Dirac Live関連

2024年9月20日 (金)

第二層SP群とサラウンドバックSPの位置調整とDelayについて

これも前回の記事と地続きのネタです。そろそろ「労働の季節」が迫ってきましたので(汗)、これが恐らく「この夏休み最後の課題レポート」となります(もう一つ別のプロジェクトが密かに進行中ではあるが=笑)。

 

もう何度目となりますか(汗)、入交さんとの意見交換は。その度に「思い当たる節」のご指摘を受け、なんとか自分のシステムに反映させて来たのですが、今回も実は「イタイ」ところを突かれまして(笑)。もちろん、「SPはこのようなものを揃えるべし!」みたいなものは、「今更言われてもなあ・・・今のシステムを買い揃える前にお会いしたかった(泣)」的な部分がほとんどなので、一朝一夕には「ああ、そうですか、では変更しますっ」とは行きません(汗)が、セッティングに関わる部分であれば、本人に自覚とやる気さえあればやれるものも少なくないわけで。

 

で、今回、前回の記事で紹介した入交さんの指摘で、ワタシ的にぐさっと来たのは以下の3点:

 

1)AVアンプに内蔵されている音響補正ソフト(Dirac LiveAudyssey YPAOなど)による、距離補正(Delay)の部分は、手動で第一層の各SPと同タイミングで、その直上のSPから音が出るようにすべき(つまり第一層のSPと直上のSPを<同一距離>とする)。

 

2)「開き角」を優先すべき

 

3)Delayはかけない方がよい

 

これら、「入交道場」の免許皆伝を目指す者(笑)としては、スルーはできません!ので、早速やってみました。

 

1)フロント6台の「垂直関係」の見直し

 

Auro-3Dでは、「球面配置」にしてはならず、ハイトSPはフロアのSPよりLPから遠くなければならないというのは、一応私は「会長」(笑)ですから百も承知で、Dirac Liveを適用したあとにソフトが行った等距離補正(Delay)を手動で修正というのは、前にも入交さんに言われて、やっていた(つもりだった)のですが・・・Delayをなるべく使うな(後述)と入交さんは再三言われますので、ここは電子的な補正ではなく、物理的な補正をやれるだけやるべきかと、一念発起!(笑)

 

言うまでもなく、Auro-3Dに於いては、この前6台の位置や性能が非常に重要なのですが、そもそも(汗)、特にこのLCRHLCRの「完全な垂直関係」を実現できている方って、どのくらいいるんですかね?

 

私は今まで何件ものお宅で、LCR+HLCRの6台を備えたAuro-3Dシステムを見て、聴かせていただきましたが、ほとんど(恐らくすべて?)のお宅で、第一層のLCRLPから等距離に配置しておられます。つまり、円周上にこの3台を置いているわけですから、LCRが一直線には並んでおらず、真横から見ればLRに対してCが引っ込んでいますよね。

 

では、第二層のHCLRはどうでしょうか?HCLRの設置位置として殆どの方は、フロント側の「壁」に設置しておられると思います。この「壁」って、普通<平面>じゃないでしょうか?まさか「球面の壁」(しかも凹んでいなければならない)をわざわざ作っている人って、見たことないです(これをやるなら、「シェークスピア劇場」のような円筒形の部屋を作るしかない)。

 

「平面の壁」にHLCRを<円周上に>設置するのは、かなり大変(HLRを相当壁から離す必要がある)なので、殆どの方が(梁に設置してある拙宅も含め)HLCRは<一直線上に並んでいる>と思います。つまり、屋根から吊り下げるか、天井埋め込みにでもしない限り、LCRHLCRの完全な垂直位置関係を実現している<アマチュアのAuro-3Dルーム>は少なく、HCHLRよりLPに近いのが普通でしょう。つまり、垂直配置は、一般家屋のスクエアの部屋では、「そもそも」ハードルの高い条件であることは間違いありません

 

さて、本題に戻ります(汗)。前回?入交さんに拙宅に来ていただいたときに、フロントLCRの仰角が30度よりやや大きい、とのご指摘を受け、その後、Myuさんの多大なるご協力のお陰で設置位置を下げて、推奨値の「仰角30度」を実現したのは、以前記事にしたかと思います。

 

実はその後、「New Year’s Concert 2023」で、なんとなく、前より少年少女のコーラスの位置が心なしか上がった気がしていたんですが、今回の入交氏の指摘を受けて改めて部屋を見渡したところ、その原因らしきものを見つけてしまいました・・・

 

仰角を抑えるよう、HLCRをやや低い位置に移動させるため、それまでの「梁の上」から、「梁の前」に設置位置を動かしたのです。これにより、確かに「高さ」は下がったのですが、より「前に」来たのでLPにはより近づいてしまっていました。つまり「仰角」とのトレードオフで、HLCRLCRとの垂直関係は、前よりも崩れていたんです(以前は梁の真上にSonetto Iがあったので、HCCの縦位置は20センチ弱ぐらいしかずれていなかった…HLRに至っては、以前はほとんどLRの真上であった)。

P 昔の写真(Sonetto Iが梁の上に<一直線に並んで>設置されている。LRとはほぼ垂直関係配置)

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そこで、今回採用した方法は、第一層のLCRをもう少し前に出す、という作戦です。

 

P(上がBefore、下がAfter. 特にCHCの関係は、目測で50センチ以上HCのほうが前に出てしまっていた。LRとHLRはBeforeは20センチぐらいずれていたが、Afterではほぼ垂直に)

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これ、書くと簡単そうですが、単純に前に移動しただけだと今度はLRの開き角が規定の60度より広がってしまいます。LPも後ろにずらせばそれは防げますが、そうすると今度は、SLRの開き角が狂ってしまう(拙宅は90度)。結局、レーザー距離計を駆使して、いぜんよりやや半径の小さな円周上に配置しなおしたのですが、思ったより時間がかかりました(汗)。

 

P今回の配置修正後(実はこれには副次的な効果があった。拙宅のSP配置の<弱点>として、Lが壁に近いという問題があるのだが、円周を小さくしたことで、多少、前より壁からLが離れたので、壁反射の影響が少しは減退したと思いたい!)

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→結果

 

フォッサマグナツアーの課題曲の一つであった、ウィーンフィルの『New Year’s Concert 2023BD版(=Auro-3D)の、「上機嫌」における、バルコニーでの少年少女のコーラスの定位で確認。

 

それまでは、「指揮者の位置」での音場・音像感を再現しているのだと思っていたのが、「ホール客席の位置」での音場・音像感になった気がする。私はこのムジークフェラインに残念ながらまだ行ったことがないのだが、最近行かれたばかりのTomyさんから「ホール客席から見上げればバルコニーとオーケストラはそんなに離れているわけではない」というご報告があり、まさにその通りの定位となったようだ。フォッサマグナツアーではずいぶんオケより高い位置にコーラスが定位していたお宅もあったと記憶している(ハイトSP群の位置に問題があった場合もあったが)。「いかにもハイトSPからコーラスが聴こえます!」というようなお部屋では、本当にLCRHCLRが垂直関係になっているか、Delay(後述)の設定も含め、再確認をしたほうがいいかもしれません。

 

2)サラウンドバックの開き角

 

今回、入交さんにAuro-3DSP配置では「開き角」が最も重要、という趣旨の指摘を受けたときに、私がドキッとしたのは、拙宅のサラウンドバック(SBLR)の位置です。

 

拙宅は第一層を7chにしているのですが、サラウンド(SLR)は<90度>と「入交セッティング」にしてあります。『マニュアル』ではSLRは<110度>を標準値としているのは皆さんよくご存知のとおりです。入交氏はこれを90度に置いてエンジニアリングをしておられることはもう何度も書いていますが、その論理的な理由は、「人間が2つのSP間に音像定位をきちんと認識できるのは60度の開き角までで、それ以上開くとSP間の音像定位が曖昧になる」ということで、私は論理的な議論に説得されやすい社会科学者なので(笑)、<LR30度、SLR90度>が合理的であると納得し、拙宅も「入交セッティング」にしてあるわけです(彼の録音は、LRとサラウンドの間に音像を定位させる物が多い!もし、SLRがマニュアル通り110度の位置にあれば、ここの開き角は80度にもなってしまい、恐らく、この間の音像定位は甘くなるか、<中抜け>するであろう)。

 

では、サラウンドバック(SB)はどうか?『マニュアル』では標準値が150度と指定されています。この位置であれば、90度においたSLRとの開き角がちょうど60度となり、「入交理論」に叶うことになります。

 

しかーし(汗)、これまで拙宅では、SBLR間の開き角は30度程度しかありませんでした。つまりLPからの角度は、約165度なので、標準値はおろか、許容範囲(135-155)からも外れていました(大汗)。

 

Auro-3D友の会会長のくせに」(笑)と言われそうですが、ここに設置せざるを得なかった理由は、「角度を取るか、SP(音質)の整合性を取るか?」の二択で、私はこれまで後者を優先させていたからです。

 

拙宅のAuro-3Dシステムのウリの一つに、「TOP以外の12台のSPをすべてSonusSonetto シリーズで揃えているため、すべて同じツイーターを使っている」ことがあります。言うまでもなく、「音色」に最も影響を与えるツイーターを同じにすることで、残響音再生も含めた音場・音色の一体感を追求していたのです。

 

SBLR用にはSonetto Iを使っていたのですが、残念ながら、理想の開き角150度の位置にこれをセッティングするとしたら、SP台に乗せてそれを入口の真ん前に置くしかなく、生活動線の観点からそれは諦めていました。

 

ただ、拙宅にいらした方ならすぐに指摘できるように、実は可動性のある、キャスター付きの(笑)、Amator IIIがもう一組あり、それをSBLRとして使えば150度に位置に置ける(必要なときは簡単に動かせるため)ことは分かってはいたのです。

 

しかし、その場合は別の問題が。そもそもAmator IIISonetto Iでは、元々かなり性能が異なる上に、さらにそれを駆動するアンプも前者はOctaveの真空管、後者はSTA-9というデジアンという大きな違いがあり、両者の出音はどんな素人でも絶対にわかるほどの違いがあるのです(元々、Amator III2ch再生用に導入)。Octaveはプリメインですが、パワーアンプとしても切り離せるので、ATMOS映画を見る際にはサラウンドSPとして使っているのですが、映画と音楽じゃあ、求められる再生品質の統一レベルが違うのは言うまでもありません!

 

実は過去にも、Amator IIIOctaveAuro-3Dシステムに組み込んでみたことがあるのですが、どうも違和感が拭えない。主役のLCRと音色が異なるので、「悪目立ち」することが多々あったのです。イマーシブオーディオは<一体感・包まれ感>が重要なので、あるSPが「僕、ここに居ます!」となってはダメですよね(笑)。

 

ところが! この春からLCR+SLRとして使っている主力のSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプで運用しているのはすでに何度も書いていますが、それ以来、実はどうもSBLRに使っているSonetto Iの音が、逆の意味で「悪目立ち」することを感じるようになっていました。チャンデバ化すると全体的に音が鮮烈になるので、パッシブのSPの音が「ぬるく」(笑)感じる様になっちゃうんですよ(これはあらゆるチャンデバシステムに共通する音質で、最近、私の耳はすっかり「チャンデバ耳」に!)。

 

「これはもしかするとAmator IIIの方がまだマシでは?」

 

Amator IIIはバイオリンや女性ボーカルなどは私好みの甘い音がする素敵なSPですが、やはりいいマグネットを使っているからか、はたまたいいネットワークをつかっているからか、音のキレはSonetto Iよりあるんですよ(マイケル・ジャクソンがちゃんと聴けますから!)。Octaveも真空管ではありますが、一般的にイメージするような「茫洋とした、おおらかな音」を出すアンプではありません。しかも、これをSBLRにすれば、150度に位置に置くのはたやすいことです。

 

ということでやってみました!

