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2024年11月

2024年11月24日 (日)

結局、「玉突き事故発生」…Amator IIIよ、どこへ?(泣)

故障したエアコンの入れ替え工事が延期されたため、2週連続で伊豆に行く羽目に。「羽目に」と言いながら、アンプを変えたばかりなので、半分、ルンルンで()

 

さて、前回、Sonetto VIIIのツイーター用のパワーアンプをSoulnoteA-0に交換した、ということを報告しました。

 

P 【A-0はそれぞれの場所へ。なるべく隠したいので、ソファの下、階段の下、棚の下に(笑)】

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しかーし、「これで何事もなく、タダの入れ替えでは済まないだろうな・・・」とこれまでの経験から恐れていたのですが・・・

 

このBefore/Afterの2枚の写真を見て、これまでとどこか変わったところがあることに気が付きますでしょうか?

 【Before】

Before

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【After】

 

かなりレベルの高い「間違い探し」だと思うんですが、実は、Afterは、Amator III用の台に乗っているのが、Sonetto Iなんです。で、アンプ類の横にあるのが、Amator III。そう、入れ替えたんです。

 

ここで、私のブログを継続的に読んでいただいている方は、「えっ、この前、Amator IIIAuroシステムに組み込んだんじゃ?」と記憶されている方もおられるかもしれません(まあ、普通、そんな人、居ないな=爆)。

 

それは、この記事でした。まだ2か月前です(汗)

 

自分の記事からで恐縮ですが、ちょっと関連個所を引用します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

実は過去にも、Amator III+OctaveをAuro-3Dシステムに組み込んでみたことがあるのですが、どうも違和感が拭えない。主役のLCRと音色が異なるので、「悪目立ち」することが多々あったのです。イマーシブオーディオは<一体感・包まれ感>が重要なので、あるSPが「僕、ここに居ます!」となってはダメですよね(笑)。

 

ところが! この春からLCR+SLRとして使っている主力のSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプで運用しているのはすでに何度も書いていますが、それ以来、実はどうもSBLRに使っているSonetto Iの音が、逆の意味で「悪目立ち」することを感じるようになっていました。チャンデバ化すると全体的に音が鮮烈になるので、パッシブのSPの音が「ぬるく」(笑)感じる様になっちゃうんですよ(これはあらゆるチャンデバシステムに共通する音質で、最近、私の耳はすっかり「チャンデバ耳」に!)。

 

「これはもしかするとAmator IIIの方がまだマシでは?」

 

Amator IIIはバイオリンや女性ボーカルなどは私好みの甘い音がする素敵なSPですが、やはりいいマグネットを使っているからか、はたまたいいネットワークをつかっているからか、音のキレはSonetto Iよりあるんですよ(マイケル・ジャクソンがちゃんと聴けますから!)。Octaveも真空管ではありますが、一般的にイメージするような「茫洋とした、おおらかな音」を出すアンプではありません。しかも、これをSBLRにすれば、150度に位置に置くのはたやすいことです。

 ・・・・・・・・・・・・・・

ここにウソ偽りは無かったのです、当時は(汗)。ではこの2か月の間に何があったかって? そりゃ決まっているでしょ、先週のA-0の導入ですよ!

 

A-0を高域用に導入したら、またまたAmator IIIOctaveがプカプカと浮き始めまして()A-0の出す高音は、非常にS/Nが良くさわやかで、Sonetto VIIIではボーカルが皆さん、5歳は若返っちゃたんですよ()。逆に元来、Amator IIIOctaveは普通のスピーカーとアンプの組み合わせより、10歳は歳嵩を増すので()、こうなると、なんか、コーラスの後ろの方に、ポツンと年増が入っている感じになってしまって(汗)。先の記事に書いたように、音のメリハリやキレなどはAmator IIIの方がチャンデバ化したSonetto VIIIと近いことは近いのですが、この「歳の差」は如何ともしがたい・・・

 

ということで元に戻そうと思ったのですが(これだけならPC上で簡単にできる)、ここで閃いたのが、「もしかして、このスピーカー台、Sonetto Iにも使えないか?」ということ。この台はAmator IIIに付属してきたもので(今は別売りかな?)、足元が人工大理石になっていて、Amator IIIの底部と素材を合わせてある、オシャレなもの。もちろん、最近のブックシェルフのお決まりで、台との間はネジで緊結されています。

 

よくよく考えると、Sonetto Iの底部にもネジ穴がある。これは梁に逆さ吊りする際に、このネジ穴を利用して固定したのでよく知っています。「もしかして、Amator IIIとネジ穴の位置が同じじゃ?」。

 

で、日曜日、ヒマだったのでやってみると・・・やはり、ピッタリ()

 

これ、合わなければ「ただ、台の上に置く」という手もあるにはありますが、その場合は次のStepに進むのは止めようと思っていました。でも、合ってしまった(笑)からには進むしかない!

 

ここで、Sonetto IAmator IIIの台に乗せてサラウンドバックにしても、パワー供給源にOctaveをそのまま使うんじゃ、やっぱり音色が合わない(一応、Sonetto Iと繋いで鳴らしてみました。やっぱり、「真空管」でした!)。

 

こうなりゃ、駆動するアンプも変えないと、音色をSonetto VIIIに近づけられないのは明らか。で、「Sonetto Iもチャンデバ化しました!」というのは悪い冗談で(さすがにまたバラして<改造>するのは面倒だし、測定やらチャンデバのパラメーターの設定やら、考えるだけで・・・)、でもチャンデバは無理だけどバイアンプにすることにして、ツイーターをPA-16で、ウーファーをSTA-9で鳴らすことにしました。実は、かつて、Sonetto VIIIをバイアンプにしていた時には、上(ツイーターとスコーカー)をSTA-9、下(ウーファー)PA-16につないでいたんです。その名残で、このSonetto Iも同じにしていたのですが、今回、両者を比較試聴した結果、より、今のツイーター=A-0、スコーカー=STA-9BTL)、ウーファー=PA-16に近い音色を出すのは、上下を逆にした組み合わせだと判断したんです。

 

これは何度も書いてますが、STA-9はデジアンのくせに()意外に音が和らかい。逆にA-0はアナログのくせに()意外にCoolな音を出す。私は歳を取ってからは甘い音が好きで、だからSonusに囲まれている()のですが、前も書いたように、今はきっぱりと、甘いSonusAmator IIIOctaveの2chシステムに任せ、Auroシステムの方は、ハイレゾ・ハイスピード・クリーン路線で行くことにメイン5台をチャンデバ化した時に腹を決めたのです。

 

ですから、音色を決める高域にこれまでのSTA-9ではなく、Pascalのデジタルモジュールを使ったPA-16で「Coolに決める」()ことにしました(これ以外のSonetto IIIはすべてPA-16だし)。

 

さて、その効果は?

