東京書斎のAuro-3D

2024年12月15日 (日)

Eversolo DMP-A6 Master Edition VS Roon Bridge

私の「師走」は山を越えまして(笑)、伊豆に来ています。

 

実は、かなり前から、「忙中閑あり」が見込まれるこのタイミングに合わせて、いつもお世話になっているダイナの島さんに、Eversolo DMP-A6 Master Edition(以下、A6)の試聴機を予約して、送ってもらったのです。

 

これはいわゆる、「ミュージックストリーマー」?とか言われる、ネットオーディオ時代の到来とともにスタンダードになりつつあるソース機器で、インターネットやLANにあるデジタル音楽ソースを再生する専用機。

 

はっきり言ってこの手の機器は今や各メーカーから出ているが、私がこれに注目した理由は言うまでもなく、「もしかして、Auro-3Dファイルが再生できるんじゃない、コレ?」ということ。

 

これは、HDMI出力があり、それ自体は今や珍しくもないのだが、その殆どがARC用で、要するにテレビの音をちょっといいDAC経由でアンプに出力して、外部スピーカーで多少いい音でテレビを楽しみたいというニーズ用のものばかり。

 

でも我々「友の会」的には(笑)、HDMI出力と言ったら、「マルチ、5.1ch7.1chでデジタルアウトさせて、それをAVアンプに入れてAuro-3Dデコードさせて、9.1ch11.1chで楽しむためのもの!」、これしか無いですよね(笑)。

 

しかし、この「マルチ出力」に対応するHDMI端子を備える「ネットワークプレーヤー」って、現状、ほとんど存在しない。ダウンロード購入したAuro-3Dファイルを、NASに入れて、それを吸い出してAVアンプでAuro-3Dとして正しくデコードさせるには、私の現在の環境では1.OPPO-205を使う 2.Roonを利用し、HDMI端子のあるPCRoon Bridgeにする―の二通りしか無い。

 

前者は、最近、動作が不安定な時があって、都度再起動したりするのだが、すでに絶版で修理も受け付けていないので、この先が不安・・・ゆえに、1年ほど前からTomyさんなどのご指導を受けてAuro-3Dのファイル再生は、Roon Bridge経由を今はメインにしている(実は、音もこちらの方が良い)。

 

ただ、音楽を聴くたびにPCを立ち上げる(しかも、Roon CorePCを含めて2台も・・・)のが、どうにも「優雅」じゃないのが、貴族趣味(笑)のワタシはずっと気になっていて、この解決法として、Roon Nucleus というハードを導入すればいいことは私なりに研究して(笑)わかっているのだが、その最新型のTitanというのが、いつまで経っても日本では出ないし、円安もあって、並行輸入してもかなりお高い(しかも「保証」がつかない=汗)。

 

そんな中、これ、実は、Master Editionが出る前のA6の時代に、TIASで「展示」(私が行ったときは再生していなかった)されているのを見て、「これ、HDMI出力があるようだけど、マルチで出せるの?」とダメ元で説明の輸入代理店の方に伺うと、「YES」と言うじゃないですか!

 

「じゃあ、Auro-3Dにデコードもできますか?」と畳み掛けると、

 

「それ、何ですか?」・・・(泣)

 

 

輸入代理店では全く検証もしていないことがわかり、一瞬にして冷めて一時忘却の彼方にあったのですが(笑)、この夏に、Master Editionというクロック?をUpdateした上位機が出るという情報が。

 

残念ながらこの記事にも、「5.1ch再生ができる」とは書いてあるものの、Auro-3Dファイルが正しく展開できるかどうかは書いてない(マイナーだからなあ・・・)。

 

理論的には、5.1chがビットパーフェクトで出力できるなら、AVアンプ側で9.1chにデコードできる<はず>なのだが、こればかりは相性問題などもあり、いままで何度も痛い思いをしてきた(汗)。

 

「誰か、人柱になってくれないかなあ」と待つこと4ヶ月。

 

この間、オーディオ評論家や『価格コム』などのネット上の情報はすべてこの機器の2chアナログ出力の音質を云々するものばかり・・・

 

そうこうしているうちに、書斎の古いMarantzのユニバーサルプレーヤーとRoon Bridge用の古いPCの動作がほぼ同時期に怪しくなってきて(汗)、書斎でもAuro-3Dを聴ける環境を維持するために、1.書斎にOPPO-205を移動し、伊豆に新しいユニバーサルプレーヤーを入れる 2.伊豆にA6を導入し、伊豆で使っているRoon BridgePCを書斎に移動する―の2択状況になってきた。

 

この場合の判断基準は、やはりオーオタとしては、最後は「使い勝手」よりも「音質」ですよね!つまり、A6Roon Bridgeのどっちが音がいいのかを試して(まあ、その前にそもそもA6Auro-3Dが再生できるかが先だが!)、A6の方が音が良ければ、2の選択に、Roon Bridgeの方が音が良ければ1の選択にしようと心に決めまして。

 

で、お借りしたんですよ、A6Master Editionを。

 

 

いつものことながら前置きが長くなりましたが(笑)、以下に比較試聴結果を。

 

その前に、そもそもこのA6でAuro-3Dファイルが正しくAVアンプに送れるのか、ですが、結論を先に言えばOKです!

 

ただし、ちょっと設定に工夫がいります。このA6はマニュアルが無いので(Onlineはあるけど、元々見ないタイプ=笑)、若干苦労しました。後に続く方のために、ツボをご紹介します。

 

P LANケーブルを繋げば、すぐにRoonからは見えるが・・・

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まず、このA6は、デフォルトだとOutputがアナログ2chXLR/RCA)にしか出ない!普通は、アナログとデジタルの両方から出力してますよね?(この機器は排他利用になっているようです) だから、LANとHDMIケーブルを繋いでRoonから操作しただけだと、いつまで待っても音が出ません(汗)。「ソース」の中の「出力ポート」(入力ではない!)という画面で、「HDMI」を選ぶ必要があります。

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次に、デフォルトだと「HDMI出力」のPCMオーディオのところが「Auto」になってますが、ここは「マルチチャンネル」にしておいたほうがいいです。AutoだとAVアンプ側とのネゴシエーションに失敗する事があるからです。Img_0019_20241214211801

 

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最後に、ここが見逃しやすいのですが、5.1ch出力が「ビットパーフェクト」でないとAVアンプ側でAuro-3DにUnfoldができません。この「ビットパーフェクト」の要件は色々ありますが、この機種で肝心なのは、ボリューム。これを右一杯に回す、つまり100%出力=0dBReduceにしておかないと、「ビットパーフェクト」にならないので、ただの5.1chになってしまいます。再生ソフトにRoonを使う場合は、Volume ControlFixedにすれば、A6のボリューム位置は無視できますが。

 

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これでOK

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さて、今回の比較に使用した機器は、Eversolo DMP-A6 Master Edition VS Roon BridgeWindows)+ Roon Core Mac :M1

 

書斎 Denon 3800H HDMIケーブル:FIBBR King-A Bridge PC: AMD

伊豆 Storm ISP MK2 HDMIケーブル:FIBBR King-A Bridge PC: Intel

 

P 今回使用した光HDMIケーブル。Tomyさんに推薦していただいたもので、とても気に入ったので、追加購入し、現在は3本ある(笑)

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念の為、書斎と伊豆の両方のシステムで、比較しました。全体に、A6の方が、2dBほど音量が大きいので、試聴の際はボリュームを調整しました。

 

 

以下はすべてAuro-3Dのダウンロード音楽ファイルです。

 

・・・・・・・

リスト ピアノソナタ 最初の低域の音の深み 高音部のフォルテの強さでBridgeが勝る

 

Pax 最初のViolinの「強打」奏法のPulsiveな音の凄みでBridgeが勝る

 

ストラビンスキー 『イタリア組曲』 立体感 味わい深さでBridgeが勝る

 

『四季』の「冬」 凄み 奥行き感でBridgeが勝る

 

シューベルト 「菩提樹」 A6の方がハイ上がり ボーカルが前に押し出される Bridgeの方がバリトンの声質が魅力的に聴こえる

 

名倉 マリンバ 空間感 倍音・残響音の深みでBridgeが勝る 伊豆だと、A6の方が高域の残響音が目立つ(やや過剰?)

 

ピアノ・ソロ Live ホール感でBridgeが勝る A6はオンマイク録音?のように聴こえ、ピアノが近い

 

ビオラ・ダ・ガンバ 重厚さでBridgeが勝る

・・・・・・

 

ということで、伊豆のシステムでも書斎のシステムでも、Roon Bridge経由の音が私の駄耳によれば圧倒! A6は全体的に腰高で、平面的。もしかするとJazzPopsでシンバルの音が好き、という方ならA6に軍配を上げるかもしれないけど、そのようなAuro-3DNative ダウンロードソースってあります?BDなら少しはあるみたいですが、現状、ほぼClassicかと。

 

正直言って勝ち負け入り乱れる感じだったら、「華麗な使い勝手」のA6を導入しようと思っていたのですが、ここまで差があると今回はパスです(実は、今回の試聴の際に、EversoloHPを改めてみたら、UHD8000とかいう上位機種らしき新製品を発見!これもマルチOutができるらしいので、せっかくならこっちも取り寄せたかった・・・またの機会に)。

 

また、とても重要なことですが、このA6のマルチ出力は、5.1chどまり。つまり、7.1chソースはサラウンドバックの2chの音がカットされてしまうのです(失われた音楽データをA6がどう処理しているかは不明だが、私の聴感では情報が失われているように聴こえた)。今回の試聴ソースでは2番目のPaxがそれで、伊豆のフルシステムでは、Bridgeだとサラウンドバックから音が出ますが、A6だとそこに音が振られてないので、出ません。

 

 

P A6によるPAXの再生。上部Inputs7,8番 LBRBに入力が全く無いのがわかる。ゆえに下部Outputs12,13番に出力がない(Bridge再生の場合は、この2chにも入出力がある)。 20241214-234106

 

 

これは第一層に7chを用意しているAuro-3Dファンにとっては致命的で、確かに現状はほとんどのAuro-3Dダウンロードファイルは5.1ch9.1chではあるものの、今後恐らく7.1ch11.1chソフトが増えるであろう(Hopefully!)ことを考えれば、さすがにA6は選択から外れますよね(汗)。

 

【念押ししますが、この機器には非常に多くのInputsとOutputsの機能があり、この中で私が今回検証したのは、Roon ReadyのInput、HDMIマルチのOutputだけです。ほとんどの雑誌やネット上の「激賞」(笑)は、本機のDACを経由したアナログOutの音だと思います】

 

ということで、結局、OPPO-205を書斎に移動させることとし、後釜にMAGNETARUDP800を注文します(流石に試聴機を借りといて何も買わない、のは気が引けるし=笑。ただ、ユニバーサルプレーヤーは絶滅危惧種でまともなライバル機種が残念ながら全くないので、試聴もせず・・・900は私にとって全く不要なDACにカネをかけているので、HDMI出力しか使わない私の用途にはあまりに非合理的)。これもまた「人柱」情報が少ない機種ですが(Sさんによると上位機の900ともども、そこそこ売れているらしいが、情報を出さないタイプの人が買ってるんだろうなあ・・・)、届いたらまたいずれご報告しますので、お楽しみに(笑)。

 

 

【おまけ】

 

この機器の個人的なもう一つの興味は、これまで「Apple TV 4K」の専用機器でしか再生できなかった、Apple ATMOSをこれを使えばちゃんとATMOSとして再生できるか?だったので、一応Tryしましたが、残念ながら「説明書をちゃんと読まないワタシ」(爆)では、操作が複雑でApple Musicにまでたどり着けませんでした(汗)。もしこれを購入したのであれば、真剣に取り組むとは思いますが、主目的のAuro-3Dの再生でパスという判断になったので、これ以上これに時間を費やす価値を見いだせず(私はオーディオ評論家ではないので=笑)。

 

まあ、原理的にApple Musicが提供しているATMOSは所詮圧縮音源で、普段は自宅リビングに置いてある「Apple TV 4K」の専用機器を伊豆のシステムで再生してみたことはあるのですが、どう聴いても音質が(泣)。「とにかく音に囲まれたい。ATMOSならなんでもいい」というニーズの方はともかく、ちょっといいシステムを使っていてバイオリンやピアノなどに真剣に耳を澄ませば「本物の」BDATMOSとの音質差は歴然なので、こちらは、無圧縮のATMOS音楽配信が始まったら対応機器の購入を真剣に検討したいと思っています。

 

2024年8月25日 (日)

Auroの上原さんのPianoの位置&48/13ch VS 96/11ch-書斎のシステムでの気づき

今月23日の金曜日の夜にて、前回紹介したAuro-3Dフルスケール13.1chの配信が終了しました。皆さんのご感想はいかがでしたでしょうか? 聴かれた方はここにレスを入れていただけると、入交さんも喜ばれると思います!

 

私は、残念なことに、1週間の配信期間のうち、初日金曜日の夜一晩だけ伊豆で、日曜日の夜から二晩だけ東京の書斎で聴くことができただけでしたが、「何とか元を取ろう」と貧乏人根性丸出しで(笑)、この間は繰り返し真剣に聴き込みをしました。

 

そこで二つほど、Auroシステム的な<気づき>がありましたので、参考になればと紹介したいと思います。

 

その1. 