 

P(推奨値の150度あたりにAmator IIIを移動。プロジェクターの下の棚の上に乗っているSonetto Iが以前のSBLR。開き角の違いは一目瞭然・・・)

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LRは正確に角度も測って30度の開き角をつけています(つまりLPLRで正三角形を形成)が、SBLR150度に位置にPlaceするならわざわざ計測する必要はなく、この写真にあるように、「LP(椅子)を挟んで正反対側」になるように置けばいいのです!(ちなみに、このような写真が撮れる、ということは、SPの後ろにある程度の空間が確保されているということで、これも反射の問題を考えるととても重要なことです。後ろの壁ぴったりにつけている方は、見直したほうがいいですよ!=といいつつ、拙宅もSLRは壁ぴったりだが=だから同じSPなのにLCRに比してf特がずれている=汗)

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→結果

 

11ch74)ソフトはまだ少ないし(特にダウンロード版では皆無に近く、手持ちでは一つしかない!)、さすがに、サラウンドとサラウンドバックの間に楽器を定位させているようなソフトはほとんどない(汗)が、例えば、フォッサマグナツアーの課題曲の一つであった、「Polarity」の、あざとい(笑)、背後に配置されたドラムスセットの音と音像定位は、さすがAmator IIIOctaveの音だし、SBLR間の開き角が60だけある音像定位(=ツアーで聴いたX1邸の音に少しは近づいた?=前は30度くらいしか開いてないのでドラムセットがこじんまりと固まっていた)。心配していた音色の違和感も、やはりこちらの予想通り、チャンデバ化されたSonetto VIIIとの組み合わせなら、そこまで変じゃない(まあ、入交さんも「ツイーターの素材が揃っていれば」とおっしゃっていて、Amator IIIもSonetto Iもどちらもシルクドームだし=質は相当違う気がするが=汗)。さすがにもし、後ろから前にバイオリンが移動するような音源があれば、両者を聴き慣れている私には音色の変化が多分わかるだろうけど…プログレならともかく、幸い、Classicにはそんなギミックはないし!

 

実はOPPO205DTS5.1chに折りたたまれている9.1chAuro-3Dソフトを拙宅のStormとの組み合わせで再生すると、「なぜか?」SBLRにも音が振られることを発見し、せっかくSBLRの位置を調整したのを機に、埃を被りかけていた(汗)、昔のNew Year’s Concertなどを聴くようになりました!

 

3)脱Delay

 

本日、最後のお題です(笑)。入交さんは、「DelayAVアンプでかけるとLPのピンポイント以外では位相が大幅に狂い、音場が乱れる」と主張されます。そのロジックはイマイチ文系の私では???なのですが、「入交教」の信者(笑)としては、まずは教祖様の言うことに従ってみるべきだろうな、とは前から思ってはいたのですが、さすがに13台全てのSPをLPから等距離に配置し直すなんてできるはずない、とこれまで躊躇していたのですが今回、「SPの距離の差といっても、一般家庭では1Mもないはず。それであれば移動音の多い映画ならともかく、音楽なら普通の人には聞き分けできないレベルですよ」とまで言われて背中を押されまして(汗)。拙宅の場合はDelayDirac Liveに任せているため、「どうせやるならDirac Liveも抜きにして、完全無補正に挑戦!」ということで、やってみましたがな(笑)。

 

P(チャンデバ化による、ウファーとスコーカー、ツイーターの距離補正だけを残し、他はすべて、「0」、つまり全スピーカーから同一タイミング=エンジニアが意図して音源に入っているDelayはあるはず=で音がでるようにした)

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(再配置後、LP耳の位置から各SPバッフル面までの距離は、LCRが2500ミリ、SLRが1320ミリ、SBLRが2000ミリとなった。Amator IIIはキャスターで動かせるので、LCRと同じ2500の位置に置くこともできるが、そうすると後ろの壁との距離が50センチぐらいしかなくなってしまう。Amator IIIはボトムバスレフのSonetto VIIIとは異なりリアバスレフなので、最低でも1Mは空ける必要があるのは言うまでもない)

→結果

 

うーん、確かに「音」だけに注目すれば、ベールが一枚も二枚も剥がれたような鮮烈な音になった。ピアノソロの直接音などは鮮度が上がったのがわかる。しかし、これはDelayの問題というより、恐らくDirac Live(ART)の有無の問題だと思うのだが、「満天に散りばめられている数多の星たちが、遠くの無限の闇の奥底で輝いている感じ」がやや損なわれ、プラネタリウムで見ているような、「やや遠近感のない、そこで光っているくっきりさ」になっている。これは好みが分かれよう。

 

さらに、決定的な違いはやはり低音の再生品質である。もうすっかりARTの効果が発揮された解像度の高い低域再生音に慣れてしまった私の耳には、無補正のシステムの低域はボワついて聴こえてしまう(これもDelayとは関係ないかも…)。

 

これについては、明らかにDelayの有無とDirac Liveの有無がごっちゃになっており、もう少し研究が必要だと感じた次第。できればDirac Live(ART)だけ残して、Delay調整はパス、なんて設定ができればいいのだが(笑)、素人判断では両者は密接な物理的な関連がありそうだから(Delay調整していない=LPにおけるタイムアライメントが調整されていない=状態で、ARTの「逆相による定在波のキャンセリング」なんてできるのだろうか???)、切り離せないのでは・・・と予想(汗)。

 

であれば、私はDirac Live+ARTLeanな低音およびLPだけにせよ、ほぼ完璧に位相が揃っている音)に軍配ですね!(笑) それほど<中毒性>がある出音ですから!!!

2024年9月 6日 (金)

イマーシヴオーディオ用のDirac Liveの使いこなし?-ATMOS&Auro-3D

またまた、前回と論理的に地続きのネタです(笑)。

 

あれ以来、久しぶりにATMOS Musicソースを聴き込んでいるのですが、Abbey Roadばかりでは耳が痛くなってくるので(もう耳が若くはない…)、オケものをということで、取り出してきたのが、これ。

 

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まあ、これも「定番」のATMOS音楽ですね。ただ、言うまでもなく、カラヤン存命中にはATMOSはおろか、Auro-3Dもなかったわけですから(歴史的にはAuro-3Dの方が古い)、このアルバムのATMOSはカラヤンが残した録音テープ(何トラックぐらいで当時は記録したのだろうか?カラヤンは録音芸術に積極的だったことはよく知られているので、間違いなく当時としては最高品質の録音機器を使い、最大限のマルチトラック収録をしたであろうことは想像できる)を、現代の若手?エンジニアがRemixしてATMOS化したもの。

 

本稿の本題とは逸れるが、このATMOS版の『カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニック交響楽団によるベートーベン交響曲集」(=ものすごい、Authentic! 皆が平伏するキーワード3連発ですよね=笑)は、ただ2ch16ch(そう、これ、9.1.6ATMOSフルバージョンです!)に拡張しただけじゃあないようです。

 

ジャケット裏には、「DOLBY ATMOS transports you from the ordinary into the extraordinary」と書かれているように、録音エンジニアさん、「気合入ってます」(笑)。

 

で、今回、せっかく真面目にATMOS・カラヤンのベートーベンの交響曲全曲を聴くんだから、我らがインマゼールのAuro-3Dによる全集との聴き比べを。

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といっても、音質、音像、音場などの「勝負」はやる前から見えていて(汗)、そりゃ、録音の年代が数十年違うし、片や「なんちゃって」ATMOS、片や「本気」Auro-3Dですから、この比較はFairではない。

 

ただ、聴き比べてはっきりわかったことは、このカラヤン・ATMOS版は、<残響音>?を盛りに盛っている、ということ。これ、録音された場所は全曲同じなのか(ムジークフェラインザールなのか、もしかして一部、教会?=カラヤンは教会での録音も好きだったことは有名)は、老眼で(汗)ライナーノーツの細かい英文を読む気にならないので置いておきますが(笑)、直接音再生の主体であるLCRに比して、サラウンドバックとかトップリアあたりに入っている音は、<やたらDelayがかけてある>んです(笑)。

 

だから、残響時間の長いとても広い空間で3D録音されたかのような!(私は、残念ながら、未だムジークフェラインザールには行ったことが無いので、その音場感が分からない) 例えば、第7番の印象的な第一楽章の最初のフォルテなんて、「前から後ろへ音が流れていく」のが分かるぐらい(笑)。インマゼール・Auro-3D版より全然長い残響時間!

 

言うまでもなく、当時の録音は、まさか、入交さんがやっておられるように天井とか後ろ向き(つまり背後からの残響音録音用)にマイキングはしてますまい。当時の録音エンジニアはほぼ2ch用しか考えてない(まさかこれ、4chがオリジナルじゃないよね?)はずなので、当然、録音は直接音主体のはず。そのように収録された「音」を、ただ16ch化しただけなら、<ホテルの大宴会場のBGM>にしかならない(=つまり、同じ「音」をただ多くのSPから出しているだけ=笑)。

 

それでは耳の肥えたイマーシヴオーディオミュージックファンからは「金返せ」となるのは目に見えているので(これがRockとかPopsなら、ギターやシンセの音をぐるぐる回す、とかのお遊びを入れて「なんちゃってATMOS化」を図るのだが、Classicはこの手は使えない)、どうやらエンジニア君はかなりDelayを工夫して入れることでATMOSらしく?したようです(笑)。

 

これだけを聴いているとわからないのだけど、これを最新のAuro-3D録音と聴き比べると、今回「いかにカラヤンATMOSが<不自然に>音場を盛っているか」が分かってしまった(汗)。

 

ついこの前もオルガンを聴きにサントリーホールに行ったばかりですので、我らがインマゼールの方が、圧倒的にリアルな現場感があると断言できます。カラヤンATMOSは、サントリーホールの3倍くらいの広さの石造りのホールで収録したのか?ウソっぽい=爆。

 

まあ、ATMOSは本来、映画用なので、映画音響であればこのような「あざとい」編集はお手の物(まさか、映画用のエンジニアがこれ、手がけたんじゃないでしょうね?=汗)だろうが、Classic音楽としては、ちょっとやり過ぎじゃ?(いくら風呂場のカラオケ好きの私でもToo Much!

 

さて、すっかり「本題」を忘れるところだった(大汗)。

 

実は、このカラヤンATMOSを真剣に聴いてみて、なんとなく、「重いなあ、これ」という感じがしたのです。つまり全体的にどよーんとした音で、<コロコロとした軽み>がない。「ベートーベンなんだから、当然だろ。モーツァルトじゃあるまいし!」とは言うなかれ(笑)。

 

ベートーベンだって、交響曲9曲の全楽章すべてが「暗い」わけじゃない(笑)。彼の人生は全般的に確かに「暗かった」ようだけど(汗)、たまにはFunkyな気分の時もあったはずで、当然、そういう時に作曲した楽章もありますよね?

 

でも、このATMOS版、どうも全般的に暗く、重い(気がした)。「これ、もしかして録音が古くて、高域がハイエンドまで録音されていないんじゃ?」と勝手に想像し(アナログテープが原盤で、DiscBDだから理論的にはハイレゾしてるはずだが)、「よし、Tomyさんがよくやっておられる、Dirac LiveTarget Curveの調整をやってみよう」と。で、ここから先はDirac Liveを使っている人には参考になると思うので、今回記事にしたわけです(汗)。

 

Dirac Live歴の長い?私は、これまでの研究結果から、現在は原則、以下のようにしています。

 

1.第一層のメインSP(拙宅の場合は、Sonettto VIII5台)は、1Khz付近より上は補正しない

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2.それ以外のSPDirac Liveのデフォルト(全帯域補正=ほぼフラット化)

 

他にもいろいろ細かい自分なりの工夫はあるのですが、今回の中心テーマである、「高域」だけの設定のお話にここでは留めます。

 

基本的に1はいじりたくない(チャンデバ化までした自分のシステムの「基本性能」を信じたい!)ので、やるなら2です。そこで2のSP群のTarget Curveを以下のようにしてみました。

 

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いわゆる、「ふた山」f特ですね。「BBC Dip」も取り入れてみました(笑)。

 

結果ですが、少し(というか、かなり)音に「コロコロ感」(笑)が出てきました。そしてどんよりしていた空がカラっと晴れたように、空間が広がったような気がします。

 

Auro-3Dの<マニュアル的には>、13台同一SPで揃えろ、とあることはもう耳タコだと思いますが、「言うは易し行うは難し」の典型の一つであるのは言うまでもありません。で、多くの方が第一層のSPに比して、比較的小型のSPを第23層に配しておられるのが現実ですよね。それを同じメーカーや、さらには同じシリーズで揃えておられる方ばかりではないのも、また「Reality」です。その場合、ではどのようなSPを第23層用に選ぶのがいいのか、については、残念ながらAuro-3Dの教科書には書いてありません(汗)。

 

そこで我々のような「人柱」が実践経験の中で、何らかの解を見出していくことが期待される(?)わけですが、実はこれは、前にも書いたことがあるのですが、多くのAuroシステムを拝聴させていただいた経験からは、個人的な好みでは、やや高域に華があるSPを第2、3層に使う方がいい結果になっているような気がしていて、それを今回は応用し、これらSP群の高域を持ち上げてみた、というわけです。

 

さて、このATMOSでの効果に気を良くして、ついでにAuro-3D用のセッティングでも、第2,3層に同様のTarget Curveを適用してみたところ、<台風一過の晩夏の日差しの下、家を取り囲む木々からの木漏れ日を感じながら、エアコンを入れた涼しい部屋で静かに聴くAuro-3D&ATMOSによる、清々しい『田園』>を満喫しながら、これを書いております(笑)。修正したTarget Curveは保存していつでも適用できるので、暗い冬が来るまではしばらくこのCurveで楽しもうかな、と(笑)。

 

Dirac Liveに高いお金を払った方は、是非、Default以外の設定も楽しんでみてください!いいカーブが見つかったら、是非ご報告を!