 

ここで、オーディオ雑誌なら、「激変」って書くんでしょうが、Fairに言えば、まあ、気分ってやつですかね()。でも、全く同じツイーターに、Auro-3Dの文法に則った、正しい配置で囲まれるというのは気分的にはいいですよね。実際、私の持っているマリンバは第一層が7chに入っているので、マリンバの音がホール全体に浸透していく際の「包まれ音」の再現に際し、Amator IIIが入っていると、どうしてもそこだけ音が少し目立っていたのが、目立たなくなりました(スピーカーが消えた、といえばこの場合は誉め言葉なのかな?)。

 

さて、「次なる大問題」がさらに玉突き的に発生しておりまして(大汗)。現在はTentativeAmator IIIOctaveを、かつて、Sonetto Iが「ATMOS映画の時の、サラウンドバック」として滅多に出番のない隅に追いやられていた、まさにその場所に(泣)。

 

かわいそうに、今やAmator IIIは「足を無くしてしまった」()ので、もうどこへも行けません。かつては、「2chブックシェルフとしての理想的な位置」にキャスターで移動させて、<たまには>女性Jazzボーカルなどを歌っていたのに・・・。今の「押し込められた位置」では、後ろの壁(ガラス窓)まで50センチぐらいしかなく、「いいブックシェルフ」が求める、<左右と後ろの壁から最低1Mは離す>という黄金律を守ることができていません。さらに、足元は安物のスピーカー台で・・・

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実際、音を出してみると、以前より低域がボケ、膨らみます。夜中に小さな音で再生するなら「ラウドネス」効果になっていいかもしれませんが・・・。

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うーん、これでいいのか、Amator III? 一応、拙宅のオーディオ機器の中では、これとOctaveは、それぞれ小型ブックシェルフとプリメインアンプとしては、まあハイエンド系なのに・・・。ハイエンドにはハイエンドにふさわしい環境を与えてあげたいんですが(泣)。

 

実は、元々このAmator IIIOctaveのカップルは、最近はすっかりオーナーの寵愛を受けておらず、月に一度の「通い」()もない状態がもう何か月も続いているのです。それゆえ、ある方に、「もっと可愛がってくれる人のところにお嫁に出したら? このままでは可哀そう」と言われてしまい(汗)、実は、これを購入した某秋葉原の有名店に、「買取り、してるの?」とメールを出したら、お世話になっているSさんから「OO様と出会ったのがSonus faberのスピーカーですし、色々とお選びいただいた結果ですので寂しいですが、使用していなければセカンドユーザーへというのもありですかね」という温かいお言葉とともに「Yes」の返事が来ていたのです。

 

自分でも迷っている中、この前関西に出張した際にお会いしたモンテモンテさんにこの話をしたら、「売らない方がいいですよ、絶対。一度は惚れて買ったSPであれば、いつかまた絶対聴きたくなるもんですから」と言われ、「まあ、確かに、本気で惚れた初恋の相手はいつまで経っても忘れられんものだもんなあ」(下世話なたとえですみません!現在の職業属性的にはかなり不適切発言ですが=爆)と納得。<初恋の相手>とは「いつかまた」、というといろいろと難しい()面もありますが、<初恋のSP>なら、「いつかまた」、がいつあっても誰にも文句は言われませんもんね()

 

それにしても、Amator III+Octave、どこかでちゃんと愛でてあげたいなあ。これ、今後の重要な課題です!

2024年11月21日 (木)

Tomy邸RevisitedーTrinityの成果!

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先日、入交ご夫妻にお会いしに関西に行った「ついでに」(イヤ、これはどちらが「ついで」であったかは・・・笑)、Tomy邸にお邪魔してきました。ただ、今回は前回の訪問時と異なり、せっかくの「単独訪問」ではありましたが、残念ながら時間的制約があって、2時間ほど聴かせていただいただけでしたが。

 

それでも、十分報告に値する工夫と変化が随所にみられました!

 

私が今回、Tomy邸に伺うのは少なくとも3回目で、前回お邪魔してから14か月ほど経過しておりますが、その間の「改良・改善」については、ご本人自ら、以下に詳しくお書きになっておりますので、この先をお読みになる前に(笑)、ご一読ください。

 

https://philm-community.com/tomy/user/diary/2024/10/09/27911/

 

この記事で書かれている中で、1の「ムンドルフのエアーモーションツイーター」を追加した、という点だけは、前回お邪魔した時には既についていて体験済みだったのですが、さらに「ネットワークの改良」を行っておられる、という点が前回との違いで、2の「フロントワイドの変更」、3のリアサラウンドとトップミドルの変更-などに関しては、<初体験>でありました。

 

さて、Auro-3Dのみならず、5.1chも含め、ClassicVocalJazzといろいろなソースを聴かせていただきましたが、全体の印象を一言でいえば、「広くなった。厚くなった」

 

私は一応「会長」(笑)として、いろいろな方のAuroシステムをなるべく聴かせていただくよう努め、それをこの拙ブログで報告することで、「Auro-3Dを巡る公共圏」を活性化させようと日夜努力している(笑)わけですが、訪問記というのは、誰でもそうだと思いますが、自分のシステムを<基準点>として、その比較の中でしか評価をすることができませんよね(まったく音の評価をせず、機器の紹介と、「聴いてきた」という事実だけを書くなら別ですが=汗)。

 

私は一応、伊豆にメインのソナス+StormAuroシステム、東京の書斎に「混成SP=(笑)」+DenonAuroシステム、リビングにKEFPioneerAtmosシステムという3つのマルチチャンネルシステムを所有しており、どなたかのところを訪問した場合は、必ずこれらとの<比較>を無意識的に、あるいは意識的にしていることは言うまでもありません。

 

前置きが長くなりましたが(汗)、正直言って前回のTomy邸は、「Jazzはいいけど、他はちょっと私の好みじゃないなあ・・・」という感想であったことは、行間を読める方であれば(笑)前回の記事からもくみ取れると思います(Tomyさん怒らないで!この後アゲルから!)。

 

今回は、「教会音楽もオケもオペラもイケるじゃん!!!」という、All rounder的なシステムに「成長」しておりました(まあ、私の好み、という極めて主観的な尺度ですが=汗)。

 

まず、「広くなった」方ですが、これは一番効いてそうなのは、ネットワーク関係のGrade Upかもしれません。音的な「広さ」というのは、私は高域の伸び・透明度と、奥行き感の表現力に特に感じるタイプなのですが、自分の最近のチャンデバ体験からも、「ネットワークパーツのクオリティアップ」は特に高域に於いてわかりやすく、結構な威力だろうな、と想像がちょっとつくようになっているからです(笑)。

 

特にAdd-onされているSTとの間のネットワークの改善は効いてそうです。以前お邪魔した時は、「これほどの広さを感じなかった=STを加えた恩恵をそれほどまでは感じなかった」ので。

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また、これも自分の経験から自信を持って言えることですが、すべてのSPPolkという同じブランドに揃えた=音色の統一感が増した、というのも、確実に聴感上の「広さ」につながっていると思います。音色が混在していると「あらゆる音が前に出てくる」(書斎で日々経験しております=汗)感覚になるので、Jazzなんかだといい時もありますが、ピアノの奥行きや教会の尖塔の高さを感じたければ(笑)、SPの同一化を進めた方が効果的なんです。

 

加えて、Tomyさんご自身の記事には書かれていませんでしたが、もしかすると、これも影響がありそうです!