伊豆のシステムでの印象は大まかには前回書いた通りですが、その<耳の音も乾かぬうちに?>、東京に戻って書斎の寄せ集めシステムで、今回の演目の自分なりの目玉であった上原ひろみさんのピアノ演奏(1曲目)を聴いた時、「えっ、これ、ピアノの位置が違うんだけど…」と。

 

前回の記事で明示的に書いたように、この1曲目のYahamaのピアノ曲(ちなみに、最近知ったのですが、彼女は浜松出身だそうです。だから、Yamahaに拘っているんだな、と超納得!子供のころから弾きなれているでしょうし、長じてからもプロになるまでに相当な支援を本社から受けたであろうと想像)は、<入交流>の音像配置である、LCの「ど真ん中」に中心が置かれています。

 

ここで、私がピアノの定位位置を「断定的に書いている」のに首をかしげる方がいるかもしれませんので、ご存知の方には繰り返しになりますが(汗)、なぜ、ここまで<客観的・普遍的>に(つまり、「自分のシステムでは」という主観的・条件限定的な書き方ではなく)言えるのかを。

 

それは、私の伊豆のメインシステムは、今回のストリーミング配信の音楽制作監督をされておられる、入交英雄氏(WOWOWエグゼクティブ・クリエイター=前回紹介した評論家の生形三郎氏の記事に出てくる方!)の再三の訪問を受け、彼が制作した音源を再生しながら「2度」(汗)の角度の狂いまでを正すクリニック済みのものだからです。

 

ゆ・え・に、私は一応学者の端くれですので(汗)、普段は断定的にものを言うのには慎重な態度を示しているつもり(笑)なんですが、こと、伊豆の拙宅のシステムの「音像定位」に関してだけは、それが特に入交さんの作品であれば、ほぼ絶対の自信をもって、「Director’s intention通りに再現されている」と言い切ることができます!(「音場」に関しては部屋も変形だし、Dirac Live使っているしでそこまでの自信はない・・・汗、さらに「音質」は言うまでもなく、人それぞれのシステムに好みが反映されているのでMonitorの音と違うのは当たり前で、Directorが聴いている「音質」がベストかどうかは意見が別れるのは当然)

 

ということで、伊豆のReferenceのピアノ位置に比して、東京の書斎で聴いた上原さんのピアノは、かなりCに寄って聴こえてしまいました。

 

「これはマズい。どこかが狂っている=断定!=笑。Dirac Live適用しているのになあ・・・」

 

私はバリバリの(笑)「Dirac Live信者」ではありますが、Dirac Liveをかなり使いこなしてきてその「限界」も理解しているつもりです。これはもう何度か書いていますが、Dirac Liveには「スピーカーの位置Virtualに補正する機能」は、ありませんTrinnovや、YamahaYPAOはこの機能がある、と「カタログ的には」書いてある。ただし、自分の耳で確認したことはない)。つまり、いくらDirac Liveでも、Auroシステムがそのマニュアルで厳格に定義している、設置上の開き角と仰角はごまかせないのです。

 

私の書斎では、実はLR30度の開き角を確保できておりません(22度くらい=泣)。これは物理的にLRを今の位置より外側に置いたり、LPを現状以上に前に出したりすることができない部屋の構造になっているからです(人が通れなくなる…)。専用ルームではない、書斎兼用の悲しさですが、このような「配置上の制約」のあるセッティング環境の方は少なくないのではないでしょうか。

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(例えば、このRスピーカーをこれ以上右に移動すると、勉強机に行けなくなってしまう=汗)

 

しかし、だからといって、「泣き寝入り」というのも癪なので(笑)、開き角の狭さを補う「物理的な」(電子的な、ではなく)方法はないか、と腕を組むこと5分(=ホントはすぐに思いついた=笑)。

 

恐らく多くの方がそうしていると思いますし、確かAuroのマニュアルにもそのような指示があったと記憶していますが、皆さん、SPLRのみならず、LPに向けてませんか?

 

私も伊豆でも書斎でも、AuroシステムはすべてLPSPを向けてセッティングをしているのですが、よく考えてみると、私の2chシステムの方は、書斎にある1000Mも、伊豆のAmator IIIも、どちらも「平行法」セッティングなんですよね。一般に2chの世界では、JazzVocalを中心に聴く場合は「内振り法(正対とは限らない、微妙なテクニックがあるみたいですねェ=笑)」で、広がり感の欲しいClassic主体で、特にあまりSP間の距離が取れない場合は「平行法」というのが<教科書的>に語られているのはよくご存じの通りです。

 

で、まだ歴史の浅い?Auroシステムの世界では、<LPと正対>させるという「マニュアル」通り以外のオプションは、私の知る限りではその効果検証などはされていないと思います。

 

しかし、「2chで有効なテクニックなら、応用できるんじゃない?同じLRなんだし…」ということで、やってみました、「平行法」!まだ上原さんのAuro-3Dでの演奏を聴ける時間内に。

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結果はというと、「お、ちょっとピアノが左に寄ったな」とは感じられました。これを書いている今は書斎にいるのですが、残念ながらもう上原さんのピアノは聴けないので、他のAuro-3Dソースを流しています。ダウンロードしたものはほとんどClassicばかりで、元々Classicは音像定位に関してはそこまで厳密な聴き方を私はしてこなかった(特に編成が大きくなればなるほど)ので、はっきりとしたBefore/Afterの違いまでは断定的には言えませんが、マル秘(爆)の13chソース(オルゴール博物館とか)などを聴いても、伊豆並み(ちょっと盛ってる???)とまでは行きませんが(汗)、結構空間が広がって、3D感が向上したような(書斎のシステムは、「Center突出型」なので、元々センターの存在感が強く、音が集まりやすい傾向にあったから、余計に効果があったかも?)

 

LRの開き角がマニュアル通りの60度を確保できていない方は、ちょっと「AuroシステムにおけるLRの平行設置」の追試をしてみてくださいな!

 

その2.

 

これは、Donguriさんがすでに記事にしているものと全く同じ問題意識で、私もやっていました。

 

今回のストリーミング配信では、48/13ch 96/11chを切り替えて聴くことができるようになっていました。これはとても珍しいフォーマットで、普段我々が手にするBD版は96/11chはあるが、13chはないので、この二つを聴き比べることは今までほとんどできなかったのです(先日Mさんが紹介してくれた、「オルゴール博物館」のArchiveソースは今でもできるようです!追試をしたい方は是非!)。

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(CHとTS=VOGに入力がある、48/13.1chソース)

 

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ここでのポイントは、Native 13chLow Res VS Native 11chHi Res13ch拡張したもの、という比較だということです。つまり、音が出ているSP数は同じで、片や48Native Discreet 13ch, 片や96だけどArtificial 13ch。で、どっちが音がいいか?好みか?

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(CHとTS=VOGに入力がない、96/11.1chソース。この両チャンネルを人工的に創出してOutputさせている)

 

残念ながら伊豆では時間が無かったうえに、ついつい「音楽」を聴いてしまった(オーオタ的に「音」を聞こうとは考えもしなかった…)ので、伊豆のシステムでは比較試聴していないのですが、書斎の寄せ集めシステムでは、聴き比べしてみましたよ!(ただし、書斎のシステムはリアサラウンドが無い11ch。ただ、9611chCHTopDiscreetに音が振られていない11chなので、この「2ch」分を人工的に合成したものとの比較という点では13chでの比較と同じ条件)。

 

まず、Donguriさんの感想を引用すると、

 

>楽器やボーカルの生々しさとしては、わずかな差ですがAuro 13.1 48kよりAuro 11.1 96kの方が良いと思われました。上方・前方の空間の広がりとしては、Auro 13.1の方がわずかに良いかもしれないが、Auro 11.1を拡張モードにすると音質の劣化は感じないまま空間表現がアップした感がありAuro 13.1でなくていいかとも思えました。

 

なのですが、拙宅書斎のシステムで聴いた私の感想はちょっと違ってまして(汗)。

 

ここでいう「生々しさ」というのは、「音像」と「音質」に分節化できると思います。

 

書斎のシステムで聴く限り、「楽器の生々しさ」(私はボーカルは聴いていない。上原の生ピアノのみでの比較)のうちの<音像=実体感>は「13.1 48k」の方が感じられたんです。「11.1 96k」の方は、なんとなく、ピアノが「空間に溶け込んでしまってやや実体感が薄らいでいる」感じに駄耳には聴こえました。

 

「生々しさ」のうちの、<音質=この演奏だと特にピアノのハンマーと弦の衝撃音>は書斎のシステムでは、優劣は私には聴き分けられなかったです(チャンデバ化した伊豆でやってみたかった…)。ここは、Donguri邸のシステムはBWのハイエンドシリーズで構成されているうえに、最近AVアンプやパワーアンプもBeef UPされたので、レゾリューションの違いが書斎のボロシステムとは異なり、はっきり聴き分けられるのだろうな、と思いました。

 

空間表現」については、上原さんの演奏では書斎のシステムでは違いが分かりにくかったので、これを書くにあたって、念のため、「オルゴール博物館」の音源でも両者を比較試聴してみましたが、これは特に巨大オルゴールの上方からの音のリアリティで断然、13ch Nativeが優れていました。11chの拡張モードでは、前方上方からのチャイムとかの音が全くボケてしまっていました。この部分は前方上部にはっきりとした音源があり、これはHCTopの出番ですから、まず当然の結果かと。

 

結論的にいうと、書斎の寄せ集めシステムでは、「音質」より「音像」の違いに敏感に反応するので、「音像・音場重視派」の私的には13chの勝ち、です!

 

皆さんのシステムではどうでしたか?

2024年7月18日 (木)

アンプのセパレート化と蓄電機の威力を再確認しました!

今回のネタは、手持ちの機器を「配置転換」し、設定を切り替えただけのお話なのですが、その効果が当初想定したより大きかったので、記事にしてご紹介しようと思い立ちました。

 

私の東京の書斎の、狭小なスペースに無理やり作ってある、「なんちゃって、Auro-3Dシステム」については、以前も【実践編】で紹介しました。

 

そして最近、ハード的にはサラウンドハイトを図らずも(笑)入れ替え、結果的に強化したということも記事にしています。

 

このお部屋の音は人様にお聞かせするほどのものでもないのですが(千客万来・熱烈歓迎=爆=の伊豆の別宅と異なり、これまで、Taketoさん、Tomyさん、K&Kさんしかお招きしていない)、「都市部の狭小なスペースでもAuro-3Dを楽しめるんだ」、ということをアピールするために恥を忍んで(笑)、紹介してきました。

 

SPも機器類もほとんど余り物の寄せ集め(大汗)で、新品で揃えたのは、Auro-3Dの再生ができるミニマムのAVアンプである、Denon3800と、SP取り付け金具(爆)ぐらい。

 

まあ、当初は「実験用、お遊び」という位置付けだったのですが、Dirac Liveにカネを注ぎ込み始めて(すでに800ドル以上、払わされている…)、徐々に音のクオリティが上がってきたのは感じてはおりました。

 

そんな中、「書斎のボロシステムもどげんかせんと!」と思わされたのは、ここでもご紹介した、Auro-3D nativeの、Royal Concertgebouwでのピアノソロのライブソフトを東京の書斎で再生したことがきっかけでした。

 

このソフトはとにかくS/Nの高さが再生のキモで、伊豆のシステムで初めて聴いた時の興奮冷めやらぬうちに東京に戻り、書斎のシステムで同じ曲を聴いた時の「ガッカリ感」といったら!(泣)

 

確かに、東京の書斎のシステムでS/N対策を特段何かしているか、と問われれば、せいぜい、NASにあるAuroNativeファイルを再生する際に、古いノートPCを生贄にしてRoon Bridgeを介していることぐらい(これは、このブログでは詳しく紹介していないかもしれませんが、効果大です)。

 

ここのシステムは、目を釣り上げて対峙する(笑)「本気聴き用」の伊豆のシステムとは異なり、「仕事で疲れた脳を癒す」ためのものという位置付けなので、小編成の音楽を中心にしてあまり大音量では再生しない(住宅街だし…)のですが、やはり「癒し」には、正確なSPレイアウトや厳密なLPの設定による音像定位や性能の高いアンプやSPが実現するダイナミックレンジの広さなんかより、S/Nの方が断然大事だな、と。

 

そこで、実は前々から「脳内シミュレーション」だけはしてあったものの、めんどくさい(笑)ので実行に移していなかった、「書斎システムS/N向上大作戦!」をついにやってみることに。

 

今回の「大作戦」の要諦は以下の2点:

 

①プリアンプとパワーアンプの完全分離

②電源

 

この2点は、S/Nの向上策として、ケーブル類を交換したり下手なアクセサリーをつけたりというような姑息な(笑)手段に比して、確実で、かつ費用対効果が断然高いのは、オーオタなら誰もが知っていることですよね!

 

まず①に関しては、書斎では、昔マランツの8805というAVプリと組み合わせて使っていた、YamahaMX-A5200という、AB級のアナログ11chマルチパワーアンプを、3800と組み合わせて使っております。しかし、これまでは、この5200の持つ、BTL出力機能を使ってみたいと考えて、書斎の9台あるパッシブSPLRDynaudioは内蔵チャンデバ・デジアンPowered)のうち、7台を5200に繋ぎ(BTL2台とバイアンプ1台)、2台だけは3800のパワー部を使うという運用をしておりました。この時の判断は、BTL接続はS/Nはやや落ちるが、パワーアップによるダイナミックレンジの拡大の方を優先させたということです。

 

このBTL接続を通常の接続にすれば、11chのマルチパワーアンプで、9台のSPを全て賄える(センターのSonetto VIIIは、「K&Kフィルター」を使うために、バイアンプが必須なので、10chの出力が要る)ことは当初から理解はしておりました。

 

さらに、この3800というAVアンプには、プリアンプ部を切り離せる機能が付いているのも知ってはいたのですが、チャンネルごとでもアンプをオフにできるために、3800から2ch分だけのパワーアンプを使って、残りの7ch分のパワーアンプを殺せば、十分S/Nは稼げるだろう、という素人考えで、この機能は未使用でした。繰り返しになりますが、とにかく当初はBTL接続による「迫力」を重視したのです。

 

このプリアンプ部を切り離すモードを、Denonでは「プリアンプモード」と呼んでいまして、今回、切り替えに踏み切るべきかを判断するため、その効果の予測をしようと、カスタマーサポートにメールで問い合わせてみました。その回答が以下です。

 

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ご質問の件につきましてご案内いたします。

 

Q1: Auro-3D用11.1ch SPレイアウトの状態で、「アンプの割り当て」において、「プリアンプ」モードを選ぶと、5.5.1(TS)で設定したSP配置が、強制的に7.4になってしまいます。Auro-3D11chモード(5.5.1)のまま、「プリアンプ」モードに設定する方法はないのでしょうか?

 

⇒アンプの割り当てで11.1にして設定するとそのまま11ch構成可能ですが、プリアウトのモードにすると、サラウンドバックが有効になりますので、プリアンプに設定した後、レイアウトでサラウンドバックを無しにしてから、ハイト5チャンネルの設定すると可能かと思います。

Q2: 「プリアンプ」モードと、すべてのチャンネルのスピーカー接続を「プリアウト」にした場合とで、内部動作的な違いはあるのでしょうか?

 

⇒アンプの割り当てをプリアンプにすると、すべてのパワーアンプが完全STOPになります。

スピーカーの各チャンネルをプリアンプ(ママ:筆者注=恐らく、プリアウトの間違い)にしてもアンプ自体は動いている状況です。

 

どうぞよろしくお願い致します。

 

Denon お客様相談センター

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これで設定方法もわかったし(流石にこれ、やる人が余程少ないと考えられているらしく、マニュアルに詳細な実施方法の記述が全くない)、「プリアンプモード」では、パワーアンプ部が完全停止(おそらく電源を止めるのだろう)になるということもわかり、「これはかなりの効果が期待できる」と判断、実行することに!