2024年7月22日 (月)

Donguri邸Revisitedー「もう、これで打ち止め」、とまた言われましたが・・・(笑)

ちょうど1年ぶりに、Donguri邸にお邪魔して参りました!

 

我々友の会のAuro-3Dオタクは留まるところをみなさん知らないようで(笑)、donguriさんも前回、【実践編】でご紹介した時から<かなりの変化>を遂げておられます。

 

彼はPhil-Mに結構マメにアップデート報告をされておられるので、詳細はこちらのサイトをご覧になっていただければと思いますが、私が、この1年の間の変化で気がついたところだけをざっと列挙すると:

  • ルームアコースティック(自作品多数=笑。ご本人によると、特に、LRの背後へQRDを導入し、音場が奥に広がったことが大きかったとのこと)
  • センターハイトSPの位置の調整(HLCRの高さと距離を揃えた)

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  • SWの強化(B&W DB4S 2台体制に=LRの下のお手製の棚の中に格納されている)
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  • AVアンプの強化(SR-8015から、同じMarantzの最新のCinema 30へ)
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  • Dirac Liveの導入(Bass Controlまでのフルヴァージョン。これだけで800ドル!)
  • LR駆動用パワーアンプの変更(Accuphase E-370 のメイン利用から、LINN4chマルチパワーアンプAKURATE 4200へ。この結果、LRのみならず、Cも同じパワーアンプ使用となった)Img_2709

 

「ざっと」なのにこんなにある(笑=恐らくまだある!)。たった1年で(笑)。「もう打ち止めです」とはご本人のセリフだが、それって、1年前に805D36台揃えたのを機にお邪魔した時も同じことおっしゃっていましたよ!!!(完全に「オオカミ少年」、いや中年=爆)

 

今回は、清里でのピアノコンサートの「ついで」(笑=時系列的にはこちらが先なのですが、まずは礼儀として訪問記を優先!)に立ち寄ったために午前中しかお邪魔する時間がなかったので、着くなり挨拶もそこそこに(笑)、いきなり最近一番のお気に入りのReferenceソフト、Auro-3D Native9.1ch)のピアノソロのLiveアルバム  を使い、早速検聴モードに突入!

 

まずは、前回から大幅に増殖しているルームアコースティックの効果と、Dirac LiveDonguri邸でどの程度の力を発揮しているのかを見極めたく、Dirac LiveOn/Offを試させていただく。使用曲はMozart Piano Sonata No.9

 

Offから聴かせていただいたが、拙宅(伊豆)に比してピアノとの距離感をかなり感じる。お部屋はLPから正面の窓まで、3Mもないのだが、かなり奥行きのある音場になっている。恐らくこれはQRDの効果なんだろうな、と納得(流石に、QRDの「有無」の実験まではできなかった=汗)。

 

ただ、「こりゃ、かなり前と変わったけど、ちょっとピアノが<遠すぎない?>」と内心思ったのだが(笑)、次にDirac Liveをオンにしてもらうと、きちんと「適切な位置」までピアノが出てきた。

 

そして、やはりDirac LiveDirac Liveであった(笑)。私がDirac Live欲しさでStormを導入した時の最初の驚きと全く同様、空間が澄んで、音数が増えて、おたまじゃくしが空間を乱舞するのが見えるような解像度と、低音に芯が通るのを感じた。私はお邪魔する前に仮説を立てていて、「Dirac Liveは拙宅のような左右非対称などの悪条件がある部屋において効果が高いのであって、Donguri邸のような専用室でルームアコースティックに気を配られている部屋では効果が薄いのでは?」との予想だったのだが、完全に見込み違いであった!(まあ、これはグランドスラム邸でも経験しているのだが、再確認させられた) こりゃ、M1邸も軽男邸もいつまでも様子見してないで、やるしかないですよ!!!(笑)

 

ただ、最近聴き込んでいるこのReference曲を聴き進めていくと、拙宅に比してホールのノイズが目立たないことに気がついた。「ノイズが目立たない」というのは、もちろん<音楽鑑賞にとっては褒め言葉>なのだが、オーディオマニア的には(笑)、「おお、ここに微かな足音が!」を発見するというのはオタク的喜びでもある(爆)。つまりは解像度ということになるのだと思うが、天下のダイヤモンドツイーターなのに、ちょっと変だと思い、率直にそれをDonguriさんに伝えると、どうやらDirac Liveのキャリブレーションを完全にデフォルトでなさっておられるらしい。

 

これはあちこちに何度も書いているし、ついこの前もグランドスラム邸で<何度目かの>秘技を披露(笑)してきたばかりなのだが、Dirac Liveはデフォルトでは、スピーカーがなんであれ、f特の補正をほぼフラット(正確にはやや低域上がり・高域下がり)に補正しようとする。これはf特がボコボコの安物のSPなら音質改善につながるかもしれないが、grandslamや805D3といった、マニアからも一目置かれているようなSPは、その音色の「個性」は中高域に宿るのである。ここを均してしまっては、完全にそのSPの「個性」を殺してしまう。SP選びとはつまりは「音色」選びであり、オーナーはその「音色」が気に入ったからこのSPを選んだわけだから、その「大事なところ」をいじってはいけないと私は強く思っている。

 

ということで、Donguriさんの許可を得て、またまた(笑)、Dirac Live出張サービスモードに! PCで計測済みデータを読み出し、1Khz以上はf特の補正はしない(ただし、位相などの補正は有効なまま)設定に変更。再計算後、新しいキャリブレーションファイルを読み込ませて再度、試聴。

 

うーん、うるさくなった(=ホールノイズが=爆)!こうこなくちゃ、このアルバムは!!!

 

ピアノの音も冴えに冴えた。やはりダイアモンドツイーターによるピアノ再生はいつ聴いてもAddictedである(笑)。ピアノの音が冴えたおかげで、S/Nがものすごく向上したように感じられた。

 

Donguri邸のS/Nは、最初に聴いた時から「こりゃ、以前とは比べ物にならんな」と思っていたのだ(ご本人によるとパワーアンプの交換が決定的だったらしいが、ルームアコースティックの度重なる工夫や、MarantzのハイエンドAVプリメインへの交換なども総合的に寄与しているのは間違いなかろう)が、Dirac Liveによるf特補正を1Khzまでに絞ったおかげで、中高域の「もや」が晴れ、さらに「下方リニアリティ」(これは、ご近所でお世話になっているMyuさんの用語。弱音の解像度、というような意味と私は理解している)が向上した感じがした。これなら、深夜に、奥様を起こさないような音量でピアノを聴いても、十分感動できるであろう!

 

さて、さらに聴き進めていくと、ARTによるSolidな低音再生にすっかり耳が慣れてしまっている私(汗)には、ちょっと低域に甘さ(この言葉は、善悪、両義的に使っている)が感じられたので、またまたお節介を(笑)。

 

測定されたLR805D3f特をよく見ると、50Hzあたりに山があり、そこから下は急峻に落ちている。恐らくこの辺に定在波のPeakがあり、その下がバスレフポートのf0?になっているのだろう。これを見た時、私の頭の中では、「ARTならこのPeakは打ち消されるな…」とイメージしてしまったのだが(汗)、Dirac LiveBass ControlDLBC)はデフォルトではSWとのCO値を70Hzにしてあった。つまり、この50Hz近辺は805ではなく、SWに担当させよう、というのがDLBCの作戦のようだ。

 

私はまたまたDonguriさんにお断りをして、実験的にもう一つの補正ファイル(MarantzAVアンプには複数のSlotに補正データを入れることができる)をつくらせていただくことにし、SWとウーファーとのCO値をデフォルトの70Hzから50Hzに下げたものを作ってみた。

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で、早速試聴。

 

狙い通り、低域がSlimになって、私的には締まった感じがしてARTっぽくてそこそこ好みなのだが、やはりこれも事前の予想通り、量感がかなり減少し、オケのコントラバスの通奏低音が細くなってしまい、音楽的な「感動力」が下がってしまった(汗)。実はこの作戦(=SWとのCO値を、Diracのデフォルトより下げる)は、伊豆で最近実行して気に入っているのだが、あちらはチャンデバ化に伴い、ウーファーの低域再生能力(=質)が上がった(気がする=汗)ことに対応したもの。Donguri邸では、805のウーファーの再生可能最下限域を無理に使わず、質のいいSW2台でカバーする方が音楽再生用途としては優れているようだった。

 

これ以外にも色々な曲を聴かせていただいたのだが、長くなるので割愛。最近、すっかりS/Nに耳がいくようになっているのだが、今回のDonguri邸の音は、とてもS/Nに優れた清明で見通しの良い音だった。Dirac Liveもいじらせていただいて、自分としてもまた一つ経験値を上げられた訪問だった。

 

Donguriさん、今度はチャンデバ化した拙宅の、「ホール音」の<うるささ>(爆)を聴きにきてくださいな!

2024年5月27日 (月)

Sonetto VIII 5ch 完全チャンデバ化プロジェクト(その7:検聴オフ会編)-そして誰も何も言わなくなった?(笑)

普段は、オフ会の記事というのは、自分がお邪魔した先で「発見したこと」を書くのであって、お招きした場合は、こちらとしては普通は「何の発見もない」のであえて書かないのを常としていたのですが、今回だけは別格(笑)。

 

どう別格かというと、この2月に始めた当初、多くの方から「無謀だ、やめとけ!」と言われた(汗)「Sonetto VIII 5ch 完全チャンデバ化プロジェクト」で、「やる気だけはあっても、知識も経験もない」私のサポートにおいて中核的な役割を担ってくれた、御三方(Myuさん、K&Kさん、Tomyさん)のうち、海外におられるTomyさんを除くお二人への「完成お披露目」であったことに加え、同じ「既製品チャンデバ化仲間」である、Cmiyajiさんもお招きし、さらにさらに、プロのピアニストであられるお連れ合いにも来ていただいたからです。

 

特にこの、「プロのピアニスト」をお迎えするというのは、Auro-3Dの録音エンジニアの入交さんをお迎えした時と同じぐらい、緊張しまして(汗)。ピアノ好きとしては、もし、「この音、全然ピアノに聞こえない!」なんて言われようものなら、もうオーディオ止めるしかないだろうな、という「悲壮な覚悟」で臨んだのです(大汗)。

 

結論から言えば、そのような「ダメ出し」は幸いありませんでした。ここに当日皆さんからいただいた「社交辞令」を書き連ねるのは私の趣味ではないので控えますが(笑)、以下に自分の備忘録として、印象に残ったことをいくつか紹介したいと思います。

 

1.まず、今回の「お披露目」のための<勝負セッティング>ですが(笑)、これは、前回の「再調整編」 で試行錯誤した中の「3番」のパラメーターを全5台に採用し、Dirac Liveのキャリブレーションを行なってARTでの補正をしました。

