Auro-3D使いこなし関連

2025年3月14日 (金)

And in the End…

これは自分のシステムに関する、当面の締めの記事です。

 

拙宅のAuroシステムの主力であるSonetto VIII 5台を、デジタルチャンネルデバイダー・マルチアンプ駆動化してから、ちょうど一年。これから先の1年は本務(Auro-3Dは余技です、私にとっては=笑)に集中するためあまりハードいじりに時間をかけたくないので、今年度内に「いったんケリをつける」覚悟でこの春休みに集中的に取り組んだことをここに整理して、現時点でのFinishとしたいと思います。

 

23月に、「おなじみさん」を中心にしたオフ会を拙宅で開催し、5人の方に来ていただきました。そのうち、初めてのお客さんは一人だけでした。

初めてのお客さんはともかく、何度目かに来たお客さんには、「前ほどの感動が感じられない」とか「ソナスらしさが消えている」とか「SPユニットが無理して音を出している感じがする」「前より音のフォーカスが甘くなっている」などと言われたのですが、それにショックを受けることは全くなく、実は「お、なかなか鋭いな!」と納得していたのです。というのは、自分自身、その原因に対してそれぞれ心当たりがあったからです。

そこで、一連のオフ会終了後、友の会の仲間に「背中を押していただいたので」(笑)、私が重い腰を上げて取り組んだことは、大別すると以下の3点です。

 

1.Mid用パワーアンプのシングル化

2.サラウンドとサラウンドバックのパラ化

3.チャンデバ設定の再々再々…調整(笑)と、それを反映したDirac LiveART)の設定

 

・・・・・・・

1については、High用のパワーアンプとしてA-0を導入したのに伴い、これまでSTA-9BTL化してMidに使用していたことはすでにご報告済みです。 

 

実は、チャンデバ化する前は、このステレオパワーアンプであるSTA-9を、「敢えて、片チャンネルだけ使う」、つまりモノーラルアンプとして中高域用に使っていました。

 

そのメリットは、「理論的には」二つあり、一つは、アンプの電源部に余力が出ることによる<力感の向上>、もう一つは、チャンネルセパレーションの向上による<混入ノイズの減少>だそうです。

 

このうち、私の駄耳でも確認できたのは後者の方で、それは以前もどこかに「余韻がきれいに出る」と書いた記憶があります

 

実は、これはチャンデバ化改造で大変お世話になったMyuさんにも、私がSTA-9BTL化してMid用にしたときに、「個人的にはシングル使いの方が遠近感がより出ていて好みだ」と言われていたのですが、「せっかくHigh用のパワーアンプを3台追加購入して、STA-95台フリーになったのだから、今回はすべてBTLで運用してみたい」という、単なる好奇心が当時は勝ったのでした。

 

しかし、昨年秋にA-0をツイーター用に導入した後、いろいろとチャンデバをいじってみているうちに、Midが少しSonusらしくない、「荒々しい」=逞しすぎる?=音がするのが目立ってきました。これはおそらく「相対的な感じ方」で、以前は気が付かなかったものが、A-0の「静謐な感じ」との比較で気になるようになったのだと思っています。

 

Jazzメインの方であれば、「荒々しさの表現力」は大切なポイントだと思いますが、「教会のオルガンや合唱」が好きな私にとっては、「静謐さ」のほうに軍配が上がるのは当然です。

 

一応、今回の組み換えの際に、「念の為」(笑)、STA-9のBTL出力をLowに使うのも試してみましたが、やはり前回の実験のときと同様の結論(StormPA-16のほうがSolidな低音)となり、STA-9は「シングルでMid用がベスト」、という判断となり、5台とも組み換えました。

 

結果として、荒々しさより、Silkyさが特徴の「Sonusらしさ」が少し戻り、S/Nと遠近感の表現力が向上しました。

 

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2の「サラウンドとサラウンドバックのパラ化」とは、サラウンドSPとサラウンドバックSPLRごとにまとめて、パラレル接続する、という意味です。

 

実はこれ、かなり前に入交さんに教えていただいたテクニックなんです。現状、拙宅では、「入交教の信者の証」として(笑)、サラウンドの開き角(方位角)を90度、つまり、LPの真横にしてあります。ただ、このポジションは第一層が7ch、つまりサラウンドバックも使っているときに有効というのが入交さんの主張で、第一層が5台のSPによる再生になる場合は、御存知の通り、ITUの規定するサラウンドの開き角は110度が標準であることは言うまでもありません。

 

私は、最近はSACD MultiDVD-A5chソースもほぼAuro-Maticで聴くので、この場合は拙宅のStormだと「強制的に」(笑)第一層は7ch(+6ch13ch)に拡張してくれるため、特にこのままで不満は感じていなかったのです。

 

しかし、拙宅のシステム環境では、ダウンロード購入したAuro-3D9.1chソフト(5.1.4)をRoon Bridge経由で再生するときだけは、なぜか、Stormの方で第一層だけは7chに拡張してくれず(?)、5.1.5.111.1ch再生になってしまうのです(不思議なことに、同じ9.1chソフトをOPPO205Magnetar 800のネットワーク機能を使って再生すると、ちゃんと、7.1.5.113.1chに拡張します…)。

ただし、11.1chのソフト(7.1.4)は、Roon Bridge経由の再生でも、Stormの方で、7.1.5.1の13chフルに拡張されるのです。

 

P(これ、上がInputs、下がOutputs。Roon Bridge経由の9.1ch再生だと、LB・RB(左右サラウンドバック)にInputが無く、Outputもないのが分かる。これがMagnetar経由の再生だと、OutputsはLB・RBからも出力がある=拡張される)

20250312-182006

なにかRoonの設定変更等での解決法はないか、とずっと探ってきましたが、未だ見つからず(ご存じの方がおられましたら、ご一報ください!)。

 

NASにあるAuroソフトは、Roon Bridge経由で再生したほうが音がいいので、オーオタとしては当然こちらを使うのですが、せっかく最近Sonetto IからIIにパワーアップさせたサラウンドバックSPから「全く音が出ない」のは、その状態が<オリジナル>とはいえ(笑)、なんとなく釈然としない感じが続いていました・・・

 

実は拙宅のサラウンドのSonetto VIIIにはキャスターが付いているため(笑)、やろうと思えば、110度の位置に移動させることはできます。つまり5ch用の理想の位置にサラウンドSPを置くことは物理的には可能です。しかし、前の記事で書いたことが自分に跳ね返るのですが(汗)、Lは問題ないが、Rは、110度に設置すると、リビングからキッチンに行くドアの真ん前に立ちふさがる(笑)のです。「キャスターがせっかく付いているんだから、いちいち動かせばいいじゃん!」といわれそうですが、実践的には音楽を聴いている途中で、のどが渇いて冷蔵庫に行くたびにSPをゴロゴロ動かすのは、「勘弁」したいところです(汗)。

 

P(SR=90°とSBR=135°。110度は、この間、ドアの真ん前!)

Img_0106

という「悩み」を以前、入交さんにお話したところ、この「パラレル接続=サラウンドへの入力をサラウンドバックにも送る」という解決法を教えていただいたのです。こうすれば、現在のサラウンド(90度)とサラウンドバック(135度)の位置はそのままに、両者の間、つまり、112.5度の位置にサラウンドSPを置いたことと同じ効果があると。

 

でも、これも前に書いたことで、「幽霊」はダメですよね?と入交さんに言うと、「人間は真横より後ろの定位感は甘いのです。特にClassicを聴くのであれば、そこには普通はホールからの反射音や残響音しか入っていないはずでこれらは音像定位とは無縁なため、全く問題ありません」。

 

まあ、「教祖様」(笑)が太鼓判を押してくれれば、それを信じて実行するのが「信者」というものですが(笑)、実はこの助言を受けてから1年近く、捨て置いたんです(汗)。

 

その理由は、「パラレル接続にすればいい」って簡単に言いますけど(汗)、それってスピーカーとアンプのケーブルを繋ぎ変えるってことですよね?それをまさか、9.1ch AuroRoonで再生するときだけにいちいちやるんですか?11.1ch Auroのときはまた戻すと?BDの時も?

 

・・・やってらんねぇ(笑) それならまだ、ドア前にゴロゴロとSPを移動するほうがマシですよねぇ(笑)。

 

しかし、今回、見つけてしまったんです!私のStormって、サラウンド(だけじゃないが)を複数台設定できるということを。これは、自宅でのパーティー文化のあるアメリカなんかでは、大きな部屋に10人ぐらいのお客さんを入れてみんなで映画を見る、なんていう使い方があるのに対応している機能のようです。つまり、サービスエリアを広げるために、1chのソースを複数のSPで再生する機能がBuilt-inされているのです。

 P(これ、右側にある、"Configuration"に注目。Rs(右サラウンドのこと)とLs(同左)が、1と2と、二つある!)

20250312-114929

しかも、アンプと複数SPをパラレルに接続する方法では不可能な、当該SP間の音圧やf特などの調整もバラバラに行える(AVプリから別々にバランス接続されているため)ことが判明しました。拙宅の場合、サラウンド(Sonetto VIII)と、サラウンドバック(Sonetto II)が同じSPではないため、パラ接続しても「正確には」1台とみなせることはないのは素人的にもわかっていて、それゆえ以前のサラウンドバックがAmator IIIだったこともあって、この「パラ接続」は見送っていたのです。

 

しかし、Dirac Liveがきっちり別々に測定したうえで、「Sonetto VIII」と「Sonetto II」を<1台のサラウンドSP>として調整してくれる機能がある(実は、この機能は、映画を見る際にスクリーン上下のSonetto IVirtual Centerを形成しているものと同じだった…)ことを知り、これなら面倒な配線も切り替えも必要なく実現できるため、Why not? と今回やってみたわけです。

 

で、無事、Roon Bridge経由の9.1chソースの再生でもサラウンドバックからも音が出るようになり、イマーシブ感がUP!これで、配線の繋ぎ変えも、ゴロゴロとSPも移動することも無く、PC画面からConfigを切り替えるだけで第一層が5chのときは112.5度の位置にVirtualサラウンドSPを置く設定に変更できるようになりました。

P(上記と同じソフトをRoon Bridge経由で再生したところ。Inputsは5ch設定になっているためLRBが無いが、OutputsのLRSが「4ペア」出力されている点に注目。これは、3Wayマルチアンプ出力+もうワンセットのLRS=サラウンドバック用のSPに出力があること示している)

20250312-184058  

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3つめの、チャンデバ設定の再々再々…調整(笑)と、それを反映したDirac LiveART)の設定ですが、前も書きましたが、このところ、「チャンデバいじり遊び」をやりすぎて(笑)、<怪人二十面相>状態、つまり、「どれが本当の自分の顔だったのか?」がわからなくなってきた部分がありまして(汗)。

 

自分でも、「なんか、前の音とは違っているな、ちょっとたまに嫌な音がするなあ」ぐらいの認識はあったのですが、この春休み中のオフ会で、Siltechさんと、K&Kさんに「前来た時より、音がおかしい」というようなご指摘を受け、自覚・納得する部分があったのです。

 

そこで、1の、STA-9のシングル使いにすることでBTLに比してゲインが二分の一になるので、理論的には6㏈下げる必要があることもあり、この際、昔Myuさんと一緒にユニット別のImpulse応答をみて設定したDelay値(これが王道。その後f特をみながらこれをいじったのは完全に邪道…)に戻し、これを基本としながら、サラウンドのDelay値は、LCRとの距離差をレーザーセッターで測定したうえで、理論値を計算し、それを当てはめました。音圧に関しては、測定値をベースにしつつも、それを自分の耳で微調整しました(入交さんもこの方法を推薦されている。オーナー=人間=の耳は、マイクとは異なり、形や向き、感度に至るまで左右差があるため)。

 

そしてこのマニュアルで設定したパラメーターを入れたうえで、Dirac Liveの測定を行い、ARTを適用したのです。

 

お恥ずかしい話ですが(汗)、実はこれまでは、「Dirac Liveは何でも調整してくれるのだから、パラメーターはDefault値のままで測定だけして後はお任せでいいんだ」と思い込んでいたのです。ゆえに、前回DLを回してARTを設定したときには、その前に「遊んでいた」メチャクチャな(汗)パラメーターのまま、DLを適用していました(理論上、ウーファーだけが数メートル前にあるようなパラメーターだった・・・)。ここだけの話(笑)、3月のオフ会のお客さんたちにはこれを聴かせていた・・・(大汗!)

先日、別件で、Dirac Liveのカスタマーサービスとメールで遣り取りをすることがあり、そのときに、念の為に(笑)、「チャンデバで使っているんだけど、ユニット別のパラメーターはそっちで設定してくれるんだよね?」と確認してみたんです。

 すると、「DLはマルチアンプシステムのユニット別の測定とそれを元にした調整はしていない。<完成されたMulti-Wayスピーカー>として認識して、そのf特や他のSPとの位相調整は行うが、ユニット間のDelayや音圧の差は、DLを適用する前に、マニュアルで調整することを推奨する」との回答が来たんです!

 

「正しい」パラメーター入力後にDirac Live(ART)を適用した音は、Beforeの設定を残しているのでPC上で簡単に切り替えて聴き比べができますが、DLらしい、「パリッとした空気感」がより出たのがわかります。Stormのチャンデバ機能を使う場合は、Dirac Liveに完全お任せするのではなく、ちゃんと測定の上でパラメーターを設定してから、AI補正に委ねる必要があることを理解した次第です・・・(Trinnovはどうなんだろう?)

 

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一連のオフ会<後>にこれら3つの改良?をしたのは、言うまでもなくオフ会<前>にやってみて変な音になって元に戻せなくなったら目も当てられないからです。幸い、この3つの効果はとても大きく、今は、<ものすごくまともな音、クセのない普通の良い音(笑)>になりました。

 

この春休みに、せっかく来ていただいたお客様方には大変申し訳ない(大汗)。また機会があれば「違い」を確かめにお越しください!

