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2024年9月

2024年9月20日 (金)

第二層SP群とサラウンドバックSPの位置調整とDelayについて

これも前回の記事と地続きのネタです。そろそろ「労働の季節」が迫ってきましたので(汗)、これが恐らく「この夏休み最後の課題レポート」となります(もう一つ別のプロジェクトが密かに進行中ではあるが=笑)。

 

もう何度目となりますか(汗)、入交さんとの意見交換は。その度に「思い当たる節」のご指摘を受け、なんとか自分のシステムに反映させて来たのですが、今回も実は「イタイ」ところを突かれまして(笑)。もちろん、「SPはこのようなものを揃えるべし!」みたいなものは、「今更言われてもなあ・・・今のシステムを買い揃える前にお会いしたかった(泣)」的な部分がほとんどなので、一朝一夕には「ああ、そうですか、では変更しますっ」とは行きません(汗)が、セッティングに関わる部分であれば、本人に自覚とやる気さえあればやれるものも少なくないわけで。

 

で、今回、前回の記事で紹介した入交さんの指摘で、ワタシ的にぐさっと来たのは以下の3点:

 

1)AVアンプに内蔵されている音響補正ソフト(Dirac LiveAudyssey YPAOなど)による、距離補正(Delay)の部分は、手動で第一層の各SPと同タイミングで、その直上のSPから音が出るようにすべき(つまり第一層のSPと直上のSPを<同一距離>とする)。

 

2)「開き角」を優先すべき

 

3)Delayはかけない方がよい

 

これら、「入交道場」の免許皆伝を目指す者(笑)としては、スルーはできません!ので、早速やってみました。

 

1)フロント6台の「垂直関係」の見直し

 

Auro-3Dでは、「球面配置」にしてはならず、ハイトSPはフロアのSPよりLPから遠くなければならないというのは、一応私は「会長」(笑)ですから百も承知で、Dirac Liveを適用したあとにソフトが行った等距離補正(Delay)を手動で修正というのは、前にも入交さんに言われて、やっていた(つもりだった)のですが・・・Delayをなるべく使うな(後述)と入交さんは再三言われますので、ここは電子的な補正ではなく、物理的な補正をやれるだけやるべきかと、一念発起!(笑)

 

言うまでもなく、Auro-3Dに於いては、この前6台の位置や性能が非常に重要なのですが、そもそも(汗)、特にこのLCRHLCRの「完全な垂直関係」を実現できている方って、どのくらいいるんですかね?

 

私は今まで何件ものお宅で、LCR+HLCRの6台を備えたAuro-3Dシステムを見て、聴かせていただきましたが、ほとんど(恐らくすべて?)のお宅で、第一層のLCRLPから等距離に配置しておられます。つまり、円周上にこの3台を置いているわけですから、LCRが一直線には並んでおらず、真横から見ればLRに対してCが引っ込んでいますよね。

 

では、第二層のHCLRはどうでしょうか?HCLRの設置位置として殆どの方は、フロント側の「壁」に設置しておられると思います。この「壁」って、普通<平面>じゃないでしょうか?まさか「球面の壁」(しかも凹んでいなければならない)をわざわざ作っている人って、見たことないです(これをやるなら、「シェークスピア劇場」のような円筒形の部屋を作るしかない)。

 

「平面の壁」にHLCRを<円周上に>設置するのは、かなり大変(HLRを相当壁から離す必要がある)なので、殆どの方が(梁に設置してある拙宅も含め)HLCRは<一直線上に並んでいる>と思います。つまり、屋根から吊り下げるか、天井埋め込みにでもしない限り、LCRHLCRの完全な垂直位置関係を実現している<アマチュアのAuro-3Dルーム>は少なく、HCHLRよりLPに近いのが普通でしょう。つまり、垂直配置は、一般家屋のスクエアの部屋では、「そもそも」ハードルの高い条件であることは間違いありません

 

さて、本題に戻ります(汗)。前回?入交さんに拙宅に来ていただいたときに、フロントLCRの仰角が30度よりやや大きい、とのご指摘を受け、その後、Myuさんの多大なるご協力のお陰で設置位置を下げて、推奨値の「仰角30度」を実現したのは、以前記事にしたかと思います。

 

実はその後、「New Year’s Concert 2023」で、なんとなく、前より少年少女のコーラスの位置が心なしか上がった気がしていたんですが、今回の入交氏の指摘を受けて改めて部屋を見渡したところ、その原因らしきものを見つけてしまいました・・・

 

仰角を抑えるよう、HLCRをやや低い位置に移動させるため、それまでの「梁の上」から、「梁の前」に設置位置を動かしたのです。これにより、確かに「高さ」は下がったのですが、より「前に」来たのでLPにはより近づいてしまっていました。つまり「仰角」とのトレードオフで、HLCRLCRとの垂直関係は、前よりも崩れていたんです(以前は梁の真上にSonetto Iがあったので、HCCの縦位置は20センチ弱ぐらいしかずれていなかった…HLRに至っては、以前はほとんどLRの真上であった)。

P 昔の写真(Sonetto Iが梁の上に<一直線に並んで>設置されている。LRとはほぼ垂直関係配置)

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そこで、今回採用した方法は、第一層のLCRをもう少し前に出す、という作戦です。

 

P(上がBefore、下がAfter. 特にCHCの関係は、目測で50センチ以上HCのほうが前に出てしまっていた。LRとHLRはBeforeは20センチぐらいずれていたが、Afterではほぼ垂直に)

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これ、書くと簡単そうですが、単純に前に移動しただけだと今度はLRの開き角が規定の60度より広がってしまいます。LPも後ろにずらせばそれは防げますが、そうすると今度は、SLRの開き角が狂ってしまう(拙宅は90度)。結局、レーザー距離計を駆使して、いぜんよりやや半径の小さな円周上に配置しなおしたのですが、思ったより時間がかかりました(汗)。

 

P今回の配置修正後(実はこれには副次的な効果があった。拙宅のSP配置の<弱点>として、Lが壁に近いという問題があるのだが、円周を小さくしたことで、多少、前より壁からLが離れたので、壁反射の影響が少しは減退したと思いたい!)