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記事にも書きましたが、この「3番」はMyuさんの一押しでしたが、私は、チェロやボーカルなどの音の厚みがやや物足りず、Sonusらしくない、と感じていたものです。しかし、その後、Siltechさんのところの「課題曲」に使った 、「Eye in the Sky」をReferenceにしてパラメーターをいじって試してみたところ、この「3番」が最も<空間感>に優れていることがわかりました。

 

ここで、一晩考えたのです(笑)。音質を取るべきか、音場か。そして私が出した結論は、拙宅のSonetto VIII5台は、Auro-3D用なのだから、やはりその最大の特色である、<音場>を優先させるべきだろう、というものでした。この際、<音質>は2chAmator IIIOctaveに任せようと、割り切りました(笑)。

 

その「成果」を今回ご参加の皆さんに感じていただいたソースは、これでした。

 

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私は実は、「マーラーは苦手」でして(汗)、これまでほとんど真面目に聴いたことがありません。もちろん、よそ様のオフ会では結構よく聞かせていただけるので、オフ会後に自宅のシステムと聴き比べるために、手元に幾つかは置いてあります。ただ、どうしても私の駄耳には冗長に感じられ、構築的な、凝縮された魅力に乏しい、というイメージで(ファンの方、すみません。一個人の感想です!)、敬して遠ざけておりました。

 

にもかかわらず今回、これをオフ会メニューの一つに加えたのは、Myuさんがブログで、この曲の名盤として私でも知っているショルティ盤を紹介しておられ、 そこのレス欄で、「うちのAuro-Maticによる再生と聴き比べましょう!」というようなやり取りをさせていただいたからでした。

 

このマイケル・トーマス盤は、SACDマルチなので、これをさらにAuro-Maticにするととても「映える」ことを経験的に知っていますので、これを選びました。試聴に使用したのは、第二部の最後の3パートで、新システムの「空間表現力」がいかんなく発揮されたようです。

 

2.何曲か聴いていただいている途中、K&Kさんに、「これ、ちょっと低域盛りすぎじゃない?」と言われたのですが(汗)、むしろ今までのDirac LiveDefaultのターゲットカーブがピラミッド型すぎると私も感じていて、今回それを修正し、低域を控えめに設定していたのです。その証拠(笑)を以下にお見せしたいと思います。

 

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これは、LCRに対するARTによる補正画面ですが、測定されたf特がかなり下の方まで暴れていなかったので(これはチャンデバによる成果かもしれません)、補正の上限を思い切って250Hz近辺にまで下げました。つまり、ウーファーのLPF値よりかなり下だけを補正させたということです。しかも、最下限まで直線的な補正をしようとするデフォルトのカーブを大幅に修正し、ターゲットカーブを測定値のf特なりの素直なものにしました。

 

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これは、SW3台の測定値とターゲットカーブです。これも同様に、測定値なりのターゲットカーブに修正し、低域をなだらかに落としています(つまり、補正によって全く持ち上げていない)。

 

このように、むしろこれまでのDirac Liveによるデフォルト補正よりかなり低域を「スピーカーなり」にしているのですが、K&Kさんに指摘されるまでも無く、低域は今回、かなりしっかりと出ていたと思います。

 

恐らく、その原因は、アンプをウーファーに直結したことによる、ウーファーの制動力の向上だろうと思っています。言い換えれば、ユニットの性能限界ギリギリまで使うことができているかと。先のクルマのアナロジーで言えば、MTだとレブリミットのレッドゾーンまでエンジンの回転数を上げることができますよね(ATは基本出来ない。エンジン保護のためその前に自動でシフトアップする)。もちろん、これはエンジンブローと紙一重ですが、ギリギリのところを使えば、最も速くクルマを駆動することができるのは、ちょっとドライビングをかじった方ならご存知でしょう。実は今回、SWとDirac Liveを全く使わない、無補正の2chと5chConfigも用意して、皆さんにお聞かせしたしたのですが、「これ、本当にSW使ってないの?」(笑)と真顔で何度も尋ねられたぐらい、これまでのSonetto VIIIでは決して再生することができなかった低域が出ていたのです。

 

3.上記で触れましたが、今回、SWもDirac Liveも使わずに、チャンデバのパラメーターで音圧やユニット別の距離補正をしただけの「無補正」の2chと5chシステムを組んでみたのですが、これが思ったより評判が良く、まあ自分でもなかなかイケてると思いつつも、「ヤバい、これではDirac LiveとSWにこれまでかけてきたコストと時間が・・・」と焦ってしまいました(笑)。

 

流石に、私の耳では、(超)低域の解像度だけは、SW3台を束ねるARTに軍配をあげていますが、無補正の生々しさも捨てがたく、長らく「Dirac Live教」の熱烈な信者だったのに、ちょっと「信仰」が揺らいでいます(笑)。もちろん、それはあくまでも2chや5chまでの世界に限った話であって、13chもあるSPの音圧、Delay、位相を全て手動で合わせることは拙宅のシステムでは絶対に不可能なので、Auro-3D(Matic)を聴く際の、Dirac Liveへの「信仰」笑には、いささかの揺らぎもありません!

 

それにしても、この「無補正の、チャンデバ・マルチアンプ化された」Sonetto VIIIの音は、当日、同じ2ch同士で、Amator IIIと比較試聴していただいたのですが、もはや同じメーカーのSPとは思えないぐらいの<違い>ができてしまいました。当初の心づもりではこの事態だけは避けたかったのですが(汗)、前回の「再調整編」のレス欄でTomyさんと議論させていただいたように、途中で「改造前と同じ音色・音質にするのは原理的に不可能」であると気がつき、最終的には、「Sonetto VIII5台は徹底的にチャンデバらしい音にしよう」と開き直りました(笑)。

 

今回の来客は皆さん、ご自分のシステムがチャンデバ・マルチアンプですので、ある意味「聴き慣れた音」でしょうから、評価は悪くなかったのでしょうが、もし、Sonus大好き派の方が聴いたら、恐らく、泣き崩れる(笑)か怒り出す(汗)と思います・・・まあ、自分的には、むしろ最近影が薄くなっていたAmator IIIのレゾン・デートルが強調される結果となったので、まあ同じ部屋に2セット持つ意味を再確認できたかな、と前向きに受け止めています(笑)。

2024年3月18日 (月)

ART研究第4弾―定在波のDipを低減?

デノマラの新リーズのAVアンプ群に搭載されているDirac Liveに、いよいよ、最新Add-onである、ARTが来月にも搭載されそうとの情報が、『価格コム』で知り合ったtMo971さんよりこのブログにもたらされました。

 

 

実は、今、チャンデバ・マルチアンプ化プロジェクトをやっているために、音楽を聴く時間より、スイープ音(測定用)を聞いている時間の方が伊豆では長い状態がしばらく続いているのですが(汗)、偶然にも、このARTの威力というか効果を、私のような素人の「測定」でも目に見える形で検知したので、ちょっと紹介してみようと思います(念のため申し上げておきますが、私はデノマラやDirac Liveからびた一文ももらってません!)。

 

ART=Active Room Treatment(敢えて翻訳すれば、「能動的なお部屋のお手当て」かな?)とは何かについては、すでにこのブログで何度も紹介しています。

 

今回、tMo971さんが情報提供してくれた、Dirac Live® ART 設定ガイド」による定義を紹介すると、

 

「音質に悪影響を及ぼす不要な減衰時間を強力にコントロールする」とありますが、私の頭が悪いからかもしれませんが、この表現は正確ではないような気がします。<音質に悪影響を及ぼす不要なもの>って、「減衰時間」などと回りくどい書き方をせずに、「反射」と書いたらダメなんでしょうかね?

 

部屋という密閉空間に放たれた音は、直接音がいろいろな所に反射を繰り返して徐々に減衰していくので、この「減衰時間」を減らす、というのはすなわち、「反射」を減らすことと同じような気が…。まあ、揚げ足取りは止めておきます(笑)。

 

さて、この「反射」の中でも、最もオーディオファイルを悩ませ続けているのが、「定在波」と呼ばれる現象であることは論を待たないと思います。これは「反射」して跳ね返った音波同士の波長のタイミングがぴったり合うことから生じるもので、部屋の特定の場所でぴったり山が揃ってしまった周波数がPeak(腹)、ぴったり山がお互いにひっくりかえってしまった周波数がDip(節)というのも、よく知られているところですね。そして、このPeak Dipがどの周波数で発生し、それぞれが部屋のどこに来るのかは、部屋のサイズで決まるというのも、私がここにくどくどと書くまでもなく、そのメカニズムやシュミレーションまで紹介しているサイトは多数あります。

 

そして、もう一つよく知られていることですが、定在波のPeakは抑えることができるが、Dipは持ち上げることができないので、Dipは見て見ぬふり(聞いて聞かぬふり=笑)をしましょう、というのはどのルームアコースティックの教則本にも書いてありますよね。

 

これはPeakを抑えるのは、単純にその周波数の音を出さない(=絞る)ことで解決できるのに対し、Dipを持ち上げるのは、「ゼロに何を掛けてもゼロである」、という、小学生の時に習った掛け算の大原則(笑)からその周波数の出力を上げても無意味なことは自明です。Dip(節)というのは、そこではその周波数は完全に打ち消しあっていてNullという状態だからです(子供の頃SF小説でよく出てきた、「反物質」という言葉を思い出すなあ=笑)。

 

ゆえに世の中にルムアコ用のグッズは数々あれど、「定在波のDipを解消します!」とうたっているものは私の知る限りでは存在しません。どうしてもこれを行いたければ方法はただ二つ。1.部屋のサイズを変える(ただし別の周波数の定在波が部屋のどこかで発生する)2.リスニングポイントを動かす(これは実際は、PeakDipのポイントから逃げているだけで、「解消」しているわけではない)。

 

しかーし、このARTって、もしかすると今までほぼ不可能だった、定在波によるDipの解消(軽減)を可能にするのかも!、というのは、すでに書いた記事で紹介したARTのメカニズムを考えれば「あり得る」ことだ、とは思っていましたが…

 

下の写真を見てください。

Dirac-livef-002

下から緑、赤、青のf特が描かれています。どれも50Hz付近に鋭いDipがあり、これは測定したリスニングポイント(LP)におけるこの部屋の定在波の「節」であることが計算上もわかっています。さて、よくよく見ると、このDip、緑のf特が一番谷が深く、赤や青はそこまでは深くなっていないのに気が付くと思います。実はこれ、同じLPで測定した同じSPf特なんです。

 

ではなぜズレているのかというと、緑はDirac  Liveオフ、赤と青はそれぞれARTを動作させている(二つの違いはARTの設定を変えているため)のです。赤と青は全体的に青の方が音圧が高いですが、この二つのLineはほぼ同じ形になっており、50HzDipの浅さ加減は似ています。ARTが入っていない緑に比して、落ち込み方がかなり改善されているのが分かると思います。

 

これって、何気にすごいことだということがお分かりになりますでしょうか?定在波のDipというのは本来Nullなので何をやっても引き揚げようがないはずなんです。でもARTがこれを改善できているのは、壁に反射して戻ってくるはずの50Hzの音波を、LPに<来る前に打ち消している>からなんです。つまりLPで「50Hzへの刺客」となるはずの180°位相の異なる50Hzの波に対し、そこへ来る前に「刺客への刺客」を送り込んでいるのがARTなんですよ!すごくないですか!!!

