今回の記事は、はっきり言って、スピーカーとアンプとの関係の一面を理解したいという関心がない方にとっては、チャンデバ・マルチアンプに取り組んでいる人以外には役に立たず、それどころか理解もされない可能性すらあります(汗)。
にもかかわらずここに書くのは、自分のSPシステムに対し今後起こりうるかもしれない<悲劇>の可能性に対し自分なりの理解の上に<決断>をしたことを、頭がボケる前にマニフェスト的に明文化しておきたいからです。そして「自分の理解と判断の論理的プロセス」を言語化することで脳に固定したい。「なんとなくわかっているつもり」のことでも、文字化しようとするとできないのは、「本質的なレベルではわかっていないから」というのは、仕事の属性から日常的に経験しています(笑)。
今回はいつも以上に文章が長く(汗)、写真が少ないので(笑)、長い文章を読むのが脳に苦痛だと感じるという方は、ここから先に進むのはやめておいた方がいいです(爆)。ただ、最後の【おまけ】だけは読む価値あるかも?!
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さて、チャンデバシリーズの前回の記事で、「実はまだこれで「終わり」ではない。検討すべき事項がもう一つだけ残っている。続きは次稿」と書きました。これがその<続き>であり、本当の<終わり>になるはず!?
この、「検討すべき事項」とは、私はチャンデバ・マルチアンプに手を染めるホンの数か月前までは知らないことでしたが、チャンデバ・マルチアンプに取り組んでいる人の間では、完全な「常識」のようです。
この「常識」とは、「アンプをスピーカーユニットに<直結>する」と表現される、マルチアンプ化の作業過程で、文字通り「電線だけで直結」することのメリット・デメリットを検討し、その対策を最終判断することです。
ここから先は、私が今回の判断をするにあたって参考にさせていただいた多くの先達のご意見や、ネット上の様々な情報、さらにはメーカーに直接問い合わせていただいた回答などを自分なりに咀嚼してまとめたものです。繰り返しますが、私は社会科学が専門なので、音響工学・電気工学・電子工学などの分野には全く知識がないばかりか、どんなに丁寧に書いてある文字情報や絵解きや数式を見ても、また、諸先輩方がどんなに丁寧に説明をしてくださっても、<完璧な原理的な理解>には達してないことには自信があります(笑)。
ゆえに、私の理解が間違っていたり、書き方が不適当であったりする部分も十分あり得ますので、これをお読みになっておられる先達の方で間違いに気づかれましたら、遠慮なくご指摘いただけると助かります。
- 「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの、音質的なメリット・デメリットとは何か?
今回、既製品のSonetto VIIIの各スピーカーユニットを取り外し、個別に性能を測定し、それらをデジタルチャンデバを使って再構成する、という一連の作業を経て素人の私が大いに学んだことは、<各スピーカーユニットの性能は本来はバラバラである>ということです。単純に再生可能なf特だけでなく、能率も、歪率もです。そして、市販のマルチWayのPassiveスピーカーは、これらを、内蔵の「ネットワーク」という装置で、各ユニットのf特や歪率の「おいしいところ」を取り出し、それを同じ音圧出力になるように調整している、ということです。
この「ネットワーク」に一般に使われている材料は、コイル、抵抗、コンデンサーが御三家のようです(それぞれがどのような役割をしているのかは、「にわか」の私が下手なことを書くより、ご関心がある方はご自分でググってください=笑)。
で、この普通のPassiveスピーカーを、チャンデバ・マルチアンプ化するということは、これらの「御三家」をすべてすっ飛ばして、アンプと各スピーカーユニットを一対一の関係で「電線で直結」する、ということです。