 

P 【すべてのチャンネルのスピーカー接続を「プリアウト」にした設定画面=パワーアンプ部は作動している】

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p【「プリアンプ」モードにした設定画面=パワーアンプ部を完全にオフ】

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繋ぎ変え作業は少々面倒でしたが(汗)、その甲斐は私の駄耳でも十分わかるほどありました。まあ、2chでもセパレートアンプを持っている方は、全く異なる機能である整流部と増幅部を、電源ごと切り離す効果が特にS/Nに関していかに絶大であるかはよくご存知と思いますので、当たり前すぎて多言を要しないですよね。ただ、「同じアンプをプリメインとプリOnlyに切り替えて聴き比べた」方は少ないと思いますので、改めてセパレートにすることによるS/Nに対する効果をはっきり確認することができました。

 

この効果に気を良くし、さらに②に進みます。

 

これは、伊豆のように独立電源工事なんて大掛かりなことをする気はなく、書斎でこれまで2chシステム(Arcam SA30+Marantz SACD30n1000Mの組み合わせ)用に使っていた、HONDA E-500 という蓄電機を、「AVプリ」となった3800の方に使うという移設をするだけです。この蓄電機は以前、Phile-Webという交流サイトで諸先輩にご教示いただいたもので、当初、伊豆でStormAVプリ用に導入したものです。その効果についてはかつてTomyさんも拙宅で聴いて驚いた、という逸品で(笑)、あまりに気に入ったのでBackUp用にもう一台購入して書斎でも使っていたのです。

 

かつては、「密閉SPならではの音質」を求めたい時には1000Mの方で聴いていたのですが、最近はSWの強化とDirac Liveの導入もあり、書斎の2chより圧倒的にAuroシステムの方の電源を入れることが多くなっていたので、この際、「主力」の座を3800に譲るという象徴的な移設となりました。今回3800を<プリアンプ>としたことで、消費電力がかなり下がったことも、蓄電機の利用の背中を押しました(プリメインモードで使用し続けると、充電が追いつかず2時間ぐらいでEmptyになって電源落ちしてしまう)。

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結果、ボリュームを上げられない深夜のピアノ曲が、落涙を誘いそうなほど(笑)、心に染みるようになりました。かつてモンテモンテさんが、Auroシステムはボリュームを下げても楽しめるのが美点、と指摘しておられましたが、その際、「感動度」をさらに上げるにはS/Nが良好であることが必要条件だと思います。ゆえに、完全防音部屋のない都市部居住者のAuroシステム構築においては、セパレート化と蓄電機、オススメかもです!!!

 

とはいっても、今回、私の場合はすべて手持ちのものを利用したのですが、もしこれをゼロから新品購入するとなると、総額でMarantzのCinema 30が買えるぐらいになってしまいます。となると、セパレート+蓄電機とハイエンドプリメインAVアンプのどちらの方が、S/N他の音質や音像・音場表現に優れているのかという興味が出てきますよね。私の勘だと、メカニズム的に考えてS/Nだけは、セパレート+蓄電機に軍配が上がり、それ以外の部分ではパワーアンプ部の性能はYamahaとMarantzでどっこいどっこいでも、プリ部はDenonのエントリーグレードよりかなりおカネがかかっているであろうCinema 30の方が特に音像・音場表現では上かな?と想像しますが、さすがに残念ながらこれを検証する財力はないので(汗)、この検証はHiViあたりに期待したいところです!(笑)

2024年6月13日 (木)

Auro-3D(Matic)の奥行き表現と、サラウンドハイトSPとの関係

今回は久しぶりに、Auroシステムの使いこなし・注意点のお話です。【6月25日最終段落加筆】

 

皆さんは、Auroシステムにおける、「サラウンドハイトSP」はどのような役割をしているか、ご存知ですか?言うまでもなくサラウンドハイトSPはサラウンドSPの直上1.5Mぐらいの位置で、仰角は30度というのが、『マニュアル』 通りのレイアウトですね。

 

で、普通は、ハイトSP群は第二層にあるのだから、「高さ感の演出」に一役買っているのだろうと思われていると思います。それは確かです。特にサラウンドハイトは、真ん中にVOGを挟んで、LPの左右(90110°)上方にあるのですから、頭上にDiscreetに音が振られているような、竜巻(『Twister』)とか教会の鐘(『Himmelborgen』)のようなAuro-3Dソフトを再生するときは、はっきりとその役割が分かります。

 

では、例えば、ピアノソロの時はどうでしょうか?フロントハイトLCRであれば、なんとなくグランドピアノの屋根板が反響板として開かれているのが「見えるような気がする」(笑)音場の演出に効果があるような気がするとは思います。

 

じゃあ、サラウンドハイトは??? まあ、ホール感を醸し出してくれているんだろうな、ぐらいのイメージでしょうか。それもそうなんですが、実はサラウンドハイトって、音の遠近感・奥行き感の演出に於いて、重要な役割をしているのですよ。

 

このブログを熱心に読んでいただいている方(笑)はご記憶だと思いますが、伊豆の拙宅で、昨秋、サラウンドハイトSPSonetto Iから、Sonetto IIへアップグレードしました

 

その時の狙いは、第二層レベルにSWを設置したことと相まって、「低域による上方空間の包まれ感」を充実させたい、ということでした。

 

その後、ちゃんとしたサラウンドハイトの強化の成果の報告記事を書いていなかったのですが、実は、直後の入交Auro-3D録音エンジニアの訪問の際に、サラウンドハイトの役割についてもいろいろなお話を伺っていたのです(先日、拙宅にお見えになったMyuさんとKKさんには少し紹介しました)。入交さんとのやり取りは多岐にわたったのでその時の訪問記事には書いていないことはもちろんたくさんあり、この「サラウンドハイトの役割」のお話ももはや正確な記憶ではなくなってきていました(汗)。

 

そんな中、実は先日、東京の書斎のサラウンドハイトSPを交換しまして。そして、さらにその直後に、Siltechさんのブログで、「前方の奥行き感は、Auro3Dさんの方が、明らかに深い」という書き込みがあって、この入交さんとのディスカッションの記憶が鮮明によみがえったのです! これを忘れないうちにと思い、今回、記事にして記録しています。

 

まずは今回の東京の書斎のAuroシステムの変更点を簡単にご紹介します。

 

変更したのは、Yamaha NS-1000MM → KEF Q300 です。KEFは以前、二階のリビングのテレビ用AtmosシステムのサラウンドSPとして使っていたものなのですが、妻から「デカすぎるし、ブラックが部屋のインテリアに合わない」とダメ出しが出て、小さくてWoodyな書斎のサラウンドハイトの1000MMと交換する羽目になったというのが裏事情です(汗)。

 

ちなみに、両者のSpecは以下の通りです。

 

Yamaha NS-1000MM (1999年)

方式

3ウェイ・3スピーカー・密閉方式・ブックシェルフ型・防磁タイプ

使用ユニット

低域用:12cmコーン型
中域用:2.5cmドーム型
高域用:1.5cmドーム型

周波数特性

70Hz~20kHz

出力音圧レベル

85dB/W/m

許容入力

60W

最大入力

150W

インピーダンス

外形寸法

150x高さ275x奥行180mm

重量

3kg

付属

スピーカーコード(10mx2)
壁掛け用取付金具

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KEF Q300 (2010年)

基本仕様

タイプ 

ステレオ

形状

ブックシェルフ型

販売本数

2本1

WAY 

2 WAY

搭載ユニット数 

2

出力音圧レベル

 87

インピーダンス 

8 Ω

許容入力 

120 W

再生周波数帯域

42Hz~40KHz

バスレフ型

前面ポート 

カラー

木目系

 ウーファー径

16.5センチ 

サイズ・重量

x高さx奥行

210x355x302 mm

重量

7.7 kg

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大きさも重さもさることながら、f特の最低再生周波数が70から42に下がったのが目立ちます。低域再生能力が「たった3Hz下がっただけ」のSonetto IからIIへの交換で驚いた自分にとって(笑)、30Hz近い差が巨大なものであることは聴く前からさすがに分かります。

 

瓢箪から駒(汗)ではありましたが、伊豆の拙宅に次いで東京の書斎のAuroシステムでもサラウンドハイトを強化したわけですが、その成果の一つが、今日のお題である、正面の音像の距離感・奥行き感の増加であることは言うまでもありません。

 

で、ここから先が今回の記事のキモです(笑)。

 

なぜ、サラウンドハイトを強化すると、正面の音像の距離感・奥行き感が増加するのか?サラウンドハイトの位置は、LPより後方上方なのに??? 理屈っぽい方(理論派ともいう=笑)は、この<論理・機序>が気になりますよね?(笑)

 

ここから先は私の記憶に基づく、入交さんとの議論のエッセンスです。記憶違いがあるかもしれませんので、理論的に間違っていると思われたらご指摘いただければ幸いです。

 

<人間は、「音の遠近感」を、何をもって判断するか?>

 

  • 音の大きさ

これは一番イメージしやすいと思います。遠ければ音は小さく、近ければ大きい。

 

しかし、もし、あなたの耳のすぐ近くを蚊が飛んだらどうでしょうか?蚊の音はどんなに小さくても、あなたはそれがすぐ自分の近くにいると判断すると思います。これは仮に、2M先のテレビから耳元で測定した時に同じ音量となる「蚊の羽音」が再生されていても、ホンモノの蚊の音の方が「近い」と判断できるのが人間の耳です。つまり、音の大小だけでは、それが連続的に変化する、つまり「だんだん大きくなる」か「だんだん小さくなる」時のみ、遠近感を判断する決定的な要因になるのに過ぎないというのです・・・

 

  • 音の明瞭度

これは、耳元での音量が同じでも、遠くから発せられた音(例えば大声)は、近くから発せられた音(例えば耳元でのささやき声)より、明瞭度が落ちるため、それを遠近の判断基準にしている、という理論です。遠いほど明瞭度が落ちる理屈は簡単で、音は空気を伝わってくるために、風や空気中の水分などで拡散されるからだそうです。だから、夏より冬の方が雷鳴は「くっきり聞こえる」のです(冬の方が空気中の水分が少ない)。

 

しかし、もし、あなたがマスクをして誰かの耳元で囁いたら、それを聴いた人は「遠くで話をしている」と勘違いするでしょうか?マスクをすれば、音の明瞭度は下がります(拡散するため)が、恐らく、普通の人は、「だまされない」でしょう。つまりこの「音の明瞭度」だけが決定要因でもないようなのです・・・

 

  • 直接音と反射音(残響音)の比率

上記二つの要因に加え、人が音の遠近感を判断するのに重要なのは、この「直接音」と「反射音・間接音・残響音」の<比率>なんだそうです。

 

つまり音の発振源が近ければ、「直接音」の比率が上がり、遠ければ「反射音」の比率が上がります(もちろん、この現象は先の「明瞭度」とも関係しています)。音は球状に拡散するからです。この「直接音」と「反射音」は、マイクロセコンド?という時間のズレがあるのが機械で測定すればわかるのですが、なんと人間の耳はこの「時間差」を聞き分けられるのだとか。

 

さて、ここでやっと「サラウンドハイトSP」の登場です!(笑) 例えばピアノソロの再生に於いて、主音(直接音)はLCRが担当するでしょう。一部、HLCRもその役割を担うかもしれません。では、「サラウンドハイトSP」はこの場合、ピアノの何の音を担当するかというと、「反射音」なんですよね!!!つ・ま・り、「反射音成分」が正しくサラウンドハイトチャンネルに録音されているAuro-3D Nativeソースを、「正しい」サラウンドハイトのSP「位置」で、「正しく(f特や位相など)」再生されると、奥行きを持って配置されているオーケストラなどの各楽器の遠近感がはっきりわかるようになるんですよ!!!

 

入交さんによると、これはどんな立派なシステムでも理論的に 2chでは正確には再現不可能な音場感なんだそうです。

 

ただし、Auroシステムならすべてこのような「遠近感」がきれいに再現できるわけではない、とくぎを刺されました(汗)。必要条件としては、先に書いたサラウンドハイトが「正しい位置」にあることと、そのSPの能力が十分に高いことに加え、<LCRの後ろの空間が十分にあり、LCRから球状に放射されている音波がLCRの後方でも乱れずに交差していること>というのがあるそうです。普通のオーディオマニアは、SPの<前方で>音波がきれいに交差する、というのには心を砕いているけれども、それと同様に<SPの後方の空間で>きれいな音場が形成されていないとサラウンドハイトが再生する「反射音」の効果が薄れるのだそうです(ちょっと私では詳しい理屈はよく分からなかったが、確かに2chでも後ろの壁にぴったりつけていると立体感が出にくいのは誰でも経験してますよね・・・)。

 

ちなみに、この時にはそこまで議論が進みませんでしたが、今考えれば、同じ論理で、「サラウンドバックSP」(第一層を7chにしている場合)も、同様の役割(反射音の再生)を果たしていると言えるのではないでしょうか?東京の書斎のシステムは551なのですぐには確かめようがなく、今度伊豆に行ったら実験してみたいのですが、確かに伊豆のシステムの方がAuro-3D Nativeソースのピアノやチェロなどの再生なら確実に「奥行き感」はあるなあ・・・(部屋のせいかと思っていたが・・・)。第一層を7chにしている方は是非試してみてください!7chの新たなメリットの発見になるかも?(笑)

 

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以下のレス欄にあるように、拙記事を参考にCmiyaji邸でサラウンドハイトSPの位置を修正(サラウンドの真上に移動させた。以前はリアハイトの位置にあった)をしたら、とても効果があった(詳細はレス欄参照)とのご報告があり、お写真もお送りいただいたので、ここに掲載させていただきますね。

 

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2023年12月23日 (土)

書斎のDenon 3800に、ついにDLBCを導入し、SW2台体制にしました!

