その他のオーディオ関連

2025年1月31日 (金)

オーディオにおける 「ひかり」って?

今回は、前回の記事の最後に触れた、【おまけーネットワーク環境のしょぼさに改めて気付かされてしまった・・・】の、続報。

 

しかし、記事にも書いたように、<ネットワーク環境>と一言で言っても、自分のようなITに無知なものが思いつくだけでも、「モデム、ルーター、ハブ、NAS、そしてこれらをつなぐLANケーブル」と多岐にわたっており、これらを<全部、一気に>オーディオグレードのものにするなら軽く車一台は買える予算が必要だろう(汗)。この分野はまだそこまで私の周りには先達が多くないため、どこを、どの程度やれば、投入金額に見合った効果が得られるのかどうかに確信が持てるほどの情報は残念ながら私は現段階では得られてない。

 

ただ、ネットワーク環境を改善するとかなり?音が良くなるらしいことに「気付いてしまった」以上、私はそれを<放置>できる性格ではないので(笑)、何か<お試し>的に手軽にLow Costでやれて、コスパのよさそうなものはないかと・・・ネットサーフィンをしていてふと目に留まったのが、「光アイソレーター」といわれるものだったが・・・。

 

私は、これまで、いわゆる、「オーディオアクセサリー」と呼ばれるものにおカネをかけることを、基本的には敬して遠ざけてきた。

 

その理由は2つある。

 

一つは、まだ自分のシステム本体のクオリティUPにおカネと手間をかける余地がかなり残されていて、システムの「完成」の途上であるため、「アクセサリー」の影響を正しく判断できるほどの「レベル」に達していないと判断している、という点。

 

これは、これまでもアナロジーを披露してきたクルマの世界で言えば、例えば、「エンジン・加速の吹き上がりが良くなるオイル」というものがある。しかし、これを普通の市販車で使って、それを体感できるレベルのクルマは、ごく一部の本格的なスポーツカーだけだと自分の経験から断言できる。私がこの、オイルの種類によるエンジン・加速の吹き上がりの違いを体感できるようになったのは、MT車のクラッチ板とフライホイールを軽量のスポーツタイプに交換したあとであった。つまり、ノーマルの重い(その分クラッチミートが多少乱暴でもエンストしにくい=笑)クラッチ板とフライホイールのままでは、オイルの粘度や質の向上によるエンジン回転や加速の吹き上がりなんて「体感」することはできない。タイヤやマフラーなどの交換の効果も全く同じで、それに関連する部分がノーマルのダルな特性のままでは、「交換の恩恵」なんて微々たるものに留まってしまうのを、若い頃に経験済みだ。

 

翻ってオーディオも然り、だと思っている。これが一番目の理由。

 

二つ目には、これは私の知識不足もあるのだが、工学的なクルマの世界に比して、電気・電子工学的なオーディオの世界は、「改造」と「成果」の間の<因果関係>がよくわかっておらず、「オカルト」としか思えないものが私には多いからだ。

 

だから、これまでも「1メートルで数十万円」というような電源ケーブルをご親切に「貸していただいた」ことがあり、確かにその「効果」は確認したものの、どうしてもそのケーブルの仕組み?と出音との<因果関係>が私には理解できず、導入を見送ったことがある。理系的な知識が皆無に近いとはいえ(汗)、一応(社会)「科学者」の端くれとしては、自分で納得できるロジックが見いだせないものは、Superstitionとしか思えないからだ・・・

 

ということで、ネットで見つけた「光アイソレーター」なるものも、「映像ならともかく、<音>を良くしたいのに<ひかり>ってなんだよ?怪しげだなあ」(笑)と、名称からのイメージだけで深く研究することもなく完全にスルーしていた(後ほど分かるのだが、映像=光学=ひかりケーブルで関連していると思っていたが、これは完全に間違い=汗)。

 

ところが、である。

 

実は先にTomy邸にお邪魔した時の記事にも書いたのだが、「これ、すごい効果があるよ」と音質改善の手段で「ひかりHDMIケーブル」をTomyさんに勧められ、「まあ、そんな高いものじゃないから、騙されたと思って一つ買ってみたら?」といわれ、ノリでその場でとりあえずと1本ポチッたものがその後3本に増えたと書いたが(笑)、実は今ではさらに5本に増殖している(爆)。

 

HDMIケーブルというのは普通はAV用途(つまり映像+音)で、私もプロジェクターとBDプレーヤーの「映像出力」との間をつなぐHDMIケーブル(5m)には「光」を使っている。これは以前使っていた「4K対応」のPanasonicの銅線?ケーブルではUHDを再生すると時々Black Outする瞬間があり、「8K対応」の光ケーブルに変えた方がいい、とグランドスラムさんに指摘されたからだ。これは「転送スピードの改善」という、文系の私にも納得できるロジックがあったから交換した(お陰で、確かに改善された)。

 

ただ、Tomyさんに推薦された光HDMIケーブルの用途は、RoonBridgePCAVプリをつなぐケーブル。いうまでもなく映像とは全く関係がない、純然たる音楽用だ。音楽データなんて、どんなにハイレゾでマルチチャンネルでも、UHDの映像データとは比較にならないほどの小ささなので、ケーブルの転送スピードを現状(銅線?4K対応)より上げても「理論的には」(笑)意味があるとは思えない。時速100キロまでしか出ない軽自動車が高速道路を走るのに、速度無制限のアウトバーンを走らせたからといって100キロ以上出るようになるわけではないからだ。

 

でも、使ってみると確かに音は良くなる(今では、伊豆と書斎の両方のRoon Bridge用のみならず、両方のBDプレーヤーの「音声専用HDMI出力」からAVアンプへつなぐものもFIBBRの光に交換!)。CleanClearになり、鮮度が上がるのだ。

 

しかし、なぜ<ひかり>にすると音が良くなるのかの「ロジック」は分からないままだった(汗)。このままでは「科学者」(笑)の名が廃る、と思いつつも・・・(言行不一致=汗)

 

そんな中、年末に伊豆のご近所のMyuさんに「検聴」(ツイーター用のアンプを交換&チャンデバ調整後)に来ていただいた際に、彼のチャンデバ仲間でネットワークオーディオを主要ソースにしておられる方が、「音質改善策をいろいろやったが、一番効果的だったのは、光アイソレーションだった」と言っておられた、というお話を伺った。その時は、正直言って、「何それーしょん?」という感じ(笑)だったのだが、Myuさんのお宅の音はとにかく、「高解像度、ハイスピード、低ノイズ、鮮度感」を極めておられるもので、彼の自作SP/チャンデバ仲間の皆さんも同じような方向性と聞いていたし、最近、すっかり私のチャンデバ化後のメインシステムも(Myuさんの影響で?)そっち方面への音にベクトルが向きつつあるため、ネットサーフィンした時に「ヒカリって、ちょっと前にどっかで聞いたような気がするキーワードだな?」と気になって、今回、少々真剣に「ひかり」と「オーディオ」との関係を調べてみた。

 

すると、以下の理解に私なりに達したのです(お詳しい方、間違いがあればご指摘ください!)。

 

1.HDMILANケーブルが運んでいる「データ」は、映像も音声も、すべてデジタルである

2.ただし、銅線?のケーブルを流れる「電気的信号」には、「データ」のみならず電磁波や電波、電源などの影響を受けて発生する「ノイズ」も含まれる

3.光ケーブルは、「入口」で電気的信号のうち「データ」<だけ>を<ひかり>に変換し、「出口」で「ひかり」を電気的信号に戻している

4.光ケーブル内を流れる「ひかり化されたデータ信号」は、論理的に電磁波や電波、振動などの影響を受けない。

―つまり、デジタルデータ信号の場合、回線のどこかで、電気的信号を<ひかり>に変換すると、「そこまでの銅線回線の経路上で付加されたノイズを完全にカットできる」らしい?

 

ということで、「科学者」(笑)として「光アイソレーター」が何をIsolateするのかについて<論理的に?納得>した気になったので(笑)、試聴もせずにお試し導入を決定!!!

 

で買ったのが、コレ。

 

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早速、書斎のボロシステムで、Roon Bridgeとして使っているPCへのLAN入力端子の前に挿入してみた。これで理論的には、この「光アイソレーター」に届くまでに混入した電磁的・電気的ノイズはカットされたはず。もちろん、その先のLAN&HDMIケーブルやPC内、AVアンプ内において再度ノイズの混入リスクはあるが、システム全体のノイズ混入リスクとノイズの付加量は理論的には減少していることになる。

 

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さて、肝心の結果は?

 

言うまでもなく、効果が出ていなければこの記事は書いていない(笑)。個人的には(好みは分かれるとは思うが)、特に鮮度感の向上度合いにとても満足し、書斎のボロシステムでこの効果なら、伊豆のシステムならもっと効果が出るだろうと予想(だだ、伊豆ではオーディオ用の電源工事などもしているから、逆に効果が薄い可能性もある)し、来月のセミナー後、伊豆に行って実験して結果が良かったらもう一台買おうか、考えているところ。ただ、Roon BridgeAVアンプをつなぐHDMIケーブルを「ひかり」にするありがたみは多少減じた気がするが、これは「理論通り」で納得のいく結果(でももう買っちゃっているので、光HDMIケーブルを使ってますが=笑)。

ただし、光HDMIケーブルのまま、LANケーブルの中継として「光アイソレーター」を入れても明らかに音が良くなる。この現象は、PCからAVアンプへのケーブルを<ひかり化>すれば「そこまでに付加されたすべてのノイズがカットされるわけではない=末端効果だけでは十分ではない=LAN+光でカットされるノイズと、HDMI+光でカットされるノイズが異なる」ことを示唆しており、ここは「理論的には」私ではよくわからないのだが・・・どなたか、説明できる方がおられたらお願いしたいです! 

それともやはりデジタル・ドメインでもオカルトは残るのがオーディオ道ってもん???(笑)

 

2024年12月26日 (木)

今年の仕上げ3連発―Magnetar導入、チャンデバ調整(またまた・・・)&Amator III再配置(その3)

Amator III再配置】

 

これは、このブログの主旨からは外れている、2chのお話ですが、前回、伊豆の<Auro-3D特化>がますます進むに連れ(笑)、はみ出しもの扱いされていくAmator IIIOctaveチームに関し、ちらっと「憐憫の情」(笑)を吐露したら、X1さん、Siltechさんのお二人から応援の(笑)レスが付きまして、「やっぱり、Traditionalなオーオタは、2chへの興味は強いんだなあ」と改めて認識した次第。

 

そこで、「その後どうなった?」を気にしている方も少なくない(?)カモ(笑)と、続報をば。

 

先に、Auro-3Dの文法から見て「正しい位置」にサラウンドバックを置くには、「移動可能なTAOCのラック上」しか無く、その上を長らく占めていたAmator IIIにご退場いただいて、格落ちではありますが、「同一ツイーター」にこだわって、Sonetto Iに置き換えました。そのあおりで(汗)、Amator IIISonetto Iと入れ替えで、ATMOSのときにしか出番のない、リビングルーム(リスニングルーム?)最後端の、出窓に作り付けの棚の上に引っ越しを余儀なくされた、というところまでは書いたと思います。

 

しかし、しかしです。いくら大工さんに、「人が乗っても耐えられる」程の強度で造り付けてもらったとはいえ、所詮、棚は棚。オーディオラックのようなちゃんとした脚で支えられているわけではないため、よほどの小音量でない限り、やっぱりあそこではボンつくんですよねぇ・・・(Amator IIIに限らず、ブックシェルフのハイエンドは、低域再生能力に力を入れているので)

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そこで、今回伊豆に来て、実は最初にやったのが(「3連発」の最後に書いてますが!)、このAmator IIIの再度の引っ越し先探し。伊豆の家中を見て回りました。X1さんオススメのベランダへと続く掃き出し窓を背にした位置は、確かにベスポジなんですが、どうしても<邪魔>(泣)。たとえキャスターを付けても片付ける場所がない・・・。だいたい、そこには、チャンデバ化されたSonettoVIIIをゴロゴロと移動させて2chとして聴くための「先約」があるし(汗)。

 

ということで、最終的にひねり出したのが、<寝室用にする>という手。なぜって、ここなら、寝る前に「必ず」使用するから。前にも書きましたが、リビングにAuro-3Dシステムと共存しているAmator IIIは、下手すると一ヶ月に一度も出番がない状態が続いていたのですが、寝室なら、寝る前に、ちょっとだけでも必ず火が入る(Octaveは真空管=笑)。

 

もちろん、先住として寝室には高校生の時に購入した、<どうしても捨てられない>CelestionUL-6が出窓のところに設置してあるんだけど、これを単純に入れ替えるとするとある意味、今以上にオーディオ的環境が悪い場所にAmator IIIを追い込むことになってしまう。ここは置き場所の剛性は高いのだけど、奥行きがないのだ。つまり、Amator IIIをほぼ、後ろの壁(窓)につける置き方になってしまう、リアバスレフなのに(泣)。

 

P 寝室の出窓のスペース。以前はここにUL-6を置いていた…(ドロンコーン型なので幸いバスレフポートがないため押し込めた)

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そりゃ、オーオタ的には無いわな。ブックシェルフは、フロア型以上に、周りに空間を要求するのはちょっとオーディオをかじった人なら誰でも知っている、「常識」。

 

そこで「二晩」考えまして(汗)。案じた計が、「デスクトップオーディオにする」。実は寝室にも仕事道具の勉強机とPCモニターがあるのですが、これ、コロナの在宅勤務期間後は殆ど使ってない(汗)。まあ、別荘に来てまで仕事する人、普通いないでしょ?(笑)

 

で、模様替えも兼ねてこうなった

 

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デスクトップオーディオの最大の欠点はSPを机の一番奥に置かざるをえないこと。それだと机と壁の反射で、中低域がやはりダブつくのを知っている私は(学生時代、狭いアパートで散々Tryしましたから!)、今回はこの写真のように、机の「一番手前に」Amator IIIを置いた。こうすることで、SPの下に空間ができるため、低域が回り込む余地があり、しかも机の脚のほぼ真上にSPが来ることになって足元の剛性もかなり確保できるため、事実上、スタンド設置と同等の条件になるかと。その代わり、Workspaceはほとんど無くなったが・・・(まあ、最近あんまり勉強しないからいいや=笑)

 

そして、仕上げのテクニックは、ダイナの島さんに教えてもらった、「スパイク直挿し」。

 

これ、普通の方は、「スパイク受け」を使っていると思いますが、これを使うと結局スパイク受けが共振するので、「スパイクにした意味がほとんどない」。スパイクを使うというのは、振動源であるSPと、その台(フロア型なら床)の「接点を極小にして、振動を極力遮断するため」なのに、スパイク受けを使うとそれがまた共振源になる。

 

オーオタレベルだと既知のことではあるのですが、さわさりながら「直挿し」するばあい、受け側が木だったりすると、穴が開いて傷だらけになるわけで。フロア型SPをコンクリート打ちっぱなしの床の上に置くのではない限り、なかなか「胆力」の要る行為であるため()、殆どの方が、「わかっちゃいるけど、床を傷つけたり、スピーカーを傷つけるわけには・・・」となって止むなく「スパイク受け」を使っていますよね?

