伊豆リビングのAuro-3D

2025年3月14日 (金)

And in the End…

これは自分のシステムに関する、当面の締めの記事です。

 

拙宅のAuroシステムの主力であるSonetto VIII 5台を、デジタルチャンネルデバイダー・マルチアンプ駆動化してから、ちょうど一年。これから先の1年は本務(Auro-3Dは余技です、私にとっては=笑)に集中するためあまりハードいじりに時間をかけたくないので、今年度内に「いったんケリをつける」覚悟でこの春休みに集中的に取り組んだことをここに整理して、現時点でのFinishとしたいと思います。

 

23月に、「おなじみさん」を中心にしたオフ会を拙宅で開催し、5人の方に来ていただきました。そのうち、初めてのお客さんは一人だけでした。

初めてのお客さんはともかく、何度目かに来たお客さんには、「前ほどの感動が感じられない」とか「ソナスらしさが消えている」とか「SPユニットが無理して音を出している感じがする」「前より音のフォーカスが甘くなっている」などと言われたのですが、それにショックを受けることは全くなく、実は「お、なかなか鋭いな!」と納得していたのです。というのは、自分自身、その原因に対してそれぞれ心当たりがあったからです。

そこで、一連のオフ会終了後、友の会の仲間に「背中を押していただいたので」(笑)、私が重い腰を上げて取り組んだことは、大別すると以下の3点です。

 

1.Mid用パワーアンプのシングル化

2.サラウンドとサラウンドバックのパラ化

3.チャンデバ設定の再々再々…調整(笑)と、それを反映したDirac LiveART)の設定

 

・・・・・・・

1については、High用のパワーアンプとしてA-0を導入したのに伴い、これまでSTA-9BTL化してMidに使用していたことはすでにご報告済みです。 

 

実は、チャンデバ化する前は、このステレオパワーアンプであるSTA-9を、「敢えて、片チャンネルだけ使う」、つまりモノーラルアンプとして中高域用に使っていました。

 

そのメリットは、「理論的には」二つあり、一つは、アンプの電源部に余力が出ることによる<力感の向上>、もう一つは、チャンネルセパレーションの向上による<混入ノイズの減少>だそうです。

 

このうち、私の駄耳でも確認できたのは後者の方で、それは以前もどこかに「余韻がきれいに出る」と書いた記憶があります

 

実は、これはチャンデバ化改造で大変お世話になったMyuさんにも、私がSTA-9BTL化してMid用にしたときに、「個人的にはシングル使いの方が遠近感がより出ていて好みだ」と言われていたのですが、「せっかくHigh用のパワーアンプを3台追加購入して、STA-95台フリーになったのだから、今回はすべてBTLで運用してみたい」という、単なる好奇心が当時は勝ったのでした。

 

しかし、昨年秋にA-0をツイーター用に導入した後、いろいろとチャンデバをいじってみているうちに、Midが少しSonusらしくない、「荒々しい」=逞しすぎる?=音がするのが目立ってきました。これはおそらく「相対的な感じ方」で、以前は気が付かなかったものが、A-0の「静謐な感じ」との比較で気になるようになったのだと思っています。

 

Jazzメインの方であれば、「荒々しさの表現力」は大切なポイントだと思いますが、「教会のオルガンや合唱」が好きな私にとっては、「静謐さ」のほうに軍配が上がるのは当然です。

 

一応、今回の組み換えの際に、「念の為」(笑)、STA-9のBTL出力をLowに使うのも試してみましたが、やはり前回の実験のときと同様の結論(StormPA-16のほうがSolidな低音)となり、STA-9は「シングルでMid用がベスト」、という判断となり、5台とも組み換えました。

 

結果として、荒々しさより、Silkyさが特徴の「Sonusらしさ」が少し戻り、S/Nと遠近感の表現力が向上しました。

 

・・・・・・・

2の「サラウンドとサラウンドバックのパラ化」とは、サラウンドSPとサラウンドバックSPLRごとにまとめて、パラレル接続する、という意味です。

 

実はこれ、かなり前に入交さんに教えていただいたテクニックなんです。現状、拙宅では、「入交教の信者の証」として(笑)、サラウンドの開き角(方位角)を90度、つまり、LPの真横にしてあります。ただ、このポジションは第一層が7ch、つまりサラウンドバックも使っているときに有効というのが入交さんの主張で、第一層が5台のSPによる再生になる場合は、御存知の通り、ITUの規定するサラウンドの開き角は110度が標準であることは言うまでもありません。

 

私は、最近はSACD MultiDVD-A5chソースもほぼAuro-Maticで聴くので、この場合は拙宅のStormだと「強制的に」(笑)第一層は7ch(+6ch13ch)に拡張してくれるため、特にこのままで不満は感じていなかったのです。

 

しかし、拙宅のシステム環境では、ダウンロード購入したAuro-3D9.1chソフト(5.1.4)をRoon Bridge経由で再生するときだけは、なぜか、Stormの方で第一層だけは7chに拡張してくれず(?)、5.1.5.111.1ch再生になってしまうのです(不思議なことに、同じ9.1chソフトをOPPO205Magnetar 800のネットワーク機能を使って再生すると、ちゃんと、7.1.5.113.1chに拡張します…)。

ただし、11.1chのソフト(7.1.4)は、Roon Bridge経由の再生でも、Stormの方で、7.1.5.1の13chフルに拡張されるのです。

 

P(これ、上がInputs、下がOutputs。Roon Bridge経由の9.1ch再生だと、LB・RB(左右サラウンドバック)にInputが無く、Outputもないのが分かる。これがMagnetar経由の再生だと、OutputsはLB・RBからも出力がある=拡張される)

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なにかRoonの設定変更等での解決法はないか、とずっと探ってきましたが、未だ見つからず(ご存じの方がおられましたら、ご一報ください!)。

 

NASにあるAuroソフトは、Roon Bridge経由で再生したほうが音がいいので、オーオタとしては当然こちらを使うのですが、せっかく最近Sonetto IからIIにパワーアップさせたサラウンドバックSPから「全く音が出ない」のは、その状態が<オリジナル>とはいえ(笑)、なんとなく釈然としない感じが続いていました・・・

 

実は拙宅のサラウンドのSonetto VIIIにはキャスターが付いているため(笑)、やろうと思えば、110度の位置に移動させることはできます。つまり5ch用の理想の位置にサラウンドSPを置くことは物理的には可能です。しかし、前の記事で書いたことが自分に跳ね返るのですが(汗)、Lは問題ないが、Rは、110度に設置すると、リビングからキッチンに行くドアの真ん前に立ちふさがる(笑)のです。「キャスターがせっかく付いているんだから、いちいち動かせばいいじゃん!」といわれそうですが、実践的には音楽を聴いている途中で、のどが渇いて冷蔵庫に行くたびにSPをゴロゴロ動かすのは、「勘弁」したいところです(汗)。

 

P(SR=90°とSBR=135°。110度は、この間、ドアの真ん前!)

Img_0106

という「悩み」を以前、入交さんにお話したところ、この「パラレル接続=サラウンドへの入力をサラウンドバックにも送る」という解決法を教えていただいたのです。こうすれば、現在のサラウンド(90度)とサラウンドバック(135度)の位置はそのままに、両者の間、つまり、112.5度の位置にサラウンドSPを置いたことと同じ効果があると。

 

でも、これも前に書いたことで、「幽霊」はダメですよね?と入交さんに言うと、「人間は真横より後ろの定位感は甘いのです。特にClassicを聴くのであれば、そこには普通はホールからの反射音や残響音しか入っていないはずでこれらは音像定位とは無縁なため、全く問題ありません」。

 

まあ、「教祖様」(笑)が太鼓判を押してくれれば、それを信じて実行するのが「信者」というものですが(笑)、実はこの助言を受けてから1年近く、捨て置いたんです(汗)。

 

その理由は、「パラレル接続にすればいい」って簡単に言いますけど(汗)、それってスピーカーとアンプのケーブルを繋ぎ変えるってことですよね?それをまさか、9.1ch AuroRoonで再生するときだけにいちいちやるんですか?11.1ch Auroのときはまた戻すと?BDの時も?

 

・・・やってらんねぇ(笑) それならまだ、ドア前にゴロゴロとSPを移動するほうがマシですよねぇ(笑)。

 

しかし、今回、見つけてしまったんです!私のStormって、サラウンド(だけじゃないが)を複数台設定できるということを。これは、自宅でのパーティー文化のあるアメリカなんかでは、大きな部屋に10人ぐらいのお客さんを入れてみんなで映画を見る、なんていう使い方があるのに対応している機能のようです。つまり、サービスエリアを広げるために、1chのソースを複数のSPで再生する機能がBuilt-inされているのです。

 P(これ、右側にある、"Configuration"に注目。Rs(右サラウンドのこと)とLs(同左)が、1と2と、二つある!)

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しかも、アンプと複数SPをパラレルに接続する方法では不可能な、当該SP間の音圧やf特などの調整もバラバラに行える(AVプリから別々にバランス接続されているため)ことが判明しました。拙宅の場合、サラウンド(Sonetto VIII)と、サラウンドバック(Sonetto II)が同じSPではないため、パラ接続しても「正確には」1台とみなせることはないのは素人的にもわかっていて、それゆえ以前のサラウンドバックがAmator IIIだったこともあって、この「パラ接続」は見送っていたのです。

 

しかし、Dirac Liveがきっちり別々に測定したうえで、「Sonetto VIII」と「Sonetto II」を<1台のサラウンドSP>として調整してくれる機能がある(実は、この機能は、映画を見る際にスクリーン上下のSonetto IVirtual Centerを形成しているものと同じだった…)ことを知り、これなら面倒な配線も切り替えも必要なく実現できるため、Why not? と今回やってみたわけです。

 

で、無事、Roon Bridge経由の9.1chソースの再生でもサラウンドバックからも音が出るようになり、イマーシブ感がUP!これで、配線の繋ぎ変えも、ゴロゴロとSPも移動することも無く、PC画面からConfigを切り替えるだけで第一層が5chのときは112.5度の位置にVirtualサラウンドSPを置く設定に変更できるようになりました。

P(上記と同じソフトをRoon Bridge経由で再生したところ。Inputsは5ch設定になっているためLRBが無いが、OutputsのLRSが「4ペア」出力されている点に注目。これは、3Wayマルチアンプ出力+もうワンセットのLRS=サラウンドバック用のSPに出力があること示している)

20250312-184058  

・・・・・・・

3つめの、チャンデバ設定の再々再々…調整(笑)と、それを反映したDirac LiveART)の設定ですが、前も書きましたが、このところ、「チャンデバいじり遊び」をやりすぎて(笑)、<怪人二十面相>状態、つまり、「どれが本当の自分の顔だったのか?」がわからなくなってきた部分がありまして(汗)。

 

自分でも、「なんか、前の音とは違っているな、ちょっとたまに嫌な音がするなあ」ぐらいの認識はあったのですが、この春休み中のオフ会で、Siltechさんと、K&Kさんに「前来た時より、音がおかしい」というようなご指摘を受け、自覚・納得する部分があったのです。

 

そこで、1の、STA-9のシングル使いにすることでBTLに比してゲインが二分の一になるので、理論的には6㏈下げる必要があることもあり、この際、昔Myuさんと一緒にユニット別のImpulse応答をみて設定したDelay値(これが王道。その後f特をみながらこれをいじったのは完全に邪道…)に戻し、これを基本としながら、サラウンドのDelay値は、LCRとの距離差をレーザーセッターで測定したうえで、理論値を計算し、それを当てはめました。音圧に関しては、測定値をベースにしつつも、それを自分の耳で微調整しました(入交さんもこの方法を推薦されている。オーナー=人間=の耳は、マイクとは異なり、形や向き、感度に至るまで左右差があるため)。

 

そしてこのマニュアルで設定したパラメーターを入れたうえで、Dirac Liveの測定を行い、ARTを適用したのです。

 

お恥ずかしい話ですが(汗)、実はこれまでは、「Dirac Liveは何でも調整してくれるのだから、パラメーターはDefault値のままで測定だけして後はお任せでいいんだ」と思い込んでいたのです。ゆえに、前回DLを回してARTを設定したときには、その前に「遊んでいた」メチャクチャな(汗)パラメーターのまま、DLを適用していました(理論上、ウーファーだけが数メートル前にあるようなパラメーターだった・・・)。ここだけの話(笑)、3月のオフ会のお客さんたちにはこれを聴かせていた・・・(大汗!)

先日、別件で、Dirac Liveのカスタマーサービスとメールで遣り取りをすることがあり、そのときに、念の為に(笑)、「チャンデバで使っているんだけど、ユニット別のパラメーターはそっちで設定してくれるんだよね?」と確認してみたんです。

 すると、「DLはマルチアンプシステムのユニット別の測定とそれを元にした調整はしていない。<完成されたMulti-Wayスピーカー>として認識して、そのf特や他のSPとの位相調整は行うが、ユニット間のDelayや音圧の差は、DLを適用する前に、マニュアルで調整することを推奨する」との回答が来たんです!

 

「正しい」パラメーター入力後にDirac Live(ART)を適用した音は、Beforeの設定を残しているのでPC上で簡単に切り替えて聴き比べができますが、DLらしい、「パリッとした空気感」がより出たのがわかります。Stormのチャンデバ機能を使う場合は、Dirac Liveに完全お任せするのではなく、ちゃんと測定の上でパラメーターを設定してから、AI補正に委ねる必要があることを理解した次第です・・・(Trinnovはどうなんだろう?)

 

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一連のオフ会<後>にこれら3つの改良?をしたのは、言うまでもなくオフ会<前>にやってみて変な音になって元に戻せなくなったら目も当てられないからです。幸い、この3つの効果はとても大きく、今は、<ものすごくまともな音、クセのない普通の良い音(笑)>になりました。

 

この春休みに、せっかく来ていただいたお客様方には大変申し訳ない(大汗)。また機会があれば「違い」を確かめにお越しください!

2025年2月26日 (水)

5chソースの、Auro-Matic化 再論

表題に取った「Auro-Matic」とは、このサイトの常連さんには言わずもがな、ではあるが(笑)、<これからイマーシブ>という方がGoogleの検索などでここに辿り着くことが最近結構あるようなので、改めて。

 

Auro-Matic」というのは、Auro-3DNative ソフト(Auroコーデックでエンコードされたもの)ではないソース(2ch5.1chなど)を、<Auro-3D風に>仕立てるUp Mixの名称。これは有名な所でいえば、「Dolby ATMOS」と「Dolby Surround」の関係と同じと考えていただいていい。

 

だから、「Auro-3D対応」というAVアンプを持っている方であれば、もれなく「Auro-Matic」も使える(ただし、それが使える設定をしていれば=笑)。

 

先日の入交さんによるWOWOWのセミナーの時も、オーディオショップの方から質問が出たが、Auro-3DNative SoftにはClassic系が多いため、それ以外のジャンルの音楽がお好きな方が、対応AVアンプとスピーカー配置を整えたうえでAuroの「世界観」?を味わいたい場合は、どうしても「Auro-Matic」のお世話になることになる(AVショップの方でもこの二つを弁別していない方もおられるが、「Auro-3Dを聴く」のと「Auro-Matic」を聴く、のは全くの別物です)。

 

斯く言う私自身も、Auro-3Dのシステムを揃えたばかりの頃(Marantz88052018年の春=約7年前=がスタートだった)は、Auro-3DNativeソフトが世の中にほとんどなく、ノルウェーの2Lレーベルが出しているBDを輸入して取り寄せてはいたが、当時はノルウェーの作曲家・演奏家によるアヴァンギャルドな作品が多く(汗)、保守的なClassic好き(笑)としては「二度目は聴かない」(泣)ものが少なくなく、お気に入りのSACD MultiAuro-MaticAuro化したものを主に楽しんでいた。

 

そうした経験を基に、もう何年も前になるが(初出がいつだったかのデータが無い)、Phileweb Communityという、今は亡き「オーオタ交流サイト」で(笑)、Auro-Maticについては自分なりに「ケリをつける」(笑)論考を書いている(これはPhil-Mで保存されているコピー)

 

そこの結論部分だけを以下に引用する。

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Auro-Maticがイケてる「普通のソフト」の条件>

5.1ch2ch(やはり、元のチャンネル数が多い音源の方が、効果は出やすい)
・音数の多いもの(大編成のオーケストラなど)
・アヴァンギャルドな演奏(ストラビンスキーなどの20世紀音楽。例えばシェーンベルグはピアノソロでも最高!)
・オルガン、合唱(つまり、バロック系のミサ曲なんてバッチリです)
・金管楽器(ビブラフォン含む。木管も悪くないですが、金属音の方がどうもAuro-Maticがより得意とするようです)
・教会などの高さのある(またはOpen Air)録音現場(これなら、RockでもJazzでもイケます。オペラはオペラハウスでのLiveならホール感を伴う声楽を楽しめる=風呂場のカラオケ状態?)

 

<ダメなものの条件>

Pops Jazzのスタジオ録音盤のボーカル(どうしても口が大きくなる) 
On 録音されているピアノソロで、ホール音があまり収録されていないもの(アタック音などが甘くなる。高音の「硬質感」がやや損なわれる傾向。これは音のFocus2chに比して、どうしても落ちるためと思われる)
・天井の低いJazz Clubなどでの録音(リアリティが落ちる。かぶりつきの緊迫感が無くなり、ゆったり聴けるようになってしまう=笑)
Rockは録音による。空間感を演出するような壮大なサウンドはOKだが、タイトな音像を求める、シンプルでストレートなスタジオ録音は×(野外ライブはイケる!)