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これは光HDMIケーブルなのですが、ソース機器とAVプリとの間の銅線HDMIケーブルをこれに変えると、相当な音質アップがあったそうで、実は私も今取り寄せているところです(今週末、伊豆で実験してみます!)。

 

次に、「厚くなった」方ですが、これはFWの強化が最大の貢献者でしょう。Tomyさんのお持ちのAVプリは、Monoprice HTP-1という輸入品で、実はこれ、FWを「常に」(つまり、Atmosでも、Auro-3Dでも、5.1chでも)in-Effectにできるという、世にもまれな(笑)機能があるらしいんです。

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ご存知のように、Auro-3DにはFWは定義されてないので、私のStormDenonも、Auro-3DNativeソフトの場合は、「拡張モード」を使ってもFWから音を出すことはできません(13.1chのフルスペックまでの拡張に留まる。ただし、Stormは、5.1chソフトであれば、AVプリ側で認識している全スピーカー=拙宅の場合だと、9.1.7.118ch=を鳴らすモードがあります)。

 

しかし、このAVプリは、Auro-3Dソースでも第一層をFW込みの9chから出力をさせられるようです。ただし、ヤマハやPioneerなどと同じく、Auro-3Dのデコードはできるが、HCTOPの二つのSPAVアンプ側が対応していないので、Auro-3DMatic)は、最大9.1.4となるようです。

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このFW自体は、前回の訪問時にもあったはずなのですが・・・今回は一回りも二回りも大きなものに変更されていて、大幅にBeef Upされていました!f特までは比較していませんが、当然、SPのエンクロージャーもウーファーユニットも大きくなっているでしょうから、中低域の音の厚みが増したことは間違いありません。特にオケものを聴かせていただいた時、コントラバスやチェロやビオラの中低域部の厚みを前よりもかなり感じたのは、このFWが貢献しているに違いない、とにらみました(笑)。

 

「塵も積もれば山となる」-とは言いますが、オーディオの世界でも同じなんですね(「チリ」に例えては申し訳ないが=笑)。好奇心・探求心・向上心のTrinityの成果を体験できました!

2024年11月17日 (日)

Soulnote A-0を3台取り寄せ、チャンデバの調整をしてみました

これは前回の続報です。

 

自分の頭の整理のためにも、前回の記事で書き散らした、「なぜ、今回、ツイーター用のパワーアンプを交換したいのか?」をまずは箇条書きに。

 

  • 音源(単独楽器のフォルテ部分)によって、たまに「強すぎる音、嫌な高音」がしていた
  • 残留ノイズ音レベルがやや高めであった
  • STA-9Mid専用に使いたい(BTLまたはSingle
  • Low, Mid, Highをそれぞれ異なるパワーアンプを使って各ユニットとその受け持つ帯域の特徴を最大限活かせる組み合わせにしてみたいという、「高校生の頃からの好奇心」(笑)。

 

そのうえで前回の2chによる、A-1との比較試聴を経て、今回、A-0を3台取り寄せて、LCRSLRの5つのツイーターにつなぎ替え「マルチとしての最終形」としたうえで、この状態で確かめてみたかった残る懸念点は(気に入らなければ返品・中古売却→新たなアンプ探しの覚悟=汗)、

 

1.10Wの出力で問題ないのか?

2.Auro-3DNativeソフトで再生した時、他のSPとの音質的な違和感はないか?

3.Auro-3DNativeソフトで再生した時、A-1と迷った「奥行き感」の表現力に問題はないか?

4.A-1と迷ったポイントである、相対的に「やや華やか<過ぎる>」音(中低域の再生音もA−1に比してやや腰高になっていた)を、チャンデバ側の設定を変えることで解消できないか?

 

の4点であった。

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さて(笑)。

 

まず、1に関しては、スピーカーユニットを単体で取り寄せて自作されるレベルのマニアの皆さんには既知の問題だと思うが、ついこの前まで「初心者」を名乗っていた(汗)私には、「出力ワット数の小さいアンプのほうが、危ない。スピーカーユニットを壊しやすい」ということを諸先輩方に教えていただくまで知らなかった(汗)。私は「ツイーターは繊細(=壊れやすい?)そうだから、300Wとかの出力のあるパワーアンプではヤバイだろう」と思って、小出力アンプから探していたのだが、これはとんでもない誤解だそうで・・・

 

SPユニットを壊す、というのは「コイルを焼き切る」ことだそうで、それが起きるのは直流電流が入って一定時間以上継続的に入力された時。そして、この直流がパワーアンプから出てしまうのは、出力が飽和(クリップ)するときで、これはつまり、アンプの最大出力を超える出力を出そうとすると起きる現象だそうである。

 

つまり、「小出力アンプを使って大音量で聴くとき」が<一番危ない>。出力に余裕のあるアンプでは頭打ち=飽和=が起きにくいので、むしろ安全とか。うーん、知らなかった・・・よく、「最大入力200W」とカタログに書いてあるハイエンド系SPに、「最大出力1000W」のハイエンド系パワーアンプを繋いでいるマニアがおられるが、私はいつも「スピーカーが吹っ飛んでコーン紙が破れるんじゃ?」とフォルテパートでは内心ドキドキ(ちょっと盛ってます!)しながら試聴させていただいていたのだが・・・むしろ、伊豆のAmator IIIOctaveで、Octaveの出力が低い方のモード(最大出力15Wぐらいかな?=音質的には繊細感が増す)で、リストのピアノ曲を「普段、Auro-3Dシステムで聴くレベルで」(笑)再生していたときに、一度、フォルテッシモでOctaveがシャットダウンしたことがあったのを思い出した。あのときのほうがよほど「危なかった」んですねぇ・・・(大汗)。

 

先の記事のレス欄でも、いつもご相談に乗っていただいている元エンジニアのK&Kさんからも、「Auro3Dさんの場合、TWを比較的低い3KHzあたりから使われること、TWがソフトドームなので能率がやや低めだと思われること、Auro3Dさんが大音量派でピアノなどは生演奏よりも大きな音量で聴かれることを考慮するとクリッピングが起きる可能性を完全には否定できません。一番危険なのはピアノの高域の強烈な打鍵のような気がします。」とのご心配をしていただいているので、今回、正規の(笑)Auro-3Dフルシステムに3台のA-0を組み込んで、手持ちのAuro-3D Nativeソースの中から、なるべく多種多様な演奏・楽器のものを選んで、「自分が聴ける(笑)最大音量」でフォルテの部分を中心に次から次に再生してみた。

 

万一、5台中1台でも、一度でも「落ちた」ら、または何か不快な音(歪?)がしたら、「全部返品するか売却して、もう少し高出力のまた別のアンプを探そう」、という<悲壮な覚悟>だったが(汗)、幸い、大丈夫だった・・・まずはFirst Step、クリア(笑)。