 

私は、AmatorIIIに付属してきたSPスタンドの脚のスパイクには「受け」を入れていません。豪胆にも(笑)、TAOCの台に「直挿し」です。その絶大な効果を経験済みですので、今回も「直挿し」にしましたよ。

 

実は非常にラッキーなことに、このAmator IIIって、底部が人工大理石だって知ってました?木製じゃないんですよ。

 

だから、「石ならスパイクも刺さらんだろう」(笑)ってことで、スパイクをSP台から上向きに置いて、その上にAmatorIIIを直に置いてみました(いつか中古で売りたいと考えている方は真似しないほうがいいです。小キズでも商品価値は落ちますから)。

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その効果はてきめんで、「これが本当にデスクトップオーディオの音?」と思うぐらい、我ながらボン付きの無い(少ない?)どころか、結構締まった低域再生にびっくりして、毎晩聴き惚れています(笑)。事実、テーブルに手をおいても、ほとんど振動を感じられないので、前の棚と違って、恐れていたテーブルの共振はほとんど無いようです。

 

ただ、Lが左の壁にものすごく近いので、極端な内振りにしています(これは、フウ先生のところの「カタツムリ」のセッティングを参考にした)。これにより、ある程度は壁の影響から逃れているようで、私の駄耳では、Lの音が極端に増幅されている感じはなく、ちゃんと定位は両SPの真ん中に来ています。

 

なお、ソース機器については、書斎で余ってた(汗)、MarantzSACD 30nOctaveのV70 Class Aと繋いでいます。30nは、Roon Readyなので、寝転がりながら、RoonTidalをタブレットで操作できるのがいいですね!(そのまま寝てしまうのが少々不安だが・・・) 一時真剣に検討したアナログレコード再生は、流石にいまだプレーヤーの置き場所が見つからない・・・(泣)

 

P) UL-6はATMOS&ART用にここで余生を送ってもらいます(笑)

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置き場所・置き方によってここまで再生音質が違うとは、改めてオーディオの奥深さを知ることになりましたが、これらはまだ設置したばかりなので、今後、数多いらっしゃる「2chの大家」のご助言を仰ぎつつ、さらに煮詰めていきたいと思っております!

 

ということで、皆さん、良いお年を!

 

2024年12月15日 (日)

Eversolo DMP-A6 Master Edition VS Roon Bridge

私の「師走」は山を越えまして(笑)、伊豆に来ています。

 

実は、かなり前から、「忙中閑あり」が見込まれるこのタイミングに合わせて、いつもお世話になっているダイナの島さんに、Eversolo DMP-A6 Master Edition(以下、A6)の試聴機を予約して、送ってもらったのです。

 

これはいわゆる、「ミュージックストリーマー」?とか言われる、ネットオーディオ時代の到来とともにスタンダードになりつつあるソース機器で、インターネットやLANにあるデジタル音楽ソースを再生する専用機。

 

はっきり言ってこの手の機器は今や各メーカーから出ているが、私がこれに注目した理由は言うまでもなく、「もしかして、Auro-3Dファイルが再生できるんじゃない、コレ?」ということ。

 

これは、HDMI出力があり、それ自体は今や珍しくもないのだが、その殆どがARC用で、要するにテレビの音をちょっといいDAC経由でアンプに出力して、外部スピーカーで多少いい音でテレビを楽しみたいというニーズ用のものばかり。

 

でも我々「友の会」的には(笑)、HDMI出力と言ったら、「マルチ、5.1ch7.1chでデジタルアウトさせて、それをAVアンプに入れてAuro-3Dデコードさせて、9.1ch11.1chで楽しむためのもの!」、これしか無いですよね(笑)。

 

しかし、この「マルチ出力」に対応するHDMI端子を備える「ネットワークプレーヤー」って、現状、ほとんど存在しない。ダウンロード購入したAuro-3Dファイルを、NASに入れて、それを吸い出してAVアンプでAuro-3Dとして正しくデコードさせるには、私の現在の環境では1.OPPO-205を使う 2.Roonを利用し、HDMI端子のあるPCRoon Bridgeにする―の二通りしか無い。

 

前者は、最近、動作が不安定な時があって、都度再起動したりするのだが、すでに絶版で修理も受け付けていないので、この先が不安・・・ゆえに、1年ほど前からTomyさんなどのご指導を受けてAuro-3Dのファイル再生は、Roon Bridge経由を今はメインにしている(実は、音もこちらの方が良い)。

 

ただ、音楽を聴くたびにPCを立ち上げる(しかも、Roon CorePCを含めて2台も・・・)のが、どうにも「優雅」じゃないのが、貴族趣味(笑)のワタシはずっと気になっていて、この解決法として、Roon Nucleus というハードを導入すればいいことは私なりに研究して(笑)わかっているのだが、その最新型のTitanというのが、いつまで経っても日本では出ないし、円安もあって、並行輸入してもかなりお高い(しかも「保証」がつかない=汗)。

 

そんな中、これ、実は、Master Editionが出る前のA6の時代に、TIASで「展示」(私が行ったときは再生していなかった)されているのを見て、「これ、HDMI出力があるようだけど、マルチで出せるの?」とダメ元で説明の輸入代理店の方に伺うと、「YES」と言うじゃないですか!

 

「じゃあ、Auro-3Dにデコードもできますか?」と畳み掛けると、

 

「それ、何ですか?」・・・(泣)

 

 

輸入代理店では全く検証もしていないことがわかり、一瞬にして冷めて一時忘却の彼方にあったのですが(笑)、この夏に、Master Editionというクロック?をUpdateした上位機が出るという情報が。

 

残念ながらこの記事にも、「5.1ch再生ができる」とは書いてあるものの、Auro-3Dファイルが正しく展開できるかどうかは書いてない(マイナーだからなあ・・・)。

 

理論的には、5.1chがビットパーフェクトで出力できるなら、AVアンプ側で9.1chにデコードできる<はず>なのだが、こればかりは相性問題などもあり、いままで何度も痛い思いをしてきた(汗)。

 

「誰か、人柱になってくれないかなあ」と待つこと4ヶ月。

 

この間、オーディオ評論家や『価格コム』などのネット上の情報はすべてこの機器の2chアナログ出力の音質を云々するものばかり・・・

 

そうこうしているうちに、書斎の古いMarantzのユニバーサルプレーヤーとRoon Bridge用の古いPCの動作がほぼ同時期に怪しくなってきて(汗)、書斎でもAuro-3Dを聴ける環境を維持するために、1.書斎にOPPO-205を移動し、伊豆に新しいユニバーサルプレーヤーを入れる 2.伊豆にA6を導入し、伊豆で使っているRoon BridgePCを書斎に移動する―の2択状況になってきた。

 

この場合の判断基準は、やはりオーオタとしては、最後は「使い勝手」よりも「音質」ですよね!つまり、A6Roon Bridgeのどっちが音がいいのかを試して(まあ、その前にそもそもA6Auro-3Dが再生できるかが先だが!)、A6の方が音が良ければ、2の選択に、Roon Bridgeの方が音が良ければ1の選択にしようと心に決めまして。

 

で、お借りしたんですよ、A6Master Editionを。

 

 

いつものことながら前置きが長くなりましたが(笑)、以下に比較試聴結果を。

 

その前に、そもそもこのA6でAuro-3Dファイルが正しくAVアンプに送れるのか、ですが、結論を先に言えばOKです!

 

ただし、ちょっと設定に工夫がいります。このA6はマニュアルが無いので(Onlineはあるけど、元々見ないタイプ=笑)、若干苦労しました。後に続く方のために、ツボをご紹介します。

 

P LANケーブルを繋げば、すぐにRoonからは見えるが・・・

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まず、このA6は、デフォルトだとOutputがアナログ2chXLR/RCA)にしか出ない!普通は、アナログとデジタルの両方から出力してますよね?(この機器は排他利用になっているようです) だから、LANとHDMIケーブルを繋いでRoonから操作しただけだと、いつまで待っても音が出ません(汗)。「ソース」の中の「出力ポート」(入力ではない!)という画面で、「HDMI」を選ぶ必要があります。

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次に、デフォルトだと「HDMI出力」のPCMオーディオのところが「Auto」になってますが、ここは「マルチチャンネル」にしておいたほうがいいです。AutoだとAVアンプ側とのネゴシエーションに失敗する事があるからです。Img_0019_20241214211801

 

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最後に、ここが見逃しやすいのですが、5.1ch出力が「ビットパーフェクト」でないとAVアンプ側でAuro-3DにUnfoldができません。この「ビットパーフェクト」の要件は色々ありますが、この機種で肝心なのは、ボリューム。これを右一杯に回す、つまり100%出力=0dBReduceにしておかないと、「ビットパーフェクト」にならないので、ただの5.1chになってしまいます。再生ソフトにRoonを使う場合は、Volume ControlFixedにすれば、A6のボリューム位置は無視できますが。

 

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これでOK

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さて、今回の比較に使用した機器は、Eversolo DMP-A6 Master Edition VS Roon BridgeWindows)+ Roon Core Mac :M1

 

書斎 Denon 3800H HDMIケーブル:FIBBR King-A Bridge PC: AMD

伊豆 Storm ISP MK2 HDMIケーブル:FIBBR King-A Bridge PC: Intel

 

P 今回使用した光HDMIケーブル。Tomyさんに推薦していただいたもので、とても気に入ったので、追加購入し、現在は3本ある(笑)

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念の為、書斎と伊豆の両方のシステムで、比較しました。全体に、A6の方が、2dBほど音量が大きいので、試聴の際はボリュームを調整しました。

 

 

以下はすべてAuro-3Dのダウンロード音楽ファイルです。

 

・・・・・・・

リスト ピアノソナタ 最初の低域の音の深み 高音部のフォルテの強さでBridgeが勝る

 

Pax 最初のViolinの「強打」奏法のPulsiveな音の凄みでBridgeが勝る

 

ストラビンスキー 『イタリア組曲』 立体感 味わい深さでBridgeが勝る

 

『四季』の「冬」 凄み 奥行き感でBridgeが勝る

 

シューベルト 「菩提樹」 A6の方がハイ上がり ボーカルが前に押し出される Bridgeの方がバリトンの声質が魅力的に聴こえる

 

名倉 マリンバ 空間感 倍音・残響音の深みでBridgeが勝る 伊豆だと、A6の方が高域の残響音が目立つ(やや過剰?)

 

ピアノ・ソロ Live ホール感でBridgeが勝る A6はオンマイク録音?のように聴こえ、ピアノが近い

 

ビオラ・ダ・ガンバ 重厚さでBridgeが勝る

・・・・・・

 

ということで、伊豆のシステムでも書斎のシステムでも、Roon Bridge経由の音が私の駄耳によれば圧倒! A6は全体的に腰高で、平面的。もしかするとJazzPopsでシンバルの音が好き、という方ならA6に軍配を上げるかもしれないけど、そのようなAuro-3DNative ダウンロードソースってあります?BDなら少しはあるみたいですが、現状、ほぼClassicかと。

 

正直言って勝ち負け入り乱れる感じだったら、「華麗な使い勝手」のA6を導入しようと思っていたのですが、ここまで差があると今回はパスです(実は、今回の試聴の際に、EversoloHPを改めてみたら、UHD8000とかいう上位機種らしき新製品を発見!これもマルチOutができるらしいので、せっかくならこっちも取り寄せたかった・・・またの機会に)。

 

また、とても重要なことですが、このA6のマルチ出力は、5.1chどまり。つまり、7.1chソースはサラウンドバックの2chの音がカットされてしまうのです(失われた音楽データをA6がどう処理しているかは不明だが、私の聴感では情報が失われているように聴こえた)。今回の試聴ソースでは2番目のPaxがそれで、伊豆のフルシステムでは、Bridgeだとサラウンドバックから音が出ますが、A6だとそこに音が振られてないので、出ません。

 

 

P A6によるPAXの再生。上部Inputs7,8番 LBRBに入力が全く無いのがわかる。ゆえに下部Outputs12,13番に出力がない(Bridge再生の場合は、この2chにも入出力がある)。 20241214-234106

 

 

これは第一層に7chを用意しているAuro-3Dファンにとっては致命的で、確かに現状はほとんどのAuro-3Dダウンロードファイルは5.1ch9.1chではあるものの、今後恐らく7.1ch11.1chソフトが増えるであろう(Hopefully!)ことを考えれば、さすがにA6は選択から外れますよね(汗)。

 

【念押ししますが、この機器には非常に多くのInputsとOutputsの機能があり、この中で私が今回検証したのは、Roon ReadyのInput、HDMIマルチのOutputだけです。ほとんどの雑誌やネット上の「激賞」(笑)は、本機のDACを経由したアナログOutの音だと思います】

 

ということで、結局、OPPO-205を書斎に移動させることとし、後釜にMAGNETARUDP800を注文します(流石に試聴機を借りといて何も買わない、のは気が引けるし=笑。ただ、ユニバーサルプレーヤーは絶滅危惧種でまともなライバル機種が残念ながら全くないので、試聴もせず・・・900は私にとって全く不要なDACにカネをかけているので、HDMI出力しか使わない私の用途にはあまりに非合理的)。これもまた「人柱」情報が少ない機種ですが(Sさんによると上位機の900ともども、そこそこ売れているらしいが、情報を出さないタイプの人が買ってるんだろうなあ・・・)、届いたらまたいずれご報告しますので、お楽しみに(笑)。

 

 

【おまけ】

 

この機器の個人的なもう一つの興味は、これまで「Apple TV 4K」の専用機器でしか再生できなかった、Apple ATMOSをこれを使えばちゃんとATMOSとして再生できるか?だったので、一応Tryしましたが、残念ながら「説明書をちゃんと読まないワタシ」(爆)では、操作が複雑でApple Musicにまでたどり着けませんでした(汗)。もしこれを購入したのであれば、真剣に取り組むとは思いますが、主目的のAuro-3Dの再生でパスという判断になったので、これ以上これに時間を費やす価値を見いだせず(私はオーディオ評論家ではないので=笑)。

 

まあ、原理的にApple Musicが提供しているATMOSは所詮圧縮音源で、普段は自宅リビングに置いてある「Apple TV 4K」の専用機器を伊豆のシステムで再生してみたことはあるのですが、どう聴いても音質が(泣)。「とにかく音に囲まれたい。ATMOSならなんでもいい」というニーズの方はともかく、ちょっといいシステムを使っていてバイオリンやピアノなどに真剣に耳を澄ませば「本物の」BDATMOSとの音質差は歴然なので、こちらは、無圧縮のATMOS音楽配信が始まったら対応機器の購入を真剣に検討したいと思っています。

 

2024年12月 9日 (月)

チャンデバ・マルチアンプ化の最後の仕上げ―というか、「何もしない」という判断(笑)

今回の記事は、はっきり言って、スピーカーとアンプとの関係の一面を理解したいという関心がない方にとっては、チャンデバ・マルチアンプに取り組んでいる人以外には役に立たず、それどころか理解もされない可能性すらあります(汗)。

 

にもかかわらずここに書くのは、自分のSPシステムに対し今後起こりうるかもしれない<悲劇>の可能性に対し自分なりの理解の上に<決断>をしたことを、頭がボケる前にマニフェスト的に明文化しておきたいからです。そして「自分の理解と判断の論理的プロセス」を言語化することで脳に固定したい。「なんとなくわかっているつもり」のことでも、文字化しようとするとできないのは、「本質的なレベルではわかっていないから」というのは、仕事の属性から日常的に経験しています(笑)。

 

今回はいつも以上に文章が長く(汗)、写真が少ないので(笑)、長い文章を読むのが脳に苦痛だと感じるという方は、ここから先に進むのはやめておいた方がいいです(爆)。ただ、最後の【おまけ】だけは読む価値あるかも?!