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基本的な印象は今も変わってはいないのだが、上記記事を書いた時と今では、自身のシステム的にかなり異なっており、特に、ちょうど一年前に主力の5台のSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプ駆動に改造したことによる「音の変化」はとても大きいものがあると日々感じている。どう違うかと言えば、簡単に言えば、改造のご指南を受けたMyuさんにもはっきり指摘していただいているように、それは駄耳の私でもはっきりと分かる、「まるでスピーカーとパワーアンプをグレードの上のものに総入れ替えしたような」、馬力と瞬発力という、およそSonusらしくない側面(笑)を中心とした再生能力・品質の向上である。

 

この「向上」は、Sonetto VIII単体の能力向上なので、当然のことながらSWDirac Liveなど、「他の力」を借りていない状態どうしの比較の方が差がはっきり出る。拙宅では、「2chソースを2chで聴きたいとき」は、かつてはAmator IIIOctave Class Aの組み合わせを使っていたが、チャンデバ調整後は、Sonetto VIII2台とLPで理想的なポジショニングを作った環境に移動して聴くようになっている(2ch派のMyuさんには、「これ以上、何が要るの?」(笑)とまで言っていただいているが!)。

 

しかし、5ch再生に於いては、これまでは「5ch5chで聴きたいソース」の場合も、Sonetto VIII5台+SW3台+Dirac LiveART)というセットで聴くことが多く、Sonetto VIII5台だけの「Pure 5chセッティング」で聴くことはほとんど無かった。その理由は、ARTによる「締まった低音再生」が捨てがたいのと、正直に言えば、Dirac Liveを使わない場合の「様々なパラメーターの手動調整」に自信が無かった&面倒臭かった(汗)からだ。

 

ところが、この春の「伊豆合宿」(笑)で、チャンデバ調整でf特も変化することが分かり、MyuさんとTomyさんのご指南を受けて、曲がりなりにも満足のいくパラメーターを見つけることができ、しかもf特だけでなく聴感上の出音の変化もちゃんと確認できたので、「これで、Pure 5ch を組んだらどんな音がするかな?」と、相変わらずの好奇心(笑)が抑えきれず(春休みでヒマもたっぷりあるし!)。

 

残念ながら、拙宅のSonetto VIII 5台(LCRSLR)は「完全等距離配置」にはなっていない。LCRLPから約2.9m、SLRは約1.3mの位置にある。これまではユニット間の位置(でっぱり)の差だけをパラメーター入力し、「あとはDirac Liveにお任せ」(笑)で、ch別のDelay(距離)と音圧を自動調節してもらっていた。ただ、今回、新たなパラメーターを「発見」したので、SLRにも新たな数値を入れる際に、「もしかして、これって、5chだけなら単純にLCRとの距離差を測定して足し算や引き算をすれば、手動でも調整できるのでは?」と気が付きまして。

 

で、早速手持ちのレーザー測定器でミリ単位でLPからの距離を測定し、それをDelay値に反映させ、さらに、チャンデバいじりのお陰で「距離が半分になると音圧は6㏈増える」、ことも勉強していたので(笑)、それも考慮して音圧のパラメーターもSLR用に調整した。

 

SWは、定在波などの問題があり、手動での調整が難しい(はっきり言って完全無響室でない限り、どんなゴッドハンドでもARTには絶対に勝てないのが明白)ため、今回はパスし、5.0chのシステムとした。SWを使わないのであれば、3Way 5ch をすべてデジタルチャンデバ・マルチアンプ駆動にしているメリットを活かせば、Dirac Liveを使わないでもかなりの補正ができると考えたからだ。

 

そもそも、Dirac Liveのお仕事は、1.f特の補正、2.位相の補正、3.定在波の抑制(ART)-なのだが、1は、今回の5台だけならチャンデバの調整で何とか誤魔化した(笑)し、2は、デジタルチャンデバはミリ単位でユニットを「動かせる」わけで、この目的はユニット間のタイムアライメントを揃えることにある。理論的に<各SPからの直接音だけで考えれば>(DLは複数SP と反射音まで計算したLPにおける位相合わせをするのがウリではあるが)タイムアライメントを合わせれば、位相もある程度は整う「はず」(笑)。3は、恐らく結構差が付くポイントだろうと想像できるが、まあSWという大物を外せばそこまで不快な音にはなるまい、と判断。

 

で、試行錯誤を経てなんとか完成させまして(チャンデバいじりは、どこかで見切りをつけないと「無限ループ」に陥る=汗)。客観的な評価は近々来ていただくお客様にお任せするとして、主観的には(笑)、「これは、5台ある、3Wayスピーカーを、すべてチャンデバ・マルチアンプ化している者しかできないテクニック」であるという点だけで、もう満足(笑)。

 

これまで一応、一通り手持ちの5chソフトを片っ端から聴いてみての結論を言えば、以前書いた、<Auro-Maticするとダメになるもの>はさらにそのダメさが際立つこととなった。チャンデバ・マルチアンプの、「一音一音が、とてもはっきりする」という2chで確認できていたメリットが、5chでも発揮されるようになったため、「ボーカルとかシンバルの音のくっきりした定位」、なんていうところに聴きどころがある、Pops/Rock系は、5chソフトでもAuro-Maticにすると、「せっかくの鋭い音・定位感が鈍る」(繰り返しますが、これはMaticであって「Auro-3D」ではありません。Auro-3DのNativeソフトであれば、2chや5chよりはるかに正確で立体的な定位感が得られます)。かつては、どちらかというと5chソフトなら大抵のものはAuro-Maticで再生した方が個人的には好みだったのだが、今回改めて聴きなおしてみて、「これは5ch Nativeで聴くべき!」と判定したソースがかなり増えた。もちろん、Auro-Maticにするとステージが広がるという<メリット?>は相変わらずあるのだが、この<メリット>がとても重要なジャンルの音楽では必ずしもないことがよりはっきりしたのだ。

 

Rockの典型的なテスト音源は、高校時代の思い出の(笑)、Pink Floydの天下の名作、『狂気』

P (これは、いくつかのSACD Mulitがでているが、この写真上にある、Analog Productionの盤が一番音がいい=アナログじゃないけど=笑。ちなみに、これはATMOS版(下)も出ているが、音質自体は私はSACDの方が好み)

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Pops/JazzのMultiの名盤もいくつか聴き込んだ

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写真にあるもの以外にもいろいろ聴いたが、Auro-Maticからはやや脱線するかもしれないが、Pops/Rock/Jazzだと、SWって無い方がいいのでは?と改めて思わされる曲が多かった(拙宅のシステムでは、Auro-Maticにすると必ずSWが参入するセッティングになっている)。ここで拙宅のシステムの名誉のために(笑)お断りしておきますが、一般に映画用をメインにしておられるお宅のSWの音を想像して「そりゃそうだろ、そんなこと、今頃気付いているのか、このご仁!」と思っている方がおられるかもしれないが(汗)、拙宅の低域はSWにある5つのユニットを含め、全部で33のウーファーユニットをDirac LiveARTという技術が統合的にコントロールしていて(まだStormAVアンプでしかARTは世に出ていないので、聴いたことがある人はとても少ないと思うし、日本のオーディオ雑誌ではほとんど取り上げられていないが)、一般的な「音楽にSW? 邪道でしょ、それ。低域が膨らんじゃって」というイメージとは正反対で、はっきり言って、その辺のフロア型2chシステムより、3台のSWが入っているウチのシステムの方がTightで解像度の高い音が超低域まで出ます(断言!証人多数!!!)

でも、このクオリティの超低域ってPops/Rock/Jazzではほとんど不要で、むしろ、ここの解像度が上がることで恐らくエンジニアが意図せざる暗騒音が聞こえてしまって、不快な思いをすることが多々あるのです。Pops/Rock/JazzLFEを使っているものは、たいてい「下品」な(笑)、映画のような効果音(EDMのような)が多く、普通の2ch録音はSWを入れることをエンジニアは想定していないはず。だからSWをいれてしまうと、「想定外」の音が出てくることが起きるようです。

いずれにせよ、数年前の印象に比して、拙宅のシステムアップは、<Maticはダメなソース>を増やす方向に働いたようです。

 

逆に、<Auro-Maticにするとイケてるソース>については、拙宅で聴く場合は、少し減ったような気がしています。

 

例えば、マーラーの『交響曲第8番』(いわゆる、『千人の交響曲』)。私は前にもどこかに書いたと思うが、実はマーラーは苦手(汗)で、あまり聴かないのだが、先日の入交さんのWOWOWのセミナーでこの曲が「Auro-3DNative (22.2chだったかも?)で再生されていて、「・・・」と唸ったのです(いい意味で!)。Cmiyajiさんが、「これ、Auro-3Dで販売してくれないかなあ」とおっしゃっておられたが、全く同感。マーラーはキライですが、この曲のコーダだけは好きです!

 

さて、この『千人』であるが、先に書いた「Auro-Maticにイケてる音楽の条件」のほとんどを備えている曲です。

 

・大編成のオーケストラ

・オルガン、合唱・金管楽器(ビブラフォン含む。木管も悪くないですが、金属音の方がどうもAuro-Maticがより得意とするようです)

・教会などの高さのある(またはOpen Air)録音現場

 

有名な、ショルティの『千人』は2chなので、2chの大編成Classicは圧倒的にAuro-Maticに軍配があがることには変わりはないのだが、5chについては、拙宅のシステム変更を経て少し印象が変わり、オリジナルのPotentialに気づくこととなりました。

 

以前は、このような「Matic映え」する条件が揃った曲は、5chでも<圧倒的に>Auro-Maticの方が素敵に聴けたのだが、今回、手持ちの『千人』(キライ、と言いながら実は何枚も持っている。だって、<オフ会ご用達>ですもん、マーラーは・・・リクエストされた時用に=笑)の中で、特に比較的録音が新しく、優れていると思われる、ギルギエフのLSO Liveとトーマスのサンフランシスコ交響楽団(いずれも録音は2008年)のSACD MultiNative 5ch Auro-Maticで最後のCodaを聴き比べてみると・・・

 

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5chでも、部屋の空間容量を十分に「音(と振動)」で満たす大音量で再生すると、なかなかの感動力! これ、以前の5ch再生だったらここまでボリュームを上げると「うるさく」感じて、聴くに耐えない感じだったのだが、ちゃんとパラメーターを調整した5chはうるささを感じない。これだけの音量にすると、Live録音ならではの位相情報の再現と部屋の中の反射音も盛大になるからだろうか、微妙なビブラートがかかったような音質と、拙宅の天井の高さをちゃんと感じさせる空間表現もなかなかのものだった。

もちろん、この曲はPops/Rock/Jazzとは違って、グランカッサやオルガンが入っているので、20Hz前後と思われる帯域の再生品質に於いては、言うまでもなくAuro-Matic13ch+3SWART)の方が勝っている。しかし、Dirac Live無しのオリジナル5chSWも無し)の方が、張り詰めた緊張感のような部分でAuro-Maticを上回る空気感が感じられ、「こりゃ、一長一短、あるな」と今回初めて思った。

 

ただ、5ch Nativeの場合は、ある程度の音量を上げないとここまでの「実力」を感じられないので、集合住宅にお住まいの方や夜に音楽を聴く趣味のある方にとっては、(モンテモンテさんが指摘されているように)「音量が低くても、空間的な広がりを感じられるAuro-Maticに分がある」と思うだろう。

 

結論的に言って、5ch Nativeなら(2ch Nativeの場合は、どんなハイエンドでも大編成のClassic音源なら私の耳にはAuro-3DMatic含む)には及ばない。入交さんがセミナーで指摘しておられたように、音源が2か所しかないための「マスキング効果」でどうしても音数=楽器=が消えるし、いくら部屋を工夫しても、2台のSPだけではホールの反射音を完全には再現できていないと感じる)、

1.五台とも同じSPを使っている 

2.ITUの完全等距離配置になっていてLPで5台間の位相の狂いがない 

3.設置環境(壁との距離・角度など)も5カ所が完全に同一条件で、LPにおける5台のSPから届く音の各f特に差がない

―というような条件を満たしたうえで(拙宅はデジタルチェンデバシステムを使ってある程度調整したが=それでも2.3の条件は完全には満たせていない=汗、それが無い場合は上記3つの物理的条件を整えるしかない)、さらに(笑)、

4.部屋にある程度の高さがあり(これは5chの場合、高所からの音は部屋の天井からの反射音に頼ることになるが、そこに十分な距離が無いと「残響音」として感じられないため)、

5.そしてある程度Liveである(Dead過ぎる部屋だと天井や壁からの反射が少なすぎて、ホール感が出せない)というルームアコースティックの状態において、

6.<大音量再生>ができる環境

であれば、AVアンプの世話(補正)になる必要もなく、5chソースを「Auro-Matic」で拡張する必要はないかもしれない(笑)。

ただ、ここまでの条件を揃えるのはスペース面、経済面、家庭環境面などで無理(典型的なのはウチの東京の書斎!)、というほとんどの(笑)方は、5chソースもAVアンプを使った「Auro-Matic」で聴くことをお勧めします!

2025年2月21日 (金)

改めて、WOWOWのセミナーでの入交氏の「結論」の確認と、Auro-3Dの第一層のSP配置について

先日の入交さんと共同企画したWOWOWでのセミナーには、二日間で延べ50人ほどの方にご参加いただきました。その中の少なくない方が、イマーシブオーディオ界のインフルエンサー(笑)だと拝察しており、あそこで学んだことを「拡散」していっていただけることを、Auro-3Dの普及を目的の一つとしている「Auro-3D友の会」の会長としては期待しております。

 

ただ、これまでに二日間のどちらかに参加された方に「セミナーで何を学ばれましたか?」と伺うと、こちらが期待する答えが必ずしも返ってこないことが企画側としては気になっておりまして(汗)。

 

入交さんと一緒に作成した「進行案」(台本)には、はっきりとしたメッセージを送り出そう、ということが書かれているにもかかわらず、必ずしも伝わっていないような・・・。

 

確かにお話は音響理論から始まって、プロ品質の「純正13chAuro-3D音源」と、2ch5chATMOS22.2chとの聴き比べなどがあり、その間(後?)にスピーカーの配置に関する説明があるなど、盛りだくさんでしたので、参加者の興味関心によって、強く記憶に残っているポイントが異なるのはある意味当然です。

 

しかし、企画側の狙いとしては(汗)、セミナーの案内文にも書きました通り、「Dolby ATMOSAuro-3Dなど、多様なフォーマットが存在しているにもかかわらず、それぞれの特徴や、セッティング方法の違いなどを「正しく」理解・実践している方は少な」い現状に対し、<理論的・実践的に考えて>何が最も「正しい」実践方法なのか?をお示しすることにありました。

 

そして、その方法とは、「規格が乱立するイマーシヴオーディオ(音楽再生方式)ではあるが、Auro-3Dが定義するSP配置が最も音響理論的に合理的であるため、Auro-3Dのルールに準拠したSP配置をしておいて、ATMOS<>楽しむようにするのが現時点ではベスト」ということで、これは進行案メモに書いてあったんです!!!(Auro-3Dの何たるかに無知なAVショップのインストーラーに任せると、AVアンプ=映画=ATMOSとの固定観念から断りもなくATMOS配置にSPを設置して(恐らく、不勉強でそれしか知らない=泣)、「これでAuro-3D<も>楽しめますよ」、と言ってくるので、AmazonやAppleの「イマーシヴオーディオ」(音楽再生)をメインにしたい方はくれぐれもご注意!!! 2chソースのUp MixはAuro-Maticがベストだとお感じになっている方は多いと思いますが、ATMOS配置でAuro-3D(Matic)にしても「いい音」しませんから(汗)。ATMOS音源でもいい音が楽しみたいのならAuro-3D配置一択!シーリングSPなんか使ったらホテルのロビーのBGMレベルの音です(笑) これは入交さんと我々「友の会」の完全共通見解です!)

 

これ、入交さんは当日、ちゃんと強調されたと思うのですが・・・記憶に残ってない方も散見されますので(汗)、ここに改めて、はっきり・きっぱり(笑)書いておきますね!

 

さて、ここから先が本日の新ネタです(笑)。

 

先日、セミナーに参加されたK&Kさんが追加的な質問がある、ということで、入交さんとの3人でメールのやり取りをしまして。以下はそのやり取りに基づき脚色したものです(著作権は入交さんにあり、ここで公表することに関し、ご本人の許可はいただいております)。

 

私は今回のメールの中で、せっかく13chすべてをSonettoにしたこともあり、「やるならさらに<完璧>を追求!」とAuro-3Dの第一層を7chとする場合のSP配置において、前から気になっていたことを議論させていただいたのです。

 

何度も書いてますように、伊豆の拙宅には、これまで入交さんに度々お越しいただいており、その度にSP配置のチェックを受けて今に至っています。拙宅のシステムは「友の会」の横綱級の方々の装置に比べれば、「小結」程度なのですが、唯一、その横綱に土を付けられる点があるとしたら(笑)、拙宅は「入交さん手ずからのセッティング」である、という点であることはもう何度も書きました。

 

http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2024/09/post-84e82d.html

http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2022/12/post-a2b624.html

https://philm-community.com/auro3d/user/diary/2022/09/23/9861/

 

しかし、いままで34回ほどお見えになっていただいているのですが、実はその度毎に「サラウンドバック」(以下、Auro-3Dのマニュアル表記に従い、LrsRrsと表示)の位置が微妙に違っていたんです。拙宅ではLrsRrsについて、「どのスピーカーを使って、どこに置くか」にずっと悩んでいて、ある時は後方の出窓を大工さんに広げてもらった「棚」の上にSonetto Iを置いたり、ある時はキャスターに乗せたAmator IIIをサラウンドバックにしたり。でもその位置や開き角(同マニュアルでは「方位角」とありますので、この記事中では「方位角」を以下、使用)は、都度、バラバラでした。

 

入交さんも、拙宅で、LrsRrsについては特に厳しいご指摘をされなかったのです(LCRについては、「2度」ズレている、とまで言われたのに・・・)。その理由はセミナーの時も説明しておられたように、「人間は後ろからの音の定位感は甘い」ためで、「できるだけ7chを等距離に配置して」、LrsRrsの方位角は、我々「友の会」が翻訳したAuro-3Dの「マニュアル」 にあるように、「135度から155度の間に入っていればいいですよ」とのことだったのです。

 

拙宅では残念ながら部屋の形状から7chの等距離配置は難しく(やろうと思えば、半径1.5Mぐらいの小さな空間になってしまうが、Sonetto VIIIにこの距離で囲まれると圧迫感がハンパでなく、心理的にイヤ=笑)、仕方なくAVプリ側でDelayをかけているのですが、その分、方位角だけは正規のものにしようと心がけてきました。

 

しかし、これも以前彼と議論したことがあるんですが、Auro-3Dのマニュアルに書いてある「サラウンド」(以下、同様にLsRsと表示)の方位角って、「90度-135度」って書いてあって、なぜかここだけやたら許容範囲が広いんですよね!(他のSP20度ぐらいしかAllowanceが無いのに、サラウンドだけ45度もある!)