これは私のやや得意とする自動車(工学というほどでもない、素人に毛が生えた知識・経験)とのアナロジーでいえば、「MT」と「AT」の違いに例えるとわかりやすいかと思います。車では(ただし、現代の電気自動車は違うかも???)、エンジンの回転を、タイヤを回転させる動力に使っているわけですが、MTはこの二つを単純化して言えば「直結」しているのに対し、ATは、この二つの回転の間に「流体」が入っています。
ここで「エンジン」を「アンプ」、「タイヤ」を「スピーカーユニット」、「流体」を「ネットワーク」に置き換えて例えることが大雑把には可能だと私は理解しています。
つまり、「直結」のメリットは、「MT」のメリットと似ています。損失が少なく、ダイレクト感があります。アンプ(エンジン)とスピーカーユニット(タイヤ)の性能がそのまま出ます。MTのクラッチ操作の楽しみは、チャンデバの調整の楽しみ(苦しみ?=汗)に例えられるでしょうか。
クルマ好きの方で、ATもMTも乗ったことのある方であれば、こう例えれば、両者のそれぞれのメリット・デメリットは表裏の関係にあることをよくご存じでしょう。
つまり、ATはエンジン特性の荒々しさ・変動をうまくいなして、タイヤをスムースに動かす点でMTより優れています。「ATの乗り心地の方が滑らかで好きだ」という人は少なくないのと同様、Passiveスピーカーの方が、アンプの粗をうまくカバーし、各スピーカーユニットの固有の嫌な音を抑えて音を出しているように感じられて、こちらの音の方がいい意味で「角が取れた、大人の音」がすると私も強く思います。
しかも、クルマでもATの味付け(動作特性調整)でSportyにも、Gentleにもできるように、Passiveスピーカーでは、「ネットワーク」の<味付け>で、そのメーカーやエンジニアが狙った音質・音像・音場を出力できる性能に最終的に仕上げていて、これはハイエンドになればなるほど、ここに心血(時間とコスト)を注いでいることは明らかです。
ということは、このメーカー・エンジニアがそのスピーカーの特色を出すために心血を注いだ「ネットワーク」を外して、ユニット直結にしてしまうというチャンデバ・マルチアンプ化への改造は、単に「メーカー保証が受けられなくなる」だけに留まらず、そのメーカー・エンジニアに<絶縁状>(笑)を突き付けるようなものかもしれません(汗)。そして、いうまでもなく、<絶縁後>の音の行く先は、オーナーの完全なる責任の下にあります。<荒波の中に海図なき航海に出る>(これを避けようと、『改造』の場合は、Cmiyajiさんや最後に紹介するフウさんのように、オリジナルのデータ=海図=をなぞる方が多い)ようなもので、下手をすると「漂流」したり、「難破」したりするリスクがあることが、最大のデメリットでしょう。
この「絶縁」後の音質の変化は、やったことのある方しかわからないとは思いますが、「見た目は全く変わらない」のに、「同じスピーカーから出ている音とは思えない」ほどです(汗)。それがよい方向への変化なのか、悪い方向なのかは、人の主観ですが、<生々しくなる>、とだけは確実にいえます。モネの『睡蓮』が好きか、パリ郊外にあるモネの「庭園」が好きか、は人それぞれですが、後者の方が「生々しい」(=というか「生」そのものだが!)から「やはり本物の自然には芸術は勝てない」と考える方もいれば、「本物には情緒が感じられない。ロマンを掻き立てる絵の方が好きだ」、という方も多いですよね。
とにかく、チャンデバ・マルチアンプ化改造を経験して、良くも悪くも、「ネットワークの有無で音が変わる、換言すればネットワークが<オリジナルのスピーカーユニットの音>を変えている」ことだけは、身をもって知ることができました。
- 「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの、工学的なメリット・デメリットとは何か?
