがきっかけでした。

 

このソフトはとにかくS/Nの高さが再生のキモで、伊豆のシステムで初めて聴いた時の興奮冷めやらぬうちに東京に戻り、書斎のシステムで同じ曲を聴いた時の「ガッカリ感」といったら!(泣)

 

確かに、東京の書斎のシステムでS/N対策を特段何かしているか、と問われれば、せいぜい、NASにあるAuroNativeファイルを再生する際に、古いノートPCを生贄にしてRoon Bridgeを介していることぐらい(これは、このブログでは詳しく紹介していないかもしれませんが、効果大です)。

 

ここのシステムは、目を釣り上げて対峙する(笑)「本気聴き用」の伊豆のシステムとは異なり、「仕事で疲れた脳を癒す」ためのものという位置付けなので、小編成の音楽を中心にしてあまり大音量では再生しない(住宅街だし…)のですが、やはり「癒し」には、正確なSPレイアウトや厳密なLPの設定による音像定位や性能の高いアンプやSPが実現するダイナミックレンジの広さなんかより、S/Nの方が断然大事だな、と。

 

そこで、実は前々から「脳内シミュレーション」だけはしてあったものの、めんどくさい(笑)ので実行に移していなかった、「書斎システムS/N向上大作戦!」をついにやってみることに。

 

今回の「大作戦」の要諦は以下の2点:

 

①プリアンプとパワーアンプの完全分離

②電源

 

この2点は、S/Nの向上策として、ケーブル類を交換したり下手なアクセサリーをつけたりというような姑息な(笑)手段に比して、確実で、かつ費用対効果が断然高いのは、オーオタなら誰もが知っていることですよね!

 

まず①に関しては、書斎では、昔マランツの8805というAVプリと組み合わせて使っていた、YamahaMX-A5200という、AB級のアナログ11chマルチパワーアンプを、3800と組み合わせて使っております。しかし、これまでは、この5200の持つ、BTL出力機能を使ってみたいと考えて、書斎の9台あるパッシブSPLRDynaudioは内蔵チャンデバ・デジアンPowered)のうち、7台を5200に繋ぎ(BTL2台とバイアンプ1台)、2台だけは3800のパワー部を使うという運用をしておりました。この時の判断は、BTL接続はS/Nはやや落ちるが、パワーアップによるダイナミックレンジの拡大の方を優先させたということです。

 

このBTL接続を通常の接続にすれば、11chのマルチパワーアンプで、9台のSPを全て賄える(センターのSonetto VIIIは、「K&Kフィルター」を使うために、バイアンプが必須なので、10chの出力が要る)ことは当初から理解はしておりました。

 

さらに、この3800というAVアンプには、プリアンプ部を切り離せる機能が付いているのも知ってはいたのですが、チャンネルごとでもアンプをオフにできるために、3800から2ch分だけのパワーアンプを使って、残りの7ch分のパワーアンプを殺せば、十分S/Nは稼げるだろう、という素人考えで、この機能は未使用でした。繰り返しになりますが、とにかく当初はBTL接続による「迫力」を重視したのです。

 

このプリアンプ部を切り離すモードを、Denonでは「プリアンプモード」と呼んでいまして、今回、切り替えに踏み切るべきかを判断するため、その効果の予測をしようと、カスタマーサポートにメールで問い合わせてみました。その回答が以下です。

 

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ご質問の件につきましてご案内いたします。

 

Q1: Auro-3D用11.1ch SPレイアウトの状態で、「アンプの割り当て」において、「プリアンプ」モードを選ぶと、5.5.1(TS)で設定したSP配置が、強制的に7.4になってしまいます。Auro-3D11chモード(5.5.1)のまま、「プリアンプ」モードに設定する方法はないのでしょうか?

 

⇒アンプの割り当てで11.1にして設定するとそのまま11ch構成可能ですが、プリアウトのモードにすると、サラウンドバックが有効になりますので、プリアンプに設定した後、レイアウトでサラウンドバックを無しにしてから、ハイト5チャンネルの設定すると可能かと思います。

Q2: 「プリアンプ」モードと、すべてのチャンネルのスピーカー接続を「プリアウト」にした場合とで、内部動作的な違いはあるのでしょうか?

 

⇒アンプの割り当てをプリアンプにすると、すべてのパワーアンプが完全STOPになります。

スピーカーの各チャンネルをプリアンプ(ママ:筆者注=恐らく、プリアウトの間違い)にしてもアンプ自体は動いている状況です。

 

どうぞよろしくお願い致します。

 

Denon お客様相談センター

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これで設定方法もわかったし(流石にこれ、やる人が余程少ないと考えられているらしく、マニュアルに詳細な実施方法の記述が全くない)、「プリアンプモード」では、パワーアンプ部が完全停止(おそらく電源を止めるのだろう)になるということもわかり、「これはかなりの効果が期待できる」と判断、実行することに!

 

P 【すべてのチャンネルのスピーカー接続を「プリアウト」にした設定画面=パワーアンプ部は作動している】

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p【「プリアンプ」モードにした設定画面=パワーアンプ部を完全にオフ】

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繋ぎ変え作業は少々面倒でしたが(汗)、その甲斐は私の駄耳でも十分わかるほどありました。まあ、2chでもセパレートアンプを持っている方は、全く異なる機能である整流部と増幅部を、電源ごと切り離す効果が特にS/Nに関していかに絶大であるかはよくご存知と思いますので、当たり前すぎて多言を要しないですよね。ただ、「同じアンプをプリメインとプリOnlyに切り替えて聴き比べた」方は少ないと思いますので、改めてセパレートにすることによるS/Nに対する効果をはっきり確認することができました。

 

この効果に気を良くし、さらに②に進みます。

 

これは、伊豆のように独立電源工事なんて大掛かりなことをする気はなく、書斎でこれまで2chシステム(Arcam SA30+Marantz SACD30n1000Mの組み合わせ)用に使っていた、HONDA E-500 という蓄電機を、「AVプリ」となった3800の方に使うという移設をするだけです。この蓄電機は以前、Phile-Webという交流サイトで諸先輩にご教示いただいたもので、当初、伊豆でStormAVプリ用に導入したものです。その効果についてはかつてTomyさんも拙宅で聴いて驚いた、という逸品で(笑)、あまりに気に入ったのでBackUp用にもう一台購入して書斎でも使っていたのです。

 

かつては、「密閉SPならではの音質」を求めたい時には1000Mの方で聴いていたのですが、最近はSWの強化とDirac Liveの導入もあり、書斎の2chより圧倒的にAuroシステムの方の電源を入れることが多くなっていたので、この際、「主力」の座を3800に譲るという象徴的な移設となりました。今回3800を<プリアンプ>としたことで、消費電力がかなり下がったことも、蓄電機の利用の背中を押しました(プリメインモードで使用し続けると、充電が追いつかず2時間ぐらいでEmptyになって電源落ちしてしまう)。

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結果、ボリュームを上げられない深夜のピアノ曲が、落涙を誘いそうなほど(笑)、心に染みるようになりました。かつてモンテモンテさんが、Auroシステムはボリュームを下げても楽しめるのが美点、と指摘しておられましたが、その際、「感動度」をさらに上げるにはS/Nが良好であることが必要条件だと思います。ゆえに、完全防音部屋のない都市部居住者のAuroシステム構築においては、セパレート化と蓄電機、オススメかもです!!!

 

とはいっても、今回、私の場合はすべて手持ちのものを利用したのですが、もしこれをゼロから新品購入するとなると、総額でMarantzのCinema 30が買えるぐらいになってしまいます。となると、セパレート+蓄電機とハイエンドプリメインAVアンプのどちらの方が、S/N他の音質や音像・音場表現に優れているのかという興味が出てきますよね。私の勘だと、メカニズム的に考えてS/Nだけは、セパレート+蓄電機に軍配が上がり、それ以外の部分ではパワーアンプ部の性能はYamahaとMarantzでどっこいどっこいでも、プリ部はDenonのエントリーグレードよりかなりおカネがかかっているであろうCinema 30の方が特に音像・音場表現では上かな?と想像しますが、さすがに残念ながらこれを検証する財力はないので(汗)、この検証はHiViあたりに期待したいところです!(笑)

2024年7月 9日 (火)

「シン・X1おやじ邸」マルチ部屋訪問記-前より何倍も良くなってた!!!

行って参りましたよ!皆さん待望のシン・X1邸!!! 今回は地理的に私のお近くにお住まいの「友の会会員」にお声がけし、都合のついたdonguri, K&K, Cmiyaji, Siltechの各氏と私の5人による「東京組査察団=笑」を結成して。これ、最初、「どこよりも早い・・・」という見出しを付けて書こうと思い、わざわざ「仙台組」の予約の日程の前に無理やり訪問させてもらった(爆)のですが、私より一日先にお帰りになられたSiltechさんに先を越されまして、残念!(笑)。

 

すでにご本人もお書きになっているように、新築なったX1邸は、2chとマルチ(+映画)に、別々の専用ルームをあてがわれておられます。「2chとマルチの共存」というテーマは、記事を書いたら数多くのレスが付きそうな、古来(笑)からある普遍的なテーマですよね。一般的に、マルチ(AV)とピュア?オーディオを両方楽しむ方法論としては、① 2chシステムを包含したマルチシステムを組む ② 同じ部屋の中に、2chシステムとマルチシステムを別々に設置する(=拙宅の方法) ③ 別々の部屋に、それぞれのシステムを組む―の3通りが考えられますが、私のこれまでの短くない人生で、③のアプローチで、しかも<両方ともに専用ルーム>を作ったという「XXXな人」(爆)には初めてお会いしましたワ(笑=2chは専用室、映画=マルチはリビングで、なら結構いるが)。

 

で、私が2ch(マニアはなぜかこれを「ピュアオーディオ」と呼ぶ。私は自分のAuroシステムも「ピュア(マルチ)オーディオ」だと思っているんだけど仲間に入れてもらえない…)について語れるほどの実践経験を積んでいないのは自覚しているので(汗)、2ch部屋のレビューは他の参加者の会員にお任せし、ここでは、シン・X1邸のAuroシステム(AVシステム全般となると、またまた経験不足なので、こちらもパス…)に絞ってご紹介したいと思います。

 

1日目:まずはお披露目編】

 

X1邸には、3回お邪魔したことがあり、2回目の訪問記3回目の訪問の記録はこのブログ内にあります。

 

マルチ部屋のマルチシステムについては、旧来のものをほぼそのまま引っ越しているので、システム機器の詳細はここでは割愛しますが、1点だけ前回お邪魔した時(昨夏の「フォッサマグナツアー」)から大きな変更となっていたのが、これ。

 

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WilsonWatchシリーズとかいうセンターSPです(型番は説明を受けたけど忘れた・・・汗)。LRを構成している同じWilsonALEXXという弩級SPとツイーターやスコーカーなどのユニットが共通しているそうで、前回のCELLO AMATIから変更されていました。

 

このブログを熱心に読まれておられる方はご記憶かもしれませんが、2回目の訪問時に、私は不遜にも(笑)「LRが突出していて、センターレスの方が音がいい」(大意)との指摘を恐る恐る(?)したのです(汗)。まあそのせいではないでしょうが(笑)、その後、センターを交換されていたのです(印象は後述)。

 

一方、お部屋の方ですが、これはまず、前よりはこじんまりとしました(笑)。といっても、これは単に「比較」上の表現で、以前のお部屋は「バレーボールの試合ができそう」だったのが、今度のお部屋は「バトミントンの試合なら出来そう」となっただけで(笑)、平均的なオーディオルームより巨大であることには変わりません。

 

持ち込んだレーザー距離計で実測したところ、長さ7.5M、幅5M、高さはこの部屋の天井は勾配天井で、その下に木枠の桟とFinがあるのですが(暗くてスマホでは写真が撮れず)、取り敢えず部屋のほぼ真ん中あたりで、桟の奥の天井までの距離が約4.2Mありました。LP(床ではない)からVOGまでが2.3Mで、これは伊豆の拙宅と同じぐらいです。

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LCRと後ろの壁(スクリーンではない)までは2M近くはスペースがあり、スクリーンが170インチもあるというのにLRと横の壁の距離も1Mは確保されているという素晴らしさ(普通、スクリーンを部屋幅ギリギリの大きさのものを入れたがる人が多いので、LRが壁にぴったりほとんど接している、というところは少なくない。オーオタなら全員、このSPセッティングは音響的には×なのを知っている…)。LR間は3.5MLPとの正三角形を形成しており、これは伊豆の拙宅より1M近く長い感じ。

  

サラウンドとサラウンドバックは、さすがに同じ距離(3.5M)はLPから離れてはいませんが、角度はPerfect(私は常々、距離は電子的に補正(Delay)できても開き角は補正できないので、「角度」が一番重要と繰り返し主張してます!)で、目測ですがサラウンドがほぼ90°くらい、サラウンドバックが150°あたりでした。サラウンドバックの方がややLPに近いのですが、その代わりこちらはサランネットがかけてありました(笑)。

Img_2689LPの背後には、機器のラック、その後ろにDiscのラックがあり、どちらへもゆったりとアクセスができる空間が取られているので、恐らく、LPから背面の壁までは2M以上はあると思います(これ、反射の観点から、とても重要!ウチの東京の書斎のように壁を背にしたソファで聴いちゃ、「ピュア」とは呼べないわな!=泣)。

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第二層のKEF LS50の位置もAuro-3Dのマニュアル通りで完璧でした!第一層の5chとの垂直関係、仰角、スピーカーの向きの3ポイントとも、<入交氏お墨付きの!伊豆の拙宅>とほぼ同じ感じに見えました。

 

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しかもその取り付け金具がとてもガッチリしていて、これはいいな、と思いました。やはりここの剛性が甘いと共振を招くし、なにより、地震の時に怖いです(汗)。スクリーンメーカーのオーエスのLineUpで見つけたそうで、これは他の方も是非参考にしていただきたいです。

 

部屋の内装は、様々な音響的仕掛け(拡散・吸音)がしてあるようですが、最も目に(耳に)ついたのは、壁に濃紺の「布」が張ってあった点。これはシアター用には迷光を防ぐとともに、オーディオ的には高音の反射を吸収するので、高域はかなりDeadに私は感じました。でも映画で最も重要なセリフの音域は結構ツヤを感じて英語の子音なども聞きやすかったので、中域はそこそこLiveかもしれません。低域に関しては、床が全面コンクリート敷の上に床板なので、「こりゃ、もしかしてマンションみたいに低音の逃げ場が無いんじゃ?」とイヤな予感がしましたが、そこはさすが、TrinnovOptimizerがきれいに整えていて、不快なボワつき音(定在波)とは無縁でした。

 

外形的な紹介はこの辺にして、肝心の「試聴」と行きましょう!