 

そうなると次は「音質」の再確認である。前回すでに2の懸念についてはやってはみたが、それは所詮、A-0で駆動する1台のSonetto VIIIと、PA-16で駆動する1台のSonetto I or IIとの比較に過ぎない。実際に13.1chシステムに組み込んでの「音色の違和感」はないか、これも上述の「飽和」の有無の実験と併せて<耳をそばだてて>チェックしてみた。これをチェックするのに最もふさわしい音楽のパートは、先の「飽和」チェックポイントの直後に往々にしてくる、「残響音が空間に消え入るところ」である。LCRを中心にした直接音による再生が終わるころ、サラウンドバックやハイト群のSPDelayされた残響音を受け持つのだが、ここで音色が大きく異なると、バイオリンのソロだったはずが残響音でビオラになったり(笑)、ドラの音だったはずが、残響音でシンバルになっていったり(笑)するのだ。

 

自身による多様な「検聴」の結果、問題は感じなかった(Amator IIIOctaveの方がよっぽど浮く=汗)。

 

3については、これも前回の記事で予想した通り、私の駄耳では、Auro-3DNativeソフトとシステム自身に内在する「2chとは技術的にも・理論的にも比較にならない」奥行き感・立体感が十分感じられて全く問題なし。まあ、Ch数を半減するのならともかく、たかがアンプを変えたぐらいでAuroシステムの最大の特徴である立体感がいきなり損なわれるほどの違いが出るわけ無いだろうとは思ったが(笑)。

 

最後に、今回個人的に最も「楽しみに」していたのが、4の音色の操作の可能性の追求であった。これはプチ自慢になるが(笑)、CO値をいじるだけで、「全体の」音色が変わる、というのは、Passiveの普通のスピーカーを買い替え続けた「苦節40年以上」の間、全く知らなかったことである(恐らく、これを読んでいる方でPassiveしか使ったことがない方は、以下の部分は「驚き」以外の何物でもあるまい)。これまで私はスピーカー選びの際に、カタログに乗っている「クロスオーバー周波数」が何を意味するのかすらあまり意識せずに(汗)、ただ、自分の耳で聴いて気に入ったSPを選んできた。しかし、この春に諸先輩方の多大なご協力を得て生まれて始めて「チャンデバ・マルチアンプ」の世界に足を踏み入れてから、このCO値が全体の音色に多大な影響があることに気付かされたのである(Passiveの場合は、出音の音色を変えたかったら、ソース機器を変える、アンプを変える、ケーブル類を変える、などのテクニックを駆使されると思うが、CO値の変更による音色の変化の大きさはこれらの比ではない)。

 

例えば、わかりやすく2Wayで考えてみてほしい。CO値が2kHzのもの(=A)と、3kHzのもの(=B)があるとして、この両者が全く同じユニットを使っている場合、2.5kHzの音は「同じに聞こえる」だろうか?

 

これは2.5kHzの音をシンセサイザーで合成して再生した場合は、「理論的には」同じに聞こえないとおかしいことはおわかりになるだろう。しかし、実際の楽器の「ラ」なら「ラ」の音は、フルートとクラリネットでは異なることは経験的に知っている。これは基音の「ラ」(例えばこれを2.5kHzと考えてみる)以外に、様々な付帯音・倍音が付いてくるのが、「楽器」というものだからである(電子的合成音とはここが異なる)。

 

では先の例で、2.5kHzを基音とするフルートの音は、ABSP(繰り返すがユニットは同一)で、どのような音色の違いが出ると予想されるだろうか?

 

これは非常に急峻なスロープを使った場合、Aでは基音と付帯音の殆どの部分はツイーターが受け持ち、Bではウーファーが受け持つことになるのだが、この違いが、音色に大きな違いをもたらす。

 

簡単に言うと、Aのフルートの「ラ」音は、Bより華やかになり、逆に言えば、Bの「ラ」の方が落ち着いた音になるのだ。要は基音近辺の付帯音も、Aはツイーター主導、Bはウーファー主導になるからだ。だからSPメーカーでパッシブネットワークの設計者は、「高域に華やかさを持たせたい」ならツイーターのCO値を下げ、「落ち着いた音を出したい」のなら、上げるはずである。このCO値の操作による音色の操作は、もちろん、ユニットそのものが分割振動を起こすような帯域は普通は使わないので、ユニット自体のf特による限界はあるが、先にも書いた通り、笑えるぐらい音色が変わる。しかも、スペアナでみた場合は、どちらもほぼ同じf特カーブとして現れるのに、である。人間の耳は、測定機より敏感なのだ!

 

春先から「この技」を知ってしまったワタシ(だから、Active化した際、「これからはSPを買い替えなくても、パラメーターをいじるだけで永遠に音色の変化を楽しめますよ」、と先達に言われたのだった)は、今回の不満点(A-0だと綺羅びやかなのはいいのだが、やや全体に腰高な音色。私はピアノの右手は華やかなのが好きだが、左手の重みで感動するタイプ=だから以前どこかで書いたように、ドビュッシーの「沈める寺」が好き)を、なんとかこのテクニックを駆使して解消できないか、と今回の挑戦を「楽しみに」していたというわけである(笑)。

 

チャンデバ未経験者向けの前置きが長くなったが(汗)、以下のような4種類のHighMidとの間のCO値を5台のSonetto VIIIに全て適用して瞬時に切り替えて試聴できるようにした。つまり、3500から5000まで、500Hz刻みにした4つのセッティングを作ったのである。これまでのDefault3500だったので、これを引き上げることでMidによるカバー領域を増やす=高域の音色を落ち着かせることを狙うのだが、その塩梅は実際にやって自分の耳で聴いてみないとわからない。

 

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ちなみに、Sonetto VIIIのパッシブネットワークのMid-HighCO値は3000である。これはチャンデバ化・アンプ直結にしたときに、Default値では高域にキツさを感じ、ツイーターのカバー領域を減らしてスコーカーのそれを増やして対応しようとして、3500に上げたのである。今回、パワーアンプの入れ替えで、キツさはなくなったのだが、「軽さ」が出てきているため、もう少しMidに頑張ってもらえば改善できるのでは、との狙いがあって、更に上方のセッティングを作ってみた。なお、今回、CO値の上限を5000としたのにはもちろん合理的?理由があり、以前、Myuさんと一緒に厳密にユニット単体のf特を測定した際に、Sonetto VIIIMid5000あたりから6000にかけてピークアウトしており、その先は恐らく分割振動だろうということで、使えるのはせいぜい5000までとみているからだ(ちなみに、Mid上限のスロープはLR24Highの下は、LR48)。

 

P (青いf特がスコーカー、緑がツイーター)

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ということで、比較試聴に際しては、基本的にはAuro-3D音源を用い、Classicならピアノ、バイオリン、チェロ、ハープシコード、アリア、マリンバ、ビオラダガンバなどの単体音源と、弦楽四重奏、協奏曲、交響曲のすべてを使い、Jazzはピアノ・ダブルベース・ドラムのトリオを中心に、RockだけはAuro-Maticを使用してグランドスラムさんご推薦のNobu’s Collectionを中心に「超念入りに」(笑)比較試聴した。