ここに書くことは、実はついこの前まで私は知らなかったことなんです(大汗)。「そんなことぐらい、勉強してからチャンデバ・マルチアンプ化しろ!」と先達には叱られそうです(笑)。
まず「工学的なメリット」の方ですが、直結はアンプとSPユニットの間に電力を消費する「コバンザメ」(笑)が無いのですから、アンプが発生させた電力を電線以外では損なうことなくSPユニットに届けられる点にあります。このことは、人間の耳でその差が知覚できるかどうかは別にして、「論理的には」同じアンプ出力でも直結の方が「音圧」は上がる、ということだけは確実な「メリット」と言い切れるでしょう。
次に「工学的なデメリット」ですが、「直結」にすると、最悪、スピーカーユニットのボイスコイルが焼き切れる可能性があるそうです(知らなかった・・・幸い、未経験=汗。以下の記述は私の理解力では確信を持てないので伝聞調になります=笑)。
スピーカーがどうやって音を出すかは、昔から本質的な原理は変わっていないそうで、フレミングの右手だか左手だか(笑)の法則とやらで、コイルに電気を流すと磁気が発生して、そこで発生する磁力を利用して、振動版を動かして空気を揺らすのだとか。
で、この「コイル」というのは要するにボビンと呼ばれる輪っかに「糸巻状に電線を巻き付けてあるもの」だそうで、この電線が熱で焼き切れたり、熱でボビンが変形してしまうリスクが、「直結」だと高まるんだとか。
どうして電流を電線に流すと「熱」が出るのかというのは、いわゆる「電熱器」の要領で、要は電流というのが電線の中を流れにくくなると熱を発生するらしい(汗)。ではどうして「流れにくくなるか」というと、1.電気が通りにくい「不純物」?が多い素材を使っている、2.道の細さに対して、とても一気に通りきれないような大量で強力な?電気が襲ってくる―のいずれからしい。
スピーカーユニットのボイスコイル用の電線には1を使うはずない(多分=汗)ので、トラブルの原因は必ず2になる(多分=汗)。
で、この「大量で強力な電気?」の発生するメカニズムには、二通りあるそうで、一つは、「クリップ」、と言われる現象、もう一つは「直流(DC)漏れ」と呼ばれるものだそう。
まず、「クリップ」ですが、これは出力波形がきれいな正弦波にならず、頭打ちになる状態を指す。音質的には「歪み」となり、ひどい場合は人間の耳でもわかる(ギターのディストーションはコレ)。いろいろな原因があるようですが、自分のシステムで問題になる可能性のあるクリップのメカニズムは、「パワーアンプでは最大出力を超える場合、出力信号がクリップする」ことで、ということは出力の小さいアンプで大きなスピーカーを鳴らすとクリップしやすくなるらしい。
私は入力でも出力でも過大入出力で機器が処理できる限界を超えると「クリップ」という状態になり、それが「歪み」を生む、というのは経験的に(汗)知っていましたが、出力の小さなアンプの方がクリップさせやすいとは知らなかった・・・むしろ出力の大きいアンプの方が、過大出力をスピーカー側が処理しきれず、「クリップ」させると思っていました(そのようなクリップのメカニズムもあるらしいが)。
では、この「クリップ」がなぜスピーカーを壊す可能性があるのか?これは特にツイーターが危ないらしい。
というのは、入力信号がクリップすると、元の信号には存在しなかった高周波(超高音?)や高調波(電源の周波数=50Hzとか60Hz=の整数倍の音波?)が生まれてしまうらしい。そしてツイーターには普通ローパスフィルターは入れていないため青天井の周波数の入力を許容してしまうので、この「クリップ」が継続的に発生し続けるとボイスコイルが過熱して損傷する可能性があるのだとか。
次に「直流(DC)漏れ」ですが、私はかつて、Sonetto VIIIのスピーカーユニットの「逆相接続問題」(既製品のPassiveネットワークでは、中高域ユニットが低域ユニットに対し逆相になっている)に悩まされたことがあり(これもSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプ化改造に踏み切った大きな理由の一つ)、その時にスピーカーユニットが正相接続されているのか、逆相接続されているのかを確かめる方法として諸先輩方に伝授いただいたのが、「乾電池のプラスマイナスをそれぞれスピーカー端子の+と-につないでみる」という方法。