 

すでにお部屋に通していただいた時に、X1さんが拙宅でお聴きになって気に入られてご自分でもお求めになった、RCOGattiの『春の祭典』(BD, Auro-3D 9.0ch)がBGMV付き)風にかかっておりました。これは私の愛聴盤でもあるので、即座に反応! 部屋に入ってすぐの第一印象が、「S/Nが無茶苦茶いいな、これ」でした。エアコンの音が気になるぐらいでしたから(笑)。

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これは言うまでもなく、この部屋の防音性能の高さと、機器類のクオリティの高さ、電源・ケーブル回りの吟味、などの成果ですが、それなら前の部屋も同じです。でも明らかに前のお部屋よりさらにS/Nが良い。

 

なんでかな?と見渡すと、やはり、壁の布のお陰ではないか、と思いました。映画館とコンサートホールって、入室した時の「ザワ感」が全く違いますよね。この違いは言うまでもなく前者がDead、後者がLiveな部屋の作りになっているからです。伊豆の拙宅は、庭木に集う鳥の鳴き声が聞こえる防音性の低さもさることながら(汗)、ここ「シン・X1邸マルチルーム」に比してかなりLiveなので、その差が大きいな、と喝破しました(笑)。

 

さて、BGMモードから「本気モード」にチェンジして、そこそこの音量で(汗)、最初からもう一度『ハルサイ』をお願いしました(スクリーンは上げてもらいました。やはりスクリーンで音が反射するので、スクリーンを上げた方が音に奥行きが出ます。私は伊豆ではAuro-3Dを聴くときは、映像付きのソフトでもスクリーンは出しません)。

 

この時のチェックポイントは、「序奏」後の「踊り」のパートの再生で、Auro-3D独特の音場である、「平面波」が正しく形成されているか?です。

 

実は、先の訪問記に書いたのですが、旧X1邸は、部屋がデカすぎて(笑)、SP同士の距離が離れすぎて、さらに空間容量があり過ぎて、「平面波」の形成がイマイチだったんです。ほとんどLRだけで頑張っている音でした。

 

今回は…迫ってきました!面で!低音が! 写真では暗くて見にくいかもしれませんが、Before/Afterのフロント面6台のSPの位置関係を見比べてみてください。

 

P(以前のオーディオルーム)Img_1882_20240709101601

 

旧邸では、やはりLS50の「守備範囲」を越えた配置だったんですね。新居ではDefender間の距離がコンパクトになって、簡単には低域を後ろに逃がさない「鉄壁の守備」ができたようです(笑)。

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ここで、「試聴に入るときにプロの入交さんが必ずやる、オーディオチェックをしてみましょう」と提案し、持参のAuro-3D用のチェックディスクを取り出しました。

 

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これは単純に13.1chAuro的に正しくチェンネル分けされているかどうかを確かめるもので、各チャンネルごとに音が出るものです。

 

BDですので、PioneerLX800Discをいれて、メニュー画面から「Auro-3D 13.1ch」を選択して再生すると・・・

 

え、ええーっ(冷汗)

 

第二・三層から音が出てない・・・正確にいうと、フロントハイトLCRから出るべき音がその真下のLCRから、サラウンドハイトから出るべき音が、サラウンドSPから出ている。Trinnovの表示では、「DTS 7.1ch」と認識されてしまっている。これは明らかに、第一層の5chに折りたたまれている、第二層の音をUnfoldできていない。急遽、この問題を解決するのに6人のオヤジ(笑)が総力で、ああでもない、こうでもない・・・と。

 

この先は前回のブログとレス欄を読んでいただきたいのですが、 何とか解決したら、今度は、サラウンドハイトChの音がサラウンドの上にあるSPではなく、リアハイトの位置にあるSPから鳴るという、前回の訪問時に指摘した問題がまだ残っていることに気が付き、「あれ、これリアハイトの無いセッティングのデータを作ることで解決したんじゃ?」というと、「あ、設定切り変えるの忘れてた!」とX1さん(笑)。

 

ここまでで30分近く使ったかしら。「Auro-3D友の会」のオフ会なのに(滝汗)。もう私の持ち時間は終了(他の4人も当然聴きたいソフトがあるので、私一人で独占するわけにはいかない!しかも、午後は私以外の皆さんの「本命」であろう、2ch部屋に移動しないといけないし)。「まあ、明日また来ますから」ということで、初日は私的にはここまで。

 

【二日目:音場・音像・音質編】

 

二日目は、私とKKさんの二人だけで「抜け駆け的に」(笑)お邪魔しました。私は一応「会長」(笑)として、Auroシステムだけは責任を持って(?)きっちりと前回との比較検聴をしなければならないという使命感があり(笑)、前回使用したソフトをPCに入れて、持参してきたのです。本当は初日に他のメンバーの方が居る中でも再生しようと思っていたのですが、前述のように思いもかけない「トラブル」が発生し、時間切れになったため、翌日持ち越しとなりました。

 

例によって(笑)、MacTrinnovにつないで、非売品のAuro-3D Nativeソフトをいくつか聴かせていただきました。

 

その詳細は事情があってここには書けません(詳しく知りたい方は、今度の「懇親会」で!)が(汗)、素晴らしいソフトで、お部屋に3人しかいない状態で(人間は「吸音材」なので、人数が多いと音場が狂うんです、実は。キャリブレーションの時と同じ人数がベスト!)、おしゃべりもせずに(笑)真剣に聴かせていただきました。

 

その結果(笑)、前日からうすうす気が付いていたことに確信が持てました。それは、センターSPを交換した成果です。

 

前の訪問記にも書いたのですが、ぶっちゃけ、旧邸では、センターレスの方が音がよかったんです、マルチでも(汗)。その理由は、あきらかに、LRとの音質が揃っていなかったからです。ピアノソロなんかでも微妙に音がにじんでいるような感じがあったんですが、今回は、そのような違和感が全くと言っていいほどありませんでした。シン・X1邸のセンターは、Auroのマニュアルが要求するLCR同一SPではありませんが、LRとほぼ同じユニットで構成されていて、しかも、数日前にポジションを数センチ上げてLCRの高さをある程度揃え直して再キャリブレーションをしたそうです。

 

その成果は意外なことに、「音場面」で、サラウンドやサラウンドバックの音のつながりの改善にも寄与している気がしました。前回お邪魔した時は、「何を聴いても」(笑)LRが主役で、それ以外のSPは「バラの花束の霞草」(笑)だったのですが、今回はちゃんと一体感があって、全部のSPが正しく「消えている」。これはちょっと自分でも論理的には説明ができませんが(汗)、センターが第一層の中で音色的に浮かなくなったことで、LCRの前方からの音だけではなく、S, SBからの音にも聴感上いい影響を与え、LRを含めたすべてのSPが消える(これは、マルチ再生、特にAuro-3Dでは最高の誉め言葉。拙宅でもMyuさんにそう言われた時はお世辞でもとても嬉しかった! ちなみにATMOSだとSPが<残る>方が望ましいかも・・・)という、最上の状態に近づいたようです。

 

それから、前日に「平面波」形成効果だけは確認した、第二層のSPレイアウトの改善の効果ですが、もう一つ、「音像面」で、「奥行き感の表現」の向上を私は聴き取りました。前回訪問時も今回の訪問時も自分の記憶のReferenceは言うまでもなく、自分のセット(伊豆)であり、この伊豆のSPレイアウトは前回のX1邸評価時とほぼ変わっていないので、自分の中の比較の「軸」は前回と同じなんです。その「軸」から見たときに以前の部屋では、「なんか、ちょっと平面的」な部分が感じられたのですが、今回はくっきり3D(笑)。

 

これはセンターSP交換の効果もあるかもしれませんが、私の長年の(笑)経験では、第二層の働きが奥行き感には効くんですよ、不思議なことに。だから、多分、以前は「そこにSP=音があるだけ」(ATMOSの映画ならこれで十分)でAuro的には有機的に機能しきれていなかった6台のLS50が、SP間の距離が縮まり、空間容量がコンパクトになり、さらにこれが恐らく決定的だと思いますが、「サラウンドハイト」が、<正しく、サラウンドの真上で鳴る>(前回は、「リアハイト」が鳴っていた)ことで、Auroらしい「有機的な結合」を果たしてきたのかな、と分析してみました。

 

最後に、これは初日から、いや前回、前々回から変わらずの印象ですが、拙宅のReferenceとは「音質面」でかなり違う。味わい深い。うちのは「8年物」ぐらいですが(最近、チャンデバ化して余計若々しくなったかも…)、X1邸の音は「24年物」ぐらいの感じ(私は昔、1年間スコットランドに留学していたので、チト、ウィスキーの味にはウルサイ=笑)。しかも、X1さんによると、「まだまだ部屋のエージングが進んでいない。あと数年は音が落ち着くまでにかかる」と言われるので、数年後には、「40年物」ぐらいの超高級ヴィンテージ味になっているのかも?!

 

今からすでに、「再訪」が楽しみです!!!

2024年5月11日 (土)

『Auro-3D入門』<実践編>(No.8 Siltech邸)-空間表現で2chに負けるAuro-Maticなんてあり得ないでしょう?(笑)

久しぶりの、実践編です。今回は、千葉のSiltech邸にお邪魔しました。

 

Siltechさんは、この3月末に、ここのブログを通じて連絡をいただきまして。その主訴()としては、「DVD-Audio、BD、SACDのソースで、音だけのマルチチャネルを再生も時々していますが、いまいち、感動することができず、2chに戻ってしまいます」というもの。「友の会」のブログを読み込んでいただいたようで、Auro-Maticならお好きなプログレ2chソースの新しい側面を見せてくれるのではないか、と思われたようです。彼との詳しいやり取りは、以下の二つの記事のコメント欄にあります。

 

http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2023/06/post-10c9b4.html

http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2024/04/post-019455.html

 

決断と行動のずいぶん早い方のようで()、4月末までにはAVアンプとしてDenonA1Hを入手され、Auro-3DMatic)用のTOPVOG)スピーカーも電気屋さんに取り付けさせましたとの連絡をいただきまして。

 

こうなると、Auro-3D友の会会長()としては責任重大でして(汗)、「こりゃ、一刻も早く伺って、最初のクリニック(上から目線ですみません…笑)をしなきゃ」ということで、行って参りましたよ、千葉まで。

 

お会いしてすぐに判明したのが、私と同学年だということ。私もプログレにハマっていた時期があり、上記やり取りの過程で「世代が近そうだな」とは感じていたのですが。ということで早速打ち解けて(=得意!)、いきなり本題に。

 

まずはSiltechさんのメインシステムの2chから紹介していただく。このブログの趣旨は言うまでもなく「Auro-3Dシステム」の紹介ですから、これまでも2chシステムを別に持っている方のシステムについてはそれほど詳しくは書いておりませんので、ここでも簡単に留めておきます(というか、私では説明されてもよくわからなかったというのが本音=汗。グランドスラムさんなら興味津々だろうなあ!)。

 

スピーカーは、InfinityというメーカーのIRS-BETAというものだそうで、X1邸のYGのように、中高域のタワーと低域のタワーが分かれています。中高域に使われているユニットはリボン型?静電型?のようです。リボン型は、友の会のシバンニ邸のPiegaシステムによるAuro-3Dを聴かせていただいていますし、KK邸や私の東京の書斎でもスーパーツイーターとして馴染みがあります。静電型なら昔、Quadというメーカーの「衝立」というか、北海道の家によくあるパネルヒーター()みたいなものを聴いたことがありますが、それ以来かも(グランドスラムさんが今度STAXを聴かせてくれるはず!)。それにしても、よほどインピーダンスが低下することがあるようで、再生中、Jeffが時々気絶してました(音量が大きすぎた?=汗)。

 

P1.右側がInfinity(ch再生用) 左側がFocal Grande Utopia(映画・マルチ再生用)

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P2. これはInfinityの低域タワー。パッシブウーファーが4つ。Focalの後ろの方に、内向きに置いてある。

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P3. これは駆動用のパワーアンプ。つい数年前まではお店でしか見たことがなかった超ハイエンド品なのに、なぜかいつの間にか「ここもか」って感じで見慣れてしまっている…(爆)

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P4. これはDeqxとかいうメーカーのプリ(?)で、Dirac Liveのような音場補正もしているらしい。説明されたけど私にはよくわからなかった・・・(汗)

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P.5 これもなぜかここ2,3年、すっかり見慣れてしまって驚かなくなった()、エソのハイエンドソース機器群。

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ここまでで十分お分かりのように、部屋は吸音、拡散の工夫に溢れ、20畳ほどの広さの床は、スピーカー部はコンクリート敷きの完璧な剛性、ケーブル類はハンドルネームから推して知るべし、仕上げに「My電柱」までお持ちの、全くスキのない、コアなベテランオーディオマニアであられます。

