第二層SP群とサラウンドバックSPの位置調整とDelayについて
これも前回の記事と地続きのネタです。そろそろ「労働の季節」が迫ってきましたので(汗)、これが恐らく「この夏休み最後の課題レポート」となります(もう一つ別のプロジェクトが密かに進行中ではあるが=笑)。
もう何度目となりますか(汗)、入交さんとの意見交換は。その度に「思い当たる節」のご指摘を受け、なんとか自分のシステムに反映させて来たのですが、今回も実は「イタイ」ところを突かれまして(笑)。もちろん、「SPはこのようなものを揃えるべし!」みたいなものは、「今更言われてもなあ・・・今のシステムを買い揃える前にお会いしたかった(泣)」的な部分がほとんどなので、一朝一夕には「ああ、そうですか、では変更しますっ」とは行きません(汗)が、セッティングに関わる部分であれば、本人に自覚とやる気さえあればやれるものも少なくないわけで。
で、今回、前回の記事で紹介した入交さんの指摘で、ワタシ的にぐさっと来たのは以下の3点:
1)AVアンプに内蔵されている音響補正ソフト(Dirac Live、Audyssey、 YPAOなど)による、距離補正(Delay)の部分は、手動で第一層の各SPと同タイミングで、その直上のSPから音が出るようにすべき(つまり第一層のSPと直上のSPを<同一距離>とする)。
2)「開き角」を優先すべき
3)Delayはかけない方がよい
これら、「入交道場」の免許皆伝を目指す者(笑)としては、スルーはできません!ので、早速やってみました。
1)フロント6台の「垂直関係」の見直し
Auro-3Dでは、「球面配置」にしてはならず、ハイトSPはフロアのSPよりLPから遠くなければならないというのは、一応私は「会長」(笑)ですから百も承知で、Dirac Liveを適用したあとにソフトが行った等距離補正(Delay)を手動で修正というのは、前にも入交さんに言われて、やっていた(つもりだった)のですが・・・Delayをなるべく使うな(後述)と入交さんは再三言われますので、ここは電子的な補正ではなく、物理的な補正をやれるだけやるべきかと、一念発起!(笑)
言うまでもなく、Auro-3Dに於いては、この前6台の位置や性能が非常に重要なのですが、そもそも(汗)、特にこのLCRとHLCRの「完全な垂直関係」を実現できている方って、どのくらいいるんですかね?
私は今まで何件ものお宅で、LCR+HLCRの6台を備えたAuro-3Dシステムを見て、聴かせていただきましたが、ほとんど(恐らくすべて?)のお宅で、第一層のLCRはLPから等距離に配置しておられます。つまり、円周上にこの3台を置いているわけですから、LCRが一直線には並んでおらず、真横から見ればLRに対してCが引っ込んでいますよね。
では、第二層のHCLRはどうでしょうか?HCLRの設置位置として殆どの方は、フロント側の「壁」に設置しておられると思います。この「壁」って、普通<平面>じゃないでしょうか?まさか「球面の壁」(しかも凹んでいなければならない)をわざわざ作っている人って、見たことないです(これをやるなら、「シェークスピア劇場」のような円筒形の部屋を作るしかない)。
「平面の壁」にHLCRを<円周上に>設置するのは、かなり大変(HLRを相当壁から離す必要がある)なので、殆どの方が(梁に設置してある拙宅も含め)HLCRは<一直線上に並んでいる>と思います。つまり、屋根から吊り下げるか、天井埋め込みにでもしない限り、LCRとHLCRの完全な垂直位置関係を実現している<アマチュアのAuro-3Dルーム>は少なく、HCがHLRよりLPに近いのが普通でしょう。つまり、垂直配置は、一般家屋のスクエアの部屋では、「そもそも」ハードルの高い条件であることは間違いありません…
さて、本題に戻ります(汗)。前回?入交さんに拙宅に来ていただいたときに、フロントLCRの仰角が30度よりやや大きい、とのご指摘を受け、その後、Myuさんの多大なるご協力のお陰で設置位置を下げて、推奨値の「仰角30度」を実現したのは、以前記事にしたかと思います。
実はその後、「New Year’s Concert 2023」で、なんとなく、前より少年少女のコーラスの位置が心なしか上がった気がしていたんですが、今回の入交氏の指摘を受けて改めて部屋を見渡したところ、その原因らしきものを見つけてしまいました・・・
仰角を抑えるよう、HLCRをやや低い位置に移動させるため、それまでの「梁の上」から、「梁の前」に設置位置を動かしたのです。これにより、確かに「高さ」は下がったのですが、より「前に」来たのでLPにはより近づいてしまっていました。つまり「仰角」とのトレードオフで、HLCRとLCRとの垂直関係は、前よりも崩れていたんです(以前は梁の真上にSonetto Iがあったので、HCとCの縦位置は20センチ弱ぐらいしかずれていなかった…HLRに至っては、以前はほとんどLRの真上であった)。