これをやると、スピーカーユニットが前か後ろのどちらかに動いてくっついたまま(汗)になる(その動く方向を見ると、正相か逆相かを判断できる)。つまり振動はせずに前か後ろに動いたのちに固まってしまうのだが、この状態が、直流がSPに流れている状態。普通は交流(AC=+と-が交互に入れ替わる)の電流がSPに行って、だからスピーカーユニットは「前後に振動」して人間には「音」として聴こえる。直流だと人間には「音」として聴こえないはず。
もし、この直流がスピーカーユニットに流れ続けると、ずーっとコーン紙が片側に貼りついた状態になるのだが、これは直流は常に一定の電流が流れ続けるためらしい(交流はプラスからマイナスに変位していく電流のため振幅があり、一瞬ゼロになるポイントすらあるそうだ)。つまり、直流は交流と違って「一息つかせてくれない」(笑)。このため、持続的なエネルギーで加熱しやすく、ある程度のパワーを持つ直流が流れ続けるとボイスコイルに巻かれている細い電線が焼き切れてしまうらしい。
では、なぜ、このような「直流(DC)漏れ」が起きるかというと、私には詳しいメカニズムはよくわからないのだが(汗)、要するに、ソース機器やプリアンプやパワーアンプの品質が悪いか、保護回路が付いていないか、または古くなって保護回路の部品が劣化して来ると「漏れる」可能性があるんだそうだ。だから、「ある程度の高級ブランド品を10年程度で買い替えていれば問題はない」、というようなことをあるオーディオショップのベテランに教えてもらった(安かろう悪かろうの途上国?の製品や20年以上のヴィンテージ品をレストアもせずに使っているとアブナイとか・・・)。
- 結局、拙宅のシステムで「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの最大の懸念は何で、最終的にどうしたのか?
「直結」のリスクのうち、「クリップ」を防ぐには、対処法としては、「パワーアンプの出力をなるべく大きなものを使う」ことしかない。
現状、Sonetto VIIIは、
ウーファー用に、PA-16 200W(8Ω)
スコーカー用が、STA-9(BTL)290W (4Ω)
ツイーター用に、A-0 10W(8Ω)
を当てており、どう見ても(汗)、ツイーター用だけがやたら出力が低い。
問題は、この出力で、ハイパスのCO値を4000Hzに設定したSonetto VIIIのツイーターが、「実用上」、クリップしているのか? である。
そこで、いろいろと調べましたよ(笑)。
- Classicのみならず、JazzやPops/Rockも「私以上の大音量で」(笑)お聴きになられるチャンデバ・マルチアンプ化でお世話になったMyuさんが、かつて「9W」という最高出力のアンプでドーム型ツイーターをドライブして2年弱もの間お使いになっていたが、その間、一度も「クリップ」を感じたことはない、という証言を得た。
そして何より、私が普段よく聴くAuro-3Dの様々なNative音源(オーケストラあり、リストのピアノソロあり、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲あり・・・)を、普段聴く音量より「気持ちさらに大きめ」で再生しても、<私の駄耳では>汗、クリップ=歪みなどを感じることは全くなく、むしろ、リストのピアノ曲における高音の強打のパートでは、今までSTA-9(=120W )をつないでいた時よりも、最大出力10WのA-0の方が「澄んだ、透明感のあるフォルテ」が聴けて、「もしこれがクリップしている音なら、私はこちらの方が好きだな!」と思えたことが決定打となった。つまり、クリップに起因するツイーター損傷事故の発生リスクに関しては、「現状で問題なし」と判断。
次に、「DC漏れ」については、これが起こると、真っ先に危険な状態になるのはこれもツイーターだそうだ。というのは、低域再生能力がある=たくさん空気を動かす=強力な磁力が必要=ボイスコイルに大電流が必要=使用されている線材が太い=ため、ウーファーやスコーカーは一時的な「DC漏れ」程度では使用されている線材が焼き切れることは起きにくいらしい。
