イマーシヴオーディオ用のDirac Liveの使いこなし?-ATMOS&Auro-3D
またまた、前回と論理的に地続きのネタです(笑)。
あれ以来、久しぶりにATMOS Musicソースを聴き込んでいるのですが、Abbey Roadばかりでは耳が痛くなってくるので(もう耳が若くはない…)、オケものをということで、取り出してきたのが、これ。
まあ、これも「定番」のATMOS音楽ですね。ただ、言うまでもなく、カラヤン存命中にはATMOSはおろか、Auro-3Dもなかったわけですから(歴史的にはAuro-3Dの方が古い)、このアルバムのATMOSはカラヤンが残した録音テープ(何トラックぐらいで当時は記録したのだろうか?カラヤンは録音芸術に積極的だったことはよく知られているので、間違いなく当時としては最高品質の録音機器を使い、最大限のマルチトラック収録をしたであろうことは想像できる)を、現代の若手?エンジニアがRemixしてATMOS化したもの。
本稿の本題とは逸れるが、このATMOS版の『カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニック交響楽団によるベートーベン交響曲集」(=ものすごい、Authentic! 皆が平伏するキーワード3連発ですよね=笑)は、ただ2chを16ch(そう、これ、9.1.6のATMOSフルバージョンです!)に拡張しただけじゃあないようです。
ジャケット裏には、「DOLBY ATMOS transports you from the ordinary into the extraordinary」と書かれているように、録音エンジニアさん、「気合入ってます」(笑)。
で、今回、せっかく真面目にATMOS・カラヤンのベートーベンの交響曲全曲を聴くんだから、我らがインマゼールのAuro-3Dによる全集との聴き比べを。
といっても、音質、音像、音場などの「勝負」はやる前から見えていて(汗)、そりゃ、録音の年代が数十年違うし、片や「なんちゃって」ATMOS、片や「本気」Auro-3Dですから、この比較はFairではない。
ただ、聴き比べてはっきりわかったことは、このカラヤン・ATMOS版は、<残響音>?を盛りに盛っている、ということ。これ、録音された場所は全曲同じなのか(ムジークフェラインザールなのか、もしかして一部、教会?=カラヤンは教会での録音も好きだったことは有名)は、老眼で(汗)ライナーノーツの細かい英文を読む気にならないので置いておきますが(笑)、直接音再生の主体であるLCRに比して、サラウンドバックとかトップリアあたりに入っている音は、<やたらDelayがかけてある>んです(笑)。
だから、残響時間の長いとても広い空間で3D録音されたかのような!(私は、残念ながら、未だムジークフェラインザールには行ったことが無いので、その音場感が分からない) 例えば、第7番の印象的な第一楽章の最初のフォルテなんて、「前から後ろへ音が流れていく」のが分かるぐらい(笑)。インマゼール・Auro-3D版より全然長い残響時間!
言うまでもなく、当時の録音は、まさか、入交さんがやっておられるように天井とか後ろ向き(つまり背後からの残響音録音用)にマイキングはしてますまい。当時の録音エンジニアはほぼ2ch用しか考えてない(まさかこれ、4chがオリジナルじゃないよね?)はずなので、当然、録音は直接音主体のはず。そのように収録された「音」を、ただ16ch化しただけなら、<ホテルの大宴会場のBGM>にしかならない(=つまり、同じ「音」をただ多くのSPから出しているだけ=笑)。
それでは耳の肥えたイマーシヴオーディオミュージックファンからは「金返せ」となるのは目に見えているので(これがRockとかPopsなら、ギターやシンセの音をぐるぐる回す、とかのお遊びを入れて「なんちゃってATMOS化」を図るのだが、Classicはこの手は使えない)、どうやらエンジニア君はかなりDelayを工夫して入れることでATMOSらしく?したようです(笑)。
これだけを聴いているとわからないのだけど、これを最新のAuro-3D録音と聴き比べると、今回「いかにカラヤンATMOSが<不自然に>音場を盛っているか」が分かってしまった(汗)。
ついこの前もオルガンを聴きにサントリーホールに行ったばかりですので、我らがインマゼールの方が、圧倒的にリアルな現場感があると断言できます。カラヤンATMOSは、サントリーホールの3倍くらいの広さの石造りのホールで収録したのか?ウソっぽい=爆。
まあ、ATMOSは本来、映画用なので、映画音響であればこのような「あざとい」編集はお手の物(まさか、映画用のエンジニアがこれ、手がけたんじゃないでしょうね?=汗)だろうが、Classic音楽としては、ちょっとやり過ぎじゃ?(いくら風呂場のカラオケ好きの私でもToo Much!)
さて、すっかり「本題」を忘れるところだった(大汗)。
実は、このカラヤンATMOSを真剣に聴いてみて、なんとなく、「重いなあ、これ」という感じがしたのです。つまり全体的にどよーんとした音で、<コロコロとした軽み>がない。「ベートーベンなんだから、当然だろ。モーツァルトじゃあるまいし!」とは言うなかれ(笑)。
ベートーベンだって、交響曲9曲の全楽章すべてが「暗い」わけじゃない(笑)。彼の人生は全般的に確かに「暗かった」ようだけど(汗)、たまにはFunkyな気分の時もあったはずで、当然、そういう時に作曲した楽章もありますよね?