 

次に、マルチチャンネルシステムの説明を受ける。

 

こちらのシステムの紹介こそが、本命であるべきなのですが・・・() フロントLRは、Infinityの隣にある、Focal Grande Utopia。これは初期モデルなんでしょうか? 最近TIASで見た最新のものと同じではないことだけは私にもわかりますが(汗)。

 

P6.TOPスピーカー(Polk Audio ES35

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P.7 Center (celestion100+なんか小さいのが棚の裏に他に2台あった…)

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P8.  Surround (Diatone DS1000z

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P9.  Surround Height (manger)

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P10. Surround Back (B&O) ただし、SB Heightの位置に設置してある

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P.11 A1HOPPO 205

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P.12 Front Height (Bose)

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P.13   Front Center Height (celestion100)

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うーん、どう見ても典型的な「LR突出型」で、嫌な予感・・・() これらのSP群を、今はAudysseyで補正しているそうですが、何と!パワーアンプも全部A1H一台に任せているとか!(いくら何でもFocalのハイエンド超大型SPAVプリメインの2/16のパワーでドライブって・・・笑)

 

さて、一通り機器の紹介を受けたところで、最初の「お題」として、Alan Persons Projectの「Eye in the Sky」を、まずはSiltechさんお気に入りの2chシステム(Infinity)で聴かせていただくようお願いしました。

 

曲が終わると、すぐに「同じ曲で、Auro-Matic(Focal etc.)で聴かせてください!」

 

次に、「Auro-Matic(Focal etc.) のセンターレス設定でもう一度!」

 

というわけで3回、同じ曲を最初から最後まで聴きました。

 

ウーム、なぜか2ch(Infinity)の方が奥行き感が出ている・・・(泣)。Auro-Matic(Focal etc.) だと、Denonの押し出しの強いところが裏目に出るのか、音が前に揃ってしまって平面的になってしまう。上にも後ろにも、13chもあるはずなのに。そして、Auro-Maticでのボーカルの音質は明らかにセンターレスの方が良かったです。ここのセンターとLRの落差は、グランドスラム邸やX1邸、Cmiyaji邸の比じゃないぐらい激しいから、これは完全に予想された結果…

 

最初の奥行き感の差に関しては、「位相耳」の私には、2chの方が完全に位相があった音に聴こえました。位相が合うと空間が広がって遠近感が出て、くっきりとした「冬の夜空」になるのだけど、これは完全にInfinityの方が優れていましたね。恐らく、あのスピーカーのリボン?静電?って、原理的に<タイムアライメント由来の位相>は狂いにくいのでは?だって、全部平面だもん()。実は今、伊豆に来ていて、この原稿を書く確認のために、拙宅のシステムでも、まずはSonetto VIIIの2chで「Eye in the Sky」を聴いてみたのですが、すると、この曲は前回の記事でいうところの3番の設定の方が空間感に優れるんですよ…これはMyuさん一押しの設定で、なるほど、音源が変わると「視点=聴点」が変わり、評価も変わるんだな、と、また迷路に・・・泣。

 

 

ちょっと脱線しかかりましたが(汗)、一方、マルチチャンネルシステムの方は、やはりAudysseyの音響補正では限界があるよなあ、と強く感じましたね。全く位相がバラバラな感じの音でした。ここはDirac Liveを導入すれば、もう少しは改善するような気はする。

 

ただ、それ以外にも問題がありました・・・(汗)。実は最近の私は位相に敏感だけではなく、「歪」にもやたら敏感になりまして()。東京の書斎で2回、伊豆で1回、歪を検知していますから、もうほとんど「探知犬」並み()

 

で、ここでも感じてしまったんですよ。最初の「Eye in the Sky」をAuro-Maticで聴いているときから、右のサラウンドハイトとして使っているMangerに。このSPは見るのも聴くのも初めてでしたが、「モニターSPとして超有名」ってことぐらいはさすがの私でも知っていたので、どんな音がするのかと興味津々で耳をそばだてていたら…(前からの音だけに集中しない、<Auro耳>ですので・・・笑)

 

恐る恐るSiltechさんに申し上げて、確認のため「歪みやすい名倉のマリンバ」(Auro-3D)を再生してみると、結局両方のMangerが派手に歪んでいることが発覚し、これ以上、聴いていられなくなったので、Siltechさんが2台のMangerSPケーブルを抜いてしまわれまして(汗)。

 

つまり、ここから先は、サラウンドハイト抜きのAuro-3DMatic)再生となってしまったので、全くFairな評価にはならなくなりました()。ゆえにリュックに入れてたくさん持ち込んだAuro-3Dソフトも、まあせっかくだからいくつか聴きはしましたが、特に上方の音像定位が乱れてしまってダメでした。なぜかのメカニズムは説明できませんが、全体的に音像が高くなり過ぎてしまっていました。

 

まあ、それでもSiltechさんに「面白いなあ、ちょっと本気で取り組んでみようかなあ」と言っていただいたので、<種まき>としては良しとしておきましょう()

 

結局、後半戦は私の「検聴」はあきらめ、同年代Talkに花が咲きまして()Siltechさん手作りのおつまみ(料理、お上手!)をいただきながら、シャンパン系の泡ワインをしこたまいただいて、気が付いたら8時間近くもお邪魔してしまいました!

 

ということで、次回はSiltechさんを伊豆の<総本山>(自分で言うな!=爆)にお招きすることになっていますので、そこでAuro-Maticの可能性を彼がどう判断するか。責任重大だなあ()

 

その前に、いいかげん、チャンデバの設定決めなくちゃ!(大汗!!!)

2023年10月25日 (水)

『Auro-3D入門』<実践編>(No.7 グランドスラム邸)-ATMOS配置のSPで、Auro-3Dを聴くとどうなる?

学園祭の振替休日を利用して、グランドスラム邸に行って参りました。もう何度目かな?結構、自宅から時間がかかるんですけど…(笑)。

 

今回は、実は「お招き」を受けまして、「泊りがけで来い」と宿泊先まで用意してくれて手ぐすね引いて待っておられました(「お招き」というより、「招集」か?=笑)。というのは、例の、Dirac Liveの新技術、ARTActive Room Treatment)のセッティングに来い、というわけで(汗)。これは現状、StormAVプリを持っている方だけの特権!ですから、同じAVプリを持っている(ただし、プチ自慢しておきますが、彼のは16ch版、私のは32ch版!)者同士としては、「早くART仲間が欲しい」(ここまでは「一人ぼっち」だったので・・・)こともあって、「出張要請」を受け入れたというわけです(どなたのところにも呼ばれたら必ず行く、というほどヒマ(笑)ではないので、念のため=汗)。

 

まあ、実は私の方にも訪問の狙いはあって、それは、何と言っても、「Auro-3DAtmos用に、それぞれ専用のSP群を第二層に配置したから、そのキャリブレーションをしてから比較試聴どう?」という、イマーシブオーディオファンなら誰もが興味を持つテーマが用意されていたのです。

 

グランドスラム邸にはこれまで4回ぐらい訪問しており、その度に、詳細な訪問記を旧Philewebに書きました。例えばその一つとして文章だけの燃え残り(笑)が以下にあります。

https://philm-community.com/auro3d/user/diary/2021/12/18/9817/

 

そのシステムの概要については、もう繰り返しませんが、この前のフォッサマグナツアーの時の写真やデータが以下にあります。

 http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2023/08/post-29b26d.html

 

ですから、<実践編>としてはあまり新味がない(笑)のですが、今回の訪問時には上記から、1.サラウンドバックを無くして、「グランドスラム」で第一層は5chを形成(ただし、この構成は「期間限定」だそうで、来年4月以降はセンターは「グランドスラム」ではなくなるそうですから、<LCRそろい踏み>を体験したい方はお早めに!)。その分、LCRLPとの距離を1Mぐらい離した(5.2.5.1)2.Auro用の第二層・三層のSPをすべてSignatureモデルにした(?)―という大きな変更点がありました。もちろん、最大の変更点は、ATMOS用の4台の第二層のSPATMOS用語でいうところの、トップフロントLRとトップリアLR)と切り替えて、Auro-3D(Matic)用の第二層・三層用の5台のSP(ハイトLCR、サラウンドハイトLR)を鳴らせるようにした点です(Jeffのパワーアンプを取り付けたそうです。機種は?グランドスラムさん補足して!!!)。もちろん、これらのSP群は各フォーマットが定める文法通り、ATMOS用は「真下」に向けて、AURO用はLP頭上に向けてセッティングされていることは言うまでもありません。

 

<真下を向いている805はATMOS用、LPに向かっているのがAuro用の805>

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ここで、念のため強調しておきたいのは、<普通は・並の人は(笑)>ハイトLR・サラウンドハイトLRFOR AURO)と、トップフロントLRとトップリアLRFOR ATMOS)は、同じSPを共有しているはずです。私の知る限り、ここにわざわざ別々のSPを配しているのは、他にはDonguri邸と、WOWOWのスタジオだけです。

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ただ、Donguri邸は二度ほどお邪魔したことがありますが、AURO用とATMOS用のSPが全く異なるメーカー・方式であるのに対し、グランドスラム邸はバージョン違いではあるにせよ、同じB&W805であるという点が優れています。つまり、Donguri邸は、同じ曲をAUROシステムとATMOSシステムで聴き比べようとしても、比較の対称性に乏しいため、出音の違いが、フォーマット(方式)の違いのせいなのか、SP自体が異なるからなのかが残念ながら正確には弁別できません。

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この点、両フォーマットの違いを研究する上で、グランドスラム邸は格好の実験場だというのが、私が今回「釣られた」最大の理由でした(笑)。

 

<Auro-3Dの文法通り、第一層のSP群の垂直上にAuro用の805を設置してある>

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初日の到着後、すぐにキャリブレーションを始めたかったのですが、グランドスラムさんは前日までSPを理想の位置に動かすのにかかりっきりだったらしく、肝心のStormAVプリの準備(ファームウエアのアップデート)も、Dirac Liveの準備(最新ソフトのダウンロードと、ARTのライセンスの購入)も全く(笑)してない(泣)。

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つまり「完全おまかせ状態」だったので(汗)、まずそこから初めて1時間。ようやくAuro-3D配置からキャリブレーションに入ると、Bass ControlDLBC)まではできたのですが、ARTが構成できない。理由は、測定後に「!」のサインが出る、つまりこれは「適正に測定できていないのでやり直せ」ということ。で、その後何度やってもうまく行かない。そうこうしているうちに宿のチェックインタイムが迫ってきたので、「明日の朝早くからもう一度」ということになって、一旦切り上げました。

 

宿では色々「面白い話」があったのですが、流石にそれは割愛(笑)。翌朝、再度取り組みましたが、同様にエラー表示が出て進まず。気分転換に(汗)と思って、ATMOS用のSP配置をConfigureして、これでキャリブレーションを開始してみたら、なぜかこちらはスムーズに進み、ATMOS用のDLBCARTの補正Setを作ることができました。その後、ARTDLBCの聴き比べを念入りにしたのですが、この部分はグランドスラムさんから別に詳しく報告があると思います。この時点でとりあえず、Auro-3DMatic)用とATMOS用のDLBCは完成したので、ART同士でないのは少し残念でしたが、この二つで私は、今回の自分の「問題意識」による実験に進みました。

 

まずは、<実践編>らしく、お部屋のスリーサイズを。W5.3ML7.9MH3.92.9M(勾配天井)。音響のプロに設計・施工させたという素晴らしい音響特性(たぶん=笑)と防音性能・剛性を備え、さらに「マイ電柱」でダメ押ししているという、個人のリスニングルームとしては<やり尽くしている>環境です(汗)。

 

<フロントハイト群とVOG用のJeffのデジタルパワーアンプ(?)2台をスクリーンケースの上に設置>

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次に、前回のフォッサマグナツアーで、グランドスラム邸に来た時に感じた「問題点」について。さすがに、「総括」には「いい点」しか書きませんでしたが、課題曲の中でグランドスラム邸において「課題」を残したと(他の参加者はともかく)私が感じていたのは、『New Year’s Concert』でした。これはコメント欄にチラッと書いたのですが、この中の少年少女の合唱が入っている曲において、バルコニーにある合唱の高さとオケの高さにあまり差がない(オケが高すぎる)という問題でした。

 

その原因は、巨大で背の高い「グランドスラム」が、LPに近すぎたのです。ツアーの時には、グランドスラムさんはかなりサービス精神を発揮したらしく(笑)、LPを地上5chSPからほぼ等距離にしたそうです。つまり、以前に私がお邪魔した時よりLPを前に出して、LCRとの距離を縮め、その代わり、斜め後ろに置いたサラウンドとの距離を稼いだというわけです。その距離3M

 

「等距離原則」はサラウンドのSP配置の王道の文法ではありますが、グランドスラム邸では一つ大きな問題が。

 

<サラウンドSPと、サラウンドハイト(Auro)、トップリア(ATMOS)>

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こういう巨大なSPは、見かけ上の「点音源」とみなせるまでLPから離すのが鉄則で、でないと、音源が「縦長」になってしまいます。いわゆる、「近接効果」というやつです。拙宅のSonetto VIIIクラスであれば3Mで十分でしょうが(事実、拙宅は約3Mです)、あの巨大な「グランドスラム」では3Mでは「近接効果」が目立ってしまっていました。このトレードオフにグランドスラムさんも気が付き、それを今回は以前のポジションとほぼ同じ距離となる、4Mのところに戻したとのことでした。「等距離」原則は、AVアンプのDelayを使って誤魔化すことで妥協したそうです(笑)。

 