ということで、諸先輩方の進める対処法は、「ツイーターとパワーアンプの間にコンデンサーを挿入する」という方法。この「コンデンサー」というのがどういう機序でDC漏れの防波堤になるのかは皆さんに教えてはいただいたが、自分の言葉で書く、というレベルまでは呑み込めていないのでここでは割愛。もちろん、チャンデバ・マルチアンプ化をしている方がすべて「コンデンサーを挿入」しているわけではなく、入れずにチャンデバ・マルチアンプで運用している人も少なくない。
P ツイーターを「DC漏れ」から保護するには、こういうものを挿入する必要があるらしい(これは過日お邪魔したTomy邸のもので、単なるイメージ=笑)
ここは、オーナーの<判断>が別れるところであり、私もここらでその決断をしなければいけない。
ただ、一つ言えることは、コンデンサーを入れれば、それは「真の直結」ではなくなる、ということ。アンプとスピーカーユニットを「直結」するメリットは上述した通りだが、そこに「何か?」を介入させれば、確実に「出音」は変化する(劣化する、かどうかは主観によるのでここでは触れない)。
つまり、ここで比較衡量しなければならないのは、「コンデンサーを挿入する」場合のコスト(ここでは金銭的なものだけでなく、手間や見た目の変化なども含む)と、「コンデンサーを挿入しない」場合のリスク(その確率とコスト)のどちらがより大きいか(メリットはその逆概念)。
整理すると:
【コンデンサーを挿入すると】
1.音質が変化する
2.コンデンサー代・手間(市販品はないため、自作の必要がある)がかかる
3.DC漏れが起きた場合、ツイーターを保護する
4.クリップの防止にはならない
研究の成果(笑)では、1、2,3はすべて関連していて、「音質の変化」の度合いやベクトル(それがオーナーの趣味と合った方向への「変化」なのかどうか)は、使用するコンデンサーの種類・品質=価格に左右される。そして「保護」性能は、コンデンサーの容量を増すほど高まる=コストが上がる。
具体的に、お詳しい先輩方にいろいろなブランドのコンデンサーを紹介していただいたが(私には初めて聞く名前ばかり=汗)、一番安ければ数千円程度、ハイエンドクラスだと10万円を超える(定価数百万円のSPはネットワークの部品にこういうレベルのものを使っているらしい)。現実的には、ツイーター用なら3-5万円程度のものがいいのでは?と。
さて、ここで比較衡量タイムである。
1の問題はオーディオとしては最重要ポイントではあるし、コンデンサーを選べば「好ましくない音」への<変化>だけでなく、「私の好みの音」への<変化>もあり得るのだろうが、その「好ましいコンデンサー」に巡り合うためにメーカーのエンジニアのラボには何十ものコンデンサーがあって、それを入れ替えながら試聴を繰り返すらしい(笑)。だが、私にそのようなことができるか?というと、答えは明白である(泣)。だからあるコンデンサーを挿入して、その音質の変化が自分の好みの方向かどうかは、「やってみなければ確実なことはわからない」という、完全な「賭け」であると判定。
2のコストと、3のリスクは、「リスクの被害の大きさと、その発生確率に対し、コストが見合っているか」を検討するのがビジネスの常識ですよね(笑)。
ツイーターのコイルが焼損した場合のリスクは、1.ツイーターをReplaceするコスト(代金と手間)、2.その焼損が、他の機器・家具などに与えるリスク―に弁別される。
このうち、1に関しては、かつてSonetto VIIIのスコーカーに「歪み」を感じ、ユニットを交換してもらったことがありますが、その時のコストから想像して、ツイーターの交換も10万円は行かないと思われます(幸い、ダイヤモンド素材じゃないので!)。A-0に現在つながれているツイーターは全部で5台ですが、これらが「すべて同時にコイルが焼き切れる」ということは考えにくい(雷でも落ちれば別だが=汗)ので、「一度の事故」でのツイーター交換用の損害額はMax10万円。それに対するコンデンサーの備えは、5台分必要(どれが焼損するかはわからないため)なので、導入コストは金額のみだと約25万円。
次に2に関しては、コイルの焼失時に他への損害を与える可能性を検討すると、まず、コイルの焼失というのは、「煙が出る」ことはあっても、「爆発的な火災」にはつながらないことが調べて分かりました。つまり、他のユニットやエンクロージャーや、さらには家具・家までも焼失するような出火の仕方はしない。つまり損害はツイーターそのものに限局されている。
では、ツイーターと電線でつながっているパワーアンプを損傷するリスクはないのか?