P 昔の写真(Sonetto Iが梁の上に<一直線に並んで>設置されている。LRとはほぼ垂直関係配置)
そこで、今回採用した方法は、第一層のLCRをもう少し前に出す、という作戦です。
P(上がBefore、下がAfter. 特にCとHCの関係は、目測で50センチ以上HCのほうが前に出てしまっていた。LRとHLRはBeforeは20センチぐらいずれていたが、Afterではほぼ垂直に)
これ、書くと簡単そうですが、単純に前に移動しただけだと今度はLRの開き角が規定の60度より広がってしまいます。LPも後ろにずらせばそれは防げますが、そうすると今度は、SLRの開き角が狂ってしまう(拙宅は90度)。結局、レーザー距離計を駆使して、いぜんよりやや半径の小さな円周上に配置しなおしたのですが、思ったより時間がかかりました(汗)。
P今回の配置修正後(実はこれには副次的な効果があった。拙宅のSP配置の<弱点>として、Lが壁に近いという問題があるのだが、円周を小さくしたことで、多少、前より壁からLが離れたので、壁反射の影響が少しは減退したと思いたい!)
→結果
フォッサマグナツアーの課題曲の一つであった、ウィーンフィルの『New Year’s Concert 2023』BD版(=Auro-3D)の、「上機嫌」における、バルコニーでの少年少女のコーラスの定位で確認。
それまでは、「指揮者の位置」での音場・音像感を再現しているのだと思っていたのが、「ホール客席の位置」での音場・音像感になった気がする。私はこのムジークフェラインに残念ながらまだ行ったことがないのだが、最近行かれたばかりのTomyさんから「ホール客席から見上げればバルコニーとオーケストラはそんなに離れているわけではない」というご報告があり、まさにその通りの定位となったようだ。フォッサマグナツアーではずいぶんオケより高い位置にコーラスが定位していたお宅もあったと記憶している(ハイトSP群の位置に問題があった場合もあったが)。「いかにもハイトSPからコーラスが聴こえます!」というようなお部屋では、本当にLCRとHCLRが垂直関係になっているか、Delay(後述)の設定も含め、再確認をしたほうがいいかもしれません。
2)サラウンドバックの開き角
今回、入交さんにAuro-3DのSP配置では「開き角」が最も重要、という趣旨の指摘を受けたときに、私がドキッとしたのは、拙宅のサラウンドバック(SBLR)の位置です。
拙宅は第一層を7chにしているのですが、サラウンド(SLR)は<90度>と「入交セッティング」にしてあります。『マニュアル』ではSLRは<110度>を標準値としているのは皆さんよくご存知のとおりです。入交氏はこれを90度に置いてエンジニアリングをしておられることはもう何度も書いていますが、その論理的な理由は、「人間が2つのSP間に音像定位をきちんと認識できるのは60度の開き角までで、それ以上開くとSP間の音像定位が曖昧になる」ということで、私は論理的な議論に説得されやすい社会科学者なので(笑)、<LR30度、SLR90度>が合理的であると納得し、拙宅も「入交セッティング」にしてあるわけです(彼の録音は、LRとサラウンドの間に音像を定位させる物が多い!もし、SLRがマニュアル通り110度の位置にあれば、ここの開き角は80度にもなってしまい、恐らく、この間の音像定位は甘くなるか、<中抜け>するであろう)。
では、サラウンドバック(SB)はどうか?『マニュアル』では標準値が150度と指定されています。この位置であれば、90度においたSLRとの開き角がちょうど60度となり、「入交理論」に叶うことになります。
しかーし(汗)、これまで拙宅では、SBLR間の開き角は30度程度しかありませんでした。つまりLPからの角度は、約165度なので、標準値はおろか、許容範囲(135-155)からも外れていました(大汗)。
「Auro-3D友の会会長のくせに」(笑)と言われそうですが、ここに設置せざるを得なかった理由は、「角度を取るか、SP(音質)の整合性を取るか?」の二択で、私はこれまで後者を優先させていたからです。
拙宅のAuro-3Dシステムのウリの一つに、「TOP以外の12台のSPをすべてSonusのSonetto シリーズで揃えているため、すべて同じツイーターを使っている」ことがあります。言うまでもなく、「音色」に最も影響を与えるツイーターを同じにすることで、残響音再生も含めた音場・音色の一体感を追求していたのです。
SBLR用にはSonetto Iを使っていたのですが、残念ながら、理想の開き角150度の位置にこれをセッティングするとしたら、SP台に乗せてそれを入口の真ん前に置くしかなく、生活動線の観点からそれは諦めていました。