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→結果

 

フォッサマグナツアーの課題曲の一つであった、ウィーンフィルの『New Year’s Concert 2023BD版(=Auro-3D)の、「上機嫌」における、バルコニーでの少年少女のコーラスの定位で確認。

 

それまでは、「指揮者の位置」での音場・音像感を再現しているのだと思っていたのが、「ホール客席の位置」での音場・音像感になった気がする。私はこのムジークフェラインに残念ながらまだ行ったことがないのだが、最近行かれたばかりのTomyさんから「ホール客席から見上げればバルコニーとオーケストラはそんなに離れているわけではない」というご報告があり、まさにその通りの定位となったようだ。フォッサマグナツアーではずいぶんオケより高い位置にコーラスが定位していたお宅もあったと記憶している(ハイトSP群の位置に問題があった場合もあったが)。「いかにもハイトSPからコーラスが聴こえます!」というようなお部屋では、本当にLCRHCLRが垂直関係になっているか、Delay(後述)の設定も含め、再確認をしたほうがいいかもしれません。

 

2)サラウンドバックの開き角

 

今回、入交さんにAuro-3DSP配置では「開き角」が最も重要、という趣旨の指摘を受けたときに、私がドキッとしたのは、拙宅のサラウンドバック(SBLR)の位置です。

 

拙宅は第一層を7chにしているのですが、サラウンド(SLR)は<90度>と「入交セッティング」にしてあります。『マニュアル』ではSLRは<110度>を標準値としているのは皆さんよくご存知のとおりです。入交氏はこれを90度に置いてエンジニアリングをしておられることはもう何度も書いていますが、その論理的な理由は、「人間が2つのSP間に音像定位をきちんと認識できるのは60度の開き角までで、それ以上開くとSP間の音像定位が曖昧になる」ということで、私は論理的な議論に説得されやすい社会科学者なので(笑)、<LR30度、SLR90度>が合理的であると納得し、拙宅も「入交セッティング」にしてあるわけです(彼の録音は、LRとサラウンドの間に音像を定位させる物が多い!もし、SLRがマニュアル通り110度の位置にあれば、ここの開き角は80度にもなってしまい、恐らく、この間の音像定位は甘くなるか、<中抜け>するであろう)。

 

では、サラウンドバック(SB)はどうか?『マニュアル』では標準値が150度と指定されています。この位置であれば、90度においたSLRとの開き角がちょうど60度となり、「入交理論」に叶うことになります。

 

しかーし(汗)、これまで拙宅では、SBLR間の開き角は30度程度しかありませんでした。つまりLPからの角度は、約165度なので、標準値はおろか、許容範囲(135-155)からも外れていました(大汗)。

 

Auro-3D友の会会長のくせに」(笑)と言われそうですが、ここに設置せざるを得なかった理由は、「角度を取るか、SP(音質)の整合性を取るか?」の二択で、私はこれまで後者を優先させていたからです。

 

拙宅のAuro-3Dシステムのウリの一つに、「TOP以外の12台のSPをすべてSonusSonetto シリーズで揃えているため、すべて同じツイーターを使っている」ことがあります。言うまでもなく、「音色」に最も影響を与えるツイーターを同じにすることで、残響音再生も含めた音場・音色の一体感を追求していたのです。

 

SBLR用にはSonetto Iを使っていたのですが、残念ながら、理想の開き角150度の位置にこれをセッティングするとしたら、SP台に乗せてそれを入口の真ん前に置くしかなく、生活動線の観点からそれは諦めていました。

 

ただ、拙宅にいらした方ならすぐに指摘できるように、実は可動性のある、キャスター付きの(笑)、Amator IIIがもう一組あり、それをSBLRとして使えば150度に位置に置ける(必要なときは簡単に動かせるため)ことは分かってはいたのです。

 

しかし、その場合は別の問題が。そもそもAmator IIISonetto Iでは、元々かなり性能が異なる上に、さらにそれを駆動するアンプも前者はOctaveの真空管、後者はSTA-9というデジアンという大きな違いがあり、両者の出音はどんな素人でも絶対にわかるほどの違いがあるのです(元々、Amator III2ch再生用に導入)。Octaveはプリメインですが、パワーアンプとしても切り離せるので、ATMOS映画を見る際にはサラウンドSPとして使っているのですが、映画と音楽じゃあ、求められる再生品質の統一レベルが違うのは言うまでもありません!

 

実は過去にも、Amator IIIOctaveAuro-3Dシステムに組み込んでみたことがあるのですが、どうも違和感が拭えない。主役のLCRと音色が異なるので、「悪目立ち」することが多々あったのです。イマーシブオーディオは<一体感・包まれ感>が重要なので、あるSPが「僕、ここに居ます!」となってはダメですよね(笑)。

 

ところが! この春からLCR+SLRとして使っている主力のSonetto VIIIをチャンデバ・マルチアンプで運用しているのはすでに何度も書いていますが、それ以来、実はどうもSBLRに使っているSonetto Iの音が、逆の意味で「悪目立ち」することを感じるようになっていました。チャンデバ化すると全体的に音が鮮烈になるので、パッシブのSPの音が「ぬるく」(笑)感じる様になっちゃうんですよ(これはあらゆるチャンデバシステムに共通する音質で、最近、私の耳はすっかり「チャンデバ耳」に!)。

 

「これはもしかするとAmator IIIの方がまだマシでは?」

 

Amator IIIはバイオリンや女性ボーカルなどは私好みの甘い音がする素敵なSPですが、やはりいいマグネットを使っているからか、はたまたいいネットワークをつかっているからか、音のキレはSonetto Iよりあるんですよ(マイケル・ジャクソンがちゃんと聴けますから!)。Octaveも真空管ではありますが、一般的にイメージするような「茫洋とした、おおらかな音」を出すアンプではありません。しかも、これをSBLRにすれば、150度に位置に置くのはたやすいことです。

 

ということでやってみました!