でも、このATMOS版、どうも全般的に暗く、重い(気がした)。「これ、もしかして録音が古くて、高域がハイエンドまで録音されていないんじゃ?」と勝手に想像し(アナログテープが原盤で、DiscはBDだから理論的にはハイレゾしてるはずだが)、「よし、Tomyさんがよくやっておられる、Dirac LiveのTarget Curveの調整をやってみよう」と。で、ここから先はDirac Liveを使っている人には参考になると思うので、今回記事にしたわけです(汗)。
Dirac Live歴の長い?私は、これまでの研究結果から、現在は原則、以下のようにしています。
1.第一層のメインSP(拙宅の場合は、Sonettto VIII5台)は、1Khz付近より上は補正しない
2.それ以外のSPはDirac Liveのデフォルト(全帯域補正=ほぼフラット化)
他にもいろいろ細かい自分なりの工夫はあるのですが、今回の中心テーマである、「高域」だけの設定のお話にここでは留めます。
基本的に1はいじりたくない(チャンデバ化までした自分のシステムの「基本性能」を信じたい!)ので、やるなら2です。そこで2のSP群のTarget Curveを以下のようにしてみました。
いわゆる、「ふた山」f特ですね。「BBC Dip」も取り入れてみました(笑)。
結果ですが、少し(というか、かなり)音に「コロコロ感」(笑)が出てきました。そしてどんよりしていた空がカラっと晴れたように、空間が広がったような気がします。
Auro-3Dの<マニュアル的には>、13台同一SPで揃えろ、とあることはもう耳タコだと思いますが、「言うは易し行うは難し」の典型の一つであるのは言うまでもありません。で、多くの方が第一層のSPに比して、比較的小型のSPを第2、3層に配しておられるのが現実ですよね。それを同じメーカーや、さらには同じシリーズで揃えておられる方ばかりではないのも、また「Reality」です。その場合、ではどのようなSPを第2,3層用に選ぶのがいいのか、については、残念ながらAuro-3Dの教科書には書いてありません(汗)。
そこで我々のような「人柱」が実践経験の中で、何らかの解を見出していくことが期待される(?)わけですが、実はこれは、前にも書いたことがあるのですが、多くのAuroシステムを拝聴させていただいた経験からは、個人的な好みでは、やや高域に華があるSPを第2、3層に使う方がいい結果になっているような気がしていて、それを今回は応用し、これらSP群の高域を持ち上げてみた、というわけです。
さて、このATMOSでの効果に気を良くして、ついでにAuro-3D用のセッティングでも、第2,3層に同様のTarget Curveを適用してみたところ、<台風一過の晩夏の日差しの下、家を取り囲む木々からの木漏れ日を感じながら、エアコンを入れた涼しい部屋で静かに聴くAuro-3D&ATMOSによる、清々しい『田園』>を満喫しながら、これを書いております(笑)。修正したTarget Curveは保存していつでも適用できるので、暗い冬が来るまではしばらくこのCurveで楽しもうかな、と(笑)。
Dirac Liveに高いお金を払った方は、是非、Default以外の設定も楽しんでみてください!いいカーブが見つかったら、是非ご報告を!
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コメント
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Auro3Dさん、
大変遅レスですが、こちらにもレスさせて頂きます。
ターゲットカーブの件ですが、名前を出していただいたように、拙宅では全音域補正をしています。曲げてはいますが、基本、SPが元々持っているf特の特徴を残すようにしています。Auro3Dさんのチャンデバ化後のf特も2~3kHzが凹んで、BBCディップが見られますよね。拙宅のSPも(SonettoのOriginal特性も)その点よく似ています。なので、BBCディップの曲がりを入れていますが、その大きさ(深さ)はー2~3dB止まりなんです。Auroさんのチャンデバ化後のf特のそれよりも実は小さいくらいです。チャンデバ化してその特性に落ち着いたということは、BBCディップはAuroさんの好みでもあるということですね!
それなら、チャンデバ化後の特性を正確になぞって、ターゲットカーブを作り、それをチャンデバ以外のSPのf特にするのも一手ではないかと思います。如何でしょう!!
投稿: Tomy | 2024年9月12日 (木) 18時28分
Tomyさん
>ターゲットカーブの件ですが、名前を出していただいたように、拙宅では全音域補正をしています。
「Dirac Liveにおけるターゲットカーブいじりのスペシャリスト」として一目置いているTomyさんから、この件でコメントをいただけてうれしいです!
>曲げてはいますが、基本、SPが元々持っているf特の特徴を残すようにしています。
さすがにそうですよね。特に「Peakはともかく、Dipは補正するな」とはよく言われることで、これは「人と同じで、地声でその音域を出すのが苦手なのを<無理に出させると=補正すると>、とんでもないガラガラ声になるからだ」という例え話を聞いたことがあります。
>Auro3Dさんのチャンデバ化後のf特も2~3kHzが凹んで、BBCディップが見られますよね。(中略)チャンデバ化してその特性に落ち着いたということは、BBCディップはAuroさんの好みでもあるということですね!