今回は、久しぶりに、東京の書斎関連ネタです(こっちには手間もカネもかけてないので、ネタに乏しい・・・汗)。

 

以前、3800DLRCを導入した時にも記事に書きましたが、私は最初から今回のDLBCまで導入をするためにこの3800を購入したわけで、その意味では、ハード・ソフト的には一応の現時点での書斎の「到達点」には来たかな、と思っています。まだ、これからターゲットカーブの調整など、様々な使いこなしの楽しみは残っていますが、取り急ぎ、ご報告です。

 

今回のDLBCへのアップグレードにはいささかトラブルがありましたが、まあ、それはここでは重要ではないので(『価格Com』で報告しておきました)。おさらいですが、これまで導入していたDLRCRoom Control)と呼ばれる、「すっぴんの」Dirac Liveに、このBCBass Control)は何をAdd-onするかというと、一言で言えば、「SWをシステムに統合する」機能です。詳しくは、『価格Com』での質疑をお読みいただきたいのですが、ポイントとなる部分だけを以下に引用しておきます(著作権は自分自身です=笑)


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これはDirac LiveStorm Audioのエンジニア二人による解説ビデオの受け売りですが、DLBCが付加した機能は、「SWを他のSPとシームレスに統合する」ことです。従来のDLRCは、SWの位相やf特、音圧の補正はしますが、「あくまで単体での調整」にとどまっているそうです。ゆえにこれが実際の部屋の中で、他のSPと干渉しないように、オーナー自らが「手動による工夫が必要である」としています(具体的には、SWの置き場所を変えたりすることだと私は理解しています)。

これに対してBCは、リスニングポイント(LP)における全SPが再生する低域特性をすべて収集したうえで、それらを統合的にコントロールする、としています。実際、オルガンの低域を再生していると、DLRCだと、ある音域から急に低音が膨らむ(音源が大きくなったような感覚)ことがありますが、BCにするとそのような現象が起こりにくくなります。これはメインSPからSWへの受け渡しの周波数帯域における調整がシームレスに行われているためだと思います。

次に、「またSW1個でも効果はあるのでしょうか?」についてですが、もちろん、上記のような効果はSWがあれば(つまり再生音域の「受け渡し」があれば)発生します。ただし、映画では、SWありの場合、AVアンプの設定によってはLFE収録音(=地響きのような音など)だけがSWから出るようになっており、この場合は、他のSPと<統合>する意味がないので、DLBCの威力は発揮されません(先のレスで、音楽再生では「連続的に音程が可変する」ことを強調したのはこの意味です)。

SWの台数については、Dirac のエンジニアもはっきりと、「複数SWの場合がより効果的である」と述べていますが、これはSW間の位相のずれもDLBCは補正するので、SWが多い方が均一な低音を部屋に満たすことができる(ご存じと思いますが、低音は定在波が立ちやすく、場所によって粗密が出ます)ためです。「映画(音楽も)は絶対一人でしか楽しまない」のであれば、不要かもしれませんが(笑)。また副次的な効果として、SWを増やせば、一台当たりの再生負担が減るので、歪の発生が抑えられ、音質面で有利(音楽再生ではむしろこちらの方が重要な点)です。私はDLBCを導入した時に、それまで2台あったSWにさらに2台追加しました(笑)。DLBCなしでは、4台もSWを入れると音が干渉しあって、山と谷が大発生し、とても手動では収集できない音響空間になりますが、DLBCOnにしたその効果は、経験すれば驚愕ものです(ただし、音楽再生の品質の向上です。映画の爆発音なら、1台で当該空間に必要な音量が出せる能力があるのなら、むしろ多少歪んだ方が迫力が出るかもです=汗)。

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さて、今回のDLBCの導入前に、一つSWを入れ替えました。元々は、伊豆でかつて3台持っていたうちの一台の、Fostex 250Aと、この3800が複数SWに対応しているというので遊びで試しにつないでいた、パイオニアのPassive SW 「SLW500」(長らく、家の物置に転がっていた=汗)の2台体制でした。

 

さすがにこのPassiveはバスレフで音がひどいだけでなく、50Hzも出せないぐらいの能力しかなく、すぐに底付きしてました(汗)ので、全く戦力にはならずの状態でした。

 

今度導入するDLBCは、SW1台用のSingleと、複数台対応可のMultiに分かれており、お値段が違うのですが、複数SWの効果を知るものとしては迷うことなくMultiを選択。こうなるとまともなSW2台以上入れないとMultiを買った意味が無くなるので、当初は書斎用にかわいいのを一台買おうかな、と思っていたのです。

 

そんな中、実は最近、伊豆のメインシステムのSW4台体制を見直しているところだったので(詳細は後日、別稿にて)、どうせならば新しい一台は伊豆に入れて、向こうで不要になったFostexを書斎に移動しようと思いつきました。その一台は今注文中でまだ未到着なのですが()、いち早く、書斎のDLBCのために、Fostexを運び入れました。

 

写真1Img_0064

 

はっきり言って、部屋が狭すぎてSW二台なんて置く場所が無い()。でもどうしても2台入れたい! で、苦肉の策として、元々1台はLスピーカーの裏の机の下(=写真では暗くて見えない=汗)、もう一台はLP真後ろの小物台の下に置きました(さすがにインシュレーターをふんだんに使って共振対策はしましたよ!)。ちなみに、この台の上にあるヤマハのSPは、Atmos(映画)再生時のサラウンドバック(シングル・MONO)です。

写真2Img_0063

フロントのSWはまだLPを覗いていますが、リアのSWは完全に壁に向いて設置されています。でも、このような「ここに、このようにしかSWを置けない」状態で威力を発揮するのがDLBCなんです!!!(最新のデノマラAVアンプのウリの一つである、複数SWの「指向性モード」はDLBCと共存できないようです)。

 

ちなみに、Dirac によるSWの測定結果は以下の通りです。

写真3Swf

同じ機種にもかかわらず、40Hz付近にDipがある方が、リアSWです。恐らく正面の壁との反射で定在波の「節」になっているのでしょう。SW1台使いの場合は、これは「泣き寝入り」するしかないところですが、ここはSW2台体制の強みで、もう一台の方で十分カバーできますね。

 

改めて今回キャリブレーションをして、つくづく「いつもながらヒドイf特だな」、と思うのが、Cなんですよね。

写真CfこれはSW2台のf特にCのf特を重ねたところなんですが、70Hz付近と270Hz付近にDipがあります。270Hz付近のDipは、例のSonetto VIIIの逆相接続問題」のせいです(泣)。

 

70Hz付近は、以前、taketoさんが書斎にお見えになられた時にもおっしゃっておられましたが、これは部屋の縦位置の反射による定在波の「節」になっている影響です。これを解決するためには、CLPを前後に動かす、という物理的な方法しかないのですが・・・無理だわ()  Cの後ろにはほぼ接するように机が、LPの後ろには本棚が! じゃあ前に出せば?って、今ですら1.5MぐらいしかないC-LP間をこれ以上狭くしたら…2Wayの小型ブックシェルフならともかく、3WaySpeakersのフロア型なんで、これ以上どちらかを前に出したら目の前にSonetto VIIIが立ちふさがって、視覚的にも(笑) 「近接効果」 がひどくなって聴けたもんじゃない()

 

このSPは、東京の書斎では1台当たりの単価で計算すると最も高級品なのですが(汗)、その能力はかくも損なわれている(泣)ので、書斎においてはSonetto VIIIの徹底的なf特の補正は必須です。Dirac Live抜きでは碌な音が鳴らせません(最近、比較的条件の良い伊豆のシステムではf特他を補正しない方がいい音がする可能性を探りたいと、マニュアル修正が可能かもと実験中。これもまた別稿にて)。

 

さて、肝心の音ですが、いずれDLRCを導入した時と同じ音源を聴いて精緻な比較をしてみたいと思いますが、現状、Nakuraのバスマリンバだけ同じ音源がこちらにありますので聴いてみました。

 

まあ、予想通りです。DLRC導入時よりさらに「まともな音」になってます()。低域がきっちりとコントロールされ、「音楽の一部」になっています。私はもう20年以上SW相手に取り組んでいますが、SWというのは「音楽再生用」にする場合はセッティングが難しいんですよね(ダイナの島さんも、「2chでは勧めない」と断言してました)。音楽の中に「統合」するのがとても困難で、映画のLFEのように、「私、ここで頑張ってます!」感がどうしても出るものなんです。映画ならそれでいいんですが、音楽ではダメなんですよね、これでは。EDMならいいでしょうが、Classicではコントラバスもオルガンもピアノも、その最低域はその楽器の「一部」として聴こえなければなりません。

 

20年SWを相手に苦労してきて、数年前、DLBC付きのStormのAVプリを導入した時に、それまで1台でも苦労していたSWを、いとも簡単に2台まとめて綺麗に伊豆で再生する「音楽の一部」に繰り入れたのを聴いたその日から、書斎でも必ずいつかDLBCを入れようと思って来ました。

 

今回、晴れてDLBCを得て、SPは寄せ集めで、部屋の対称性が全くないという、「最悪のマルチ環境」である東京の書斎でも、ようやく「一つの、まとまった再生機器」からの音になりました()

2023年12月17日 (日)

シューベルトの歌曲「菩提樹」にみる、Auro-3Dのマイキングと、LCR同一SPの威力?

先日、『第九』のAuro-3D版を紹介しましたが、その反応の多さに気を良くし()、今研究中のオーディオネタを後回しにして何と音楽ネタ三連荘を決行することとし、今回は、「菩提樹」を取り上げます。これは交響曲なら『第九』でしょうが、歌曲ならシューベルトの『冬の旅』の「菩提樹」、というぐらい(?)、これを知らない日本人はいないと断言できる、名曲中の名曲です(私は「名曲」好き=笑)。で、そもそも皆さん、これがAuro-3D化されているのをご存知でしたか?

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それは以下のサイトからダウンロード販売がされています(リアルのDiscがあるかどうかは調べていません・・・)。この方はもしかすると、Classic初心者の私が知らないだけで(汗)、すでに有名な歌手かもしれませんが、個人的には彼の歌声は好きです。これ、たぶん(汗)テノールだと思います。結構この歌曲はバリトンやバスが歌うことも多いのですが、シューベルトのオリジナルスコアは、テノール指定であったという蘊蓄をかじったことがあります。

 

https://www.nativedsd.com/product/ttk0078-schubert-winterreise/

 

いうまでもなく、ピアノの伴奏による、ソロですから、「それって、Auro-3Dにする価値があるの?」という疑問を持たれるのは、むしろある程度Auro-3Dをご存知の方なら当然だと思います。実は私も最初はそう思って、購入をちょっとhesitateしました()。単なるボーカル曲に、高さ感や奥行き感に特徴のある、Auro-3DOver Specではないかと。

 

しかし、このソース、結構Auro-3D的に興味深い現象が観察されたので、Auro-3D的システムチェックにはよい音源かも、と思ってご紹介する気になりました。

 

いきなりですが、皆さん、「東海林太郎」って昭和の歌手、ご存じでしょうか?はっきり言って、私の世代よりかなり上でないと、この方が「流行歌手であった時代」を同時代体験しておられないと思います(汗)。私にとってはこの方は、小学生の頃に、大みそかの『紅白歌合戦』が終わった後、日付が変わったころにどっかの民放でたいていやっていた、音楽好きであった両親とともに見た「懐かしのメロディ」みたいな番組の常連のおじいちゃんでした。私はこの方の歌より、実はその歌い方がとても記憶に残っているんです。

 

この人、大英博物館の彫像のように(笑)、1ミリも動かずに歌うんです(口以外)。司会に紹介されて、カメラが振られてこの方がマイクを口元に動かしてから、歌い終わるまで顔は正面を向いたまま。目線もまっすぐで、マイクを持った手も動かない。表情一つ変えないんです。他の普通の歌手が表情豊かに、さらに前後左右上下に体をゆすって、時には舞台を動き回り、マイクを上げたり下げたり離したり近づけたりして、「視覚的にも」歌心(?)を伝えようとしているのに比して、「別格」の趣がある方でした。父や母は、「ラジオの頃のスターだから、<見せる>ような歌い方をしないのだろう」と言っていました。

 

さて、前置きが長くなりましたが(汗)、皆さんが普段ご自分のシステムで聴かれるソロボーカル曲で、しかもLiveではなくStudio録音のソースで、「口」はどの程度移動していますでしょうか?

 

少なくともPopsRockのスタジオ録音なら、確実に東海林太郎の如く「微動だにしない」はずです。よくPVなんかで録音風景を使ったものがありますが、ボーカルって、狭いブースに入って、ヘッドフォンをして(演奏を聴きながら)、上から吊るしてある「一本のマイク」に向かって歌ってません?

 

もちろん、その歌い方はLiveと同様、前後左右上下に動くことで、「情感を込めて」いるはずです(PVを見れば明らか)。決して「東海林太郎」のような「直立不動」という歌い方はしていません。にもかかわらず、ステレオ再生する際に、ボーカルがピタッと微動だにしないのは、それを録音しているマイクがモノラルだからだ、ということをかつて音楽雑誌で読んだ記憶があります。1次元で収録して、それを電子的に(?)LRに分離して収録してど真ん中にピタッと定位させている。1次元録音だから、歌手本人が前後左右に動こうが、音像が揺らぎようがない(マイクとの距離が変われば音量は変わるが、それは簡単に補正できるそうです)。

 

ゆえに、それをご自宅のシステム(特に2ch)で聴くと、「口」がピタッと定位し、「唇は動くが、歌手=口=は動かない」。これを<理想的な再生>と目標にし、それを目指して血のにじむようなセッティング(笑)を日々行っている方がいかに多いことか!

 

でもこの「菩提樹」、伊豆のシステムで聴くと、「お、今、これ右向いたな」とか、「あ、今、後ろに離れたな」とかが、<見える>のです(汗)。

 

実はこの音源をダウンロードして最初に聴いたのは東京の書斎のAuroシステムだったのですが、その時は正直言ってこの「現象」に気が付かなかったのです。書斎のSPシステムは「センター1点豪華主義」(笑)なので、そのSonetto VIIIから「生々しい声」が再生され、「さすが最新のものだけある、クオリティの高い録音だなあ」ぐらいにしか感じておりませんでしたので、伊豆でこの曲を聴いたときは、「ヤバい、どっかケーブルが外れているか緩んでいるに違いない」と思って、見て回ったほどです。

 

でも、「どうやらこれはこういう録音になっているらしい」ということが分かってきたのですが、もしかしたらこれ、「私の空耳」、つまり「単にお前の耳が悪くて、揺れて聴こえるんじゃない?」(=耳の乱視のようなもの?)という可能性も全くは否定できないな(笑)、と思い至り、記事にする前に誰か第三者にも確認してもらおうと思っていた矢先のこと。

 

法事のために早朝に伊豆入りして、伊豆のシステムで上述したように「菩提樹」のチェックを終えた後、朝食をすましちょっと仮眠をとろうかなと思っていたところに電話が。「今日、どこにいます?」「伊豆ですけど」「これから入交さんと一緒に行っていいですか?」…入交さんのお知り合いのMさんからでした!元々、入交さんには「またいろいろご相談したいこともありますので、一度是非いらしてください」とはお声がけしていたのですが、ちょうどMさんもこちらの方に来る用事があり、時間ができたので急遽一緒にどうかということになったようです。

 内心、「明日の法事の準備があるんだけど・・・」と思いながらも、オーディオ的好奇心の方が勝り、「おお、渡りに船!」と快諾。プロの耳で確認していただければ、誰も「お前の空耳だろう」とは言うまい!!!