その効果はてきめんでした。ちゃんと、合唱がオケよりやや上方に定位していました。「合格です」(笑)。もちろん、「その代わり、LPに近くなったサラウンドからの近接効果が強まるだろ?」というのは論理的にはあり得る指摘ですが(汗)、後ろ側にはアンビエント音が中心で、定位させる音像がない音源がほとんどなので、こちらは私は気になりませんでした(拙宅もサラウンドのSonetto VIIIからLP2M弱しかない)。やはりAuro-3DMatic)は「フロント重視」のフォーマットですから。

 

さて、ここからは<実践編>的な内容を離れて、「実験レポート」です(笑)。

 

・・・・・・・・・・・・

 

問題意識

 

今、最も普及しているイマーシブオーディオフォーマットであるATMOSと、我らが()Auro-3Dは、特に第二層に於いて、両フォーマットが定義する「正しい」SP位置・角度が大きく異なっている。普通の家では()、このどちらかのフォーマットのSP配置を選んでセッティングしており、いったん天井や壁に固定した第二層(&三層)のSP群を動かすことはできないのが一般的だろう。しかし、ソースはどちらも簡単に入れ替えて再生することができる。

 

そこで、1.ATMOSソースをAuroシステム配置で再生した場合、2.Auro-3DソースをATMOSシステム配置で再生した場合-は、各フォーマットの規定する「正しい」SP配置で再生した場合と、どの程度音質・音場・音像が異なるのかを検証してみたい。

 

方法論

 

まず、ATMOS配置とAuro配置それぞれに対してキャリブレーションを行い、Stormに異なるセッティングデータを保存した。これにより、両フォーマットを切り替える作業は、単純にSPを切り替えるだけではなく、両SP位置でのキャリブレーション済みの音場補正環境を適用している。このため、両フォーマット間を切り替える際に、LPからの第二層への距離の違いによる位相の狂いや、再生SP数が異なることによる、音情報の欠落が発生しないようになっている。補正ソフトは、両者ともDirac Live Bass Control(DLBC)を使用し、補正範囲、SWとのクロスオーバー値などはすべて同一にしてある。

 

そのうえで:

 

1.ATMOSソースである、Pink Floyd『狂気』BD*を、ATMOS配置とAuro配置で聴き比べる。

*このソースは、7.1.4で録音されており、グランドスラム邸では、ATMOS配置の場合は、5.2.4で再生される。これをAuro配置で再生する場合も、「Auro-Matic」では再生していない(StormAVプリはATMOSのオリジナルフォーマットを変更できない)。つまり、Auro配置も同様の5.2.4HCTOP無し)で再生される。

2.Auro-3Dソースである、『LuxBD*を、Auro配置とATMOS配置で聴き比べる。

*このソースも、7.1.4で録音されているが、Storm AVプリはAuroフォーマットのソースはすべて拡張モードで再生するため、グランドスラム邸では、5.2.5.1で再生される。これをATMOS配置で再生すると、5.2.4となる。

 

実験結果

 

1.『狂気』-比較試聴に使ったのは、On the RunTimeの冒頭のチャイムの部分。On the Run冒頭の、シンセサイザーで合成された<シャープな風切り音のようなもの>が、Atmos版では上空の第二層を回るように収録されているのだが、ATMOS配置の方が、「回る半径が大きい」。写真にあるように、グランドスラム邸では、Auro用のLRの「フロントハイトSP」の位置より、ATMOS用の「トップフォーワード」LRの方がLPに近い。つまり物理的距離はATMOS用のSPの方が近いのにも関わらず、ATMOS配置による再生の方が、上部で「遠く」に位置すべき音が、「正しく遠い」位置にあるように聞こえる。逆に言えば、Auro配置でATMOS音源を聞くと、「全体的に前に出てくる」。同様の感覚は、爆発音の後に、<走り回る足音>のパートでも確認できた。

 

そして、もう一点顕著な差を感じられたのは、<空港ロビーでの女性アナウンス>のパート。英語の発音がはっきり聞こえるのはAuro配置の方なのだが、「空港らしさ」(何を言っているのか、良く聞こえない感じ=笑)をよく醸し出しているのは、ATMOS配置の方であった。つまり、これもAuroより「遠くに、かすかに」聞こえるのである。

 

しかし、肝心のこのパートのPink Floydのメンバーによる「演奏」に注目すると、印象が変わってくる。Auroの方がとにかく全体に前にグイグイくる感じなので、シンセサイザーやドラムの音などはこちらの方が迫力を増す。これは完全に好みのわかれるところであり、私はATMOS配置の「効果音の巧みさ」が気に入り、グランドスラムさんはAuro配置による「音楽の迫力」に軍配を上げた。

 

2.『Lux』-比較試聴に使ったのは、冒頭の曲。私の大のお気に入りである()。まずはAuro配置で聴かせてもらう。実はこの曲は以前も(何度も?)グランドスラム邸で聴かせていただいている。しかし、これまではSP配置がATMOS用しかなく、つまり、第二層のSPはすべて真下を向いている、アレ、である(汗)。その時の印象に比して(そしてもちろん今回も同じATMOS配置によるこのAuroソフトの再生に於いて)、「高さ感」が格段に向上した。グランドスラムさんが拙宅にお見えになると、「高さ感があって、神々しい音場感」といつも褒めてくださるのであるが、今回のAuroセッティングでグランドスラム邸の音場もかなり<いい線>に行ったと思う。

 

そしてもう一つ、格段の差が付いたのが、コントラバスとオルガンの低音再生である。これは教会録音なので、(前面の)壁全体から(実際、パイプオルガンの低音出力は、床から天井まであるパイプの共振音)<面で>音が迫るのがRealなわけだが、Auro配置・システムで再現するこの音場感と音の迫力が、ATMOS配置では全く出ていない。前方上方の音空間における低音が「さみしい」のである。さらに、1で書いたように、ATMOSだと高域の音が「遠くなる」。この曲は女性(少年少女?)のソプラノ合唱が主旋律を担当するのであるが、ATMOS配置でこの曲を聴くと、先の低音不足と相まって実に「そっけない」()感じとなり、「感動させる力」が落ちるのか涙腺が全く緩んでこなかった…。

 

ご存知のように、この2LBDは、7.1.4によるATMOSソースも収録されているが、今回はこれは聴かなかった。理由は、時間が無かったこともあるが、これはすでに実験済みで、自分の中でははっきりと勝負がついているからである(お手持ちの方はすでに自分のシステムで実験済みであろうし)。やはり48kHzATMOSフォーマットと、96kHzAuro-3Dフォーマットの差は、それが11ch分になるからか、埋められないものがある(そもそも、「音質」の差があり、ある意味Fairな判断ができない)。

 

考察

 

今回の二つの音源<『狂気』(ATMOS)、『Lux』(Auro-3D)>を、Auro用とATMOS用のSP配置で聴き比べた結果を総括すると、この二つのSPレイアウトの違いは、一見では、定義されているものとないものの違い、つまり、ハイトセンター・TOPVOG=第三層)のあるAuro-3D、トップミドルLR(第二層)のあるATMOSに注目が行きがちであるが、私の結論では、それ以上に、第二層に配されているSPの「向き」の違いが大きいような気がする。

 

ここでもう一度整理すると、ATMOSでは、第二層の6台のSP(一般的な民生用では、トップフォワードLR、トップミドルLR、トップリアLRの6台が最大)はすべて「真下」に向けるよう指示されている(天井に埋め込む、シーリングSPを推奨=Donguri邸はこれ)。一方のAuro-3Dは、第二層の5台(フロントハイトLCR、サラウンドハイトLR)をLPで起立した時の頭の位置に向けるように指示されている。そして、「普通の人」(笑)は、トップフォワードLR=フロントハイトLR、トップリアLR=サラウンドハイトLRとして、ATMOS用なのかAuro用なのかはっきりさせずに、どっちつかずのいい加減な(泣)設置をしている人がほとんどであろう(特にデノマラとヤマハのマニュアルはあいまいな書き方がしてある。ご自分の第二層のSP群をATMOS用にしたい方はDolbyのHPを、Auro用にしたい方は、このブログの左上にある「Auro-3Dマニュアル」をご覧いただきたい)。

 

いうまでもなく、SPというのは、正面軸上(ツイーターが耳の位置の高さ)で聴くように普通は設計されている。これは、音は球状に拡散するため、軸上から離れれば離れるほど、音圧が下がっていくからである。さらに、音波は高域ほど直線性が強く、低域ほどより球状に拡散しやすいため、軸上から外れて聴くと、高域が低域に比してロールオフして聞こえることはよくご存じのことだろう。スピーカーの真横で聴けば、ほとんど中低音しか聞こえない()

 

ということはつまり、ATMOSの指定のスピーカーセッティング(特に「向き」がLPに向いてない点に注目)では、直進性の強い高域は、LPに於いては、直接音が少なく、反射音が多くなり、そして減衰するわけである。特に高域で反射音が多く、音が小さくなるというこの特徴が、今回の試聴で、私が「遠くの音は、ATMOSの方がより遠くから聞こえる」ように感じた原因と考察するのはある程度合理的であろう。

 

音楽用途をメインとして設計されたAuro-3Dに対して、ATMOSは映画用をメインとしているわけであるが、ATMOSは「遠くの雷鳴」のような効果音はAuro-3Dより出しやすいようだ。この特徴を活かせば、今回私が『狂気』で聴いたような、空間に散らばる星を眺めるような(まさに、『STAR WARS』の世界!)音場表現には優れるはずである(今回は時間が無くて聴けなかったが、音楽でも、恐らく、『クリムゾンキングの宮殿』のATMOS版などは非常に魅力的に再生するに違いない)。

 

ただ、こうした「映画的な」手法でエンジニアリングされた一部の音楽を除けば、Auro-3Dの、フロント6台のSPが全てLPに向いていることによる「平面波効果」によると思われる、奥行き感と同時に押し出し感・実体感に優れる表現は、まさに音楽向きだといえよう。つまり、今回確認したように、Auro-3DMatic)の音の魅力を最大限に引き出したければ、第二層のSP群の「向き」はとても重要であることを強調しておきたい(真下向きの第二層のSP群で、第一層のSP群との空間に「平面波」が正しく形成できるとは考えにくいため=)

 

逆に、ATMOS映画の効果音を十全に堪能したい場合は、指示通りに第二層のSP群は「真下に向ける」べきであることがよく分かる結果となった。

 

まさに、「二兎を追う者は一兎をも得ず」である。

 

参考文献()

 https://philm-community.com/auro3d/user/diary/2020/08/17/9758/

ほか

2023年7月17日 (月)

『Auro-3D入門』<実践編>(No.6 Cmiyaji邸)-伸びしろ満載のAuro-3Dシステム

新たに「友の会」の会員になられたCmiyaji邸に行って参りました。「どうも、Auro-3DMatic)が満足に鳴らない」というお悩みを事前にお聞きしていたので、今回は白衣を着て(爆)、クリニックモードで臨んだのです(笑)。Cmiyajiさんは奥様がJazz Pianistなので、てっきりご本人もJazz聴きかと思い込んでおりましたら、何と、70%ぐらいはClassicを聴くそうで、無理にJazzAuro-3DBDを持ち込んだのですが「肩透かし」(笑)を食らいました!

 

しかし、そう思いこむ合理的な理由は他にもあって、だってメインSPJBLのハイエンドラインのProject K2 S9900ですよ!ステレオタイプ的に、JBL=Jazzと反応するのが、オーディオファイルのサガというものですよね…

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ということでまずは機器の説明をすると(私の苦手なジャンル…)、この9900はスーパーツイーター内蔵の3Wayですが、それぞれのユニットをSoul Noteのパワーアンプでドライブするマルチアンプ駆動をされておられます。チャンデバは、AVプリのTrinnov Altitude 16に内蔵されている機能を使っておられます。かなり内ぶりに設置しておられ、LPより前方で交差しています。LRの開き角は60度よりやや広い感じですが、この「前方交差法」のお陰か、加えて、マルチアンプ駆動による精緻な再生品質のお陰か、ボーカルのようなど真ん中に来るべき音像定位はぴったり、口の動きが見えるレベルで、全く中抜け感はなかったです。

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これ以外のSPは、サラウンドにJBLのホーム用フロア型、センターがJBLのパワードSPHLCRとサラウンドハイトも同様にJBLのパワードSPで、TOPVoice of God)レスです(変な意味ではありませんよ!=笑)。SWは使っておられず、TrinnovによるBass ManagementではLR9900JBL自慢の38センチウーファー!!!)だけを全帯域再生(+LFE)としてそれ以外のチャンネルへの超低域をRoutingしておられます。システムとしては、5.0.5と言えましょう(実は、CHCは私が来るのに合わせて、最近取り付けられたそうです…)

 

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音楽再生はOPPO105(?)のプレーヤーもお持ちですが、基本的にはファイル再生をメインにしておられ、NASの隣にあるこのExa Soundの機械(?)をRoon Coreにして、手元のタブレットでRoonを操作するようです。

 

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次はお部屋です。ここがとても特徴的でした。前オーナーが音響関係の方だったとかで、オーディオルーム兼Live会場(奥様の仲間を集めてここでJazz Liveをたまに開催し、ネット配信などもされておられます)として使われているこの部屋は、まず、部屋の中央に4段ほどのステップがあって、1Mほどの高低差があります。この低くなっている方に9900が置いてあり、高くなっている方にサラウンドSPが設置されています。部屋のスリーサイズは、高さが3.5M(フロアが落ちている部分)と2.4M、横幅が約4.0M、長さが約6.1Mですが、正面向かって左奥に3畳ほどのストーレッジスペースがあり、録音機材などが置いてあります。

 

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マンションですので鉄筋コンクリート構造で木造に比して元々防音面では有利なのですが、さらに部屋の窓にはすべて暗室にできるように内側に「木製のドア」があるため、かなり防音性能が高く、夜にJazzLive演奏をしても近所からクレームが出るようなことはないそうです。