ただ、拙宅にいらした方ならすぐに指摘できるように、実は可動性のある、キャスター付きの(笑)、Amator IIIがもう一組あり、それをSBLRとして使えば150度に位置に置ける(必要なときは簡単に動かせるため)ことは分かってはいたのです。
しかし、その場合は別の問題が。そもそもAmator IIIとSonetto Iでは、元々かなり性能が異なる上に、さらにそれを駆動するアンプも前者はOctaveの真空管、後者はSTA-9というデジアンという大きな違いがあり、両者の出音はどんな素人でも絶対にわかるほどの違いがあるのです(元々、Amator IIIは2ch再生用に導入)。Octaveはプリメインですが、パワーアンプとしても切り離せるので、ATMOS映画を見る際にはサラウンドSPとして使っているのですが、映画と音楽じゃあ、求められる再生品質の統一レベルが違うのは言うまでもありません!
実は過去にも、Amator III+OctaveをAuro-3Dシステムに組み込んでみたことがあるのですが、どうも違和感が拭えない。主役のLCRと音色が異なるので、「悪目立ち」することが多々あったのです。イマーシブオーディオは<一体感・包まれ感>が重要なので、あるSPが「僕、ここに居ます!」となってはダメですよね(笑)。
ところが! この春からLCR+SLRとして使っている主力のSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプで運用しているのはすでに何度も書いていますが、それ以来、実はどうもSBLRに使っているSonetto Iの音が、逆の意味で「悪目立ち」することを感じるようになっていました。チャンデバ化すると全体的に音が鮮烈になるので、パッシブのSPの音が「ぬるく」(笑)感じる様になっちゃうんですよ(これはあらゆるチャンデバシステムに共通する音質で、最近、私の耳はすっかり「チャンデバ耳」に!)。
「これはもしかするとAmator IIIの方がまだマシでは?」
Amator IIIはバイオリンや女性ボーカルなどは私好みの甘い音がする素敵なSPですが、やはりいいマグネットを使っているからか、はたまたいいネットワークをつかっているからか、音のキレはSonetto Iよりあるんですよ(マイケル・ジャクソンがちゃんと聴けますから!)。Octaveも真空管ではありますが、一般的にイメージするような「茫洋とした、おおらかな音」を出すアンプではありません。しかも、これをSBLRにすれば、150度に位置に置くのはたやすいことです。
ということでやってみました!
P(推奨値の150度あたりにAmator IIIを移動。プロジェクターの下の棚の上に乗っているSonetto Iが以前のSBLR。開き角の違いは一目瞭然・・・)
LRは正確に角度も測って30度の開き角をつけています(つまりLPとLRで正三角形を形成)が、SBLRを150度に位置にPlaceするならわざわざ計測する必要はなく、この写真にあるように、「LP(椅子)を挟んで正反対側」になるように置けばいいのです!(ちなみに、このような写真が撮れる、ということは、SPの後ろにある程度の空間が確保されているということで、これも反射の問題を考えるととても重要なことです。後ろの壁ぴったりにつけている方は、見直したほうがいいですよ!=といいつつ、拙宅もSLRは壁ぴったりだが=だから同じSPなのにLCRに比してf特がずれている=汗)
→結果
11ch(7+4)ソフトはまだ少ないし(特にダウンロード版では皆無に近く、手持ちでは一つしかない!)、さすがに、サラウンドとサラウンドバックの間に楽器を定位させているようなソフトはほとんどない(汗)が、例えば、フォッサマグナツアーの課題曲の一つであった、「Polarity」の、あざとい(笑)、背後に配置されたドラムスセットの音と音像定位は、さすがAmator III+Octaveの音だし、SBLR間の開き角が60度だけある音像定位(=ツアーで聴いたX1邸の音に少しは近づいた?=前は30度くらいしか開いてないのでドラムセットがこじんまりと固まっていた)。心配していた音色の違和感も、やはりこちらの予想通り、チャンデバ化されたSonetto VIIIとの組み合わせなら、そこまで変じゃない(まあ、入交さんも「ツイーターの素材が揃っていれば」とおっしゃっていて、Amator IIIもSonetto Iもどちらもシルクドームだし=質は相当違う気がするが=汗)。さすがにもし、後ろから前にバイオリンが移動するような音源があれば、両者を聴き慣れている私には音色の変化が多分わかるだろうけど…プログレならともかく、幸い、Classicにはそんなギミックはないし!