 

なんですかい、<135度>だったらLsRsLrsRrsを同じところにおいてもいいってんですかい?(笑)と、江戸っ子調に突っ込みを入れたくなりますよね。

 

今回、入交さんとのメールのやり取りで分かったことは、「第一層を7chにした場合の、LsRsとLrsRrsの位置については、業界レベルで統一されたものが無い」ということ!

 

皆さんよくご存じのように、5.1chにはITU基準という世界的な基準があり、C=0度,LR=30度、LsRs110度となっています。

 

じゃあ、これにLrsRrsを足して7chにするなら?

 

「マニュアル」では、それは150度の位置に増設、ということになっています(いずれも「標準値」)。つまり、Auroの正規の第一層7chの標準位置は、LsRs=110度、LrsRrs=150度となっています。

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(「Auro-3D友の会」編Auro-3D導入マニュアルver.1 p.20より引用)

しかし、実はこの150度っていうのは、入交さんによると、「110°と150°と表示されているのは、5.1chのサラウンドチャンネルをデフューズ(パラで鳴らす)する場合の基準」だそうで、これはパラレル接続ということは二つの距離が等しければそのど真ん中にレベル差定位をしますから、要するに「130度」。ここで先に書いた、LsRsLrsRrsの方位角の上限と下限が重なっているのはこれに近い、「135度」であることに気が付かれましたでしょうか?

 

「マニュアル」には方位角の標準値としてはどこにも入っていない「135度」ですが、実はこのように「強く意識されている角度」(笑)なんです。

 

ここに目を付けた?のがATMOSで(笑)、ATMOSで第一層を7chにする場合は、入交さんによると「暗示的にLsRsが±90°で、LrsRrsは±135°を推奨して」いるそうです。

 

Dolby-atmos

(DolbyのHPより引用)これ、確かによく見ると、サラウンドSPは90度、サラウンドバックSPは135度に位置に描いてある!

 

そしてここが大事なところで、「人は後ろ側の定位閾値が大きい、すなわち定位感覚が鈍いことを考えると(第一層のSP配置に関しては)Atmosの方が良い」。特に音楽の場合は通常は前からの音に集中するので、「正面側の定位感覚が鋭い方のスピーカー密度を上げる方がコストパフォーマンスが高い」とのこと。

 

うーん、これは新知見!確かにこれまでも何度も書いてきた通り、第一層が7chの場合のLsRsの方位角は、「90度」つまりLPの真横がいい、というのは入交さんの従来からの主張ですし、彼の仕事場のモニターSPの配置もこうなっています(つまり少なくとも入交さんが制作されたAuro音源は、LsRs90度に置いていないとDirector’s intention通りに再生されない)。

 

しかし、LrsRrsについては、私は「マニュアル」の標準値である150度がいいのかな、と思ってこれまで実践してきました。これだと、LsRs90度に置けば、ちょうど60度刻みできれいにLrsRrsが並ぶし、LRLPを挟んで対角に位置することになるので、「なんとなく(笑)合理的で、美しい配置」のような気がしていましたが・・・。

 

ところがです、「人間は前の音に敏感で後ろの音には鈍いので、前重視!」という入交さんのロジックは、なるほど説得的です。

 

ただし、入交さんは、「プロの場合、9.1ch5.1chとの互換性まで考えなくてはいけませんので、左右を±100LbRbを±135°とすることが多いと思います。この配置で作成する所が多いので、再生も同じようにするのがよろしいかと思います」と、<どの録音エンジニアの作品でも許容できるようにするためには>LsRsを100度、LrsRrsを135度を推薦されておられるようです。

 

しかし、「Auro-3D推進派」(笑)の入交さんが、第一層のLsRsLrsRrsの方位角については、「ATMOSの方が優れている」とまで言われたことの重みは相当なもので、彼個人はそう考えていることが伺えました。

 

ということで、<生粋の入交教信者>を自任する私は(爆)、LsRsを90度のままにして、Sonetto IITAOCのキャスター付きの台に乗せたLrsRrsをこれまでの150度から135度に速攻で移動させました!

 

p この写真は、LPのほぼ真上から見る、サラウンド(90度)とサラウンドバック(135度)の位置関係

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P 椅子の下にある白いテープがLP (この真上の梁の、さらに上にTOPがある)

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この「新配置」で、早速いくつかのAuro-3D Nativeソースを聴いてみました。不思議なのは、「後ろのSPの配置を変えた」はずなのに、「前から来る音、前にある音」の音場・音像が変わったと感じたことです。でも最もはっきりとした効果を感じたのは、フォッサマグナツアーの課題曲にも選んだ『Polarityで、 LsRsLrsRrsの「間」にいくつかの音がはっきりと定位して感じられる曲が増えたのです。言うまでもなく、従来この二つのSPの開き角は60度だったものが、今回45度になったわけですから、「定位感の鈍い」後方の音とはいえ真後ろではなく左右斜め後方であり、かつ45度の狭さの間なら、ある程度くっきりと知覚できるようです。その代わり、頭の真後ろの2台のSPの開き角は従来の60度から、90度に開いたわけですが、ここには「真後ろ」に音源(ここではドラム)があるものの、その定位感は変わりませんでした。やはり入交さんがおっしゃる通り、後ろの音は「ここがシンバル、ここにタムタム」と10センチ刻みで位置が分かるような定位感は無いらしく、90度でも60度でも「まあ、後ろにドラムセットがあるよな」程度で変わらず、それで十分でした。

 

P サラウンドバック(Sonetto I)はこのようにかなり開き角が大きくなるのが「正解」(正面上下にある4台のSPはATMOS=映画用)

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以上、ここまでの結論をまとめますと(笑)、

 

1.第一層が7chの場合は、ATMOS配置がよい(LsRs=±90°、LrsRrs=±135°)

2.第二層は、Auro-3D配置がよい(仰角、スピーカーの向き、垂直配置など)

 

【おまけ】

 

実は、私はリラックスしてAuro-3Dを聴きたいときは、べスポジより、数十センチ下がったところで「本を読みながら」とか「パソコンをやりながら=今も=笑」聴くのが好きなんです。で今回、入交さんが、サラウンドの位置について、「正面に正対して聴くとき、音楽の拡がりという観点からは(中略)、後ろに定位が必要無ければ、±7090°が良いくらいです」と書いてこられ、「おお、これは私の好きなリスニングポジションのことじゃん!」と膝を打ったのです。

 

私が好きな音源はClassicなので、「後ろに定位」が無ければならないものはほとんどありません(Tacetレーベルの室内楽なんかで、たまーに、右後ろにチェロ、左後ろにコントラバスみたいな録音があるが=笑)。そして、LPを数十センチ下げるという行為は、まさにサラウンドSPが斜め前に来ることになるわけで、方位角は70度ぐらいになっているかもしれません(その分、LRの開き角が狭くなり、逆にLrsRrsの開き角が広くなるが)。

 

拙宅の場合、TOPVOG)を2台使っているのでサービスエリアが縦に長いのもありますが、コンサートホールの真ん中やや後ろ目(=私の好きなポジション!)でやや遠めのオケを見ながら聴いている感じがして、なかなかいいですよ!是非、お試しあれ!!!

2025年2月12日 (水)

「画竜点睛」を、ついに描きました!

これまで、私の伊豆の別宅においでいただき、そこのシステムをご覧になった方なら、<必ず>思う(口に出すかどうかは別にしても・・・汗)のが、「ここまでやったら、あと一か所だけなんだから、TOP=VOGSonetto にしたいよね・・・」ということでしょう。

 

まあ、そんなことは、Ownerが一番日々(笑)感じていることで、「Complete癖のある男の子」なら誰でもやりたいとは思いますよ、そりゃ。

 

ただ、「言うは易し、行うは難し」で、いや正確に言うと、「行う」は<技術的には>それほどは難しくはありません。一階の出窓の下、ソファの後ろに隠してあるパワーアンプから、天井までスピーカーケーブルを引けばいいだけのこと。大工に頼めばすぐだし、器用な方ならご自分でも脚立に乗ってやることができるでしょう(天井が普通の家より高いのでちょっと怖い思いをするとは思うが=笑)。

 

ただ、それはつまり、この「美しい部屋」の壁の隅々にモールが蛇のように這うことになり、Ownerの私はそれはどうしても<美的に>許せない。いくらその方が「理論的には」音色が揃って音が整う(はず)と言われても、その代償として音楽を聴くたびにモールが目に入って、「あーあ、せっかくのXXホーム自慢の珪藻土のシミひとつない白壁が台無しだ・・・」と毎回思うようでは、耳で聴くのではなくて、「脳で聴く」音楽を堪能できないというのが私の<哲学>(笑)。

 

13分の1に過ぎない1スピーカーの音色の多少の違い(1chだけ違うSPと言ってもわざわざシルクドームという、同じ素材・方式のツイーターのものを選んでいる)より、見た目の違和感の方が「脳で感じる音」を悪化させると頑なに信じ(笑)、これまで、誰に何と言われようがTOPには無線Activeスピーカーの、DynaudioXEOを使い続けてきました。

 

とはいえ、「ソナスから無線Active SP出てくれればなあ…」と思い続けて数年。出たんですよ、昨秋! 

 

これです!(なぜか、輸入代理店が違うような・・・?)

 

早速、購入完全前のめり(笑)でカタログを取り寄せて調べてみたんですが・・・

 

「うーん・・・」

 

<うーん、その1>

私が12台まで揃えているSonetto シリーズは、「すべて同じツイーターを使っている」という点が最大の特徴で、このDuettoというのも同じツイーターなら、と期待して詳細にチェックしてみると、まず、カタログ上で径が1ミリ違うのです。Sonettoシリーズが29ミリ径のシルクドームなのに対し、このDuetto28ミリ径と、たった1ミリだけですが小さいようです。

 

「まあ、これはもしかすると測定誤差かな?イタリア人の仕事だし・・・爆」とPreferredに捉えつつ、さらに少し調べてみると、Sonettoの方には、「高域には、ソナス・ファベール独自の「アローポイントDAD (Damped Apex Dome)」テクノロジーに基づく」とカタログにあるのに対し、Duettoの方には、「ドーム周囲にウェイブ・ガイドを設けてワイドな音波放射を実現」との表記があって、どうもチト違う。見た目もSonettoのツイーターには、「橋」(笑)が架かっている(これは、Amator IIIも同じ)のに対し、Duettoのツイーターは、何もなし。

 

まあ、ここまで見ればいくら素人の私でも、この二つのツイーターが同じではないことぐらいは分かりました(泣)。

 

<うーん、その2>

これ、カタログをよく読むと、無線で送れるソースはBluetooth経由だけで、それ以外はソース機器から「有線で」片側のSPに接続しないといけないようです。Bluetoothって、スマホじゃあるまいし、ワシのStorm AVプリにはそんなもん、付いてませんがな・・・。AVプリからの出力はXLRしかないので、それをRCAに変換し、またそれにBluetoothアダプターを付ければもしかすると可能かもしれませんが、そんなんで音質はどうなんでしょうか?さすがに、「音がでればそれでいい」レベルのオーディオではない(汗)ので・・・

 

ということで、結局、カタログ検討の段階でDuettoの試聴すらする気が失せ、当初の前のめりが、すっかり「後ろのめり」に(笑)なったのが、昨年末。

 

そこで一旦は諦めたんですが、今年に入ってセミナーの準備などをしているときに、なぜかふと、「パワーアンプもSPと一緒に3Fに乗っければ、長いSPケーブルを部屋中に張り巡らせる必要はないのでは?」とひらめきまして。つまり、AVプリの出力をパワーアンプの入力まで飛ばせればSonetto Iをパワーアンプと一緒に天井に乗っけりゃイケるんじゃ?と。

 

そこで思い出したのが、かつて、螺旋階段の上の踊り場にSW(最終的にはELACのRS500 )を設置した際に、そこまでAVプリからXLRケーブルを引くのではなく、無線で飛ばしたこと!これはTomyさんに教えていただいたアイデアで、日本ではなぜか売ってないのでアメリカのAmazonで探して装置を取り寄せたんです(アメリカでは、部屋が広いので、SWの場所までケーブルを延々と引きたくない、というニーズは結構あるらしい)。この装置はXEOと同じ2.4GHzの電波を使っているため、Bluetoothに比べ音質もCDクオリティで、Delayも少ないというメリットがあるのです。実際、私の「第二層のSW」は、Dirac Liveが対応できる範囲でのDelayの距離(20Mぐらい離れていると認識されている=汗)に収まっています。

 

「これと同じようなものを探して、AVプリ(出力側)とパワーアンプ(入力側)に応用して接続すれば!天井に電源はある(天窓の電動ブラインド用のタップから分岐)ので、パワーアンプもオーディオトランスミッターのレシーバーも電源は取れるはず!」と探したところ、ちゃんと今回は日本のAmazonにもありまして、速攻でポチったのが、1月の上旬。

 

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セミナー前に届いたのですが、さすがに仕事も残っていて時間が取れず、セミナー後、「春休み」(笑)に入って伊豆に来てから開封しました。これは「LR」として2ch送れるタイプなので、SW用(1ch)ではないようですが、私が今回TOPに設置したいSPSonetto I2台(ただし、Mono)なので、ステレオパワーアンプを使うのに2chの入出力があればSplitしなくていいので便利です。アンプは今、サラウンドバックのさらに後ろにAtmos映画用に置いてあるUL-6XEOに置き換えれば、そこに使っているSTA-9を回せると計算。

 

さて、いざ伊豆に来て早速やろうかと思ったのですが、XEO3の代わりに今、サランドバックとして使っているSonetto Iを乗っけるのはいいとして、じゃあ、Sonetto Iの後のサラウンドバックはどうなる?ってことにこちらに来てから気が付く始末・・・(まさかUL-6じゃあ、Sonus Completeという目的は果たせないし・・・完全にボケ始めているナ=泣)

 

実はこの秋にSonettoシリーズにG2が出て、私が揃えているSonettoシリーズが「旧モデル」になった時に、「在庫処分で安くなっているなら、サラウンドバックをSonetto Iから、同じブックシェルフ型のもう一回り大きなIIか、いっそフロア型のSonetto IIIに代えちゃおうかな?」(理由は後述)という、「ボーナスを前にした悪魔のささやき」が聞こえてきて(笑)、輸入代理店のノアさんに「まだ在庫ありますか?」と問い合わせたことがあるんです。

 

その時は、畏れ多くも(笑)社長の牧野さん(拙宅にお越しになったことがある)からわざわざメールをいただき、「IIIならありますよ」と。で、ダイナのSさんにお幾ら?と伺うとさすがに新品だしそこまでは安くはならなかった(汗)・・・で、「いやー、いくらなんでも、ダウンロード版のAuro-3Dソフト(=9.1ch)ではほとんど鳴らないSPにそこまでカネかけても・・・IIでいいんじゃ?せっかくAmator IIIの純正SPスタンドもあるし」などと迷っているうちに、年末の<師走>になりまして、多忙の中、すっかり忘れてしまっていました。

 

その時思い切ってIIIを買っていれば、今頃Iが余っていたはずなのですが、さすがに今ではもう「旧モデルの在庫品=新品」はないようです。

 

「じゃあ、程度のいい中古でもいいか」(私は素人なので<長期保証が付かない中古品>は買わない主義)とネットを検索するとIVIII(つまり一番小さいものと大きいもの)なら中古である程度出ているようですが、お目当てのIIIIIは見つからなかったんです。

 

「今回の伊豆滞在中には無理だな」と諦めムードになってふて寝をして、タブレットでダイナのHPを見ていたところ・・・ここは中古も扱っているのですが、普段は中古のページを見ないため、ぱっと見した時には「SonettoIIIII、ここもないなあ」と思って、他のサイトに移ろうとしたら仰向けで見ていたためか、手が滑ってどこかを押したらしく、そしたらダイナの中古の「裏サイト」(ウソです、単に「2ページ目」があって、そこに行くにはクリックをしなければいけないのが分からなかっただけ・・・笑)が出て、何と、あるではないですかIIが。

 

しかも、「店頭展示品」と書いてあるので、これはつまり、保証は買った日からまるまる1年付くはず!

 

翌日、開店を待って(笑)電話を入れて、まだ在庫ありというので、即決(牧野社長、すみません=笑)。信頼マークのダイナですから試聴もせず、「今、カード決済するから明日の朝、伊豆に届けて!」と(爆)。

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で、昨日の午前に届きまして(前の晩のうちにはしごを買っておいた!)。

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あとは大工的な苦労話も多々ありますがこれはオーディオとは関係ないのでパス。ということで、TOPXEO 3Sonetto ISurround Back: Sonetto ISonetto IIという、今回のSystem Upが完了しました。

 

Before

P

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After

P (トランスミッターもSTA-9も無事収まりました!)