 

そうなると逆に室内音の反射が心配になるところですが、ここはさすがに前オーナーがその道のプロの方だっただけあり、随所に工夫が凝らされているようでした。例えば、これは天井なのですが、ルーバーのようなものがはめ込んであって、音を拡散しており、さらにその奥には吸音材が張り巡らされているようでした。実際に柏手を打たせていただくと、Live過ぎず、Dead過ぎずの反響でした。また、前述した通り、部屋の形状が立方体ではないため、定在波も立ちにくいでしょうし、実際音を聴かせていただいても、低域がブーミングしているなとは全く感じるところがありませんでした。

 

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さて、試聴です。「まずはお気に入りのJazz2chで聴かせてください」とお願いしました。選んでいただいたのは、『The Gene Harris Trio Plus One』というPianoを中心としたアルバムで、これ、Jazz素人の私は、最初、「誰?そのPianist?」って思ったのですが(失礼!)、ベースがレイ・ブラウン、テナーサックスがスタンリー・タレンタインと私レベルでも知っている大物が入っていると伺って襟を正して聴かせていただきました(笑)。

 

「うーん、このピアノの音、BWじゃね?」

 

これ、自分的には最大級の誉め言葉です、特にピアノ再生音に関しては。とてもJBLとは思えませんでした(オーナーの方、すみません、後でフォローします!)。澄んでいて、キレイ目の音です。JBLってもっと、清濁併せ呑む、ナタで切るような音が出るじゃないですか、普通(それはそれで、特にJazz的には麻薬的な魅力があるのは皆さん、よくご存じかと)。

 

静寂音がキレイなんです。恐らくこれはマルチアンプ化している効果(しかも、パワーアンプもチャンデバも低歪率・高S/N系のハイエンド)でしょう。実はあとでcmiyajiさんはクラシック派だと聞かされたのですが、この時はまだJazz聴きだと思い込んでいたので、「へぇー、JBLを使ってこういう音の好きなJazzファンもいるんだなあ」と。

 

で、「問題」(笑)が発覚したのはその直後。私が来たのですから(笑)、当然、Auro-Maticに切り替えて再生してもらいました。

 

「・・・」

 

ダンチで、音質が落ちる…Auro-Maticでどうもいい音が鳴らないって、こりゃそうだわ。つまり、これ、X1邸の時と同じ類の問題です。LRが凄すぎる。相対的に(失礼ながら=汗)、Cがショボすぎる。Auro-Maticにするとなぜこうなるのかの理由はX1邸の記事に書きましたのでここでは繰り返しません。

 

私が思わず「これ、2chだけの音の方が全然いいですねぇ」とつぶやくと、「やはりそうですか。何しろ価格ベースで100倍は違いますから」とCmiyajiさん。確かに9900にチャンデバで駆動するシステムVS 2Wayのパワードで、ご本人によるとそんなに高級品ではないとか。

 

さすがにX1邸では100倍の差はないはずで、あそこ以上にC有りと無しの音質差が大きいのです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<カルテ1>

症状: 2chソースの場合、LRのみによる再生音より、Auro-Maticの再生音がかなり落ちる

原因: CLRに比してPoor

処方箋:CLRと同じ(または同程度の)SPを入れるか、いっそ、Cレスにする

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

気を取り直して(笑)、Auro-3DNativeソフトをいくつか聴かせていただきました。その中でまず気になったものは、『Polarity』。

 

今度の「フォッサマグナツアー」の課題曲の一つですが、なんかシンバルの音が頭の後ろの上から聴こえてくる!いくら何でも、そんな高いところにシンバルってないでしょ?って感じで、言うまでもなく<入交氏検定済み>の伊豆の拙宅で聴こえるシンバルの位置よりかなり高いです。

 

原因を探ろうと見渡してみると、思い当たるのはこれ。

 

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サラウンドSPは、前述したように元々、LPより約1Mほど高い床の上に設置されています。そしてこのトールボーイはドーム型ツイーターが床面から1Mぐらいの高さにあります。つ・ま・り、LPの耳の位置がちょうど高い方の床面ぐらいですから、標準であるべき<耳とツイーターが同一水平面にあるべし>という原則から大きく外れ、耳より1Mもサラウンドのツイーターが高いんです!

 

「こりゃ、事実上、リアハイトが二台ある感じだな…」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<カルテ2>

症状: 後ろの音像位置が高すぎる

原因: サラウンドSPのツイーターの位置が耳の高さより1Mほど高い

処方箋:小型のブックシェルフにして床置きするか、いっそ、今のフロア型SPを上下逆さまに設置する

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

この後、「これの再生音が変なんですよ」と言いながら、Cmiyajiさんが再生してくれたのが、これまたツアー課題曲の『New Year’s Concert2023』の、少年少女コーラスが入ったワルツ。

 

どう変かと思って聴かせていただくと…コーラスの定位位置がめっちゃ低い。ほとんど、9900のツイーターレベルに定位している。しかし、これは経験豊富な「名医」(笑)としては似た症例をすぐに思い出しました(笑)。M1邸の事例です

 

さっと後ろの上を見ると、やっぱり。「サラウンドハイト」が、事実上、「リアハイト」になってる…。角度にすると目測ですが、150度はありました。

 

Img_1993

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<カルテ3>

症状: Auro-3DNativeソフト『New Year’s Concert2023』のコーラスが低い

原因: サラウンドハイトSPの位置が後ろ過ぎる

処方箋:サラウンドハイトSPを開き角110度くらいの位置まで前方に移動する

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

最後に、持参したMac Book ProTrinnovに接続し、「秘蔵の」(笑)入交氏制作の13ch Native Auro-3Dソフトをいくつか再生しました。その中で特に再生音が気になったのは、ベルディの『レクイエム』。これはバンダと呼ばれる、小編成の管楽器を中心とした楽団が、前方の大オーケストラとは別に、オーディエンスの「左右」の位置に配されているのが特徴で、入交氏は「指揮者の真後ろで聴いているような音場感を狙った」という作品のため、このバンダの演奏部分が交互に、LPのほぼ真横から聴こえるのが、「正しい」(これは録音エンジニアご本人が言うのだから、誰も異論は挟めません!)そうです。

 

ところが、Cmiyaji邸ではこれがかなり後ろから聴こえる。ここまで他にもいろいろなソフトを聴いたのですが、RSRの間(LLRの間)に来るべき音の音像定位が甘い感じがして(入交氏録音のJazzトリオのドラムなど)いました。原因は明らかにサラウンドSPの位置の問題です。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<カルテ4>

症状: 真横から出るべき音が後ろから出る。LRとサラウンドSPとの間の音像定位が甘い

原因: サラウンドSPの位置が後ろ過ぎる

処方箋:サラウンドSPを開き角110度くらいの位置まで前方に移動する

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

とまあ、ここで私は白衣を脱いで一音楽ファンに戻り(笑)、お願いして改めて2chステレオでピアノ曲を聴かせていただきました。心に染み入るような、素晴らしい音色でした。確かにこれを聴きなれている耳の方が、Auro-Maticに切り替えた場合に、再生音質を落とさないためには、相当な努力(と投資=汗)が必要だろうな、と、奥様手作りのスコーン風のパイを、生クリームとジャムでいただきながら考えておりました(美味しかったです。イギリス留学時代を思い出しました。奥さまによろしくお伝えください)。

 

上記の「処方箋」はすべて現場でCmiyajiさんにもお伝えし、二人で、「ここをこうすれば何とかなるんじゃ?」みたいな対応策も相談しましたが、<言うは易し、行うは難し>であることは、私自身も、重々承知しております。指摘するのは口だけで簡単ですが、家の構造問題もあれば、先立つものもいるし、家族の同意も必要です。そもそもSPって重くて、動かすのはかなり億劫ですから(汗)、「わかっちゃいるけど・・・」というのが普通です。

 

でも、指摘されたときは「そんなの、無理無理」と思っても、不思議なもので時間が経つうちに、だんだんだんだん、Obsessionが…(笑)。で、私も結局パワーアンプ替えたり(グランドスラムさんのせい!)、結局スピーカー入れ替えたり(入交さんのせい!)、なんだかんだ言って指摘されると気になってやっちゃうんですよね・・・オーオタのサガでしょうか?(爆) 最近ではM1さんがその「犠牲者」になったとかならなかったとか・・・(汗)

 

さて、どうするCmiyaji邸? Just wait and see!

 

最後に。

 

実は、Cmiyajiさんは、来月上旬に伊豆の拙宅にお見えになる予定で、下旬にはフォッサマグナツアーに参加されるのですが、その意図は、「Auro-3Dなんか、ホントに要るのか?」を見極めることだそうなんです! 私を含め、これからCmiyajiさんをお迎えする方は、責任重大ですぞ!!! 「なんだ、やっぱりこんな程度か」と思われたら、ただでさえ貴重な(汗)、Auro-3Dファンが一人減りますから(笑)。万全の準備で、お迎えしましょう!

2023年7月 1日 (土)

『Auro-3D入門』<実践編>(No.5 Tomy邸)- Jazz好きのAuro-3Dシステム

早いだけが取り柄の拙文ですが、今回は諸事情ありまして(汗)、もう訪問して一週間近く経ってしまいましたが、Tomy邸にお邪魔してきたので報告します。

 

最初にお断りしておきますが(大汗)、今回の「実践編」レポートは、今までのものに比して、ややボリュームが少なくなりそうです。それはTomy邸の音が、「書くまでもない、箸にも棒にも掛からぬものであった」などということでは<決してなく>()、単純に今回は私の単独訪問ではなく、「友の会」新入会面談を兼ね()Kawausoさんとモンテモンテさんとご一緒だったためです。

 

つまり、普段であれば、多くの「検聴用ソフト」を持参し、次から次にそれらをLPのベスポジでじっくり聴かせていただいてから執筆するのですが、今回のTomy邸における主役は私ではなく(汗)、「友の会」のオフ会初参加のお二人なわけですから、当然、ベスポジはお二人にお譲りし、また、私の持ち込み音源はほどほどにして、お二人のお好きな音源や持ち込み音源を聴く、というスタイルになったからです。

 

すでにTomy邸における今回のオフ会については、モンテモンテさんがご自分のブログにUPされておられ、私もそこにコメントを入れておりますので()、ここではそこに書かれていない、「Auro3D的気づき」だけを。

 

 まず、私がTomy邸にお邪魔するのは今回が二度目で、最初に訪問した時は1階のお部屋で、マルチはありましたがAuroシステムはまだありませんでした。その訪問記はPhilewebに書いたのですが、今は無くなっており、文字情報だけが以下に残っています。

 

https://philm-community.com/auro3d/user/diary/2022/05/22/9837/

 

今回聴かせていただいたのは、2階に新装開店となったAuro-3DMatic)システムで、お部屋やシステム構成は、ご本人の一連の記事に詳しいのでここでは割愛します。

 

お部屋は、前回訪問時と同じ(当たり前か!)印象で、輸入住宅らしいしっかりした部材(柱、床、壁など)を使った、日本家屋より一回りスケールの大きい造りで、音を出す前から「この部屋ならいい音が出るPotentialは十分だな」と相変わらず思えるものでした。一般に<オーディオマニア>は、初めてのオフ会ではまず機器に目が行くそうですが、マニアではない私はまず部屋に目が行きます。機器は私などが見てもどうせそれがなんだかよくわからないので(汗)、まあ、つまりどうでもいいのですが()、部屋の造りや調度類(特に絵や本類などに目が行く=爆)は、私にとってはオーナーの「感性」の一端を感じさせ、これから聴かせていただく「出音」の印象を鼻向けするものだからです。

 

Img_1959 Img_1960 Img_1963 

 

無垢のアメリカンチェリー(?多分?)をふんだんに使った部屋は、SmokeyJazzBourbonがいかにも似合いそうな空間です。

 

さて、光栄にもしょっぱなにベスポジに座らせていただきましたが、まずそこで気が付いたことは、LRの開きが60度よりも明らかに狭いな、という点(下記写真をクリックして見てください)。

 

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もちろん,動線などの物理的な要因もあるかと思いますが、私はすぐに、「ああ、やっぱりTomyさんはJazz聴きなんだなあ」と思いました。シンバルのハイハットや、ベースの弦をはじく音、キックドラムのアタック音などの「音のキレ」が重要な要素であるJazzにおいて、その音の実体感を強調するために、音像定位をくっきりさせるのはとても重要で(だから指向性の強いホーン型のSPユニットの愛好家がJazz聴きには多いわけです)、それゆえLRの開き角をやや狭め(これはClassic聴きから見た、相対的な感覚です)にされている方が多いのは、私も何十年とオーディオをやっていますから、よく知っている傾向です(自分もかつて、Jazz/Rockを聴きこんでいた時はそうしていた)。

 

ただ念のために補足しますと、Tomy邸の2階のシステムには、フロントワイドSPが入れてあり、左右への広がり感が欲しい曲を再生するときは、彼のAVプリに備わっている特殊な機能(?)で、FWからも音を出せるそうです。これがあるから、無理にLRを広げる必要はないのでしょう。

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最初に聴かせていただいた一連の曲は、もちろんJazz系で、Tomyさんのとっておきの(?)音源でしたが、さすがにこの空間になじんでいるというか、こなれたAtmosphereを醸し出していて、「いやあ、これはどう見ても夜中にグラス片手に聴くべき音だなあ」と、午前中にもかかわらず()思ってしまいました。

 

何曲かを聴き進めるうちに、男性のボーカル曲がありました。ソースは2chか5chだったと思うのですが、これをAuro-Maticで聴いていた時のことです。

 