 

P(推奨値の150度あたりにAmator IIIを移動。プロジェクターの下の棚の上に乗っているSonetto Iが以前のSBLR。開き角の違いは一目瞭然・・・)

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LRは正確に角度も測って30度の開き角をつけています(つまりLPLRで正三角形を形成)が、SBLR150度に位置にPlaceするならわざわざ計測する必要はなく、この写真にあるように、「LP(椅子)を挟んで正反対側」になるように置けばいいのです!(ちなみに、このような写真が撮れる、ということは、SPの後ろにある程度の空間が確保されているということで、これも反射の問題を考えるととても重要なことです。後ろの壁ぴったりにつけている方は、見直したほうがいいですよ!=といいつつ、拙宅もSLRは壁ぴったりだが=だから同じSPなのにLCRに比してf特がずれている=汗)

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→結果

 

11ch74)ソフトはまだ少ないし(特にダウンロード版では皆無に近く、手持ちでは一つしかない!)、さすがに、サラウンドとサラウンドバックの間に楽器を定位させているようなソフトはほとんどない(汗)が、例えば、フォッサマグナツアーの課題曲の一つであった、「Polarity」の、あざとい(笑)、背後に配置されたドラムスセットの音と音像定位は、さすがAmator IIIOctaveの音だし、SBLR間の開き角が60だけある音像定位(=ツアーで聴いたX1邸の音に少しは近づいた?=前は30度くらいしか開いてないのでドラムセットがこじんまりと固まっていた)。心配していた音色の違和感も、やはりこちらの予想通り、チャンデバ化されたSonetto VIIIとの組み合わせなら、そこまで変じゃない(まあ、入交さんも「ツイーターの素材が揃っていれば」とおっしゃっていて、Amator IIIもSonetto Iもどちらもシルクドームだし=質は相当違う気がするが=汗)。さすがにもし、後ろから前にバイオリンが移動するような音源があれば、両者を聴き慣れている私には音色の変化が多分わかるだろうけど…プログレならともかく、幸い、Classicにはそんなギミックはないし!

 

実はOPPO205DTS5.1chに折りたたまれている9.1chAuro-3Dソフトを拙宅のStormとの組み合わせで再生すると、「なぜか?」SBLRにも音が振られることを発見し、せっかくSBLRの位置を調整したのを機に、埃を被りかけていた(汗)、昔のNew Year’s Concertなどを聴くようになりました!

 

3)脱Delay

 

本日、最後のお題です(笑)。入交さんは、「DelayAVアンプでかけるとLPのピンポイント以外では位相が大幅に狂い、音場が乱れる」と主張されます。そのロジックはイマイチ文系の私では???なのですが、「入交教」の信者(笑)としては、まずは教祖様の言うことに従ってみるべきだろうな、とは前から思ってはいたのですが、さすがに13台全てのSPをLPから等距離に配置し直すなんてできるはずない、とこれまで躊躇していたのですが今回、「SPの距離の差といっても、一般家庭では1Mもないはず。それであれば移動音の多い映画ならともかく、音楽なら普通の人には聞き分けできないレベルですよ」とまで言われて背中を押されまして(汗)。拙宅の場合はDelayDirac Liveに任せているため、「どうせやるならDirac Liveも抜きにして、完全無補正に挑戦!」ということで、やってみましたがな(笑)。

 

P(チャンデバ化による、ウファーとスコーカー、ツイーターの距離補正だけを残し、他はすべて、「0」、つまり全スピーカーから同一タイミング=エンジニアが意図して音源に入っているDelayはあるはず=で音がでるようにした)

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(再配置後、LP耳の位置から各SPバッフル面までの距離は、LCRが2500ミリ、SLRが1320ミリ、SBLRが2000ミリとなった。Amator IIIはキャスターで動かせるので、LCRと同じ2500の位置に置くこともできるが、そうすると後ろの壁との距離が50センチぐらいしかなくなってしまう。Amator IIIはボトムバスレフのSonetto VIIIとは異なりリアバスレフなので、最低でも1Mは空ける必要があるのは言うまでもない)

→結果

 

うーん、確かに「音」だけに注目すれば、ベールが一枚も二枚も剥がれたような鮮烈な音になった。ピアノソロの直接音などは鮮度が上がったのがわかる。しかし、これはDelayの問題というより、恐らくDirac Live(ART)の有無の問題だと思うのだが、「満天に散りばめられている数多の星たちが、遠くの無限の闇の奥底で輝いている感じ」がやや損なわれ、プラネタリウムで見ているような、「やや遠近感のない、そこで光っているくっきりさ」になっている。これは好みが分かれよう。

 

さらに、決定的な違いはやはり低音の再生品質である。もうすっかりARTの効果が発揮された解像度の高い低域再生音に慣れてしまった私の耳には、無補正のシステムの低域はボワついて聴こえてしまう(これもDelayとは関係ないかも…)。

 

これについては、明らかにDelayの有無とDirac Liveの有無がごっちゃになっており、もう少し研究が必要だと感じた次第。できればDirac Live(ART)だけ残して、Delay調整はパス、なんて設定ができればいいのだが(笑)、素人判断では両者は密接な物理的な関連がありそうだから(Delay調整していない=LPにおけるタイムアライメントが調整されていない=状態で、ARTの「逆相による定在波のキャンセリング」なんてできるのだろうか???)、切り離せないのでは・・・と予想(汗)。

 

であれば、私はDirac Live+ARTLeanな低音およびLPだけにせよ、ほぼ完璧に位相が揃っている音)に軍配ですね!(笑) それほど<中毒性>がある出音ですから!!!