 

その結果、やはり現行の3500では、ハイ上がり過ぎて、ピアノの華やかさやRockのシンバルやシンセサイザーなどでは「くっきり感」が出るものの、私の好きな音源である女性ボーカルやチェロ、ピアノの左手あたりは音が軽すぎて、しっとり感と重厚感に欠ける。逆に5000にすると、本来小太鼓の軽快な音のはずが、ティンパニーに聞こえちゃったり、ピアノの右手の華麗さ・コロコロ感が失われたり、バイオリンの倍音が、ビオラに聞こえちゃったりした。Rockのバスドラムなんかはものすごく腹に来るのだが。

 

ということで40004500が決勝に残り、微差なのだが、より高域に華やかさを残す4000にすることとした。4500の魅力の中低域の迫力・重みは、4000のままでも、Mid用に用意しているSTA-9をこれまでのSingle接続ではなく、BTLにすればある程度カバーできるのでは、と考えたからだ。

 

ということで、High用のパワーアンプをSTA-9からA-0に変更したことに伴い、チャンデバ側の設定を以下のように変更した。

 

Low (PA-16) CO350(パッシブは270だった)Gain:0dB 

→変わらず

MidSTA-9Single) CO:3503500 Gain:-4dB 

→(STA-9 BTL) CO:3504000Gain:-10dB

High (STA-9, Single CO:3500 Gain:-7dB 

→(A-0SingleCO: 4000 Gain:-2dB

 

オーナーの贔屓目による(爆)感覚では、以前より、中低域が太くなり、高域には華がある。そして全体的にS/Nが上がって、空間の広さと見通しが良くなった(気がする=汗)。

 

プラシーボかどうかは、またどなたかの「検聴」を待つ必要があるが(笑)、実はまだこれで「終わり」ではない。検討すべき事項がもう一つだけ残っている。続きは次稿。

 

【おまけ】

 

一段落してこの記事を書きながら、自分が設定した「CO:3504000」を採用しているパッシブSPって世の中にあるのかな?と思っていくつかの主要SPメーカーの3Wayスピーカーのカタログを調べてみたのだが、見当たらない。「これはもしかして、私の耳がおかしいのか?」と少々不安になったのだが、メーカーのHPではないところに、以下のような情報が。

 

B&Wのスピーカーはクロスオーバー周波数を350Hz4kHzに標準化しています」

 

実はB&WHPも見たのだが、あそこはCO値を公開していないらしい。念の為、モニター的に評価の高い800シリーズのハイエンドと、僭越ながら(笑)、私のSonetto VIIIのカタログ上のデータを比べてみると:

 

801D4  (13Hz 35,000Hz)

TW 25ミリ、SQ 150ミリ、WF 250ミリ×2

CO3504000)?

 

Sonetto VIII (36Hz 25,000Hz)

TW 29ミリ、SQ 150ミリ、WF 180ミリ×3

CO2703000

 

うーむ、偶然なのだが私の聴感によるCO値の選択と、天下のB&Wのエンジニアのそれが同じ結論になったということは、つまりこれは、チャンデバ化とユニット別に異なるアンプの組み合わせによって、Sonetto VIII801D4化したってことか?(それはさすがに化けすぎ?=爆)

2024年11月14日 (木)

センタースピーカーに関する実験結果に対する入交氏の考察を伺ってきました!

先日、関西の某所に於いて、Tomyさんとともに入交ご夫妻とLunchを共にする機会に恵まれました。「なぜ、関西で?」はいずれ明らかになることですので、今は内緒(笑)。

 

奥様とは初めてお目にかかりましたが、さすがに「いきなりオーオタの、Men’s Talk?=ややジェンダーバイアス入ってます=汗=はまずいだろう」と、最初は世間話をしていたのですが、昼間っからビールを飲んじゃったこともあり(だって、お好み焼きですから!)、また、エンジニアご出身のTomyさんは入交さんと初対面だったため、彼も「溜めに溜め込んでいる」(笑)技術的な質問が山ほどあるのは明らかだったので、やはり始まってしまいました(汗)。

 

驚いたのは、奥様も話についてくるどころか、はっきりいって、「Auro-3D友の会会長」(笑)の私よりお詳しい(大汗)。Partnerの仕事の意味と意義をよく理解されておられるようで、微笑ましく、羨ましいカップルでした!

 

さて、ここで終わると「単なる日記」になってしまうので(汗)、このブログの趣旨に鑑み、そこで盛り上がった数多くのAuro-3D関連話を紹介したいところですが、何分、現場の最先端におられる方なので、「これは、まだ公表はできないのですが、実は・・・」というお話ばかり(泣)。ただ、その中で、最近伊豆の拙宅で行った「実験結果」を私がご報告し、それに関する考察をいただきましたので、これなら簡単に紹介しても問題ないでしょう。

 

その「実験」というのは、先の記事で、『カルメン』の2種類のBDに於いて、改めて「センターSP」の役割について紹介しましたが、その際に、レス欄でのやり取りの中で、「まともなセンタースピーカーありのマルチソフトを聴いた経験がない」とCmiyajiさんが言われるので、前回記事にした「ツイーター用のパワーアンプ探し実験」で伊豆の拙宅にお越しいただいたついでに、センタースピーカーの有無に関する「比較検証」の場をセッティングして差し上げたのです。

 

「実験」の概要は以下の通りでした。

 

使用ソフト: 映画版5.1ch (アリアは、Cのみに収録されている) VS Live5.1ch (アリアは、Cに約6割、LRにそれぞれ2割ずつ、音量が割り当てられている)

 

SPレイアウト: Sonetto VIII 5ch構成(SWなし、Dirac Liveなし。ユニット間の音圧と距離補正のみチャンデバでしてあるもの) VS Sonetto VIII 4ch構成(Cなし。同上)

 

被験者:CmiyajiさんとK&Kさん

 

いうまでもなく、4chにおいては、Cへの出力は、AVプリの方でLRSplitされて、Virtual Centerとなるよう、Configureしています。

 

実は今回の被験者のお二人には共通点があり、それはお二人共マルチシステムはお持ちだが、ずっとCレスで運用されて聴き続けておられる、という点。つまりいわゆる「Cレス派」(笑)で、恐らくセンタースピーカーの有用性についてはやや懐疑的なスタンスをお持ちのお二人ではないかと(汗)。CmiyajiさんはAuro-3D対応をしていますが、K&Kさんはしていないという違いはありますが、今回は、Auro-3Dソフトを使っていないし、Auro-Maticも使わない、Native再生で、アリアパートに絞って比較試聴してもらいました。

 