会員の皆さんにはいまさらいうまでもなく、Auro-Maticのアルゴリズムは、LRに同じ音が入っていると、「ああ、これはセンターに定位させたいのだな」と判断し、その音を取り出して7割ぐらいはCだけに振るセッティングになっています。それゆえ、Auro-3DMatic)のシステムにおいて最も重要なSPCであり、特にボーカル曲ではCの性能がはっきりわかる、ということが以下の議論の大前提です。

 

さて、Cのド真ん前のベスポジはもちろんKawausoさん、モンテモンテさんと入れ替わりで聴いていたのですが(まあ、ほとんどお二人にお譲りしていましたが)、たまたま私がベスポジに座ったときに気が付いたのが、ちょっとだけボーカルがセンターより右にずれている(気がする=汗)という点。

 

私の空耳かと、モンテモンテさんにお声がけして、ちょっと代わって聴いていただいたのですが、彼も、「これまで気が付かなかったが、言われてみるとそんな気がしないでもない…」といわれたので、Tomyさんにお伝えしました。

 

すると、Tomyさんがやおら立ち上がって、センタースピーカーのサランネットを外されたんです。

 

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言われるまで気が付きませんでしたが、このC、本来は横置き用に設計されているものだそうです。まあ、天下のBWでもそうなので、マルチ用のCとしては普通の発想ですよね(音楽専用にLCRを揃える酔狂な人間がいるとはメーカーはほとんど考えておらず、「Cが欲しい=映像と一緒にいい音を楽しみたい」方しかいないと思いこんでいるようです…)。

 

しかし【準備編】でも書きましたが、左右に長い設計のCは、音が左右に広がりにくく、逆に上下には広がりやすいという特性を持ちます(縦長の普通のSPはこの逆の特性)。この特性を知っているメーカーは、何とかこのネガを最小にしようと、横置きCのツイーターをバッフルの一番端っこに取り付けて、片側だけでも(普通は上方)バッフル面による影響を減らして音が全方向に拡散するように設計する傾向があります。Tomy邸のCもその文法通りで、ツイーターがかなりバッフル面の中心軸からはオフセットされて取り付けられています(Add-onされているリボン型のスーパーツイーターの軸上から外れているのが写真からもわかる)。この本来は横置きに設計されているCを、Tomyさんは音の広がり方をLCRで揃えるために、縦使いにされておられるというわけです。

 

ということで、当然ながらCのバッフル面の中心軸の軸上にLPを取ると、ツイーターは少し右にずれて配置されています。さらに、写真で見てお分かりのように、ツイーターの左サイドのバッフル面の面積が大きく、右側のそれが小さいわけですから、バッフル効果で左側には拡散しにくく、右側の方に拡散しやすいことになります(片手を口に当てて、大声を出している感じ)。

 

ここまでは音響工学的な理論的な話ですが、「お前はその違いを聴きとれた、と自慢したいのか?」と言われると()、正直、そこまでの自信はありません(汗)。以上のことは半分はTomyさんが説明してくれたことで、「よく聴き取れましたねぇ」とは言われましたが、実は、Tomy邸に来る前にホテルでシャワーを浴びたのですが、その時左耳に水が入ってしまい、なんとなく違和感が残っていて、Tomy邸に着いたときもお願いして綿棒をお借りしたほどだったのです(爆)。つまり、これは単に私の左耳の調子が悪かったからという可能性は高いです・・・(その後、Tomyさんからメールがあり、RがLに比して1dB設定音量が大きかったとのことで、「流石!」と書いてありましたが、私は計測器じゃあるまいし、1dBの違いなんて、聴き分けられるほど耳がよいわけありません!=汗)。

 

しかし、人間の認知メカニズムというのは恐ろしいもので(私は若干、(社会)心理学は勉強している人間です)、本当のきっかけは私の耳の不調でも()、一度オフセットしていることを見て、脳がそれを認知してしまうと、なんとなく、その後も気になってしまいますよね(汗)。これ、恐らくTomyさんは私がこんなことを言い出さなければサランネットは外さなかったでしょうし、外さなければツイーターのオフセットは目に入らないので、恐らく皆さん、何の違和感もなく聴き続けられたのではないかと思います(Kawausoさんは「ちゃんとセンターに定位している」とおっしゃっておられましたから。まあ、「違和感」があったのは私(の耳?)だけの可能性が高いですが=汗)。

 

しかも、よく見ると、このメーカーのLRですら、Cと同じようなスピーカーユニットのレイアウトになっており、その点では実はTomyさんは正しくLCRを<ほぼ同じSP>で揃えておられるとも言えます。

 

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しかし、このようなユニットがアシンメトリーのレイアウトになっているSPは、LRを「ペアで考えた場合」は、センターの軸上で線対称となっているわけですが、Cだけは「単独で」バッフル面の中心線において左右が線対称になっていなければ、聴感上の認知はともかく()、「見た目」で人間ならだれでも「非対称性」に気が付いてしまい、それが脳による「音の認知」にも影響を及ぼす可能性を否定できません。私が常々、「オーディオは見た目も大事」と主張しているのはこのためです。

 

実は、私がAuro-3Dに本格的に取り組むためにSPを買いそろえようと思ったときに、たまたま友人のおさがりでワンペアだけ持っていたSonetto VIIIを売却して、同じソナスでもう一段格上の、Olympica Novaという、当時出たばかりのSP群で揃えようかな、と考えたことがあります。でも結局これを選ばなかったのは、単に懐事情()だけではなかったのです。

 

当時、すでにLCRを同一SPにすることだけはPhilewebの皆さんのアドバイスによって腹を決めており、ソナスは1本だけ売ってくれませんから、2ペア買って一本無駄にする覚悟はできていました。この場合、前述したようにSP単体で左右対称レイアウトでなければ、Cとしては使いたくありません。そこでよくよく調べてみると、このOlympica Novaは、SPユニットの配置は線対称であるものの、背面(側面?)についているバスレフポートがオフセットに配置されており、L用とR用では逆サイドについているということが分かったのです!

 

試聴して、正直音はこちらの方がSonetto VIIIより好みの「年増」()の音だったのですが、知らずに買っていたら、未だに悶々として、内心悩み続けていた(恐らく、誰にも教えないが=爆)と思います。出音としてその差が分かるかどうかは別にして、脳内の認知の問題です。お客さんは「知らぬが仏」ですが、知っているオーナーは…

 

話がやや脱線しましたが、Tomy邸では、Cのツイーターの位置をLRからミリ単位で等距離に置きたいのであれば(原理的なマニアならそうするはず)、SP自体をリスニングエリアのセンターからオフセットして設置しなければなりません。そうすると、人間の視覚は敏感なので、今度は「見た目」から、必ず違和感を持つでしょう。頭の中では、「この位置がツイーター的には中心なのだ」とわかっていても。

 

みなさん、くれぐれもセンターSP選びは慎重に()

2023年6月20日 (火)

『Auro-3D入門』<実践編>(No.4 donguri邸)-2度目の訪問:大飛躍の要因は?

すでに、donguriさんに前振りの(笑)、記事をPhil-Mに書かれてしまいましたが(ちなみにあの写真にある、「モグラ叩き」(爆)状態での試聴はしておりません!これは誰が見ても映画用で、<音楽用Auro-3D命>の私がこのようなポジションで聴きたいと思うはずはないです=汗)、梅雨の晴れ間を縫って、八ヶ岳に行って参りました!「友の会」の皆さんはよくご存じと思いますが、donguriさんから、このGWについに、LCRはおろか、サラウンドもサラウンドバック(Mono)も、「天下の」(笑)BW805D36台すべて揃えた!、とのご報告があり(詳細はご本人の以下の記事を参照)、なんとなく、妙な(笑)責任感と義務感を感じまして(汗)、東京から向かったわけです。

 

https://philm-community.com/donguri/user/diary/2023/05/09/18708/

 

ちなみに、私がdonguri邸にお邪魔するのは今回で2度目で、おおよそ一年前の夏に伺っておりまして、その時の記事は今は亡きPhilewebに書いたのですが、その文章だけのコピーが以下に残っております(ここのタイムスタンプは、PhilewebからPhil-Mにコピーしていただいた日だと思われ、記事をUPした日ではありません)。

 

https://philm-community.com/auro3d/user/diary/2022/09/21/9860/

 

前回と今回の変化は、先に書きました805D3の増設に留まらず、ルームアコースティックなどの細部にわたるわけですが、そこはご本人の一連の記事を見ていただくとして、私の注目点は「何をつけたとか、何を替えたとかの御託はいいから」(笑)、どう音が変わったのかの一点であります!

 

今回は次に予定されているTomy邸でのオフ会と、この夏の「フォッサマグナツアー」の準備も兼ねて、私自身もいろいろな問題意識を持ってお邪魔しましたし、donguriさん自身も科学者らしい好奇心からいろいろとリクエストされて、「門外不出の音源」(ωプレーヤーによる13chソフトとか、ATMOS版の、『狂気』や『宮殿』など)を一緒に聴きました。

 

こうした「珍しい」音源(当然、オーナーの私は普段から聴きなれている)の感想はdonguriさんご自身にお譲りをして、ここでは、今回の訪問に際し抱いていた私の3つの問題意識に絞って報告をしたいと思います。

 

まずはその前に、恒例の(笑)レーザー測定器によるお部屋のスリーサイズを。

 

形状:6面立方体(3組の面が平行)

縦:約4.4M

横:約3.5M

高さ:約3.5M (これは通常の家屋より約1Mほど高い)

 

LPからLRまでの距離:約2.3MCまで約2.1MLR間は約2.3M (正しく正三角形の頂点)

 

LPからサラウンドLRまでの距離:約1.4M、サラウンドバック(一本、真後ろ)まで、約1M

 

LCRから後ろの壁までの距離:約0.5M

 

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[フロントハイトSPの設置法。底部のネジ穴をうまく利用している]

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[トップ=VOGDIYでぴったりのサイズの箱を作られている。落下防止のためにフロントバッフル面が引っかかるように設計したうえ、底部のネジ穴を利用して固定している]

 

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 [Auro-3Dの文法通り、垂直関係にある、サラウンドとサラウンドハイト]

・・・・・・・・・・・・・・・・・

<試聴記>

 

1)第一層をすべて同じSPにした効果は?

 

これが最も感じられたソフトは、Nakuraによる、マリンバだった(13chフルAuro-3D、ωプレーヤー経由。非売品)。このNakuraは、e-onkyoのダウンロード版のBach Parallelsを前回お邪魔した時にも聴いていて(同じ曲)、こちらは5+49ch版であるのに対し、今回は、7donguri邸では6)+5+1という違いはあるものの、このチャンネル数の増加が普通もたらすであろう現象とは逆の印象を持った。つまり、音が整理され、透明感が増した印象を持ったのである。言うまでもなく、常識的に考えてチャンネル数=SP数が増えれば増えるほど、音の「衝突」や「相互干渉」のリスクは高まる。音場感が豊かになるというメリットとは相反して、音が混濁する、キレを失う、というデメリットが生じる。しかし、新生donguri邸では、「音像」と「音場」という、2chオーディオでは「二兎を追うのが難しい」と言われる双方とも、前回よりクオリティが上がっていた。

 

この違いを生んでいる原因は、どう見渡しても、前回が第一層の5台中2台だけが805D3であったのに対し、今回は第一層の6台すべてが805D3になったことしか考えられない。

 

実はこのソースを試聴用に選んだ理由は、何を隠そう、伊豆の拙宅で昨秋に第一層と第二層をすべてソナスで揃えたときに、最も個人的に「感動」した変化を感じさせてくれたのが、この音源だったからである。このソースは「友の会」の方には説明するまでもなく、入交氏の録音なのであるが、この録音の特徴の一つに、Onマイクを使わず、すべてAuro-3D用の空間マイクを使用しているという点がある。つまり、音源はマリンバという一つの楽器であるが、事実上、すべてのスピーカーから「アンビエント音」が出ているような録音になっているのだ。このような録音(単音源、Onマイク無し)になっているAuro-3D Nativeソフトは、他にもオルガンや合唱などがあるが、こうした音源は、「主役」のSPが特になく、オケのような混成楽器の音源と違ってすべてのSPから「似たような音」が出て、音場を構成している。このため、各SPから出ている音が異なる形式のAuro-3DNativeソースより、その音場を構成するSPを揃えたときの効果が分かりやすいのだ。

 

また、これは前回は聴いてはいないソースだが、5chマルチソースである「Credo」のAuro-Maticによる12ch化した再生音にも感動した。この曲のピアノパートは、何と言っても「麻薬的な」ピアノ音の再生に定評のある(?)、BW800Dシリーズであるから、「私好みのいい音」がするのは事前に予想していた通りである。このソースの「オーディオ的」聴きどころは中間部の、合唱・打楽器・管楽器・弦楽器が乱れ狂う(笑)パートであり、ここはよほど音が整理されて耳に届かない限り、「うるさくて聴いていられない」ので、ある意味リトマス紙としてはとても分かりやすい。

 

donguri邸は、見事!このパートをクリアした。先のNakuraと同様、「きれいに整理された混濁感」を再生してみせた。donguri邸に行く直前、今回の試聴用に持ち込んだソースを東京の書斎のシステムで「予習」していったのだが、いくら拙宅ではDirac Liveを導入したとはいえ(donguri邸の補正は、Audysseyのみ=後述)、全くの寄せ集めの書斎のシステムでは到底聴けない「美しいChaos」であった。

 

2)ATMOS配置で聴くAuro-3Dの音は?