2024年9月10日 (火)

Auro-3Dに関する、中上級者向けFAQ集-入交氏とのDiscussionから

先日、伊豆のご近所さん(笑)の、入交さんのご自宅兼仕事場へお邪魔して参りました。

 

今日、初めてこのブログに辿りついた方は、「誰、それ?」かもしれませんので、彼についてのリンクをいくつか張っておきます。

 

入交氏のAuro-3Dに関する活動 

https://note.com/live_extreme/n/n217764a0805b

 

https://online.stereosound.co.jp/_ct/17665156

 

同、ATMOSに関する活動 

https://www.dolbyjapan.com/interview-creator-irimajiri

 

まあ、彼のフルネーム(入交英雄)で検索して戴けば、まだまだたくさん出てきます。一言でいえば、「日本のイマーシブオーディオ制作に関しては第一人者のお一人」と言い切れる、博士号をお持ちのベテランエンジニアの方です。

 

彼はこの「Auro-3D友の会」および私Auro3Dが、その設立時からお世話になっている方で、もし、ここのブログに、他にもあまたある一素人の個人のオーディオブログと差別化を図れる点があるとすれば、ここの記事は全体的に「入交氏による(暗黙の?)監修ないし、ご指導ないし、意見交換の下」書かれているものが少なくない、という点に尽きます。

 

もちろん、入交氏が考え、実践されていることが<すべて正解>であり、<これ以外は認められない>というものではないとは思います。私は社会科学の人間なのでこの分野では言うまでもなく、たとえ、音響工学や音響心理学?といった理系的な分野でも、<真理は一つ>と言い切れるほど、「この世と人間」は単純なものではないですよね(笑)。

 

ゆえに読者の方は、ここに書いてあることは「一先達の独自の理論や実践」として批判的に捉えてご自分の<理論構築や実践作業>の参考にしていただければ結構なのですが、ただ、一つだけ言えることは、2ch音響などとは違って、Auro-3Dなどの「イマーシブオーディオ」はまだ緒に就いたばかりであり、体系的な理論や方法論が<すでに確立している>とは言えないということです。「芸術」などとは異なり、このような分野の場合は、「まずは先達が歩んだ道をなぞってみる」ところから入るのが<合理的・科学的な手順>というものですから、私はまずは現時点でのフロントランナーの一人である、入交氏の理論と実践を皆さんに紹介し、自分もそれをなぞってみているのです。

 

さて、重要な前置き(笑)を終え、本題です。

 

まずは今回訪問させていただいて、いつもの通り、いくつか、彼が今「制作中」の音源を聴かせていただきました。

 

残念ながら、現時点では発売すら未定で、「誰の、何を聴いた」と書くわけにはいかないものがほとんどでしたので、はっきりとは書けませんが、ベーゼンドルファーインペリアルによるピアノ曲集が、もしかしたらAuro-3Dでも出るかも?(でるといいなあ・・・絶対買う!!!)ぐらいは匂わせておいても叱られないかな?(笑)

 

そうそう、これはもうすぐだそうですからいいでしょう。

 

山本剛トリオのライブ盤「Shade Of Blue

https://diskunion.net/jazz/ct/news/article/1/116730

 

Auro-3Dが、近々、出るそうです!!! 「Auro-3DにまともなJazzがない」と、ずーっとお嘆きだったアナタ、いよいよですぞ!震えて待て(笑=そういえば、Rockでは、先にご紹介した、「Mr. Big」のAuro-3Dライブアルバムですが、 諸事情=汗により、発売が9月から11月ごろにずれ込むそうです…)

 

で、今回聴かせていただいたもののいくつかは私の部屋のシステムでも聴かせていただいたことのある作品だったのですが、全然、入交邸の方が音がいい。「え、なんでこんなボロシステムの音がウチのよりいいの?」と思わず口を滑らせてしまいました(爆=大汗)。

 

だって、入交邸で今回聴かせていただいたシステムはGenelecの、ちょっと古めの(笑)小型の2Wayパワードで、少なくともアンプとスピーカーだけを見れば、1ch当たりにかかっているコストは絶対ウチの方が…???

 

「いや、Auroさん、これはマスター音源ですから。192/24で記録された未編集のもの、つまり全く音質劣化の無いものです」と。

 

P(このようなプロ用の編集・再生ソフトを使って聴かせていただきました)

Img_2850 Img_2851

まあ、当然だが(汗)、上流にボトルネックがあっては、下流でどんなに頑張っても挽回はできないのだ、ということを改めて認識。やはりもっともっとHigh QualityAuro-3D音源が欲しいよなあ(笑)、ということで、以下のQAに発展しました。

 

ここから先が本題で、これまで私自身も含め、「友の会」で実践を積んできている方々から寄せられていた、「やってみてのギモン」を、この際まとめて入交さんにぶつけて、「彼の意見」を伺ってきました。つまり中上級者向けのFAQ集です。

 

 

まずは、上記の流れからクオリティに関連して:

 

Q:現状、BDでも配信でも、Auro-3Dの13chソフトはすべて48/24止まりであるが、原理的に、13chのハイレゾはできないのか?

 

A:BDでは、仕様上の転送速度から、96/24なら11chまでしか入れられない。配信(ストリーミング)の場合も通信速度がネックで、一般家庭のインターネット速度では、これ以上の品質=データ量のものを送るのは難しい(事実、Donguriさんの報告では、先の「オルゴール博物館」のストリーミングで、数度、止まったそうである)。理論的には、ダウンロード販売されるソフトであれば、ダウンロードの時間を無制限に取れるとすればもっとハイレゾの13chソフト、例えば192/24でも一般の方でも入手できるとは思うが、その場合、今度はAVアンプの仕様を変更する必要があり、現行モデルでは再生できないはず。さらにいえば、転送速度がBDより速いUltra HD BDを使えば、理論的にはハイレゾ13chを出力することは可能かもしれないが、現状ではそのためのフォーマットが出来ていないし、同様にデコーダー側も対応する必要がある。

 

Q:では、理論的に、現状の2種類のハイエンドフォーマットである、HCとTOPの無い11chの96/24と、13chフルの48/24では、どちらがオーディオ的に優れているのか?