 

先に紹介した「設定ガイド」には、「サポートスピーカーグループを割り当てることで全てのスピーカーを協調させて室内音響を最適化します」とさらっと書いてありますが、この「室内音響の最適化」の中には、「定在波によるLPでのDipを低減する」効果が含まれているようです。

 

実際になぜ、私がこのことに気が付いたかというと、「測定」してから気が付いたのではないのです。ARTOnにすると、コントラバスのある音がはっきりする音源があったからなんです。私は音楽的な素養が無いので、50Hzがドレミのどれなのかはわかりませんが(汗)、あるJazzの曲で、「あれっ、なぜかARTで低音が増強された感じがする、変だな?」と思ったんですよ。

 

拙宅ではすでに何人かの方に、StormAVプリでARTを適用したものと、そうでないものとの比較試聴をしていただいています。その感想は、「低域が締まったね」とポジティブに捉える方と、「低域が痩せたね」とネガティブに捉える方が混在しているのですが、「締まったね」という方でも、「低域が増強された」とまで感じる方はこれまでほとんどいなかったのです。

 

だから私も最初にARTオンで「低域が増強された」と感じたときは、「何か設定を間違えたかな?」と思ったほどです。でも、ソースを変えて別の曲を聴いたら、「あ、この曲の低域は<増強>されていない。締まって、痩せただけだ」と気が付き、変だな、何が起きているのかな?と思い、そこで測定をしてみたというわけです。そしてこのf特を見比べて、初めてARTが「何をしているのか」が分かったというわけです。

 

最後に、オマケです。今回の実験で気が付いたのですが、ARTというのは、SWを使っていなくても適用可能なんですよ。ARTの前に開発されたAdd-onである、DLBCDirac Live Bass Control)は、SWを他のSPと統合する機能なので、SWレスだと無用の長物(下記2枚目の写真にあるように、同じAVプリなのに、片方=SWレスのセッティング=では、設定画面でDLBCを選ぶことすらできない)なのですが、このARTSWが無くても、他のSPのウーファーを動員して、「刺客」を送り込むことができるようです(ちなみに、2枚目の画面は5.0chセッティング、つまりSPは5台。Minimumの2台でもARTが使えるかどうかは不明。ただし、2台ではなく「2ch再生」であれば、拙宅では、16台のサポート=刺客=SPが入るARTシステムで聴ける)。

Dlbcart-sw

Art-only ただし、ARTの動作周波数帯域は150Hz以下であり、SW以外のSPはデフォルトでは50HzまでしかARTに動員しない設定になっています。これは恐らく、かなり大型のウーファーを持つSPでも50Hz以下をART用に使わせると、「ドップラー歪み」と呼ばれる音質を劣化させる現象が50Hz以上で起きるため、それを避けようとしていると思われます。つまり、50Hz以下の定在波のDipを低減したければ、やはり、50Hzからかなり下まで再生可能なSW(しかもできれば複数)が必要だと思われます。ARTのメカニズムを考えれば、原理的にみて「刺客」は多ければ多いほどいいので、50150Hzの十分な再生能力のあるウーファーを備えたSPのマルチチャンネルシステムと、50Hz以下の十分な再生能力のあるマルチSWシステムの組み合わせが、最もARTの威力を発揮できることは間違いありません。

 

Dirac Liveを搭載した新シリーズのデノマラのAVアンプ群が、すべてSW4台まで接続できるようにしているのは、もしかすると(笑)、設計当初からこのARTの利用を想定していたのでは、とすら思えるのです!(ちなみに、私のStormですと、最大32台のSWの接続が可能です=ただしこの場合、SW以外のSPがつなげなくなりますが!=なんじゃそれ?爆)

2023年12月23日 (土)

書斎のDenon 3800に、ついにDLBCを導入し、SW2台体制にしました!

今回は、久しぶりに、東京の書斎関連ネタです(こっちには手間もカネもかけてないので、ネタに乏しい・・・汗)。

 

以前、3800DLRCを導入した時にも記事に書きましたが、私は最初から今回のDLBCまで導入をするためにこの3800を購入したわけで、その意味では、ハード・ソフト的には一応の現時点での書斎の「到達点」には来たかな、と思っています。まだ、これからターゲットカーブの調整など、様々な使いこなしの楽しみは残っていますが、取り急ぎ、ご報告です。

 

今回のDLBCへのアップグレードにはいささかトラブルがありましたが、まあ、それはここでは重要ではないので(『価格Com』で報告しておきました)。おさらいですが、これまで導入していたDLRCRoom Control)と呼ばれる、「すっぴんの」Dirac Liveに、このBCBass Control)は何をAdd-onするかというと、一言で言えば、「SWをシステムに統合する」機能です。詳しくは、『価格Com』での質疑をお読みいただきたいのですが、ポイントとなる部分だけを以下に引用しておきます(著作権は自分自身です=笑)


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これはDirac LiveStorm Audioのエンジニア二人による解説ビデオの受け売りですが、DLBCが付加した機能は、「SWを他のSPとシームレスに統合する」ことです。従来のDLRCは、SWの位相やf特、音圧の補正はしますが、「あくまで単体での調整」にとどまっているそうです。ゆえにこれが実際の部屋の中で、他のSPと干渉しないように、オーナー自らが「手動による工夫が必要である」としています(具体的には、SWの置き場所を変えたりすることだと私は理解しています)。

これに対してBCは、リスニングポイント(LP)における全SPが再生する低域特性をすべて収集したうえで、それらを統合的にコントロールする、としています。実際、オルガンの低域を再生していると、DLRCだと、ある音域から急に低音が膨らむ(音源が大きくなったような感覚)ことがありますが、BCにするとそのような現象が起こりにくくなります。これはメインSPからSWへの受け渡しの周波数帯域における調整がシームレスに行われているためだと思います。

次に、「またSW1個でも効果はあるのでしょうか?」についてですが、もちろん、上記のような効果はSWがあれば(つまり再生音域の「受け渡し」があれば)発生します。ただし、映画では、SWありの場合、AVアンプの設定によってはLFE収録音(=地響きのような音など)だけがSWから出るようになっており、この場合は、他のSPと<統合>する意味がないので、DLBCの威力は発揮されません(先のレスで、音楽再生では「連続的に音程が可変する」ことを強調したのはこの意味です)。

SWの台数については、Dirac のエンジニアもはっきりと、「複数SWの場合がより効果的である」と述べていますが、これはSW間の位相のずれもDLBCは補正するので、SWが多い方が均一な低音を部屋に満たすことができる(ご存じと思いますが、低音は定在波が立ちやすく、場所によって粗密が出ます)ためです。「映画(音楽も)は絶対一人でしか楽しまない」のであれば、不要かもしれませんが(笑)。また副次的な効果として、SWを増やせば、一台当たりの再生負担が減るので、歪の発生が抑えられ、音質面で有利(音楽再生ではむしろこちらの方が重要な点)です。私はDLBCを導入した時に、それまで2台あったSWにさらに2台追加しました(笑)。DLBCなしでは、4台もSWを入れると音が干渉しあって、山と谷が大発生し、とても手動では収集できない音響空間になりますが、DLBCOnにしたその効果は、経験すれば驚愕ものです(ただし、音楽再生の品質の向上です。映画の爆発音なら、1台で当該空間に必要な音量が出せる能力があるのなら、むしろ多少歪んだ方が迫力が出るかもです=汗)。

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さて、今回のDLBCの導入前に、一つSWを入れ替えました。元々は、伊豆でかつて3台持っていたうちの一台の、Fostex 250Aと、この3800が複数SWに対応しているというので遊びで試しにつないでいた、パイオニアのPassive SW 「SLW500」(長らく、家の物置に転がっていた=汗)の2台体制でした。

 

さすがにこのPassiveはバスレフで音がひどいだけでなく、50Hzも出せないぐらいの能力しかなく、すぐに底付きしてました(汗)ので、全く戦力にはならずの状態でした。

 

今度導入するDLBCは、SW1台用のSingleと、複数台対応可のMultiに分かれており、お値段が違うのですが、複数SWの効果を知るものとしては迷うことなくMultiを選択。こうなるとまともなSW2台以上入れないとMultiを買った意味が無くなるので、当初は書斎用にかわいいのを一台買おうかな、と思っていたのです。

 

そんな中、実は最近、伊豆のメインシステムのSW4台体制を見直しているところだったので(詳細は後日、別稿にて)、どうせならば新しい一台は伊豆に入れて、向こうで不要になったFostexを書斎に移動しようと思いつきました。その一台は今注文中でまだ未到着なのですが()、いち早く、書斎のDLBCのために、Fostexを運び入れました。

 

写真1Img_0064

 

はっきり言って、部屋が狭すぎてSW二台なんて置く場所が無い()。でもどうしても2台入れたい! で、苦肉の策として、元々1台はLスピーカーの裏の机の下(=写真では暗くて見えない=汗)、もう一台はLP真後ろの小物台の下に置きました(さすがにインシュレーターをふんだんに使って共振対策はしましたよ!)。ちなみに、この台の上にあるヤマハのSPは、Atmos(映画)再生時のサラウンドバック(シングル・MONO)です。

写真2Img_0063

フロントのSWはまだLPを覗いていますが、リアのSWは完全に壁に向いて設置されています。でも、このような「ここに、このようにしかSWを置けない」状態で威力を発揮するのがDLBCなんです!!!(最新のデノマラAVアンプのウリの一つである、複数SWの「指向性モード」はDLBCと共存できないようです)。

 

ちなみに、Dirac によるSWの測定結果は以下の通りです。

写真3Swf

同じ機種にもかかわらず、40Hz付近にDipがある方が、リアSWです。恐らく正面の壁との反射で定在波の「節」になっているのでしょう。SW1台使いの場合は、これは「泣き寝入り」するしかないところですが、ここはSW2台体制の強みで、もう一台の方で十分カバーできますね。

 

改めて今回キャリブレーションをして、つくづく「いつもながらヒドイf特だな」、と思うのが、Cなんですよね。

写真CfこれはSW2台のf特にCのf特を重ねたところなんですが、70Hz付近と270Hz付近にDipがあります。270Hz付近のDipは、例のSonetto VIIIの逆相接続問題」のせいです(泣)。

 

70Hz付近は、以前、taketoさんが書斎にお見えになられた時にもおっしゃっておられましたが、これは部屋の縦位置の反射による定在波の「節」になっている影響です。これを解決するためには、CLPを前後に動かす、という物理的な方法しかないのですが・・・無理だわ()  Cの後ろにはほぼ接するように机が、LPの後ろには本棚が! じゃあ前に出せば?って、今ですら1.5MぐらいしかないC-LP間をこれ以上狭くしたら…2Wayの小型ブックシェルフならともかく、3WaySpeakersのフロア型なんで、これ以上どちらかを前に出したら目の前にSonetto VIIIが立ちふさがって、視覚的にも(笑) 「近接効果」 がひどくなって聴けたもんじゃない()

 

このSPは、東京の書斎では1台当たりの単価で計算すると最も高級品なのですが(汗)、その能力はかくも損なわれている(泣)ので、書斎においてはSonetto VIIIの徹底的なf特の補正は必須です。Dirac Live抜きでは碌な音が鳴らせません(最近、比較的条件の良い伊豆のシステムではf特他を補正しない方がいい音がする可能性を探りたいと、マニュアル修正が可能かもと実験中。これもまた別稿にて)。

 

さて、肝心の音ですが、いずれDLRCを導入した時と同じ音源を聴いて精緻な比較をしてみたいと思いますが、現状、Nakuraのバスマリンバだけ同じ音源がこちらにありますので聴いてみました。

 

まあ、予想通りです。DLRC導入時よりさらに「まともな音」になってます()。低域がきっちりとコントロールされ、「音楽の一部」になっています。私はもう20年以上SW相手に取り組んでいますが、SWというのは「音楽再生用」にする場合はセッティングが難しいんですよね(ダイナの島さんも、「2chでは勧めない」と断言してました)。音楽の中に「統合」するのがとても困難で、映画のLFEのように、「私、ここで頑張ってます!」感がどうしても出るものなんです。映画ならそれでいいんですが、音楽ではダメなんですよね、これでは。EDMならいいでしょうが、Classicではコントラバスもオルガンもピアノも、その最低域はその楽器の「一部」として聴こえなければなりません。

 

20年SWを相手に苦労してきて、数年前、DLBC付きのStormのAVプリを導入した時に、それまで1台でも苦労していたSWを、いとも簡単に2台まとめて綺麗に伊豆で再生する「音楽の一部」に繰り入れたのを聴いたその日から、書斎でも必ずいつかDLBCを入れようと思って来ました。

 

今回、晴れてDLBCを得て、SPは寄せ集めで、部屋の対称性が全くないという、「最悪のマルチ環境」である東京の書斎でも、ようやく「一つの、まとまった再生機器」からの音になりました()

2023年11月23日 (木)