2025年3月 7日 (金)

Auro-3Dに向かない💦システム(環境)考

この「友の会」の主目的は、左側の「関連リンク集」の中の、「Auro-3D友の会」について、にありますようにAuro-3Dというイマーシヴオーディオフォーマットを使った<音楽鑑賞>(映画ではない)に対する「啓蒙・普及」なので、基本的には「アゲアゲ」の情報ばかりを書いてきました。しかし、正直に申し上げれば、「Auro-3D」及び疑似的にAuro-3Dらしく拡張する「Auro-Matic」は、あらゆる音源や装置、部屋においても<万能>、というわけではなく、はっきり申し上げて全く<向かない>ソフトやハード(環境)もあることは、比較的早い段階からある程度の経験値を積み上げてきたものとしては認めざるを得ません。

 

ソフト面については、Auro-3Dに向かない「音楽の嗜好」については、左サイド「関連リンク集」の中の「アナタのAuro-3Dチェックリスト!」で確認できますし、Auro-Maticに向かない「ソース」については前回書いたばかりですので、今回は、Auro-3Dに向かない「ハード」(環境)面について自分のこれまでの経験からまとめてみたいと思います。

 

つい先日もなのですが、「Auro-3D友の会」の会長として、これまで私は、会員・非会員含め、いろいろな方のお宅で、“完成”したとオーナーは考えている(笑)Auro-3Dのシステムの音を聴いたり、「見よう見まねでやってみたから助言をくれ」と招かれたり、またこれからAuro-3Dに挑戦しようとしている人の現状のシステム(2ch5chATMOSなど)を聴いて、「どうすれば、これを完成度の高いAuro-3Dシステムに持っていけるか?」と尋ねられたり、「今度新築をする。イマーシブオーディオも楽しめるようにしたいので相談に乗ってくれ」と設計図を見せられたり-と色々な状況やシステムでのAuro-3Dを聴いてきました。

 

かくして、もしかすると、「Auro-3Dのシステム(部屋も含む概念)の良し悪しに関する経験値」だけは、その辺のATMOS一辺倒のAVショップのインストーラーよりは高いかも?(笑)、という自負がないわけではありません(笑)

 

さて、その私が、自身の独断と偏見が排除できないことを十分自覚しながらも(汗)、ここまでの記事の逆張りの集大成(笑)として、「ダメ考」を論じてみたいと思います。

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<一番、Auro-3Dのシステム構築がうまく行かないケースとは?>

 

1)元々2chステレオで「音楽」を聴く趣味があり、すでに相当、そのシステムに投資(金額的にも時間的にも)している。そのため、それ以外のSPのサイズやクオリティが、「相対的に」かなり劣っている

2)LR以外のSPの設置の自由度がほとんどない

 

 

1は、「往年のオーディオマニア」に非常に多いパターン。何十年も精魂込めて磨き上げてきた、<ハイエンドオーディオ>をお持ちの方が、「最近流行りのイマーシブオーディオというのもかじってみようか?」と思って、そこら辺に転がっている(ベテランの方であればあるほど、部屋の片隅や物置に、昔買って今は聴いていないフロア型やブックシェルフ型のSPをたくさんお持ち!)SPを、「再活用(廃品利用?=笑)」しようとするケース。こうなると、100%、「LR2chで再生する方が音質・音色がいい」結果となり、結局せっかく構築したAuro-3Dシステムを聴くことが無くなっていきます。

 

「映画鑑賞用」を兼ねたシステムUPであれば、これでもいいのです。映画の場合は、要は後ろからとか、上からの「銃撃音」や「飛行機のエンジン音」が聞こえればいいので、それぞれのスピーカーは、「他のスピーカーと同じ音を出す」ことが少ない。つまり、はっきり言えば、「そこから<音>が出ていることが重要」であって、その音色が他のSPと多少違っていても気にならないのです。特に映画の場合は映像があるので、脳は70パーセント以上視覚に支配されていますから、前と後ろの音色の違いなんて意識のうちに入ってきません。

 

ところで、LR2ch音楽を聴いている方で、左右で異なるSPを入れている人は見たことがありませんよね。それはLRの「間」に音像が形成されるために、LRの能力や音色が揃っていないと上手くファントム合成されないからです。当たり前のことで、「お前は何を言っているんだ?」と言われそうです(汗)。

 

しかし、ではこれを「マルチ化」する際に、上下左右およびセンターのスピーカーとLRが揃って無いことに無頓着な方(汗)が多いのはなぜなのでしょうか?

 

先に述べた「映画」ではなく、「音楽」をマルチで楽しむ場合、録音側はファントム合成させる音像を、LRの間だけでなく、LとC、LSLLとハイトLとの間にも作り込んでいます。にもかかわらず、LR<だけ>同じSPにして、L、C、SL、ハイトLと別々のスピーカーを使っていることがいかに無茶苦茶なことか!これらの<間には音が無い>とでも???(笑)

 

つまり、LRとそれ以外のSPの間に、能力や音色に差があればあるほど、「LRだけでの再生音」の方がクオリティが高い、と感じるのは当たり前なのです。プロのオペラ歌手二人に音痴のド素人が数人加わった「合唱」より、オペラ歌手二人だけの「Duet」の方が素敵に聴こえるのは当然に決まっていますよね!(笑) ですから「ハイエンドLR」に、数段落ちる「その他大勢」のSPを配したAuro-3Dの音は、「下手な歌い手に足を引っ張られる合唱」となるんです。

 

ここは「勘違いしやすい」ので、換言すると、マルチチャンネルシステムは、サッカーやラグビーのような「チームプレー」スポーツに似ているところがあって、スターだけが目立っているチームより、プレーヤーの粒が一定上のクオリティで揃っている方が<強い>=音がいい、ということなんです。もう何度も書いていますが、私は熱海の入交さんの仕事場に度々伺っています。そこはプロ用の専用スタジオとして設計された部屋ではない、普通のマンションの一室なので、モニター用にお使いのSPはエクリプスの「目玉のおやじ」(笑)という、はっきり言って、先に書いた「オーディオベテランマニアの家に転がっている、今は使っていないSP」よりもお値段だけで言えば多分「安物」で、f特などの性能も低いと思います。

 

で、その件の典型的なマニア宅、例えばLRは数百万円レベルの4Way巨大フロア型、それ以外のSPは数十万円レベルの2Wayブックシェルフ(=「目玉のおやじ」よりは高い!)で揃えているシステムの音と、入交さんの仕事場の音を聴き比べると・・・(何度も経験してます、ワタシ・・・)

 

これ、前者はお互いの良さを下手すると消し合ってしまったり、LR支配の音場・音質に変な残響音が付いたりといった、「足し算」ではなく「引き算」になることが往々にして発生するのです。もちろんセッティングの差もあるとは思うのですが、後者の方は、特に「音場感」というAuro-3Dならではの部分で、「毛利の三本の矢」(笑)のように、<同じ矢が揃っている>ということが「足し算」どころか「掛け算」の効果を生むんです!

 

この、「引き算」と「掛け算」の違いを生む原因は、先の音色の違い(≒周波数特性)ともう一つ、異なるSP=異なる位相特性という問題が隠れているのです。「位相」については私の「永遠のテーマ」(笑)ではあるのですが、ここで詳しくは書きません(あと5000字ぐらい必要だから=汗)。ただ、異なるSP=異なるクロスオーバー周波数+異なるネットワーク特性(スロープなど)=異なる位相特性(時に、逆相のユニットが混じっていることも!)となり、この異なるSPを組み合わせることによる位相特性の違いが、相互に低域や高域の音を強調しあったり、逆に弱めあったりするのです。

 

これがマルチチャンネルシステムの怖いところで、「総額で上回っているシステムのほうが音がいいとは限らない」という怪現象?が、SPの数(種類)が多いために、2chシステム以上に頻発するのです。だから、LRだけ他よりいいSPを使い、他よりいい場所にセッティングしている「LR中心主義」のところは、よほどの工夫を凝らさない限り、2chソースのAuro-Matic再生はともかく、<13ch音楽=Auro-3DのNativeソース=の再生システムとしてはイマイチ>になる事が多い傾向があります(これに気づかれ、Auroをあきらめ、2chの世界に戻って行かれた方もいます)。

 

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次に、2の「LR以外のSPの設置の自由度がほとんどない」という状況は、部屋が狭いわりに、動かせない窓・ドア・家具などが多い場合によくあるケースで、つまりリスニングルームにおいて、LR以外は「ここにしかSPを置けない」状況であることを意味していますが、こういう状況の場合は、オーディオ的には二つの問題を内包します。

 

一つは、特にAuro-3Dは「チャンネルベース」で録音がされているので、スピーカーの位置(Max13ch)が、厳密に定義されています(左サイドにAuro-3D®導入マニュアル」へのリンクがありますので、確認してみてください)。ここで定義されている位置=角度には「方位角」と「仰角」があり、さらには「SP面の向き」まで決められています。ご存知のように、2chも同じように「チャンネルベース」で録音されていますので、リスニングポイント(LP)から左右のSPとの距離は等距離、LRの開き角は原則各30度、と「SPを置く位置が決められている」のと全く同じです。

 

この「決められた位置」に家具や窓・ドアなどがあって、SPをどうしても「そこには置けない」場合は、私の経験から、再生される音質・音像・音場を大きく損ねると断言できます。これは2chステレオで、「LRが狭すぎる、広すぎる、LPとの距離が左右バラバラ」、といった設置しかできない場合に、どういう音がするかを考えればすぐにわかることです。Auro-3Dに取り組むのであれば、まずは部屋にこれらのSP群を「正しい位置」におけるスペースがあるかを確認してからにすべきです。

実は私自身も、伊豆の部屋において最初からAuro-3D配置のSP群を揃えたわけではなく、「映画用に」7chマルチを設置してあった(ただし、いわゆる「第二層」に)部屋をUpgradeしたものです。当初AVアンプを買い替えようと思って調べていたら、Auro-3Dというオーディオフォーマットがあることを知り、その求めるSP配置をほとんど労なくしてほぼ完ぺきに伊豆の部屋なら実現できる(第二層にある各SPの真下の床の上にSPを配置して、VOGを増設するだけ)ことに気づいて、「面白そうだからやってみよう」と思い、当時出たばかりのマランツの8805を購入してみたのです。つまり、私の場合は、「Auro-3D(Matic)を聴きたいからチャレンジした」(そもそも聴く機会は当時どこにもなかった…)、というより(笑)、「手持ちの部屋がAuro-3Dの求めるSP配置にぴったりのスペース!」ということから興味本位で導入してみた、というのが真相です(汗)。

 

ちなみに、一部AVアンプで、「SP位置をファントム補正する」機能が付いているものがありますが、ファントム(幽霊)が、リアル(実スピーカー)と「同等」の機能を持つ、と信じている方は、少なくとも<オーディオマニア>にはおられないでしょう(笑)。「実SPを正しい位置に設置すること」は、Director's intentionを再現する基本的な第一歩なので、「友の会会長」(笑)的には絶対に譲れないところです。

 

もう一つ、「ここにしか置けない」場合のオーディオ的に大きな問題は、「そのピンポイントの場所が、SP設置にふさわしい条件を備えているとは限らない」という点です。これは1とも関連していますが、LR<だけ>、オーディオ的に理想的な設置をしても、それ以外のSPの設置位置や方法が「オーディオ的にダメダメ」な設置位置・方法であれば、たとえ、全てを<同じスピーカー>で揃えたとしても、<同じ音>が出てこないからです。

 

「オーディオ的にダメダメ」なSPの設置位置・方法というのは、オーディオ歴の長い方ならよくご存知のように、例えば、部屋の上下のコーナーにぴったりくっつけている、とか、タンスの上、本棚の中のような、強度不足で低音が共振しやすいところやSP周りに空スペースがほとんどないようなところにSPを置いているようなケースです。

 

音というのは360度に広がる性質があるので、「理想的には」スピーカーは空間にぽっかり浮いているのがベストなのです。しかし、普通はそのような設置は非常に難しく、床の上とか、壁かけとか、天井から吊るす、など、一つの面(床・壁・天井)を利用して固定するしかありません。ただ、この<面>はSPの近くには少なければ少ない方が反射音の影響を減らせて音質的には良いことは2chの世界ではよく知られていることなのですが、なぜか、マルチ・3Dになるとこの「原則」を忘れてしまう方が多いようで(笑)、「ここにしか置けない」ことを言い訳(笑)にして、二つや三つの<面>に囲まれるような位置にSPを設置している方がよくおられます。

 

また、音は空気を振動させることで伝達するので、SPは「振動発生装置」なのですが、その振動による「共振」がエンクロージャーでとどまらず、SPが触れている床や、SPの近くの壁などで発生すると、音を濁らせるわけです。

 

この設置位置の強度(共振)とスペース(反射)の重要性については、先日の「イマーシブオーディオの再生技法」のセミナーでも、講師の入交さんが、「何千万円という装置を持っていても部屋が安普請で共振するような状況ではいい音はしない」、「すべてのSPをすべての壁から最低1M離せば反射の影響をほぼ無視できる」と指摘しておられました。

 

特に重要なことは、このSPを囲む<面>の多い少ないや近い遠いの違い(=反射)で、また、接地面(床・壁・天井)の強度(=共振)の違いによって、同じスピーカーでも音が全く異なってしまう(=音の汚し方が異なってしまう)点です。これはつまり、たとえせっかく同じSPを準備しても、「同じ設置環境=SP周りの空間の状態」を準備できない限り、1で指摘したのと同様の、「LRに異なるSPを使っているがごとし」の状態になることがお分かりになると思います(2chのマニアレベルの人で、Lは部屋のコーナーにピッタリくっつけて、Rは部屋のど真ん中で空間たっぷり、なんてセッティングをしている人はいません!)。

 

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以上をまとめて結論的に言えば、1.同質・同レベルのスピーカーを揃えられない 2.正しい位置(方位角・仰角)にSPを置けない 3.SPの設置環境(反射や共振のクオリティ)を揃えられない―の3重苦>が揃ってしまっているような最悪のケースでは、Auro-3Dフォーマットでの音楽再生に取り組んでも音質・音像・音場すべての再生品質に不満が出るだけです、残念ながら。この場合は、マルチは映画用と割り切って、音楽はLR2chで楽しむ方が「音質」や「音像」の面からはベターだというのが、私のこれまでの経験から言えることなのです。

 

もちろん、これを仕事にしているプロは別にして、趣味でしているアマチュアでこの3条件を完璧に揃えている方は、実際には「Auro-3D友の会会員」といえども、会長の私自身を含め一人もおられません。この「3条件」のなかで、2の「位置・角度」はレーザー測定器などで距離を測定したうえで、三角関数を使えば簡単に角度が出せるので、それでチェックできるとして、1と3の音色に関わる部分において、それが自分のシステムで整っているかどうかを測定器を使わずにTestするもっとも簡単な方法は、各スピーカーからピンクノイズを個別に出して、LPにおいて当該SPに正対して自分の耳で聴いて判定することです。