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さて、チャンデバシリーズの前回の記事で、「実はまだこれで「終わり」ではない。検討すべき事項がもう一つだけ残っている。続きは次稿」と書きました。これがその<続き>であり、本当の<終わり>になるはず!?

 

この、「検討すべき事項」とは、私はチャンデバ・マルチアンプに手を染めるホンの数か月前までは知らないことでしたが、チャンデバ・マルチアンプに取り組んでいる人の間では、完全な「常識」のようです。

 

この「常識」とは、「アンプをスピーカーユニットに<直結>する」と表現される、マルチアンプ化の作業過程で、文字通り「電線だけで直結」することのメリット・デメリットを検討し、その対策を最終判断することです。

 

ここから先は、私が今回の判断をするにあたって参考にさせていただいた多くの先達のご意見や、ネット上の様々な情報、さらにはメーカーに直接問い合わせていただいた回答などを自分なりに咀嚼してまとめたものです。繰り返しますが、私は社会科学が専門なので、音響工学・電気工学・電子工学などの分野には全く知識がないばかりか、どんなに丁寧に書いてある文字情報や絵解きや数式を見ても、また、諸先輩方がどんなに丁寧に説明をしてくださっても、<完璧な原理的な理解>には達してないことには自信があります(笑)。

 

ゆえに、私の理解が間違っていたり、書き方が不適当であったりする部分も十分あり得ますので、これをお読みになっておられる先達の方で間違いに気づかれましたら、遠慮なくご指摘いただけると助かります。

 

  • 「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの、音質的なメリット・デメリットとは何か?

 

今回、既製品のSonetto VIIIの各スピーカーユニットを取り外し、個別に性能を測定し、それらをデジタルチャンデバを使って再構成する、という一連の作業を経て素人の私が大いに学んだことは、<各スピーカーユニットの性能は本来はバラバラである>ということです。単純に再生可能なf特だけでなく、能率も、歪率もです。そして、市販のマルチWayPassiveスピーカーは、これらを、内蔵の「ネットワーク」という装置で、各ユニットのf特や歪率の「おいしいところ」を取り出し、それを同じ音圧出力になるように調整している、ということです。

 

この「ネットワーク」に一般に使われている材料は、コイル、抵抗、コンデンサーが御三家のようです(それぞれがどのような役割をしているのかは、「にわか」の私が下手なことを書くより、ご関心がある方はご自分でググってください=笑)。

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で、この普通のPassiveスピーカーを、チャンデバ・マルチアンプ化するということは、これらの「御三家」をすべてすっ飛ばして、アンプと各スピーカーユニットを一対一の関係で「電線で直結」する、ということです。

 

これは私のやや得意とする自動車(工学というほどでもない、素人に毛が生えた知識・経験)とのアナロジーでいえば、「MT」と「AT」の違いに例えるとわかりやすいかと思います。車では(ただし、現代の電気自動車は違うかも???)、エンジンの回転を、タイヤを回転させる動力に使っているわけですが、MTはこの二つを単純化して言えば「直結」しているのに対し、ATは、この二つの回転の間に「流体」が入っています。

 

ここで「エンジン」を「アンプ」、「タイヤ」を「スピーカーユニット」、「流体」を「ネットワーク」に置き換えて例えることが大雑把には可能だと私は理解しています。

 

つまり、「直結」のメリットは、「MT」のメリットと似ています。損失が少なく、ダイレクト感があります。アンプ(エンジン)とスピーカーユニット(タイヤ)の性能がそのまま出ます。MTのクラッチ操作の楽しみは、チャンデバの調整の楽しみ(苦しみ?=汗)に例えられるでしょうか。

 

クルマ好きの方で、ATMTも乗ったことのある方であれば、こう例えれば、両者のそれぞれのメリット・デメリットは表裏の関係にあることをよくご存じでしょう。

 

つまり、ATはエンジン特性の荒々しさ・変動をうまくいなして、タイヤをスムースに動かす点でMTより優れています。「ATの乗り心地の方が滑らかで好きだ」という人は少なくないのと同様、Passiveスピーカーの方が、アンプの粗をうまくカバーし、各スピーカーユニットの固有の嫌な音を抑えて音を出しているように感じられて、こちらの音の方がいい意味で「角が取れた、大人の音」がすると私も強く思います。

 

しかも、クルマでもATの味付け(動作特性調整)でSportyにも、Gentleにもできるように、Passiveスピーカーでは、「ネットワーク」の<味付け>で、そのメーカーやエンジニアが狙った音質・音像・音場を出力できる性能に最終的に仕上げていて、これはハイエンドになればなるほど、ここに心血(時間とコスト)を注いでいることは明らかです。

 

ということは、このメーカー・エンジニアがそのスピーカーの特色を出すために心血を注いだ「ネットワーク」を外して、ユニット直結にしてしまうというチャンデバ・マルチアンプ化への改造は、単に「メーカー保証が受けられなくなる」だけに留まらず、そのメーカー・エンジニアに<絶縁状>(笑)を突き付けるようなものかもしれません(汗)。そして、いうまでもなく、<絶縁後>の音の行く先は、オーナーの完全なる責任の下にあります。<荒波の中に海図なき航海に出る>(これを避けようと、『改造』の場合は、Cmiyajiさんや最後に紹介するフウさんのように、オリジナルのデータ=海図=をなぞる方が多い)ようなもので、下手をすると「漂流」したり、「難破」したりするリスクがあることが、最大のデメリットでしょう。

 

この「絶縁」後の音質の変化は、やったことのある方しかわからないとは思いますが、「見た目は全く変わらない」のに、「同じスピーカーから出ている音とは思えない」ほどです(汗)。それがよい方向への変化なのか、悪い方向なのかは、人の主観ですが、<生々しくなる>、とだけは確実にいえます。モネの『睡蓮』が好きか、パリ郊外にあるモネの「庭園」が好きか、は人それぞれですが、後者の方が「生々しい」(=というか「生」そのものだが!)から「やはり本物の自然には芸術は勝てない」と考える方もいれば、「本物には情緒が感じられない。ロマンを掻き立てる絵の方が好きだ」、という方も多いですよね。

 

とにかく、チャンデバ・マルチアンプ化改造を経験して、良くも悪くも、「ネットワークの有無で音が変わる、換言すればネットワークが<オリジナルのスピーカーユニットの音>を変えている」ことだけは、身をもって知ることができました。

 

  • 「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの、工学的なメリット・デメリットとは何か?

 

ここに書くことは、実はついこの前まで私は知らなかったことなんです(大汗)。「そんなことぐらい、勉強してからチャンデバ・マルチアンプ化しろ!」と先達には叱られそうです(笑)。

 

まず「工学的なメリット」の方ですが、直結はアンプとSPユニットの間に電力を消費する「コバンザメ」(笑)が無いのですから、アンプが発生させた電力を電線以外では損なうことなくSPユニットに届けられる点にあります。このことは、人間の耳でその差が知覚できるかどうかは別にして、「論理的には」同じアンプ出力でも直結の方が「音圧」は上がる、ということだけは確実な「メリット」と言い切れるでしょう。

 

次に「工学的なデメリット」ですが、「直結」にすると、最悪、スピーカーユニットのボイスコイルが焼き切れる可能性があるそうです(知らなかった・・・幸い、未経験=汗。以下の記述は私の理解力では確信を持てないので伝聞調になります=笑)。

 

スピーカーがどうやって音を出すかは、昔から本質的な原理は変わっていないそうで、フレミングの右手だか左手だか(笑)の法則とやらで、コイルに電気を流すと磁気が発生して、そこで発生する磁力を利用して、振動版を動かして空気を揺らすのだとか。

 

で、この「コイル」というのは要するにボビンと呼ばれる輪っかに「糸巻状に電線を巻き付けてあるもの」だそうで、この電線が熱で焼き切れたり、熱でボビンが変形してしまうリスクが、「直結」だと高まるんだとか。

 

どうして電流を電線に流すと「熱」が出るのかというのは、いわゆる「電熱器」の要領で、要は電流というのが電線の中を流れにくくなると熱を発生するらしい(汗)。ではどうして「流れにくくなるか」というと、1.電気が通りにくい「不純物」?が多い素材を使っている、2.道の細さに対して、とても一気に通りきれないような大量で強力な?電気が襲ってくる―のいずれからしい。

 

スピーカーユニットのボイスコイル用の電線には1を使うはずない(多分=汗)ので、トラブルの原因は必ず2になる(多分=汗)。

 

で、この「大量で強力な電気?」の発生するメカニズムには、二通りあるそうで、一つは、「クリップ」、と言われる現象、もう一つは「直流(DC)漏れ」と呼ばれるものだそう。

 

まず、「クリップ」ですが、これは出力波形がきれいな正弦波にならず、頭打ちになる状態を指す。音質的には「歪み」となり、ひどい場合は人間の耳でもわかる(ギターのディストーションはコレ)。いろいろな原因があるようですが、自分のシステムで問題になる可能性のあるクリップのメカニズムは、「パワーアンプでは最大出力を超える場合、出力信号がクリップする」ことで、ということは出力の小さいアンプで大きなスピーカーを鳴らすとクリップしやすくなるらしい。

 

私は入力でも出力でも過大入出力で機器が処理できる限界を超えると「クリップ」という状態になり、それが「歪み」を生む、というのは経験的に(汗)知っていましたが、出力の小さなアンプの方がクリップさせやすいとは知らなかった・・・むしろ出力の大きいアンプの方が、過大出力をスピーカー側が処理しきれず、「クリップ」させると思っていました(そのようなクリップのメカニズムもあるらしいが)。

 

では、この「クリップ」がなぜスピーカーを壊す可能性があるのか?これは特にツイーターが危ないらしい。

 

というのは、入力信号がクリップすると、元の信号には存在しなかった高周波(超高音?)や高調波(電源の周波数=50Hzとか60Hz=の整数倍の音波?)が生まれてしまうらしい。そしてツイーターには普通ローパスフィルターは入れていないため青天井の周波数の入力を許容してしまうので、この「クリップ」が継続的に発生し続けるとボイスコイルが過熱して損傷する可能性があるのだとか。

 

次に「直流(DC)漏れ」ですが、私はかつて、Sonetto VIIIのスピーカーユニットの「逆相接続問題」(既製品のPassiveネットワークでは、中高域ユニットが低域ユニットに対し逆相になっている)に悩まされたことがあり(これもSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプ化改造に踏み切った大きな理由の一つ)、その時にスピーカーユニットが正相接続されているのか、逆相接続されているのかを確かめる方法として諸先輩方に伝授いただいたのが、「乾電池のプラスマイナスをそれぞれスピーカー端子の+と-につないでみる」という方法。

 

これをやると、スピーカーユニットが前か後ろのどちらかに動いてくっついたまま(汗)になる(その動く方向を見ると、正相か逆相かを判断できる)。つまり振動はせずに前か後ろに動いたのちに固まってしまうのだが、この状態が、直流がSPに流れている状態。普通は交流(AC=+と-が交互に入れ替わる)の電流がSPに行って、だからスピーカーユニットは「前後に振動」して人間には「音」として聴こえる。直流だと人間には「音」として聴こえないはず。

 

もし、この直流がスピーカーユニットに流れ続けると、ずーっとコーン紙が片側に貼りついた状態になるのだが、これは直流は常に一定の電流が流れ続けるためらしい(交流はプラスからマイナスに変位していく電流のため振幅があり、一瞬ゼロになるポイントすらあるそうだ)。つまり、直流は交流と違って「一息つかせてくれない」(笑)。このため、持続的なエネルギーで加熱しやすく、ある程度のパワーを持つ直流が流れ続けるとボイスコイルに巻かれている細い電線が焼き切れてしまうらしい。

 

では、なぜ、このような「直流(DC)漏れ」が起きるかというと、私には詳しいメカニズムはよくわからないのだが(汗)、要するに、ソース機器やプリアンプやパワーアンプの品質が悪いか、保護回路が付いていないか、または古くなって保護回路の部品が劣化して来ると「漏れる」可能性があるんだそうだ。だから、「ある程度の高級ブランド品を10年程度で買い替えていれば問題はない」、というようなことをあるオーディオショップのベテランに教えてもらった(安かろう悪かろうの途上国?の製品や20年以上のヴィンテージ品をレストアもせずに使っているとアブナイとか・・・)。

 

  • 結局、拙宅のシステムで「アンプをスピーカーユニットに<電線だけで直結>する」ことの最大の懸念は何で、最終的にどうしたのか?

 

「直結」のリスクのうち、「クリップ」を防ぐには、対処法としては、「パワーアンプの出力をなるべく大きなものを使う」ことしかない。

 

現状、Sonetto VIIIは、

 

ウーファー用に、PA-16 200W8Ω)

スコーカー用が、STA-9BTL290W  (4Ω)

ツイーター用に、A-0 10W8Ω)

 

を当てており、どう見ても(汗)、ツイーター用だけがやたら出力が低い。

 

問題は、この出力で、ハイパスのCO値を4000Hzに設定したSonetto VIIIのツイーターが、「実用上」、クリップしているのか? である。

 

そこで、いろいろと調べましたよ(笑)。

 

  • Classicのみならず、JazzPops/Rockも「私以上の大音量で」(笑)お聴きになられるチャンデバ・マルチアンプ化でお世話になったMyuさんが、かつて「9W」という最高出力のアンプでドーム型ツイーターをドライブして2年弱もの間お使いになっていたが、その間、一度も「クリップ」を感じたことはない、という証言を得た。

 

そして何より、私が普段よく聴くAuro-3Dの様々なNative音源(オーケストラあり、リストのピアノソロあり、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲あり・・・)を、普段聴く音量より「気持ちさらに大きめ」で再生しても、<私の駄耳では>汗、クリップ=歪みなどを感じることは全くなく、むしろ、リストのピアノ曲における高音の強打のパートでは、今までSTA-9(=120W )をつないでいた時よりも、最大出力10WA-0の方が「澄んだ、透明感のあるフォルテ」が聴けて、「もしこれがクリップしている音なら、私はこちらの方が好きだな!」と思えたことが決定打となった。つまり、クリップに起因するツイーター損傷事故の発生リスクに関しては、「現状で問題なし」と判断

 

次に、「DC漏れ」については、これが起こると、真っ先に危険な状態になるのはこれもツイーターだそうだ。というのは、低域再生能力がある=たくさん空気を動かす=強力な磁力が必要=ボイスコイルに大電流が必要=使用されている線材が太い=ため、ウーファーやスコーカーは一時的な「DC漏れ」程度では使用されている線材が焼き切れることは起きにくいらしい。

 

ということで、諸先輩方の進める対処法は、「ツイーターとパワーアンプの間にコンデンサーを挿入する」という方法。この「コンデンサー」というのがどういう機序でDC漏れの防波堤になるのかは皆さんに教えてはいただいたが、自分の言葉で書く、というレベルまでは呑み込めていないのでここでは割愛。もちろん、チャンデバ・マルチアンプ化をしている方がすべて「コンデンサーを挿入」しているわけではなく、入れずにチャンデバ・マルチアンプで運用している人も少なくない。