ART研究第三弾 f特の微調整をしてみました

Storm AudioのAVプリを持つ者の、「特権」(笑)に付随する「義務」(汗)としての、人柱報告第三弾となります。

 

今回の課題は、先日、伊豆の拙宅にお見えになったX1おやじさんからいただいたものです。X1おやじさんは、もはやここのブログの常連さんには改めてご紹介する必要はないのですが(汗)、恐ろしいほどの(笑)ハイエンドシステムで2ch再生環境とAuro-3D再生環境を別個にお持ちの方です。

http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2023/08/post-2133ab.html

http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2023/05/post-3c5d50.html

 

拙宅への訪問記は、Phil-Mにお書きいただいたのですが、そこのコメント欄でも紹介しましたが、彼のART試聴に対するコメントに、「中高域がちょっと詰まる感じがする」というのがありました。今まで自身も含め、ARTを他の補正モード(例えばDLBC)と比較する場合、耳はどうしても「低域」のみに行っており、「中高域」の音の変化には注意も払っておりませんでしたが、言われてみて、改めて自分でも何度も、いろいろな音源で聴き比べてみると、確かに、そのような現象が私の駄耳でも確認できたのです。

 

具体的には、バイオリンの、キュッと鳴らす部分(適切な用語があると思いますが、無教養なので・・・汗)の「エッジ」感の鋭さや、シンバルの金属と金属の衝突(これも専門用語がありそう=笑)の瞬間の「固さ感」などが、やや丸くなるような面があります。これが、X1さんのいう、「オケにおける中高音の迫力やVividさが落ちている」という印象につながっていると判断しました。

 

ただ、Dirac Liveの肩を少しは持つと(決して何かもらっているわけではありませんが・・・笑)、先のバイオリンの「エッジ」パート後の、そして同様にシンバルの衝撃後の、音の響きがホール全体に吸い込まれていく<余韻>の部分に注目すると、私の耳にはARTありの方がより遠近感の有る減衰を表現できているように聴こえました(X1さんの指摘のお陰で、今回中高域に集中して真剣聴きするまで、この違いには気が付かなかった…)。

 

こうなると、ARTオーナーとして当然考えることは、「<余韻>表現の良さを残しつつ、中高域にもう少しメリハリをつけられないか」、ということになりますよね(笑)。

 

そこで最も手っ取り早い方法として思いついたのが、先にTomyさんに「禁断の手段」(私は元来Default派=笑)として手ほどきを受けた、Dirac Liveによるf特の補正カーブを手動で変更するというテクニックです。

 

といってもこういう「音響理論」に全く暗い私なので(汗)、最初はTomyさんに連絡して教えを請おうかとも思ったのですが、「可逆的なんだし、そんなもん、まずは自分でやってみなはれ」(彼は関西人!)と言われそうだなと思いなおし(笑)、ちょっとネットなどで調べてみました。

すると、「高域にアクセントが欲しければ5Khz近辺を持ち上げるといい」というような記述が多かったので、ちょっとやってみたのですが、どうもシンバル音がシャリシャリしてしまう。自分としては、あまりシャリっとした感じは好きではないので、「どないしよか?」(Tomyさん風に=決してからかっていません!むしろ敬意を込めてます!!!)と試行錯誤をしていると、5Khz近辺を持ちあげたまま、1Khzあたりも少し持ち上げると、不思議なことにシンバルのシャリ音の強調感がやや薄れ、バイオリンは活き活きとした力強い感じが出てきたのです。

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禁断の(笑)f特いじりに手を染めたので、ついでにこれまでART補正だと少し気になっていた、FostexSWから出る、fatな中低音(f特を見るとわかるように、ELACSWに比してずいぶん高い周波数=3KHz?=まで再生できるようだが、どうもそのあたりは音質が良くないような気がしていた)をカットすべく、思い切って60Hz付近以上を急激に減衰させてみた(注:DLBCだと設定できる、SWとのクロスオーバー値が、なぜかARTだと設定できない仕様になっている。つまりARTを使うならSWを「どこから活用するか」は、Defaultだと<お任せ>になるようなのだ!)。

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時間が限られていたので、これ以上の探索は中止し、このf特でまずはいくつかの音源を聴きなおしてみました。

感想は、現状、被験者は私一人なので、主観的なものに留まりますが(汗)、かなり改善されました(実はその後、Sonetto IからIIに換装したサラウンドハイトの威力をさらに高めるため、ここだけ100Hz前後のf特も持ち上げてみた=Dirac Liveはグループごとにf特を別々に調整できる)。これはなるべく早く第三者による確認をお願いしたいと思っております(できれば、もう一度X1おやじさんに来てほしい!=笑)。

 

実は今回の「調整」で、副次的に改善されたと思われる部分があります。それは「SWのボリュームを上げられるようになった」という点です。「なんだよ、f特で高域を持ち上げておいて、そりゃただのドンシャリ化か?」と思われるかもしれませんが、さにあらず(笑)。

 

先に書いたように、これまではFostexSWから中音域まで音が出ていたので、どうもそれが気に入らず、Fostexのボリュームをかなり絞ってキャリブレーションしていたのです。そうすると、Fostexの音量を基準にして他のSPの音圧を調整してしまうため、システム全体のボリュームが極めて低いレベルになっていたのです(0㏈でも聴けるぐらい…)。

 

今回、Fostexが再生する帯域を60Hz以下にしたことで、Fostexのボリュームを上げても「音が汚されている」感じがなくなったため、かなり高めのボリューム位置にして再度キャリブレーションをしたところ、全体の音量の上限値が相当上がったのです(つまり、これまではFostexの最大再生可能音量に合わせて、それ以外のSPへのパワーアンプからの出力を極めて抑える設定になっていた。-20㏈とか!)。これにより、Stormのプリのボリューム位置が「-20㏈」ぐらいでも相当な大音量となりました。

 

私は理論的に詳しくないのですが、もしかすると今回、音質が「改善」したと感じる要因の一つに、「最大音量の天井が上がった」こともあるかもしれません。

 

実はこれによる「副作用」も多少感じているところがあり・・・オーディオあるあるの、「イタチごっこ」ってやつですかねぇ(汗)・・・これについては、解決法を見つけたらまたご報告したいと思います。

2023年11月 6日 (月)

サラウンドバックと、サラウンドハイト、強化するならどっち?

二週連続で、伊豆の拙宅に週末お泊りでお客様をお招きしました。最初はモンテモンテさん、次週がX1おやじさんとDonguriさん。前者は、このところAuro-Maticに目覚めた(?)Jazz聴き、後者のお二人はクラシックファンですが、X1さんは2chが主力、DonguriさんはAuro-3D(Matic)が主力という、異なる「耳」を持つお三方です。

 

それぞれのご感想は、それぞれが好きなようにお書きになる(笑)でしょうから(モンテモンテさんは、すでにブログに「三部作」を書いていただきました!)、ここでは、このお三方をお迎えするために私がした準備(?)を報告したいと思います。

 

「準備」と言いましても、部屋を掃除した、とか布団を干した、という話ではもちろんなく(汗)、このブログのテーマに相応しいオーディオ的な準備です。これは今夏のフォッサマグアツアーでも観察されたのですが、「オーオタ」というのは悲しい性があるようで(笑)、「前々から気になっていることがある。いつかはやろうと思っていたがなかなか腰が上がらない」という<懸案>がくすぶっている中で、「オフ会」の予定が入ると、急にやる気になるものですよねぇ(笑)。

 

今回、私もこのところちょっと気になっていた二つのテーマ(1.上方後方の低域の強化、2.ART環境の整備)のそれぞれに関して、「あれをやってみたらどうかな…」と常々思っていたことがあったのですが、「新たに入手すべきものがあるし、かつ、めんどくさい作業を伴う」(爆)ために後回しにしていたのです。

 

まず、1の上方後方の低域の強化ですが、過日、SWを2階に設置した!」という報告をしましたが、残念ながらそれだけでは「まだ、不十分だなあ。どうも<低音による上方の包まれ感>が足りない。他になにか追加的な手段はないか?」と考え続けていました(元々、前方は上下6台のSPが形成する「平面波」効果があるので、前方上方のSWはそこまで効果的ではなかったかも…)。ある時、「SWをもう一台二階に設置」、というハードルが高く、かつ先例がないため効果が不確実な方法「ではなく」、上方・後方のサラウンド用のSPを強化するほうが、確実だし簡単では?と思いついたのです。

P(ハイトセンターの奥に見えるのが、2F SW!電源コードを工夫して、当初の左サイドより、センターに移動させることができました!)

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流石に、「じゃあ、もう1セットSonetto VIII買うか!」というノリは金額的にもスペース的にも無理なので(汗)、前々から存在は知っていて気になっていたものの、その「金額差に納得ができず」、見て見ぬふりを続けていた、Sonusの同じSonettoシリーズの中の、「II」(=2番)を、モンテモンテさんがいらっしゃる直前に(笑)、ワンペア買ってしまいました。

 

これ、今まで「まあ、こっちのほうが「I」より多少は良いのだろうなあ」とは思いつつも、なぜ入手を見送っていたかというと、「I」と「II」って、ほとんど見た目が同じで、かつ、カタログ上の性能差は、「たった3Hz」(再生可能最低周波数)しかないのに、結構なお値段の差があるのですよ!(下世話なので金額は書きませんが…)

 

これが10Hzぐらい差があるのであれば、はっきり言って最初から「II」で買い揃えていたと思います。でも「3Hzの差なんて、自分の駄耳ではわからないだろう」と思いこんでいて最初から購入対象から外しており、これまでショップで試聴すらしたこともなかったのです(やっぱり不人気らしく、IIは置いてない店も多いし)。

 

でも、それまでサラウンドバック(リア)に使っていた、Venere 1.5よりは8Hzという差があるので、「さすがにこれと入れ替えれば、それなりに違いが出るだろう」「サラウンドバックの低域が強化されれば、フロントの2Fに設置したSWと相まって、上方の低域に包まれる感じが出るはず」と試聴することもなく自分を納得させ(笑)、モンテモンテさんが来る直前に到着し、彼が伊豆に来る「前日にわざわざ」こっそり伊豆まで往復してセッティングする始末…(家族には言えない話=汗)。

 

ちなみに、3者のカタログスペックは以下の通り(御存知の通り、「周波数特性」というのは、マイナス何デシベルまでで測定するかで<公表値>は大きく異なるが、さすがにこの3台は同じメーカーのものだから、比較の対称性は取れているはず)。

 

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Sonetto

・形式

 2ウェイ2スピーカー ベンテッドボックス・ブックシェルフ型

・使用ドライバーユニット

 高域:29mm口径 アローポイント DADシルク・ソフトドーム型

 中低域:165mm口径ナチュラルファイバー・ダイアフラム・コーン型

・クロスオーバー周波数

 2.65kHz

・周波数特性

 42Hz 25,000Hz

・出力音圧レベル

 87dB/W/m

・公称インピーダンス

 4Ω

・最大入力電圧

 20Vrms

・スピーカー端子

 バイワイヤリング対応(HIGH / LOW

・寸法(突起部含む)

 幅250×高さ397×奥行336mm

・重量(1本)

 8.4kg(スタンド含まず)

 

Sonetto

・形式

 2ウェイ2スピーカー ベンテッドボックス・ブックシェルフ型

・使用ドライバーユニット

 高域:29mm口径 アローポイント DADシルク・ソフトドーム型

 中低域:150mm口径ナチュラルファイバー・ダイアフラム・コーン型

・クロスオーバー周波数

 2.5kHz

・周波数特性

 45Hz 25,000Hz

・出力音圧レベル

 87dB/W/m

・公称インピーダンス

 4Ω

・最大入力電圧

 20Vrms

・スピーカー端子

 バイワイヤリング対応(HIGH / LOW

・寸法(突起部含む)

 幅219×高さ359×奥行315mm

・重量(1本)

 7kg(スタンド含まず)

 

Venere1.5

・形式:2ウェイバスレフブックシェルフ型

・ツイーター:29mm 高解像度・シルクソフトドーム型

・ミッドレンジ:-

・ウーファー:1 × 150mm コーン型

・クロスオーバー周波数:2,000Hz

・周波数特性:50Hz25,000Hz

・出力音圧レベル:85dB/W/m

・インピーダンス:6Ω

・推奨アンプ出力:30W-150W  Without Clipping

・合計外形寸法:H394×W206×D300mm(Venere Stand装着時:H1,076×W276×D382mm)