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AVプリ→TOPXLRアウト→RCA変換→RCA into 2変換→オーディオトランスミッター(LR)→同レシーバー(LR)→STA-9Sonetto I2台)

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設置上の変更点は、前のXEOより横幅が広いので、レールの幅を広げたことと、前のXEOがリアバスレフだったのに対し、Sonetto Iはフロントバスレフなので、ウーファーの下についているバスレフポートを塞がないように前よりかなりBox(梁)から離したこと。

 

ついでにSonettto IIIの記念写真(笑)

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ちなみに、今回交換した3台のカタログSpecは:

 

XEO 3:14センチウーファー  (リアバスレフ)  48Hz22kHz

Sonetto I15センチ (フロントバスレフ) 45Hz25kHz

Sonetto II16.5センチ (フロントバスレフ) 42Hz25kHz

 

うーん、最低域がきれいに3Hz刻み(笑)。たかが3Hzですが、この帯域における3Hzの差は、音質の差だけでなく、重量・大きさの差や金額の差(汗)に結構なることは、皆さまよくご存じの通り(笑)。

 

さて、まだ<慣らし>の最中でDirac Liveでのきちんとした「調整」をしていない段階なので、「音」がどう変わったかを断定的には言えませんが、いくつかの「決め」ソースをざっと聴いてみたところでは、1.オーケストラや合唱などで、やや「迫力」を増した(気がする=笑)、2.頭の後方上部あたりの音像がしっかりした(気がする=笑)、3.空間(特に天井感)が少し高くなった(気がする=笑)-程度で、駄耳には<激変>というほどではありません(汗=入交さんなら両者の「違い」に敏感だろうけど)。

 

ただ、今回のSystem Up、物理的に(?)改善された点が二つあるのは確かです。

 

一つは、TOPの最小再生音の閾値がなくなった、ということ。これはどういうことかというと、XEOはトランスミッターやSP内蔵のパワーアンプ部の保護のためか、入力が「無い」時にはSleep Modeに入るという機能が常に働く設定になっています。「無い」と書きましたが、これには電気的な「閾値」があるようで、例えば、Boleroの始まりの部分のような超ピアニッシモ(笑)の部分では、入力「無」と判定されてしまい、Activeになりません(つまり、TOPからは音がでていない状態)。これはOwnerは前から気になっていたのですが、お客さんにはずっと「内緒」にしてました(笑)。

 

今回StormSTA-9との間をつなぐ無線装置はこのような「おせっかい」な機能は無く、ずっと電源が入りっぱなしなので、ちゃんと「超ピアニッシモ」の部分も、超微弱な音(LRではなく、TOPは元々相当音量が小さいのは皆さん、よくご存じですよね)が確実に出て、超弱音のホール音を演出してくれているはず(笑)です。

 

もう一つは、サラウンドバックのツイーターの位置が、Sonetto VIIIで構成されるLCRSLRより、少し上がった、という点です。

P(ツイーターの高さが10センチほど違う) 

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これは先日のセミナーでも入交さんが少し言及されていましたが、7.1.5.1のフルバージョンのAuro-3Dの正規の配置では、ATMOSのようなトップリア(Auro式の表現なら「サラウンドバックハイト」と言えるかな?)がありません。Auro配置では、真横にあるサラウンドSPの真上(=サラウンドハイト)が、第二層では「最後尾」となるわけです。つまり、耳の後ろの上の方には音源が無いのです。

 

しかし、特にClassicの生演奏を聴く方はよくお分かりのように、普通のClassicの演奏会場って、階段式の後ろ上がりですよね(例外で有名なのはウィーンのムジークフェラインかな。昔の記憶ではカーネギーホールも?)。ということは、Jazzはともかく、少なくともClassicでは我々がLive会場で体験する「後ろからの反射音」って、やや上方からだって意識してました?

 

つまり、Auro-3Dの13chでは、「耳より後ろ」からの音は、第一層のサラウンドバックLR<だけ>で担っているのです(11chシステムでは、サラウンドとサラウンドハイトの4台が「耳より後ろ」に置いている場合があるが、これはLRとの開き角が60度以上になるため「中抜け」リスクが高まるとして、入交さんは推奨していない配置)。もちろん、後方上部からの音の形成には、「耳の真上」にあるTOP(VOG)も分担しているのですが、あくまでもSBとの間で形成されるファントムであり、リアルのSPがあるフォーマットとの違いははっきりあります。ここがフルバージョンAuro-3Dの正規配置の「数少ない」?弱点で、先日もWOWOWのセミナーで同じソースを22.2chと切り替えたときに気づいた方もおられるかもしれませんが、22.2chとAuro-3Dで一番差が出るのは実はココなんです。

 

この欠点を解消する方便の一つとして、入交さんは、「第一層はツイーターの高さを耳の位置に揃える、というのがマニュアル的ではあるが、実は、サラウンドバックだけは少し高めでも(の方が?)良い」と常々おっしゃっているんです。実際、WOWOWのあのスタジオも、サラウンドバックSPの設置位置が階段席の上方にあることもあり、ツイーターの高さは他の第一層のSP群よりある程度高い場所にあるのに気が付きましたでしょうか?

 

だから私は今回、この効果を狙ってSonetto IIIIIを探していたんです。Iだとまだちょっと低くて効果が薄いかな、と思って。拙宅のサラウンドバックSPTAOCのキャスター付きのSP台の上になるので、フロア型でもSPスタンドでも、通常設置状態より20センチぐらい高くなるため、狙い通り、今回、サラウンドバックのツイーターの位置を「耳より10センチ近く」高くすることができました。

 

先ほど書いた、「今回の変更にともなう、音の変化」は、多分にこれら二つの「物理的な改善?」も貢献していると思います。

 

もちろん、今回の苦労の最大のメリットは、「心理的な改善」であることは言うまでもありません(笑)。

 

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(醜いモールが見えない壁は、やはり美しい!)

 

かつて、グランドスラムさんに、「My電柱の効果は?」と尋ねたところ、「オーディオルームを作った時からだからBeforeと比べられないので効果は分からない。ただ、電源に関しては<これ以上はない>という安心感はある」とおっしゃっておられましたが、私も今、同じ思いです。

 

これで、Auro-3Dで再生するシステムにおける13chのツイーターが全く同じもの(Sonus FaberのSonettoシリーズVIII×5、II×4、I×5) になり(拙宅では、TOPは2台パラレルで使用しているので、台数的には14台) 、少なくとも「音色の統一」度合いに於いては、<これ以上は(ほぼ)ない>という、安心感というか達成感(脳内ドヤ顔=爆)。

 

今は、ムッチャ、いい気分!!!でAuro-3Dの音楽を聴けています。 これで4月から心置きなく、日本を離れられる!(離れたくなくなる?=笑)

 

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追記(2月15日)

 

これは、単独記事にするほどでもない、「一部マニア向け」の内容なのですが、当方としては備忘録にしておきたい(何をしたか、書いて残しておかないとすぐ忘れてしまう・・・)内容なので、「追記」とします。

 

今回、「ハード的な変更」をした点をこの記事で書いたのですが、それだけで<完了>するほど、私の現行システムは単純なものではなくなっています(汗)。これだけ特性の異なるSPを入れ替えれば、当然、Dirac Liveもやり直さなければ、f特も、音圧も、位相も、狂った状態で聴く羽目になります。

 

「やり直す」と書くのは簡単ですが、拙宅の場合、まずSP数が23台あり、これらのSPで構成される、Auro-3D、音楽用ATMOS、映画用ATMOSはすべて使用するSPの位置や台数が異なるので、これらのフォーマット別に<イチイチ>(笑)Dirac Liveのキャリブレーションをしなければなりません。しかも、拙宅の「ウリ」の一つである、Dirac LiveのARTを設定するには「測定箇所を減らす簡易版」を許さない(汗)ので、やるとなったら1台1台、Sweep音を聴き終わってマイクを何度も移動する、というBoringな作業が半日は続くんです・・・

 

で、今回、「どうせ測定をやり直さなければならないなら」と、以前、チャンデバ調整をした際に、この道の大先輩である、ご近所のMyuさんに、「クロスオーバー周波数、減衰特性、ゲインは調整されたとありますが、タイムアライメントの状態を確認して欲しかった」とのコメントをいただいたのですが、これに関する「実験」をしてみようと。これ、素人の私はその「真意」が汲み取れず、その後直接お会いした時に教えを請うと、ナント!、f特って、Delay値を変更しても変わるものなのだとか!

 

このロジックは、2Way以上のSPで出音が「重なっている」周波数帯に影響があることなのですが、この二つのユニットの出音のタイミングによっては、この重なり部分の周波数(=音)が、相互に高めあったり、逆に弱めあったりすることが起きるということ(=定在波の節と腹の原理)。ゆえにこのユニット間の出音のタイミング(=Delay値)を調整すると、f特が変わるというんです。

 

実際にはこの方法でf特をいじるのは恐らく「邪道」で、まず、タイムアライメントを合わせてから(=出音のタイミングを同じにする)、他の手段を使ってf特を調整するのが「王道」のはずです。

 

しかし、今回、私がやってみたのは、タイムアライメントを合わせるのではなく(汗)、Delay値を変えることによってf特がどの程度変わるかを実験してみたいという知的好奇心からの所業です(Tomyさんに入れ知恵していただきました笑)。

 

さて、前置きが長くなりましたが、結果を以下に示します(このグラフは、私が測定したデータを見やすいようにMyuさんが加工してくれたものです)。

P

Auro3d-before-and-after_20250213202158

青がBefore、赤がAfterです。Afterでやったことは、1.MidのDelay値を11㎳から15㎳に増やす、2.Highの音圧を3㏈下げる―です。

 

「邪道」は重々承知ですが(Delay値を動かしすぎ=笑)、かなりf特の直線性は変化しました(だからと言って、音が良くなったとは限らない=汗)。理論(机上の知識)が実証でき、私の知的好奇心は満たされました(笑)。その後、これをベースにDirac Liveで補正をしたので、正確なタイムアライメント調整については、「そっちでやってくれているだろう」と、大船に乗った気分で(爆)、音楽を聴いています。さて?肝心の音質の変化については、月末にお客さんを予定しているので、「第三者委員会」(笑)の評価を待ちましょう!

 

再追記(2月20日)

コメント欄でTomyさんに指摘された通り、前回の調整はDelay時間(ミリセコンド=ms)をいじったので、距離に換算するとメートル単位で動かしたことになっていました(汗)。このまま晒しておくのもあまりにおかしいデータなので(笑)、今度は、距離(ミリメートル=mm)単位で調整してみました。1ミリ単位でMidを動かしてf特を測定したところ、スコーカーから7ミリツイーターを出す(LPに近づける)ときが最もf特が改善されました(以下)。

 

ただし、私はいい加減な人間なので、マイクとSPとの距離も、高さも適当なので、前回の結果との厳密な比較の対称性は取れていません(汗)。単に、カーブの変化状況だけに注目してください(笑)。クロスオーバー(3.5Khz)付近のDipが改善されていますが、200Hz付近のDipは変わらずですね(前回、ここが改善されたのは、やはり距離換算で「1メートル以上」スコーカーを動かしたからのようです=200Hzの波長は約1.7メートル=汗)。出音も、今回は結構はっきりと変わりました。少し、もやが晴れて鮮度が上がった気がします。チャンデバいじりは面白いですね!音響とか、マルチWay SPの仕組みなどに対して、ものすごく勉強になります。

 

Delay

 

 

 

 

2024年12月26日 (木)

今年の仕上げ3連発―Magnetar導入、チャンデバ調整(またまた・・・)&Amator III再配置(その2)

【チャンデバのまたまたの調整・・・】

 

シーズン中(笑)は伊豆に来ると行っても月にMax2回程度、しかもせいぜい一泊か二泊なので、こちらに来るとどうしても「お気に入りのAuro-3D音源」を中心に聴いてしまう。つまり、いつも同じような曲ばかり聴くことになるのだが(汗)、今回は冬休みモードに入ったため、夏休み以来の1週間以上の長期滞在をしているので、久しぶりに聴く音源がいくつかあったのですが、その中に、「えっ?」という音に違和感を感じるソフトが出てしまいまして(汗)。

 

それはGattiの『春の祭典』(Auro-3D9.0ch BD版)です。このアルバムはLiveで、最初に演奏されている『牧神』と次の『La Mer』の方は、伊豆に来るとよく聴く「定番」なのですが、最後に入っている『ハルサイ』の方は・・・。先の「フォッサマグナツアー」の課題曲に自ら選定しておいてなんですが(笑)、「オーディオ的に聞きどころが多い曲」であるのはわかりますが、「音楽」として聴く分には保守的な私にはちょっとアヴァンギャルドすぎて(汗)。

 

でも、今回はたっぷり聴く時間が取れたので、久しぶりにこのBDを最後まで聴いたのですが・・・

 

以前の設定で聴いたときの記憶(恐らく夏休み=汗)に比して、金管楽器に力がほとんど感じられない。これはMilesのトランペットを愛するJazzファンなら「なんじゃこれ?」というレベルかも・・・

 

「こりゃ、何かの特性が狂っているな」と、慌てて、Dirac Liveで測定・調整をしてみました。

 

P. DLが示したLCRの合成f特@LP

4000-dirac-live-f

一見して誰でもすぐわかるのが、3Khzを中心に大きなへこみがあるということ。これを、さすがに「BBC Dipでしょ」?とごまかすことはできまい()。どう見ても、Dipというよりは大きなPitかCraterかTrenchである()

 

なるほど、これが「金管の音に迫力がない」原因なのか、とデータ的にまずは納得。

 

前回、ツイーター用のアンプにSoulnoteA-0を導入した際にチャンデバ設定を調整し直したときは、 自分が一番好きな楽器である、ピアノとチェロを使い、最後の仕上げにボーカルソースを使って「自分の聴感だけ」で決めただけで、測定は一切しなかった(過去に測定したデータを参考にしたまで)。「f特を見ながら調整する」なんて、「自分の耳に自信がない人のすること」と思っていたからだ(ピアノのベテラン調律師はマイクとPCを持ちこまないですよね?=爆)。

 

しかし、「自分の耳」はやはり偏った音色が好きなんだな、と今回つくづく反省した(泣)。CO4000に引き上げたら、<ピアノの高域の残響音はきれいになったし、チェロとボーカルは魅力的になった>、と「私の耳」は判断したのだが、これは後付けで考えれば、3Khzに大きな穴が開いて、ピアノは恐らく基音を再生するMidと、倍音を再生するHigh(なぜか、10Khz近辺が持ち上がっているし)の役割分担が明確になったことの「メリット」が出た?(デメリットも必ずあるが、駄耳では気が付かなかっただけだろう)および、チェロとボーカルに関しては元々3Khzまでも音が出ていないソースなのだから、事実上LowMidによる2Wayスピーカーとしてのまとまりの良さという「メリット」が強調されたのではなかろうか。

 

こうした、「偏った、自分の好きな楽器の音」を追求しただけのセッティングは、そればかりを聴いている間はなんの疑念もなく楽しめていたが、今回、普段聴かないようなソースを再生してみて、その「デメリット」が露呈したということだ。

 

ということで、さすがにこのままでは次の「オフ会」では披露できない()。お客さんのすべてが必ずしもピアノ・チェロ・ボーカルだけが好きとは限らないからだ()

 

ということで、やむを得ず(汗)、チャンデバ設定の見直しをする羽目となり、今度は同じ轍を踏むまいと、きっちりREWによる測定を踏まえることにした。

 

ちなみに、ここで「そんなの、全部Dirac Liveに任せればいいじゃん」と発想する人は、トーシローです(=実はついこの前までのワタシではあるが=笑)。確かにDirac Liveをフルに適用すれば、f特の凸凹はかなり補正してくれる。このように:

 

P <CO:4000で、Dirac Live後にREWRchを測定したもの。この太い線が補正後のLPにおける実測値>

4000art_20241226075901

 

さすがDirac Live! きれいに3Khz付近の大穴を埋めている。でもこれは、「かなり無理をさせている」ので、この3Khz付近の歪み率が高くなってしまっている。「出しにくい音域を、無理に出させている」からであろう。

 

つまり、Dirac Liveは、可能な限り元のf特などのデータが良くなるように調整した後の、「最後の仕上げ」に使うべきなのだ!