 

P ツイーターを「DC漏れ」から保護するには、こういうものを挿入する必要があるらしい(これは過日お邪魔したTomy邸のもので、単なるイメージ=笑)

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ここは、オーナーの<判断>が別れるところであり、私もここらでその決断をしなければいけない。

 

ただ、一つ言えることは、コンデンサーを入れれば、それは「真の直結」ではなくなる、ということ。アンプとスピーカーユニットを「直結」するメリットは上述した通りだが、そこに「何か?」を介入させれば、確実に「出音」は変化する(劣化する、かどうかは主観によるのでここでは触れない)。

 

つまり、ここで比較衡量しなければならないのは、「コンデンサーを挿入する」場合のコスト(ここでは金銭的なものだけでなく、手間や見た目の変化なども含む)と、「コンデンサーを挿入しない」場合のリスク(その確率とコスト)のどちらがより大きいか(メリットはその逆概念)。

 

整理すると:

 

【コンデンサーを挿入すると】

 

1.音質が変化する

2.コンデンサー代・手間(市販品はないため、自作の必要がある)がかかる

3.DC漏れが起きた場合、ツイーターを保護する

4.クリップの防止にはならない

 

研究の成果(笑)では、1、2,3はすべて関連していて、「音質の変化」の度合いやベクトル(それがオーナーの趣味と合った方向への「変化」なのかどうか)は、使用するコンデンサーの種類・品質=価格に左右される。そして「保護」性能は、コンデンサーの容量を増すほど高まる=コストが上がる。

 

具体的に、お詳しい先輩方にいろいろなブランドのコンデンサーを紹介していただいたが(私には初めて聞く名前ばかり=汗)、一番安ければ数千円程度、ハイエンドクラスだと10万円を超える(定価数百万円のSPはネットワークの部品にこういうレベルのものを使っているらしい)。現実的には、ツイーター用なら35万円程度のものがいいのでは?と。

 

さて、ここで比較衡量タイムである。

 

1の問題はオーディオとしては最重要ポイントではあるし、コンデンサーを選べば「好ましくない音」への<変化>だけでなく、「私の好みの音」への<変化>もあり得るのだろうが、その「好ましいコンデンサー」に巡り合うためにメーカーのエンジニアのラボには何十ものコンデンサーがあって、それを入れ替えながら試聴を繰り返すらしい(笑)。だが、私にそのようなことができるか?というと、答えは明白である(泣)。だからあるコンデンサーを挿入して、その音質の変化が自分の好みの方向かどうかは、「やってみなければ確実なことはわからない」という、完全な「賭け」であると判定

 

2のコストと、3のリスクは、「リスクの被害の大きさと、その発生確率に対し、コストが見合っているか」を検討するのがビジネスの常識ですよね(笑)。

 

ツイーターのコイルが焼損した場合のリスクは、1.ツイーターをReplaceするコスト(代金と手間)、2.その焼損が、他の機器・家具などに与えるリスク―に弁別される。

 

このうち、1に関しては、かつてSonetto VIIIのスコーカーに「歪み」を感じ、ユニットを交換してもらったことがありますが、その時のコストから想像して、ツイーターの交換も10万円は行かないと思われます(幸い、ダイヤモンド素材じゃないので!)。A-0に現在つながれているツイーターは全部で5台ですが、これらが「すべて同時にコイルが焼き切れる」ということは考えにくい(雷でも落ちれば別だが=汗)ので、「一度の事故」でのツイーター交換用の損害額はMax10万円。それに対するコンデンサーの備えは、5台分必要(どれが焼損するかはわからないため)なので、導入コストは金額のみだと約25万円。

 

次に2に関しては、コイルの焼失時に他への損害を与える可能性を検討すると、まず、コイルの焼失というのは、「煙が出る」ことはあっても、「爆発的な火災」にはつながらないことが調べて分かりました。つまり、他のユニットやエンクロージャーや、さらには家具・家までも焼失するような出火の仕方はしない。つまり損害はツイーターそのものに限局されている。

 

では、ツイーターと電線でつながっているパワーアンプを損傷するリスクはないのか?

 

これについては、A-0の機能について、Soulnoteのエンジニアに問い合わせたところ、「弊社のA-0に実装されている過電流検出機能およびDC検出機能もアンプとスピーカーの両方を保護する役割を果たします」との明確な回答をいただいた(ただし、「通常でも±0.1V程度の直流成分が出力されることがあるため、ツイーターには、良質なフィルムコンデンサ(10㎌程度)を間に入れる方が良いかと思います」とのアドバイスが付いたことも付言しておく)。これを受け、私としてはパワーアンプが損傷するリスクは低いと判断。

 

さて、最後は、「事故の発生確率」である。ツイーターのコイルが焼き切れるようなことが、音楽を3回再生すると一度は必ず起きるのなら、「絶対に」(笑)コンデンサーを入れる(笑)。

 

これについては、先に紹介したMyuさんのチャンデバ・マルチアンプシステムに於いて、コンデンサーレスで、アンプとツイーターを「電線だけで直結」した状態で、2年間弱運用されて、「一度もツイーターは飛ばなかった」という事実は大きい。繰り返すが彼は私以上に(?)大音量を出されることがあり、しかも、恐らくほとんど毎日のように再生をしておられたはず。一方の私の伊豆の別宅は、月に多くて2度、電源を入れるだけである。使用頻度と事故発生が比例的な関係にあるとすれば、確率論的に言えば、現状の使用頻度であれば、拙宅のツイーターのコイルが焼き切れるのは、30年間でも1度もないことになる(笑)。

 

さらに、拙宅のツイーターを駆動するA-0は、このメーカーの技術的信頼性は私には評価できないが、少なくとも最新設計の製品を「すべて新品」で揃えたものである。ということは先に紹介したベテランオーディオ店員の談によれば、少なくともこの先10年は、アンプ側の過電流検出機能およびDC検出機能という保護回路が誤作動を起こす確率は極めて低いということになろう。

 

ここまで理詰めで来ても、最終的にどうするかは「オーナーの性格・哲学」というもので決まる。事故が起きる可能性は、ゼロではないからだ。いつかTVで、「1000万円かけて地下に核シェルターを作った」という方が紹介されていた。この場合、私は「1000万円分、楽しい思いに使って、核ミサイルが飛んで来たらサヨナラする」(笑)という考え方をするタイプである。

 

結論的に今、私は何の迷いもなく「真の直結」で5台のSonetto VIIIが奏でる、<澄んだ高音>を楽しんでいる。ただし、数年以内に1台でもツイーターが飛んだら、「羹に懲りてなますを吹く」(汗)で、その後は5台すべてにコンデンサーを入れようと決めてはいるが(笑)。

 

【おまけ】

 

昨日、オーディオ評論家の 傅 信幸(ふう のぶゆき)氏のメインの2chシステムである、「カタツムリ」をグランドスラムさん、Myuさんと共にお邪魔して、聴かせていただきました。

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その音の感想をここに詳細に書くのは、このブログの趣旨から外れますし、「Auro-3D耳」になりきっている私(汗)がハイエンド2chの音をうんぬんできるような資格はないと謙虚(笑)に思っておりますので、耳の肥えたグランドスラムさんやMyuさんにお任せしたいと思いますが、この記事は最初から、このネタで締めるつもりで上梓するタイミングを見計らっていたのです(笑)。

 

ここを読んでおられるような方ならよくご存知と思いますが、「カタツムリ」(その後の、名が体を現わしていない「偽カタツムリ」と弁別するため、敢えてNautilusとは書かない)は、天下のB&Wの4Wayのチャンデバ・マルチアンプによるスピーカーシステムです。傅さんはオリジナルのアナログチャンデバを、アキュのデジタルチャンデバに交換しておられますが、CO値やスロープ設定などは、私のSonetto VIIIと異なり(大汗)、ほとんどオリジナルを踏襲しているそうです。もう一点、拙宅と大きく異なっているのは、パワーアンプを、Jeff4chマルチをLR用に各1台を当てているため、4Wayのスピーカーユニット4台を「同一のパワーアンプ」で鳴らしている点です。傅さんによると、以前は上下で異なるパワーアンプを使っておられたそうですが、同一にしたときに、「位相が揃って、音の輪郭がはっきりした」とおっしゃっておられました。

 

Wayではありますが、「敢えて」(笑)3つとも異なるパワーをつないで「遊んでいる」ものとしては、「でも、ウチのはDirac Liveでユニット間も位相補正しているから」(傅さんは電子的な補正はされていない)と内心強がりながらも(汗)、ちょっと刺さるお話でした。

 

そして、この記事の締めに傅邸訪問エピを持ってきた最大の理由は(笑)、「これ、コンデンサー入れてます?」との質問をしたことです(実はお部屋に招き入れてもらって、挨拶もそこそこに伺った!)。

 

「ツイーターとの間だけには入っています」

 

このスピーカーシステムは、各ユニットの入力部分に別々にアクセスすることができない構造になっていて、オリジナルの状態で太いケーブルが一番下の黒い四角い「台」のような部分の後ろから出ていて、そこに4台分8本のカラフルに色分けされた電源ケーブル(=意外に細い!「電線病」の方が見たらひっくり返りそう!!!)がまとめられているんです。ゆえに、オリジナル状態でこのうちのツイーター用の電線の先のエンクロージャーの中に、コンデンサーが入っているようです。さすがメーカー製!安全First!!! (だって、これ、ネジを使わない構造のエンクロージャーになっているので、万一の時にスピーカーユニットを交換するのにBWのエンジニアしかできず、作業がものすごい大変なんだそうで…だからメーカーとしては、スピーカーユニットの修理に追われたくないだろうと想像!)

 

P 太いXLRケーブル4本のそれぞれの下に見える、「細い」(笑)カラフルな電線が、それぞれ4つのスピーカーユニットにつながっている

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さて、先に「音質には触れない」と宣言しましたが、自分の持ち込み音源を再生してくださいました(いい選局、とお世辞をいただきましたし=笑)からには、一応オーオタの端くれとしてやっぱり書きたいので(笑)、私の駄耳による様々な印象のなかで、一点だけ(本当はいろいろ書きたいが、長くなるので自重!)。

 

今回お邪魔した三人組が普段聴いている音量よりやや低めの出音に最初に触れたとき、「フルレンジみたいだな」と思いました。しかも、上下に音域の伸びたフルレンジ(=これは理論的にはあり得ない)。これはマルチWayスピーカーに対しては恐らく最高の誉め言葉の一つでしょう(今の私のように、アンプを変えたらツイーターの音の美しさが目立つようになったのを喜んでいるようではダメなんですよね=汗)。

 

Wayなのに、1Wayに聴こえる。ご本人は全く語られませんでしたが、これを実現するために揃えた機器やケーブル類の吟味や調整にかけた時間とコストと「鬼気」が出音ににじんでいて、試聴中、正直申し上げると<少し寒気がした瞬間>がありました。間違いなく「マルチWay, マルチアンプシステムの究極の到達点」の一つを体験させていただきました。

 

最後に、これに触れないわけにはいかない。以下の写真を見てください。コレ、我々が無理やりお願いしたものではないんです。グランドスラムさんとは旧知の仲とはいえ、私とは数回会合で食事をご一緒させていただいた程度、そしてMyuさんとは初対面、かつ3人とも初訪問なのに、傅さん自らが記念にと我々を手招きし、こんなフレンドリーな姿態で被写体になってくださったのです。高名なオーディオ評論家なのに、全く偉ぶるところがない。そしてとても細かいところまで気配りをされる(帰り際、寒空の中にもかかわらず、外に出て我々を見送ってくださった)。

こうした人格が音に出ていました。

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2024年11月17日 (日)

Soulnote A-0を3台取り寄せ、チャンデバの調整をしてみました

これは前回の続報です。

 

自分の頭の整理のためにも、前回の記事で書き散らした、「なぜ、今回、ツイーター用のパワーアンプを交換したいのか?」をまずは箇条書きに。

 

  • 音源(単独楽器のフォルテ部分)によって、たまに「強すぎる音、嫌な高音」がしていた
  • 残留ノイズ音レベルがやや高めであった
  • STA-9Mid専用に使いたい(BTLまたはSingle
  • Low, Mid, Highをそれぞれ異なるパワーアンプを使って各ユニットとその受け持つ帯域の特徴を最大限活かせる組み合わせにしてみたいという、「高校生の頃からの好奇心」(笑)。

 

そのうえで前回の2chによる、A-1との比較試聴を経て、今回、A-0を3台取り寄せて、LCRSLRの5つのツイーターにつなぎ替え「マルチとしての最終形」としたうえで、この状態で確かめてみたかった残る懸念点は(気に入らなければ返品・中古売却→新たなアンプ探しの覚悟=汗)、

 

1.10Wの出力で問題ないのか?

2.Auro-3DNativeソフトで再生した時、他のSPとの音質的な違和感はないか?

3.Auro-3DNativeソフトで再生した時、A-1と迷った「奥行き感」の表現力に問題はないか?

4.A-1と迷ったポイントである、相対的に「やや華やか<過ぎる>」音(中低域の再生音もA−1に比してやや腰高になっていた)を、チャンデバ側の設定を変えることで解消できないか?