その際、重要なことは、LPに於いて正面(センターSP)に顔を向けたままの姿勢で各chからの音の聴き比べをするのではなく、一台一台、音を出しているSPを正面に捉えて聴き比べをする、ということです(顔・耳の向きで音が変わるため)。これが「すべて同じ音」に聞こえれば100点満点ですが、普通は、「こっちは高音が強く、こっちは低音が強い」ってな感じになるはずです(たとえ同じSPでも)。

この音色や、位相特性は、先日お邪魔したハイエンダーのシステムでも、もちろん私の伊豆のシステムでも完全には揃っていません。これを揃える最も簡易な方法は、最近のAVアンプなら必ず内蔵されている「自動f特補正」(位相特性の補正はソフトによる=私はそのためにAVプリをStormに買い替えた)を利用することですが、マニアの方々は往々にしてそれを良しとせず(汗)、あくまでも物理的な方法による「100点満点」を目標にして、様々な工夫で<高み>に近づける不断の努力をしておられるようです(笑)。我々「友の会」の皆さんも、オーディオ道何十年(笑)というベテラン揃いなので、一つや二つ程度の<欠点>ならテクニックで補う、ということに日々挑戦しておられます(詳しくは、このブログの<実践編>を御覧ください)。

 

ただ、上記悪条件が三つとも揃うと、さすがにカウントThreeKO(笑)、どんなテクニックでも、どんな補正ソフトでも限界がありますから。再起をするなら、1.今あるSPを売り払って、なるべく同じSPを買い揃える(実際、実行された会員がおられます=汗) 2.部屋を建て替える(これも実際、実行された会員がおられます=汗)―という「大手術」をするしかありません。「たかが音楽を聴くのにそこまでは・・・」という方が、「せっかくたくさんSPを設置したのに、こんな音?」とがっかりされて、それを「Auro-3Dっていい音しない!」とフォーマットのせいにされても・・・(泣)。

 

2025年2月21日 (金)

改めて、WOWOWのセミナーでの入交氏の「結論」の確認と、Auro-3Dの第一層のSP配置について

先日の入交さんと共同企画したWOWOWでのセミナーには、二日間で延べ50人ほどの方にご参加いただきました。その中の少なくない方が、イマーシブオーディオ界のインフルエンサー(笑)だと拝察しており、あそこで学んだことを「拡散」していっていただけることを、Auro-3Dの普及を目的の一つとしている「Auro-3D友の会」の会長としては期待しております。

 

ただ、これまでに二日間のどちらかに参加された方に「セミナーで何を学ばれましたか?」と伺うと、こちらが期待する答えが必ずしも返ってこないことが企画側としては気になっておりまして(汗)。

 

入交さんと一緒に作成した「進行案」(台本)には、はっきりとしたメッセージを送り出そう、ということが書かれているにもかかわらず、必ずしも伝わっていないような・・・。

 

確かにお話は音響理論から始まって、プロ品質の「純正13chAuro-3D音源」と、2ch5chATMOS22.2chとの聴き比べなどがあり、その間(後?)にスピーカーの配置に関する説明があるなど、盛りだくさんでしたので、参加者の興味関心によって、強く記憶に残っているポイントが異なるのはある意味当然です。

 

しかし、企画側の狙いとしては(汗)、セミナーの案内文にも書きました通り、「Dolby ATMOSAuro-3Dなど、多様なフォーマットが存在しているにもかかわらず、それぞれの特徴や、セッティング方法の違いなどを「正しく」理解・実践している方は少な」い現状に対し、<理論的・実践的に考えて>何が最も「正しい」実践方法なのか?をお示しすることにありました。

 

そして、その方法とは、「規格が乱立するイマーシヴオーディオ(音楽再生方式)ではあるが、Auro-3Dが定義するSP配置が最も音響理論的に合理的であるため、Auro-3Dのルールに準拠したSP配置をしておいて、ATMOS<>楽しむようにするのが現時点ではベスト」ということで、これは進行案メモに書いてあったんです!!!(Auro-3Dの何たるかに無知なAVショップのインストーラーに任せると、AVアンプ=映画=ATMOSとの固定観念から断りもなくATMOS配置にSPを設置して(恐らく、不勉強でそれしか知らない=泣)、「これでAuro-3D<も>楽しめますよ」、と言ってくるので、AmazonやAppleの「イマーシヴオーディオ」(音楽再生)をメインにしたい方はくれぐれもご注意!!! 2chソースのUp MixはAuro-Maticがベストだとお感じになっている方は多いと思いますが、ATMOS配置でAuro-3D(Matic)にしても「いい音」しませんから(汗)。ATMOS音源でもいい音が楽しみたいのならAuro-3D配置一択!シーリングSPなんか使ったらホテルのロビーのBGMレベルの音です(笑) これは入交さんと我々「友の会」の完全共通見解です!)

 

これ、入交さんは当日、ちゃんと強調されたと思うのですが・・・記憶に残ってない方も散見されますので(汗)、ここに改めて、はっきり・きっぱり(笑)書いておきますね!

 

さて、ここから先が本日の新ネタです(笑)。

 

先日、セミナーに参加されたK&Kさんが追加的な質問がある、ということで、入交さんとの3人でメールのやり取りをしまして。以下はそのやり取りに基づき脚色したものです(著作権は入交さんにあり、ここで公表することに関し、ご本人の許可はいただいております)。

 

私は今回のメールの中で、せっかく13chすべてをSonettoにしたこともあり、「やるならさらに<完璧>を追求!」とAuro-3Dの第一層を7chとする場合のSP配置において、前から気になっていたことを議論させていただいたのです。

 

何度も書いてますように、伊豆の拙宅には、これまで入交さんに度々お越しいただいており、その度にSP配置のチェックを受けて今に至っています。拙宅のシステムは「友の会」の横綱級の方々の装置に比べれば、「小結」程度なのですが、唯一、その横綱に土を付けられる点があるとしたら(笑)、拙宅は「入交さん手ずからのセッティング」である、という点であることはもう何度も書きました。

 

http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2024/09/post-84e82d.html

http://koutarou.way-nifty.com/auro3d/2022/12/post-a2b624.html

https://philm-community.com/auro3d/user/diary/2022/09/23/9861/

 

しかし、いままで34回ほどお見えになっていただいているのですが、実はその度毎に「サラウンドバック」(以下、Auro-3Dのマニュアル表記に従い、LrsRrsと表示)の位置が微妙に違っていたんです。拙宅ではLrsRrsについて、「どのスピーカーを使って、どこに置くか」にずっと悩んでいて、ある時は後方の出窓を大工さんに広げてもらった「棚」の上にSonetto Iを置いたり、ある時はキャスターに乗せたAmator IIIをサラウンドバックにしたり。でもその位置や開き角(同マニュアルでは「方位角」とありますので、この記事中では「方位角」を以下、使用)は、都度、バラバラでした。

 

入交さんも、拙宅で、LrsRrsについては特に厳しいご指摘をされなかったのです(LCRについては、「2度」ズレている、とまで言われたのに・・・)。その理由はセミナーの時も説明しておられたように、「人間は後ろからの音の定位感は甘い」ためで、「できるだけ7chを等距離に配置して」、LrsRrsの方位角は、我々「友の会」が翻訳したAuro-3Dの「マニュアル」 にあるように、「135度から155度の間に入っていればいいですよ」とのことだったのです。

 

拙宅では残念ながら部屋の形状から7chの等距離配置は難しく(やろうと思えば、半径1.5Mぐらいの小さな空間になってしまうが、Sonetto VIIIにこの距離で囲まれると圧迫感がハンパでなく、心理的にイヤ=笑)、仕方なくAVプリ側でDelayをかけているのですが、その分、方位角だけは正規のものにしようと心がけてきました。

 

しかし、これも以前彼と議論したことがあるんですが、Auro-3Dのマニュアルに書いてある「サラウンド」(以下、同様にLsRsと表示)の方位角って、「90度-135度」って書いてあって、なぜかここだけやたら許容範囲が広いんですよね!(他のSP20度ぐらいしかAllowanceが無いのに、サラウンドだけ45度もある!)

 

なんですかい、<135度>だったらLsRsLrsRrsを同じところにおいてもいいってんですかい?(笑)と、江戸っ子調に突っ込みを入れたくなりますよね。

 

今回、入交さんとのメールのやり取りで分かったことは、「第一層を7chにした場合の、LsRsとLrsRrsの位置については、業界レベルで統一されたものが無い」ということ!

 

皆さんよくご存じのように、5.1chにはITU基準という世界的な基準があり、C=0度,LR=30度、LsRs110度となっています。

 

じゃあ、これにLrsRrsを足して7chにするなら?

 

「マニュアル」では、それは150度の位置に増設、ということになっています(いずれも「標準値」)。つまり、Auroの正規の第一層7chの標準位置は、LsRs=110度、LrsRrs=150度となっています。

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(「Auro-3D友の会」編Auro-3D導入マニュアルver.1 p.20より引用)

しかし、実はこの150度っていうのは、入交さんによると、「110°と150°と表示されているのは、5.1chのサラウンドチャンネルをデフューズ(パラで鳴らす)する場合の基準」だそうで、これはパラレル接続ということは二つの距離が等しければそのど真ん中にレベル差定位をしますから、要するに「130度」。ここで先に書いた、LsRsLrsRrsの方位角の上限と下限が重なっているのはこれに近い、「135度」であることに気が付かれましたでしょうか?

 

「マニュアル」には方位角の標準値としてはどこにも入っていない「135度」ですが、実はこのように「強く意識されている角度」(笑)なんです。

 

ここに目を付けた?のがATMOSで(笑)、ATMOSで第一層を7chにする場合は、入交さんによると「暗示的にLsRsが±90°で、LrsRrsは±135°を推奨して」いるそうです。

 

Dolby-atmos

(DolbyのHPより引用)これ、確かによく見ると、サラウンドSPは90度、サラウンドバックSPは135度に位置に描いてある!

 

そしてここが大事なところで、「人は後ろ側の定位閾値が大きい、すなわち定位感覚が鈍いことを考えると(第一層のSP配置に関しては)Atmosの方が良い」。特に音楽の場合は通常は前からの音に集中するので、「正面側の定位感覚が鋭い方のスピーカー密度を上げる方がコストパフォーマンスが高い」とのこと。

 

うーん、これは新知見!確かにこれまでも何度も書いてきた通り、第一層が7chの場合のLsRsの方位角は、「90度」つまりLPの真横がいい、というのは入交さんの従来からの主張ですし、彼の仕事場のモニターSPの配置もこうなっています(つまり少なくとも入交さんが制作されたAuro音源は、LsRs90度に置いていないとDirector’s intention通りに再生されない)。

 

しかし、LrsRrsについては、私は「マニュアル」の標準値である150度がいいのかな、と思ってこれまで実践してきました。これだと、LsRs90度に置けば、ちょうど60度刻みできれいにLrsRrsが並ぶし、LRLPを挟んで対角に位置することになるので、「なんとなく(笑)合理的で、美しい配置」のような気がしていましたが・・・。

 

ところがです、「人間は前の音に敏感で後ろの音には鈍いので、前重視!」という入交さんのロジックは、なるほど説得的です。

 

ただし、入交さんは、「プロの場合、9.1ch5.1chとの互換性まで考えなくてはいけませんので、左右を±100LbRbを±135°とすることが多いと思います。この配置で作成する所が多いので、再生も同じようにするのがよろしいかと思います」と、<どの録音エンジニアの作品でも許容できるようにするためには>LsRsを100度、LrsRrsを135度を推薦されておられるようです。

 

しかし、「Auro-3D推進派」(笑)の入交さんが、第一層のLsRsLrsRrsの方位角については、「ATMOSの方が優れている」とまで言われたことの重みは相当なもので、彼個人はそう考えていることが伺えました。

 

ということで、<生粋の入交教信者>を自任する私は(爆)、LsRsを90度のままにして、Sonetto IITAOCのキャスター付きの台に乗せたLrsRrsをこれまでの150度から135度に速攻で移動させました!

 

p この写真は、LPのほぼ真上から見る、サラウンド(90度)とサラウンドバック(135度)の位置関係

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P 椅子の下にある白いテープがLP (この真上の梁の、さらに上にTOPがある)

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この「新配置」で、早速いくつかのAuro-3D Nativeソースを聴いてみました。不思議なのは、「後ろのSPの配置を変えた」はずなのに、「前から来る音、前にある音」の音場・音像が変わったと感じたことです。でも最もはっきりとした効果を感じたのは、フォッサマグナツアーの課題曲にも選んだ『Polarityで、 LsRsLrsRrsの「間」にいくつかの音がはっきりと定位して感じられる曲が増えたのです。言うまでもなく、従来この二つのSPの開き角は60度だったものが、今回45度になったわけですから、「定位感の鈍い」後方の音とはいえ真後ろではなく左右斜め後方であり、かつ45度の狭さの間なら、ある程度くっきりと知覚できるようです。その代わり、頭の真後ろの2台のSPの開き角は従来の60度から、90度に開いたわけですが、ここには「真後ろ」に音源(ここではドラム)があるものの、その定位感は変わりませんでした。やはり入交さんがおっしゃる通り、後ろの音は「ここがシンバル、ここにタムタム」と10センチ刻みで位置が分かるような定位感は無いらしく、90度でも60度でも「まあ、後ろにドラムセットがあるよな」程度で変わらず、それで十分でした。

 

P サラウンドバック(Sonetto I)はこのようにかなり開き角が大きくなるのが「正解」(正面上下にある4台のSPはATMOS=映画用)

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以上、ここまでの結論をまとめますと(笑)、

 

1.第一層が7chの場合は、ATMOS配置がよい(LsRs=±90°、LrsRrs=±135°)

2.第二層は、Auro-3D配置がよい(仰角、スピーカーの向き、垂直配置など)

 

【おまけ】

 

実は、私はリラックスしてAuro-3Dを聴きたいときは、べスポジより、数十センチ下がったところで「本を読みながら」とか「パソコンをやりながら=今も=笑」聴くのが好きなんです。で今回、入交さんが、サラウンドの位置について、「正面に正対して聴くとき、音楽の拡がりという観点からは(中略)、後ろに定位が必要無ければ、±7090°が良いくらいです」と書いてこられ、「おお、これは私の好きなリスニングポジションのことじゃん!」と膝を打ったのです。

 

私が好きな音源はClassicなので、「後ろに定位」が無ければならないものはほとんどありません(Tacetレーベルの室内楽なんかで、たまーに、右後ろにチェロ、左後ろにコントラバスみたいな録音があるが=笑)。そして、LPを数十センチ下げるという行為は、まさにサラウンドSPが斜め前に来ることになるわけで、方位角は70度ぐらいになっているかもしれません(その分、LRの開き角が狭くなり、逆にLrsRrsの開き角が広くなるが)。

 

拙宅の場合、TOPVOG)を2台使っているのでサービスエリアが縦に長いのもありますが、コンサートホールの真ん中やや後ろ目(=私の好きなポジション!)でやや遠めのオケを見ながら聴いている感じがして、なかなかいいですよ!是非、お試しあれ!!!