 

ということで、まずはCO値を変えて測定してみたが、多少の変動はあるものの、どれも「大きな穴」が残ったままだった。

 

REWによるRch計測@LP(2.5M)-25dB

 

CO:4000 (Default

Mid:LPF:24 -10dB

High:HPF:48 -2dB

 

CO:3500

Mid:LPF:24 -10dB

High:HPF:48 -2dB

 

CO:3000

Mid:LPF:24 -10dB

High:HPF:48 -2dB

 

(以上、測定画像は割愛)

 

ただし、f特的には大きく変わらなくても、聴感上の音質は結構変わる。ゆえにここで一旦、「自分の耳」をもう一度信じて(笑)、これらCO値の違いによる音の違いを今回は「金管楽器」でチェック。最初に「気づき」を与えてくれた、「ハルサイ」は使うとしても、どうもこれをくり返し聴くのは個人的にはツライ(笑)。他に「金管楽器」といえば、Classic初心者のワタシ的には、Brucknerの交響曲しか思いつかない(古典派とロマン派ぐらいしか知らないので・・・)。ということで、8番も試聴用にした。

 

P.Img_2996_20241226081201

 

4000では金管楽器の高域に力強さが足りない、3000だとピアノの高域の澄んだ感じが損なわれる。3500が一番バランスが取れている。

 

ということで、ここから先は、CO3500に固定して、あとは「f特上の大穴を埋める」べく、スロープとユニット別のGainを調整してみる。

 

この後、「チャンデバ地獄」をたっぷり味わい(汗)、さまざまな試行錯誤をした(お陰でかなり経験値は上がった・・・)のだが、それを全部書くとキリがないし、チャンデバ弄ったことのない人には興味もないことだろうから(関心を持ってくれるのはMyuさんくらい?)、わかりやすい変化のあったものだけを紹介していく。

 

まず、「コペルニクス的転回」(笑)を見せたのが、スロープをHighMidで入れ替えてみた変化。つまり、DefaultではMidLPF24で、HighHPF48にしていたのだが、これを入れ替え、MidLPF48に、HighHPF24にしてみたのである(3500-1)。

 

3500-1

CO:3500

Mid:LPF:48 -10dB

High:HPF:24 -2dB

 

このアイデアを思いついたのは、各ユニットの周波数別の歪み率を調べていたときで、どうも、このSonettoのスコーカーは周波数が4000あたりより高くなると歪率が増えてくる(1%を超えてくる)。一方、このツイーターは比較的低めの周波数帯(2500あたり)でも歪み率が高くない(1%を大幅に下回る)。ということはMidのスロープを急峻にし、Highのスロープを緩やかにして繋いだほうが全体の歪み率が下がるのでは、と素人なりに発想したもの。

 

で、その結果のf特がこれ。

 

P: Before

3500_20241226080201

P: After

35001_20241226080201

 

不思議なことに(汗)、ほぼ3Khz近辺の大穴が消えている!!!歪み率を良くしようと思って弄ったスロープが、f特にも効くとは!まさに「瓢箪から駒」である(笑)。

 

気を良くして次のステップに進む。

 

今のままだと、10Khzあたりに大きな山ができており、全体的にかなり<High上がり>のf特になっている。御存知の通り、一般のメーカー製ハイエンドSPではやや<High下がり>に調整するのが、最近のトレンド。10Khzあたりに山があるのは、いわゆる「音の良い三つ山」と古典的に呼ばれるイコライザーを使って補正する際の有名なテクニックではあるが、いくらなんでもこれはチト山が高すぎる。

 

そこで今度は、MidHighの各ユニットのGainを以下のように変えて試してみた。

 

3500-2

CO:3500

Mid:LPF:48 -10dB

High:HPF:24 -7dB

 

3500-3

CO:3500

Mid:LPF:48 -7dB

High:HPF:24 -4dB

 

3500-4

CO:3500

Mid:LPF:48 -10dB

High:HPF:24 -4dB

 

各測定結果のグラフは割愛するが、この中で「f特1等賞」を取ったのはこれ。

 

P (3500-4

35004_20241226080801

特に中高域はなかなかでしょ?これ、イコライザーは何も使ってないのですよ。しかも2.5M離れたLPでの実測値であって、「無響室1M」という実験室の結果ではありません。これ、超ハイエンドのSPを持っている方のお宅にお邪魔して、LP地点で実測したものと比べてみても、かなりいい勝負をすると思います!

 

ここでさらにダメ押し的にDirac Live ART様のお出ましでございます(爆)。

 

P. (一番下の赤いラインがDirac Live ART全域適用後の、LPにおけるf特。紫は無補正。青は、ART150Hz以下だけに適用したもの)

3500art_20241226080801

 

流石だわ(笑)。Dirac Live10KHzあたりを均してくれるのは当然としても、やっぱり500Hzから下のフラットさは半端ではないです。普通のお宅なら、LPでは床や壁、天井の反射や家具などによる吸音、さらには定在波の影響でもっとむちゃくちゃ波打ってますよ。恐るべしART

 

P (これ、個人の部屋の2.5MLPでの測定で、スムージング1/6なのに、この低域のフラットさ!=分かる人には分かるARTの凄さ!)

3500art-6-octjpg_20241226080901

 

ただ、問題は、結局、「これで、音はいいの?」ですよね~(笑)

 

これはMyuさんのブログにもコメントしたのですが(偶然、彼も制作中の自作ハイエンドSPを測定した記事をUPしておられたので)、このデータを見てしまってから音を聴くと、どうしてもデータ的に優れている(つまりフラットに近い)もののほうが、<イイ音>に聴こえてしまうのが、聴覚も脳に支配されている人間のサガかと(笑)。

 

ただ、個人的には、Dirac Liveフル帯域適用(赤線)のセッティングより、低域にARTだけを効かせたもの(青線)のセッティングのほうが、「出音」がVividで好みではあります(データ的には前者のほうが圧倒的にフラットで優れているが)。

 

まあ、これからしばらくはこれで様々な音源を聴き込こんでみますが、もしかすると、「舌の根」ならぬ「耳の根」?も乾かぬうちに(笑)、また<問題ある音>を発見してしまい、「チャンデバ地獄」のループに陥るかもしれません・・・(笑)。取り敢えず言えることは、今聴いている「ハルサイ」は、自分史上ベスト(断言!)。ご関心のある人は年度内に是非聴きに来てください!

今年の仕上げ3連発―Magnetar導入、チャンデバ調整(またまた・・・)&Amator III再配置(その1)

Magnetar UDP800の導入】

 

まずは、お待ちかね(?)MagnetarUDP800です。

Img_0042_20241226135701

これを購入するかどうかについては、正直迷いました。理由は単純、「果たしてこの先、<ディスク>を再生する装置が必要であり続けるのか?」という疑問が拭えなかったからです。

 

言うまでもなく、時代の潮流はオーディオのみならず、映像すらダウンロードまたはストリーミングによる配信が中心になりそうな勢いです。現状では、少なくとも2chの世界ではほぼ「データ量」(=「音質」かどうかは議論の余地あり)的にはディスクは不要になっていると言い切ってもいいでしょう。

 

私は何度も書いているように映像は重視していないので、映画を見るだけならまあ、普通のUHD対応BDプレーヤーで十分なんです。映画は画質・音質より、Story重視派なので(笑)。

 

私がプレーヤー(あらゆる意味での再生機)に求めるものは音楽再生、しかもマルチチャンネルソースがHDMI出力できること。そうなると今世の中にあるマルチチャンネルソフトは、1.ストリーミング、2.ダウンロード、3.BD、4.SACD-multi(+DVD-Audio)―の4種類。この内、1はAuro-3Dは無いし(もうじき、という「オオカミ少年」状態が続いているが=汗)、ATMOSは圧縮版なので音質が論外(そもそも私はAuro-3D派)。2は最近増えてきて今後の主流になりそうだが、まだタイトル数が少ないし、未だAuro-3Dフルフォーマットの13.1chのファイルは売られていない。3はダウンロードでは入手できないソフトもあり、映画だと13.1chもあるので、そろそろ音楽でもフルフォーマット版が出そう?=期待! 4は、「これまでに制作された」作品数という点では、恐らく最も多く、Auro-Matic映えするLiveもかなりあって音質もいい。惜しむらくは5.1chということだが、Classicの場合は、これをHDMI出力でAVプリに入れてAuro-Maticにして13ch化して聴くと個人的には満足感大。

 

ただし、このうち、4だけは、これがHDMIでマルチ出力できるプレーヤー(私はアナログ出力は全く使わないので、900ではなく、800を選んだ)って、完全に「絶滅危惧種」。どうやら「アブナイ」(大汗)ことをやれば、これをファイル化できるという噂は聞いているが、職業柄その「アブナイ」橋は少なくとも(汗)、現役の間は絶対に渡れない。

 

レコード会社(?)によっては、SACD-MultiのソースをPCM化してダウンロード販売しているところもあるが、過去に遡ってすべてのSACDをファイル化してくれているわけではないし、そもそもDSDではなく、PCMにしている段階で音が変わっている。どちらのフォーマットの音が好みかは個々人だが、私はSACD-DSD派。

 

私が現在所有しているSACD-Multiのディスクは約200枚程度しか無いが、それでもこれらが「ただのコースター」(泣)になる日を早々に迎えたくはない。

 

となると、この「絶滅危惧種」であるSACD-Multiとそれを再生できるプレーヤーは、生存が確認されているうちに「サンクチュアリ」(笑)に保護してあげないと!(オーディオ環境保護派か?=爆)

 

ということで、手持ちのOPPO-205が健在なうちに、後釜(笑)として購入しました。これで少なくとも私が「現役」を退くまでは、SACD-MultiAuro-Maticで楽しめるメドが立ったと信じたい!

 

さて、音の印象(申し訳ないが、映像の品質については私は語る資格がないと強く自覚しているため割愛)について。

 

一言で感想を言えば、「それまでのOPPO-205に比してS/Nが上がり、全帯域で解像度が増した」。

 

ただし、これは実は、「新品」VS「中古品」の結果である可能性を排除できないのではないだろうか。

 

私は常々、オーディオ評論家なる人種が、「前モデルから格段の進化!」ってなことを書き殴っているのを見ると、あれは半分は商売だろうけど(笑)半分は「本当にそう聴こえている」と思っている。ただし、これはほぼ確実に、「旧モデルVS新モデル」をメーカーの試聴室でやっての感想であることに注意が必要だろう。つまり、この比較の対象になっている「前モデル」は、何年も前に作られ、これまで<試聴機>として使い回されてきたものなのだ。「旧モデルVS新モデル」の比較試聴は、常に「中古品VS新品」対決なのである。

 

言うまでもなく、あらゆる「機械」(これは電気製品でも電子製品でも)は、経年劣化する。さらに使用時間に応じて減価していく(この場合は値段だけでなく、性能価値も)。

 

私は基本的に古いオーディオ機器を買う趣味はない。基本、新品を買うが、中古品を買うときも「新古品=現行モデル」という類のものしか買わない。それは以前、Fostexのエンジニアが、「出荷したその日から、劣化は始まっています」と断言するのを聞いたからだけではない。実際に、ある超ロングランモデルで、<20年前に作られたもの>と<全く同じものだが作られたばかりのもの>を聴き比べた経験から言っている。同じものとは全く思えなかった。その経験から、20年前に100万円だったオーディオ機器が、現在10万円で売られているのは、その音質・品質が十分の一になっている、つまり「10万円の音になっている」ことを市場が正しく価値づけているからだと私は考えている。だからヴィンテージの<過去の超高級機>に、その「当時の価格なりの音質・品質的な価値」は見出さない。あくまでも「中古で入手した時の価格相応の音」であり、過去の100万円が中古で10万円で入手できるものは、現代の新製品の20万円のものより確実に「科学的に見た場合の音質(音色、ではない)」は劣るとこれまでの経験から考えている。ここにも「需要と供給のバランスで決まる価格は価値を示している」という、<神の見えざる手>が働いていると思うからだ(もちろん、劣化しているのは「工学的データ」だけで、「音質・音色」評価は主観的なものであるから、<個人差>はある。人によっては、古い車でダンパーがスカスカになったものの方が、「乗り心地が良い」という人がいるのと同じだ=笑)。

 

だから、本当に「旧モデルVS新モデル」対決をするのであれば、両方とも作られたばかりの新品(在庫品ではダメ)で勝負しないとFairではないはずだ。誰しも車を買い替えて新車に乗ると「静かになって乗り心地が良くなった」と<毎回思う>だろう。それって、買い替える前の車が、「新車だった頃」と比べてますかね?(笑)

 

ロジックが長くなったが(汗)、今回の800がこれまで聴いてきた205(約7年前に購入)に比して「良い音質」と聴こえるのは、単に「新品だから」という面があるのは科学者マインドを持つものとして否定できないと強調しておきたい。つまりそこまでの大差ではない、ということだ。しかし、このことは私をがっかりさせるものではない。今回の判断に際して、私にとって最も大事だったことは、「音質の向上」ではなく、「7年間稼働してきたOPPO-205と同等の製品」の<新品>を、2024年末時点で入手する(=少なくともこれから7年は楽しめるだろう・・・)、ということなのだから。

 

ただし一つ、明らかな両者の違いを書いておかねばならないことがある。この機種はOPPO-205にできたことができない部分が<少なくともDefaultのままでは>いくつかあるようなのだ。

 

まだ使い始めて間もないが、使い始めた時点で気がついたことは、1.ダウンロード購入してNASにあるAuro-3Dファイルが、この機器を通すとAVプリでAuro-3Dと認識されない 2.PCMBDに記録されたAuro-3Dファイルが、この機器を通すとAVプリでAuro-3Dと認識されない(DTSのものは大丈夫)―の2点。いずれも、OPPO-205ではできていたので、恐らく、内部的にビットパーフェクトでHDMI出力できていないのだと思われる。これについては、現在、輸入代理店のエミライがメーカー側に問い合わせているところ・・・

 ・・・とここまで書いた時点でエミライのサポートから有力な情報が!「ボリュームMAX(100)ならビットパーフェクト出力が可能」とのことで、リモコンでVolume100%にすると、1,2どちらもAuro-3D再生が可能になった。確かOPPO-205だと、出力は「Max状態でFix」がDefaultだったと思うが、800はHDMI出力を固定する設定が見当たらない。ゆえにいうまでもなく、今度リモコンを手に取るときに、Volumeボタンを少しでも押してしまったら、またAuro-3Dは再生不可になろう(汗)。接着剤で固定しておこうかな?(笑)

Img_0034

他にもいくつかDefault設定を変更すべき点があるが、エミライのサポートとは数回(汗)メールを交わし、恐らく時差のある本社との間に入って頑張ってくれた。そのお陰(?)で、この問題のノウハウは先方に知的蓄積ができただろうから、今後のサポートはスムースに行くだろう(まあ、こういう問い合わせは、極めてマイナーだとは思うが=笑)。

 

800は上位機の900とはこの点(HDMI出力およびNASのファイル再生)について「機能的な差はない」とエミライのサポートが明言しているので、他に差があるとすれば、電源部の差と、内部剛性の差だろう(繰り返すが、私はDACは使わないので、ここの差が本当は一番大きいようだが私には無意味)。このうち、個人的な経験では「電源部」は結構出音に差がつく点なので、900との差額(約20万円)が浮いたので、この際、この800専用にHondaの蓄電器を奢って「電源部の強化」をしてやろうと思っている(笑)。この蓄電器は今はStormAVプリだけに使っているが(出力は2ソケットあるが、2つの機器を同時につなぐとやはり音質が落ちる。恐らく、電源ケーブルを通じて相互のノイズが入るのだろう)、その威力は完全に実証済み(グランドスラムさん、Tomyさんも証人!)。蓄電器は停電のときにはLife Lineにもなるので、まあ、伊豆に2台置いても「いざというときに備えた」とも言い訳ができるのでいいだろうと(笑)。

 

FIBBRの光HDMIケーブルを「音声専用出力」とStorm ISP MK2との間に使い(なぜか、電源投入時にはNegotiationに失敗する事が多く、一度つなぎ直す必要があるが・・・)、年明けに専用蓄電器も届けば、「新品のピックアップとクロック」を通じてよりクリーンな音が楽しめると期待している。

 

2024年12月15日 (日)

Eversolo DMP-A6 Master Edition VS Roon Bridge

私の「師走」は山を越えまして(笑)、伊豆に来ています。

 

実は、かなり前から、「忙中閑あり」が見込まれるこのタイミングに合わせて、いつもお世話になっているダイナの島さんに、Eversolo DMP-A6 Master Edition(以下、A6)の試聴機を予約して、送ってもらったのです。

 

これはいわゆる、「ミュージックストリーマー」?とか言われる、ネットオーディオ時代の到来とともにスタンダードになりつつあるソース機器で、インターネットやLANにあるデジタル音楽ソースを再生する専用機。

 

はっきり言ってこの手の機器は今や各メーカーから出ているが、私がこれに注目した理由は言うまでもなく、「もしかして、Auro-3Dファイルが再生できるんじゃない、コレ?」ということ。

 

これは、HDMI出力があり、それ自体は今や珍しくもないのだが、その殆どがARC用で、要するにテレビの音をちょっといいDAC経由でアンプに出力して、外部スピーカーで多少いい音でテレビを楽しみたいというニーズ用のものばかり。

 

でも我々「友の会」的には(笑)、HDMI出力と言ったら、「マルチ、5.1ch7.1chでデジタルアウトさせて、それをAVアンプに入れてAuro-3Dデコードさせて、9.1ch11.1chで楽しむためのもの!」、これしか無いですよね(笑)。

 

しかし、この「マルチ出力」に対応するHDMI端子を備える「ネットワークプレーヤー」って、現状、ほとんど存在しない。ダウンロード購入したAuro-3Dファイルを、NASに入れて、それを吸い出してAVアンプでAuro-3Dとして正しくデコードさせるには、私の現在の環境では1.OPPO-205を使う 2.Roonを利用し、HDMI端子のあるPCRoon Bridgeにする―の二通りしか無い。

 

前者は、最近、動作が不安定な時があって、都度再起動したりするのだが、すでに絶版で修理も受け付けていないので、この先が不安・・・ゆえに、1年ほど前からTomyさんなどのご指導を受けてAuro-3Dのファイル再生は、Roon Bridge経由を今はメインにしている(実は、音もこちらの方が良い)。

 

ただ、音楽を聴くたびにPCを立ち上げる(しかも、Roon CorePCを含めて2台も・・・)のが、どうにも「優雅」じゃないのが、貴族趣味(笑)のワタシはずっと気になっていて、この解決法として、Roon Nucleus というハードを導入すればいいことは私なりに研究して(笑)わかっているのだが、その最新型のTitanというのが、いつまで経っても日本では出ないし、円安もあって、並行輸入してもかなりお高い(しかも「保証」がつかない=汗)。

 

そんな中、これ、実は、Master Editionが出る前のA6の時代に、TIASで「展示」(私が行ったときは再生していなかった)されているのを見て、「これ、HDMI出力があるようだけど、マルチで出せるの?」とダメ元で説明の輸入代理店の方に伺うと、「YES」と言うじゃないですか!