 

ということで、また「入交クリニック」(これについては後日、別稿にて)を受けた後、「ちょっとこれ、聴いていただきたいのですが」と恐る恐る(笑)お願いしました。例によって、目を瞑られて、完全に「職人モード」で姿勢を正して数分お聴きになられた後、以下のようなコメントをいただきました。

 

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この「菩提樹」のボーカル部の録音は、オンマイクがない録音方式で、Auro用のTreeのみで録音されています。ですから3次元に配置されたAuro用のマイキングが正確に音像を3次元的に記録しています。ゆえにシステムの再現能力が高ければ、「口」が動くのがはっきりとわかるのです。どうやらこの歌手は歌いながらかなり動きを入れるタイプのようですね(笑)。一方、ピアノにはオンマイクが何台か入っていて、ピアノの音像をはっきりさせようとして、Mixをしているようです。しかし、ちょっとやりすぎていて、これだとピアノの上に歌手が座って歌っているように聴こえてしまいますね。私ならもう少しピアノが奥、歌手が手前に立っているように、明瞭度を分けたミキシングをすると思います。

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凄くないですか!!!(私は将棋好き。同郷の藤井君のファン。ココ、わかる人だけわかればよいです=爆)

 

入交さんによる太鼓判をいただき、東京の書斎では気が付かなかったのは単に向こうのシステムのクオリティが低い、特にLCRが同一SPではないからではないか、と考えるに至りました。また、特に「前後感」の表現はこれまでの経験からハイトSP群の影響が無視できないため、東京の書斎はここがメーカーすらバラバラなのに対し(汗)、伊豆では同じメーカーの同じシリーズで揃えていることも寄与しているのだろうと分析してみました。

 

ということは、このソース、皆さんのご自宅のAuro-3Dシステムの完成度のチェックに使えると思いません? LCRが同一SPで揃っていれば左右の動きが、第一層と第二層の音色や定位がきっちりそろっていれば(もしかするとサラウンドSPも関係あるかも)、前後の動きがはっきりと<見える>でしょう。

 

是非、お試しあれ!!!(自分のAuroシステムの完成度に自信のある方は入交さんに最終チェックしてもらうといいですよ。でも、「ショック」を受けますよ、きっと=泣=続報を待て!)

2023年7月13日 (木)

また歪を感知してしまい…SPを入れ替えました(汗)

今回はオーディオの小ネタです。しかも、再論です。しかし、これだけ頻発するということは、実は世の中のちょっと古くなっているSPって、厳密にチェックすると経年劣化で結構歪んでいるのではないかという問題意識の元、啓発的に(笑)書いています(本当は備忘録に過ぎないかも…)。

 

以前、書斎のセンターとして使っているソナスのSonetto VIIIのスコーカーに歪があることがわかり、出張修理をしていただいたというネタを書いています。その時は、ホルンの曲で発覚したのでした。

 

今度は、ピアノ曲でした。Auro-3D版のリストのピアノソナタです。以前、Phil-MdonguriさんがM1邸で聴いてきた、と書かれたものと同じです。

 

この曲は、ピアノソロなのでフロント重視で、結構フロントハイト群にもそれなりの音量で音が振られているソースなので、LCRとの垂直関係にあるHLCRとの音色のつながりのチェックにはとてもいいソフトなのです。ただし、言うまでもなく(笑)、書斎のLCRHLCRはバラバラ(たった6台の中に、4メーカー入っている…)なので、そこにはいつも目を瞑って聴いています(汗)。

ある日、そこそこの大音量(汗)で聴いていると、ピアノが打楽器であることを思い起こさせるフォルテのパートで、よくいえば、「やたら迫力がある」、悪く言えば、「ちょっとうるさい」感じがしました。前のSonetto VIIIの時も、最初はこんな印象だったので、その時のレッスンが残っており、「これはもしや?」と疑い、<犯人探し>を始めました。何度か「うるさく」感じる部分を繰り返しボリュームを上げて演奏し、あちこちのスピーカーに耳を近づけてみると、どうやら「犯人」は左のフロントハイトスピーカーのようでした。

 

このスピーカーは、KEFiQ-3というフロントバスレフの同軸2Wayブックシェルフで、伊豆の第一層のサラウンドシステムをKEFで揃え始めたときにリアのオーディオ用棚の上に置くために、15年ほど前に新品購入したと記憶しています(そのあとすぐに30が出てがっかりした記憶が…)。

 

めったに外さないサランネットを外してみると、こんな感じ。

 

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同軸型なのでウーファーのボイスコイル(?)のところに、ツイーターが仕込んであります。これは「既視感」があって、この前のSonetto VIIIのスコーカーの歪も、このボイスコイル(?)らしきど真ん中の部分が固定されていて、その周りのドーナツ型のコーン紙と干渉していたのが原因でした。どうやら、エッジやコーン紙の経年劣化でウーファーのセンターがズレてきて、真ん中のツイーターと接触しているようです。私は全くDIYは苦手なので(汗)、VIIIの時はユニット交換をお願いしたわけですが、この「故障品」を差し上げたtaketoさんが、マイナスドライバーでこじったら直ったよ、とおっしゃっていたので、今回、私もマネしてみることに(笑)。

 

ダメでした…歪はかえってひどくなりました…やっぱ、素人が手を出すべき世界ではないようです(大汗)。

 

SPの歪というのは不思議なもので、特定の音楽の特定の部分を比較的大音量で再生した時だけに発生します(というか、私の耳でわかるようになります=測定すれば、ずっと歪んでいるんでしょうが…)。

 

つまり、はっきり言って、このリストのこの曲をそれなりの大音量で再生することだけ避けて、「黙っていれば」お客さんにはわかりますまい(笑)。

 

しかーし、ここはやっぱり、「認知」の問題ですなあ。少なくともオーナーだけは脳が「認知」しちゃったんで、この先ボケるまで(汗)はずっと気になってしまいます。ということでこのまま使い続けるのは一応「オーディオマニアの端くれ」としてのプライド(笑)もあり、脳内却下。

 

と言ってもSonetto VIIIのように修理をするとしても、古い機種だし、元々安物だし、ユニット交換となれば、2Wayだからどう見ても程度のよい中古を買うよりもコストがかかりそう、とKEFに問い合わせることなく(笑)自己判断。

 

実は伊豆の物置に、それまでの第二層にあったSPSonetto Iに入れ替えたときに取り外したYamahaが何台か転がっているので、この際、それで代用することに。

 

それがこれ。

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Yamaha NS-2HX というモデルで、20年前に伊豆の家を作った時に今でいうところの第二層に大工さんに取り付けてもらった一連のシリーズのものです。さすがに左だけこれにしてみようか、というほど書斎で「お遊び」がしたいわけではないので(汗)、正常動作する右側とペアで交換しました。

 

右のフロントハイトは、本棚に押し込んでいるのですが、幸いこのSPもフロントバスレフなので、そこは問題なし。

 

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で、余った正常なiQ-3をどうしようかと考えたのですが、ふとこのSPが<同軸ということは、フルレンジ同様に「近接効果」が起きにくいのでは?>、とひらめいて(笑)、書斎のLPの頭のすぐ後ろに設置してあるMonoサラウンドバック(ただし、これはATMOS用。書斎のAVアンプ3800Auro-3D5.5.1Maxなので、これは鳴らない)として使っていた、今回入れ替えたYamahaの同じシリーズの2Wayのバーチカルツインの「センタースピーカー」NS-C7HX(これを縦に置いていた…)と交換してみました。

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つまり、今回、書斎(6.5.1)にある12台のSPのうち3台を入れ替えたわけです。

 

で、その効果はというと…

 

リストのAuro-3Dのピアノはとてもよくなりました。うるさくないです(笑)。前よりボリュームを上げられるようになりました! でもこれを「迫力が無くなった」と勘違いする人もいるかも。ここんとこ、「スピーカーの歪」に連続的に気がついてつくづく感じているのは、もしかすると今まで「このSPの音は迫力あるなあ」と思っていたもののいくつかは、「多少歪んでいた」のかも、と。よく言われることですがオーディオ機器の中でSPの歪は、他の機器の歪率とは二桁以上大きいそうですね。つまり、どんな優れたSPでも測定機にかかれば「かなり歪んでいる」んです、トランジスターアンプなどに比べれば。「歪み=迫力」説、あると思いません?(笑)酒でも雑味が入ってるからあれは「味わい」があるそうで、純粋アルコールの水割りなんて飲めたもんじゃないそうですから。

 

正直言って、うちの書斎のシステムは、伊豆のシステムより、時々「こっちの方が<迫力>があるなあ」と思うソースも少なくないのですが、もしかすると(というかほぼ確実な気がしてきているが)こちらの方が、安物SPの混成部隊で、ソース機器もAVプリも安物で、つまり「伊豆のシステムより、一桁以上歪率が高いからでは?」と最近疑っているんですよ(汗)。

 

でもどっちの音が好きかと問われれば、私自身はもちろん伊豆の方ですが、もしかすると人によっては(好きな音楽のジャンルによっては?)、東京の書斎の方が好き、という人もいるかもしれないと思い始め、これを確かめるべく、いままで「封印」していた、東京の書斎での「オフ会」も、徐々に解禁しようかと(笑)。どなたか、関心ある方、おられます?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・オマケ・・・・・・・・・・・・

今準備中のネタの、「teaser広告」(爆)を。

 

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次号、震えて待て!

2023年6月 5日 (月)

『Auro-3D入門』<実践編>(番外編:東京の書斎)-狭小で、ダメダメな設置のAuro-3D(Matic)の音は?

この<実践編>ですが、このところ2回連続で、友の会会員の中でも横綱・大関クラスが続いてしまって(汗)、このまま放置しておくと、これから始めようかという方に「Auro-3Dって、敷居が高いんだなあ」と思われかねないのを危惧したワタクシは、Auro-3Dの普及を目指す「友の会会長」として、恥を忍んで、「よそ行き」(笑)の伊豆のシステムではなく、「普段着」(爆)の東京の書斎のシステムを紹介することとします。書斎のシステムの詳細については、すでにここのブログでは紹介済みなので(詳しく知りたい方は、左サイドの『カテゴリー』から「東京書斎のAuro-3D」をクリック)、ここでは、これまでの「実践編」とはやや記述上のフォーマットを替えた「実践編の番外編」としたいと思います。

 

今回の問題意識は、ズバリ、「あんな立派な部屋と装置じゃないと、Auro-3Dって楽しめないのか?」です(汗)。

 

東京の書斎のシステムに、待望の(笑)Dirac Liveが導入されてから約3か月。ようやく、伊豆のシステムとの比較の対称性がある程度は取れた状況となり、この間、伊豆に行くたびに、向こうのシステムで東京と同じ音源を聴き、そしてまた伊豆でのお気に入りのAuro-3Dを中心とした音源を東京の書斎に持ち帰り、とっかえひっかえして、両システムのAuro-3DMatic)+Dirac Liveの音を聴き比べてきました。Dirac Liveはデフォルトでは、ややハイ下がりのほぼフラットなカーブにf特を調整しますが、伊豆との往復を繰り返す中で、伊豆の音に東京の音を近づけたいと思い、このf特の補正カーブを自分なりに試行錯誤を繰り返し、調整しました。具体的には、センターのHighが目立ちすぎると感じていたのでそれを落とし、逆にセンターのLowが足りない感じだったので、持ち上げています。ただ、センターのLowの落ち込みは定在波によるものと思われ、であればいくらf特を引き上げても場所を変えない限り定在波の固定周波数は変えられないので、その周波数帯域をLRとSW(フロント)で補うようにさらに微調整した、「ハウスカーブ」を作り、それを今は適用して聴いています。

 

そしてようやく、伊豆と東京のシステムの音の傾向の違いとその原因(?)について、自分の中である程度の結論のようなものに至ったので、今回、記事にしてみました。

 

まず、「比較の対称性が取れた」と書きましたが(汗)、それはあくまでも、1.どちらもAuro-3Dのソフト(BD、ファイルとも)が再生できる2.どちらもルーム補正ソフトのDirac Liveを適用している―という点「だけ」が共通であるにすぎず、Auro-3D的見地から見ると、伊豆のシステムと東京の書斎のシステムでは「雲泥の差」があります(泣)。

 

以下に両者のシステムの概要を簡単に一覧表にまとめてみました(クリックで拡大。以下同様)。

 

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実は、ここには書かれていない最大の違いは、2chやマルチを問わずオーディオでは機器以上に最も大切と言われる、「部屋」と「セッティング」でして、伊豆の部屋は一般のリスニングルームより床面積は少し広く、天井はかなり高く、容積は相当大きいと思います。

https://philm-community.com/Archive/my-room/auro3d/7814/ 

スピーカーの配置も距離的には左右対称で、各スピーカー周りのスペースにも比較的余裕があります。

 

これに比して、東京の書斎は、狭小(部屋自体は11畳ほどあるが、本棚と仕事用の大型机が入っているため、SPに囲まれているリスニングスペースは4畳半ぐらいしかない)であるうえに、SP配置が左右で非対称、さらにSP周りの空間がほとんどない設置状況となっているSPが多いという点で(後述)、決定的な差があります。

 

P(ダメダメな、第一層5.2chレイアウト)

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この、ダメダメ設置環境の決定的な証拠(笑)として、東京の書斎のシステムをDirac Liveで測定した結果のf特を、2台ずつペアにしたものをお見せしましょう。これらは、上から順にフロントLR(Dynaudio)、フロントハイトLR(KEF)、サラウンドLR(JBL)、サラウンドハイトLR(Yamaha)、ハイトセンター&VOG(ELAC)です。いずれも同じペアのSPなのに、特に設置環境の影響を受けやすい中低域で、結構二つのf特にずれがあるのがお分かりになると思います。これが伊豆のシステムですと、ほとんどきれいに重なっているのです。設置環境の対称性が取れている場合は同一SPを使用しているのであれば左右のf特に差が少ないはずなので、皆さんも一度、ご自分の測定値を左右ペアで比べてみると、ご自分の設置環境の対称性がどの程度かが分かると思います。

 

P5枚

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一体何をやらかすと、かくも「ダメダメでこのような不揃いのf特になってしまうのか?」という点を恥ずかしながら(笑)、『準備編』で書いたことに準じて詳細に説明しますと:

 

1.Auro-3Dを展開する理想の床の広さは、縦が約5M、横が約4M以上の空間(『準備編』2-1

←縦約3.5m、横約3mしかない。

2.円形の部屋か5角形の部屋がAuro-3D的にはベスト(同)