2025年2月 4日 (火)

日本のイマーシブオーディオブームは、ここから始まる?(笑)

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(写真はX1おやじさん提供)

 

先にご案内しました、「直伝 イマーシブ・オーディオ再生技法」セミナーは、2月2日(日曜日)、3日(月曜日)の二日間、WOWOWのスタジオで開催され、無事終了いたしました。

 
詳細につきましては、友の会のDonguriさんがすでに詳細なご報告をネット上にUPしてくれておられます。またFacebookの「イマーシブオーディオ同好会」のグループでも、友の会のグランドスラムさんがご報告をされております。どちらもリンクを張っておきますので、ご覧ください。

 

入交さんと二人で昨年末から企画を練っていたにもかかわらず(汗)、残念ながら初日は仕事でセミナーには参加できなかったのですが終了後の懇親会には参加、二日目はセミナーの司会を務め、懇親会でもしっかり「司会」を務めさせていただきました(笑)。

 

どちらの日程も定員の25名がすぐに満員になる盛況ぶりで、やはりストリーミングでイマーシブオーディオ配信が始まったことで、エンドユーザーも業界の方々もにわかに関心が高まっているということを実感し、Auro-3D友の会の面々は「ようやく時代が我々に追いついてきたか!=笑」と大喜び?で準備を頑張りました!

 

今回は特に、業界関係者の方々の参加が目立ち、オーディオメーカーからはSonyとFostex、オーディオショップからは、ダイナミックオーディオ、SISオーディオ、オリオスペック、AURAS、サウンドラインモノリス、ハイファイ堂、マイクロファラッドからのご参加がありました。その他に音楽業界からは東京芸大(バイオリニスト)と新国立劇場から、さらに、オーディオマスコミ関連ではステレオサウンド、音元出版からのご参加がありました。また、オーディオ評論家の麻倉先生、山之内先生、土方先生のお三方には、ご参加いただいただけでなく、セミナーの進行に於いて司会やコメントを頂戴いたしました。この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。

 

今回は、これまで何度か伊豆の家をお互いに行き来してご助言をいただいてきた入交さんが年度末でWOWOWを離れて独立されるため、友の会としてはWOWOWにおける最後の入交さんとの共同イベントになりました。

 

今回のセミナーがここまでの盛況となったのは、我々の努力もさることながら、入交さんという、「イマーシブオーディオ界のBig Name」あってのことです。

 

今回のセミナーが、「日本のイマーシブオーディオブームは、ここから始まった!」と後世になって語られるべく(笑)、我々友の会としても、今後の入交さんの益々のご活躍をサポートしつつAuro-3Dの良さを広く知らしめるよう、努力していきたいと思っております!!!

2025年1月 6日 (月)

「直伝 イマーシブ・オーディオ再生技法」セミナーのご案内

「直伝 イマーシブ・オーディオ再生技法」セミナー

 

講師:入交英雄氏 (WOWOWエグゼクティブ・クリエイター)

日時:22日(日曜日)、3日(月曜日) 14時~16時(両日とも)

会場:WOWOW 辰巳放送センター・オムニクロススタジオ(東京都江東区)

主催:イマーシブオーディオ同好会(協賛:Auro-3D友の会)

参加無料・要事前申し込み(各日最大25名。先着順。1月27日締切)

 

→満席になりましたので、両日とも申し込みを締め切らせていただきました!!!

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「イマーシブオーディオ」は、最近、ストリーミングサービスでもATMOSによる音楽ソースが配信され始めるなど、にわかに注目を集めております。しかし、多くのAVショップは「映像付き音響≒映画」再生を中心に力を入れているため、「イマーシブ音楽ソースを再生するオーディオシステム」としてのセッティングによる試聴室を整えていないので、従来の2chステレオとどこがどう違っているのかについて、なかなか比較試聴できる場がないという現実があります。

さらに、一口に「イマーシブオーディオ」といっても、Dolby ATMOSAuro-3Dなど、多様なフォーマットが存在しているにもかかわらず、それぞれの特徴や、セッティング方法の違いなどを「正しく」理解・実践している方はAVショップ関係者ですら少なく、これらフォーマット別の特徴についても試聴体験する機会はほとんどありません。

そこで今回のセミナーでは、ATMOSAuro-3D22.2chなどのイマーシブオーディオフォーマットの各設置基準に完全に準拠した設備を整えている、WOWOWの「オムニクロススタジオ」を使い、日本でのイマーシブオーディオ録音エンジニアの第一人者の一人である、入交英雄氏を講師にお招きします。

入交氏がこれまで手掛けたイマーシブオーディオソースを中心に「オムニクロススタジオ」のプロ用のモニター機器で再生しながら、各フォーマットの特徴とよく見られる誤解について解説し、イマーシブオーディオの再生技術の基本と、再生技法についてわかりやすく手ほどきをします。一般のコンシューマーだけでなく、セッティング方法にご関心のある業界関係者の方々の参加も歓迎いたします。

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本件問い合わせおよび参加申し込み先

grandslamm2003@yahoo.co.jp

石川(イマーシブオーディオ同好会代表幹事)まで

 

このブログを見ている方限定で、この記事に対し「コメント」欄からも応募および質問を受け付けます。参加希望者は「コメント」を記入する際に任意記入となっている、メールアドレス欄に連絡の取れるメールアドレスを記入してください。ただし、締め切りはメールと同日です。

 

*放送局側のセキュリティ上の要求で、参加者の実名による事前入館申請をいたします。

*現時点で、オーディオ評論家の麻倉怜士氏、山之内正氏、土方久明氏がご参加されるとの連絡をいただいています。

*両日とも終了後に「懇親会」を行う可能性があり、参加申し込み者に別途連絡します。

*内容的には両日ともほぼ同様ですが、二日目の3日(月曜日)の方がややセッティングの解説によりウェイトを置く予定です。

2024年9月20日 (金)

第二層SP群とサラウンドバックSPの位置調整とDelayについて

これも前回の記事と地続きのネタです。そろそろ「労働の季節」が迫ってきましたので(汗)、これが恐らく「この夏休み最後の課題レポート」となります(もう一つ別のプロジェクトが密かに進行中ではあるが=笑)。

 

もう何度目となりますか(汗)、入交さんとの意見交換は。その度に「思い当たる節」のご指摘を受け、なんとか自分のシステムに反映させて来たのですが、今回も実は「イタイ」ところを突かれまして(笑)。もちろん、「SPはこのようなものを揃えるべし!」みたいなものは、「今更言われてもなあ・・・今のシステムを買い揃える前にお会いしたかった(泣)」的な部分がほとんどなので、一朝一夕には「ああ、そうですか、では変更しますっ」とは行きません(汗)が、セッティングに関わる部分であれば、本人に自覚とやる気さえあればやれるものも少なくないわけで。

 

で、今回、前回の記事で紹介した入交さんの指摘で、ワタシ的にぐさっと来たのは以下の3点:

 

1)AVアンプに内蔵されている音響補正ソフト(Dirac LiveAudyssey YPAOなど)による、距離補正(Delay)の部分は、手動で第一層の各SPと同タイミングで、その直上のSPから音が出るようにすべき(つまり第一層のSPと直上のSPを<同一距離>とする)。

 

2)「開き角」を優先すべき

 

3)Delayはかけない方がよい

 

これら、「入交道場」の免許皆伝を目指す者(笑)としては、スルーはできません!ので、早速やってみました。

 

1)フロント6台の「垂直関係」の見直し

 

Auro-3Dでは、「球面配置」にしてはならず、ハイトSPはフロアのSPよりLPから遠くなければならないというのは、一応私は「会長」(笑)ですから百も承知で、Dirac Liveを適用したあとにソフトが行った等距離補正(Delay)を手動で修正というのは、前にも入交さんに言われて、やっていた(つもりだった)のですが・・・Delayをなるべく使うな(後述)と入交さんは再三言われますので、ここは電子的な補正ではなく、物理的な補正をやれるだけやるべきかと、一念発起!(笑)

 

言うまでもなく、Auro-3Dに於いては、この前6台の位置や性能が非常に重要なのですが、そもそも(汗)、特にこのLCRHLCRの「完全な垂直関係」を実現できている方って、どのくらいいるんですかね?

 

私は今まで何件ものお宅で、LCR+HLCRの6台を備えたAuro-3Dシステムを見て、聴かせていただきましたが、ほとんど(恐らくすべて?)のお宅で、第一層のLCRLPから等距離に配置しておられます。つまり、円周上にこの3台を置いているわけですから、LCRが一直線には並んでおらず、真横から見ればLRに対してCが引っ込んでいますよね。

 

では、第二層のHCLRはどうでしょうか?HCLRの設置位置として殆どの方は、フロント側の「壁」に設置しておられると思います。この「壁」って、普通<平面>じゃないでしょうか?まさか「球面の壁」(しかも凹んでいなければならない)をわざわざ作っている人って、見たことないです(これをやるなら、「シェークスピア劇場」のような円筒形の部屋を作るしかない)。

 

「平面の壁」にHLCRを<円周上に>設置するのは、かなり大変(HLRを相当壁から離す必要がある)なので、殆どの方が(梁に設置してある拙宅も含め)HLCRは<一直線上に並んでいる>と思います。つまり、屋根から吊り下げるか、天井埋め込みにでもしない限り、LCRHLCRの完全な垂直位置関係を実現している<アマチュアのAuro-3Dルーム>は少なく、HCHLRよりLPに近いのが普通でしょう。つまり、垂直配置は、一般家屋のスクエアの部屋では、「そもそも」ハードルの高い条件であることは間違いありません

 

さて、本題に戻ります(汗)。前回?入交さんに拙宅に来ていただいたときに、フロントLCRの仰角が30度よりやや大きい、とのご指摘を受け、その後、Myuさんの多大なるご協力のお陰で設置位置を下げて、推奨値の「仰角30度」を実現したのは、以前記事にしたかと思います。

 

実はその後、「New Year’s Concert 2023」で、なんとなく、前より少年少女のコーラスの位置が心なしか上がった気がしていたんですが、今回の入交氏の指摘を受けて改めて部屋を見渡したところ、その原因らしきものを見つけてしまいました・・・

 

仰角を抑えるよう、HLCRをやや低い位置に移動させるため、それまでの「梁の上」から、「梁の前」に設置位置を動かしたのです。これにより、確かに「高さ」は下がったのですが、より「前に」来たのでLPにはより近づいてしまっていました。つまり「仰角」とのトレードオフで、HLCRLCRとの垂直関係は、前よりも崩れていたんです(以前は梁の真上にSonetto Iがあったので、HCCの縦位置は20センチ弱ぐらいしかずれていなかった…HLRに至っては、以前はほとんどLRの真上であった)。

P 昔の写真(Sonetto Iが梁の上に<一直線に並んで>設置されている。LRとはほぼ垂直関係配置)

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そこで、今回採用した方法は、第一層のLCRをもう少し前に出す、という作戦です。

 

P(上がBefore、下がAfter. 特にCHCの関係は、目測で50センチ以上HCのほうが前に出てしまっていた。LRとHLRはBeforeは20センチぐらいずれていたが、Afterではほぼ垂直に)

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これ、書くと簡単そうですが、単純に前に移動しただけだと今度はLRの開き角が規定の60度より広がってしまいます。LPも後ろにずらせばそれは防げますが、そうすると今度は、SLRの開き角が狂ってしまう(拙宅は90度)。結局、レーザー距離計を駆使して、いぜんよりやや半径の小さな円周上に配置しなおしたのですが、思ったより時間がかかりました(汗)。

 

P今回の配置修正後(実はこれには副次的な効果があった。拙宅のSP配置の<弱点>として、Lが壁に近いという問題があるのだが、円周を小さくしたことで、多少、前より壁からLが離れたので、壁反射の影響が少しは減退したと思いたい!)