これについては、A-0の機能について、Soulnoteのエンジニアに問い合わせたところ、「弊社のA-0に実装されている過電流検出機能およびDC検出機能もアンプとスピーカーの両方を保護する役割を果たします」との明確な回答をいただいた(ただし、「通常でも±0.1V程度の直流成分が出力されることがあるため、ツイーターには、良質なフィルムコンデンサ(10㎌程度)を間に入れる方が良いかと思います」とのアドバイスが付いたことも付言しておく)。これを受け、私としてはパワーアンプが損傷するリスクは低いと判断。
さて、最後は、「事故の発生確率」である。ツイーターのコイルが焼き切れるようなことが、音楽を3回再生すると一度は必ず起きるのなら、「絶対に」(笑)コンデンサーを入れる(笑)。
これについては、先に紹介したMyuさんのチャンデバ・マルチアンプシステムに於いて、コンデンサーレスで、アンプとツイーターを「電線だけで直結」した状態で、2年間弱運用されて、「一度もツイーターは飛ばなかった」という事実は大きい。繰り返すが彼は私以上に(?)大音量を出されることがあり、しかも、恐らくほとんど毎日のように再生をしておられたはず。一方の私の伊豆の別宅は、月に多くて2度、電源を入れるだけである。使用頻度と事故発生が比例的な関係にあるとすれば、確率論的に言えば、現状の使用頻度であれば、拙宅のツイーターのコイルが焼き切れるのは、30年間でも1度もないことになる(笑)。
さらに、拙宅のツイーターを駆動するA-0は、このメーカーの技術的信頼性は私には評価できないが、少なくとも最新設計の製品を「すべて新品」で揃えたものである。ということは先に紹介したベテランオーディオ店員の談によれば、少なくともこの先10年は、アンプ側の過電流検出機能およびDC検出機能という保護回路が誤作動を起こす確率は極めて低いということになろう。
ここまで理詰めで来ても、最終的にどうするかは「オーナーの性格・哲学」というもので決まる。事故が起きる可能性は、ゼロではないからだ。いつかTVで、「1000万円かけて地下に核シェルターを作った」という方が紹介されていた。この場合、私は「1000万円分、楽しい思いに使って、核ミサイルが飛んで来たらサヨナラする」(笑)という考え方をするタイプである。
結論的に今、私は何の迷いもなく「真の直結」で5台のSonetto VIIIが奏でる、<澄んだ高音>を楽しんでいる。ただし、数年以内に1台でもツイーターが飛んだら、「羹に懲りてなますを吹く」(汗)で、その後は5台すべてにコンデンサーを入れようと決めてはいるが(笑)。
【おまけ】
昨日、オーディオ評論家の 傅 信幸(ふう のぶゆき)氏のメインの2chシステムである、「カタツムリ」をグランドスラムさん、Myuさんと共にお邪魔して、聴かせていただきました。

その音の感想をここに詳細に書くのは、このブログの趣旨から外れますし、「Auro-3D耳」になりきっている私(汗)がハイエンド2chの音をうんぬんできるような資格はないと謙虚(笑)に思っておりますので、耳の肥えたグランドスラムさんやMyuさんにお任せしたいと思いますが、この記事は最初から、このネタで締めるつもりで上梓するタイミングを見計らっていたのです(笑)。
ここを読んでおられるような方ならよくご存知と思いますが、「カタツムリ」(その後の、名が体を現わしていない「偽カタツムリ」と弁別するため、敢えてNautilusとは書かない)は、天下のB&Wの4Wayのチャンデバ・マルチアンプによるスピーカーシステムです。傅さんはオリジナルのアナログチャンデバを、アキュのデジタルチャンデバに交換しておられますが、CO値やスロープ設定などは、私のSonetto VIIIと異なり(大汗)、ほとんどオリジナルを踏襲しているそうです。もう一点、拙宅と大きく異なっているのは、パワーアンプを、Jeffの4chマルチをLR用に各1台を当てているため、4Wayのスピーカーユニット4台を「同一のパワーアンプ」で鳴らしている点です。傅さんによると、以前は上下で異なるパワーアンプを使っておられたそうですが、同一にしたときに、「位相が揃って、音の輪郭がはっきりした」とおっしゃっておられました。