←直方体の部屋で、かつ全体に左サイドにSPシステムが偏って置かれている。

3.三層構造のAuro-3Dを考えているのであれば、天井高は3M以上を確保(2-2

2.4Mしかない。

4.第一層が5chの場合は、サラウンドは110度(3-3

←約90度(むしろさらに若干少ないぐらい)

5.大型の3Wayを狭い部屋に入れると「近接効果」が生じる(4-1-1)

←センター利用のSonetto VIII(3Wayフロア型)はLPから2Mも離れていない。

6.理想的にはあらゆる「壁」から1Mは離したい。妥協しても50センチぐらいまで(4-1-2)

←壁にぴったりつけているSP3台もある。

7.Auro-3D音楽専用システムであればCLRと同じものを(4-2-1)

CLRとはメーカーすら異なっている。

8.ツイーターの方式・素材を揃える(4-2-2)

HLRはハードドーム、サラウンドはホーン型、他はすべてソフトドームと、方式・素材ともバラバラ。

9.ユニット間の極性を揃える(4-2-3

←センターのSonetto VIIIはミドル・ハイが逆相(=バイアンプにしてミドル・ハイだけ極性を入れ替えて接続している)

10.密閉型のSWを複数台導入することを推奨(4-3-2

  ←密閉型1台と、バスレフ型1台の組み合わせ。

11.垂直配置原則 (5-1

←フロントのRとハイトRは互いの垂線から約1M近く離れている。

2.バッフル面の向き (5-2

  ←サラウンドハイトLRのバッフル面は適正角度よりかなり上を向いている

13.縦置き原則 (同)

  ←サラウンドSPは、横置きになっている

 

と、自分で列挙していてだんだん冷や汗が出てきましたが(笑)、自分で偉そうに(汗)書いた「原則」に対し、拙宅の東京の書斎は、何と13ものルール違反があります…(泣)。ここまで掟破りを重ねていると、普通は友の会から「破門」なんですが(笑)、何と言っても私が会長なんで(爆)。まあ、敢えて(!)、ここまでダメダメなAuro-3Dシステムでもどのくらいの音が鳴るのかを検証するために偽悪的にやっていると、好意的に解釈してください!!!(汗)

・・・・・・・・・・・・・

 

さて、ここまでが前置きで、本番はここからです。

 

3か月も聴き込んでいますので、使ったソフトは数知れませんし、覚えてないものもありますので(汗)、結論だけを書きます。いずれもAuro-3DまたはAuro-Maticで同じソースを聴いた印象です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

  • 1.東京のシステムではあまり聴く気にならないソフト
    • 編成の大きな演奏(クラッシックのオーケストラ曲、プログレのようなシンセサイザーを多用した音楽など)
    • オルガンやビブラフォンなど、教会・ホール全体を震わせたり、反響させたりするような音源
  • 2.東京のシステムでもまあ聴けるソフト
    • 室内楽
    • ピアノなどのソロ楽器
  • 3.もしかして、東京の方がいいかも、とすら思えるソフト
    • 汗の飛び散る、JazzRockLive
    • ボーカル曲
    • すべてのソフトの小音量再生

 

【考察】

上記1のジャンルに関しては、やはり、スピーカーの適正配置と部屋の差が大きいのだと思う。やはり伊豆に比して「囲まれ感」が足りないのだが、これは東京の書斎では頭の位置から後方には上下とも、SPが設置できていないためであろう。LPがほぼ壁についてしまっているようなレイアウトで、LP後方の空間(とそこに設置されたSP)がなければ、いかにDirac Liveの補正といえども、限界があるようだ。それからやはりSPの揃い方の違いも大きい。オーケストラの場合だと、フロントのLCR以外はほとんどアンビエント音が出ているわけだが、その音色が揃ってないとなんとなくうるさく感じてしまう。つまり、東京の書斎のシステム聴くと「あ、そこにSPがある」とわかるようなことがあるのだが、このようなことは伊豆のシステムでは起こらない。伊豆のシステムでAuro-3D(Matic)のクラシックを聴くときは、スピーカーが13台もあるにもかかわらず、すべて「消える」。

2のジャンルに関しては、予想以上に悪くなかった。室内楽も録音によってはサラウンドLにチェロ、Rにビオラとか、いかにも「マルチ」を意識させるような音場にしてあるものもあり(Tacetなど)、そのような録音の場合はたまにサラウンドのホーン型ツイーターから出る音がきつく感じる(特に管楽器などが振られている場合)ことがあるが、普通の録音では、フロントのLCRが中心となっており、東京の書斎の場合幸いにもこの3台だけはツイーターがシルクドームで素材が揃っているためであろう、第一バイオリンと第二バイオリンとか、ビオラとチェロなどが、LCRの間に配置されているような演奏の場合でも、比較的違和感なく聴ける。

ソロ楽器の演奏は、特にピアノが良かった。Auro-3Dソースによるピアノソロ曲は、クラシックでもジャズ(フュージョン?)でも奥行き感が2chよりも出ており、音色もメイン音がLCRの枠内に留まっているためか、伊豆で聴くのとそんなには変わらない感じがする。むしろこれは次の3とも関係するが、「スピーカーが近い」ことにより、「打楽器としてのピアノ音」の再生には硬い芯を感じられ、ピアノに近いところで聴いている感じになる。

 

3のジャンルは、まあ、さすがに「逆転」はちょっと言いすぎな所もあるが(笑)、前述した「スピーカーがLPに近い」ことがネガにならないような音源、すなわち、シンバルのハイハットとか、ベースのチョッパー奏法とか、ドラムのアタック音とか、目の前で吐く息を感じさせるようなボーカルとかが聴かせどころのソフトでは、伊豆のシステムの音とはまた違った魅力があるのは確かである。スピーカーに近いということは、反射音より直接音を中心に聴くことになり、当然、解像度の高い音になる反面、優雅な倍音の余韻のようなものは薄れる(しかも部屋自体、伊豆より東京の方が、本に囲まれている影響であろう、かなりDeadである)。これは優劣というより好みだと思う。特にサラウンドSPLPに近いうえに、何と言ってもホーン型ツイーターであるため、ここにシンバルや管楽器が振ってあるような曲では、昔NYのブルーノートでドラムのすぐ横の席に通された時の、耳が痛い感じ(笑)が味わえる。この感じが好きな人にはたまらないであろう。

最後の小音量再生は、やはりSPが全体にLPに近いからこそで、伊豆のシステムでLPにおける聴感上同じ音量を出すのに、必要なエネルギーが明らかに東京の方が少ない。小音量というのはオーディオシステム(アンプやスピーカー)にとっては歪の発生が少ないという大きなメリットがあり、また、東京の書斎のヤマハのパワーアンプはAB級なので、小音量であればA級動作領域に収まるため、音質的にはさらに有利な条件が揃うことが効いていると思われる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

結局、今は、伊豆でしか聴かない音楽と東京の書斎でしか聴かない音楽が別れつつあります。東京の書斎は「ダメダメ」と自虐的に書いてきましたが(笑)、実はLCRだけはほぼ部屋のど真ん中に位置していて後ろの窓や壁まで2M以上あって設置環境が比較的よく、かつLRはフロア型をさらに床から20センチ以上持ち上げており、Cの足元は純正のスパイク(伊豆のSonetto VIIIはキャスター=汗)を使用しているため、LCRとも床の共振がかなり抑えられており、さらに3台ともバイアンプ駆動となっているため、かなりその持てる実力をある程度発揮できているのではと思っています。そのため、LCRが中心となっているような楽曲では、他のSPがかなり条件の悪い拙宅のシステムでも、補正ソフト(Dirac Live)の威力もあるのでしょう、曲のジャンルによってはそこそこ聴けるようです。また、部屋は広ければ広いほどいいとは必ずしも言えないようで、広い部屋の場合はその部屋を良質の音の粒で充満させることができるだけのSPの大きさやアンプ類のパワーが要求され、必然的に大音量となるために歪などの機器の質や部屋の剛性や響き方なども重要になってくると思われます。これに対し、比較的コンパクトである程度デッドな空間におけるAuro-3Dは、聴く音楽のジャンルによっては、低音量でも迫力のある音を響かせることができ、十分魅力的だと思いました。伊豆では夜中にグラス片手に聴くJazz女性ボーカルは、Amator IIIOctaveの真空管プリメインという2chシステムを使いますが、東京では、逆に2ch1000Mは日中に大音量で使い、夜中にショパンのノクターンでも聴くときは、マルチのシステムに電源を入れることが多いのです。

 

結論的にいうと、何も巨大な空間やハイエンドのシステムでなくても、「悪条件が揃っている」システム構成・環境でも、Auro-3DMatic)は、工夫次第で、音楽ジャンルや聴き方によっては結構イケる(笑)-です!

 

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おまけ

 

実は、この記事を脱稿した後に、自分のシステムがガラパゴス化しつつあり、「独りよがりの印象論」になっているという自覚があったので(汗)、「友の会」仲間でご近所のtaketoさん(何と言っても拙宅のHCVOGを設置していただいた大恩人です!)に試聴に来ていただきました。もちろん、予断を持たれないよう、彼にはこの原稿を見せずに聴いてもらいました。そして、そこで伺った感想(そもそもほとんど聞いていないが=笑)を基に私がこの原稿を修正することもしておりませんので、この原稿はtaketoさんの感想には全く左右されておりません。

言うまでもなく、私は伊豆と東京の二つのシステムの往復の中でBrush UP(東京だけだが)をしてきたわけで、今回の報告はこの二つの比較論に過ぎません。taketoさんはご自分のAuroシステムをお持ちで、私とは別の音楽ジャンルの好みがおあり(今回も音源を持ち込んでいただいた)で、それに対する音像感・音場感の好みをお持ちのハズです。

彼は伊豆にもいらしたことがあり、今回の拙宅の東京のシステムとご自分のシステムの3つをどう聴いたのか、私のこの「独りよがりの印象論」に対する彼からのコメントが入ることを楽しみに待ちたいと思います!

                                                                                               

2023年5月21日 (日)

『センター突出構成』のマルチシステムの再生音って、どうなの?

この記事は、先日の『実践編』で紹介したX1おやじ邸での「気づき」と関連し、ある意味その表裏関係にあるものとなります。『センター突出構成』という用語は、そこへのモンテモンテさんのコメントから引用させていただきました(笑)。

 

X1邸での私の「気づき」とは、サラウンド再生システムにおいて、LCRが同一SPで構成されていない状況で、<相対的に>LRに比してCの性能(総合的な概念)が見劣りする場合、LRの足を引っ張ることがある、というものでした。

 

では、逆に、LRに比してCの性能が<相対的に>上回っている場合は、どのように聴こえるのか? というのが今回のテーマです。

 

普通は、特に2chオーディオに真剣に取り組んでこられた方が、マルチ「も」おやりになる場合、前者のLRCとなることが多くなると思います。また、最初からマルチをやるつもりでSP群を揃えた方でも、オーディオ専用ではなく、映像も楽しみたいという場合は、LR間にスクリーンかモニターTVが入るため、センタースピーカーは往々にして、LRとは同一ではなく、やや小型かまたは、横置きのものを設置する方が多いはずです。

 

逆に、CLRというシステムでマルチ・サラウンドオーディオに取り組んでおられるのは、これまで数多くのサラウンドシステムを訪ね歩いて聴いてきた私ですら、一つのケースしか知りません。それが、拙宅の東京の書斎です(爆=汗)。

 

かなり特殊な事例ですので、あまり参考にならないかもしれませんが、Auro-3Dの録音エンジニアである入交氏が、「Auro-3D再生において最も重要なSPは?」という私の問いに、「センターである」と公開の場でお答えになったのをご自分の耳で聞かれた方は、「友の会」会員には少なくないと思います。

 

つまり、「Auro-3D再生システム」において、もし<一点豪華主義>をされるのであれば、その「一点」とは、センタースピーカーであるべきだ、ということです。

 

これを忠実に(笑)守っているのが私の東京の書斎のシステムなのです(本当は、単なる余りものスピーカーの寄せ集めの結果、偶然こうなった面は否定できないが=汗)。

 

そこで、今回は、X1邸でやったのと同様に、このセンターの有無でどう「音」が変わるのかを検証してみたいと思います。

 

東京の書斎のシステム構成ですが、詳しくはまたの機会に『実践編』で紹介しようと思いますが、一言で申し上げると、1.狭小2.寄せ集め3.左右・前後とも不均衡4.エントリーレベルのやや古い機器中心-という「四重苦」を背負っています(泣)。

 

各機器の型番等は、この記事に書いてありますので、ここでは割愛します。その設置環境が非対称であることに起因する問題等は、後日。

 

今回の記事の主役となるのは、LCRですので、それだけを少し詳しく紹介します。

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まず、LRとして使用しているのは、デンマークのDynaudioというメーカーの、 XEO 5というワイアレス・アクティブSPです。このスタイルのSPは最近でこそ増えてきましたが、これを購入した10年ほど前には市場にはほとんどなく(あっても小型の安物ばかりだった)、ゆえにデビュー当時は話題とはなったのですが、それは私のようなライトユーザーの間だけで、「伝統的な2chステレオ派」のオーディオマニアからは完全に「邪道」とみなされ、2ch派の牙城の一流オーディオショップやStereo Soundなどの一流オーディオ雑誌などでもほとんどスルーされたと思います(笑)。

 

 

 しかし、私がこれを求めた理由は、アンプ内蔵型のSPはアンプの性能込みで出力特性をスピーカーメーカーが調整できるため、SPメーカーが「出したい音・聴いてもらいたい音」を忠実に再生させられる、との説明を、購入前の試聴で訪問した東京にあるDynaudio直営店の担当者に受けたからです(実はセッティング段階での音の変化の可能性は残るため、現在ではLINNのようにさらに音場補正AI込みで開発しているところもある)。

 

確かに、録音エンジニアがモニターとして使うSPはほとんどがこのパワードスピーカーであることはよく知られていると思います(WOWOWのスタジオのムジークや、入交邸にあるGenelecなど)。

 

特にこのXEOというシリーズは、2Wayだが、それぞれにD級パワーアンプを当てて駆動するマルチアンプモデルで、デジタルチャンネルデバイダーを内蔵しているそうです。私はこのSPが出たときにこの先進性(ワイヤレスも含め)にとても惹かれて、東京の家の二階のLDKTVマルチ用に3(ブックシェルフ型)と5(フロア型)の両方を購入しました(その後、キッチンの電子レンジとワイヤレスシステムが干渉することが分かり、すべてKEFと入れ替えた)。現在、東京の書斎で使っているのは、ダブルウーファーの5の方です(シングルウーファーの3は今は伊豆のVOGとして2台とも使っている)。

 