 

これはdonguri邸ならではの「研究可能な課題」である(笑)。前回訪問記に書いた通り、donguri邸ではトグルスイッチでKlipschのシーリングスピーカー群(ATMOSでいうところの「トップ」スピーカー群)と、BW700シリーズのハイトスピーカー群(壁かけ)を切り替えて楽しむことができる。それぞれ、ATMOSAuro-3Dに最適化された位置に別々にSPが設置されているのだ。

 

この実験が重要なのは、このブログでもたびたび書いているように、「一般の方」がAVアンプを購入する動機は、まず100%、映画鑑賞のためであろう。そして、映画における3D音源と言えば、ハリウッド好きならATMOSが圧倒的であり、ほとんどの方がATMOS配置による第二層SP群を設置しているはずだ。

 

そして恐らく、ある時に気がつく(笑)。自分が持っている最新AVアンプに<おまけ>のように付いている(汗)、「Auro-Matic」と呼ばれるUpMixの音の方が、音楽を聴く際には「いい音」であることを。

 

そう気がついた方の中にはもしかするとこのブログに辿り着いている方もいるのかもしれないのだが(笑)、そのような方の中には、次のような不安(汗)があるのではないだろうか?

 

SPATMOS配置にしちゃったけど、これで聴いているAuro-3DMatic)って、ホントはどうなの?Auro-3D配置にしたらもっといい音がするのでは???」

 

そこで今回のdonguri邸である!

 

しかし、最初に結論を申し上げると、今回の現場は二つの点で比較の対称性が取れておらず、残念ながら検証は持ち越しとなった。

 

問題点の一つは、言うまでもなく、SPが異なる点である。埋め込み型のフルレンジと、BW700シリーズではあまりにSPの格が違い過ぎた。特に高域の透き通った清々しい感じが、同じAuro-3D音源をKlipschATMOS配置)とBWAuro配置)で聴き比べると決定的な違いがあるのであるが、これが「配置」に起因するものなのか、単純にSPの違いによるものなのかが私では識別できなかった。

 

もう一つの問題点は、両者の設置位置に「高さ」の違いがかなりあったことである。

 

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この写真を見ればお分かりのように、シーリングとハイトでは、約1Mぐらい高さが違う。この差はこの部屋の空間の広さを考えれば無視できる差ではなく、実際にLPで聴くといくらAudysseyによる距離補正がされているとはいえ、物理的な高さの差が聴感上の「高さ感」「広がり感」に影響してくる。シーリングSPによる再生音の方が、Nakuraのような高さのある教会録音をされたソースの再生では、音質は別にして音場感的には明らかに好ましいのである。逆に、特にフロントの第一層と第二層の間に定位すべき音像が、ハイトの方が断然シャープなのだが、これが「シーリング」(つまりATMOS用)と「ハイト」(Auro用)の設置状況(正確に言えば、仰角とSPの向きが異なる。シーリングは真下、ハイトはLP上方に向いている)の違いなのか、単純にSPの取り付け位置の高さの違い(第一層との距離の違い)なのかを私自身が識別することは困難であった。

 

上記2点の理由から、この問題の検証は先送りとなった。これはWOWOWの入交スタジオなら確実に検証できると思うが、もしかして次期グランドスラム邸でも可能かもしれないので、乞うご期待!

 

3)HCTの役割は?

 

この問題意識は、日本で出たら買おうかと密かに(笑)狙っていたパイオニアのAVアンプがHCTレスであることがわかり、さらに次に訪問する予定のTomy邸のAVプリも、Auro-3DMatic)には対応しているものの、HC(ハイトセンター)とTVOG)が設定できないもののため、最近にわかに興味を持っているテーマである。このHCTの重要性については、Auro-3D録音エンジニアの入交さんに勉強させていただいた成果をすでに記事にしているが、実際に現状、一般に入手可能なAuro-3D Nativeソフトで、HCTにもDiscreetで音が振られているものは、少なくとも私の知る限り、ヨーロッパで売られているいくつかの映画ソフトしかなく、私が本命としている音楽のソフトでは、5+49chか、7+411chしかない(だれか他にご存知の方があれば教えていただきたい!)。いずれも第二・三層が4ch、すなわち、フロントハイトLRとサラウンドハイトLR4chだけなのである。

 

つまり、HCTにはオリジナルでは音が振られていないわけであり、その意味では、国産のAVアンプで見れば、HCTを使えるように設計しているデノマラより、もう一方の雄であるヤマハの採用している「HCT切り捨て」戦略の方が、ある意味合理的であると言える(ヤマハは将来にわたり、Auro13chソフトは出ないと見込んでいるのだろうか?)。

 

ということは、我々が苦労してHCTを設置して(汗)Auro-3Dを聴いている時、そこから出ている音は所詮「人工的に合成された音」に過ぎず、原理主義的な思考の持ち主であれば、「むしろ有害・不要」と考えてもおかしくない。つまり、「HCTが無いシステムに合わせてAuro-3Dの音源は録音されているのだから、Director’s intention通りに再生するのなら、HCTから音を出すのは<邪道>である」というロジックである。

 

この聴き方は本当に<邪道>なのか?個人的にこの研究はここ最近、東京の書斎と伊豆の別宅の両システムで試聴を繰り返しており、その「研究成果」(笑)は確証を持てた段階でいずれこのブログで紹介しようと思っているのだが、今回はある意味そのプロローグでもある。

 

実は今回donguri邸にお邪魔する際には、この実験をお願いするつもりはなかったのだが、donguriさん自身がこの問題意識を持っておられ、「ストレートデコードの方が好ましい音源も少なくない」と言われ、実践してくれたのだった。お恥ずかしいことに(汗)、今回donguriさんに教えていただくまで、デノマラのAVアンプに「Auro-Maticの拡張モード」をOn/Offする機能があることを知らなかった…。ここを「ダイレクトモード」にすることで、録音されたままの、つまり、HCT抜きの4chだけの第二層で再生される。

 

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これまで東京の書斎のDenonでは、わざわざSP配置の異なるプリセットを切り替えてHC/Tの有無の比較試聴をしていたのだ(笑)。もしかすると同じような機能が伊豆のStormの方にもあるかもしれない(デフォルトでは、おせっかいにもすべて13ch化してくれてしまう=汗。不精で、ほとんどデフォルトで使うワタシ…)ので、次に伊豆に行ったら探してみようと思っている(汗)。

 

さて、まず最初にこの検証に使ったAuro-3Dソフトは、ダウンロード購入したリストのピアノソナタである(54)。

 

この曲は言うまでもなくソロ演奏でOnマイクを使用して録音されているため、完全にLCRが主役であり、他のChはすべてアンビエント音担当である。「友の会」の方ならよくご存じの通り、Auroのソフトには積極的にCに主要な音が振られており、このソフトも例外ではなく、LCR3台で88の鍵盤を左から右まできれいにカバーしている。ゆえに、LCRを同一SPにした成果が出やすく、センターレスやCだけ異なるシステムとの違いが特によくわかるソフトである。

 

拡張モード(6+5+1=12ch)とダイレクトモード(5+4=9ch)を交互に聴き比べていく。ダイレクトモードの方がピアノの「打楽器」としての特徴がよく出る。アタック音が鋭い。拡張モードだとややボケる。その代わり、拡張モードの方がホール感が出ている。ダイレクトモードの方がピアノに近いところで聴いている感じとなり、拡張モードの方が客席で聴いている感覚に近い。donguriさんと「どちらが好みか?」となり、donguriさんは、ダイレクトモードが、私は拡張モードと、好みが別れた(笑)。

 

ただしここで注意すべきは、この比較は純粋にHCTの有無にはなっていない点。拡張モードではこの二台に加え、もう一台、LP真後ろのリアSPが加わっている。

 

実はこの音源による同様の実験は、東京の書斎でもすでに行っていて、詳細は後日報告するが、拙宅ではHCTの有無の違いは、むしろピアノの遠近感の違いとして出る。「有り」の方が、ピアノの「向こう側」の空間を感じさせるのだ。なぜdonguri邸での試聴と異なる感覚になるのかを考えてみたが、思い当たることとしては、拙宅はLCRの後ろの空間が広く、窓まで2M以上はあるのに対し、donguri邸のLCRは後背の窓・壁まで50センチほど、しかもCのすぐ後ろにはモニターTVがある。これらの反射の影響かもしれないと思った(未実証)。

 

次に試聴したのが、Auro-3DNativeソフトでは数少ないJazzの音源。

 

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この2枚のアルバムからいくつか聴いたのだが、特に違いが分かりやすかったのは、Saxをフィーチャーした曲で、これはHCT有りの方が、奥行き感や遠近感が出ていて、立体的なSaxになっており好ましく感じた。この点については、donguriさんと意見が一致した(笑)。

 

結論的にいえば、HCTがないソースに対し、「おせっかいに」それを付加した方が好ましく聴こえる音源と、そうではない音源があり、またその感じ方はリスナーが「何を、どう聴くか」によっても違うようだ。私のように「風呂場のカラオケ」感が好きと公言しているもの(笑)にとっては、いずれの音源も「拡張」してくれた方が好みだし、Jazzなどで「音のキレ」(明確な音像定位や音離れ)を求めるタイプの方は、原理主義的な再生の方が好ましいのかもしれない。ただし、今回は試していないが、特にTopVOG)に「人工的に」Auro-3DのサラウンドハイトLRから生成される音(これをMaticというのかどうかは不明)が再生される方が、むしろNativeのサラウンドLR「のみ」より、(主観的には)生々しい音源もあり、一概に「HCTを生成すると音像がボケる」とは言えないと個人的には思っている。この点については後日詳細な検証結果をまとめたい。

 

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一通りの試聴を終えた段階で、ここまでHCTの有無の実験を進めてきた中でずーっとある「違和感」を持っていたので、donguriさんにお願いしてセンターSPを前に出していただきました。LRと同じ本来の805D3用のスピーカースタンドの上に乗せたので、高さも完全にLCRで揃うことになります。

Img_1917 Img_1919

実はこの「違和感」とは、HCTの有無によって、donguri邸では微妙に音像定位の高さが変わると私の耳には感じられたことなのです。つまり、HCT有りだと、少し音像が上昇する感じがしていました。このような現象は同様の実験を繰り返している東京の書斎では(伊豆のシステムでは実験したことなし)起きないのです。

 

「変だなあ、なぜだろう?」と思って見渡してみますと、よくよく見ると、HCの位置がHLRより前に出ています。つまりHCだけLPに近いのです。逆に、CLRより少し奥に入っています(LPから等距離にするためでしょう)。当然、LCRHLCRとの垂直関係がHCだけ崩れています。実測しませんでしたが、LPからの距離は、CHCがほぼ等距離にあるように見えました。正確な「垂直配置」であれば、HCの方が遠くなるはずです。

 

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これでは、以前、入交理論で紹介したように、「先行音効果」がうまく機能しません。

 

Auro-3Dではこの「先行音効果」によって、第二層、第三層があっても、基本的な音像定位の位置が2ch5chと変わらないようにしているのです。第二層や第三層は臨場感やホール感を形成するためにあるのであって、これらを加えることで、ドラムやバイオリンが持ち上げられてはいけないのです(笑)。

 

で、その効果はてきめんでした。今度はAuro-3D(Matic)でも、ちゃんと目の前に来るべき楽器の音が、目の前に定位しました。もう一度すべての音源を聴きなおしたいと思いましたが(笑)、帰り際でしたので残念ながらそれは叶わず。やや後ろ髪を引かれながらdonguri邸を後にしたのでした。

 

Cをあの位置に置き続けるのは何かと不便だと思いますが、逆にHCをもう少し奥に付け直すことはできるのではないでしょうか、donguriさん!!!

 

最後に、ハード面の整備はほぼ終わったとして、今、donguriさんが力を入れておられるのはルームアコースティックとのことです。今回は紹介しませんでしたが、アンクもどきを自作されたりとか、壁にいろいろなオーナメントを貼り付けたりとか、「どっかで見たことあるな=笑」感のある作業を進めておられます。確かにあのお部屋は向かい合う3つの壁が完全に平行で、私の書斎のように壁一面に作りつけの本棚があるわけでもないため、定在波も含め反射による影響はかなりあるであろうことが想像できます。これに対し、私のように安易に(笑)Dirac Liveなどのハイテク補正に頼らず、物理的にお部屋の改善をされる方法論が最も音への悪影響が少ない、王道であることは言うまでもありません。今後、この調整が満足いくレベルになったら、またお招きいただきたいと思います。その時を今から楽しみにしております。

 

donguriさん、今回は、奥様の手料理も含め、大変貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。

2023年6月 5日 (月)

『Auro-3D入門』<実践編>(番外編:東京の書斎)-狭小で、ダメダメな設置のAuro-3D(Matic)の音は?