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→結果

 

フォッサマグナツアーの課題曲の一つであった、ウィーンフィルの『New Year’s Concert 2023BD版(=Auro-3D)の、「上機嫌」における、バルコニーでの少年少女のコーラスの定位で確認。

 

それまでは、「指揮者の位置」での音場・音像感を再現しているのだと思っていたのが、「ホール客席の位置」での音場・音像感になった気がする。私はこのムジークフェラインに残念ながらまだ行ったことがないのだが、最近行かれたばかりのTomyさんから「ホール客席から見上げればバルコニーとオーケストラはそんなに離れているわけではない」というご報告があり、まさにその通りの定位となったようだ。フォッサマグナツアーではずいぶんオケより高い位置にコーラスが定位していたお宅もあったと記憶している(ハイトSP群の位置に問題があった場合もあったが)。「いかにもハイトSPからコーラスが聴こえます!」というようなお部屋では、本当にLCRHCLRが垂直関係になっているか、Delay(後述)の設定も含め、再確認をしたほうがいいかもしれません。

 

2)サラウンドバックの開き角

 

今回、入交さんにAuro-3DSP配置では「開き角」が最も重要、という趣旨の指摘を受けたときに、私がドキッとしたのは、拙宅のサラウンドバック(SBLR)の位置です。

 

拙宅は第一層を7chにしているのですが、サラウンド(SLR)は<90度>と「入交セッティング」にしてあります。『マニュアル』ではSLRは<110度>を標準値としているのは皆さんよくご存知のとおりです。入交氏はこれを90度に置いてエンジニアリングをしておられることはもう何度も書いていますが、その論理的な理由は、「人間が2つのSP間に音像定位をきちんと認識できるのは60度の開き角までで、それ以上開くとSP間の音像定位が曖昧になる」ということで、私は論理的な議論に説得されやすい社会科学者なので(笑)、<LR30度、SLR90度>が合理的であると納得し、拙宅も「入交セッティング」にしてあるわけです(彼の録音は、LRとサラウンドの間に音像を定位させる物が多い!もし、SLRがマニュアル通り110度の位置にあれば、ここの開き角は80度にもなってしまい、恐らく、この間の音像定位は甘くなるか、<中抜け>するであろう)。

 

では、サラウンドバック(SB)はどうか?『マニュアル』では標準値が150度と指定されています。この位置であれば、90度においたSLRとの開き角がちょうど60度となり、「入交理論」に叶うことになります。

 

しかーし(汗)、これまで拙宅では、SBLR間の開き角は30度程度しかありませんでした。つまりLPからの角度は、約165度なので、標準値はおろか、許容範囲(135-155)からも外れていました(大汗)。

 

Auro-3D友の会会長のくせに」(笑)と言われそうですが、ここに設置せざるを得なかった理由は、「角度を取るか、SP(音質)の整合性を取るか?」の二択で、私はこれまで後者を優先させていたからです。

 

拙宅のAuro-3Dシステムのウリの一つに、「TOP以外の12台のSPをすべてSonusSonetto シリーズで揃えているため、すべて同じツイーターを使っている」ことがあります。言うまでもなく、「音色」に最も影響を与えるツイーターを同じにすることで、残響音再生も含めた音場・音色の一体感を追求していたのです。

 

SBLR用にはSonetto Iを使っていたのですが、残念ながら、理想の開き角150度の位置にこれをセッティングするとしたら、SP台に乗せてそれを入口の真ん前に置くしかなく、生活動線の観点からそれは諦めていました。

 

ただ、拙宅にいらした方ならすぐに指摘できるように、実は可動性のある、キャスター付きの(笑)、Amator IIIがもう一組あり、それをSBLRとして使えば150度に位置に置ける(必要なときは簡単に動かせるため)ことは分かってはいたのです。

 

しかし、その場合は別の問題が。そもそもAmator IIISonetto Iでは、元々かなり性能が異なる上に、さらにそれを駆動するアンプも前者はOctaveの真空管、後者はSTA-9というデジアンという大きな違いがあり、両者の出音はどんな素人でも絶対にわかるほどの違いがあるのです(元々、Amator III2ch再生用に導入)。Octaveはプリメインですが、パワーアンプとしても切り離せるので、ATMOS映画を見る際にはサラウンドSPとして使っているのですが、映画と音楽じゃあ、求められる再生品質の統一レベルが違うのは言うまでもありません!

 

実は過去にも、Amator IIIOctaveAuro-3Dシステムに組み込んでみたことがあるのですが、どうも違和感が拭えない。主役のLCRと音色が異なるので、「悪目立ち」することが多々あったのです。イマーシブオーディオは<一体感・包まれ感>が重要なので、あるSPが「僕、ここに居ます!」となってはダメですよね(笑)。

 

ところが! この春からLCR+SLRとして使っている主力のSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプで運用しているのはすでに何度も書いていますが、それ以来、実はどうもSBLRに使っているSonetto Iの音が、逆の意味で「悪目立ち」することを感じるようになっていました。チャンデバ化すると全体的に音が鮮烈になるので、パッシブのSPの音が「ぬるく」(笑)感じる様になっちゃうんですよ(これはあらゆるチャンデバシステムに共通する音質で、最近、私の耳はすっかり「チャンデバ耳」に!)。

 

「これはもしかするとAmator IIIの方がまだマシでは?」

 

Amator IIIはバイオリンや女性ボーカルなどは私好みの甘い音がする素敵なSPですが、やはりいいマグネットを使っているからか、はたまたいいネットワークをつかっているからか、音のキレはSonetto Iよりあるんですよ(マイケル・ジャクソンがちゃんと聴けますから!)。Octaveも真空管ではありますが、一般的にイメージするような「茫洋とした、おおらかな音」を出すアンプではありません。しかも、これをSBLRにすれば、150度に位置に置くのはたやすいことです。

 

ということでやってみました!

 

P(推奨値の150度あたりにAmator IIIを移動。プロジェクターの下の棚の上に乗っているSonetto Iが以前のSBLR。開き角の違いは一目瞭然・・・)

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LRは正確に角度も測って30度の開き角をつけています(つまりLPLRで正三角形を形成)が、SBLR150度に位置にPlaceするならわざわざ計測する必要はなく、この写真にあるように、「LP(椅子)を挟んで正反対側」になるように置けばいいのです!(ちなみに、このような写真が撮れる、ということは、SPの後ろにある程度の空間が確保されているということで、これも反射の問題を考えるととても重要なことです。後ろの壁ぴったりにつけている方は、見直したほうがいいですよ!=といいつつ、拙宅もSLRは壁ぴったりだが=だから同じSPなのにLCRに比してf特がずれている=汗)

Img_0287_20240920061801 Img_0286_20240920061801

 

→結果

 

11ch74)ソフトはまだ少ないし(特にダウンロード版では皆無に近く、手持ちでは一つしかない!)、さすがに、サラウンドとサラウンドバックの間に楽器を定位させているようなソフトはほとんどない(汗)が、例えば、フォッサマグナツアーの課題曲の一つであった、「Polarity」の、あざとい(笑)、背後に配置されたドラムスセットの音と音像定位は、さすがAmator IIIOctaveの音だし、SBLR間の開き角が60だけある音像定位(=ツアーで聴いたX1邸の音に少しは近づいた?=前は30度くらいしか開いてないのでドラムセットがこじんまりと固まっていた)。心配していた音色の違和感も、やはりこちらの予想通り、チャンデバ化されたSonetto VIIIとの組み合わせなら、そこまで変じゃない(まあ、入交さんも「ツイーターの素材が揃っていれば」とおっしゃっていて、Amator IIIもSonetto Iもどちらもシルクドームだし=質は相当違う気がするが=汗)。さすがにもし、後ろから前にバイオリンが移動するような音源があれば、両者を聴き慣れている私には音色の変化が多分わかるだろうけど…プログレならともかく、幸い、Classicにはそんなギミックはないし!

 

実はOPPO205DTS5.1chに折りたたまれている9.1chAuro-3Dソフトを拙宅のStormとの組み合わせで再生すると、「なぜか?」SBLRにも音が振られることを発見し、せっかくSBLRの位置を調整したのを機に、埃を被りかけていた(汗)、昔のNew Year’s Concertなどを聴くようになりました!

 

3)脱Delay

 

本日、最後のお題です(笑)。入交さんは、「DelayAVアンプでかけるとLPのピンポイント以外では位相が大幅に狂い、音場が乱れる」と主張されます。そのロジックはイマイチ文系の私では???なのですが、「入交教」の信者(笑)としては、まずは教祖様の言うことに従ってみるべきだろうな、とは前から思ってはいたのですが、さすがに13台全てのSPをLPから等距離に配置し直すなんてできるはずない、とこれまで躊躇していたのですが今回、「SPの距離の差といっても、一般家庭では1Mもないはず。それであれば移動音の多い映画ならともかく、音楽なら普通の人には聞き分けできないレベルですよ」とまで言われて背中を押されまして(汗)。拙宅の場合はDelayDirac Liveに任せているため、「どうせやるならDirac Liveも抜きにして、完全無補正に挑戦!」ということで、やってみましたがな(笑)。

 

P(チャンデバ化による、ウファーとスコーカー、ツイーターの距離補正だけを残し、他はすべて、「0」、つまり全スピーカーから同一タイミング=エンジニアが意図して音源に入っているDelayはあるはず=で音がでるようにした)

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(再配置後、LP耳の位置から各SPバッフル面までの距離は、LCRが2500ミリ、SLRが1320ミリ、SBLRが2000ミリとなった。Amator IIIはキャスターで動かせるので、LCRと同じ2500の位置に置くこともできるが、そうすると後ろの壁との距離が50センチぐらいしかなくなってしまう。Amator IIIはボトムバスレフのSonetto VIIIとは異なりリアバスレフなので、最低でも1Mは空ける必要があるのは言うまでもない)

→結果

 

うーん、確かに「音」だけに注目すれば、ベールが一枚も二枚も剥がれたような鮮烈な音になった。ピアノソロの直接音などは鮮度が上がったのがわかる。しかし、これはDelayの問題というより、恐らくDirac Live(ART)の有無の問題だと思うのだが、「満天に散りばめられている数多の星たちが、遠くの無限の闇の奥底で輝いている感じ」がやや損なわれ、プラネタリウムで見ているような、「やや遠近感のない、そこで光っているくっきりさ」になっている。これは好みが分かれよう。

 

さらに、決定的な違いはやはり低音の再生品質である。もうすっかりARTの効果が発揮された解像度の高い低域再生音に慣れてしまった私の耳には、無補正のシステムの低域はボワついて聴こえてしまう(これもDelayとは関係ないかも…)。

 

これについては、明らかにDelayの有無とDirac Liveの有無がごっちゃになっており、もう少し研究が必要だと感じた次第。できればDirac Live(ART)だけ残して、Delay調整はパス、なんて設定ができればいいのだが(笑)、素人判断では両者は密接な物理的な関連がありそうだから(Delay調整していない=LPにおけるタイムアライメントが調整されていない=状態で、ARTの「逆相による定在波のキャンセリング」なんてできるのだろうか???)、切り離せないのでは・・・と予想(汗)。

 

であれば、私はDirac Live+ARTLeanな低音およびLPだけにせよ、ほぼ完璧に位相が揃っている音)に軍配ですね!(笑) それほど<中毒性>がある出音ですから!!!

2024年9月10日 (火)

Auro-3Dに関する、中上級者向けFAQ集-入交氏とのDiscussionから

先日、伊豆のご近所さん(笑)の、入交さんのご自宅兼仕事場へお邪魔して参りました。

 

今日、初めてこのブログに辿りついた方は、「誰、それ?」かもしれませんので、彼についてのリンクをいくつか張っておきます。

 

入交氏のAuro-3Dに関する活動 

https://note.com/live_extreme/n/n217764a0805b

 

https://online.stereosound.co.jp/_ct/17665156

 

同、ATMOSに関する活動 

https://www.dolbyjapan.com/interview-creator-irimajiri

 

まあ、彼のフルネーム(入交英雄)で検索して戴けば、まだまだたくさん出てきます。一言でいえば、「日本のイマーシブオーディオ制作に関しては第一人者のお一人」と言い切れる、博士号をお持ちのベテランエンジニアの方です。

 

彼はこの「Auro-3D友の会」および私Auro3Dが、その設立時からお世話になっている方で、もし、ここのブログに、他にもあまたある一素人の個人のオーディオブログと差別化を図れる点があるとすれば、ここの記事は全体的に「入交氏による(暗黙の?)監修ないし、ご指導ないし、意見交換の下」書かれているものが少なくない、という点に尽きます。

 

もちろん、入交氏が考え、実践されていることが<すべて正解>であり、<これ以外は認められない>というものではないとは思います。私は社会科学の人間なのでこの分野では言うまでもなく、たとえ、音響工学や音響心理学?といった理系的な分野でも、<真理は一つ>と言い切れるほど、「この世と人間」は単純なものではないですよね(笑)。

 

ゆえに読者の方は、ここに書いてあることは「一先達の独自の理論や実践」として批判的に捉えてご自分の<理論構築や実践作業>の参考にしていただければ結構なのですが、ただ、一つだけ言えることは、2ch音響などとは違って、Auro-3Dなどの「イマーシブオーディオ」はまだ緒に就いたばかりであり、体系的な理論や方法論が<すでに確立している>とは言えないということです。「芸術」などとは異なり、このような分野の場合は、「まずは先達が歩んだ道をなぞってみる」ところから入るのが<合理的・科学的な手順>というものですから、私はまずは現時点でのフロントランナーの一人である、入交氏の理論と実践を皆さんに紹介し、自分もそれをなぞってみているのです。

 

さて、重要な前置き(笑)を終え、本題です。

 

まずは今回訪問させていただいて、いつもの通り、いくつか、彼が今「制作中」の音源を聴かせていただきました。

 

残念ながら、現時点では発売すら未定で、「誰の、何を聴いた」と書くわけにはいかないものがほとんどでしたので、はっきりとは書けませんが、ベーゼンドルファーインペリアルによるピアノ曲集が、もしかしたらAuro-3Dでも出るかも?(でるといいなあ・・・絶対買う!!!)ぐらいは匂わせておいても叱られないかな?(笑)

 

そうそう、これはもうすぐだそうですからいいでしょう。

 

山本剛トリオのライブ盤「Shade Of Blue

https://diskunion.net/jazz/ct/news/article/1/116730

 

Auro-3Dが、近々、出るそうです!!! 「Auro-3DにまともなJazzがない」と、ずーっとお嘆きだったアナタ、いよいよですぞ!震えて待て(笑=そういえば、Rockでは、先にご紹介した、「Mr. Big」のAuro-3Dライブアルバムですが、 諸事情=汗により、発売が9月から11月ごろにずれ込むそうです…)

 

で、今回聴かせていただいたもののいくつかは私の部屋のシステムでも聴かせていただいたことのある作品だったのですが、全然、入交邸の方が音がいい。「え、なんでこんなボロシステムの音がウチのよりいいの?」と思わず口を滑らせてしまいました(爆=大汗)。

 

だって、入交邸で今回聴かせていただいたシステムはGenelecの、ちょっと古めの(笑)小型の2Wayパワードで、少なくともアンプとスピーカーだけを見れば、1ch当たりにかかっているコストは絶対ウチの方が…???

 

「いや、Auroさん、これはマスター音源ですから。192/24で記録された未編集のもの、つまり全く音質劣化の無いものです」と。

 

P(このようなプロ用の編集・再生ソフトを使って聴かせていただきました)

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まあ、当然だが(汗)、上流にボトルネックがあっては、下流でどんなに頑張っても挽回はできないのだ、ということを改めて認識。やはりもっともっとHigh QualityAuro-3D音源が欲しいよなあ(笑)、ということで、以下のQAに発展しました。

 

ここから先が本題で、これまで私自身も含め、「友の会」で実践を積んできている方々から寄せられていた、「やってみてのギモン」を、この際まとめて入交さんにぶつけて、「彼の意見」を伺ってきました。つまり中上級者向けのFAQ集です。

 

 

まずは、上記の流れからクオリティに関連して:

 

Q:現状、BDでも配信でも、Auro-3Dの13chソフトはすべて48/24止まりであるが、原理的に、13chのハイレゾはできないのか?