 

「じゃあ、Auro-3Dにデコードもできますか?」と畳み掛けると、

 

「それ、何ですか?」・・・(泣)

 

 

輸入代理店では全く検証もしていないことがわかり、一瞬にして冷めて一時忘却の彼方にあったのですが(笑)、この夏に、Master Editionというクロック?をUpdateした上位機が出るという情報が。

 

残念ながらこの記事にも、「5.1ch再生ができる」とは書いてあるものの、Auro-3Dファイルが正しく展開できるかどうかは書いてない(マイナーだからなあ・・・)。

 

理論的には、5.1chがビットパーフェクトで出力できるなら、AVアンプ側で9.1chにデコードできる<はず>なのだが、こればかりは相性問題などもあり、いままで何度も痛い思いをしてきた(汗)。

 

「誰か、人柱になってくれないかなあ」と待つこと4ヶ月。

 

この間、オーディオ評論家や『価格コム』などのネット上の情報はすべてこの機器の2chアナログ出力の音質を云々するものばかり・・・

 

そうこうしているうちに、書斎の古いMarantzのユニバーサルプレーヤーとRoon Bridge用の古いPCの動作がほぼ同時期に怪しくなってきて(汗)、書斎でもAuro-3Dを聴ける環境を維持するために、1.書斎にOPPO-205を移動し、伊豆に新しいユニバーサルプレーヤーを入れる 2.伊豆にA6を導入し、伊豆で使っているRoon BridgePCを書斎に移動する―の2択状況になってきた。

 

この場合の判断基準は、やはりオーオタとしては、最後は「使い勝手」よりも「音質」ですよね!つまり、A6Roon Bridgeのどっちが音がいいのかを試して(まあ、その前にそもそもA6Auro-3Dが再生できるかが先だが!)、A6の方が音が良ければ、2の選択に、Roon Bridgeの方が音が良ければ1の選択にしようと心に決めまして。

 

で、お借りしたんですよ、A6Master Editionを。

 

 

いつものことながら前置きが長くなりましたが(笑)、以下に比較試聴結果を。

 

その前に、そもそもこのA6でAuro-3Dファイルが正しくAVアンプに送れるのか、ですが、結論を先に言えばOKです!

 

ただし、ちょっと設定に工夫がいります。このA6はマニュアルが無いので(Onlineはあるけど、元々見ないタイプ=笑)、若干苦労しました。後に続く方のために、ツボをご紹介します。

 

P LANケーブルを繋げば、すぐにRoonからは見えるが・・・

Img_2980

 

 

まず、このA6は、デフォルトだとOutputがアナログ2chXLR/RCA)にしか出ない!普通は、アナログとデジタルの両方から出力してますよね?(この機器は排他利用になっているようです) だから、LANとHDMIケーブルを繋いでRoonから操作しただけだと、いつまで待っても音が出ません(汗)。「ソース」の中の「出力ポート」(入力ではない!)という画面で、「HDMI」を選ぶ必要があります。

 Img_0017_20241214211801

PImg_0018_20241214211801

 

次に、デフォルトだと「HDMI出力」のPCMオーディオのところが「Auto」になってますが、ここは「マルチチャンネル」にしておいたほうがいいです。AutoだとAVアンプ側とのネゴシエーションに失敗する事があるからです。Img_0019_20241214211801

 

PImg_0020_20241214211801

 

最後に、ここが見逃しやすいのですが、5.1ch出力が「ビットパーフェクト」でないとAVアンプ側でAuro-3DにUnfoldができません。この「ビットパーフェクト」の要件は色々ありますが、この機種で肝心なのは、ボリューム。これを右一杯に回す、つまり100%出力=0dBReduceにしておかないと、「ビットパーフェクト」にならないので、ただの5.1chになってしまいます。再生ソフトにRoonを使う場合は、Volume ControlFixedにすれば、A6のボリューム位置は無視できますが。

 

PImg_2981

 

これでOK

Img_0016 

さて、今回の比較に使用した機器は、Eversolo DMP-A6 Master Edition VS Roon BridgeWindows)+ Roon Core Mac :M1

 

書斎 Denon 3800H HDMIケーブル:FIBBR King-A Bridge PC: AMD

伊豆 Storm ISP MK2 HDMIケーブル:FIBBR King-A Bridge PC: Intel

 

P 今回使用した光HDMIケーブル。Tomyさんに推薦していただいたもので、とても気に入ったので、追加購入し、現在は3本ある(笑)

 Img_0015

念の為、書斎と伊豆の両方のシステムで、比較しました。全体に、A6の方が、2dBほど音量が大きいので、試聴の際はボリュームを調整しました。

 

 

以下はすべてAuro-3Dのダウンロード音楽ファイルです。

 

・・・・・・・

リスト ピアノソナタ 最初の低域の音の深み 高音部のフォルテの強さでBridgeが勝る

 

Pax 最初のViolinの「強打」奏法のPulsiveな音の凄みでBridgeが勝る

 

ストラビンスキー 『イタリア組曲』 立体感 味わい深さでBridgeが勝る

 

『四季』の「冬」 凄み 奥行き感でBridgeが勝る

 

シューベルト 「菩提樹」 A6の方がハイ上がり ボーカルが前に押し出される Bridgeの方がバリトンの声質が魅力的に聴こえる

 

名倉 マリンバ 空間感 倍音・残響音の深みでBridgeが勝る 伊豆だと、A6の方が高域の残響音が目立つ(やや過剰?)

 

ピアノ・ソロ Live ホール感でBridgeが勝る A6はオンマイク録音?のように聴こえ、ピアノが近い

 

ビオラ・ダ・ガンバ 重厚さでBridgeが勝る

・・・・・・

 

ということで、伊豆のシステムでも書斎のシステムでも、Roon Bridge経由の音が私の駄耳によれば圧倒! A6は全体的に腰高で、平面的。もしかするとJazzPopsでシンバルの音が好き、という方ならA6に軍配を上げるかもしれないけど、そのようなAuro-3DNative ダウンロードソースってあります?BDなら少しはあるみたいですが、現状、ほぼClassicかと。

 

正直言って勝ち負け入り乱れる感じだったら、「華麗な使い勝手」のA6を導入しようと思っていたのですが、ここまで差があると今回はパスです(実は、今回の試聴の際に、EversoloHPを改めてみたら、UHD8000とかいう上位機種らしき新製品を発見!これもマルチOutができるらしいので、せっかくならこっちも取り寄せたかった・・・またの機会に)。

 

また、とても重要なことですが、このA6のマルチ出力は、5.1chどまり。つまり、7.1chソースはサラウンドバックの2chの音がカットされてしまうのです(失われた音楽データをA6がどう処理しているかは不明だが、私の聴感では情報が失われているように聴こえた)。今回の試聴ソースでは2番目のPaxがそれで、伊豆のフルシステムでは、Bridgeだとサラウンドバックから音が出ますが、A6だとそこに音が振られてないので、出ません。

 

 

P A6によるPAXの再生。上部Inputs7,8番 LBRBに入力が全く無いのがわかる。ゆえに下部Outputs12,13番に出力がない(Bridge再生の場合は、この2chにも入出力がある)。 20241214-234106

 

 

これは第一層に7chを用意しているAuro-3Dファンにとっては致命的で、確かに現状はほとんどのAuro-3Dダウンロードファイルは5.1ch9.1chではあるものの、今後恐らく7.1ch11.1chソフトが増えるであろう(Hopefully!)ことを考えれば、さすがにA6は選択から外れますよね(汗)。

 

【念押ししますが、この機器には非常に多くのInputsとOutputsの機能があり、この中で私が今回検証したのは、Roon ReadyのInput、HDMIマルチのOutputだけです。ほとんどの雑誌やネット上の「激賞」(笑)は、本機のDACを経由したアナログOutの音だと思います】

 

ということで、結局、OPPO-205を書斎に移動させることとし、後釜にMAGNETARUDP800を注文します(流石に試聴機を借りといて何も買わない、のは気が引けるし=笑。ただ、ユニバーサルプレーヤーは絶滅危惧種でまともなライバル機種が残念ながら全くないので、試聴もせず・・・900は私にとって全く不要なDACにカネをかけているので、HDMI出力しか使わない私の用途にはあまりに非合理的)。これもまた「人柱」情報が少ない機種ですが(Sさんによると上位機の900ともども、そこそこ売れているらしいが、情報を出さないタイプの人が買ってるんだろうなあ・・・)、届いたらまたいずれご報告しますので、お楽しみに(笑)。

 

 

【おまけ】

 

この機器の個人的なもう一つの興味は、これまで「Apple TV 4K」の専用機器でしか再生できなかった、Apple ATMOSをこれを使えばちゃんとATMOSとして再生できるか?だったので、一応Tryしましたが、残念ながら「説明書をちゃんと読まないワタシ」(爆)では、操作が複雑でApple Musicにまでたどり着けませんでした(汗)。もしこれを購入したのであれば、真剣に取り組むとは思いますが、主目的のAuro-3Dの再生でパスという判断になったので、これ以上これに時間を費やす価値を見いだせず(私はオーディオ評論家ではないので=笑)。

 

まあ、原理的にApple Musicが提供しているATMOSは所詮圧縮音源で、普段は自宅リビングに置いてある「Apple TV 4K」の専用機器を伊豆のシステムで再生してみたことはあるのですが、どう聴いても音質が(泣)。「とにかく音に囲まれたい。ATMOSならなんでもいい」というニーズの方はともかく、ちょっといいシステムを使っていてバイオリンやピアノなどに真剣に耳を澄ませば「本物の」BDATMOSとの音質差は歴然なので、こちらは、無圧縮のATMOS音楽配信が始まったら対応機器の購入を真剣に検討したいと思っています。

 

2024年11月24日 (日)

結局、「玉突き事故発生」…Amator IIIよ、どこへ?(泣)

故障したエアコンの入れ替え工事が延期されたため、2週連続で伊豆に行く羽目に。「羽目に」と言いながら、アンプを変えたばかりなので、半分、ルンルンで()

 

さて、前回、Sonetto VIIIのツイーター用のパワーアンプをSoulnoteA-0に交換した、ということを報告しました。

 

P 【A-0はそれぞれの場所へ。なるべく隠したいので、ソファの下、階段の下、棚の下に(笑)】

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しかーし、「これで何事もなく、タダの入れ替えでは済まないだろうな・・・」とこれまでの経験から恐れていたのですが・・・

 

このBefore/Afterの2枚の写真を見て、これまでとどこか変わったところがあることに気が付きますでしょうか?

 【Before】

Before

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【After】

 

かなりレベルの高い「間違い探し」だと思うんですが、実は、Afterは、Amator III用の台に乗っているのが、Sonetto Iなんです。で、アンプ類の横にあるのが、Amator III。そう、入れ替えたんです。

 

ここで、私のブログを継続的に読んでいただいている方は、「えっ、この前、Amator IIIAuroシステムに組み込んだんじゃ?」と記憶されている方もおられるかもしれません(まあ、普通、そんな人、居ないな=爆)。

 

それは、この記事でした。まだ2か月前です(汗)

 

自分の記事からで恐縮ですが、ちょっと関連個所を引用します。

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実は過去にも、Amator III+OctaveをAuro-3Dシステムに組み込んでみたことがあるのですが、どうも違和感が拭えない。主役のLCRと音色が異なるので、「悪目立ち」することが多々あったのです。イマーシブオーディオは<一体感・包まれ感>が重要なので、あるSPが「僕、ここに居ます!」となってはダメですよね(笑)。

 

ところが! この春からLCR+SLRとして使っている主力のSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプで運用しているのはすでに何度も書いていますが、それ以来、実はどうもSBLRに使っているSonetto Iの音が、逆の意味で「悪目立ち」することを感じるようになっていました。チャンデバ化すると全体的に音が鮮烈になるので、パッシブのSPの音が「ぬるく」(笑)感じる様になっちゃうんですよ(これはあらゆるチャンデバシステムに共通する音質で、最近、私の耳はすっかり「チャンデバ耳」に!)。

 

「これはもしかするとAmator IIIの方がまだマシでは?」

 

Amator IIIはバイオリンや女性ボーカルなどは私好みの甘い音がする素敵なSPですが、やはりいいマグネットを使っているからか、はたまたいいネットワークをつかっているからか、音のキレはSonetto Iよりあるんですよ(マイケル・ジャクソンがちゃんと聴けますから!)。Octaveも真空管ではありますが、一般的にイメージするような「茫洋とした、おおらかな音」を出すアンプではありません。しかも、これをSBLRにすれば、150度に位置に置くのはたやすいことです。

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ここにウソ偽りは無かったのです、当時は(汗)。ではこの2か月の間に何があったかって? そりゃ決まっているでしょ、先週のA-0の導入ですよ!

 

A-0を高域用に導入したら、またまたAmator IIIOctaveがプカプカと浮き始めまして()A-0の出す高音は、非常にS/Nが良くさわやかで、Sonetto VIIIではボーカルが皆さん、5歳は若返っちゃたんですよ()。逆に元来、Amator IIIOctaveは普通のスピーカーとアンプの組み合わせより、10歳は歳嵩を増すので()、こうなると、なんか、コーラスの後ろの方に、ポツンと年増が入っている感じになってしまって(汗)。先の記事に書いたように、音のメリハリやキレなどはAmator IIIの方がチャンデバ化したSonetto VIIIと近いことは近いのですが、この「歳の差」は如何ともしがたい・・・

 

ということで元に戻そうと思ったのですが(これだけならPC上で簡単にできる)、ここで閃いたのが、「もしかして、このスピーカー台、Sonetto Iにも使えないか?」ということ。この台はAmator IIIに付属してきたもので(今は別売りかな?)、足元が人工大理石になっていて、Amator IIIの底部と素材を合わせてある、オシャレなもの。もちろん、最近のブックシェルフのお決まりで、台との間はネジで緊結されています。

 

よくよく考えると、Sonetto Iの底部にもネジ穴がある。これは梁に逆さ吊りする際に、このネジ穴を利用して固定したのでよく知っています。「もしかして、Amator IIIとネジ穴の位置が同じじゃ?」。

 

で、日曜日、ヒマだったのでやってみると・・・やはり、ピッタリ()

 

これ、合わなければ「ただ、台の上に置く」という手もあるにはありますが、その場合は次のStepに進むのは止めようと思っていました。でも、合ってしまった(笑)からには進むしかない!

 

ここで、Sonetto IAmator IIIの台に乗せてサラウンドバックにしても、パワー供給源にOctaveをそのまま使うんじゃ、やっぱり音色が合わない(一応、Sonetto Iと繋いで鳴らしてみました。やっぱり、「真空管」でした!)。

 

こうなりゃ、駆動するアンプも変えないと、音色をSonetto VIIIに近づけられないのは明らか。で、「Sonetto Iもチャンデバ化しました!」というのは悪い冗談で(さすがにまたバラして<改造>するのは面倒だし、測定やらチャンデバのパラメーターの設定やら、考えるだけで・・・)、でもチャンデバは無理だけどバイアンプにすることにして、ツイーターをPA-16で、ウーファーをSTA-9で鳴らすことにしました。実は、かつて、Sonetto VIIIをバイアンプにしていた時には、上(ツイーターとスコーカー)をSTA-9、下(ウーファー)PA-16につないでいたんです。その名残で、このSonetto Iも同じにしていたのですが、今回、両者を比較試聴した結果、より、今のツイーター=A-0、スコーカー=STA-9BTL)、ウーファー=PA-16に近い音色を出すのは、上下を逆にした組み合わせだと判断したんです。

 

これは何度も書いてますが、STA-9はデジアンのくせに()意外に音が和らかい。逆にA-0はアナログのくせに()意外にCoolな音を出す。私は歳を取ってからは甘い音が好きで、だからSonusに囲まれている()のですが、前も書いたように、今はきっぱりと、甘いSonusAmator IIIOctaveの2chシステムに任せ、Auroシステムの方は、ハイレゾ・ハイスピード・クリーン路線で行くことにメイン5台をチャンデバ化した時に腹を決めたのです。

 

ですから、音色を決める高域にこれまでのSTA-9ではなく、Pascalのデジタルモジュールを使ったPA-16で「Coolに決める」()ことにしました(これ以外のSonetto IIIはすべてPA-16だし)。

 

さて、その効果は?