 

の4点であった。

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さて(笑)。

 

まず、1に関しては、スピーカーユニットを単体で取り寄せて自作されるレベルのマニアの皆さんには既知の問題だと思うが、ついこの前まで「初心者」を名乗っていた(汗)私には、「出力ワット数の小さいアンプのほうが、危ない。スピーカーユニットを壊しやすい」ということを諸先輩方に教えていただくまで知らなかった(汗)。私は「ツイーターは繊細(=壊れやすい?)そうだから、300Wとかの出力のあるパワーアンプではヤバイだろう」と思って、小出力アンプから探していたのだが、これはとんでもない誤解だそうで・・・

 

SPユニットを壊す、というのは「コイルを焼き切る」ことだそうで、それが起きるのは直流電流が入って一定時間以上継続的に入力された時。そして、この直流がパワーアンプから出てしまうのは、出力が飽和(クリップ)するときで、これはつまり、アンプの最大出力を超える出力を出そうとすると起きる現象だそうである。

 

つまり、「小出力アンプを使って大音量で聴くとき」が<一番危ない>。出力に余裕のあるアンプでは頭打ち=飽和=が起きにくいので、むしろ安全とか。うーん、知らなかった・・・よく、「最大入力200W」とカタログに書いてあるハイエンド系SPに、「最大出力1000W」のハイエンド系パワーアンプを繋いでいるマニアがおられるが、私はいつも「スピーカーが吹っ飛んでコーン紙が破れるんじゃ?」とフォルテパートでは内心ドキドキ(ちょっと盛ってます!)しながら試聴させていただいていたのだが・・・むしろ、伊豆のAmator IIIOctaveで、Octaveの出力が低い方のモード(最大出力15Wぐらいかな?=音質的には繊細感が増す)で、リストのピアノ曲を「普段、Auro-3Dシステムで聴くレベルで」(笑)再生していたときに、一度、フォルテッシモでOctaveがシャットダウンしたことがあったのを思い出した。あのときのほうがよほど「危なかった」んですねぇ・・・(大汗)。

 

先の記事のレス欄でも、いつもご相談に乗っていただいている元エンジニアのK&Kさんからも、「Auro3Dさんの場合、TWを比較的低い3KHzあたりから使われること、TWがソフトドームなので能率がやや低めだと思われること、Auro3Dさんが大音量派でピアノなどは生演奏よりも大きな音量で聴かれることを考慮するとクリッピングが起きる可能性を完全には否定できません。一番危険なのはピアノの高域の強烈な打鍵のような気がします。」とのご心配をしていただいているので、今回、正規の(笑)Auro-3Dフルシステムに3台のA-0を組み込んで、手持ちのAuro-3D Nativeソースの中から、なるべく多種多様な演奏・楽器のものを選んで、「自分が聴ける(笑)最大音量」でフォルテの部分を中心に次から次に再生してみた。

 

万一、5台中1台でも、一度でも「落ちた」ら、または何か不快な音(歪?)がしたら、「全部返品するか売却して、もう少し高出力のまた別のアンプを探そう」、という<悲壮な覚悟>だったが(汗)、幸い、大丈夫だった・・・まずはFirst Step、クリア(笑)。

 

そうなると次は「音質」の再確認である。前回すでに2の懸念についてはやってはみたが、それは所詮、A-0で駆動する1台のSonetto VIIIと、PA-16で駆動する1台のSonetto I or IIとの比較に過ぎない。実際に13.1chシステムに組み込んでの「音色の違和感」はないか、これも上述の「飽和」の有無の実験と併せて<耳をそばだてて>チェックしてみた。これをチェックするのに最もふさわしい音楽のパートは、先の「飽和」チェックポイントの直後に往々にしてくる、「残響音が空間に消え入るところ」である。LCRを中心にした直接音による再生が終わるころ、サラウンドバックやハイト群のSPDelayされた残響音を受け持つのだが、ここで音色が大きく異なると、バイオリンのソロだったはずが残響音でビオラになったり(笑)、ドラの音だったはずが、残響音でシンバルになっていったり(笑)するのだ。

 

自身による多様な「検聴」の結果、問題は感じなかった(Amator IIIOctaveの方がよっぽど浮く=汗)。

 

3については、これも前回の記事で予想した通り、私の駄耳では、Auro-3DNativeソフトとシステム自身に内在する「2chとは技術的にも・理論的にも比較にならない」奥行き感・立体感が十分感じられて全く問題なし。まあ、Ch数を半減するのならともかく、たかがアンプを変えたぐらいでAuroシステムの最大の特徴である立体感がいきなり損なわれるほどの違いが出るわけ無いだろうとは思ったが(笑)。

 

最後に、今回個人的に最も「楽しみに」していたのが、4の音色の操作の可能性の追求であった。これはプチ自慢になるが(笑)、CO値をいじるだけで、「全体の」音色が変わる、というのは、Passiveの普通のスピーカーを買い替え続けた「苦節40年以上」の間、全く知らなかったことである(恐らく、これを読んでいる方でPassiveしか使ったことがない方は、以下の部分は「驚き」以外の何物でもあるまい)。これまで私はスピーカー選びの際に、カタログに乗っている「クロスオーバー周波数」が何を意味するのかすらあまり意識せずに(汗)、ただ、自分の耳で聴いて気に入ったSPを選んできた。しかし、この春に諸先輩方の多大なご協力を得て生まれて始めて「チャンデバ・マルチアンプ」の世界に足を踏み入れてから、このCO値が全体の音色に多大な影響があることに気付かされたのである(Passiveの場合は、出音の音色を変えたかったら、ソース機器を変える、アンプを変える、ケーブル類を変える、などのテクニックを駆使されると思うが、CO値の変更による音色の変化の大きさはこれらの比ではない)。

 

例えば、わかりやすく2Wayで考えてみてほしい。CO値が2kHzのもの(=A)と、3kHzのもの(=B)があるとして、この両者が全く同じユニットを使っている場合、2.5kHzの音は「同じに聞こえる」だろうか?

 

これは2.5kHzの音をシンセサイザーで合成して再生した場合は、「理論的には」同じに聞こえないとおかしいことはおわかりになるだろう。しかし、実際の楽器の「ラ」なら「ラ」の音は、フルートとクラリネットでは異なることは経験的に知っている。これは基音の「ラ」(例えばこれを2.5kHzと考えてみる)以外に、様々な付帯音・倍音が付いてくるのが、「楽器」というものだからである(電子的合成音とはここが異なる)。

 

では先の例で、2.5kHzを基音とするフルートの音は、ABSP(繰り返すがユニットは同一)で、どのような音色の違いが出ると予想されるだろうか?

 

これは非常に急峻なスロープを使った場合、Aでは基音と付帯音の殆どの部分はツイーターが受け持ち、Bではウーファーが受け持つことになるのだが、この違いが、音色に大きな違いをもたらす。

 

簡単に言うと、Aのフルートの「ラ」音は、Bより華やかになり、逆に言えば、Bの「ラ」の方が落ち着いた音になるのだ。要は基音近辺の付帯音も、Aはツイーター主導、Bはウーファー主導になるからだ。だからSPメーカーでパッシブネットワークの設計者は、「高域に華やかさを持たせたい」ならツイーターのCO値を下げ、「落ち着いた音を出したい」のなら、上げるはずである。このCO値の操作による音色の操作は、もちろん、ユニットそのものが分割振動を起こすような帯域は普通は使わないので、ユニット自体のf特による限界はあるが、先にも書いた通り、笑えるぐらい音色が変わる。しかも、スペアナでみた場合は、どちらもほぼ同じf特カーブとして現れるのに、である。人間の耳は、測定機より敏感なのだ!

 

春先から「この技」を知ってしまったワタシ(だから、Active化した際、「これからはSPを買い替えなくても、パラメーターをいじるだけで永遠に音色の変化を楽しめますよ」、と先達に言われたのだった)は、今回の不満点(A-0だと綺羅びやかなのはいいのだが、やや全体に腰高な音色。私はピアノの右手は華やかなのが好きだが、左手の重みで感動するタイプ=だから以前どこかで書いたように、ドビュッシーの「沈める寺」が好き)を、なんとかこのテクニックを駆使して解消できないか、と今回の挑戦を「楽しみに」していたというわけである(笑)。

 

チャンデバ未経験者向けの前置きが長くなったが(汗)、以下のような4種類のHighMidとの間のCO値を5台のSonetto VIIIに全て適用して瞬時に切り替えて試聴できるようにした。つまり、3500から5000まで、500Hz刻みにした4つのセッティングを作ったのである。これまでのDefault3500だったので、これを引き上げることでMidによるカバー領域を増やす=高域の音色を落ち着かせることを狙うのだが、その塩梅は実際にやって自分の耳で聴いてみないとわからない。

 

PImg_2933

 

ちなみに、Sonetto VIIIのパッシブネットワークのMid-HighCO値は3000である。これはチャンデバ化・アンプ直結にしたときに、Default値では高域にキツさを感じ、ツイーターのカバー領域を減らしてスコーカーのそれを増やして対応しようとして、3500に上げたのである。今回、パワーアンプの入れ替えで、キツさはなくなったのだが、「軽さ」が出てきているため、もう少しMidに頑張ってもらえば改善できるのでは、との狙いがあって、更に上方のセッティングを作ってみた。なお、今回、CO値の上限を5000としたのにはもちろん合理的?理由があり、以前、Myuさんと一緒に厳密にユニット単体のf特を測定した際に、Sonetto VIIIMid5000あたりから6000にかけてピークアウトしており、その先は恐らく分割振動だろうということで、使えるのはせいぜい5000までとみているからだ(ちなみに、Mid上限のスロープはLR24Highの下は、LR48)。

 

P (青いf特がスコーカー、緑がツイーター)

Img_2934

 

ということで、比較試聴に際しては、基本的にはAuro-3D音源を用い、Classicならピアノ、バイオリン、チェロ、ハープシコード、アリア、マリンバ、ビオラダガンバなどの単体音源と、弦楽四重奏、協奏曲、交響曲のすべてを使い、Jazzはピアノ・ダブルベース・ドラムのトリオを中心に、RockだけはAuro-Maticを使用してグランドスラムさんご推薦のNobu’s Collectionを中心に「超念入りに」(笑)比較試聴した。

 

その結果、やはり現行の3500では、ハイ上がり過ぎて、ピアノの華やかさやRockのシンバルやシンセサイザーなどでは「くっきり感」が出るものの、私の好きな音源である女性ボーカルやチェロ、ピアノの左手あたりは音が軽すぎて、しっとり感と重厚感に欠ける。逆に5000にすると、本来小太鼓の軽快な音のはずが、ティンパニーに聞こえちゃったり、ピアノの右手の華麗さ・コロコロ感が失われたり、バイオリンの倍音が、ビオラに聞こえちゃったりした。Rockのバスドラムなんかはものすごく腹に来るのだが。

 

ということで40004500が決勝に残り、微差なのだが、より高域に華やかさを残す4000にすることとした。4500の魅力の中低域の迫力・重みは、4000のままでも、Mid用に用意しているSTA-9をこれまでのSingle接続ではなく、BTLにすればある程度カバーできるのでは、と考えたからだ。

 

ということで、High用のパワーアンプをSTA-9からA-0に変更したことに伴い、チャンデバ側の設定を以下のように変更した。

 

Low (PA-16) CO350(パッシブは270だった)Gain:0dB 

→変わらず

MidSTA-9Single) CO:3503500 Gain:-4dB 

→(STA-9 BTL) CO:3504000Gain:-10dB

High (STA-9, Single CO:3500 Gain:-7dB 

→(A-0SingleCO: 4000 Gain:-2dB

 

オーナーの贔屓目による(爆)感覚では、以前より、中低域が太くなり、高域には華がある。そして全体的にS/Nが上がって、空間の広さと見通しが良くなった(気がする=汗)。

 

プラシーボかどうかは、またどなたかの「検聴」を待つ必要があるが(笑)、実はまだこれで「終わり」ではない。検討すべき事項がもう一つだけ残っている。続きは次稿。

 

【おまけ】

 

一段落してこの記事を書きながら、自分が設定した「CO:3504000」を採用しているパッシブSPって世の中にあるのかな?と思っていくつかの主要SPメーカーの3Wayスピーカーのカタログを調べてみたのだが、見当たらない。「これはもしかして、私の耳がおかしいのか?」と少々不安になったのだが、メーカーのHPではないところに、以下のような情報が。

 

B&Wのスピーカーはクロスオーバー周波数を350Hz4kHzに標準化しています」

 

実はB&WHPも見たのだが、あそこはCO値を公開していないらしい。念の為、モニター的に評価の高い800シリーズのハイエンドと、僭越ながら(笑)、私のSonetto VIIIのカタログ上のデータを比べてみると:

 

801D4  (13Hz 35,000Hz)

TW 25ミリ、SQ 150ミリ、WF 250ミリ×2

CO3504000)?

 

Sonetto VIII (36Hz 25,000Hz)

TW 29ミリ、SQ 150ミリ、WF 180ミリ×3

CO2703000

 

うーむ、偶然なのだが私の聴感によるCO値の選択と、天下のB&Wのエンジニアのそれが同じ結論になったということは、つまりこれは、チャンデバ化とユニット別に異なるアンプの組み合わせによって、Sonetto VIII801D4化したってことか?(それはさすがに化けすぎ?=爆)

2024年9月 2日 (月)

ATMOS Music用のセッティングを詰めました!-「灯台下暗し」的なATMOS 9.1.6フル音源も発見!!!

季節労働者の私は、今は長い夏休みの最中なので、連日の投稿となります(台風で家に閉じ込められて庭仕事もできないし…他にやることないので=笑)。

 

今日は、前から一度はやらなきゃ、と思っていた、Dolby ATMOS用のSP配置の見直しとそれに伴うキャリブレーションをしました(つまり、今回の記事はAuro-3Dは全く関係ないです=汗)。

 

この春にSonetto VIII5台をすべてチャンデバ3Wayマルチアンプ化したので、当然それまでのAVプリの出力チャンネルレイアウトは変わっており、また、SPの性能そのものも「大きく」変化したので、Dirac Liveのキャリブレーション自体もやり直す必要があり、もちろん、Auro-3D用には何度も手直ししつつ、今はとりあえず満足の行く各種設定のパラメーターを見出していることは、すでにこのブログでも何度も書いていることです。

 

しかし、伊豆のシステムでは、Auro-3D用とATMOS用は全く別のConfigurationとしているので、実はATMOS用については、家族や友人などが遊びに来るため、取り急ぎ「映画用」のセッティングだけはしたのですが、「Music」用のセッティングとキャリブレーションは未だしていなかったのです(同じATMOSでも、映画用とMusic用でまた別のConfigurationにしている)。

 

春休み後は仕事があるので、伊豆に来てもせいぜい2泊程度しかできないので、Auro-3Dの新譜を聴くのに精一杯だったし、そもそも、ATMOSの音楽ソースは少ないため、ほとんど聴く機会が無かったということもあります(Apple Musicなどの「なんちゃってATMOS」なんか伊豆のシステムでは聴く気にもならないし=後述)。

 

さて、ここで、「音楽用のATMOSセッティング? ATMOSは一つじゃ?」と不思議に思われる方がおられるかもしれませんので、ちょっと説明しておきます。

 

私はこれも何度も書いていますが、映像を見ながら音楽を聴く趣味がありません(例外はオペラだけ)。映像付きのBDDVDなどの音楽ソース(例えば、ClassicのLiveビデオ)を再生するときは、常に映像はオフにします。コンサートに行っても、Classicなら目を瞑って聴きたいタイプ(笑)。自分の脳を、「音」だけに集中させたいのです。

 

ゆえに、伊豆ではスクリーンを降ろす「映画用のATMOS」セッティングと、スクリーンを降ろさない「音楽用のATMOS」セッティングに分けているのです。

 

二つのセッティングの大きな違いは、1.使用するセンタースピーカーが異なる2.LRと、SLRSP位置が異なる―の2点。

 

1については、映画用はスクリーンの上下にSonetto I各1台を置いて2台でSplit Centerにして、画面中央にセリフがファントム定位するようにしています(サウンドスクリーンではないため)。音楽用には、5chの昔からマルチChで音楽を聴く際の基本中の基本である、LCR同一SP(Sonettto VIII)としています。

 

2については、映画試聴時にはLRがスクリーン(140インチ)にかからないように配置せざるを得ないので、かなりLR間が広くなり、かつ、Rの方がややCから遠くなります(キャスター付きなので動かせる)。また、SLRは、そもそも映画試聴時にはLP(映画なら視聴位置というべきか!)を最後部のソファにしているので(私は映画館でも一番後ろに席を取るタイプ)、90度(真横)に配置すべきSLRの位置も当然後ろに下がるのです。音楽用ATMOS配置のSLRの位置は、なるべくLRと正三角形(一辺約3.5M)に近くなるように、映画視聴時のソファより約1.5Mほど前で聴きますので、必然的にSLRの位置も1.5Mほど前に出ます(ATMOSではサラウンドSPとして使うAmator IIIは、キャスター付きのTAOCSPボードの上にあるため可動性がある)。

 