 

A:これはソースにもよるだろう。高さを含めた空間容量の大きいコンサートホールの音場感の再現性というような面では、レゾリューションが多少低くても13chの方が、高さ感、奥行き感などにおいて高い表現力があるはずだ。

 

Q:では、11chの96/24を、AVアンプの拡張機能を使って13chに拡大したものはどうか?

 

A:これは、Extendしたものの方がOriginalよりよい結果になると思う。例えば、HCの位置から音を出したい場合、ファントム再生(=11.1ch)より、合成されたものでも実SPから音が出る方が音像面や音質面のクオリティは上がるからだ。

 

次に、SP設置を巡るQA

 

Q:『マニュアル』に記述されている、ハイトの「垂直配置原則」と、LPからの「等距離配置原則」が相矛盾するが?

 

A:これは、第一層については、LPから等距離に配置する。そのうえで、その各SPの真上に第二層を配置して欲しい。こうすることで、第一層に配したSPの方が、その上の第二層群のSPからの音より先にLPに到達するという「先行音効果」が得られ、第一層に配置された音像定位が不自然に上がることがない、という、Auro-3D(Matic)の特徴が活かされる。ゆえに、AVアンプに内蔵されている音響補正ソフト(Dirac Live、Audyssey、 YPAOなど)による、距離補正(Delay)の部分は、手動で第一層の各SPと同タイミングで、その直上のSPから音が出るようにすべき(つまり第一層のSPと直上のSPを<同一距離>とする)

 

Q: 第一層のSP配置において、開き角と、等距離で、どちらをより優先すべきか?

 

A:これは「開き角」を優先すべき。距離が多少ずれているだけなら、Delayはかけない方がよい。普通の方の耳はそこまで聴き分けることはできないし、むしろDelayをかけることで、LPがピンポイントになってしまい、LP以外では位相が狂って音場が乱れる方がデメリットが大きい。

 

Q:すべてを同一SPでは揃えられない場合、ハイト群のSPを選ぶ際にどのような点に配慮すべきか?

 

A:まず、ポイントソース(点音源)のSPを使うのが望ましい。具体的にいえば、フルレンジか、同軸2Wayなど。この方が立体的な音場がきれいに再現できる。これが無理な場合は、2Wayで、なるべくツイーターとウーファーが近接しているタイプのもの(疑似的に点音源と見なしやすいもの)を選ぶべき。3Way以上のSPは使わない方がいい。 第二層以上のSPは最低域の再生能力はあまり欲張る必要はない。音の広がり感に影響が大きい周波数帯域は、300-2000Hzあたりなので、できればこの帯域は1つのSPユニットが担当しているものがいい。この帯域内にクロスオーバーがあって二つのユニットに再生が分割されると、位相が狂うために音場が乱れる

また、同様に位相の観点から、バーチカルツイン型のSPは避けたほうがいい。SPメーカーが「センター用」として売っている横長のSPでも、ツイーターやウーファーが二つ、中央から対称の位置に付いているようなものも良くない。理由は、同じ周波数帯の音を同時に出すSPユニットが二つ以上あって、それらの位置が離れている場合、その二つのユニットから完全に等距離にはならないオフセットの位置では位相が狂うから。

位相を揃える観点からできれば、同じメーカーの同じシリーズのもので揃えるのが望ましいが、同じシリーズでもユニットの大小によってクロスオーバー周波数が異なって設定されている場合があるが、これも揃えるよう気を付けたい。いうまでもなく、位相が逆相にしてあるユニットがあるSPは、第一層も含め、使うべきではない。

とにかく、イマーシブオーディオの場合、位相の狂いは空間感を大幅に損ねるので位相整合には最大限注意すべき。

 

音色の統一感に関しては、同じシリーズで揃えられない場合も、ツイーターの素材(ベリリウムとか、ダイアモンドとか、シルクとか)は揃えた方がよい。

 

Q:ATMOSとAuro-3Dを共存させたい場合、SPはATMOS配置とAuro-3D配置のどちらを優先させるべきか?特に、ヤマハやパイオニアなど、HCとTOPが設定できない「Auro-3D対応AVアンプ」の場合など?

 

A:これはAuro-3Dの規定するSP配置にしてATMOSも聞くようにした方が圧倒的に優れている。理由は、ATMOSが定義しているトップフロントの仰角の45度は、大きすぎて、第一層のLCRとの間に明確な音像定位を形成することができないから。業界内では、ATMOSのエンジニアリングポイント(制作エンジニアが実際にモニター室で座る場所)からのトップフロントスピーカーの位置は、「仰角35度」として設計されていることが知られている。つまり、エンジニアリングの段階では、仰角35度のSP位置で音場・音像設計をしているのに、それをユーザーが聴くときに45度の位置にトップフロントが置かれていては「Director’s intention」通りの音場・音像の再現ができない。だからAuro-3Dが定義しているフロントハイトSP群の「30度」の方が、ATMOSでもよりよい結果が得られるといえる。

2024年9月 6日 (金)

イマーシヴオーディオ用のDirac Liveの使いこなし?-ATMOS&Auro-3D

またまた、前回と論理的に地続きのネタです(笑)。

 

あれ以来、久しぶりにATMOS Musicソースを聴き込んでいるのですが、Abbey Roadばかりでは耳が痛くなってくるので(もう耳が若くはない…)、オケものをということで、取り出してきたのが、これ。

 

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まあ、これも「定番」のATMOS音楽ですね。ただ、言うまでもなく、カラヤン存命中にはATMOSはおろか、Auro-3Dもなかったわけですから(歴史的にはAuro-3Dの方が古い)、このアルバムのATMOSはカラヤンが残した録音テープ(何トラックぐらいで当時は記録したのだろうか?カラヤンは録音芸術に積極的だったことはよく知られているので、間違いなく当時としては最高品質の録音機器を使い、最大限のマルチトラック収録をしたであろうことは想像できる)を、現代の若手?エンジニアがRemixしてATMOS化したもの。