その出音は、Dynaudioらしく、癖のない、真面目でくっきりして、いかにも物理特性に優れている感じが聴感上もするものです。購入当時はまだ私の耳も若く、1000Mの系譜につながるようなこういうモニター系の音を好んだため選んだのでした。

 

一方、センターで使っているのはイタリアのSonus FaberというメーカーのSonetto VIIIです

 

これは伊豆で構成している5chのシステムの「余り物」(なぜ、SPメーカーはペア売りしかしてくれないのか?1台のみとは言わないが、3台とか5台まとめてなら奇数セットでも売って欲しいと思うのは、マルチに取り組んでいて、かつLCR同一スピーカーの重要性を知っているものであれば、切実に思っているはずだ。我々ユーザーが声を上げていかなければ…)です(笑)。過日、これも記事にしましたが、スコーカーを取り替えたばかりです。

 

このメーカーのSPは、Venere1.5(今は息子に取られている…)を皮切りにAmator IIISonetto Iも含め、ここ数年で16台も購入しました(爆)。出音は、目を吊り上げて聴く(汗)モニターSPに疲れたおじさんの脳髄を優しく撫でてくれます(笑)。ボーカル、弦、木管の再生音に関しては、おセンチな私の涙腺を刺激するが、シンバルやチョッパー奏法のEベースなどで、決して耳を刺激するような音は出さないです。ピアノの音は、モニター系のSPの音とは「全く異なる」が、その魅力は甲乙つけがたいです(だから未だに書斎の1000Mでもピアノをよく聴く)。敢えて言えば、右手を聴きたいときは1000M2chシステムを、左手を聴きたいときはSonusの入ったマルチによる再生を選びます。

 

ゆえに、書斎のマルチのシステムにおいて、LCRは、ゲルマン系とラテン系の違いでしょうか(笑)、「かなり」音色が異なるSPで構成されているわけです。敢えて共通点を言えば、XEOSonetto VIIIもシルクドームツイーターなので、高音の音色がある程度は似通っていることぐらいです(ベリリウムツイーターの1000Mは聴感上かけ離れている=だから、1000Mは書斎のマルチシステムには入れていない)。

 

両者のカタログ上のデータを比較すると:

1_20230521093101

 

どちらも新品で購入していますが、価格はSonetto VIII一台分が軽くXEO 5のペア分を上回っていたと記憶しています(約10年の購入時期と為替相場の違いを考慮する必要はあります)。

 

以下は、Dirac Live Audysseyで計測した両者の拙宅のLPにおけるf特です。

 

_________-20230521-133354 _________-20230521-133350 センターで使っているSonetto VIIIなんか、伊豆で計測したデータに比して相当凸凹がある。いかにこの部屋の音響環境が悪いか(汗)。お値段三分の一ぐらいのXEO5の方がいい感じ…かも?

 

 

今回の実験方法は、AVR-X3800Hが二つのスピーカーレイアウトを保存できるのを利用し、片方を第一層5ch、第二層5ch、第三層1chの計11chとし、もう片方をセンターレスの4.1.5.1として、双方ともDirac Liveでキャリブレーションをしたデフォルト設定で比較しました。

 

比較に使ったソースは、Auro-3DNativeソースに加え、SACDマルチや、ATMOS音源なども使いました。

 

とここまで書いておいて、「さあやるか!」となって、びっくりしたのですが(汗)、私のAVアンプは、センターレスにするとハイトセンターも連動してレスになり、さらにTop(VOG)も設定できなくなる、ということに気がついてしまいました!「こんな飛車角金銀落ちでAuro-3DMaticをやっても意味がない」と判断。急遽、今回はむしろ一切の補正もやめて、Pure-Directモードで、5chSACDだけを検聴ソースにして、センターの有無による音の変化を見る方針としました。

 

プリセット1がセンターレスの4ch、プリセット2が、センターありの5chに設定すると、簡単にこの2つをリモコンで切り替えられるので、曲の途中で切り替えて同じところを何度も比較して再生するという厳密な比較方法を取りました。さらに、参考のために、Player側の切り替えスイッチで2chソースの再生にも切り替えつつ適宜比較試聴を行いました(Tomyさんご指摘どおり、2chSACDトラックは5chのそれとは別にあることが、曲の途中でチャンネル数を切り替えると必ずその曲の最初から再生されることで確認できました)。

 

使用したソフトは、もちろん、前回のX1邸での「気づき」ソフト、『Credo』です!

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ただし、今回は、7曲目の「Credo」だけでなく、このアルバムの1曲めのピアノソロ曲(これ、クラシック初心者の私は初めて聴いたのですが、とても気に入って、今では愛聴曲なんです!)も使いました。

 

まず、この5chマルチ版において、各SPにどの音が、どの程度配置されているかを確認してみようと、LRを物理的にオフにして聴いてみました。

 

すると、1曲めのピアノソロでは、LRオフでもちゃんと全帯域のピアノ音がセンターから出ており(ただしサラウンドからはアンビエント音のみ)、この録音は、ピアノの音を「LCR」でほぼ平等に分担して再生させていることがわかりました(録音によっては、Cにはアンビエント音しか入っていないようなものもあるので、念のため確認した)。

 

次に7曲目の「Credo」は、かなりマルチらしい、5台のSPを使い分けた録音がされていました。

 

具体的には、弦楽器の音はほとんどセンターに振られている。ピアノの音は、サラウンドLLに分けて録音されている。冒頭の女性合唱はサラウンドLRに多めに振られている。管楽器はLRに振られ、Cには殆ど入っていないが、トランペットだけCLに入っており、しかも複数のトランペットが交互に呼応するように録音されている。男性の合唱は左右のサラウンドに振られている。ラストのチェンバロ(?)とバイオリンはセンター中心。女声合唱は左サラウンドとL中心、といった具合。

 

さて、5ch VS. 4chの比較試聴です(両者とも、全SP60HzBass Managementを入れており、SWは前後に各1台の計2台入っています。いうまでもなく、音量は同一での比較です)。

 

・1曲めのピアノソロは、Cが入る方がピアノの存在に奥行きを感じる。逆に言えば、Cなしの方が、ピアノが前に来る。COn(5ch)にしたときに少し華やかさが増すかなとは思ったが、それほど音色が大きく変わるということはなかった。

 

・「Credo」は、冒頭の合唱のフォルテッシモの部分。LRをオフにしてチェックした時に、このパートではそこまでCにボーカルが大きな音量では振られていないのを確認しているのだが、Cあり(5ch)の方が、Cなし(4ch)より、声(男女の混声合唱)がはっきりと、迫ってくる感じがする。

 

・6分ごろから9分30秒ほどまでの間の、ヒジヤンさんの言葉を借りれば「ごちゃごちゃしたところ」をCあり(5ch)とCなし(4ch)で繰り返し再生してみた。全体的にCなし(4ch)の方が、私の耳には「うるさく」感じる。逆に言えば、Cあり(5ch)の方が、各楽器の分離がはっきりと聞き取れるために見通しがよく、Chaoticな「うるささ」が少ないため音量をもっと上げられる感じがした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

今回の試聴結果は、二つの点で事前に立てていた「仮説」とは異なっていた。

 

一つは、音色。CLRはかなり音色が異なっているため、4ch再生に比して5ch再生は音色に違和感が出るだろうと思っていたのだが、私のだ耳のお陰か(汗)、ほとんど感じなかった。

もちろん、ピアノソロ(これを選んだのは私は昔から楽器ではピアノが好きで、この音色には一番敏感だから。その再生のために1000Mを選んだほど!)の再生では、Cが入ると多少華やかな感じが乗って、つまり音色は変わったのだが、演奏を通じての違和感(演奏途中で音色が変わるなど)は無かった。恐らくCには左手から右手までの音がすべて入っていて、LRの再生音を「上書きしている」または、「合成している」からではないかと考えた。もし、4ch再生(あるいは2chでも!)でLRをそれぞれDynaudioSonusにしたら、かなり「違和感」が出たと想像される。

Credo」では、Cが入ることによる音色の変化はさらに感じにくかった。これは前述のとおり、この曲は結構パート別に5台のスピーカーを分けて録音されている部分が多く、そのため、Sonus Dynaudioの両方で一つの音を再生(つまり、CLや、CR)、という音像形成がそんなに多用されていないからかな、と考えてみた。仮にLにピアノ、Cに合唱、Rに弦が別個に振られていれば、Cだけが異なるSPでも、それが再生する「合唱」の音が、LR「違う」と感じる比較の対象がない(同じ音が二つの異なるSPから出て初めて比較可能となる)わけだから、SPの違いが発覚するわけがない。

 

もう一つは定位感である。これはCの有る無しで大きく変わるだろうと思っていたのだが、むしろ「有り無し」で一番定位感が変わるSPはサラウンドであった。今回は1曲目のピアノ曲で、マルチの再生中にサラウンドをオフにしてLCRだけ(もちろんLRだけも=後述)で試しに聴いてみた。この曲は「Credo」とは異なり、サラウンドにはアンビエント音しか入っていないため、「音楽」としては欠落音なく楽しめるのだが、ピアノや演奏会場の立体感が大きく損なわれた。それに比せば、4ch5chによる定位感の違い(5chの方がやや奥行き感が増す。なぜかピアノがほんの少し遠くなったように感じられたのは不思議であった。Cがある方が、近く感じられるだろうと思うのが普通ではないだろうか?)は微小なものであったと報告しておきたい。

Credo」では、5ch再生でいくつかのパートがセンター中心(LRにもすこしは音は入っているが、Cのボリュームが一番大きいという意味)に音が振られているものがあり(合唱や弦楽器など)、この部分をCレスの4chで再生すると、やや実体感が乏しくなる感じは否定できなかったが、全般にはそこまで定位感に関し、この二つのフォーマットの違いは感じられなかった。ただ、前述したように、強奏部の「ごちゃごちゃした」(笑)パートでは、Cレスの4chの方が「うるさく感じられた」のは間違いなく、この「うるささ」は定位感と関係があるとすれば、Cアリの5chの方が、定位感に優れているといえるのかもしれない。

事前の自分の予想では、書斎のセンターSPLPから2M弱しかなく、この大きさの3Wayだと「近接効果」を回避できるかどうか、ギリギリの距離だと思っているので、Cアリの方が「うるさい」(音が混交するという意味)のでは、とみていたので、やや意外な結果となった。

 

最後に、X1邸では最も定位感・分離感よく聴こえた、2chソースの再生をした。拙宅の場合はX1邸のように2ch再生専用SACDプレーヤーを持っているわけではないので、マルチ対応のユニバーサルプレーヤーのスイッチを切り替えて、2chのトラックを選んで、上記と同様、ピアノソロと「Credo」の再生を行った。

ピアノソロに関しては、昔このシステムで音楽を聴いていたこともあり、購入の際もピアノ曲で試聴して気に入ったから入手を決めたSPであることもあり、まあ、及第点というか、これはこれで「いいな」と思って聴けた。音色は落ち着ていて、日が落ちかけているピアノ室で演奏している感じ(笑)。同じ曲を1000Mで聴くと、朝日を浴びながら演奏している感じ(笑)。さらに伊豆のSonetto VIIIで聴くと、にこにこしながら弾いている感じ(笑)。ちなみに、Amator IIIで聴くと、やたら思索的に聴こえる(爆)。これは完全に好みの範疇で、良し悪しではなかろう。定位感も、マルチトラックを4chで再生しているときにサラウンドをオフにして疑似的に2chにしたときのような、臨場感の喪失、ということはなく、書斎の環境が悪いので低レベルではあるが、ある程度臨場感もあった。やはり、2chソースには、ホールトーンなどの情報がちゃんと入れられているのだと再確認した。

 

 さて、問題の「Credo」である(汗)。ダメだった…。拙宅のマルチシステムに組み込まれている2ch再生環境の実力では、5chには遠く及ばない。しかも今回は無補正で聴いているので、設置環境の悪さ(左右の非対称性など)がそのまま出て部屋の反射もかなり混在しているのだろう、「うるさくて」とても最後まで聴ける音ではなかった。

 念のため、この「Credo」を東京の書斎の2ch再生のメインシステムである、LuxmanArcam→1000Mで聴くと、そこそこ聴ける。少なくとも最後まで聴ける(爆)。この差は、機器のクオリティの差もあるが、やはり何といってもArcamにはDirac Liveが内蔵されており(だから当初SACDプレーヤーとセットで購入した同じLuxmanのプリメインをReplaceした)、それを使って位相を含めた補正をしているのが大きいと思われる。

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試聴結果は以上ですが、今回は敢えて、センターだけにボーカルが振ってある5chソフトを使っての比較はしませんでした。拙宅ではこのような曲は、「センターが悪目立ちする」(笑)と以前書きました。もしかするとそれはその後発覚したスコーカーの歪のせいもあったのだろうと今は考えていますが、ボーカル再生はSonetto VIIIの得意分野で、特に女性ボーカルなどは肉感的な声に仕立ててくれます。これをDynaudioで聴くと「冷静で、つれない感じ」(爆)になるのは知っていたので、結果がわかっているものは敢えてやらなかったということです。ここは完全に「好み」の問題なので、Fairな比較用のソースとしては相応しくないと思ったからです(人にっては、Coolな女性ボーカルが好きで、Cレスに一票、というのは当然あり得る)。

 

さらに、今回はAuro-3DMatic)による、Cの有無での再生音の違いが検証できなかったのがとても残念でした(前述したようになぜか私のDenonではCだけ抜きのAuro-3Dレイアウトが構成できなかったため)。私Auro3D的には、Auro-3DMatic)においてセンターに多くの音情報を振っているのを知っているだけに、これがやれれば、Cアリの決定的な優位性を示せただろうと思っています。

 

もう一つ言及しておくべきだと思うところは、今回はDirac Liveを使っていない状態で比較した、という点です。可能であれば、4chだけのSPレイアウトと、5chだけのレイアウトでそれぞれきっちりとDirac Liveでキャリブレーションをやって、部屋の反射の影響による位相の狂いなどを完全に(?)除去したうえで、Cの有り無しを比べてみたかったのですが、実は今回、キャリブレーション用のプロ用マイクを伊豆に置いてきてしまい、できなかったのです(汗)。ゆえに次善の策として、全く無補正同士のガチンコ勝負にしたのですが、位相やf特が補正されていれば、もしかすると多少は違った結果が出た可能性は残ります。

 

結論的に、X1邸で見られた、「Cが無いほうが音がいい」というのは、事前の予想通り拙宅では感じられませんでした。これは先の記事にも書いた通り、X1邸は2chがメインで、マルチとはSPとパワーアンプを共有しているだけで、セッティングの練度も、再生機器のクオリティにも「大差がある」うえに、さらにCLRに比して見劣りしているからです。

 

逆に拙宅の場合は、Cが最もいいSP(この「いい」というのは主観的な表現ですが、ここでは単純に「価格差」で序列をつけています)で、この大黒柱(笑)のCを抜くとどうなるかの結果は、ピアノソロのような音源・音数が少ないものはそこまでは落ちない一方、「Credo」のような音源(楽器)が多く、さらにはセンターにもDiscreetの音を積極的に振っているようなミキシングをされたソフトでは、Cの有無の差は大きく出ました。残された問題意識としては、1.Cを抜くのではなく、Cを<相対的に>とてもしょぼいSPに入れ替えると、その違いはどうか?2.「LCR同一がベスト」が金科玉条なのかを確認するため、Cだけを<相対的に>とても質の高いSPに入れ替えると、LCR同一との違いはどうか?ーがあります。これらが検証できれば、興味深いデータが得られると思うので、どなたか是非おやりになられて結果をレポートして補足してくださるとうれしいです!