 

A:BDでは、仕様上の転送速度から、96/24なら11chまでしか入れられない。配信(ストリーミング)の場合も通信速度がネックで、一般家庭のインターネット速度では、これ以上の品質=データ量のものを送るのは難しい(事実、Donguriさんの報告では、先の「オルゴール博物館」のストリーミングで、数度、止まったそうである)。理論的には、ダウンロード販売されるソフトであれば、ダウンロードの時間を無制限に取れるとすればもっとハイレゾの13chソフト、例えば192/24でも一般の方でも入手できるとは思うが、その場合、今度はAVアンプの仕様を変更する必要があり、現行モデルでは再生できないはず。さらにいえば、転送速度がBDより速いUltra HD BDを使えば、理論的にはハイレゾ13chを出力することは可能かもしれないが、現状ではそのためのフォーマットが出来ていないし、同様にデコーダー側も対応する必要がある。

 

Q:では、理論的に、現状の2種類のハイエンドフォーマットである、HCとTOPの無い11chの96/24と、13chフルの48/24では、どちらがオーディオ的に優れているのか?

 

A:これはソースにもよるだろう。高さを含めた空間容量の大きいコンサートホールの音場感の再現性というような面では、レゾリューションが多少低くても13chの方が、高さ感、奥行き感などにおいて高い表現力があるはずだ。

 

Q:では、11chの96/24を、AVアンプの拡張機能を使って13chに拡大したものはどうか?

 

A:これは、Extendしたものの方がOriginalよりよい結果になると思う。例えば、HCの位置から音を出したい場合、ファントム再生(=11.1ch)より、合成されたものでも実SPから音が出る方が音像面や音質面のクオリティは上がるからだ。

 

次に、SP設置を巡るQA

 

Q:『マニュアル』に記述されている、ハイトの「垂直配置原則」と、LPからの「等距離配置原則」が相矛盾するが?

 

A:これは、第一層については、LPから等距離に配置する。そのうえで、その各SPの真上に第二層を配置して欲しい。こうすることで、第一層に配したSPの方が、その上の第二層群のSPからの音より先にLPに到達するという「先行音効果」が得られ、第一層に配置された音像定位が不自然に上がることがない、という、Auro-3D(Matic)の特徴が活かされる。ゆえに、AVアンプに内蔵されている音響補正ソフト(Dirac Live、Audyssey、 YPAOなど)による、距離補正(Delay)の部分は、手動で第一層の各SPと同タイミングで、その直上のSPから音が出るようにすべき(つまり第一層のSPと直上のSPを<同一距離>とする)

 

Q: 第一層のSP配置において、開き角と、等距離で、どちらをより優先すべきか?

 

A:これは「開き角」を優先すべき。距離が多少ずれているだけなら、Delayはかけない方がよい。普通の方の耳はそこまで聴き分けることはできないし、むしろDelayをかけることで、LPがピンポイントになってしまい、LP以外では位相が狂って音場が乱れる方がデメリットが大きい。

 

Q:すべてを同一SPでは揃えられない場合、ハイト群のSPを選ぶ際にどのような点に配慮すべきか?

 

A:まず、ポイントソース(点音源)のSPを使うのが望ましい。具体的にいえば、フルレンジか、同軸2Wayなど。この方が立体的な音場がきれいに再現できる。これが無理な場合は、2Wayで、なるべくツイーターとウーファーが近接しているタイプのもの(疑似的に点音源と見なしやすいもの)を選ぶべき。3Way以上のSPは使わない方がいい。 第二層以上のSPは最低域の再生能力はあまり欲張る必要はない。音の広がり感に影響が大きい周波数帯域は、300-2000Hzあたりなので、できればこの帯域は1つのSPユニットが担当しているものがいい。この帯域内にクロスオーバーがあって二つのユニットに再生が分割されると、位相が狂うために音場が乱れる

また、同様に位相の観点から、バーチカルツイン型のSPは避けたほうがいい。SPメーカーが「センター用」として売っている横長のSPでも、ツイーターやウーファーが二つ、中央から対称の位置に付いているようなものも良くない。理由は、同じ周波数帯の音を同時に出すSPユニットが二つ以上あって、それらの位置が離れている場合、その二つのユニットから完全に等距離にはならないオフセットの位置では位相が狂うから。

位相を揃える観点からできれば、同じメーカーの同じシリーズのもので揃えるのが望ましいが、同じシリーズでもユニットの大小によってクロスオーバー周波数が異なって設定されている場合があるが、これも揃えるよう気を付けたい。いうまでもなく、位相が逆相にしてあるユニットがあるSPは、第一層も含め、使うべきではない。

とにかく、イマーシブオーディオの場合、位相の狂いは空間感を大幅に損ねるので位相整合には最大限注意すべき。

 

音色の統一感に関しては、同じシリーズで揃えられない場合も、ツイーターの素材(ベリリウムとか、ダイアモンドとか、シルクとか)は揃えた方がよい。

 

Q:ATMOSとAuro-3Dを共存させたい場合、SPはATMOS配置とAuro-3D配置のどちらを優先させるべきか?特に、ヤマハやパイオニアなど、HCとTOPが設定できない「Auro-3D対応AVアンプ」の場合など?

 

A:これはAuro-3Dの規定するSP配置にしてATMOSも聞くようにした方が圧倒的に優れている。理由は、ATMOSが定義しているトップフロントの仰角の45度は、大きすぎて、第一層のLCRとの間に明確な音像定位を形成することができないから。業界内では、ATMOSのエンジニアリングポイント(制作エンジニアが実際にモニター室で座る場所)からのトップフロントスピーカーの位置は、「仰角35度」として設計されていることが知られている。つまり、エンジニアリングの段階では、仰角35度のSP位置で音場・音像設計をしているのに、それをユーザーが聴くときに45度の位置にトップフロントが置かれていては「Director’s intention」通りの音場・音像の再現ができない。だからAuro-3Dが定義しているフロントハイトSP群の「30度」の方が、ATMOSでもよりよい結果が得られるといえる。

2024年8月25日 (日)

Auroの上原さんのPianoの位置&48/13ch VS 96/11ch-書斎のシステムでの気づき

今月23日の金曜日の夜にて、前回紹介したAuro-3Dフルスケール13.1chの配信が終了しました。皆さんのご感想はいかがでしたでしょうか? 聴かれた方はここにレスを入れていただけると、入交さんも喜ばれると思います!

 

私は、残念なことに、1週間の配信期間のうち、初日金曜日の夜一晩だけ伊豆で、日曜日の夜から二晩だけ東京の書斎で聴くことができただけでしたが、「何とか元を取ろう」と貧乏人根性丸出しで(笑)、この間は繰り返し真剣に聴き込みをしました。

 

そこで二つほど、Auroシステム的な<気づき>がありましたので、参考になればと紹介したいと思います。

 

その1. 

伊豆のシステムでの印象は大まかには前回書いた通りですが、その<耳の音も乾かぬうちに?>、東京に戻って書斎の寄せ集めシステムで、今回の演目の自分なりの目玉であった上原ひろみさんのピアノ演奏(1曲目)を聴いた時、「えっ、これ、ピアノの位置が違うんだけど…」と。

 

前回の記事で明示的に書いたように、この1曲目のYahamaのピアノ曲(ちなみに、最近知ったのですが、彼女は浜松出身だそうです。だから、Yamahaに拘っているんだな、と超納得!子供のころから弾きなれているでしょうし、長じてからもプロになるまでに相当な支援を本社から受けたであろうと想像)は、<入交流>の音像配置である、LCの「ど真ん中」に中心が置かれています。

 

ここで、私がピアノの定位位置を「断定的に書いている」のに首をかしげる方がいるかもしれませんので、ご存知の方には繰り返しになりますが(汗)、なぜ、ここまで<客観的・普遍的>に(つまり、「自分のシステムでは」という主観的・条件限定的な書き方ではなく)言えるのかを。

 

それは、私の伊豆のメインシステムは、今回のストリーミング配信の音楽制作監督をされておられる、入交英雄氏(WOWOWエグゼクティブ・クリエイター=前回紹介した評論家の生形三郎氏の記事に出てくる方!)の再三の訪問を受け、彼が制作した音源を再生しながら「2度」(汗)の角度の狂いまでを正すクリニック済みのものだからです。

 

ゆ・え・に、私は一応学者の端くれですので(汗)、普段は断定的にものを言うのには慎重な態度を示しているつもり(笑)なんですが、こと、伊豆の拙宅のシステムの「音像定位」に関してだけは、それが特に入交さんの作品であれば、ほぼ絶対の自信をもって、「Director’s intention通りに再現されている」と言い切ることができます!(「音場」に関しては部屋も変形だし、Dirac Live使っているしでそこまでの自信はない・・・汗、さらに「音質」は言うまでもなく、人それぞれのシステムに好みが反映されているのでMonitorの音と違うのは当たり前で、Directorが聴いている「音質」がベストかどうかは意見が別れるのは当然)

 

ということで、伊豆のReferenceのピアノ位置に比して、東京の書斎で聴いた上原さんのピアノは、かなりCに寄って聴こえてしまいました。

 

「これはマズい。どこかが狂っている=断定!=笑。Dirac Live適用しているのになあ・・・」

 

私はバリバリの(笑)「Dirac Live信者」ではありますが、Dirac Liveをかなり使いこなしてきてその「限界」も理解しているつもりです。これはもう何度か書いていますが、Dirac Liveには「スピーカーの位置Virtualに補正する機能」は、ありませんTrinnovや、YamahaYPAOはこの機能がある、と「カタログ的には」書いてある。ただし、自分の耳で確認したことはない)。つまり、いくらDirac Liveでも、Auroシステムがそのマニュアルで厳格に定義している、設置上の開き角と仰角はごまかせないのです。

 

私の書斎では、実はLR30度の開き角を確保できておりません(22度くらい=泣)。これは物理的にLRを今の位置より外側に置いたり、LPを現状以上に前に出したりすることができない部屋の構造になっているからです(人が通れなくなる…)。専用ルームではない、書斎兼用の悲しさですが、このような「配置上の制約」のあるセッティング環境の方は少なくないのではないでしょうか。

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(例えば、このRスピーカーをこれ以上右に移動すると、勉強机に行けなくなってしまう=汗)

 

しかし、だからといって、「泣き寝入り」というのも癪なので(笑)、開き角の狭さを補う「物理的な」(電子的な、ではなく)方法はないか、と腕を組むこと5分(=ホントはすぐに思いついた=笑)。

 

恐らく多くの方がそうしていると思いますし、確かAuroのマニュアルにもそのような指示があったと記憶していますが、皆さん、SPLRのみならず、LPに向けてませんか?

 

私も伊豆でも書斎でも、AuroシステムはすべてLPSPを向けてセッティングをしているのですが、よく考えてみると、私の2chシステムの方は、書斎にある1000Mも、伊豆のAmator IIIも、どちらも「平行法」セッティングなんですよね。一般に2chの世界では、JazzVocalを中心に聴く場合は「内振り法(正対とは限らない、微妙なテクニックがあるみたいですねェ=笑)」で、広がり感の欲しいClassic主体で、特にあまりSP間の距離が取れない場合は「平行法」というのが<教科書的>に語られているのはよくご存じの通りです。

 

で、まだ歴史の浅い?Auroシステムの世界では、<LPと正対>させるという「マニュアル」通り以外のオプションは、私の知る限りではその効果検証などはされていないと思います。

 

しかし、「2chで有効なテクニックなら、応用できるんじゃない?同じLRなんだし…」ということで、やってみました、「平行法」!まだ上原さんのAuro-3Dでの演奏を聴ける時間内に。

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結果はというと、「お、ちょっとピアノが左に寄ったな」とは感じられました。これを書いている今は書斎にいるのですが、残念ながらもう上原さんのピアノは聴けないので、他のAuro-3Dソースを流しています。ダウンロードしたものはほとんどClassicばかりで、元々Classicは音像定位に関してはそこまで厳密な聴き方を私はしてこなかった(特に編成が大きくなればなるほど)ので、はっきりとしたBefore/Afterの違いまでは断定的には言えませんが、マル秘(爆)の13chソース(オルゴール博物館とか)などを聴いても、伊豆並み(ちょっと盛ってる???)とまでは行きませんが(汗)、結構空間が広がって、3D感が向上したような(書斎のシステムは、「Center突出型」なので、元々センターの存在感が強く、音が集まりやすい傾向にあったから、余計に効果があったかも?)

 

LRの開き角がマニュアル通りの60度を確保できていない方は、ちょっと「AuroシステムにおけるLRの平行設置」の追試をしてみてくださいな!

 

その2.

 

これは、Donguriさんがすでに記事にしているものと全く同じ問題意識で、私もやっていました。

 

今回のストリーミング配信では、48/13ch 96/11chを切り替えて聴くことができるようになっていました。これはとても珍しいフォーマットで、普段我々が手にするBD版は96/11chはあるが、13chはないので、この二つを聴き比べることは今までほとんどできなかったのです(先日Mさんが紹介してくれた、「オルゴール博物館」のArchiveソースは今でもできるようです!追試をしたい方は是非!)。

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(CHとTS=VOGに入力がある、48/13.1chソース)

 

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ここでのポイントは、Native 13chLow Res VS Native 11chHi Res13ch拡張したもの、という比較だということです。つまり、音が出ているSP数は同じで、片や48Native Discreet 13ch, 片や96だけどArtificial 13ch。で、どっちが音がいいか?好みか?