これは、言われてみて、改めて自分がチャンデバ化したのちのSonetto VIIIのf特を見て、納得しました!言うまでもないことですが、私は「f特を見ながら、チャンデバの設定値を決めた」わけではありません(笑)。測定器は使わず、自分の耳を使って、「自分が気に入る音色が出せるチャンデバの設定値を決めた」のですが、それが結果的にBBC Dipと呼ばれるf特の特徴になっていたとは! 確かに、どうもこのf特の音が私の好みのようですね。Tomyさんのご指摘のお陰で、自覚できました(笑)。
>それなら、チャンデバ化後の特性を正確になぞって、ターゲットカーブを作り、それをチャンデバ以外のSPのf特にするのも一手ではないかと思います。如何でしょう!!
なるほど、確か、「ターゲットカーブ」のf特曲線自体を保存して、他のユニットにも適用できる機能がDirac Liveにはありましたよね?ということは、メインのSonetto VIIIのf特のカーブを、他のすべてのSPにも反映させてはどうか、というご意見ですね。
それはなかなか魅力的な提案なので、今度時間のある時にやってみようと思いますが、机上の段階で二つの懸念があるのですが?: 1.上述したように、SPによっては「苦手な」音域があり、他のSPをすべてSonetto VIIIのf特に合わせる場合、<無理が生じる>帯域はないのか?(合唱の時に、「歌が一番うまい人の声の出し方に皆さん合わせなさい」、と指揮者にいわれても、出せない人は出せないし、それを無理に出させればキーキー声になりかねない=笑) 2.まさにこれはこの記事のメインポイントなのですが、「果たして、13chすべてのSPが同じf特であるのが、音質的に<本当に>ベストなのか?」という疑問が無くはないのです。先の合唱に例えれば、合唱ではソプラノやアルトなど、「得意な帯域」が異なる人が混在するからそれらが合わさって「イイ音」になるのではないでしょうか?(もちろん、「マニュアル」では「すべて同じSPを使え」とあるのは百も承知!)。極端な話、ターゲットカーブを揃える代わりに、「マニュアル」通り、13chをすべてSonetto VIIIのチャンデバにしたと空想(爆)すると、うーん、あまり聴きたくないかも(迫力がありすぎて怖そう・・・汗)。
投稿: Auro3D | 2024年9月13日 (金) 07時03分
Auro3Dさん、お早うございます。
>1.上述したように、SPによっては「苦手な」音域があり、他のSPをすべてSonetto VIIIのf特に合わせる場合、<無理が生じる>帯域はないのか?(合唱の時に、「歌が一番うまい人の声の出し方に皆さん合わせなさい」、と指揮者にいわれても、出せない人は出せないし、それを無理に出させればキーキー声になりかねない=笑)
低域だと、小さいSPを無理させるのはご法度だと思いますが、高域は、特にお使いのSP群は、皆十分伸びているので無理は生じないと思います。もし、一部のSPの15kHz以上の伸びが弱いなら、15kHz以下を補正すれば良いかと思います。それで十分では??
>2.まさにこれはこの記事のメインポイントなのですが、「果たして、13chすべてのSPが同じf特であるのが、音質的に<本当に>ベストなのか?」という疑問が無くはないのです。
基本は同じf特でしょうけど、”天の声を際立たせる・・・”のも面白いかもしれませんね、笑。暑い夏を乗り切るのに良いかも・・・・が今回のテーマですね?
投稿: Tomy | 2024年9月14日 (土) 06時56分
Tomyさん
こちらにも、追いレス、ありがとうございます!
>低域だと、小さいSPを無理させるのはご法度だと思いますが、高域は、特にお使いのSP群は、皆十分伸びているので無理は生じないと思います。もし、一部のSPの15kHz以上の伸びが弱いなら、15kHz以下を補正すれば良いかと思います。それで十分では??
そうですね、入交さんも「第二層以上は低域はムリする必要はない」とおっしゃっていますし、拙宅は何といっても「第二層にもSWを設置している」(爆)ので!高域は、TOPを除き、全て同じツイーターですので、特性的にはすべて同じ(はず)です。ただ、そのBBC Dipあたりは、スコーカーとのCO付近なので、山や谷ができやすいようですね。
>基本は同じf特でしょうけど、”天の声を際立たせる・・・”のも面白いかもしれませんね、笑。暑い夏を乗り切るのに良いかも・・・・が今回のテーマですね?
実は、「全体的に高域を持ち上げたい」だけなら、AVプリのトーンコントロールを使えばいいわけですが、Dirac Liveのf特いじりの特徴は、それを各SPごとにできるということで、いろいろなバリエーションの可能性が考えられるわけです。長期休暇の時しかできない「お遊び」ですが(笑)、いずれまたいろいろと試してみようと思っています!
投稿: Auro3D | 2024年9月14日 (土) 09時19分