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【追記 523日】

 

上記の最後に、今後の課題として、1.Cを抜くのではなく、Cを<相対的に>とてもしょぼいSPに入れ替えると、その違いはどうか?と書いたのですが、その後、taketoさんからメールが来て、私の部屋に転がっている「しょぼいセンターSP」(taketoさん、こんなんでスマン!=笑)をtaketoさんに差し上げる約束になっていたのを思い出しまして(汗)。

 

で、taketoさんにあげる前に、「こりゃ、自分で確かめられるじゃん」と思って探すと本棚に入れてあったやつが見つかったので、さっそく「追試」をしてみました。

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今回使用する<相対的に>「しょぼいSP」は、ヤマハ製の以下のもの。

 

NS-C310 2ウェイ・密閉型(6.5cmコーン型ウーファー×43cmソフトドーム型ツィーター)CO値=6kHz

 

https://jp.yamaha.com/products/audio_visual/speaker_systems/ns-c310_brown__j/specs.html#product-tabs

 

使用ソフトは同様に『Credo』の1曲目と7曲目(Credo)。

Img_0601  

問題意識

1.Cをソナスからヤマハに入れ替えると音がどう変わるのか?2.Cをヤマハにした場合、Cの有無による(つまり、4ch5ch)違いはどうか?-の二点。

 

方法論

CSonusからYamahaに入れ替える際に、

1.Sonusではバイアンプ接続となっていた片方をYamahaに接続し、もう片方は取り外す。

2.スピーカー出力をマニュアルで、聴感上LRと同じ程度になるように、3dBほど上げる。

3.SWのローパスフィルターを設定上限の250Hz

4.センターSPのクロスオーバー値を同様に250Hz

 

として、なるべく他の変数が無いように調整した。

 

実験結果

11. CYamahaでの【ピアノソロ】

 

多少、「ピアノが縦になる」違和感と、演奏の途中で高低差があるところで若干音が動く感じがするのを除けば、意外に聴ける。特に右手の演奏部分は「おっ、さすがヤマハ!」(このSPのツイーターもシルクドームなので、LRとの違和感が少なかったのかもしれない)と感じさせる部分もあった。

 

縦になったり、音が動いたりする違和感の原因は、この場合、250Hz以上6kHzまでを受け持つヤマハのCのスコーカー(?)と、それ以下を受け持つFostexSWとの距離が、上下に1M以上離れている(ちなみに、Sonetto VIIIの場合は、CO値は270Hzでほぼ同じだが、さすがにツイーターとウーファーで30センチぐらい、3kHzまで担当するスコーカーとの距離は10センチぐらいしかない)からであることは疑いがないので、この二つの距離を短く設置できれば、もう少し改善されるであろう。

 

ただし、比較のため、CSonetto VIIISWとのCO値は40Hz)に戻すと、音の深みと臨場感(空気感)が違う。中低域の音質に大差があり、Kawai(敢えてYamahaとは言わない=汗)のピアノがベーゼンドルファーになった感じ(笑)。

 

1-2. Yamaha Cアリ VS Cなし(4ch

 

前述のように、このソフトはLCRにほぼ同量の音を振っているからか、これははっきりとCアリの方がいい。特に高域の弱音部で、ピアノの実体感に違いが出る。

 

13.Credo】だとどうか?

 

Credo」だとアリでもCの存在感というかありがたみ(笑)が薄い。最初の合唱のフォルテ、男女が声を合わせてCredo!!!と叫ぶところ。Sonetto VIIIだとその有無の差はここはものすごく大きいのだが、NS-C310だと、ここのパートでは有無の差がほとんど感じられない。スコーカーの能力の問題か?

 

結論

 

ピアノ曲のような編成の小さなものや、小音量で再生する場合などは、どんなにしょぼいものでも(もちろん歪んでいるようなのはダメですよ!)、Cアリの方がいいような気がした。

 

しかし、編成の大きなものや、大音量で再生する場合などは、しょぼいCだと、「あってもあまり意味がない」(汗)と感じた。ただし、私のだ耳と書斎のレベルのシステムでは、「Cが無いほうがむしろ音がいい」という、X1邸で感じたような現象は確認できなかった。

 

これはメールでtaketoさんにもご指摘を受けたのだが、センターSP問題は様々な条件(部屋、システム、聴く音楽ジャンル、音量etc.)により、その効果が異なるようで、一概に「無いほうがいい」とか「絶対ある方がいい」とは軽々には言えないようである。もちろん、5chソフトを再生する限りにおいて(恐らくAuro-Maticでも)は、ITU推奨の5ch同一SP・同一距離による配置(つまり、センターあり)に如くはないであろうことは言うまでもないと思うが(笑)。

2023年4月22日 (土)

皆さんのスピーカーユニット、もしかして歪んでいるかも?

今回は久しぶりに、オーディオネタで、Auro-3Dとはほとんど関係がありません(汗)。

 

ワタシ、前回の記事で、『The Horn in Romanticism  を、Dirac LiveBefore Afterで比較した際に、Afterの方で、「センターから出るホーンの音が目立ちすぎてしまう」と書きました。これ、Beforeが昨年の12月の試聴だったのですが、前回はここまでセンターが目立っていた印象が無かったのは、Beforeの記事にそれを指摘している部分が無いことからも明らかでした。

 

私は、Dirac Liveで各スピーカーユニットの位相を整合させて、音の交通整理をした結果、「音質面でのユニット間格差がよりはっきりしてきたのかな」、とその時は思っていました。実はこのソフトは2LBDで、一つしか持っていないので(汗)、普段は私のAuro-3Dの総本山(笑)である、伊豆の別荘の方に置きっぱなしにしてあり、こちらの東京の書斎で聴いたのは前回チェック時の12月以来で、つまりこちらの東京のシステムでは聴きなれていない音源でした。で、今月はちょっと伊豆に行く暇がなく、GWまで総本山詣ではお預けなので、「仕方なく」(笑)東京のシステムでこのソフトを何度か聴いていたところ、「これ、<目立つ>と書いたけど、むしろちょっと<うるさい>ぐらいだなあ。伊豆ではこんな音じゃないはずなのだが(センターだけは同じSonetto VIIIなので)、アンプやソース機器の違いかな?」と思い始め、ある時、「試しにセンターオフにして聴いてみよう」と思って、やってみたんです。

 

すると!、「センターレスの方がいい音がする…。これ、もしかしてスピーカーが歪んでいるんじゃ?」と、一気にオーディオマニアモードに突入!!!(笑)

 

こうなると少年の頃の「科学好き」精神が発動し初めまして(笑)、まずはSonetto VIIIのサランネットを外して、同じホルンの音源を何度も繰り返し再生して「犯人探し」。大音量にして耳をSPユニットに近づけて繰り返し聴くと(難聴になる可能性があるので注意!)、どうもスコーカーが怪しい。こわごわとスピーカーのコーン紙のところを再生中に指で押し下げてみると、車でいうところのセンターキャップ(汗=ボイスコイルって言うんですかね?)とコーン紙の間の隙間が広がって、音は鈍くなるものの、煩さ(=歪)は無くなる。どうやらこのコーン紙とセンターキャップ(笑)が干渉しているような気が(ちなみに、LRで使っているDynaudioXEO5でも試してみると、こちらのスコーカーはセンターキャップ(?)も振動するタイプで、コーン紙とはつながっているようでした。一方、Sonetto VIIIのスコーカーは、センターキャップ?は振動しておらず、コーン紙とは切り離されている)。

 

ということで、犯人を確定したので、ヘタレな(つまり、DIYとかは全く頭に浮かばない人=汗)私は、即、お世話になっているDオーディオのSさんに連絡。ご存知のように(笑)私はSonetto VIII3セット6台持っているのですが、このうち2セットはSさんのところを通して購入しましたが、もう1セットは海外転勤が決まった友人から譲り受けたもの(これもお茶の水にある、某有名ショップで購入したもの)で、実は、今回のブツが、どれだかが分からない(保証書にシリアルナンバーが書いてあると思うので、伊豆に帰って照らし合わせればわかるとは思いますが)。まあ、どのみち保証期間は過ぎていてお店によっては「ウチで購入したもの以外は修理対応しない」というところもありますが、さすがSさん、「こちらで面倒見ます」と、すぐに輸入代理店に部品の在庫を問い合わせてくれました。

 

幸い、一つだけ在庫があるとのことで(無かったら数か月待ちになるところだった…)、ご相談してから三日目後ぐらいに拙宅に輸入代理店のエンジニアと共に訪問修理に来てくださりました。

Img_1837

これ、何気に書いてますが、普通はここの輸入代理店は「訪問修理」ってしないそうなんです。DオーディオのSさんの依頼だから、彼の立ち合いを条件に特例的に代理店のM社長が認めたのだとか。このM社長とは「いろいろとありまして」(詳細はPhileweb時代の過去記事に詳しい…笑)、伊豆の拙宅にまでいらしていただいたことがある方で、まあ何かとお世話になっておりますデス(汗)。

 

で、エンジニアの方がご持参されたチェックディスクをかけたのですが、特に目立った異音は出ず。でも、「歪の知覚には個人差があり、オーナーが気になるのなら交換一択」ということで、診断結果は、「ボイスコイルとコーン紙のセンターがずれて、スピーカー内部のプレートに接触するという、比較的ありがちなトラブル」(=若干、記憶があいまいで、正確な表現でない可能性あり・・・汗)でしょうとのことでした。

Img_1833Img_1834

早速、スコーカーの取り換え。手早く取り外され、20分ぐらいで終了。何でも昔の機種はSPユニットの内部配線をハンダ付けしていたそうですが、最近の機種は「ハンダを使うと音が悪くなる」とかで、なんかYラグみたいなものを抜き差しして交換していました。

Img_1836 Img_0568 Img_0569

早速音出し。やっぱり、「きれいな音」になりました(笑)。

 

ここから先は、輸入代理店のエンジニアさんとSさんを交えたオーディオ談義なのですが、そもそも「歪」というのは、ご存知のようにすべてが「悪」というわけではなく、エレキギターなんかでは、Distortionを生成する機械を通してPAに送り、ペダル操作で歪を付け加える演奏テクニックがありますよね。あれは人間の耳には、<適度な>「歪」は<音の迫力>が増したように聴こえるという特性を利用したものだそうです。

 

そして原理的(分割振動?)に「歪」が全帯域で全く発生しないSPユニットはないそうで、それが2Way,Wayとユニット数が増していけばいろいろな周波数帯域で「歪」が測定されるそうなんです。で、ある意味、この「歪」が、そのユニットだったりスピーカーの「音色」を方向付けている部分もあるとか。

 

だから、今回のケースも、私の耳には「ちょっとうるさい」が、人によっては、「ウチのセンタースピーカーは迫力のある中域音が出るのが自慢」という場合すらあるようです。つまり、Sさんによると、多くの方が普通に音楽を聴いているだけで、軽度な「歪」に気がつくことは稀とか。確かに、拙宅の場合も、このホルンの曲以外は、ピアノでもボーカルでも、オケでも、「もしかして歪んでいるんじゃ?」と思ったことは全くなかったのです。

 

特に、2chの片方のSPのあるユニットだけが少し歪んでいるような場合で、大音量では聴かないタイプの方は、「まず気がつかない」そうで、事実、Sさんがお得意様のSPの買い替えで下取りにお邪魔して、初めて「歪」を指摘されて驚かれるオーナーは多いとか。プロは買い取りの際に、超低域から超高域までのスイープ音を大音量で出して、耳をユニットに近づけてチェックするそうで、普段そのような聴き方をしていないお客さんは、まさか自分の「超高級」(Sさんのお得意様は大体そういう方たち=笑)SPが「歪んでいたまま使っていた」とは思わず(劣化は徐々に進行するため、オーナーは「ゆでがえる」状態になっていて気がつかない)、「修理代分、査定価格を下げる」というと、「そんなはずはない!」と気色ばむ方もいるとか(笑)。

 

今回、幸い(?)私が気が付けたのは、決して私の耳がいいからではなく(笑)、このホルンのソロのAuro-3DNativeの曲を伊豆で聴き込んでいたことに加え、何度も書いているように、Auroでは最も重要なSPであるセンターに、「主役の音」を7割ぐらい振ってあり(残りをLRに振る感じ)、この曲の場合、それがホルンというまさにSonetto VIIIのスコーカーの受け持ち再生帯域(2703000Hz)にぴったり収まる音源だったからのようです。

 

つまり今回はたまたま、センターのスコーカーというピンポイントを鳴らす音源があり、さらに同じセンターSPを使った異なるセットを持っていたから気がつけただけで、普通の音楽なら2chですでに気が付きにくいというのなら、マルチはどうなる? もしこれがハイトサラウンドSPとかだったら、音楽を聴いているだけでは一生気が付かなかったでしょう!(汗)  皆さんも是非一度、スピーカーユニットに歪みがないか、一台一台大音量でスイープ音を再生させて、チェックしてみることをお勧めしておきます(笑)。

 

さてこれを受けて、先の記事のAfterのインプレを書きなおさないといけないかと思いましたが、修理前は「目立ち」していたのが、修理後も「他のSPよりいい音がする」という意味でやっぱり「目立ってる」ので、ま、そのままでいいかと(笑)。

 

ちなみに、このスコーカーは「単体での取り寄せ」は不可なんだそうです。「Sf」のマークの付いたスピーカーユニットを使った「自作SP」が出回ることはメーカーとして認められないとか(当たり前か)。

 

今回のスコーカー交換の出張修理代金は以下の通り。

 

交換部品:Sonetto VIII スコーカー(WOF280001KIT) 40.000円 1個

基本技術料:20,000円(スピーカー1本あたり)

出張料金:15,000円

合計:75,000円(82,500円(税込))