 

本稿の本題とは逸れるが、このATMOS版の『カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニック交響楽団によるベートーベン交響曲集」(=ものすごい、Authentic! 皆が平伏するキーワード3連発ですよね=笑)は、ただ2ch16ch(そう、これ、9.1.6ATMOSフルバージョンです!)に拡張しただけじゃあないようです。

 

ジャケット裏には、「DOLBY ATMOS transports you from the ordinary into the extraordinary」と書かれているように、録音エンジニアさん、「気合入ってます」(笑)。

 

で、今回、せっかく真面目にATMOS・カラヤンのベートーベンの交響曲全曲を聴くんだから、我らがインマゼールのAuro-3Dによる全集との聴き比べを。

P20240904-183037

 

といっても、音質、音像、音場などの「勝負」はやる前から見えていて(汗)、そりゃ、録音の年代が数十年違うし、片や「なんちゃって」ATMOS、片や「本気」Auro-3Dですから、この比較はFairではない。

 

ただ、聴き比べてはっきりわかったことは、このカラヤン・ATMOS版は、<残響音>?を盛りに盛っている、ということ。これ、録音された場所は全曲同じなのか(ムジークフェラインザールなのか、もしかして一部、教会?=カラヤンは教会での録音も好きだったことは有名)は、老眼で(汗)ライナーノーツの細かい英文を読む気にならないので置いておきますが(笑)、直接音再生の主体であるLCRに比して、サラウンドバックとかトップリアあたりに入っている音は、<やたらDelayがかけてある>んです(笑)。

 

だから、残響時間の長いとても広い空間で3D録音されたかのような!(私は、残念ながら、未だムジークフェラインザールには行ったことが無いので、その音場感が分からない) 例えば、第7番の印象的な第一楽章の最初のフォルテなんて、「前から後ろへ音が流れていく」のが分かるぐらい(笑)。インマゼール・Auro-3D版より全然長い残響時間!

 

言うまでもなく、当時の録音は、まさか、入交さんがやっておられるように天井とか後ろ向き(つまり背後からの残響音録音用)にマイキングはしてますまい。当時の録音エンジニアはほぼ2ch用しか考えてない(まさかこれ、4chがオリジナルじゃないよね?)はずなので、当然、録音は直接音主体のはず。そのように収録された「音」を、ただ16ch化しただけなら、<ホテルの大宴会場のBGM>にしかならない(=つまり、同じ「音」をただ多くのSPから出しているだけ=笑)。

 

それでは耳の肥えたイマーシヴオーディオミュージックファンからは「金返せ」となるのは目に見えているので(これがRockとかPopsなら、ギターやシンセの音をぐるぐる回す、とかのお遊びを入れて「なんちゃってATMOS化」を図るのだが、Classicはこの手は使えない)、どうやらエンジニア君はかなりDelayを工夫して入れることでATMOSらしく?したようです(笑)。

 

これだけを聴いているとわからないのだけど、これを最新のAuro-3D録音と聴き比べると、今回「いかにカラヤンATMOSが<不自然に>音場を盛っているか」が分かってしまった(汗)。

 

ついこの前もオルガンを聴きにサントリーホールに行ったばかりですので、我らがインマゼールの方が、圧倒的にリアルな現場感があると断言できます。カラヤンATMOSは、サントリーホールの3倍くらいの広さの石造りのホールで収録したのか?ウソっぽい=爆。

 

まあ、ATMOSは本来、映画用なので、映画音響であればこのような「あざとい」編集はお手の物(まさか、映画用のエンジニアがこれ、手がけたんじゃないでしょうね?=汗)だろうが、Classic音楽としては、ちょっとやり過ぎじゃ?(いくら風呂場のカラオケ好きの私でもToo Much!

 

さて、すっかり「本題」を忘れるところだった(大汗)。

 

実は、このカラヤンATMOSを真剣に聴いてみて、なんとなく、「重いなあ、これ」という感じがしたのです。つまり全体的にどよーんとした音で、<コロコロとした軽み>がない。「ベートーベンなんだから、当然だろ。モーツァルトじゃあるまいし!」とは言うなかれ(笑)。

 

ベートーベンだって、交響曲9曲の全楽章すべてが「暗い」わけじゃない(笑)。彼の人生は全般的に確かに「暗かった」ようだけど(汗)、たまにはFunkyな気分の時もあったはずで、当然、そういう時に作曲した楽章もありますよね?

 

でも、このATMOS版、どうも全般的に暗く、重い(気がした)。「これ、もしかして録音が古くて、高域がハイエンドまで録音されていないんじゃ?」と勝手に想像し(アナログテープが原盤で、DiscBDだから理論的にはハイレゾしてるはずだが)、「よし、Tomyさんがよくやっておられる、Dirac LiveTarget Curveの調整をやってみよう」と。で、ここから先はDirac Liveを使っている人には参考になると思うので、今回記事にしたわけです(汗)。

 

Dirac Live歴の長い?私は、これまでの研究結果から、現在は原則、以下のようにしています。

 

1.第一層のメインSP(拙宅の場合は、Sonettto VIII5台)は、1Khz付近より上は補正しない

P20240903-072000

 

2.それ以外のSPDirac Liveのデフォルト(全帯域補正=ほぼフラット化)

 

他にもいろいろ細かい自分なりの工夫はあるのですが、今回の中心テーマである、「高域」だけの設定のお話にここでは留めます。

 

基本的に1はいじりたくない(チャンデバ化までした自分のシステムの「基本性能」を信じたい!)ので、やるなら2です。そこで2のSP群のTarget Curveを以下のようにしてみました。

 

P20240903-070833

 

いわゆる、「ふた山」f特ですね。「BBC Dip」も取り入れてみました(笑)。

 

結果ですが、少し(というか、かなり)音に「コロコロ感」(笑)が出てきました。そしてどんよりしていた空がカラっと晴れたように、空間が広がったような気がします。

 