 

ここで、オーディオ雑誌なら、「激変」って書くんでしょうが、Fairに言えば、まあ、気分ってやつですかね()。でも、全く同じツイーターに、Auro-3Dの文法に則った、正しい配置で囲まれるというのは気分的にはいいですよね。実際、私の持っているマリンバは第一層が7chに入っているので、マリンバの音がホール全体に浸透していく際の「包まれ音」の再現に際し、Amator IIIが入っていると、どうしてもそこだけ音が少し目立っていたのが、目立たなくなりました(スピーカーが消えた、といえばこの場合は誉め言葉なのかな?)。

 

さて、「次なる大問題」がさらに玉突き的に発生しておりまして(大汗)。現在はTentativeAmator IIIOctaveを、かつて、Sonetto Iが「ATMOS映画の時の、サラウンドバック」として滅多に出番のない隅に追いやられていた、まさにその場所に(泣)。

 

かわいそうに、今やAmator IIIは「足を無くしてしまった」()ので、もうどこへも行けません。かつては、「2chブックシェルフとしての理想的な位置」にキャスターで移動させて、<たまには>女性Jazzボーカルなどを歌っていたのに・・・。今の「押し込められた位置」では、後ろの壁(ガラス窓)まで50センチぐらいしかなく、「いいブックシェルフ」が求める、<左右と後ろの壁から最低1Mは離す>という黄金律を守ることができていません。さらに、足元は安物のスピーカー台で・・・

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実際、音を出してみると、以前より低域がボケ、膨らみます。夜中に小さな音で再生するなら「ラウドネス」効果になっていいかもしれませんが・・・。

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うーん、これでいいのか、Amator III? 一応、拙宅のオーディオ機器の中では、これとOctaveは、それぞれ小型ブックシェルフとプリメインアンプとしては、まあハイエンド系なのに・・・。ハイエンドにはハイエンドにふさわしい環境を与えてあげたいんですが(泣)。

 

実は、元々このAmator IIIOctaveのカップルは、最近はすっかりオーナーの寵愛を受けておらず、月に一度の「通い」()もない状態がもう何か月も続いているのです。それゆえ、ある方に、「もっと可愛がってくれる人のところにお嫁に出したら? このままでは可哀そう」と言われてしまい(汗)、実は、これを購入した某秋葉原の有名店に、「買取り、してるの?」とメールを出したら、お世話になっているSさんから「OO様と出会ったのがSonus faberのスピーカーですし、色々とお選びいただいた結果ですので寂しいですが、使用していなければセカンドユーザーへというのもありですかね」という温かいお言葉とともに「Yes」の返事が来ていたのです。

 

自分でも迷っている中、この前関西に出張した際にお会いしたモンテモンテさんにこの話をしたら、「売らない方がいいですよ、絶対。一度は惚れて買ったSPであれば、いつかまた絶対聴きたくなるもんですから」と言われ、「まあ、確かに、本気で惚れた初恋の相手はいつまで経っても忘れられんものだもんなあ」(下世話なたとえですみません!現在の職業属性的にはかなり不適切発言ですが=爆)と納得。<初恋の相手>とは「いつかまた」、というといろいろと難しい()面もありますが、<初恋のSP>なら、「いつかまた」、がいつあっても誰にも文句は言われませんもんね()

 

それにしても、Amator III+Octave、どこかでちゃんと愛でてあげたいなあ。これ、今後の重要な課題です!

2024年11月17日 (日)

Soulnote A-0を3台取り寄せ、チャンデバの調整をしてみました

これは前回の続報です。

 

自分の頭の整理のためにも、前回の記事で書き散らした、「なぜ、今回、ツイーター用のパワーアンプを交換したいのか?」をまずは箇条書きに。

 

  • 音源(単独楽器のフォルテ部分)によって、たまに「強すぎる音、嫌な高音」がしていた
  • 残留ノイズ音レベルがやや高めであった
  • STA-9Mid専用に使いたい(BTLまたはSingle
  • Low, Mid, Highをそれぞれ異なるパワーアンプを使って各ユニットとその受け持つ帯域の特徴を最大限活かせる組み合わせにしてみたいという、「高校生の頃からの好奇心」(笑)。

 

そのうえで前回の2chによる、A-1との比較試聴を経て、今回、A-0を3台取り寄せて、LCRSLRの5つのツイーターにつなぎ替え「マルチとしての最終形」としたうえで、この状態で確かめてみたかった残る懸念点は(気に入らなければ返品・中古売却→新たなアンプ探しの覚悟=汗)、

 

1.10Wの出力で問題ないのか?

2.Auro-3DNativeソフトで再生した時、他のSPとの音質的な違和感はないか?

3.Auro-3DNativeソフトで再生した時、A-1と迷った「奥行き感」の表現力に問題はないか?

4.A-1と迷ったポイントである、相対的に「やや華やか<過ぎる>」音(中低域の再生音もA−1に比してやや腰高になっていた)を、チャンデバ側の設定を変えることで解消できないか?

 

の4点であった。

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さて(笑)。

 

まず、1に関しては、スピーカーユニットを単体で取り寄せて自作されるレベルのマニアの皆さんには既知の問題だと思うが、ついこの前まで「初心者」を名乗っていた(汗)私には、「出力ワット数の小さいアンプのほうが、危ない。スピーカーユニットを壊しやすい」ということを諸先輩方に教えていただくまで知らなかった(汗)。私は「ツイーターは繊細(=壊れやすい?)そうだから、300Wとかの出力のあるパワーアンプではヤバイだろう」と思って、小出力アンプから探していたのだが、これはとんでもない誤解だそうで・・・

 

SPユニットを壊す、というのは「コイルを焼き切る」ことだそうで、それが起きるのは直流電流が入って一定時間以上継続的に入力された時。そして、この直流がパワーアンプから出てしまうのは、出力が飽和(クリップ)するときで、これはつまり、アンプの最大出力を超える出力を出そうとすると起きる現象だそうである。

 

つまり、「小出力アンプを使って大音量で聴くとき」が<一番危ない>。出力に余裕のあるアンプでは頭打ち=飽和=が起きにくいので、むしろ安全とか。うーん、知らなかった・・・よく、「最大入力200W」とカタログに書いてあるハイエンド系SPに、「最大出力1000W」のハイエンド系パワーアンプを繋いでいるマニアがおられるが、私はいつも「スピーカーが吹っ飛んでコーン紙が破れるんじゃ?」とフォルテパートでは内心ドキドキ(ちょっと盛ってます!)しながら試聴させていただいていたのだが・・・むしろ、伊豆のAmator IIIOctaveで、Octaveの出力が低い方のモード(最大出力15Wぐらいかな?=音質的には繊細感が増す)で、リストのピアノ曲を「普段、Auro-3Dシステムで聴くレベルで」(笑)再生していたときに、一度、フォルテッシモでOctaveがシャットダウンしたことがあったのを思い出した。あのときのほうがよほど「危なかった」んですねぇ・・・(大汗)。

 

先の記事のレス欄でも、いつもご相談に乗っていただいている元エンジニアのK&Kさんからも、「Auro3Dさんの場合、TWを比較的低い3KHzあたりから使われること、TWがソフトドームなので能率がやや低めだと思われること、Auro3Dさんが大音量派でピアノなどは生演奏よりも大きな音量で聴かれることを考慮するとクリッピングが起きる可能性を完全には否定できません。一番危険なのはピアノの高域の強烈な打鍵のような気がします。」とのご心配をしていただいているので、今回、正規の(笑)Auro-3Dフルシステムに3台のA-0を組み込んで、手持ちのAuro-3D Nativeソースの中から、なるべく多種多様な演奏・楽器のものを選んで、「自分が聴ける(笑)最大音量」でフォルテの部分を中心に次から次に再生してみた。

 

万一、5台中1台でも、一度でも「落ちた」ら、または何か不快な音(歪?)がしたら、「全部返品するか売却して、もう少し高出力のまた別のアンプを探そう」、という<悲壮な覚悟>だったが(汗)、幸い、大丈夫だった・・・まずはFirst Step、クリア(笑)。

 

そうなると次は「音質」の再確認である。前回すでに2の懸念についてはやってはみたが、それは所詮、A-0で駆動する1台のSonetto VIIIと、PA-16で駆動する1台のSonetto I or IIとの比較に過ぎない。実際に13.1chシステムに組み込んでの「音色の違和感」はないか、これも上述の「飽和」の有無の実験と併せて<耳をそばだてて>チェックしてみた。これをチェックするのに最もふさわしい音楽のパートは、先の「飽和」チェックポイントの直後に往々にしてくる、「残響音が空間に消え入るところ」である。LCRを中心にした直接音による再生が終わるころ、サラウンドバックやハイト群のSPDelayされた残響音を受け持つのだが、ここで音色が大きく異なると、バイオリンのソロだったはずが残響音でビオラになったり(笑)、ドラの音だったはずが、残響音でシンバルになっていったり(笑)するのだ。

 

自身による多様な「検聴」の結果、問題は感じなかった(Amator IIIOctaveの方がよっぽど浮く=汗)。

 

3については、これも前回の記事で予想した通り、私の駄耳では、Auro-3DNativeソフトとシステム自身に内在する「2chとは技術的にも・理論的にも比較にならない」奥行き感・立体感が十分感じられて全く問題なし。まあ、Ch数を半減するのならともかく、たかがアンプを変えたぐらいでAuroシステムの最大の特徴である立体感がいきなり損なわれるほどの違いが出るわけ無いだろうとは思ったが(笑)。

 

最後に、今回個人的に最も「楽しみに」していたのが、4の音色の操作の可能性の追求であった。これはプチ自慢になるが(笑)、CO値をいじるだけで、「全体の」音色が変わる、というのは、Passiveの普通のスピーカーを買い替え続けた「苦節40年以上」の間、全く知らなかったことである(恐らく、これを読んでいる方でPassiveしか使ったことがない方は、以下の部分は「驚き」以外の何物でもあるまい)。これまで私はスピーカー選びの際に、カタログに乗っている「クロスオーバー周波数」が何を意味するのかすらあまり意識せずに(汗)、ただ、自分の耳で聴いて気に入ったSPを選んできた。しかし、この春に諸先輩方の多大なご協力を得て生まれて始めて「チャンデバ・マルチアンプ」の世界に足を踏み入れてから、このCO値が全体の音色に多大な影響があることに気付かされたのである(Passiveの場合は、出音の音色を変えたかったら、ソース機器を変える、アンプを変える、ケーブル類を変える、などのテクニックを駆使されると思うが、CO値の変更による音色の変化の大きさはこれらの比ではない)。

 

例えば、わかりやすく2Wayで考えてみてほしい。CO値が2kHzのもの(=A)と、3kHzのもの(=B)があるとして、この両者が全く同じユニットを使っている場合、2.5kHzの音は「同じに聞こえる」だろうか?

 

これは2.5kHzの音をシンセサイザーで合成して再生した場合は、「理論的には」同じに聞こえないとおかしいことはおわかりになるだろう。しかし、実際の楽器の「ラ」なら「ラ」の音は、フルートとクラリネットでは異なることは経験的に知っている。これは基音の「ラ」(例えばこれを2.5kHzと考えてみる)以外に、様々な付帯音・倍音が付いてくるのが、「楽器」というものだからである(電子的合成音とはここが異なる)。

 

では先の例で、2.5kHzを基音とするフルートの音は、ABSP(繰り返すがユニットは同一)で、どのような音色の違いが出ると予想されるだろうか?

 

これは非常に急峻なスロープを使った場合、Aでは基音と付帯音の殆どの部分はツイーターが受け持ち、Bではウーファーが受け持つことになるのだが、この違いが、音色に大きな違いをもたらす。

 

簡単に言うと、Aのフルートの「ラ」音は、Bより華やかになり、逆に言えば、Bの「ラ」の方が落ち着いた音になるのだ。要は基音近辺の付帯音も、Aはツイーター主導、Bはウーファー主導になるからだ。だからSPメーカーでパッシブネットワークの設計者は、「高域に華やかさを持たせたい」ならツイーターのCO値を下げ、「落ち着いた音を出したい」のなら、上げるはずである。このCO値の操作による音色の操作は、もちろん、ユニットそのものが分割振動を起こすような帯域は普通は使わないので、ユニット自体のf特による限界はあるが、先にも書いた通り、笑えるぐらい音色が変わる。しかも、スペアナでみた場合は、どちらもほぼ同じf特カーブとして現れるのに、である。人間の耳は、測定機より敏感なのだ!

 

春先から「この技」を知ってしまったワタシ(だから、Active化した際、「これからはSPを買い替えなくても、パラメーターをいじるだけで永遠に音色の変化を楽しめますよ」、と先達に言われたのだった)は、今回の不満点(A-0だと綺羅びやかなのはいいのだが、やや全体に腰高な音色。私はピアノの右手は華やかなのが好きだが、左手の重みで感動するタイプ=だから以前どこかで書いたように、ドビュッシーの「沈める寺」が好き)を、なんとかこのテクニックを駆使して解消できないか、と今回の挑戦を「楽しみに」していたというわけである(笑)。

 

チャンデバ未経験者向けの前置きが長くなったが(汗)、以下のような4種類のHighMidとの間のCO値を5台のSonetto VIIIに全て適用して瞬時に切り替えて試聴できるようにした。つまり、3500から5000まで、500Hz刻みにした4つのセッティングを作ったのである。これまでのDefault3500だったので、これを引き上げることでMidによるカバー領域を増やす=高域の音色を落ち着かせることを狙うのだが、その塩梅は実際にやって自分の耳で聴いてみないとわからない。

 

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ちなみに、Sonetto VIIIのパッシブネットワークのMid-HighCO値は3000である。これはチャンデバ化・アンプ直結にしたときに、Default値では高域にキツさを感じ、ツイーターのカバー領域を減らしてスコーカーのそれを増やして対応しようとして、3500に上げたのである。今回、パワーアンプの入れ替えで、キツさはなくなったのだが、「軽さ」が出てきているため、もう少しMidに頑張ってもらえば改善できるのでは、との狙いがあって、更に上方のセッティングを作ってみた。なお、今回、CO値の上限を5000としたのにはもちろん合理的?理由があり、以前、Myuさんと一緒に厳密にユニット単体のf特を測定した際に、Sonetto VIIIMid5000あたりから6000にかけてピークアウトしており、その先は恐らく分割振動だろうということで、使えるのはせいぜい5000までとみているからだ(ちなみに、Mid上限のスロープはLR24Highの下は、LR48)。

 

P (青いf特がスコーカー、緑がツイーター)

Img_2934

 

ということで、比較試聴に際しては、基本的にはAuro-3D音源を用い、Classicならピアノ、バイオリン、チェロ、ハープシコード、アリア、マリンバ、ビオラダガンバなどの単体音源と、弦楽四重奏、協奏曲、交響曲のすべてを使い、Jazzはピアノ・ダブルベース・ドラムのトリオを中心に、RockだけはAuro-Maticを使用してグランドスラムさんご推薦のNobu’s Collectionを中心に「超念入りに」(笑)比較試聴した。

 

その結果、やはり現行の3500では、ハイ上がり過ぎて、ピアノの華やかさやRockのシンバルやシンセサイザーなどでは「くっきり感」が出るものの、私の好きな音源である女性ボーカルやチェロ、ピアノの左手あたりは音が軽すぎて、しっとり感と重厚感に欠ける。逆に5000にすると、本来小太鼓の軽快な音のはずが、ティンパニーに聞こえちゃったり、ピアノの右手の華麗さ・コロコロ感が失われたり、バイオリンの倍音が、ビオラに聞こえちゃったりした。Rockのバスドラムなんかはものすごく腹に来るのだが。

 

ということで40004500が決勝に残り、微差なのだが、より高域に華やかさを残す4000にすることとした。4500の魅力の中低域の迫力・重みは、4000のままでも、Mid用に用意しているSTA-9をこれまでのSingle接続ではなく、BTLにすればある程度カバーできるのでは、と考えたからだ。

 

ということで、High用のパワーアンプをSTA-9からA-0に変更したことに伴い、チャンデバ側の設定を以下のように変更した。

 

Low (PA-16) CO350(パッシブは270だった)Gain:0dB 

→変わらず

MidSTA-9Single) CO:3503500 Gain:-4dB 

→(STA-9 BTL) CO:3504000Gain:-10dB

High (STA-9, Single CO:3500 Gain:-7dB 

→(A-0SingleCO: 4000 Gain:-2dB

 

オーナーの贔屓目による(爆)感覚では、以前より、中低域が太くなり、高域には華がある。そして全体的にS/Nが上がって、空間の広さと見通しが良くなった(気がする=汗)。

 

プラシーボかどうかは、またどなたかの「検聴」を待つ必要があるが(笑)、実はまだこれで「終わり」ではない。検討すべき事項がもう一つだけ残っている。続きは次稿。

 

【おまけ】

 

一段落してこの記事を書きながら、自分が設定した「CO:3504000」を採用しているパッシブSPって世の中にあるのかな?と思っていくつかの主要SPメーカーの3Wayスピーカーのカタログを調べてみたのだが、見当たらない。「これはもしかして、私の耳がおかしいのか?」と少々不安になったのだが、メーカーのHPではないところに、以下のような情報が。

 

B&Wのスピーカーはクロスオーバー周波数を350Hz4kHzに標準化しています」

 

実はB&WHPも見たのだが、あそこはCO値を公開していないらしい。念の為、モニター的に評価の高い800シリーズのハイエンドと、僭越ながら(笑)、私のSonetto VIIIのカタログ上のデータを比べてみると:

 

801D4  (13Hz 35,000Hz)

TW 25ミリ、SQ 150ミリ、WF 250ミリ×2

CO3504000)?