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<LCR側からLP側を撮影。中央の椅子が、ATMOS音楽鑑賞用のLP(映画時はその後ろにあるソファ)LP前方左右にあるSonetto VIIIFront Wide(その上にあるSonetto IIMiddle Top)、その後方にあるAmator IIISurround、ソファの後ろの棚にあるSonetto ISurround Back(その上にある、Venere1.5Rear Top)>

 

今回、この、「音楽用のATMOS」再生のためのSP位置を微調整して、そのうえで、やりましたよ、9点測距(汗)。この時だけはTrinnovがうらやましい(笑)。Dirac LiveARTを適用するための測定にはかなり時間がかかるし、その間、静かにしていないといけないんです(測定に15分ぐらいはかかる。その後、ARTの計算にまた15分ぐらいかかる=汗。しかも一発でうまくいくとは限らない・・・途中で雷や電話なんか鳴ろうものなら、やり直し=泣)。

 

つまり、今日のような、よほど暇な時しかヤル気にならない・・・(笑)。

 

言うまでもなく、ATMOSセッティングは今まで何度もやっているのですが、今回はStormでのスピーカーレイアウト設定値を従来とちょっと変えてみました。

 

これまでは、第一層にFWを含めた9chSW1ch3台、第二層はATMOS的にいえば、2列各3台(フロント、ミッド、リアの各トップSP)の計6ch(=9.1.6)を実現するのに、Storm的に書くと、「9.3.5.3」、つまり、第二層と第三層にそれぞれ、5台(HCと、フロント&リアハイト)と3台(TOPと、トップミドル)のレイアウトにしていました(ATMOSでは、HCTOPは定義されていないが、ARTでは定在波制御に利用できる)。

P(SPレイアウトの多様性があるのが、StormやTrinnovのメリットの一つ)20240901-144050_20240902132801

 

今回は、「9.3.1.7」というレイアウトにしてみました(SP数はどちらも20台で同じ)。何が違うかというと、第二層にはHCだけを定義し、第三層に2列各3台とTOPVOG)の1台の計7chを定義してみました。これにより、ATMOSが必要とする上部SP群の6台を、すべて同じレイヤーにあるとAVプリに認識させたわけです(だからといって、各SPLPとの距離はマイクで測定しているわけだから、恐らく、音場感はなんら変わらないだろうが、この方が6台すべてATMOSでいうところの「トップスピーカー群」と認識されるので、気分の問題!=汗)。

 

さて、キャリブレーションが終わり、何かATMOS音源の音楽を試し聴きしようとおもい、手持ちのディスクを物色していると・・・

 

以前、記事にしたことのある、『狂気』や『宮殿』、また一連の「John WilliamsVienna, Berlin, Tokyo」、これも定番の『Hans Zimmer Live in Prague』などに加え、Auro-3DBDでATMOSバージョンもあるものもいくつか選び、とっかえひっかえ聴いてみました。

 

それにしても、前も書きましたが、ATMOSって、Front WideスピーカーやTop MiddleにDiscreetに音が振られているソフトって少ないですよねぇ・・・最近、Denonの一体型と、Marantzのプリのハイエンドモデルが、それぞれ16ch対応したんだけど(ちなみに、私のStorm24ch対応!)、これらを購入して、頑張ってSW含めて16ch、つまり、ATMOS9.1.6を構築した人は皆さん、がっかりしておられません?(笑)

 

ATMOS映画ですら9.1.6の全チャンネル使っているソフトって、私の手持ちでは、『Gravity』ぐらいじゃないかな?(しかもこれ、今は絶版) ATMOS音楽に至っては、『宮殿』だけかな?特にApple で配信している「ATMOS Music」なんて全然<なんちゃって>でひどいもので、ほとんど7.1.2(しかも、チャンネルベース)。さらに悪いことに圧縮ソースなのでその音質は、東京のボロシステムならともかく、伊豆のシステムでは聴くに堪えない酷さ。入交さんが「こういう質の悪い音源のがイマーシブオーディオだと思われると困るんだが…」と嘆いておられたのもむべなるかなレベル。部屋とシステムと耳の3拍子が揃っている人にとっては、1分も聴いていられないよ、あれは(泣)。まあ、BDによる「本物のATMOS Music」を聴いたことない人ならともかく。

 

ということで、Auro-3D13.1chの良質な音楽ソフトがほとんどないのと同様、15.1chの民生用フルフォーマットの良質な「本物のATMOS音楽ソフト」は皆無に近いのが現実・・・

 

と思ったら、思わぬところにありました!

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いやあ、このアルバム、正直言って一応ワタシ、中学時代に「ビートルズ・シネ・クラブ」の会員だったほどのBeatlemaniaだったので(当時は既に解散していて、映画でしか<演奏している彼ら>を見ることはできなかった…)、はっきり言ってこれまでに1000回以上聴き込んでいると思う(爆)。つまり、完全に耳にタコができていて(笑)、これがATMOS版で出た、との情報を数年前に得たときに、「まあ、一応、元マニアの端くれとしてコレクションしとくか」ぐらいの気持ちで買うには買ったが、恐らく一度か二度くらいしか聴いていなかった代物。今回、暇に任せて漁っていると、ATMOSの表示が目に留まったので何気なく再生してみて、InputsPCで見たらびっくり!!!

P(Inputsに16ch、しっかり、すべて入力がある! OutputsはARTなので30ch出力中=笑)

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これ、世にも珍しい100%、9.1.6 ATMOSです! なんでもあの、George Martinの息子さん(笑)がATMOS化したそうで。で、聴いてみると結構遊んでいて(笑)、遊園地気分で楽しめる! 音質もいい(ただ、ちょっと低域=LFE=盛り過ぎかな…思わずSWの出力を落とした)。

 

P(こちらはStormXTという拡張モードを適用したもの。ATMOSには無い、HCTOPにも音が入って18ch化!)

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デノマラのハイエンド16chを購入して頑張って16chシステム組んじゃった人、これ、おススメです、投資と努力の元が取れますよ(最後の、Her MajestyPaulの声が一周するときにFWも使ってくれるのがウレシイ!)。Beatles嫌いな人はいないと思うので、是非聴いてみてください(Apple Musicとかのストリーミングじゃだめですよ!音質悪いし、16chは絶対に出て無いから…)。

2024年7月27日 (土)

備忘録:邪念の払拭と将来的な課題をいただいてきました(笑)-TIASとその後の入交氏との懇談会にて

昨日、「2024東京インターナショナルオーディオショウ」(TIAS)に行って参りました。私は「そろそろ老後の資金を貯めないといけないので、オーディオ関連の散財はもう打ち止め!」と心に決めている(つもり=汗)なのですが、<煩悩>は拭いきれておらず(笑)、密かに「二つの野望」(笑)を持って、ほんの数時間だけ、ピンポイント参加したのです。

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【隠れた野望1】

 

これは何人かの方には打ち明けたことがあるのですが(笑)、ブログに書いたりすると「言霊」となって実現を迫られるのが恐ろしく(爆)、これまで書いたことはありませんでした。

 

それは、日本未上陸の「密かに狙っているスピーカー」があったというお話です。そのSPというのは、「MAXIMA AMATOR」というソナスのもので、実はこれ、私が持っているElecta Amator IIIと<全く同じユニット構成>のまま、「フロア型」にしたものなんです。もう何年も前から本国のHPにはLineUpされているのを知っており、ずっと気になっておりました(汗)。

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【写真はHPより引用】

 

なぜって、もしこれが手に入るのであれば、LCRをこれにして、EAIIIをサラウンドにすれば、あの、「甘い音」(笑)に囲まれる、バラの園のような(笑)サラウンドシステムの「香しい音」が聴けるだろうな、と夢想したからです。

 

幸いにも(?)、これまで日本では正規扱いが無いので、並行輸入なんて保証がない怖いことはできないヘタレな私は、指をくわえて見守っていたのですが、内心、「もしこれをノアが扱うようになったら…」と、期待と不安(汗)を持ち続けてきたものでした。

 

ということで、今回はこの「迷い」に決着を付けよう(笑)と、ノアのブースに足を運んで牧野社長(彼は伊豆の拙宅にお見えになったことがある)に「直撃取材」を敢行!

 

EAIIIのフロア型が存在するのはご存知と思いますが、これを輸入販売する予定はありますか?」

「取り扱う予定はありません」

「なぜですか?」

「試聴した音が気に入らなかったからです」

「低音が甘くなるんですか?」

「その通りです。これを入れることで、評価の高いEAIIIの評判が落ちるのを懸念したのです」

 

よっしゃー!邪念払拭!!! カタログ的にはエンクロージャーを大きくした効果と思われる、f特の最低域が数ヘルツ下がっているデータが掲載されているのですが、これはバスレフのf0が下がったからであって、ウーファーユニットを強化したからではないため、「低域が緩くなっているんじゃ…」と素人ながら予想していたのです。どうやらこの<へっぽこ予想>が珍しく当たったようでした。

 

言うまでもなく、つい数か月前に、主戦のSonetto VIII5台すべてチャンデバ化したばかりなので、その時点ですでにある程度は踏ん切りがついていたのは事実ですが、これで<完璧に>未練を断ち切れました(笑)。老後の資金、セーフ(笑)。

 

【隠れた野望2】

 

これは実はチャンデバ化で最もお世話になった、ご近所づきあいをしている自作ハイエンド2ch派のMyuさんにヒントをいただいていたものです。それは、「ツイーターを交換して高域再生能力を強化しては」というものでした。

 

Myuさんと私は、「空間表現」がオーディオ再生に於ける大事な要素である、という点で価値観を共有しており、この「空間表現」をより洗練するのに、f特上のハイエンドを伸ばす、というのは効果があるということ自体は、私も完全に同意していました。オーディオショーやショップなどで、40KHzあたりまでの高域再生能力を備えた最新設計のSPを聴かせていただくたびに、超高域の再生能力と空間表現能力は比例関係にあるという経験則を形成していたからです。

 

とはいうものの、さすがにツイーターを12台すべて交換するのは大変なので(汗)、手っ取り早い高域強化方法として「スーパーツイーター=STを足してみたら?」と考え、Add-onでどうなるのかを確かめようと、最初に向かったのは、FYNEオーディオのブース。このブランドは、最近、「SuperTrax」という名前のAdd-on用のSTを出したばかり。私はもしSTを自分のシステムに入れるなら、「無指向性」のものが欲しいので、これは候補の一つです。音質もさることながらデザインを無視できないワタシ(笑)は、このWoodyな仕上げだけで高評価(笑)。

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会場にはグランドスラムさんとご一緒したのですが、どうやら最初からST付きでプレゼンしているようでした。幸い、ここの輸入代理店の営業担当の方がグランドスラムさんとお親しい(さすが、彼は顔が広い!)ことから、私の無理なお願い(汗)を聞いていただき、「SuperTrax」の有無の比較試聴をさせていただきました。

 

…やはり、いい! STオンだと、むしろ高域の荒々しさが無くなり、スムースになります。で、なぜか中低域も締まった感じがする。下方への倍音の影響なんでしょうか?(ロジックは私にはわからず…) そして肝心の「空間表現」ですが、お部屋が確実に広くなったように感じました。Add-onでも期待通りの効果があるようです。

 

次に向かったのは、ELACのブース。ここには昔から有名なリボンの無指向性Add-on用STの最新バージョンの、「4PI PLUS V」がフロア型(多分、VFSシリーズ)のSPの上に乗せられてプレゼンをしていましたが、お部屋が狭いうえにお客さんがあふれていて、とても「有無の実験をしてください」と頼める状況ではありませんでした(写真も撮りそこなったし)。あの狭い部屋にあれだけ吸音体(=人間)が入っていると、その音をうんぬんするのは控えるべきでしょう。ただ、リボンの高域表現はかつてシバンニ邸のPiegaでじっくり聴かせていただいて、品位の高い表現力を持っていることを知っているので、これもかなり有力な候補です!

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【写真はHPより引用】



最後に、これは立ち話だったのですが(汗)、業界関係者のMさんのご紹介で、ジャーマン・フィジックス(GP)の輸入代理店の庵社長とお話しすることができました(ダイナのSさんも通りかかってお二人も親しいようで、「じゃれ合って」(笑)おられました!世界は狭いなあ・・・爆)。GPには前々から並々ならぬ興味を持っていることは以前もどこかに書いた気がしますが、その理由は、あの「ダースベーダーの頭」(笑)そっくりのDDDユニットが、超高域まで再生できるうえに、それが<球面>に音を放射できる恐らく唯一(?)のツイーター(?)であるからです。

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【写真はHPより引用】


DDDユニットをSW?と組み合わせたセットはかつてGRF邸で体験しており、その印象は今は亡きPhile-Webに書いたはずなので割愛しますが、この「DDDユニットをAdd-onできないか?」というのはずっと前から持っていた<野望>だったのです。しかし、長らくGPが日本に正規輸入されていなかったので、「妄想の外」にありましたが(笑)、幸か不幸か、正規輸入が再開され、その社長さんが目の前に。

 

DDDユニットって、買えますか?」

「今は、メーカーからの指示で、単体での販売はしておりません」

 

オーマイガー!

 

まあ、売ってます、と言われたら、別の意味で悩んだ(確実に、先の二つよりお値段が…)と思うが(笑)。

 

さて、ここまでがTIAS編なのですが、この【隠れた野望2】には、その日の夜の「Auro-3D友の会の懇親会」にお招きした入交氏との会話の中で、オチがつきまして(汗)。

 

「実は、伊豆のシステムにスーパーツイーターを付けようかと思っているんですが」

Add-onですか?」

「ハイ」

「なら止めた方がいいです」

「なぜですか?」

「位相が狂うからです。2chなら、多少位相が狂った方が空間的な広がり感につながる場合もありますが、Auro-3Dの場合は確実におかしなことになります」

 

うーん、「入交教」の使徒(爆)としては、彼の助言に逆らうことはできない(この後、「やっぱ、ST入れました」なんて言ったら、二度と拙宅の敷居をまたいでいただけないだろうし、このような懇親会にも来ていただけないであろう・・・汗)。確かに、Add-onの場合は、私が信頼するDirac Liveの「管理外」になるので、COやスロープ、そして「位相」をDiracが自動調整することはできない。入交氏は、STがダメ、と言われたわけではなく、「Add-onによるSTがダメ」ということだったので、STを入れてもチャンデバで4分割(=4Way化)にすればOKなのだろうが、それは機器面、金銭面、技術面すべてにおいて、無茶苦茶ハードルが高い(大汗)。

 

ということで、私が長年?温めてきた【野望】は二つとも、昨夜、完膚なきまでに潰えたのでした…(お財布的には、めでたしめでたし…なのだが=泣)。

 

最後に、入交氏との懇親の席でのやり取りで、ちょっと気になった点を備忘録として。

 

Auro-3Dの最大の魅力は、2chでは実現できない「高解像度に支えられた立体的な音像定位」。そのためには、STの導入なんて言ってないで、SPユニット自体をテコ入れし、完全に13台を揃えた方がいい。原理的に位相が狂わないフルレンジにしたらどうか?少なくとも同軸で(ムジークを勧められました…)。

 