・重量:6.0kg(1)

・仕上げ:Black / White (ピアノフィニッシュ)、及び Wood 仕上げ

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さて、モンテモンテさんがお見えになった時点では、まずはSonetto IIの実力を試したいということもあって、比較的作業の容易な、サラウンドバックのVenere1.5と入れ替えてみました。これには一応狙いがあって、今夏のフォッサマグナツアーの課題曲に入れていた『Polarity』を「より効果的に」再生しようというもの。モンテモンテさんはどちらかというとJazz聴きなので、このJazz Trioのアルバムには興味があるだろうと思ったことに加え、7.1.4録音となっているこの曲は、LP後方にドラムが配してあり、サラウンドバックが大活躍するという、ちょっと珍しい音源だからです。

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果たして、こちらの目論見通り、Venere1.5とは比べ物にならないぐらい、この曲の「狙い」はオーディエンスによく伝わることとなりました(好き嫌いは別=汗)。さすがにサラウンドバックに巨大なグランドスラムを置いているX1邸とはまだ比べ物にならないが(汗)、それでもやはり8Hzの差は思ったより大きかったです。元々、Sonettoの音作りの方が、Venereより「派手目」(ツイーターも異なっている)で、JazzRockもそこそこ聴ける元気のいいSPなので、低域が増強されたことと相まって、Venereよりも魅力的なドラムの再生音となりました。

 

しかーし、私が今回、Sonetto IIを入手した「真の狙い」は、実は別のところにありまして()。はっきり言って、サラウンドバックに重要な音源が振られているようなサラウンド音楽は、私の知る限りこの『Polarity』ぐらいです(汗=一部の人工的なRockPink Floydのような=と映画は別)。私が目指したものは、「低域による上方空間の包まれ感」の再現で、これがかなりのレベルで再現できると教会音楽などのRealityが増すことに、フォッサマグナツアーの軽男邸で「覚醒」してしまったことはすでに何度も書いています()

 

前述したように、その対策としてすでに正面のらせん階段の踊り場には、FostexSWを移動済みです。しかし、体感的にはまだ<包まれ切っていない>(汗)。「やはり左右・後方からの低域も強化しなければだめなんだろうな」と狙いを定め、このSonetto IIをサラウンドハイトに使うことを当初から目論んでいたのです。確認のため、Sonetto IIをサランドバックにしたセッティングで『花火』や『バスマリンバ』『Magnificat』など、「上方にも低音の囲まれ感が欲しい」ソースを聴いてみましたが、かなり良くなったものの、やはりもう一つ(そもそも、元々、LP真後ろ「下」にはSWがある。欲しいのは「上」)。これはやはり、やるしかない、と(汗)。

 

しかし、五体満足の方はお分かりにならないかもと思いますが(笑)、ハシゴに登ってのSP取り換え作業は、腰の悪い私は「想像しただけで体が拒否」します(汗)。ただ、「第二波」のお客様お二人はクラファンなので、ホール感(間接音)の音にはより敏感なのが分かっていたため、「どうせいずれやるなら」と重い腰(痛い腰=汗)を上げました・・・。

 

PImg_2394

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これまで設置していたI(上の写真)IIに取り替え。よく見るとサイズが一回り大きくなったのがおわかりになると思います。

 

で、ここに使っていたIをサラウンドバックへ。これでついに、伊豆のAuroシステムにおいて、そのフルチャンネルである13あるSPのうち、TOP(VOG)を除き、全てSonusSonettoシリーズになった!!!(前はSonusでは揃えていたものの、EAIIIとかVenereとか異なるシリーズが混在…) ようやく、という感じであるが、12台がすべて「同じツイーター」になったということ。それが私の耳でどれだけ違いがわかるのかはともかく(汗)、気分的には、イイ(爆)。

 

P <モンテモンテさんがお見えになったときのソファの位置=記事冒頭から2枚目の写真=では、EAIIIが押し込められて、自由に動かせなかったため、左サイドのソファをもとの位置に戻しました…ここにあったSWを「踊り場」に追いやったおかげでスペースに余裕が>

Img_0102

 

当然、Venere 1.5が余る(笑)。しかし東京にも伊豆にも、もうこれ以上、SPシステムを置く場所はない(汗)。

 

こうなると、このVenere 1.5を売却して、小銭を稼ぐ、というエコな(ケチ、ともいう=笑)手も考えたものの、ここで、もう一つ<前からちょっとだけ、気になっていた>ことが頭をもたげてきた。

 

この位置のSPは、これまでAuroシステムには使用しない、ATMOSで言うところの「トップリア」であったため、はっきり言ってどうでもいい(笑)と思っていて、20年前にこの家を作った時に、母親に「映画を見せるため」にヤマハで揃えた安物のまま。確かに今も、ATMOSで映画などを再生する際には使っているし、厳密に考えればATMOSフォーマットの音楽ソフト(カラヤンとかジョン・ウィリアムス?)を聴く際には鳴っているのだろうけど、「Auro命」(笑)の私にとっては、これまで「ここにカネと手間をかけるのは無駄」という認識だった。

 

しかし、ARTの導入とともに、状況が一変!すでに何度も書いているが、このARTという技術は、「音楽再生に使っていないSPも動員する」仕組みになっている。つ・ま・り、拙宅でARTモードでAuro-3DMatic)を聴く際に、このヤマハの安物の()トップリアも150Hz以下だけ、低音の音質の改善のために「仕事」をしてくれるようになったのである。

 

すると気になってくるのは、このSPだけメーカー(音色)が違うことと、聴感上、低音再生能力がやや低い気がすることである(この問題については、私が信頼する元エンジニア三羽烏(笑)の、K&Kさん、Tomyさん、Myuさんにも相談した)。

念のため、Specを調べてみた。

 

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YAMAHA NS-4HX

 

方式       2ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式・ブックシェルフ型・防磁設計

使用ユニット     

低域用:13cmコーン型x2

高域用:3cmドーム型

再生周波数帯域   55Hz50kHz  ―10dB

インピーダンス   6Ω

出力音圧レベル   91dB/2.83V/m

許容入力              100W

最大入力              300W

クロスオーバー周波数      2.5kHz

外形寸法              186x高さ500x奥行257mm

重量       11.5kg

・・・・・・・・・・・・・・

 

ソナスの表示がどのレベルまでで切って計測しているのかが分からないが、カタログ上はこちらの方が、Venere1.5より5Hz、低音再生能力の限界値が高い。ARTは低音の音質改善に使う機能なので、言うまでもなくここの数値は低い方が望ましい。音質の違いでは、もっとも影響の大きいツイーターの素材が、ヤマハはアルミであるのに対し、うちのソナスはすべてシルクである。もっとも、ARTだけを考えれば、ツイーターの再生帯域は使用しないので関係ないのだが、まあ、たまにはATMOS音源の音楽(映画音楽含む?)も聴くので、揃っていた方が「気分的には=笑」いいに決まっている。

 

唯一の問題は、ハシゴに登らなければできない「肉体労働」だということ・・・。で、躊躇していたのだが、サラウンドハイトをSonetto IIに入れ替える際に、ハシゴを部屋に入れたので、「ついでに」と。

 

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見た目はちょっとおしゃれになったが()、ARTへの効果のほどはよくわからん(爆)。まあ、気分気分。

 

ということで、結局、今回行った「SPの入れ替え」作業は、Sonetto II(新規導入)→サラウンドハイト→Sonetto I→サラウンドバック→Venere1.5→トップリア→Yamaha(余り)。

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時間切れでぶっつけ本番になってしまい(X1さん、Donguriさんすみません…)、まだ精密には聴き込んでいないが、ちょい聴きで感じた効果としては、1.なんとなく、上方の低音による包まれ感が強化されたような気が・・・2.Auroシステムを構成する13chのうち、12chのツイーターが同一になったことで、音が澄んだような気が・・・3.ちょっとモダンなデザインのSPが後ろの壁に吊られたことによる、部屋のオシャレ度がUPしたような気が・・・(本当はARTの効率UPのハズ…)4.全チャンネル、9.7.1(SW除く)の17chのうち、16chがすべてソナスになったことによる、Complete感・・・

 

つまり、いずれも気分的なものばかり?(爆) でもそれでいいのだ!音は「脳」で聴くものだから、「気分=脳の反応」がポジティブに変化するということは、物理的な音は変わらずとも、「認知上の音」は確実に変わる()

 

今回はSPを入れ替えただけ。ARTも含め、この新セッティングの真価を発揮させるためには、もう少し使いこなしを煮詰める必要がある。試行錯誤は続く・・・

2023年9月24日 (日)

Dirac Liveは騙しちゃダメ、絶対!(笑)

今週末はTomyさんが伊豆の拙宅にお見えになり、先ほどお帰りになられました。今回の彼の訪問の目玉は、「疑似フォッサマグナツアー」と「ARTってどうよ?」の二本立てだったのですが、それらはご本人から後程ご報告があると思います。それ以外にも、Tomyさんはご存知の通り、元エンジニアで理論派の方なので、いろいろな「実験」を二人でしました。私的にはすでに自分なりの結論は出ているものの、客観的に第三者の「追試」を受けたいと思うものがいくつかありましたが、今回、すべての「追試」が終了しましたので、二人の意見・感想・聴感が一致したもののうち、特にいち早くCorrectionを入れておかないとマズイ(汗)と思う、表題の件だけを急ぎご報告します。

 

私は、この前の記事、Small steps, but Giant steps for ??? ―ARTの導入から派生して取り組んだ変更点」で、「2.「先行音効果」をより意識したセッティング」という項目を立てました。

 

ここで試してみたことは、

 

>実際にLCRをすべて15センチほど遠くに配置(上記写真)してキャリブレーションをした上で、「正しい」位置(白テープの位置。つまりLPにより近く)に聴くときは戻したのである。こうすることでDirac Liveを「騙し」(笑)、LCRの音をHLCRの音より「確実に先に」LPに届くようにした。

 

というもので、いわゆるAuro-3Dのゆるぎない定位感の要の理論である、「先行音効果」(Haas効果)を、<Dirac Liveを使うことで時間的に距離補正をしてしまうとその効果を損なっているのではないか>、との問題意識の下、「Dirac Liveを騙して」(笑)、LCRの音をHLCRより少し早くLPにおける耳に届くようにしてみたというお話でした。

 

これに対し、モンテモンテさんから、「位相が狂ってしまうのでないかと懸念」する、という鋭いご指摘が来まして(汗)、まあ一応、私もそれには自覚的だったので、以下のような回答で逃げて(笑)おきました。

 

>「スピーカー間の位相整合」と、「先行音効果」の天秤は、私もまだ今回新たなセッティングを試してみたばかりで、全く聴き込んでいないので現時点では判断がついておりません。

 

ということで、今回、Tomyさんの耳もお借りして、じっくり聴きこんでみました。

 

結論を先に言いますと、表題通りです(汗)。

 

具体的に言うと、二人でNormalなキャリブレーションで生成した「通常セット」と、上記Irregularな形で生成した「騙しセット」による、比較試聴をしたわけです。比較に使ったソフトは、すでに実験済みだった私が最もはっきり差が分かりやすかったと思う、入交氏謹製の、Nakuraの関口教会のマリンバによる演奏を選びました。いうまでもなく、これは非売品で、13ch(全チャンネルハイレゾ)という未だこの世に音楽ソフトとしては存在しない、Auro-3Dのフルスペックバージョンです。

 

「騙しセット」では、「通常セット」に比して、この曲の持つ空間感(広がり、余韻など)や、空気が澄んだパリッとした感じなどが大きく損なわれていました。同じ感想を、Tomyさんも表明されました(もちろんTomyさんには何も知らせず、AとBという呼称で聴き比べていただいて感想を述べてもらいました)。

 

この違いは、すっかり「位相耳」となった私は(笑)すぐに何が原因かわかりました。モンテモンテさんが正解です!