 

Sonetto VIII (36Hz 25,000Hz)

TW 29ミリ、SQ 150ミリ、WF 180ミリ×3

CO2703000

 

うーむ、偶然なのだが私の聴感によるCO値の選択と、天下のB&Wのエンジニアのそれが同じ結論になったということは、つまりこれは、チャンデバ化とユニット別に異なるアンプの組み合わせによって、Sonetto VIII801D4化したってことか?(それはさすがに化けすぎ?=爆)

2024年11月11日 (月)

ツイーター用のパワーアンプ探し

1.Prelude

 

これは、チャンデバ・マルチアンプ化をしている人だけの独特な悩みであり、また歓びなんだろうとは思う。

 

チャンデバ・マルチアンプ化をすると、「理論的には」例えば3Wayシステムの場合、この1台のスピーカーを鳴らすに際し、3種類のアンプを使い分けることができる。ウーファー用、スコーカー用、ツイーター用にそれぞれアンプが必要だからである。

 

ただ、教科書的には、「同じパワーアンプでドライブすべし」とあるようで、私の周りの、そして今回も大変にお世話になっているチャンデバ・マルチアンプ化先達の方々(Myuさん、Cmiyajiさん、K&Kさん)も、ほぼ同じようなパワーアンプで3・4Wayを構成されておられる。

 

伊豆の場合も、これをやることは物理的には可能は可能だ。3Wayが5台あるので、15ch分の「同一」のパワーアンプがあればいいのだが、拙宅にはStormの「PA-16」という、16chのマルチパワーアンプがあるからだ。

 

しかし、天邪鬼な(汗)私はこれを良しとしない(笑)。世の中に<マルチアンプシステム>というのが存在すると知った高校生の頃から、「もし、自分が将来このようなシステムを持てるようになったら、アンプは全部異なるものを使いたい!」と心に決めていたのである(爆)。

 

アンプの比較試聴を一度でもした方ならわかると思うが、「こっちのアンプはボーカルが色っぽくていいんだけど、低音の締りがイマイチ。こっちはシンバルの音が鮮烈なんだけど、女性ボーカルの声が若すぎて嫌。これは低音はゴリゴリ来るんだけど、バイオリンの倍音が…」てな感じで、一つのアンプで、低・中・高音域すべてが自分好みの満点、って難しい。よほどコストをかければ別だろうが。

 

「これらのアンプのいいとこ取りをできたら、比較的ローコストでハイエンドアンプ以上になるかもなあ」とは思っても、パッシブSPではそれは不可能。入力は基本1箇所(まあ、最近はバイアンプもあるが)だからだ。

 

と、偉そうに書いても、現状は、拙宅の改造版Sonetto VIIIは、LowStormPA-16で、MidHighにはSTA-9を繋いでいる。つまり、2種類しか使っていない。Low用に選択したStormは、STA-9のシングル使いとBTLとの比較試聴を経て念入りに選んだので、ここはそこそこ満足している。いわゆるSolidHigh Speed系の、いかにも最新設計デジアン!って感じの音だ。私の好みの低音は、基音はSolidで、倍音(特に下方への)は柔らかい感じのもの。拙宅では、基音はSonetto VIIIのウーファーが担当し、ELAC3台のSWに床や部屋を震わせつつ(笑)倍音・付帯音の柔らかさを出すのを担当させているので、ARTの効果とも相まって、Auroシステムでの計30個のウーファーユニットを同時に駆動させる低域再生の品位にはかなり自信がある(笑)。

 

Midは、今はSTA-9の片チャンネルを使っていて、まあ上を見たらきりがないが、そこそこOK。このSTA-9もデジアンなのだが、カタログ的にはA+D級とか書いてあって、結構熱を持つ。そのせいか、デジアンなのに意外に温かい音を出してくれるので、ボーカルやチェロの再生音は甘い音の好きな私の好みの範疇に収まっている(逆に低域も甘いので、低域用としてはStormに軍配を上げた…)。

 

ただ、実はかつてバイアンプで運用していたときに、Mid-HighSTA-9BTLと「Single使い」(ステレオパワーアンプの片方だけを使うこと)で聴き比べたことがあって(これは確か昔のPhilewebで記事にしたかと)、「迫力を持って音が前に出るBTLVS「繊細で品位のある立体感を表現できるSingle」と両者の一長一短を知っていることから、いつかSTA-9Mid専用にして、BTLSingleをアンプ直結で聴き比べてみたいと思っていた。

 

最後にHighは、現状はSTA-9Mid用の残りの片チャンネルを使っているのだが、パッシブ(バイアンプ)時代には顕在化しなかった不満点が、チャンデバ・マルチアンプ化後は実は気になってきた。

 

それは2つあって、一つは、ちょっと音が強すぎるな、と感じる時があること。もちろん、チャンデバで調整してHighの出力音圧はMidLowと合わせてはあるので、Highの音圧が高いというわけではない。ただ、なんかちょっとエグすぎると感じる時があって、パッシブネットワークを通していたときは比較的Mildに抑えられていたパワーアンプとユニットのそれぞれの素の特性が、直結になったことで現れているからだろう。PopsRockだと(または映画の効果音)、「改造後、ものすごい音になったね!」と言われる理由の一つにこのHighの特性があるのだろうとは思うのだが、若い頃ならともかく(汗)、ピアノやバイオリンに優しく撫でてほしい(笑)ジジイの耳には時に、ちとキツい。今はDirac Liveでf特をいじってすこし誤魔化してはいるが…

 

もう一つの不満点は、ツイーターからの残留音が前より目立つようになっていること。これは高域聴力の落ちた私のようなジジイにはLPでは全く聴こえない程度ではあるのであるが、20歳の息子に指摘された(汗)。ウルサイと(泣)。確かに、ジジイでもツイーターに耳をつけてみると「シー」という音がちゃんと聞こえる。これはMyuさんによるとAVプリの残留音を拾っている可能性が高いとのことだが、実は先に書いたバイアンプ時代、Mid-High用にSingleBTLの比較をしたときに、STA-9自体にやや高域ノイズが乗っていることには気がついていた(故に最終的によりノイズレベルの低いSingleを選択した)。

 

それでもパッシブネットワークを通しているときは、Midより能率が高いHighの出力音圧を抑えるためのアッテネーターを通っているためにそこまで目立ってはいなかったのだが、ダイレクト接続になってアッテネーターレスになると・・・(泣)。

 

実は、「STA-9はチャンデバのHighに使うとちょっとノイズが目立つ」というのは、今回ご助言をいただいた「3人組」のお一人であるCmiyajiさんからも伺っていた。彼のSPJBLのハイエンドをチャンデバ化改造されたものなのだが、その時、JBLを象徴するホーン型ユニット用のパワーアンプ選びの際にSTA-9も試聴されたそうである。いうまでもなく、ホーン型は高能率であることで有名だが、高能率のユニットというのは、ソース機器やパワーアンプの残留ノイズという、低能率ユニットなら拾えない音まで再生してしまうのだ。それまで使っていたアキュフェーズのA級パワーアンプがホーン型ツイーターとダイレクトに接続したらきつい音が出るようになったとのことで、その入れ替え候補として取り寄せたSTA-9は、ノイズレベルが必ずしも低くなかったので、ボツだったそうだ。

 

2.1st Candidate: Nmode  X-PW1-MKIII

 

上記のような不満、あるいは改善点候補は誰でも多少は抱えているものの、何かのきっかけがないとなかなか踏み切れないものだ。今回は、この夏、Nmodeというブランド?から新しい「ボリュームつき」パワーアンプが発売された、というニュースを聞いてから、「やる気」が動き出したのである。

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ご存じの方もおられると思うが、このNmodeというアンプは、元Sharpのエンジニアが立ち上げたブランドで、「1Bitアンプ」というのが技術的なウリである。私がこのアンプのことを意識するようになったのは、もう1年以上前だと思うが、きょやさんのリスニングルームにお邪魔した時から。彼はNmodeFundamentalといった、ガレージメーカー?のアンプがお好きで、それをいくつか聴かせていただいたのである。その時の印象は一言で言えばClean&Solidなのだが、ただしこれは、Taikoとか、TrinnovとかDiatoneといった錚々たる機器で固められたシステムの一部だったので、このCleanさがこのアンプだけのものかどうかは私には分からなかったが。

 

さて、雑誌かネットかでこのパワーアンプのことを知った私は、「もしかすると、これは私が求めるツイーター用のパワーアンプにピッタリでは?」と直感。なんといっても、「1Bit変調?」という言葉は、SACD/DSDを想起させますよね?(仕組みがどの程度共通しているのかは、全くわからないが・・・)。個人的にはPCMのチャッキリした音より、DSDのやわらかみのある音の方が好きなので、ド素人が勝手なイメージで、「アンプの音も丸い高域が楽しめるのでは?」と。

 

しかも、値段が安い。これをMonoとして使って、5台分買ってもハイエンダーの2chのパワーアンプの足元にも及ばないコスト(笑)。マルチWayのマルチアンプで、マルチチャンネルシステム(この3つの用語の違い、理解して読んでくれてますか?=汗)を組んでいる者にとって、アンプを変える場合、今回なら5台分必要になる。2chでパッシブならステレオパワーアンプ一台買えば音が出るでしょうけど、拙宅の場合は5chを鳴らすだけでも、15ch分のパワーアンプが必要なので、某ハイエンダーみたいに1100万円以上するモノーラルアンプで構成するなら・・・私ならポルシェにするわ(笑)

 

ゆえにPriceと、できればSpaceWeightの少なさは結構重要なファクターで、その代わり、今回はツイーター用なので出力ワット数はそこまで重要じゃない(はず、と、素人的には最初は考えた・・・続きは後編で=汗)。

 

ということで、これは条件面では「ドンピシャ」だったし、きょやさんにもご推奨(ただし、この商品ではなく、Nmodeそのものを)いただいたのですが・・・

 

とりあえずまずはお試しでと思って、Amazonで「明日着く」と出ていたので、伊豆に行ったときに思わずポチり(笑)。

 

翌日、早速繋いでみると・・・ナント!

 

「シャー」という盛大なノイズが・・・(汗)

 

こちらはパワーアンプとして使おうと思っているので、ボリュームは最大にしている。この状態で、AVプリの残留ノイズを拾っているようだが、それにしてもひどい。STA-9の比じゃない。Mono4ΩのSPだと26Wの出力とあるけど、ピアニッシモなんかとても聴けたもんじゃないので、やむを得ず気にならないレベルまでボリュームを絞ると、今度はツイーターが音圧不足。

 

「もしかして初期不良?」と思って、販売店に連絡すると、結構まともなオーディオショップだったため、「こちらでチェックするので返送してくれ」と。で、向こうでは「問題なし」とのこと。ただ、先方のテスト環境はパッシブスピーカーにステレオで繋いだものだったので、どうやらツイーターユニットにダイレクトにMonoで繋いでいる当方の方が残留ノイズに敏感な環境らしい。

 

一旦スイッチがはいると、「じゃあ、もう止めた」とは私は思わないタイプ(笑)。そこで、チャンデバ仲間のMyuさんとCmiyajiさんに相談すると、Cmiyajiさんもかつて、前述したように現在私が使っているSTA-9の試聴機を取り寄せたそうですが、やはりダメ(=同意=汗)で、次にご友人の推薦で、SoulnoteA-0を試してみたそうで。すると「はっきりとした差で、残留ノイズが減ったし高域も嫌な音が出なくなったので、採用決定! Auroさんもこれを試してみたら?」とのご助言をいただいた。

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さらにMyuさんの「無帰還アンプというのが面白そうだから、どうせなら上位機種のA-1と2台同時に貸出してもらったら?」とのご提案を受け、今度は「ポチる」というフライングを避けて(汗)、販売店を通じて2台同時に試聴機を送ってもらったのです。

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3.Competition: STA-9, A-0 vs. A-1 for Tweeter

 

ということで、「文化の日」の連休に、客観性(科学性?)を担保するために、私が信頼するご近所のチャンデバ仲間のK&Kさん、Myuさん、Cmyajiさんにも伊豆の拙宅にお集まりいただき、表題の比較試聴を行いました。

 

まず最初に、スマホの簡易騒音計で、3人がお見えになる前の朝の部屋の暗騒音を計測してみました。平均39dBでした。これは東京の深夜の書斎より3dB近く静かです(以前どこかに書いたと思うのですが、伊豆の暗騒音の原因である、トイレ用のコンプレッサーはオフにしました=汗)。

Img_2893

比較は以下のような手順で行いました。

 

① Sonetto VIII2台だけ使った、LRステレオConfigurationDirac Liveなし。ただし、ユニットの位相を合わせるためのDelayと、音圧を揃えるための出力調整はしている)を使用。Img_0296

② 事前にA-0A-1(どちらもVolumeMax)それぞれをツイーターにつなげて、Pink Noiseを出力させ、LPにおけるツイーターの音圧がデフォルトのSTA-9を使った場合と同じになるように、音圧計で測定の上、AVプリ側の減衰値を決め、PC上で切り替えられるように登録しておいた。

③ つまり、①High: STA-9Mid: STA-9, Low: PA-16、②High: A-0Mid: STA-9, Low: PA-16、③High: A-1Mid: STA-9, Low: PA-16の3つをLRともつなぎ替え、同じボリューム位置で同じソースを聴き比べた。ソースについては、御三方の「決めソフト」をご持参いただいた。

 

まず、音を出す前の残留ノイズは、STA-9A-1>A-0であった。言うまでもなく、どれもNmodeに比べれば「耳をツイーターに近づけなければ聴こえない」レベル(笑)。

 

さて、御三方には入れ代わり立ち代わり、LPに座っていただいて、持参していただいた「決めソフト」を聴いていただいた。感想はニュアンスにズレがあるといけないので詳細には私が代わりに書かない方がいいと思うが、コメントの大意(笑)は:

 

Myuさん: A-1の方が良い。立体感で勝る。

Cmiyajiさん: A-0の方が良い。音の生々しさで勝る。

K&Kさん: ピアノも含め全体のまとまり感はA-1の方が優れていた。一部の女性ヴォーカルではA-0のまったり感に魅力を感じた。

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「一勝一敗一引き分け?」、つまり、完全にEvenである(笑)。ただし、STA-9との比較では、私を含めて4人とも、「音質的に、A-0/1の方が良い」という点では一致した。

 

以下は、私の「決めソフト」による試聴記:

 

・・・・・・・・・・・・・・

ベートーヴェンの「熱情」では、音圧計では同じMax値なのに、A-0が最も「フォルテ」に聴こえる。ピアノはA-0が一番華やか。1000MB&Wっぽい(笑)

 

しっとりしたA-1の味わいも捨てがたい。

・・・・・・・・・・・・・・

 

うーん、玉虫色(爆)。

 

ここで追加的に考えるべきことがある。マルチのSPの音色を決定する場合、実は「それ単独での音の善し悪し」だけでは決められない。2chなら、その「気に入った音」となるアンプなり、SPユニットなりを「左右に揃えるだけ」でいいのだが、13chAuro-3Dに於いては、「上下左右にある、他のSPとの音色の統一性、違和感の少なさ」というものもとても大切な要素なのだ。

 

御三方を交えた実験の際には、単に、ツイーターにどのアンプを使った「2chステレオの音」が一番好きか?を伺っただけであった。つまり、同じツイーターを使っているが異なるパワーアンプ(PA-16)でドライブしている、HLCRやサラウンドハイトなど他のSPと「音色が最も近いものはどれか?」を伺ってはいない。

 

ゆえに御三方が帰ったあと、私がやったことは、Auro-3Dの単一楽器の音源(ピアノ、ハープシコード、男性ボーカル、マリンバ、ハープ、フルート、バイオリンなど)を使い、LにはSTA-9を、CにはA-1を、RにはA-0をそれぞれ繋ぎ、ピンクノイズと音圧計を使って3つのツイーターのLPでの音圧を同一に調整したうえで、これら1台づつと、HLCRを交互に再生し、音の違いを「音色だけに注目して」ひたすら聴き比べてみた。

 

これらHLCRを含む第二層は、すべてStormPA16というマルチパワーアンプでドライブされており、当面、これを変更する予定はないため、いくら気に入ったからといえ、「音色が第二層とかなり異なるアンプ」を第一層用にあてがうわけには行かない。そんなことをしたら、「すべて同じツイーターで構成されている」拙宅のAuroシステムのアドバンテージが無くなってしまう。<高域の音色の部屋全体での統一感>は私が最もこだわっている点のひとつなのだ。これがマルチシステムを「部分的にアップグレード」する際の難しい点であり、2chシステムしか持っていない方はこれには気が付かないであろう。お店で聴いて気に入ったから買って帰れば良い、というものではないのである、マルチの場合は。猫や犬の多頭飼い(笑)と同じで、一部のSPやアンプを入れ替えるなら「先住犬」との<相性>という大問題が必ずある。それを忘れて、単純に<ショップで気に入った犬>を連れ帰ろうものなら(笑)

 

結論的に言うと、HLCRとの音色の親和性はA-0に軍配が上がった。A-0のはつらつとした音色は、PA-16PascalClass Dモジュールの音により近い。A-1はいわゆるアナログ的な深みのある音ではあるが、大人しく、角がなく、これはこれで個人的には好ましいのであるが(汗)、間違いなく全体の音色の統一感は損なわれるだろう(Amator IIIOctaveAuro-3Dシステムから排除したときの論理と同じ)。

 

お米と同じで(笑)、私はパリッとしたのも、柔らかいのもどっちも好きだが、両方混在してるのはイヤだ(笑)。同様に音色は「どちらかに揃っている」ことが私にとっては重要(鈍感な方もいるとは思うが、私は他人のマルチシステムを聴いても、サラウンドやサラウンドハイトの音色の違いにすぐ気が付くタイプ=汗)。ただ、音色よりむしろ少し気になったのが、「遠近感」において、A-0の方がやや劣っていたこと。逆に言えば、A-0の方が「音が前に出てくる」タイプで、Jazzなんかだったらこちらの「押し出し感」の方が好きな方は多いだろう。ただ、私はどちらかというと、「奥行き感」が出てほしいタイプなのだ。

 

少し迷っていたのだが、これはMyuさんやCmiyajiさんがお帰りになったあとにK&Kさんと話をし、また先日お会いした入交さんとお話をしていて、「アンプやSPを選ぶ場合に、<遠近感>の有無は2chなら確かに重要項目だが、しかしAuro-3Dなら、ハード面、ソフト面両面で強烈な<遠近感>がBuilt-inされているので、そこまで気にする必要はないのでは?」ということに気付かされた。今回、貸し出していただいたアンプは2chなので、5chすべてを交換してマルチ音源で試すことはできていなかったことを忘れていたのである。2chによる試聴結果(ふつうのショップでの試聴なら絶対こうなる)だけで、マルチ用のハードを決めるべきではないことを改めて自覚した。私のオーディオライフの本命は、マルチ、なかんずく13chAuro-3Dなのである!!!

 

こうなるとA-0で決まりか?となったのだが、ただ、最大の懸念点は、A-0の出力が10W8Ω)しか無い点。現行のSTA-9120WPA-16200W)なのだが・・・長くなるので、続きは次稿で。

 

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