「Cアリ派」の私にはやや緊張の実験でしたし(笑)、お二人がどうお感じになったかは、「Cアリ派」によるバイアス抜きでご本人自身からの詳細な報告に譲るべきで「お二人の真の心の内」まではわからない(汗)のですが、ただ、K&Kさんからははっきりと明示的に、「Live版ではCアリのほうが奥行き感が出ていて、こちらのほうが断然良かった。Cなしだとアリアが前に出てきて遠近感が全く損なわれていた。一方、映画版では、両者の違いはあまり感じなかった」とのコメントを頂きました(私はオーナーですからとっくにこの実験は何度もやっており「いまさら」ですが=汗、前者については全く同意です。後者については「オフセンター」に移動した場合の聴こえ方に大きな違いがあるため、Cレスだと極端に言えば「微動だにできない」緊張感がありますね。Liveの場合は、Cアリなら多少「オフセンター」でも楽しめます)。

 

このK&Kさんの感想を「お好み焼きとビール」の席で(笑)、入交さんにご報告し、「なぜこのように違って感じるのか?」を伺ったというわけです。

 

これに対し、我が師匠(笑)、入交さんは、「Live版の方は、LCRが揃っていることを前提に録音エンジニアが収録をしているため、LCおよび、CRの間にも音の空間情報が入っている。故にこのソースを正しくLCRで再生すると、立体感が出る。一方、同じソースをCレスで再生すると、Cの情報がSplitされて、LCCRの情報が一体化させられる。その際にLCおよび、CRの間に存在する音の空間情報が失われてしまうので、平面的な再生となってしまう。もちろん、SLRにも空間情報の音は入っているのだが、それだけでは豊かな立体感を出すことはできないのです」と。

 

さすが、音響工学博士! 十分論理的で、私のようなど素人でもよく理解できましたし、常日頃、入交さんが、「Auro-3Dに於いて最も重要なSPはセンター」と繰り返し強調されるわけが納得できました!

 

ちなみに、入交さんって誰?って方は、「入交英雄」でググっていただければいろいろ出てきますが、Auro-3D録音エンジニアの日本での第一人者のお一人です。例えば、ここを見てください(以下の写真の引用元)。

2024年11月11日 (月)

ツイーター用のパワーアンプ探し

1.Prelude

 

これは、チャンデバ・マルチアンプ化をしている人だけの独特な悩みであり、また歓びなんだろうとは思う。

 

チャンデバ・マルチアンプ化をすると、「理論的には」例えば3Wayシステムの場合、この1台のスピーカーを鳴らすに際し、3種類のアンプを使い分けることができる。ウーファー用、スコーカー用、ツイーター用にそれぞれアンプが必要だからである。

 

ただ、教科書的には、「同じパワーアンプでドライブすべし」とあるようで、私の周りの、そして今回も大変にお世話になっているチャンデバ・マルチアンプ化先達の方々(Myuさん、Cmiyajiさん、K&Kさん)も、ほぼ同じようなパワーアンプで3・4Wayを構成されておられる。

 

伊豆の場合も、これをやることは物理的には可能は可能だ。3Wayが5台あるので、15ch分の「同一」のパワーアンプがあればいいのだが、拙宅にはStormの「PA-16」という、16chのマルチパワーアンプがあるからだ。

 

しかし、天邪鬼な(汗)私はこれを良しとしない(笑)。世の中に<マルチアンプシステム>というのが存在すると知った高校生の頃から、「もし、自分が将来このようなシステムを持てるようになったら、アンプは全部異なるものを使いたい!」と心に決めていたのである(爆)。

 

アンプの比較試聴を一度でもした方ならわかると思うが、「こっちのアンプはボーカルが色っぽくていいんだけど、低音の締りがイマイチ。こっちはシンバルの音が鮮烈なんだけど、女性ボーカルの声が若すぎて嫌。これは低音はゴリゴリ来るんだけど、バイオリンの倍音が…」てな感じで、一つのアンプで、低・中・高音域すべてが自分好みの満点、って難しい。よほどコストをかければ別だろうが。

 

「これらのアンプのいいとこ取りをできたら、比較的ローコストでハイエンドアンプ以上になるかもなあ」とは思っても、パッシブSPではそれは不可能。入力は基本1箇所(まあ、最近はバイアンプもあるが)だからだ。

 

と、偉そうに書いても、現状は、拙宅の改造版Sonetto VIIIは、LowStormPA-16で、MidHighにはSTA-9を繋いでいる。つまり、2種類しか使っていない。Low用に選択したStormは、STA-9のシングル使いとBTLとの比較試聴を経て念入りに選んだので、ここはそこそこ満足している。いわゆるSolidHigh Speed系の、いかにも最新設計デジアン!って感じの音だ。私の好みの低音は、基音はSolidで、倍音(特に下方への)は柔らかい感じのもの。拙宅では、基音はSonetto VIIIのウーファーが担当し、ELAC3台のSWに床や部屋を震わせつつ(笑)倍音・付帯音の柔らかさを出すのを担当させているので、ARTの効果とも相まって、Auroシステムでの計30個のウーファーユニットを同時に駆動させる低域再生の品位にはかなり自信がある(笑)。

 

Midは、今はSTA-9の片チャンネルを使っていて、まあ上を見たらきりがないが、そこそこOK。このSTA-9もデジアンなのだが、カタログ的にはA+D級とか書いてあって、結構熱を持つ。そのせいか、デジアンなのに意外に温かい音を出してくれるので、ボーカルやチェロの再生音は甘い音の好きな私の好みの範疇に収まっている(逆に低域も甘いので、低域用としてはStormに軍配を上げた…)。

 

ただ、実はかつてバイアンプで運用していたときに、Mid-HighSTA-9BTLと「Single使い」(ステレオパワーアンプの片方だけを使うこと)で聴き比べたことがあって(これは確か昔のPhilewebで記事にしたかと)、「迫力を持って音が前に出るBTLVS「繊細で品位のある立体感を表現できるSingle」と両者の一長一短を知っていることから、いつかSTA-9Mid専用にして、BTLSingleをアンプ直結で聴き比べてみたいと思っていた。

 

最後にHighは、現状はSTA-9Mid用の残りの片チャンネルを使っているのだが、パッシブ(バイアンプ)時代には顕在化しなかった不満点が、チャンデバ・マルチアンプ化後は実は気になってきた。

 

それは2つあって、一つは、ちょっと音が強すぎるな、と感じる時があること。もちろん、チャンデバで調整してHighの出力音圧はMidLowと合わせてはあるので、Highの音圧が高いというわけではない。ただ、なんかちょっとエグすぎると感じる時があって、パッシブネットワークを通していたときは比較的Mildに抑えられていたパワーアンプとユニットのそれぞれの素の特性が、直結になったことで現れているからだろう。PopsRockだと(または映画の効果音)、「改造後、ものすごい音になったね!」と言われる理由の一つにこのHighの特性があるのだろうとは思うのだが、若い頃ならともかく(汗)、ピアノやバイオリンに優しく撫でてほしい(笑)ジジイの耳には時に、ちとキツい。今はDirac Liveでf特をいじってすこし誤魔化してはいるが…

 