Auro-3Dの<マニュアル的には>、13台同一SPで揃えろ、とあることはもう耳タコだと思いますが、「言うは易し行うは難し」の典型の一つであるのは言うまでもありません。で、多くの方が第一層のSPに比して、比較的小型のSPを第23層に配しておられるのが現実ですよね。それを同じメーカーや、さらには同じシリーズで揃えておられる方ばかりではないのも、また「Reality」です。その場合、ではどのようなSPを第23層用に選ぶのがいいのか、については、残念ながらAuro-3Dの教科書には書いてありません(汗)。

 

そこで我々のような「人柱」が実践経験の中で、何らかの解を見出していくことが期待される(?)わけですが、実はこれは、前にも書いたことがあるのですが、多くのAuroシステムを拝聴させていただいた経験からは、個人的な好みでは、やや高域に華があるSPを第2、3層に使う方がいい結果になっているような気がしていて、それを今回は応用し、これらSP群の高域を持ち上げてみた、というわけです。

 

さて、このATMOSでの効果に気を良くして、ついでにAuro-3D用のセッティングでも、第2,3層に同様のTarget Curveを適用してみたところ、<台風一過の晩夏の日差しの下、家を取り囲む木々からの木漏れ日を感じながら、エアコンを入れた涼しい部屋で静かに聴くAuro-3D&ATMOSによる、清々しい『田園』>を満喫しながら、これを書いております(笑)。修正したTarget Curveは保存していつでも適用できるので、暗い冬が来るまではしばらくこのCurveで楽しもうかな、と(笑)。

 

Dirac Liveに高いお金を払った方は、是非、Default以外の設定も楽しんでみてください!いいカーブが見つかったら、是非ご報告を!

2024年9月 2日 (月)

ATMOS Music用のセッティングを詰めました!-「灯台下暗し」的なATMOS 9.1.6フル音源も発見!!!

季節労働者の私は、今は長い夏休みの最中なので、連日の投稿となります(台風で家に閉じ込められて庭仕事もできないし…他にやることないので=笑)。

 

今日は、前から一度はやらなきゃ、と思っていた、Dolby ATMOS用のSP配置の見直しとそれに伴うキャリブレーションをしました(つまり、今回の記事はAuro-3Dは全く関係ないです=汗)。

 

この春にSonetto VIII5台をすべてチャンデバ3Wayマルチアンプ化したので、当然それまでのAVプリの出力チャンネルレイアウトは変わっており、また、SPの性能そのものも「大きく」変化したので、Dirac Liveのキャリブレーション自体もやり直す必要があり、もちろん、Auro-3D用には何度も手直ししつつ、今はとりあえず満足の行く各種設定のパラメーターを見出していることは、すでにこのブログでも何度も書いていることです。

 

しかし、伊豆のシステムでは、Auro-3D用とATMOS用は全く別のConfigurationとしているので、実はATMOS用については、家族や友人などが遊びに来るため、取り急ぎ「映画用」のセッティングだけはしたのですが、「Music」用のセッティングとキャリブレーションは未だしていなかったのです(同じATMOSでも、映画用とMusic用でまた別のConfigurationにしている)。

 

春休み後は仕事があるので、伊豆に来てもせいぜい2泊程度しかできないので、Auro-3Dの新譜を聴くのに精一杯だったし、そもそも、ATMOSの音楽ソースは少ないため、ほとんど聴く機会が無かったということもあります(Apple Musicなどの「なんちゃってATMOS」なんか伊豆のシステムでは聴く気にもならないし=後述)。

 

さて、ここで、「音楽用のATMOSセッティング? ATMOSは一つじゃ?」と不思議に思われる方がおられるかもしれませんので、ちょっと説明しておきます。

 

私はこれも何度も書いていますが、映像を見ながら音楽を聴く趣味がありません(例外はオペラだけ)。映像付きのBDDVDなどの音楽ソース(例えば、ClassicのLiveビデオ)を再生するときは、常に映像はオフにします。コンサートに行っても、Classicなら目を瞑って聴きたいタイプ(笑)。自分の脳を、「音」だけに集中させたいのです。

 

ゆえに、伊豆ではスクリーンを降ろす「映画用のATMOS」セッティングと、スクリーンを降ろさない「音楽用のATMOS」セッティングに分けているのです。

 

二つのセッティングの大きな違いは、1.使用するセンタースピーカーが異なる2.LRと、SLRSP位置が異なる―の2点。

 

1については、映画用はスクリーンの上下にSonetto I各1台を置いて2台でSplit Centerにして、画面中央にセリフがファントム定位するようにしています(サウンドスクリーンではないため)。音楽用には、5chの昔からマルチChで音楽を聴く際の基本中の基本である、LCR同一SP(Sonettto VIII)としています。

 

2については、映画試聴時にはLRがスクリーン(140インチ)にかからないように配置せざるを得ないので、かなりLR間が広くなり、かつ、Rの方がややCから遠くなります(キャスター付きなので動かせる)。また、SLRは、そもそも映画試聴時にはLP(映画なら視聴位置というべきか!)を最後部のソファにしているので(私は映画館でも一番後ろに席を取るタイプ)、90度(真横)に配置すべきSLRの位置も当然後ろに下がるのです。音楽用ATMOS配置のSLRの位置は、なるべくLRと正三角形(一辺約3.5M)に近くなるように、映画視聴時のソファより約1.5Mほど前で聴きますので、必然的にSLRの位置も1.5Mほど前に出ます(ATMOSではサラウンドSPとして使うAmator IIIは、キャスター付きのTAOCSPボードの上にあるため可動性がある)。

 

PImg_0278_20240902132801

<LCR側からLP側を撮影。中央の椅子が、ATMOS音楽鑑賞用のLP(映画時はその後ろにあるソファ)LP前方左右にあるSonetto VIIIFront Wide(その上にあるSonetto IIMiddle Top)、その後方にあるAmator IIISurround、ソファの後ろの棚にあるSonetto ISurround Back(その上にある、Venere1.5Rear Top)>