実はOPPO205でDTSの5.1chに折りたたまれている9.1chのAuro-3Dソフトを拙宅のStormとの組み合わせで再生すると、「なぜか?」SBLRにも音が振られることを発見し、せっかくSBLRの位置を調整したのを機に、埃を被りかけていた(汗)、昔のNew Year’s Concertなどを聴くようになりました!
3)脱Delay?
本日、最後のお題です(笑)。入交さんは、「DelayをAVアンプでかけるとLPのピンポイント以外では位相が大幅に狂い、音場が乱れる」と主張されます。そのロジックはイマイチ文系の私では???なのですが、「入交教」の信者(笑)としては、まずは教祖様の言うことに従ってみるべきだろうな、とは前から思ってはいたのですが、さすがに13台全てのSPをLPから等距離に配置し直すなんてできるはずない、とこれまで躊躇していたのですが…今回、「SPの距離の差といっても、一般家庭では1Mもないはず。それであれば移動音の多い映画ならともかく、音楽なら普通の人には聞き分けできないレベルですよ」とまで言われて背中を押されまして(汗)。拙宅の場合はDelayもDirac Liveに任せているため、「どうせやるならDirac Liveも抜きにして、完全無補正に挑戦!」ということで、やってみましたがな(笑)。
P(チャンデバ化による、ウファーとスコーカー、ツイーターの距離補正だけを残し、他はすべて、「0」、つまり全スピーカーから同一タイミング=エンジニアが意図して音源に入っているDelayはあるはず=で音がでるようにした)
(再配置後、LP耳の位置から各SPバッフル面までの距離は、LCRが2500ミリ、SLRが1320ミリ、SBLRが2000ミリとなった。Amator IIIはキャスターで動かせるので、LCRと同じ2500の位置に置くこともできるが、そうすると後ろの壁との距離が50センチぐらいしかなくなってしまう。Amator IIIはボトムバスレフのSonetto VIIIとは異なりリアバスレフなので、最低でも1Mは空ける必要があるのは言うまでもない)
→結果
うーん、確かに「音」だけに注目すれば、ベールが一枚も二枚も剥がれたような鮮烈な音になった。ピアノソロの直接音などは鮮度が上がったのがわかる。しかし、これはDelayの問題というより、恐らくDirac Live(ART)の有無の問題だと思うのだが、「満天に散りばめられている数多の星たちが、遠くの無限の闇の奥底で輝いている感じ」がやや損なわれ、プラネタリウムで見ているような、「やや遠近感のない、そこで光っているくっきりさ」になっている。これは好みが分かれよう。
さらに、決定的な違いはやはり低音の再生品質である。もうすっかりARTの効果が発揮された解像度の高い低域再生音に慣れてしまった私の耳には、無補正のシステムの低域はボワついて聴こえてしまう(これもDelayとは関係ないかも…)。
これについては、明らかにDelayの有無とDirac Liveの有無がごっちゃになっており、もう少し研究が必要だと感じた次第。できればDirac Live(ART)だけ残して、Delay調整はパス、なんて設定ができればいいのだが(笑)、素人判断では両者は密接な物理的な関連がありそうだから(Delay調整していない=LPにおけるタイムアライメントが調整されていない=状態で、ARTの「逆相による定在波のキャンセリング」なんてできるのだろうか???)、切り離せないのでは・・・と予想(汗)。
であれば、私はDirac Live+ART(Leanな低音およびLPだけにせよ、ほぼ完璧に位相が揃っている音)に軍配ですね!(笑) それほど<中毒性>がある出音ですから!!!
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