もう一つの不満点は、ツイーターからの残留音が前より目立つようになっていること。これは高域聴力の落ちた私のようなジジイにはLPでは全く聴こえない程度ではあるのであるが、20歳の息子に指摘された(汗)。ウルサイと(泣)。確かに、ジジイでもツイーターに耳をつけてみると「シー」という音がちゃんと聞こえる。これはMyuさんによるとAVプリの残留音を拾っている可能性が高いとのことだが、実は先に書いたバイアンプ時代、Mid-High用にSingleBTLの比較をしたときに、STA-9自体にやや高域ノイズが乗っていることには気がついていた(故に最終的によりノイズレベルの低いSingleを選択した)。

 

それでもパッシブネットワークを通しているときは、Midより能率が高いHighの出力音圧を抑えるためのアッテネーターを通っているためにそこまで目立ってはいなかったのだが、ダイレクト接続になってアッテネーターレスになると・・・(泣)。

 

実は、「STA-9はチャンデバのHighに使うとちょっとノイズが目立つ」というのは、今回ご助言をいただいた「3人組」のお一人であるCmiyajiさんからも伺っていた。彼のSPJBLのハイエンドをチャンデバ化改造されたものなのだが、その時、JBLを象徴するホーン型ユニット用のパワーアンプ選びの際にSTA-9も試聴されたそうである。いうまでもなく、ホーン型は高能率であることで有名だが、高能率のユニットというのは、ソース機器やパワーアンプの残留ノイズという、低能率ユニットなら拾えない音まで再生してしまうのだ。それまで使っていたアキュフェーズのA級パワーアンプがホーン型ツイーターとダイレクトに接続したらきつい音が出るようになったとのことで、その入れ替え候補として取り寄せたSTA-9は、ノイズレベルが必ずしも低くなかったので、ボツだったそうだ。

 

2.1st Candidate: Nmode  X-PW1-MKIII

 

上記のような不満、あるいは改善点候補は誰でも多少は抱えているものの、何かのきっかけがないとなかなか踏み切れないものだ。今回は、この夏、Nmodeというブランド?から新しい「ボリュームつき」パワーアンプが発売された、というニュースを聞いてから、「やる気」が動き出したのである。

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ご存じの方もおられると思うが、このNmodeというアンプは、元Sharpのエンジニアが立ち上げたブランドで、「1Bitアンプ」というのが技術的なウリである。私がこのアンプのことを意識するようになったのは、もう1年以上前だと思うが、きょやさんのリスニングルームにお邪魔した時から。彼はNmodeFundamentalといった、ガレージメーカー?のアンプがお好きで、それをいくつか聴かせていただいたのである。その時の印象は一言で言えばClean&Solidなのだが、ただしこれは、Taikoとか、TrinnovとかDiatoneといった錚々たる機器で固められたシステムの一部だったので、このCleanさがこのアンプだけのものかどうかは私には分からなかったが。

 

さて、雑誌かネットかでこのパワーアンプのことを知った私は、「もしかすると、これは私が求めるツイーター用のパワーアンプにピッタリでは?」と直感。なんといっても、「1Bit変調?」という言葉は、SACD/DSDを想起させますよね?(仕組みがどの程度共通しているのかは、全くわからないが・・・)。個人的にはPCMのチャッキリした音より、DSDのやわらかみのある音の方が好きなので、ド素人が勝手なイメージで、「アンプの音も丸い高域が楽しめるのでは?」と。

 

しかも、値段が安い。これをMonoとして使って、5台分買ってもハイエンダーの2chのパワーアンプの足元にも及ばないコスト(笑)。マルチWayのマルチアンプで、マルチチャンネルシステム(この3つの用語の違い、理解して読んでくれてますか?=汗)を組んでいる者にとって、アンプを変える場合、今回なら5台分必要になる。2chでパッシブならステレオパワーアンプ一台買えば音が出るでしょうけど、拙宅の場合は5chを鳴らすだけでも、15ch分のパワーアンプが必要なので、某ハイエンダーみたいに1100万円以上するモノーラルアンプで構成するなら・・・私ならポルシェにするわ(笑)

 

ゆえにPriceと、できればSpaceWeightの少なさは結構重要なファクターで、その代わり、今回はツイーター用なので出力ワット数はそこまで重要じゃない(はず、と、素人的には最初は考えた・・・続きは後編で=汗)。

 

ということで、これは条件面では「ドンピシャ」だったし、きょやさんにもご推奨(ただし、この商品ではなく、Nmodeそのものを)いただいたのですが・・・

 

とりあえずまずはお試しでと思って、Amazonで「明日着く」と出ていたので、伊豆に行ったときに思わずポチり(笑)。

 

翌日、早速繋いでみると・・・ナント!

 

「シャー」という盛大なノイズが・・・(汗)

 

こちらはパワーアンプとして使おうと思っているので、ボリュームは最大にしている。この状態で、AVプリの残留ノイズを拾っているようだが、それにしてもひどい。STA-9の比じゃない。Mono4ΩのSPだと26Wの出力とあるけど、ピアニッシモなんかとても聴けたもんじゃないので、やむを得ず気にならないレベルまでボリュームを絞ると、今度はツイーターが音圧不足。

 

「もしかして初期不良?」と思って、販売店に連絡すると、結構まともなオーディオショップだったため、「こちらでチェックするので返送してくれ」と。で、向こうでは「問題なし」とのこと。ただ、先方のテスト環境はパッシブスピーカーにステレオで繋いだものだったので、どうやらツイーターユニットにダイレクトにMonoで繋いでいる当方の方が残留ノイズに敏感な環境らしい。

 

一旦スイッチがはいると、「じゃあ、もう止めた」とは私は思わないタイプ(笑)。そこで、チャンデバ仲間のMyuさんとCmiyajiさんに相談すると、Cmiyajiさんもかつて、前述したように現在私が使っているSTA-9の試聴機を取り寄せたそうですが、やはりダメ(=同意=汗)で、次にご友人の推薦で、SoulnoteA-0を試してみたそうで。すると「はっきりとした差で、残留ノイズが減ったし高域も嫌な音が出なくなったので、採用決定! Auroさんもこれを試してみたら?」とのご助言をいただいた。

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さらにMyuさんの「無帰還アンプというのが面白そうだから、どうせなら上位機種のA-1と2台同時に貸出してもらったら?」とのご提案を受け、今度は「ポチる」というフライングを避けて(汗)、販売店を通じて2台同時に試聴機を送ってもらったのです。

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3.Competition: STA-9, A-0 vs. A-1 for Tweeter

 

ということで、「文化の日」の連休に、客観性(科学性?)を担保するために、私が信頼するご近所のチャンデバ仲間のK&Kさん、Myuさん、Cmyajiさんにも伊豆の拙宅にお集まりいただき、表題の比較試聴を行いました。

 

まず最初に、スマホの簡易騒音計で、3人がお見えになる前の朝の部屋の暗騒音を計測してみました。平均39dBでした。これは東京の深夜の書斎より3dB近く静かです(以前どこかに書いたと思うのですが、伊豆の暗騒音の原因である、トイレ用のコンプレッサーはオフにしました=汗)。