 

今回、この、「音楽用のATMOS」再生のためのSP位置を微調整して、そのうえで、やりましたよ、9点測距(汗)。この時だけはTrinnovがうらやましい(笑)。Dirac LiveARTを適用するための測定にはかなり時間がかかるし、その間、静かにしていないといけないんです(測定に15分ぐらいはかかる。その後、ARTの計算にまた15分ぐらいかかる=汗。しかも一発でうまくいくとは限らない・・・途中で雷や電話なんか鳴ろうものなら、やり直し=泣)。

 

つまり、今日のような、よほど暇な時しかヤル気にならない・・・(笑)。

 

言うまでもなく、ATMOSセッティングは今まで何度もやっているのですが、今回はStormでのスピーカーレイアウト設定値を従来とちょっと変えてみました。

 

これまでは、第一層にFWを含めた9chSW1ch3台、第二層はATMOS的にいえば、2列各3台(フロント、ミッド、リアの各トップSP)の計6ch(=9.1.6)を実現するのに、Storm的に書くと、「9.3.5.3」、つまり、第二層と第三層にそれぞれ、5台(HCと、フロント&リアハイト)と3台(TOPと、トップミドル)のレイアウトにしていました(ATMOSでは、HCTOPは定義されていないが、ARTでは定在波制御に利用できる)。

P(SPレイアウトの多様性があるのが、StormやTrinnovのメリットの一つ)20240901-144050_20240902132801

 

今回は、「9.3.1.7」というレイアウトにしてみました(SP数はどちらも20台で同じ)。何が違うかというと、第二層にはHCだけを定義し、第三層に2列各3台とTOPVOG)の1台の計7chを定義してみました。これにより、ATMOSが必要とする上部SP群の6台を、すべて同じレイヤーにあるとAVプリに認識させたわけです(だからといって、各SPLPとの距離はマイクで測定しているわけだから、恐らく、音場感はなんら変わらないだろうが、この方が6台すべてATMOSでいうところの「トップスピーカー群」と認識されるので、気分の問題!=汗)。

 

さて、キャリブレーションが終わり、何かATMOS音源の音楽を試し聴きしようとおもい、手持ちのディスクを物色していると・・・

 

以前、記事にしたことのある、『狂気』や『宮殿』、また一連の「John WilliamsVienna, Berlin, Tokyo」、これも定番の『Hans Zimmer Live in Prague』などに加え、Auro-3DBDでATMOSバージョンもあるものもいくつか選び、とっかえひっかえ聴いてみました。

 

それにしても、前も書きましたが、ATMOSって、Front WideスピーカーやTop MiddleにDiscreetに音が振られているソフトって少ないですよねぇ・・・最近、Denonの一体型と、Marantzのプリのハイエンドモデルが、それぞれ16ch対応したんだけど(ちなみに、私のStorm24ch対応!)、これらを購入して、頑張ってSW含めて16ch、つまり、ATMOS9.1.6を構築した人は皆さん、がっかりしておられません?(笑)

 

ATMOS映画ですら9.1.6の全チャンネル使っているソフトって、私の手持ちでは、『Gravity』ぐらいじゃないかな?(しかもこれ、今は絶版) ATMOS音楽に至っては、『宮殿』だけかな?特にApple で配信している「ATMOS Music」なんて全然<なんちゃって>でひどいもので、ほとんど7.1.2(しかも、チャンネルベース)。さらに悪いことに圧縮ソースなのでその音質は、東京のボロシステムならともかく、伊豆のシステムでは聴くに堪えない酷さ。入交さんが「こういう質の悪い音源のがイマーシブオーディオだと思われると困るんだが…」と嘆いておられたのもむべなるかなレベル。部屋とシステムと耳の3拍子が揃っている人にとっては、1分も聴いていられないよ、あれは(泣)。まあ、BDによる「本物のATMOS Music」を聴いたことない人ならともかく。

 

ということで、Auro-3D13.1chの良質な音楽ソフトがほとんどないのと同様、15.1chの民生用フルフォーマットの良質な「本物のATMOS音楽ソフト」は皆無に近いのが現実・・・

 

と思ったら、思わぬところにありました!

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いやあ、このアルバム、正直言って一応ワタシ、中学時代に「ビートルズ・シネ・クラブ」の会員だったほどのBeatlemaniaだったので(当時は既に解散していて、映画でしか<演奏している彼ら>を見ることはできなかった…)、はっきり言ってこれまでに1000回以上聴き込んでいると思う(爆)。つまり、完全に耳にタコができていて(笑)、これがATMOS版で出た、との情報を数年前に得たときに、「まあ、一応、元マニアの端くれとしてコレクションしとくか」ぐらいの気持ちで買うには買ったが、恐らく一度か二度くらいしか聴いていなかった代物。今回、暇に任せて漁っていると、ATMOSの表示が目に留まったので何気なく再生してみて、InputsPCで見たらびっくり!!!

P(Inputsに16ch、しっかり、すべて入力がある! OutputsはARTなので30ch出力中=笑)

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これ、世にも珍しい100%、9.1.6 ATMOSです! なんでもあの、George Martinの息子さん(笑)がATMOS化したそうで。で、聴いてみると結構遊んでいて(笑)、遊園地気分で楽しめる! 音質もいい(ただ、ちょっと低域=LFE=盛り過ぎかな…思わずSWの出力を落とした)。

 

P(こちらはStormXTという拡張モードを適用したもの。ATMOSには無い、HCTOPにも音が入って18ch化!)

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デノマラのハイエンド16chを購入して頑張って16chシステム組んじゃった人、これ、おススメです、投資と努力の元が取れますよ(最後の、Her MajestyPaulの声が一周するときにFWも使ってくれるのがウレシイ!)。Beatles嫌いな人はいないと思うので、是非聴いてみてください(Apple Musicとかのストリーミングじゃだめですよ!音質悪いし、16chは絶対に出て無いから…)。

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