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(CHとTS=VOGに入力がない、96/11.1chソース。この両チャンネルを人工的に創出してOutputさせている)

 

残念ながら伊豆では時間が無かったうえに、ついつい「音楽」を聴いてしまった(オーオタ的に「音」を聞こうとは考えもしなかった…)ので、伊豆のシステムでは比較試聴していないのですが、書斎の寄せ集めシステムでは、聴き比べしてみましたよ!(ただし、書斎のシステムはリアサラウンドが無い11ch。ただ、9611chCHTopDiscreetに音が振られていない11chなので、この「2ch」分を人工的に合成したものとの比較という点では13chでの比較と同じ条件)。

 

まず、Donguriさんの感想を引用すると、

 

>楽器やボーカルの生々しさとしては、わずかな差ですがAuro 13.1 48kよりAuro 11.1 96kの方が良いと思われました。上方・前方の空間の広がりとしては、Auro 13.1の方がわずかに良いかもしれないが、Auro 11.1を拡張モードにすると音質の劣化は感じないまま空間表現がアップした感がありAuro 13.1でなくていいかとも思えました。

 

なのですが、拙宅書斎のシステムで聴いた私の感想はちょっと違ってまして(汗)。

 

ここでいう「生々しさ」というのは、「音像」と「音質」に分節化できると思います。

 

書斎のシステムで聴く限り、「楽器の生々しさ」(私はボーカルは聴いていない。上原の生ピアノのみでの比較)のうちの<音像=実体感>は「13.1 48k」の方が感じられたんです。「11.1 96k」の方は、なんとなく、ピアノが「空間に溶け込んでしまってやや実体感が薄らいでいる」感じに駄耳には聴こえました。

 

「生々しさ」のうちの、<音質=この演奏だと特にピアノのハンマーと弦の衝撃音>は書斎のシステムでは、優劣は私には聴き分けられなかったです(チャンデバ化した伊豆でやってみたかった…)。ここは、Donguri邸のシステムはBWのハイエンドシリーズで構成されているうえに、最近AVアンプやパワーアンプもBeef UPされたので、レゾリューションの違いが書斎のボロシステムとは異なり、はっきり聴き分けられるのだろうな、と思いました。

 

空間表現」については、上原さんの演奏では書斎のシステムでは違いが分かりにくかったので、これを書くにあたって、念のため、「オルゴール博物館」の音源でも両者を比較試聴してみましたが、これは特に巨大オルゴールの上方からの音のリアリティで断然、13ch Nativeが優れていました。11chの拡張モードでは、前方上方からのチャイムとかの音が全くボケてしまっていました。この部分は前方上部にはっきりとした音源があり、これはHCTopの出番ですから、まず当然の結果かと。

 

結論的にいうと、書斎の寄せ集めシステムでは、「音質」より「音像」の違いに敏感に反応するので、「音像・音場重視派」の私的には13chの勝ち、です!

 

皆さんのシステムではどうでしたか?

2024年7月27日 (土)

備忘録:邪念の払拭と将来的な課題をいただいてきました(笑)-TIASとその後の入交氏との懇談会にて

昨日、「2024東京インターナショナルオーディオショウ」(TIAS)に行って参りました。私は「そろそろ老後の資金を貯めないといけないので、オーディオ関連の散財はもう打ち止め!」と心に決めている(つもり=汗)なのですが、<煩悩>は拭いきれておらず(笑)、密かに「二つの野望」(笑)を持って、ほんの数時間だけ、ピンポイント参加したのです。

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【隠れた野望1】

 

これは何人かの方には打ち明けたことがあるのですが(笑)、ブログに書いたりすると「言霊」となって実現を迫られるのが恐ろしく(爆)、これまで書いたことはありませんでした。

 

それは、日本未上陸の「密かに狙っているスピーカー」があったというお話です。そのSPというのは、「MAXIMA AMATOR」というソナスのもので、実はこれ、私が持っているElecta Amator IIIと<全く同じユニット構成>のまま、「フロア型」にしたものなんです。もう何年も前から本国のHPにはLineUpされているのを知っており、ずっと気になっておりました(汗)。

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【写真はHPより引用】

 

なぜって、もしこれが手に入るのであれば、LCRをこれにして、EAIIIをサラウンドにすれば、あの、「甘い音」(笑)に囲まれる、バラの園のような(笑)サラウンドシステムの「香しい音」が聴けるだろうな、と夢想したからです。

 

幸いにも(?)、これまで日本では正規扱いが無いので、並行輸入なんて保証がない怖いことはできないヘタレな私は、指をくわえて見守っていたのですが、内心、「もしこれをノアが扱うようになったら…」と、期待と不安(汗)を持ち続けてきたものでした。

 

ということで、今回はこの「迷い」に決着を付けよう(笑)と、ノアのブースに足を運んで牧野社長(彼は伊豆の拙宅にお見えになったことがある)に「直撃取材」を敢行!

 

EAIIIのフロア型が存在するのはご存知と思いますが、これを輸入販売する予定はありますか?」

「取り扱う予定はありません」

「なぜですか?」

「試聴した音が気に入らなかったからです」

「低音が甘くなるんですか?」

「その通りです。これを入れることで、評価の高いEAIIIの評判が落ちるのを懸念したのです」

 

よっしゃー!邪念払拭!!! カタログ的にはエンクロージャーを大きくした効果と思われる、f特の最低域が数ヘルツ下がっているデータが掲載されているのですが、これはバスレフのf0が下がったからであって、ウーファーユニットを強化したからではないため、「低域が緩くなっているんじゃ…」と素人ながら予想していたのです。どうやらこの<へっぽこ予想>が珍しく当たったようでした。

 

言うまでもなく、つい数か月前に、主戦のSonetto VIII5台すべてチャンデバ化したばかりなので、その時点ですでにある程度は踏ん切りがついていたのは事実ですが、これで<完璧に>未練を断ち切れました(笑)。老後の資金、セーフ(笑)。

 

【隠れた野望2】

 

これは実はチャンデバ化で最もお世話になった、ご近所づきあいをしている自作ハイエンド2ch派のMyuさんにヒントをいただいていたものです。それは、「ツイーターを交換して高域再生能力を強化しては」というものでした。

 

Myuさんと私は、「空間表現」がオーディオ再生に於ける大事な要素である、という点で価値観を共有しており、この「空間表現」をより洗練するのに、f特上のハイエンドを伸ばす、というのは効果があるということ自体は、私も完全に同意していました。オーディオショーやショップなどで、40KHzあたりまでの高域再生能力を備えた最新設計のSPを聴かせていただくたびに、超高域の再生能力と空間表現能力は比例関係にあるという経験則を形成していたからです。

 

とはいうものの、さすがにツイーターを12台すべて交換するのは大変なので(汗)、手っ取り早い高域強化方法として「スーパーツイーター=STを足してみたら?」と考え、Add-onでどうなるのかを確かめようと、最初に向かったのは、FYNEオーディオのブース。このブランドは、最近、「SuperTrax」という名前のAdd-on用のSTを出したばかり。私はもしSTを自分のシステムに入れるなら、「無指向性」のものが欲しいので、これは候補の一つです。音質もさることながらデザインを無視できないワタシ(笑)は、このWoodyな仕上げだけで高評価(笑)。

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会場にはグランドスラムさんとご一緒したのですが、どうやら最初からST付きでプレゼンしているようでした。幸い、ここの輸入代理店の営業担当の方がグランドスラムさんとお親しい(さすが、彼は顔が広い!)ことから、私の無理なお願い(汗)を聞いていただき、「SuperTrax」の有無の比較試聴をさせていただきました。

 

…やはり、いい! STオンだと、むしろ高域の荒々しさが無くなり、スムースになります。で、なぜか中低域も締まった感じがする。下方への倍音の影響なんでしょうか?(ロジックは私にはわからず…) そして肝心の「空間表現」ですが、お部屋が確実に広くなったように感じました。Add-onでも期待通りの効果があるようです。

 

次に向かったのは、ELACのブース。ここには昔から有名なリボンの無指向性Add-on用STの最新バージョンの、「4PI PLUS V」がフロア型(多分、VFSシリーズ)のSPの上に乗せられてプレゼンをしていましたが、お部屋が狭いうえにお客さんがあふれていて、とても「有無の実験をしてください」と頼める状況ではありませんでした(写真も撮りそこなったし)。あの狭い部屋にあれだけ吸音体(=人間)が入っていると、その音をうんぬんするのは控えるべきでしょう。ただ、リボンの高域表現はかつてシバンニ邸のPiegaでじっくり聴かせていただいて、品位の高い表現力を持っていることを知っているので、これもかなり有力な候補です!

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【写真はHPより引用】



最後に、これは立ち話だったのですが(汗)、業界関係者のMさんのご紹介で、ジャーマン・フィジックス(GP)の輸入代理店の庵社長とお話しすることができました(ダイナのSさんも通りかかってお二人も親しいようで、「じゃれ合って」(笑)おられました!世界は狭いなあ・・・爆)。GPには前々から並々ならぬ興味を持っていることは以前もどこかに書いた気がしますが、その理由は、あの「ダースベーダーの頭」(笑)そっくりのDDDユニットが、超高域まで再生できるうえに、それが<球面>に音を放射できる恐らく唯一(?)のツイーター(?)であるからです。

Germanphysikshrs130_4

【写真はHPより引用】


DDDユニットをSW?と組み合わせたセットはかつてGRF邸で体験しており、その印象は今は亡きPhile-Webに書いたはずなので割愛しますが、この「DDDユニットをAdd-onできないか?」というのはずっと前から持っていた<野望>だったのです。しかし、長らくGPが日本に正規輸入されていなかったので、「妄想の外」にありましたが(笑)、幸か不幸か、正規輸入が再開され、その社長さんが目の前に。

 

DDDユニットって、買えますか?」

「今は、メーカーからの指示で、単体での販売はしておりません」

 

オーマイガー!

 

まあ、売ってます、と言われたら、別の意味で悩んだ(確実に、先の二つよりお値段が…)と思うが(笑)。

 

さて、ここまでがTIAS編なのですが、この【隠れた野望2】には、その日の夜の「Auro-3D友の会の懇親会」にお招きした入交氏との会話の中で、オチがつきまして(汗)。

 

「実は、伊豆のシステムにスーパーツイーターを付けようかと思っているんですが」

Add-onですか?」

「ハイ」

「なら止めた方がいいです」

「なぜですか?」

「位相が狂うからです。2chなら、多少位相が狂った方が空間的な広がり感につながる場合もありますが、Auro-3Dの場合は確実におかしなことになります」

 

うーん、「入交教」の使徒(爆)としては、彼の助言に逆らうことはできない(この後、「やっぱ、ST入れました」なんて言ったら、二度と拙宅の敷居をまたいでいただけないだろうし、このような懇親会にも来ていただけないであろう・・・汗)。確かに、Add-onの場合は、私が信頼するDirac Liveの「管理外」になるので、COやスロープ、そして「位相」をDiracが自動調整することはできない。入交氏は、STがダメ、と言われたわけではなく、「Add-onによるSTがダメ」ということだったので、STを入れてもチャンデバで4分割(=4Way化)にすればOKなのだろうが、それは機器面、金銭面、技術面すべてにおいて、無茶苦茶ハードルが高い(大汗)。

 

ということで、私が長年?温めてきた【野望】は二つとも、昨夜、完膚なきまでに潰えたのでした…(お財布的には、めでたしめでたし…なのだが=泣)。

 

最後に、入交氏との懇親の席でのやり取りで、ちょっと気になった点を備忘録として。

 

Auro-3Dの最大の魅力は、2chでは実現できない「高解像度に支えられた立体的な音像定位」。そのためには、STの導入なんて言ってないで、SPユニット自体をテコ入れし、完全に13台を揃えた方がいい。原理的に位相が狂わないフルレンジにしたらどうか?少なくとも同軸で(ムジークを勧められました…)。

 

←これは、恐らく、私のブログを入交さんがたまにご覧になっていただいていて、私がよく、「Auro-3Dの最大の魅力は<音場>」と書いているのをご存じだからだと思います(汗)。確かに、素人感覚でも「音場感」はそこまでRigidなシステムでなくてもある程度は出せるような気がしますが、精緻な「3Dの定位感」(これは以前にも、「舞台俳優に当たるスポットは、それが正確に調整されていれば、スポットが多いほどくっきりする」というようなお話を聞いたことがあります)を実現するには、1.13台完全同一SP、2.13ch完全同一パワーアンプ、3.13台完全等距離(LPから)―による、<電子的補正を一切使わない>Auroシステムを構築するしかありません。入交さんはこれが「究極のAuro-3Dの音」であり、そこを目指せ、とおっしゃっているのだと思います(「一度体験するために、仕事場に作ったら?」とまで言われてしまいました・・・汗)。

 

入交さんには拙宅にお見えになったとき、一応拙宅のAuroシステムに「合格」は出していただいてますが、やはりプロからみれば、所詮「家庭用の音の範疇における、合格」に過ぎず、モニターレベルには程遠いのだろうな、と思います。

 

今後の課題としては、「音場感」はさることながら、Auro-3DのNativeソースを再生した場合の、「3次元的な定位感」を磨き上げることに注力したいと思います。ソースとしては、Auro映えするオーケストラではなく(汗)、ソロ楽器やボーカルなどのソースを使って、検証を進めるべきでしょう。問題は方法論で、X1さんのように、もう一部屋作る余裕があれば、「All 目玉のオヤジ」のシステムを組むのですが…(汗=ソナスを全部売って買い替えればおつりが来るって?=笑) 「理想」は理想として理解しますが、そこまでハードル上げたら、誰もAuro-3Dなんかやれなくなると思うので(爆)、今の自分の環境でできることとすれば、スピーカーの種類の同一化をなるべく進めることや、より精度の高い設置位置や角度・距離を(まるで2chのように)ミリ単位で微調整するということでしょうか? これについては今後の課題として、詰めていきたいと思いました。

2024年7月 9日 (火)

「シン・X1おやじ邸」マルチ部屋訪問記-前より何倍も良くなってた!!!