 

LPにおいて、全13ch(+4SW)の位相をDirac Live(+BC)がせっかく揃えているのに、ワタシがやったことは、DLBCがきれいに揃えた積み木を動かしたわけです(汗)。『ええっ?15cm動かしたんならそう言ってよ』(モンテモンテさんのコメント)という、Dirac Liveさんの「怒り」が聞こえてきそうなヒドイ音になりました(笑)。

 

前にも書いたように、LCRの各スピーカーの中にある5つのスピーカーユニット(Sonetto VIIIは3ウーファーの3Way)の位相を整合させた効果はスピーカーの位置を変更しても理論的には変わらないのは確かだと思いますが、今回は他の10台(+4SW)との距離がすべて15センチずつずれたわけで、これは音速から計算して時間に換算すると、Tomyさんによると(頼り切り…)、たった0.1ミリ秒以下の差だそうですが、不思議なことに、人間の耳はそれを聴き分けるんですねぇ。

 

ちなみに、Dirac Live使いのTomyさんが、拙宅のStormの設定をいじって、「通常セット」から手動で0.2ミリ秒だけLCRの音が早く耳に届くように設定した「手動補正セット」(こんなことができるとは知らなかった…)も二人で聴いてみましたが、上記と全く同じ「違和感」がはっきりと感じられました。

 

ということは、少なくとも私のStormでは、モンテモンテさんが期待しているような、「Dirac Liveのキャリブレーション後、手動でデータをいじった場合に、Dirac Liveがそれに合わせて自動的に位相調整もしてくれる」という都合のいいことは起きないということになります(泣)。

 

では、肝心の先行音効果はどうか、というと、これも二人で試聴を繰り返したのですが、「騙しセット」や「手動補正セット」の両方とも、「通常セット」より先行音効果が顕著になっている、という現象は確認できませんでした。逆に言えば、「通常セット」(ハイト群に対しても時間的な距離補正をしている)でも、音像(注:「音場」ではない。いうまでもなく「音場」はAuroシステムは上に広がる)が上方に引っ張られることはみじんもなく、全く遜色ないHaas効果が出ているという結果となりました。

 

ということで、「先行音効果(Haas効果)」と「Dirac Liveによる距離補正=位相整合」の天秤に関する研究の結論としては、「あなたの、Dirac Liveを信じなさい!」ということとなりましたことを謹んでご報告しておきます(笑)。

2023年9月17日 (日)

Small steps, but Giant steps for ??? ―ARTの導入から派生して取り組んだ変更点

次の週末にTomyさんとMyuさんという、私が常日頃尊敬の眼差しで見上げている元エンジニアの自作・改造派()の大御所お二人が拙宅にお見えになるので、そのお迎えの準備をあれこれしていました。

 

最近、ARTを導入してから2chソースをMaticでは「なく」(汗)、そのままの2chで再生して聴いてみることが増えた(これはまずい傾向か…笑)ため、前から気になっていたことがいくつか顕在化しまして。

 

ちまい話(笑)ばかりですが意外に重要な使いこなしのヒントも含まれているかもしれませんので、今回はそれを報告します。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  • 第一層のLスピーカーの位置の修正と、それに伴う、LCRLRsの移動

 

拙宅ではLRの設置環境が左右非対称なのだが、どう見ても左側のSPと側面の壁が近すぎるな、と感じていた。ツイーターと壁との距離が50センチ弱しかない。世の中にはもっと壁と近接した位置にLRを置かざるを得ない方も少なくないとは思うが、いうまでもなく、SPが壁(床・天井を含む)に近接していればいるほど、反射による「音のゴースト」が起きる。故に、ハイエンドSPの取説などでは、「左右・後ろの壁から最低1M以上離せ」などと書いてあるが、どうしてもそれが無理な場合の回避方法は2つあり、一つは、吸音・反射材を部屋に張り巡らすこと。もう一つは、電子的な音響補正ソフトを利用することである。

 

拙宅の場合、これまでは、入交氏の指摘もあり、その両方を採用していた。つまり、左サイドの壁に沿って、ソファを置き、その上にクッションを置いて両者を反射を減らすための吸音材とするとともに、Dirac Liveという最先端の音響補正ソフトを利用していた。

 

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しかし、ARTを利用するようになって以来、改めてこのSonetto VIIILR「のみ」で何度か音楽を聴いてみたのだが、何かやはり左サイドに振られた音源の定位感がおかしい。センターボーカルもきっちりとしたセンターには来ていないような感じが残る。そして、Dirac Liveによる測定値(f特)を見ても、明らかに左右差がある(もちろんこれを補正してくれるのであるが)。

 

「このままでは、Tomyさんをお迎えできない」―なぜかというと(笑)、前回私が訪問した際に、「センター、出てませんね。ズレてません?」などと指摘したばかりだからである!他人の欠点を指摘しておいて、自分の欠点には目を瞑るなんて、「坊っちゃん」(漱石です)気質の私にはできない!!!

 

そこで、思い切って、Lをもっと壁から離し、さらにはLの前に設置していたソファを撤去するという「大改造」を思い立った(笑)。

 

beforeの上記写真の方が、LCRHLCRとの位置関係が垂直に見えるが、これは目の錯覚)

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結果として、Lと壁との距離が65センチに拡大した。約15センチ中央寄りに移動させたのである。そしてLRの前のスペースの物的対称性が向上したため、床からの反射と吸音のバランスが近似したはずである。

ただし、それとともに、移動させたソファのせいで、左側のサラウンドSPの位置を前方(フロントSP側)に動かさざるを得なくなった。これも恐らく15センチほどである。

 

そうすると、当然のことながら「副作用」がある。何と言っても、以前のSP位置は「入交氏検定済み」だったのであるが、これを崩したのだから(汗)。

 

まずは、LRの開き角が、60度より狭くなってしまった。そして、サラウンドの位置が、真横の90度より前になってしまった。必然的にその真上に設置してあるサラウンドハイトとの垂直関係が崩れた。

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これらデータ上の悪化を極小化しようと、LP(リスニングポイント)を15センチほど前にした。これにより、LRの開き角は60度に近づき(それでも足りないが)、サラウンドの位置は90度に戻った(ただしハイトとの垂直関係は崩れたまま)。

 

しかしLPを前に出したことに伴い、二次的な副作用が。TopVOG)が真上(90度)から、やや後ろになってしまった。マニュアルではここは100度までOKということになっており、それ以内には目分量ではあるが収まってはいる。

 

レイアウト上はかなりデメリットが目立つ変更だが、メリットは一つだけあり、それはLCRHLCRとの垂直関係が良くなった点である。以前は、LRHLRより外側にあった(60度の開き角を実現するため)。

Img_2305  

さて、かなり入交さんには怒られそうな(汗)、改変ではあるが、肝心なのは言うまでもなく出音である。

 

改変後すぐに東京に戻ってきてしまったので、まだあまりじっくり多くのソフトを聴き込んではいないが、Auro-3D(Matic)に関する限りは少なくともデメリットは感じられない一方、2ch再生時の定位感は確実に向上した。

 

今まで、このSonetto VIIILCRシステムでは、2chソースを2chで再生することは殆どなかったのであまり気が付かなかったのだが、LR二台での定位感が向上すると、例えば、Hotel Californiaのマルチソースのような、センターボーカルがLCR全てに入っているソースの定位感も向上することが感じられた。これは、センターと、LRによるVirtualセンターがぴったり一致したためであろう。盲点であった。

 

2.「先行音効果」をより意識したセッティング

 

Haas効果とも呼ばれる、この理論は、Auro-3D(Matic)の中核理論の一つで、これがあるから、2chや5chソースを13ch化しても定位感が損なわれないのは会員の皆さんはよくご存知だろう。

 

しかし、皆さんは、Dirac LiveAudysseyなどの、マイクを使ったキャリブレーションをして、それを「そのまま」で使ってはいないだろうか?キャリブレーションをすると、距離の計測値を見ることができると思うが、当然のことながらLCRHLCRの6台を比べた場合、LPとの距離が最短なものがC、次にLRときて、その次にHC、そしてHLRが一番遠いはずである。

 

そして、これらの音響補正ソフトをデフォルトで適用すると、この距離の違いを「補正してしまう」。つまり、Delayをかけて、LPとこれら6台のSPの時間的距離を等しくしてしまうのである(それゆえ、入交氏は、「音響補正ソフトは使うな」と主張しておられるのだ)。

 

言うまでもなく、この場合、理論的には「先行音効果」は大きく損なわれるはずであるMaticにすると音像が上がってしまう方は、恐らく、音響補正ソフトの測定結果をデフォルトで適用しているのも原因の一つだと私は推測している。

 

これを避けるためには、キャリブレーション結果を手動で修正できるAVアンプの場合は、実測値よりLCRの距離を長めに入力すればよいだろう。AVアンプに実際より遠くにある、と認識させれば、それらのSPからの音は早くLPに届くので、「先行音効果」が発揮できる。

 

拙宅のStormでは、キャリブレーション後の測定値を変更できないようなので(できるかもしれないが、やり方がわからない…汗。完全にマニュアルモードすればできるが、これだと今度は音圧と距離の補正しかできなくなり、Dirac Live最大のウリである、位相補正が無効化されてしまう)、これまでは放置していた。実際、私の駄耳では、現状でも十分先行音効果が感じられていた(これは「実距離」が近いことによる、直接波の影響だろうと考えている)。しかし、「理論的には」ずっと気になっていたので、上記レイアウトの変更に伴い、どうせ再度キャリブレーションをするならと、私が取った作戦は単純なもの。

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実際にLCRをすべて15センチほど遠くに配置(上記写真)してキャリブレーションをした上で、「正しい」位置(白テープの位置。つまりLPにより近く)に聴くときは戻したのである。こうすることでDirac Liveを「騙し」(笑)、LCRの音をHLCRの音より「確実に先に」LPに届くようにした。これはキャスターによりSPを簡単に動かせる、拙宅ならではの作戦ではあるので、どのお宅でも簡単に真似できるものではないだろうが(笑)。

 

3.「トップミドル」と「リアハイト」の入れ替え

 

これは以前、M1おんちゃん邸で、デノマラの問題点として発覚したことである。つまり、第二層を民生用AtmosMaxである、「2列、各3台の計6台」設置してしまうと、Auro-3D(Matic)で再生するとき、本来サラウンドSPの真上のSPAtmosでいうところの、「トップミドル」)が鳴ってくれないと、第一層との「垂直関係」にならないのだが、なぜか、Atmos配置の「トップリア」が、Auro-3D(Matic)の「サラウンドハイト」として認識されて、本来鳴るべきSPのかなり後ろの位置にあるSP(サラウンドバックの真上=トップリア)が鳴ってしまうという現象である。

 

拙宅では、これまでAtmos用と、Auro用のSP数および配置の設定を別のデータとして作成しており(異なるLPとキャリブレーション)、このような問題は生じなかったのであるが、今回ARTという技術を導入したことで、「当該フォーマットの再生には使わないSPでも、あった方がいい=ARTに動員する」ため、拙宅に設置してある全SP9.4.7.121chAVアンプに認識させ、キャリブレーションの上、Auro-3DNativeソフトを再生してみると、なんかいつもと上方の音場感が異なるのに気がついた。

 

変だなと思って、調べてみると、なんと! ARTセットだと、拙宅でもデノマラと同じ問題が発生していたことがわかった。つまり、Auro-3Dのソースでサラウンドハイトに割り当てられている音が、「リアハイト(トップリア)」から出てしまうのである!!!

 

幸い、StormAVプリはTrinnovほどではないが、ある程度フレキシブルにどのSPへどのチャンネルの音を割り当てるかをPC上で変更できるので、デノマラのように繋ぎ変えるようなことまではせずに事なきを得た。つまり、現状、拙宅でAuro-3D(Matic)を聴く際には、リアハイトSPART用として、150Hz以下の逆相出力のみが出ていることになる。これもARTを使っていなかったら気が付かなかったことである。

 

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以上、ARTを使うようになってから色々と気づきを得た点があり、今回のTomyさんの訪問を機に、思い切って変更してみました。これが「改良」なのか「改悪」なのかは、TomyさんとMyuさん(お近くなので、つい最近も拙宅の音を聴いていただいている)の感想も参考にしてみたいと考えているので、お二人の来訪が今から楽しみです!