この<実践編>ですが、このところ2回連続で、友の会会員の中でも横綱・大関クラスが続いてしまって(汗)、このまま放置しておくと、これから始めようかという方に「Auro-3Dって、敷居が高いんだなあ」と思われかねないのを危惧したワタクシは、Auro-3Dの普及を目指す「友の会会長」として、恥を忍んで、「よそ行き」(笑)の伊豆のシステムではなく、「普段着」(爆)の東京の書斎のシステムを紹介することとします。書斎のシステムの詳細については、すでにここのブログでは紹介済みなので(詳しく知りたい方は、左サイドの『カテゴリー』から「東京書斎のAuro-3D」をクリック)、ここでは、これまでの「実践編」とはやや記述上のフォーマットを替えた「実践編の番外編」としたいと思います。

 

今回の問題意識は、ズバリ、「あんな立派な部屋と装置じゃないと、Auro-3Dって楽しめないのか?」です(汗)。

 

東京の書斎のシステムに、待望の(笑)Dirac Liveが導入されてから約3か月。ようやく、伊豆のシステムとの比較の対称性がある程度は取れた状況となり、この間、伊豆に行くたびに、向こうのシステムで東京と同じ音源を聴き、そしてまた伊豆でのお気に入りのAuro-3Dを中心とした音源を東京の書斎に持ち帰り、とっかえひっかえして、両システムのAuro-3DMatic)+Dirac Liveの音を聴き比べてきました。Dirac Liveはデフォルトでは、ややハイ下がりのほぼフラットなカーブにf特を調整しますが、伊豆との往復を繰り返す中で、伊豆の音に東京の音を近づけたいと思い、このf特の補正カーブを自分なりに試行錯誤を繰り返し、調整しました。具体的には、センターのHighが目立ちすぎると感じていたのでそれを落とし、逆にセンターのLowが足りない感じだったので、持ち上げています。ただ、センターのLowの落ち込みは定在波によるものと思われ、であればいくらf特を引き上げても場所を変えない限り定在波の固定周波数は変えられないので、その周波数帯域をLRとSW(フロント)で補うようにさらに微調整した、「ハウスカーブ」を作り、それを今は適用して聴いています。

 

そしてようやく、伊豆と東京のシステムの音の傾向の違いとその原因(?)について、自分の中である程度の結論のようなものに至ったので、今回、記事にしてみました。

 

まず、「比較の対称性が取れた」と書きましたが(汗)、それはあくまでも、1.どちらもAuro-3Dのソフト(BD、ファイルとも)が再生できる2.どちらもルーム補正ソフトのDirac Liveを適用している―という点「だけ」が共通であるにすぎず、Auro-3D的見地から見ると、伊豆のシステムと東京の書斎のシステムでは「雲泥の差」があります(泣)。

 

以下に両者のシステムの概要を簡単に一覧表にまとめてみました(クリックで拡大。以下同様)。

 

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実は、ここには書かれていない最大の違いは、2chやマルチを問わずオーディオでは機器以上に最も大切と言われる、「部屋」と「セッティング」でして、伊豆の部屋は一般のリスニングルームより床面積は少し広く、天井はかなり高く、容積は相当大きいと思います。

https://philm-community.com/Archive/my-room/auro3d/7814/ 

スピーカーの配置も距離的には左右対称で、各スピーカー周りのスペースにも比較的余裕があります。

 

これに比して、東京の書斎は、狭小(部屋自体は11畳ほどあるが、本棚と仕事用の大型机が入っているため、SPに囲まれているリスニングスペースは4畳半ぐらいしかない)であるうえに、SP配置が左右で非対称、さらにSP周りの空間がほとんどない設置状況となっているSPが多いという点で(後述)、決定的な差があります。

 

P(ダメダメな、第一層5.2chレイアウト)

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この、ダメダメ設置環境の決定的な証拠(笑)として、東京の書斎のシステムをDirac Liveで測定した結果のf特を、2台ずつペアにしたものをお見せしましょう。これらは、上から順にフロントLR(Dynaudio)、フロントハイトLR(KEF)、サラウンドLR(JBL)、サラウンドハイトLR(Yamaha)、ハイトセンター&VOG(ELAC)です。いずれも同じペアのSPなのに、特に設置環境の影響を受けやすい中低域で、結構二つのf特にずれがあるのがお分かりになると思います。これが伊豆のシステムですと、ほとんどきれいに重なっているのです。設置環境の対称性が取れている場合は同一SPを使用しているのであれば左右のf特に差が少ないはずなので、皆さんも一度、ご自分の測定値を左右ペアで比べてみると、ご自分の設置環境の対称性がどの程度かが分かると思います。

 

P5枚

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一体何をやらかすと、かくも「ダメダメでこのような不揃いのf特になってしまうのか?」という点を恥ずかしながら(笑)、『準備編』で書いたことに準じて詳細に説明しますと:

 

1.Auro-3Dを展開する理想の床の広さは、縦が約5M、横が約4M以上の空間(『準備編』2-1

←縦約3.5m、横約3mしかない。

2.円形の部屋か5角形の部屋がAuro-3D的にはベスト(同)

←直方体の部屋で、かつ全体に左サイドにSPシステムが偏って置かれている。

3.三層構造のAuro-3Dを考えているのであれば、天井高は3M以上を確保(2-2

2.4Mしかない。

4.第一層が5chの場合は、サラウンドは110度(3-3

←約90度(むしろさらに若干少ないぐらい)

5.大型の3Wayを狭い部屋に入れると「近接効果」が生じる(4-1-1)

←センター利用のSonetto VIII(3Wayフロア型)はLPから2Mも離れていない。

6.理想的にはあらゆる「壁」から1Mは離したい。妥協しても50センチぐらいまで(4-1-2)

←壁にぴったりつけているSP3台もある。

7.Auro-3D音楽専用システムであればCLRと同じものを(4-2-1)

CLRとはメーカーすら異なっている。

8.ツイーターの方式・素材を揃える(4-2-2)

HLRはハードドーム、サラウンドはホーン型、他はすべてソフトドームと、方式・素材ともバラバラ。

9.ユニット間の極性を揃える(4-2-3

←センターのSonetto VIIIはミドル・ハイが逆相(=バイアンプにしてミドル・ハイだけ極性を入れ替えて接続している)

10.密閉型のSWを複数台導入することを推奨(4-3-2

  ←密閉型1台と、バスレフ型1台の組み合わせ。

11.垂直配置原則 (5-1

←フロントのRとハイトRは互いの垂線から約1M近く離れている。

2.バッフル面の向き (5-2

  ←サラウンドハイトLRのバッフル面は適正角度よりかなり上を向いている

13.縦置き原則 (同)

  ←サラウンドSPは、横置きになっている

 

と、自分で列挙していてだんだん冷や汗が出てきましたが(笑)、自分で偉そうに(汗)書いた「原則」に対し、拙宅の東京の書斎は、何と13ものルール違反があります…(泣)。ここまで掟破りを重ねていると、普通は友の会から「破門」なんですが(笑)、何と言っても私が会長なんで(爆)。まあ、敢えて(!)、ここまでダメダメなAuro-3Dシステムでもどのくらいの音が鳴るのかを検証するために偽悪的にやっていると、好意的に解釈してください!!!(汗)

・・・・・・・・・・・・・

 

さて、ここまでが前置きで、本番はここからです。

 

3か月も聴き込んでいますので、使ったソフトは数知れませんし、覚えてないものもありますので(汗)、結論だけを書きます。いずれもAuro-3DまたはAuro-Maticで同じソースを聴いた印象です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

  • 1.東京のシステムではあまり聴く気にならないソフト
    • 編成の大きな演奏(クラッシックのオーケストラ曲、プログレのようなシンセサイザーを多用した音楽など)
    • オルガンやビブラフォンなど、教会・ホール全体を震わせたり、反響させたりするような音源
  • 2.東京のシステムでもまあ聴けるソフト
    • 室内楽
    • ピアノなどのソロ楽器
  • 3.もしかして、東京の方がいいかも、とすら思えるソフト
    • 汗の飛び散る、JazzRockLive
    • ボーカル曲
    • すべてのソフトの小音量再生

 

【考察】

上記1のジャンルに関しては、やはり、スピーカーの適正配置と部屋の差が大きいのだと思う。やはり伊豆に比して「囲まれ感」が足りないのだが、これは東京の書斎では頭の位置から後方には上下とも、SPが設置できていないためであろう。LPがほぼ壁についてしまっているようなレイアウトで、LP後方の空間(とそこに設置されたSP)がなければ、いかにDirac Liveの補正といえども、限界があるようだ。それからやはりSPの揃い方の違いも大きい。オーケストラの場合だと、フロントのLCR以外はほとんどアンビエント音が出ているわけだが、その音色が揃ってないとなんとなくうるさく感じてしまう。つまり、東京の書斎のシステム聴くと「あ、そこにSPがある」とわかるようなことがあるのだが、このようなことは伊豆のシステムでは起こらない。伊豆のシステムでAuro-3D(Matic)のクラシックを聴くときは、スピーカーが13台もあるにもかかわらず、すべて「消える」。

2のジャンルに関しては、予想以上に悪くなかった。室内楽も録音によってはサラウンドLにチェロ、Rにビオラとか、いかにも「マルチ」を意識させるような音場にしてあるものもあり(Tacetなど)、そのような録音の場合はたまにサラウンドのホーン型ツイーターから出る音がきつく感じる(特に管楽器などが振られている場合)ことがあるが、普通の録音では、フロントのLCRが中心となっており、東京の書斎の場合幸いにもこの3台だけはツイーターがシルクドームで素材が揃っているためであろう、第一バイオリンと第二バイオリンとか、ビオラとチェロなどが、LCRの間に配置されているような演奏の場合でも、比較的違和感なく聴ける。

ソロ楽器の演奏は、特にピアノが良かった。Auro-3Dソースによるピアノソロ曲は、クラシックでもジャズ(フュージョン?)でも奥行き感が2chよりも出ており、音色もメイン音がLCRの枠内に留まっているためか、伊豆で聴くのとそんなには変わらない感じがする。むしろこれは次の3とも関係するが、「スピーカーが近い」ことにより、「打楽器としてのピアノ音」の再生には硬い芯を感じられ、ピアノに近いところで聴いている感じになる。

 

3のジャンルは、まあ、さすがに「逆転」はちょっと言いすぎな所もあるが(笑)、前述した「スピーカーがLPに近い」ことがネガにならないような音源、すなわち、シンバルのハイハットとか、ベースのチョッパー奏法とか、ドラムのアタック音とか、目の前で吐く息を感じさせるようなボーカルとかが聴かせどころのソフトでは、伊豆のシステムの音とはまた違った魅力があるのは確かである。スピーカーに近いということは、反射音より直接音を中心に聴くことになり、当然、解像度の高い音になる反面、優雅な倍音の余韻のようなものは薄れる(しかも部屋自体、伊豆より東京の方が、本に囲まれている影響であろう、かなりDeadである)。これは優劣というより好みだと思う。特にサラウンドSPLPに近いうえに、何と言ってもホーン型ツイーターであるため、ここにシンバルや管楽器が振ってあるような曲では、昔NYのブルーノートでドラムのすぐ横の席に通された時の、耳が痛い感じ(笑)が味わえる。この感じが好きな人にはたまらないであろう。

最後の小音量再生は、やはりSPが全体にLPに近いからこそで、伊豆のシステムでLPにおける聴感上同じ音量を出すのに、必要なエネルギーが明らかに東京の方が少ない。小音量というのはオーディオシステム(アンプやスピーカー)にとっては歪の発生が少ないという大きなメリットがあり、また、東京の書斎のヤマハのパワーアンプはAB級なので、小音量であればA級動作領域に収まるため、音質的にはさらに有利な条件が揃うことが効いていると思われる。

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結局、今は、伊豆でしか聴かない音楽と東京の書斎でしか聴かない音楽が別れつつあります。東京の書斎は「ダメダメ」と自虐的に書いてきましたが(笑)、実はLCRだけはほぼ部屋のど真ん中に位置していて後ろの窓や壁まで2M以上あって設置環境が比較的よく、かつLRはフロア型をさらに床から20センチ以上持ち上げており、Cの足元は純正のスパイク(伊豆のSonetto VIIIはキャスター=汗)を使用しているため、LCRとも床の共振がかなり抑えられており、さらに3台ともバイアンプ駆動となっているため、かなりその持てる実力をある程度発揮できているのではと思っています。そのため、LCRが中心となっているような楽曲では、他のSPがかなり条件の悪い拙宅のシステムでも、補正ソフト(Dirac Live)の威力もあるのでしょう、曲のジャンルによってはそこそこ聴けるようです。また、部屋は広ければ広いほどいいとは必ずしも言えないようで、広い部屋の場合はその部屋を良質の音の粒で充満させることができるだけのSPの大きさやアンプ類のパワーが要求され、必然的に大音量となるために歪などの機器の質や部屋の剛性や響き方なども重要になってくると思われます。これに対し、比較的コンパクトである程度デッドな空間におけるAuro-3Dは、聴く音楽のジャンルによっては、低音量でも迫力のある音を響かせることができ、十分魅力的だと思いました。伊豆では夜中にグラス片手に聴くJazz女性ボーカルは、Amator IIIOctaveの真空管プリメインという2chシステムを使いますが、東京では、逆に2ch1000Mは日中に大音量で使い、夜中にショパンのノクターンでも聴くときは、マルチのシステムに電源を入れることが多いのです。

 

結論的にいうと、何も巨大な空間やハイエンドのシステムでなくても、「悪条件が揃っている」システム構成・環境でも、Auro-3DMatic)は、工夫次第で、音楽ジャンルや聴き方によっては結構イケる(笑)-です!

 

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おまけ

 

実は、この記事を脱稿した後に、自分のシステムがガラパゴス化しつつあり、「独りよがりの印象論」になっているという自覚があったので(汗)、「友の会」仲間でご近所のtaketoさん(何と言っても拙宅のHCVOGを設置していただいた大恩人です!)に試聴に来ていただきました。もちろん、予断を持たれないよう、彼にはこの原稿を見せずに聴いてもらいました。そして、そこで伺った感想(そもそもほとんど聞いていないが=笑)を基に私がこの原稿を修正することもしておりませんので、この原稿はtaketoさんの感想には全く左右されておりません。

言うまでもなく、私は伊豆と東京の二つのシステムの往復の中でBrush UP(東京だけだが)をしてきたわけで、今回の報告はこの二つの比較論に過ぎません。taketoさんはご自分のAuroシステムをお持ちで、私とは別の音楽ジャンルの好みがおあり(今回も音源を持ち込んでいただいた)で、それに対する音像感・音場感の好みをお持ちのハズです。

彼は伊豆にもいらしたことがあり、今回の拙宅の東京のシステムとご自分のシステムの3つをどう聴いたのか、私のこの「独りよがりの印象論」に対する彼からのコメントが入ることを楽しみに待ちたいと思います!