行って参りましたよ!皆さん待望のシン・X1邸!!! 今回は地理的に私のお近くにお住まいの「友の会会員」にお声がけし、都合のついたdonguri, K&K, Cmiyaji, Siltechの各氏と私の5人による「東京組査察団=笑」を結成して。これ、最初、「どこよりも早い・・・」という見出しを付けて書こうと思い、わざわざ「仙台組」の予約の日程の前に無理やり訪問させてもらった(爆)のですが、私より一日先にお帰りになられたSiltechさんに先を越されまして、残念!(笑)。

 

すでにご本人もお書きになっているように、新築なったX1邸は、2chとマルチ(+映画)に、別々の専用ルームをあてがわれておられます。「2chとマルチの共存」というテーマは、記事を書いたら数多くのレスが付きそうな、古来(笑)からある普遍的なテーマですよね。一般的に、マルチ(AV)とピュア?オーディオを両方楽しむ方法論としては、① 2chシステムを包含したマルチシステムを組む ② 同じ部屋の中に、2chシステムとマルチシステムを別々に設置する(=拙宅の方法) ③ 別々の部屋に、それぞれのシステムを組む―の3通りが考えられますが、私のこれまでの短くない人生で、③のアプローチで、しかも<両方ともに専用ルーム>を作ったという「XXXな人」(爆)には初めてお会いしましたワ(笑=2chは専用室、映画=マルチはリビングで、なら結構いるが)。

 

で、私が2ch(マニアはなぜかこれを「ピュアオーディオ」と呼ぶ。私は自分のAuroシステムも「ピュア(マルチ)オーディオ」だと思っているんだけど仲間に入れてもらえない…)について語れるほどの実践経験を積んでいないのは自覚しているので(汗)、2ch部屋のレビューは他の参加者の会員にお任せし、ここでは、シン・X1邸のAuroシステム(AVシステム全般となると、またまた経験不足なので、こちらもパス…)に絞ってご紹介したいと思います。

 

1日目:まずはお披露目編】

 

X1邸には、3回お邪魔したことがあり、2回目の訪問記3回目の訪問の記録はこのブログ内にあります。

 

マルチ部屋のマルチシステムについては、旧来のものをほぼそのまま引っ越しているので、システム機器の詳細はここでは割愛しますが、1点だけ前回お邪魔した時(昨夏の「フォッサマグナツアー」)から大きな変更となっていたのが、これ。

 

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WilsonWatchシリーズとかいうセンターSPです(型番は説明を受けたけど忘れた・・・汗)。LRを構成している同じWilsonALEXXという弩級SPとツイーターやスコーカーなどのユニットが共通しているそうで、前回のCELLO AMATIから変更されていました。

 

このブログを熱心に読まれておられる方はご記憶かもしれませんが、2回目の訪問時に、私は不遜にも(笑)「LRが突出していて、センターレスの方が音がいい」(大意)との指摘を恐る恐る(?)したのです(汗)。まあそのせいではないでしょうが(笑)、その後、センターを交換されていたのです(印象は後述)。

 

一方、お部屋の方ですが、これはまず、前よりはこじんまりとしました(笑)。といっても、これは単に「比較」上の表現で、以前のお部屋は「バレーボールの試合ができそう」だったのが、今度のお部屋は「バトミントンの試合なら出来そう」となっただけで(笑)、平均的なオーディオルームより巨大であることには変わりません。

 

持ち込んだレーザー距離計で実測したところ、長さ7.5M、幅5M、高さはこの部屋の天井は勾配天井で、その下に木枠の桟とFinがあるのですが(暗くてスマホでは写真が撮れず)、取り敢えず部屋のほぼ真ん中あたりで、桟の奥の天井までの距離が約4.2Mありました。LP(床ではない)からVOGまでが2.3Mで、これは伊豆の拙宅と同じぐらいです。

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LCRと後ろの壁(スクリーンではない)までは2M近くはスペースがあり、スクリーンが170インチもあるというのにLRと横の壁の距離も1Mは確保されているという素晴らしさ(普通、スクリーンを部屋幅ギリギリの大きさのものを入れたがる人が多いので、LRが壁にぴったりほとんど接している、というところは少なくない。オーオタなら全員、このSPセッティングは音響的には×なのを知っている…)。LR間は3.5MLPとの正三角形を形成しており、これは伊豆の拙宅より1M近く長い感じ。

  

サラウンドとサラウンドバックは、さすがに同じ距離(3.5M)はLPから離れてはいませんが、角度はPerfect(私は常々、距離は電子的に補正(Delay)できても開き角は補正できないので、「角度」が一番重要と繰り返し主張してます!)で、目測ですがサラウンドがほぼ90°くらい、サラウンドバックが150°あたりでした。サラウンドバックの方がややLPに近いのですが、その代わりこちらはサランネットがかけてありました(笑)。

Img_2689LPの背後には、機器のラック、その後ろにDiscのラックがあり、どちらへもゆったりとアクセスができる空間が取られているので、恐らく、LPから背面の壁までは2M以上はあると思います(これ、反射の観点から、とても重要!ウチの東京の書斎のように壁を背にしたソファで聴いちゃ、「ピュア」とは呼べないわな!=泣)。

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第二層のKEF LS50の位置もAuro-3Dのマニュアル通りで完璧でした!第一層の5chとの垂直関係、仰角、スピーカーの向きの3ポイントとも、<入交氏お墨付きの!伊豆の拙宅>とほぼ同じ感じに見えました。

 

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しかもその取り付け金具がとてもガッチリしていて、これはいいな、と思いました。やはりここの剛性が甘いと共振を招くし、なにより、地震の時に怖いです(汗)。スクリーンメーカーのオーエスのLineUpで見つけたそうで、これは他の方も是非参考にしていただきたいです。

 

部屋の内装は、様々な音響的仕掛け(拡散・吸音)がしてあるようですが、最も目に(耳に)ついたのは、壁に濃紺の「布」が張ってあった点。これはシアター用には迷光を防ぐとともに、オーディオ的には高音の反射を吸収するので、高域はかなりDeadに私は感じました。でも映画で最も重要なセリフの音域は結構ツヤを感じて英語の子音なども聞きやすかったので、中域はそこそこLiveかもしれません。低域に関しては、床が全面コンクリート敷の上に床板なので、「こりゃ、もしかしてマンションみたいに低音の逃げ場が無いんじゃ?」とイヤな予感がしましたが、そこはさすが、TrinnovOptimizerがきれいに整えていて、不快なボワつき音(定在波)とは無縁でした。

 

外形的な紹介はこの辺にして、肝心の「試聴」と行きましょう!

 

すでにお部屋に通していただいた時に、X1さんが拙宅でお聴きになって気に入られてご自分でもお求めになった、RCOGattiの『春の祭典』(BD, Auro-3D 9.0ch)がBGMV付き)風にかかっておりました。これは私の愛聴盤でもあるので、即座に反応! 部屋に入ってすぐの第一印象が、「S/Nが無茶苦茶いいな、これ」でした。エアコンの音が気になるぐらいでしたから(笑)。

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これは言うまでもなく、この部屋の防音性能の高さと、機器類のクオリティの高さ、電源・ケーブル回りの吟味、などの成果ですが、それなら前の部屋も同じです。でも明らかに前のお部屋よりさらにS/Nが良い。

 

なんでかな?と見渡すと、やはり、壁の布のお陰ではないか、と思いました。映画館とコンサートホールって、入室した時の「ザワ感」が全く違いますよね。この違いは言うまでもなく前者がDead、後者がLiveな部屋の作りになっているからです。伊豆の拙宅は、庭木に集う鳥の鳴き声が聞こえる防音性の低さもさることながら(汗)、ここ「シン・X1邸マルチルーム」に比してかなりLiveなので、その差が大きいな、と喝破しました(笑)。

 

さて、BGMモードから「本気モード」にチェンジして、そこそこの音量で(汗)、最初からもう一度『ハルサイ』をお願いしました(スクリーンは上げてもらいました。やはりスクリーンで音が反射するので、スクリーンを上げた方が音に奥行きが出ます。私は伊豆ではAuro-3Dを聴くときは、映像付きのソフトでもスクリーンは出しません)。

 

この時のチェックポイントは、「序奏」後の「踊り」のパートの再生で、Auro-3D独特の音場である、「平面波」が正しく形成されているか?です。

 

実は、先の訪問記に書いたのですが、旧X1邸は、部屋がデカすぎて(笑)、SP同士の距離が離れすぎて、さらに空間容量があり過ぎて、「平面波」の形成がイマイチだったんです。ほとんどLRだけで頑張っている音でした。

 

今回は…迫ってきました!面で!低音が! 写真では暗くて見にくいかもしれませんが、Before/Afterのフロント面6台のSPの位置関係を見比べてみてください。

 

P(以前のオーディオルーム)Img_1882_20240709101601

 

旧邸では、やはりLS50の「守備範囲」を越えた配置だったんですね。新居ではDefender間の距離がコンパクトになって、簡単には低域を後ろに逃がさない「鉄壁の守備」ができたようです(笑)。

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ここで、「試聴に入るときにプロの入交さんが必ずやる、オーディオチェックをしてみましょう」と提案し、持参のAuro-3D用のチェックディスクを取り出しました。

 

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これは単純に13.1chAuro的に正しくチェンネル分けされているかどうかを確かめるもので、各チャンネルごとに音が出るものです。

 

BDですので、PioneerLX800Discをいれて、メニュー画面から「Auro-3D 13.1ch」を選択して再生すると・・・

 

え、ええーっ(冷汗)

 

第二・三層から音が出てない・・・正確にいうと、フロントハイトLCRから出るべき音がその真下のLCRから、サラウンドハイトから出るべき音が、サラウンドSPから出ている。Trinnovの表示では、「DTS 7.1ch」と認識されてしまっている。これは明らかに、第一層の5chに折りたたまれている、第二層の音をUnfoldできていない。急遽、この問題を解決するのに6人のオヤジ(笑)が総力で、ああでもない、こうでもない・・・と。

 

この先は前回のブログとレス欄を読んでいただきたいのですが、 何とか解決したら、今度は、サラウンドハイトChの音がサラウンドの上にあるSPではなく、リアハイトの位置にあるSPから鳴るという、前回の訪問時に指摘した問題がまだ残っていることに気が付き、「あれ、これリアハイトの無いセッティングのデータを作ることで解決したんじゃ?」というと、「あ、設定切り変えるの忘れてた!」とX1さん(笑)。

 

ここまでで30分近く使ったかしら。「Auro-3D友の会」のオフ会なのに(滝汗)。もう私の持ち時間は終了(他の4人も当然聴きたいソフトがあるので、私一人で独占するわけにはいかない!しかも、午後は私以外の皆さんの「本命」であろう、2ch部屋に移動しないといけないし)。「まあ、明日また来ますから」ということで、初日は私的にはここまで。

 

【二日目:音場・音像・音質編】

 

二日目は、私とKKさんの二人だけで「抜け駆け的に」(笑)お邪魔しました。私は一応「会長」(笑)として、Auroシステムだけは責任を持って(?)きっちりと前回との比較検聴をしなければならないという使命感があり(笑)、前回使用したソフトをPCに入れて、持参してきたのです。本当は初日に他のメンバーの方が居る中でも再生しようと思っていたのですが、前述のように思いもかけない「トラブル」が発生し、時間切れになったため、翌日持ち越しとなりました。

 

例によって(笑)、MacTrinnovにつないで、非売品のAuro-3D Nativeソフトをいくつか聴かせていただきました。

 

その詳細は事情があってここには書けません(詳しく知りたい方は、今度の「懇親会」で!)が(汗)、素晴らしいソフトで、お部屋に3人しかいない状態で(人間は「吸音材」なので、人数が多いと音場が狂うんです、実は。キャリブレーションの時と同じ人数がベスト!)、おしゃべりもせずに(笑)真剣に聴かせていただきました。

 

その結果(笑)、前日からうすうす気が付いていたことに確信が持てました。それは、センターSPを交換した成果です。

 

前の訪問記にも書いたのですが、ぶっちゃけ、旧邸では、センターレスの方が音がよかったんです、マルチでも(汗)。その理由は、あきらかに、LRとの音質が揃っていなかったからです。ピアノソロなんかでも微妙に音がにじんでいるような感じがあったんですが、今回は、そのような違和感が全くと言っていいほどありませんでした。シン・X1邸のセンターは、Auroのマニュアルが要求するLCR同一SPではありませんが、LRとほぼ同じユニットで構成されていて、しかも、数日前にポジションを数センチ上げてLCRの高さをある程度揃え直して再キャリブレーションをしたそうです。

 

その成果は意外なことに、「音場面」で、サラウンドやサラウンドバックの音のつながりの改善にも寄与している気がしました。前回お邪魔した時は、「何を聴いても」(笑)LRが主役で、それ以外のSPは「バラの花束の霞草」(笑)だったのですが、今回はちゃんと一体感があって、全部のSPが正しく「消えている」。これはちょっと自分でも論理的には説明ができませんが(汗)、センターが第一層の中で音色的に浮かなくなったことで、LCRの前方からの音だけではなく、S, SBからの音にも聴感上いい影響を与え、LRを含めたすべてのSPが消える(これは、マルチ再生、特にAuro-3Dでは最高の誉め言葉。拙宅でもMyuさんにそう言われた時はお世辞でもとても嬉しかった! ちなみにATMOSだとSPが<残る>方が望ましいかも・・・)という、最上の状態に近づいたようです。

 

それから、前日に「平面波」形成効果だけは確認した、第二層のSPレイアウトの改善の効果ですが、もう一つ、「音像面」で、「奥行き感の表現」の向上を私は聴き取りました。前回訪問時も今回の訪問時も自分の記憶のReferenceは言うまでもなく、自分のセット(伊豆)であり、この伊豆のSPレイアウトは前回のX1邸評価時とほぼ変わっていないので、自分の中の比較の「軸」は前回と同じなんです。その「軸」から見たときに以前の部屋では、「なんか、ちょっと平面的」な部分が感じられたのですが、今回はくっきり3D(笑)。

 

これはセンターSP交換の効果もあるかもしれませんが、私の長年の(笑)経験では、第二層の働きが奥行き感には効くんですよ、不思議なことに。だから、多分、以前は「そこにSP=音があるだけ」(ATMOSの映画ならこれで十分)でAuro的には有機的に機能しきれていなかった6台のLS50が、SP間の距離が縮まり、空間容量がコンパクトになり、さらにこれが恐らく決定的だと思いますが、「サラウンドハイト」が、<正しく、サラウンドの真上で鳴る>(前回は、「リアハイト」が鳴っていた)ことで、Auroらしい「有機的な結合」を果たしてきたのかな、と分析してみました。

 

最後に、これは初日から、いや前回、前々回から変わらずの印象ですが、拙宅のReferenceとは「音質面」でかなり違う。味わい深い。うちのは「8年物」ぐらいですが(最近、チャンデバ化して余計若々しくなったかも…)、X1邸の音は「24年物」ぐらいの感じ(私は昔、1年間スコットランドに留学していたので、チト、ウィスキーの味にはウルサイ=笑)。しかも、X1さんによると、「まだまだ部屋のエージングが進んでいない。あと数年は音が落ち着くまでにかかる」と言われるので、数年後には、「40年物」ぐらいの超高級ヴィンテージ味になっているのかも?!

 

今からすでに、「再訪」が楽しみです!!!

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