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比較は以下のような手順で行いました。

 

① Sonetto VIII2台だけ使った、LRステレオConfigurationDirac Liveなし。ただし、ユニットの位相を合わせるためのDelayと、音圧を揃えるための出力調整はしている)を使用。Img_0296

② 事前にA-0A-1(どちらもVolumeMax)それぞれをツイーターにつなげて、Pink Noiseを出力させ、LPにおけるツイーターの音圧がデフォルトのSTA-9を使った場合と同じになるように、音圧計で測定の上、AVプリ側の減衰値を決め、PC上で切り替えられるように登録しておいた。

③ つまり、①High: STA-9Mid: STA-9, Low: PA-16、②High: A-0Mid: STA-9, Low: PA-16、③High: A-1Mid: STA-9, Low: PA-16の3つをLRともつなぎ替え、同じボリューム位置で同じソースを聴き比べた。ソースについては、御三方の「決めソフト」をご持参いただいた。

 

まず、音を出す前の残留ノイズは、STA-9A-1>A-0であった。言うまでもなく、どれもNmodeに比べれば「耳をツイーターに近づけなければ聴こえない」レベル(笑)。

 

さて、御三方には入れ代わり立ち代わり、LPに座っていただいて、持参していただいた「決めソフト」を聴いていただいた。感想はニュアンスにズレがあるといけないので詳細には私が代わりに書かない方がいいと思うが、コメントの大意(笑)は:

 

Myuさん: A-1の方が良い。立体感で勝る。

Cmiyajiさん: A-0の方が良い。音の生々しさで勝る。

K&Kさん: ピアノも含め全体のまとまり感はA-1の方が優れていた。一部の女性ヴォーカルではA-0のまったり感に魅力を感じた。

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「一勝一敗一引き分け?」、つまり、完全にEvenである(笑)。ただし、STA-9との比較では、私を含めて4人とも、「音質的に、A-0/1の方が良い」という点では一致した。

 

以下は、私の「決めソフト」による試聴記:

 

・・・・・・・・・・・・・・

ベートーヴェンの「熱情」では、音圧計では同じMax値なのに、A-0が最も「フォルテ」に聴こえる。ピアノはA-0が一番華やか。1000MB&Wっぽい(笑)

 

しっとりしたA-1の味わいも捨てがたい。

・・・・・・・・・・・・・・

 

うーん、玉虫色(爆)。

 

ここで追加的に考えるべきことがある。マルチのSPの音色を決定する場合、実は「それ単独での音の善し悪し」だけでは決められない。2chなら、その「気に入った音」となるアンプなり、SPユニットなりを「左右に揃えるだけ」でいいのだが、13chAuro-3Dに於いては、「上下左右にある、他のSPとの音色の統一性、違和感の少なさ」というものもとても大切な要素なのだ。

 

御三方を交えた実験の際には、単に、ツイーターにどのアンプを使った「2chステレオの音」が一番好きか?を伺っただけであった。つまり、同じツイーターを使っているが異なるパワーアンプ(PA-16)でドライブしている、HLCRやサラウンドハイトなど他のSPと「音色が最も近いものはどれか?」を伺ってはいない。

 

ゆえに御三方が帰ったあと、私がやったことは、Auro-3Dの単一楽器の音源(ピアノ、ハープシコード、男性ボーカル、マリンバ、ハープ、フルート、バイオリンなど)を使い、LにはSTA-9を、CにはA-1を、RにはA-0をそれぞれ繋ぎ、ピンクノイズと音圧計を使って3つのツイーターのLPでの音圧を同一に調整したうえで、これら1台づつと、HLCRを交互に再生し、音の違いを「音色だけに注目して」ひたすら聴き比べてみた。

 

これらHLCRを含む第二層は、すべてStormPA16というマルチパワーアンプでドライブされており、当面、これを変更する予定はないため、いくら気に入ったからといえ、「音色が第二層とかなり異なるアンプ」を第一層用にあてがうわけには行かない。そんなことをしたら、「すべて同じツイーターで構成されている」拙宅のAuroシステムのアドバンテージが無くなってしまう。<高域の音色の部屋全体での統一感>は私が最もこだわっている点のひとつなのだ。これがマルチシステムを「部分的にアップグレード」する際の難しい点であり、2chシステムしか持っていない方はこれには気が付かないであろう。お店で聴いて気に入ったから買って帰れば良い、というものではないのである、マルチの場合は。猫や犬の多頭飼い(笑)と同じで、一部のSPやアンプを入れ替えるなら「先住犬」との<相性>という大問題が必ずある。それを忘れて、単純に<ショップで気に入った犬>を連れ帰ろうものなら(笑)

 

結論的に言うと、HLCRとの音色の親和性はA-0に軍配が上がった。A-0のはつらつとした音色は、PA-16PascalClass Dモジュールの音により近い。A-1はいわゆるアナログ的な深みのある音ではあるが、大人しく、角がなく、これはこれで個人的には好ましいのであるが(汗)、間違いなく全体の音色の統一感は損なわれるだろう(Amator IIIOctaveAuro-3Dシステムから排除したときの論理と同じ)。

 

お米と同じで(笑)、私はパリッとしたのも、柔らかいのもどっちも好きだが、両方混在してるのはイヤだ(笑)。同様に音色は「どちらかに揃っている」ことが私にとっては重要(鈍感な方もいるとは思うが、私は他人のマルチシステムを聴いても、サラウンドやサラウンドハイトの音色の違いにすぐ気が付くタイプ=汗)。ただ、音色よりむしろ少し気になったのが、「遠近感」において、A-0の方がやや劣っていたこと。逆に言えば、A-0の方が「音が前に出てくる」タイプで、Jazzなんかだったらこちらの「押し出し感」の方が好きな方は多いだろう。ただ、私はどちらかというと、「奥行き感」が出てほしいタイプなのだ。

 

少し迷っていたのだが、これはMyuさんやCmiyajiさんがお帰りになったあとにK&Kさんと話をし、また先日お会いした入交さんとお話をしていて、「アンプやSPを選ぶ場合に、<遠近感>の有無は2chなら確かに重要項目だが、しかしAuro-3Dなら、ハード面、ソフト面両面で強烈な<遠近感>がBuilt-inされているので、そこまで気にする必要はないのでは?」ということに気付かされた。今回、貸し出していただいたアンプは2chなので、5chすべてを交換してマルチ音源で試すことはできていなかったことを忘れていたのである。2chによる試聴結果(ふつうのショップでの試聴なら絶対こうなる)だけで、マルチ用のハードを決めるべきではないことを改めて自覚した。私のオーディオライフの本命は、マルチ、なかんずく13chAuro-3Dなのである!!!

 

こうなるとA-0で決まりか?となったのだが、ただ、最大の懸念点は、A-0の出力が10W8Ω)しか無い点。現行のSTA-9120WPA-16200W)なのだが・・・長くなるので、続きは次稿で。

 

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