3Wayではありますが、「敢えて」(笑)3つとも異なるパワーをつないで「遊んでいる」ものとしては、「でも、ウチのはDirac Liveでユニット間も位相補正しているから」(傅さんは電子的な補正はされていない)と内心強がりながらも(汗)、ちょっと刺さるお話でした。
そして、この記事の締めに傅邸訪問エピを持ってきた最大の理由は(笑)、「これ、コンデンサー入れてます?」との質問をしたことです(実はお部屋に招き入れてもらって、挨拶もそこそこに伺った!)。
「ツイーターとの間だけには入っています」
このスピーカーシステムは、各ユニットの入力部分に別々にアクセスすることができない構造になっていて、オリジナルの状態で太いケーブルが一番下の黒い四角い「台」のような部分の後ろから出ていて、そこに4台分8本のカラフルに色分けされた電源ケーブル(=意外に細い!「電線病」の方が見たらひっくり返りそう!!!)がまとめられているんです。ゆえに、オリジナル状態でこのうちのツイーター用の電線の先のエンクロージャーの中に、コンデンサーが入っているようです。さすがメーカー製!安全First!!! (だって、これ、ネジを使わない構造のエンクロージャーになっているので、万一の時にスピーカーユニットを交換するのにB&Wのエンジニアしかできず、作業がものすごい大変なんだそうで…だからメーカーとしては、スピーカーユニットの修理に追われたくないだろうと想像!)
P 太いXLRケーブル4本のそれぞれの下に見える、「細い」(笑)カラフルな電線が、それぞれ4つのスピーカーユニットにつながっている
さて、先に「音質には触れない」と宣言しましたが、自分の持ち込み音源を再生してくださいました(いい選局、とお世辞をいただきましたし=笑)からには、一応オーオタの端くれとしてやっぱり書きたいので(笑)、私の駄耳による様々な印象のなかで、一点だけ(本当はいろいろ書きたいが、長くなるので自重!)。
今回お邪魔した三人組が普段聴いている音量よりやや低めの出音に最初に触れたとき、「フルレンジみたいだな」と思いました。しかも、上下に音域の伸びたフルレンジ(=これは理論的にはあり得ない)。これはマルチWayスピーカーに対しては恐らく最高の誉め言葉の一つでしょう(今の私のように、アンプを変えたらツイーターの音の美しさが目立つようになったのを喜んでいるようではダメなんですよね=汗)。
4Wayなのに、1Wayに聴こえる。ご本人は全く語られませんでしたが、これを実現するために揃えた機器やケーブル類の吟味や調整にかけた時間とコストと「鬼気」が出音ににじんでいて、試聴中、正直申し上げると<少し寒気がした瞬間>がありました。間違いなく「マルチWay, マルチアンプシステムの究極の到達点」の一つを体験させていただきました。
最後に、これに触れないわけにはいかない。以下の写真を見てください。コレ、我々が無理やりお願いしたものではないんです。グランドスラムさんとは旧知の仲とはいえ、私とは数回会合で食事をご一緒させていただいた程度、そしてMyuさんとは初対面、かつ3人とも初訪問なのに、傅さん自らが記念にと我々を手招きし、こんなフレンドリーな姿態で被写体になってくださったのです。高名なオーディオ評論家なのに、全く偉ぶるところがない。そしてとても細かいところまで気配りをされる(帰り際、寒空の中にもかかわらず、外に出て我々を見送ってくださった)。
こうした人格が音に出ていました。

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