←これは、恐らく、私のブログを入交さんがたまにご覧になっていただいていて、私がよく、「Auro-3Dの最大の魅力は<音場>」と書いているのをご存じだからだと思います(汗)。確かに、素人感覚でも「音場感」はそこまでRigidなシステムでなくてもある程度は出せるような気がしますが、精緻な「3Dの定位感」(これは以前にも、「舞台俳優に当たるスポットは、それが正確に調整されていれば、スポットが多いほどくっきりする」というようなお話を聞いたことがあります)を実現するには、1.13台完全同一SP、2.13ch完全同一パワーアンプ、3.13台完全等距離(LPから)―による、<電子的補正を一切使わない>Auroシステムを構築するしかありません。入交さんはこれが「究極のAuro-3Dの音」であり、そこを目指せ、とおっしゃっているのだと思います(「一度体験するために、仕事場に作ったら?」とまで言われてしまいました・・・汗)。

 

入交さんには拙宅にお見えになったとき、一応拙宅のAuroシステムに「合格」は出していただいてますが、やはりプロからみれば、所詮「家庭用の音の範疇における、合格」に過ぎず、モニターレベルには程遠いのだろうな、と思います。

 

今後の課題としては、「音場感」はさることながら、Auro-3DのNativeソースを再生した場合の、「3次元的な定位感」を磨き上げることに注力したいと思います。ソースとしては、Auro映えするオーケストラではなく(汗)、ソロ楽器やボーカルなどのソースを使って、検証を進めるべきでしょう。問題は方法論で、X1さんのように、もう一部屋作る余裕があれば、「All 目玉のオヤジ」のシステムを組むのですが…(汗=ソナスを全部売って買い替えればおつりが来るって?=笑) 「理想」は理想として理解しますが、そこまでハードル上げたら、誰もAuro-3Dなんかやれなくなると思うので(爆)、今の自分の環境でできることとすれば、スピーカーの種類の同一化をなるべく進めることや、より精度の高い設置位置や角度・距離を(まるで2chのように)ミリ単位で微調整するということでしょうか? これについては今後の課題として、詰めていきたいと思いました。

2024年6月23日 (日)

OTOTEN 2024雑感-Auro-3Dを中心に

昨日、有楽町の国際フォーラムで開催されたOTOTENに行って参りました。私はオーディオ機器オタクではないし、そろそろ老後の備えを蓄えないといけない年齢になってきて()、「危うきに近寄らず」的な警戒感(爆)もあって普段はこのようなイベントに参加しない方なのですが、今回、「我らが!入交さん」が出演されてAuro-3Dネタをやる、と伺っては万難を排し、参加せざるを得ないのが「友の会会長」というものでしょう!()

 

以下、その簡単なご報告と、それ以外に私が興味を持ったネタをいくつか紹介したいと思います。

 

GenelecブースでのAuro-3D体験】

 

まず、Auro-3D&入交さんですが、プロ用のモニターSPで有名なGenelecのブースで、オーディオ評論家の山之内正さんとお二人で、『イマーシブ最前線』というタイトルで1時間のショーにお出になっておられました。

Img_2646

Img_2648 まず、最初に興味をひかれたのが、このGenelecSP群は、GLMという名称のシステムで組み上げられたAuroシステム(12.1ch構成でした=Topレス)だということ。知らなかったのは私だけかもしれませんが(汗)、これは何年も前からGenelecのウリの一つだそうで、要は、全スピーカーをLANケーブルでPCにつないで管理し、PCに入れた専用ソフトで統合的にOrganizeするというコンセプトのもののようです。

 

このGLMは年々バージョンアップをしていて、今やAuro-3D13.1ch にも対応しているために、今回のデモになったようです。

 

ご存知と思いますが、プロ用のモニターSPは今や内蔵チャンデバ・マルチアンプ方式のPoweredが標準で、アンプもスピーカーケーブルも要らないのですが、その代わり、XLRケーブルをプリ?(コントローラー?)に(スター方式)、LANケーブルをPCと他のSPに(ディジーチェーン方式)つなぐ必要があります(もちろん電源も!)。

 

で、つないだ後は、LPにマイクを立ててキャリブレーション。そこで、各SPの適正な音圧、Delayf特補正などをするのは「お約束」ですが、どうやら位相管理や定在波の打ち消しのような機能もあるらしく、ほとんどDirac Live ART と同等のクオリティを持つ補正ソフトのようです。

 

デモの音源は、最初にティールマンの2024New Year’s ConcertImg_2640 次が入交さん制作の新作のフル13.0chのピアノソロ(武満やドビュッシー)でした。Img_2641 私は出遅れて立ち見(聴き)席だったので(部屋が人いきれで息苦しくなるぐらいの盛況ぶりで、「Auro-3Dの未来は明るいかも?」と思わせてくれるほどでした!)、残念ながらベストのLPから遠かったので音像定位はともかく、とてもクリーンで透徹している音場感は、「位相耳」の私()には出色のものだとすぐに分かりました(プロ用モニター機器のプレゼンらしく、会場がかなりDeadeningされていたのも相まって)。音色はやはりモニターらしい怜悧な感じで、ムジークフェラインはともかく(まあ、これはウチの音の方が好きだな=汗)、ピアノはこの怜悧な感じがマッチしていて、一聴の価値のある音を出していました。このブランドはプロ用のイメージが強いので、このGLMというシステムも一義的にはプロ用なのでしょうが、プロのスタジオ並みのAuro-3D Nativeソースの正確な再現を目指すのであれば、LINNExactシステムが未だAuro-3Dには対応していない状況の中では、このGenelecで揃えたGLMによるAuro-3Dの再生が「精緻さ」においてはベストかもしれません(ただし、マニュアル通りのSP配置を前提として、さらに音質とデザインが気に入れば)。

 

結構このGLMというシステムが気に入ったので、拙宅のハイトLCRをパワーアップするために3台だけ入れ替えてGLMの恩恵を得られないかな、とエンジニアの方に伺ったところ、「全SPGLM対応のSPで揃えないとGLMは機能しない」とのことでした…チラッとうちのソナスのシステムを全部売っぱらって、とか妄想をしましたが()、やはり手塩にかけてチャンデバ化改造までしたシステムを手放したくはなく…残念。

 

もう一つ残念だったことは、この会場のサラウンドハイトSPの設置位置が、サラウンドSPではなく、リアSPの真上にあったこと(つまり、リアハイトの位置)。終了後私が入交さんにこのことを指摘すると、「ATMOS映画の実演もあるようですから…」と。相変わらず、業界的には「ATMOSAuro-3D」というヒエラルキーなんだと実感した次第(泣)。

別の意味で興味深かったのは、司会をされていた山之内さんが、「イマーシヴは、スピーカーの数が多いため、2chに比して弱音の表現にすぐれる、奥行き感が出る、フォルテッシモが余裕を持って再現できる」などと長所を説明し、「これからは2chではなく、イマーシヴオーディオの時代です」(いずれも大意)という趣旨のお話をされていたこと。「おお、なかなか分かってるじゃん!」と不遜にも<上から目線>(爆)で大きくうなずきながら聴いていましたが、終了後に、別の会場に行っておられたMyuさんと合流し、喫茶店でお互いの「土産話」を紹介しあう中でこの件をお伝えしたところ、「えっ、山之内さんって、確かバリバリの2ch派で、ご自宅でマルチなんかやってないのでは?」と()。まあ、最近始められたのかもしれませんが(爆)、私の記憶でも、オーディオ評論家でAuro-3Dに関心のある方は麻倉さんぐらいのイメージだったので、もし山之内さんが<転向>してくれたのであればご同慶の限りです!

 

【ちょっと気になっていたAuroシステム関連オーディオ機器の話】

 

1.EversoloDMP-A8

折角ですから、入交さんのプレゼン後、あちこちを少しだけ覗いてみました。まず最初に向かったのは、ブライトーンという輸入代理店?のブース。お目当ては、EversoloDMP-A8です。これ、最新号のHiViでも取り上げられているので、ご存知の方も少なくないと思いますが、ずいぶん多機能なネットワークプレーヤー?です。Made in Chinaに抵抗のある方もおられるかもしれませんが、Can’t resistなのがそのお値段()。今時のハイエンド機器よりゼロが一つ少ないので(大汗)、庶民の私でも手が届きそうなんです。

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私がこれに注目した理由はただ一つ。HDMIのデジタルOutputがあるからです(ほとんどのネットワークプレーヤーには備わっていない)。もしこれを使って、NASに入っているAuro-3Dのダウンロード購入したファイルをHDMIケーブルでAVプリに渡せるなら、購入検討に入りたいと思ったのです(現状はOPPO205か、PC経由のRoonで再生しているが、それぞれ欠点もあるので、できれば安定的な最新の専用機に任せたい)。

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ブースに行くと早速担当エンジニアの方を捕まえて、質問攻めに(=仕事柄=笑)。で、分かったことが、このA8HDMI出力は、2ch ONLYだということ・・・「マルチがやりたいのであれば、こちらをどうぞ」と言われたのが、その姉妹機のA6。こちらもHDMI出力があり、マルチチャンネルに対応しているのだとか。お値段も約半額なので、お財布には優しいのだろうけど、その分、性能も半分じゃあ、「オーオタ」としては・・・()。ということで、対立候補である、RoonNucleusの最新版が出るのを待って、比較検討かな。特にギャップレス再生ができるかどうか、が気になるので、それを確かめてから。

 

2.Magnetar UDP900

 

これもすでにあちこちの雑誌で取り上げられているものだが、実は実物を見るのは今回が初めて。いうまでもなく、これは手持ちのOPPO 205の後釜候補。これに期待する最大の機能はSACDマルチをHDMIAVプリに送るお仕事。この機能も絶滅危惧種なんですよね・・・私は繰り返し主張しているように、Auro-Maticは、2chソースより5.1chソースに適用した方が効果が高いと確信しているので、手持ちのSACDマルチ(Classicだけ。JazzMaticにしないことが多い)のディスクにあるソースをどうしてもHDMIStormに送り込む機器が必要なのだ。もちろん、ここでは書けないようなことをすれば(汗)、NASに入れられるのは知っているが、それは仕事柄(汗)、少なくとも「現役」の間はやるわけにはいかない。まあ、せいぜいあと現役も数年なのだが、それまでOPPOが持ってくれるかどうかが怪しい。修理受付が終了しているので、故障したらその瞬間「タダの箱」となり(泣)、これまで集めたSACDマルチのディスクがコースターになってしまう()

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ということで、まずは質感を確かめに「見てきた」(実は聴いていない=汗)。XLRの2ch出力もあるので、OctaveにつないでAmator IIIでも楽しめそうだ。うーん、どうしようかなあ・・・(ただし、NASのマルチファイル再生はギャップレスができないそうです。2into 1とはなり得ないようで、残念。もしこれがOKだったらとっくに買い替えている)。パイオニアかSonyあたりが乾坤一擲、ハイエンドユニバーサルプレーヤーを出してくれないかなあ(やっぱり国産は信頼度が違うので…)。

 

【お笑いネタ2題】

 

1.「世界初の音楽リスニングチェア」

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タイトルからして胡散臭い()けど、このリーフレットの説明を読んでいて、思わず「目が点」()

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「背後からの反射音」好きだからAuroシステムを組んでるんだけど(爆)。

 

2.「ダブルウーファーズ会長 故永瀬宗重氏開発によるレコードスタビライザー」

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私は、グランドスラムさんのお導きで、彼とテーブルを共にする機会がありまして、確かに「親分肌」のカリスマ性のありそうな方でしたが、まさかリーフレットの見出しになるとは!!!

 

私も「Auro-3D友の会会長 故XXXX氏開発による・・・」を頑張って考案しなきゃ!(爆)

 

 

【最後に、Auro-3DStreaming コンサートのご案内】

 

これは入交氏からの情報です。

WOWOWでは6/21Jazz not only Jazzと銘打った主催公演を行い、石若駿セプテット+ゲスト(ゲストの中には上原ひろみも)のAuro-3D Native Live収録をしたようです。

それをKORGが開発している「Live Extreme」で、8/16から1週間のビデオオンデマンド アーカイブ配信をするそうです。

スペックは、96kAuro11.17.14H)48kAuro13.196kAuroHeadphones

 

参加方法や申し込みなど、詳しくは以下のサイトをご覧ください。

https://teket.jp/10343/35750

 

日ごろ、「Auro-3Dって結局ヨーロッパのマイナーなクラシックばかりで、JazzにはいいAuro-3Dソフトがない」とか、「折角13台のSPを苦労して設置したのに、肝心のAuro-3Dのフルフォーマットの13.1chの音楽ソフトがない」とお嘆きのアナタ、千載一遇のチャンス到来ですよ!!!

実は私は今度、Siltechさんと青山のBlue Noteに上原さんを聴きに行く予定なのですが、はっきり言って、あそこはPA使っているし、そのシステム(確かSPJBLだった記憶が)より、ご自宅のシステムの方がいいものを使っている方は、まず確実に、Auro-3Dのハイレゾ配信で聴いた方がLiveより「音質はいい」と思いますよ()。しかも地方にいる方でもご自分の部屋で居ながらにして、赤ワインと生ハム()を味わいながら、Liveコンサート<以上の>音楽体験ができるんですよ(大画面で大勢で楽しんでも同じ料金なので、是非、ご友人をお誘いください!)・・・21世紀まで生きててよかった()

 

是非!!!(情報拡散希望!)

2024年5月23日 (木)

静電式スピーカーを体験してきました!

久しぶりに、グランドスラム邸に行って参りました。「久しぶり」と言っても、昨秋以来ですが(http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2023/10/post-a0fd8e.html)、東京と会津って結構<時間的な距離>(会津には新幹線は通っていない)があるので、年に2回ぐらいのペースでお邪魔しているって、盆と正月の実家への里帰りでもあるまいに(笑)。

 

さて、今回の訪問に際しては、彼のところでAuro-3DMatic)に関する新展開があったわけでも何でもないので(汗)、最初は記事にするつもりもなかったのですが、まあ、せっかく会津まで行ったんだしということで、でも友の会的には「訪問記」としては書きにくく、「その他のオーディオ関連」カテゴリーで簡単に紹介したいと思います。

 

今回の訪問の主目的は、実は、今、Auroシステムを導入しようかどうか検討中の名古屋のOさん(春に拙宅に「試聴」にお越しになっている)が、「判断材料としてグランドスラム邸でも是非Auroシステムを試聴したい」ということで、かつてご自宅でのハープシコードの私的コンサートにグランドスラムさんと共に招かれた(http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2024/03/post-e07284.html)ことの御礼も兼ねて、随行することにし、あわよくば(笑)グランドスラムさんと二人で「友の会」に引き込もうというものでした(笑)。

 

グランドスラムさん的には、なんと、昨秋お邪魔したときに、なぜかうまくいかなかったARTのキャリブレーションが、未だ「そのまま」で放置されている(汗)というので、わざわざ私の宿泊費を出してまで(笑)呼び寄せたかったらしく・・・うーん、私、NaspecDirac Liveの社員じゃないんだけど(爆)。

 

そして私的には、「中古で集めた静電式SPの修理を終えたので、一度聴いてみない?」とのオーオタごころをくすぐるグランドスラムさんの甘言に抗えなかった(笑)、というところです。

 

かくして、三者三様の思惑を持って(笑)会津の地に集合したわけですが、先のOさんがどのようにお感じになってどのように判断されたのかは、いずれ「公共財」とすべくどこかに紹介してみたいとは思いますが、今はこちらとしてはJust Wait and See!という状態。グランドスラムさん関連では、今回はわざわざ私のMacMicを持参したお陰で(笑)、幸い、無事ARTのセッティングが成功したので、これはいずれご本人がその印象を含めどこかに書いてくれるでしょうから、それを待つことに。

 

ということで、残るネタは私が関心を持って聴かせていただいた、静電方式による2chシステムの話なので、ほとんどAuro-3DMatic)には関係ありません…(汗)。

 

まあ、でもなかなか「世にも珍しいもの」であることは間違いないため、紹介する意味が全く無いわけでもないので、以下にチラッと(笑)。

 

まず、最初に聴かせていただいたのが、これ。

 

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「静電式」というのはかつて高校生の時に一度だけ、名古屋の栄電社でQuadというメーカーのものを聴かせてもらった経験があるのですが、これはその同じQuad社の製品で、21世紀(アバウトですみません。グランドスラムさん、フォロー頼みます!)に入ってからの、比較的新しいものだそうです。なんか背の低めな、黒い「モノリス」のような(笑)見た目です(昔聴いたQuadはもっとWoodyだった記憶が…)。

 

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これは背面なのですが、よく見ると、スピーカー端子の横に電源端子があるんです。そう、お詳しい方はよくご存知でしょうが、「静電式」のSPというのは、常に電源につないで電圧?をかけていないと音が出せないそうで、でもパワーアンプが内蔵されているわけではないので、さらにそれも別途必要という、なかなか手のかかる(というか、設置場所が限定されそうな)仕組みのようです。

 

実は今回は同じ静電式でメーカー違いでもう1セット聴かせていただくことができました。

 

それがこれ。

 

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こっちは、完全にあの巨大なグランドスラムが見えなくなっていることから想像できると思いますが、高さは正真正銘の「モノリス」(見たことないけど=笑)ぐらいありますが、仕上げがWoodyでサランネット(というか取り外しができない、保護用の布切れという感じ。一部ほつれているのは御愛嬌!)もベージュという家具調になっていました。これは日本製でSTAXというメーカーが40年?近く前に作ったものだそうです。言うまでもなく静電式は精密機械なので、OH無くしてこんな古いものからまともに音が出るわけがなく、手練れの職人さん?の元から戻ってきたばかりだとか。

 

こちらも静電式の証、パワーアンプからの入力のほかに、電源供給が必要です。

 

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さて、この二つを聴かせていただいた印象として、私が最初に感じたのは、「位相が合っている音だなあ」というものでした。幸か不幸か(汗)、私は位相にはちょっとうるさいのです(笑)が、何度も書いている通り、「位相の揃っている音」というのは、真冬の田舎の山の上で晴天の夜中に見る、「満天の星」のイメージです。遠近感があり、澄み切った音質・音像・音場感があります。

 

この印象をお伝えしたら、グランドスラムさんによると、何でも静電式SPというのはフルレンジなんだとか。ほう、ということはこれは入交さん愛用の「目玉のおやじ」と同じということで、そりゃあ、原理的に位相の狂いがほとんど生じないはず。

 

しかも、真裏からも全く同じ音が出ているそうで、ほんとかよと試しに後ろに回っても音楽を十分楽しめました。つまり、これって、かつてtaketoさんのところで聴かせていただいた「オープンバッフル」という仕組みと同じ? 言われてみると透明感と低域の薄さ(汗)が共通してました(笑)。

 

ボーカルと弦が特にいい、というのでたっぷり聴かせていただきましたが、普段Sonusの甘い音に慣れ切っている私の耳には、弦(特にチェロ)はAmator IIIOctaveの方が好みでしたが、ボーカルの再現性は素晴らしいものがありました。単に甘いという色付けをしているというよりは、Breathが分かる感じ、といえば表現できているかな?男性ボーカルも女性ボーカルも、やっぱりフルレンジでクロスオーバーが声の帯域内に無いからでしょうか、また、静電式というのは微細な信号をコーンをマグネットで振動させる普通のSPよりOmitしないのでしょうか? 専門的な知識はないワタシですが、とにかくボーカルは特に素晴らしかったです(念のため、先日Siltechさんのところで聴いてきた、「Eye in the Sky」も再生してもらいましたが、最初の数フレーズで聴くのを止めました=汗。RockのようなPulsiveな低音との、二兎は追えないようです)。

 

QuadSTAX の比較では、似た傾向にありましたが、やはりSize does Matterなのか、低域の再生能力に於いては、より大型のSTAX に分があると駄耳では聴きました。ちなみに、グランドスラムさんによると、この両者を聴き比べると78割の方はSTAX に軍配を上げる、とのお話でしたが、実は私は少数派のようです(汗)。Quadの方がより設計が新しいからでしょうか、位相耳のワタシにはより「すっきり」聴こえたような気がしました(ただし、静電式というのは電圧?をかけてWarming Upをしてからの方が音が良くなるそうなのですが、今回は設置場所と時間の都合もあり、つないですぐ音出ししていましたので、私のImpressionは話半分に聞いておいてください!)

 

かなり独特な魅力を感じ、これ、まるで畳一枚のような「板」なので(笑)、タペストリーみたいに壁に掛けられるのなら、伊豆の家の階段の吹き抜けの壁にでも掛けようかなと、グランドスラムさんにどちらか譲ってもらおうかと一瞬考えましたが、先に書いたように後ろからも全く同じ音が出るため、セッティングに際しては背面に相当なスペースが必要なようです(汗)。ある意味、大きなお部屋の真ん中に「間仕切り」のように置くと、それで仕切られた二つのスペースの両方で同じように「いい音楽」が楽しめるので、そういう使い方がベストなのかも!

 

最後に、無理やりAuro-3D(Matic)に結び付けてちょっと妄想してみたのですが、こういう原理的に位相の狂わないSPにぐるっと囲まれたマルチチャンネルシステムの音は素晴らしいだろうな、と思う反面、まるでストーンヘンジの中で「宇宙と交信している古代人」(爆)みたいな「変な気分」になりそうな気がしてきて、妄想を止めました(笑)。音は耳ではなく、脳(つまり視覚も入る)で聴きますからね!

2024年5月 2日 (木)

Sonetto VIII 5ch 完全チャンデバ化プロジェクト(その6:再調整編)-過ぎたるは猶及ばざるが如し

癪である(笑)。この記事を書くこと自体が(泣)。

 

つい先日、「調整完了」と題した記事を書いた、その舌の根も乾かぬうちに…前回の記事の最後に、「あとは鳴らし込んで」と書いた通り、Auro-3Dの様々なソースで聴き込みを開始して三日。「嫌な音」がするソースが見つかってしまったのです。

 

この「嫌な音」というのは、自分だけの感覚的なものなので、言語化するのが難しいのだが、最初、私はスピーカーが「歪んでいる」のだろうと、ユニットを疑った。詳細は割愛するが、その後Myuさんにご助言を求めて、あれこれ「実験」をするうちに、ユニットのせいではなく、どうやら、私のチャンデバ設定のせいだということが分かってきた。

 

そこで、仕方なく、「振出しに戻る」(泣)。以下は、チャンデバをいじったことの無い人にはほとんど実用性はない内容なのだが、個人的には「Multi-Wayスピーカーそのものの仕組み」というものに対して、ものすごく理解が深まった、と<負け惜しみ>を言っておこう(笑)。

 

GWの初日に、最終?設定の「決め手」となったのは、前回の記事に書いたようにチェロの再生音だった。チェロの胴鳴りをSonetto VIIIが「魅力的に」増幅する設定として選んだのは、下記であった。

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ちなみに、Sonetto VIIIのデフォルトのCOは、270Hz3000Hzである。この値をチャンデバで設定して、24B/octでつなぐというのは、もちろん、改造後の一番最初にやったことであり、クリーンではあるが、恐ろしいほどつまらない音が出た。当然である。既製品は、中高域のユニット二つを「逆極性」にしているのだから。PC上の操作で、この二つのユニットをInvertにすると、「いい音」になることは確認済みだ。

 

しかし、今回、チャンデバ・マルチアンプ化の改造に踏み切った最大の「合理的理由」は、Sonetto VIII3ユニットをすべて「正相接続」にして、Auro-3Dを構成するこれら5台以外の8台の2Wayスピーカー(=すべて正相接続)と極性を合わせたかったからである。ゆえにここは絶対に譲れない。全ユニット正相接続を前提に、如何に魅力的な音を鳴らすSPに仕立てるか。これが今回のプロジェクトの最大の課題であり、「迷走」の出発点である(笑)。

 

先の記事に書いた通り、ボーカルを中心に調整を進め(この段階ではf特も計測した)、今回伊豆に来て、Auro-3Dシステムに組み込んで<最後>(となるはずだった…)の調整に使ったのが、鈴木秀美「バッハ無伴奏チェロ」SACDマルチをAuro-Maticにしたものだった。Auro-3DNativeソフトにもこの有名なチェロの演奏は収録されており、もちろんそれも使ったのだが、昔から一番聴きなれているこのアルバムを最後には使ったのである。

 

朗々と鳴り、伊豆の部屋全体が美しく共鳴しているような感覚を得られていた。

 

満足して、一晩ぐっすり寝て、翌朝から他のソフトを聴き始めた。

 

その中に、私の「決めソフト」の一つである、名倉のマリンバ演奏がある。言うまでもなく、これは私がご指導を受けている、入交英雄氏の作品である。東京の関口教会という、残響音6秒という丹下健三設計のコンクリート造りの尖塔の中で録音されたものだ。

 

マリンバというのは不思議な楽器で、基音が1Khzほどありそうな音階の鍵盤?を叩いているのに、「逆倍音」?なのか、かなりの超低音も付帯してくる。もしかするとこれはマリンバ、というより、関口教会独特の現象かもしれないのだが、この高域と低域が合わさって得も言われぬ波動が生まれ、普段はそれが私の琴線に響くのだが、今回はどうも、琴線に届くどころか、「胸騒ぎ」を招くような、不快な音波が発生しているような感じを受けた。

 

他にもいくつかのAuro-3Dソフトを聴いてみると、もう一つ、「嫌な音」が乗る音源が見つかった。『The Horn in Romanticism』である。

 

高校生の頃、地元名古屋のオーディオショップに入り浸っていたころ、ブルックナーの交響曲が好きだと言ったら、「ソフトドームにホルンは鬼門」ということを店長が言っていたが、確かにSonetto VIIIのツイーターはシルクドームであり、1000Mのようなハードドームや、JBLのようなホーンのツイーターほどには、管楽器は鋭く吠えない(笑)。それは分かっていても弦楽器の美しさにシルクドームを選び続けているのであるが、それにしても、改造後のSonetto VIIIからは耳障りなホルンが聞こえる。何かに共振をして、それが音を汚している感じがした。

 

先にも書いたがユニットの故障ではないとすれば、パッシブネットワークで使っていた時はこんな音は出ていないのだから、これは単純に私のチャンデバ設定のせいである。

 

そこでもう一度オリジナルのパッシブネットワークのCO値を再確認したうえで、私の「チェロ偏愛設定」で思いつく「嫌な音を出す原因」としては以下の2点。

 

  • ウーファーのハイカットを上げ過ぎている?(270500)ただしこれは、ウーファーユニット単体のf特を見る限りでは、「余裕で出せる」帯域のはずだが・・・
  • スコーカーとツイーターのクロスオーバー帯域を重ねている→オリジナルは3000だが、私の「チェロ偏愛設定」(笑)では、スコーカーのハイカットを3500とし、ツイーターのローカットを2500として、25003500の間は両ユニットから100%出力をダブらせていた。f特を見る限りは、この設定の方がフラットになるのである。

 

そこで、「チェロ偏愛設定」を1として、他に、2-4までの3つの設定を新たに作ってみて聴き比べることにした。

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No3

 

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試聴に際しては、チャンデバの設定の違いの音だけに集中するため、Sonetto VIII2台による、LRステレオ再生のセッティングを作り、SW無しのLarge設定、もちろんDirac Liveも無しの完全な「素の状態」とした。マルチソースも再生時には2chDownMixして試聴した。

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まずは問題の、名倉『Bach ParallelsAuro-3D

 

低域は、パッと聴きでは、確かに1の方が2より「ふくよか」で量感がたっぷりあるが、長く聴いているとやや「気持ちが悪くなる」感じの音であることが分かった。2の方が残響音がすっきりとスムースで、「あく」がない感じ。チェロなら1だったのだが、マリンバ(残響音たっぷりの関口教会録音)では、2の方が聴きやすい。

 

高域で、フィナーレに鉄琴(またはトライアングル?)を打ち鳴らす曲がある。ここは2の方が、「金属の硬質感」がはっきりわかる。重なりの多い1だと少し、寝ぼけた音になる。ここでツイーターのCO3500に上げて重なりの無い3にすると、やや硬質感が落ちる。自分の好みは2である。4にすると「木質感」が落ちる。

 

次に、ピアノとボーカルを試したいと思い、Thomas Quasthoff「魔王」p. Argerich: 2ch Stereoを聴き比べた。

 

独唱は、1より2の方が、ドイツ語の子音がはっきり聞こえるし、高音の声に艶がある。4は子音はよく聴こえるのだが、どうも歌い手の「熱」を感じない。

 

ピアノは、1は音が低すぎて華やかさが薄い。2,3の比較では、打鍵時の「強さ」の点で、2が3より勝る。4はあっさりしすぎている。

 

結論的に私が選んだのは、2である。これは、ウーファーのハイカットを350に引き下げ、スコーカーとツイーターの重なりを3000-3500500Hzに減らしたものである。どうやら、このウーファーは中低域までは使わない方がよく、このスコーカーは3000Hzあたりから上が「おいしい」ところで、それ以下は「味が落ちる」ようだ、というのが私の駄耳による印象である。

 

よくよく考えてみると、2の設定って、Sonetto VIIIのオリジナルのCO値である、2703000に限りなく近い・・・天邪鬼な性格(笑)の私は、「せっかくチャンデバ化で<自由に設定できる権利>を持ったのだから、ソナスの職人よりいい音の設定を見つけてやる!」と意気込んで、わざとオリジナル値から大きく外れてみようといろいろと試したのであるが、結局、「プロが決めたCO値は伊達じゃない」という結論に落ち着いたようで、ちょっと癪ではある(笑)。

 

その後、丸一日、2ch状態で、クラシックだけでなく、JazzRockPopsなどを聴き込んでみたが、これまでのところは、「嫌な音」は感じられない。ただ、今回私はCO値の違いによる「音色」の違いFocusして聴き比べをしたが、Myuさんには、次のステップとして、Delay値(=位相)の違いによる「ボーカルの立体感」の違いFocusしてみては、という宿題をいただいた。まだ「完成」までの道のりは長いようである。

 

ただ、ここまでで時間切れ。GW後半は東京で用事があるため、戻らなければならない。取り敢えず、この新たなチャンデバ設定をベースにした、月末の来客に向けたAuro-3D用セッティングのためのDirac Liveのキャリブレーションをしなければ、Auro-3DMatic)をお客さんに聴かせることができない。Auro-3D(Matic)が聴けない伊豆の拙宅なんて、ハンドルネームの名折れである(爆)。これは来週また伊豆に来てやることにしよう。

 

最後に、先達のMyuさんから頂いた「金言」を紹介して締めたい。

 

<自分で調整できて「見え過ぎて困る」のがマルチアンプ方式なのです()

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