« 2024年7月 | トップページ | 2024年9月 »

2024年8月

2024年8月31日 (土)

本格的比較試聴: 13/48  VS  11/96  @伊豆のメインシステム―「オルゴール博物館」でのAuro-3D音源無料Archiveを使って

子供のころから、「有言実行」をモットーとしております、Auro3Dです(笑)。

 

前回の記事のコメント欄で宣言しました通り、台風の中(汗)、今、伊豆に来ておりまして、「宿題」について真剣に比較試聴をしてみました。

 

以下、科学的レポートのノリ(笑)で:

 

1.問題意識

Auro-3DNativeソースのハイエンドLine Upには現在、①13.1chDiscreetで音が割り当てられている(ハイトセンターと、トップの2chにも、それ以外の11chと同様、マイキング時点で高い位置に設置したマイクで拾った音をエンジニアリング段階で割り当てて再生させている)、48Khzのバージョン(以下、13/48)と、②11.1ch74)に音が割り当てられている、96kHz のバージョン(以下、11/96)がある。後者を、Auro-3DExtend機能を使って、疑似的に13.1chとした場合(ハイトセンターと、トップの2chからの音は、エンジニアの意図とは無関係に、他の11chソースから人工的に生成されたものが再生される)、果たして両者にはどのような「音」の違いがでるのだろうか?

 

2.方法論

21.使用機材

詳しくはここにある通りであるが、第一層7ch (内、メインの5chSonetto VIIIのチャンデバ・マルチアンプ駆動)、第二層5ch、第三層1ch2台SW3台による、13.1ch環境で、VOGDynaudio以外はすべてSonusSonettoシリーズの同一ツイーターで揃えている。AVプリはStorm ISP MK2。

 

22. テスト環境

床面積は約25畳程度、空間容積は通常家屋の40畳の部屋程度。平行する壁の少ない、アシンメトリーな部屋であるが、SP配置はAuroマニュアル通りのほぼ完ぺきなセッティング。なお、スクリーンは使用せず、LCRを同一スピーカー環境として「音」だけを聴き比べた。

 

23.入出力条件

出力に際しては、Dirac LiveARTを適用している。入力に関しては、2台のPCMac &Windows)をHDMI接続し、それぞれブラウザーからKORGLive ExtremeTest Site にある「オルゴール博物館」での自動ピアノ・マリンバ・巨大オルゴールの演奏録音ソースに接続し、20240831-125529_20240831153701 Macでは「13/48」を、

20240831-121820

Windowsでは「11/96」を

20240831-121925

再生できるように調整し、それぞれをLPで操作できるPC画面上のクリック一つで切り替えれるようにしたうえで、両方のPCで同時に再生を開始した。

Img_0274

これにより、いちいちPCのセッティングを変えることなく、同じ曲の同じ部分を1,2秒の間で切り替えて二つのフォーマットで比較試聴することを可能にした。11.1ch版は13.1ch再生にExtendし、再生時には音量などのパラメーターには一切手を触れず、同一条件とした。

 

3.実験結果

31MCの声

Onマイクで拾われているMCの声はCのみから出ており、11/96の方が声そのもののリアリティが高い。

 

曲と曲の間での、ややOff マイク的になる司会と奏者とのやり取りや、「準備をしている会場音」(ロールの巻き戻し音やコンプレッサーの音、スタッフの足音や咳払いなどの暗騒音)の空間感は13/48の方がリアルであった。

 

32Pianoの音

このPianoの音は、現場で生演奏を聴いてきているので、「本物」の音の記憶を頼りに試聴した。

マスカーニ 「間奏曲」にて

 

13/48の方がピアノ自体に奥行きが感じられ、「音像」に関しては圧倒的にリアリティがある。

 

「音質」は11/96の方が、ハンマーが弦を叩く瞬間の音などはよりくっきりしていて、解像度の高い音がする。ただ、打鍵音が空間に収まって、徐々に減衰して倍音が重なっていく「音場感」は、13/48の方が優れている。

 

33.マリンバの音

①ラフマニノフ 「くまんばちの飛行」にて

 

LCの間に定位している感じはどちらも同様。音質としては、強く叩いている打鍵音に耳を傾けると、11/96の方がより実体感がある。

 

2台のマリンバ ドビュッシー 「アラベスク」にて

 

これは13/48の方が奥行き感が出るのがはっきりわかった。

 

音質は、①とは異なり、やわらかいマリンバの音だとほとんど11/9613/48の違いが分からない。

 

34.リモネール (超大型オルゴール)の音

 

これは現場で本物を見てきているが、2階までの高さがある、見上げる感じの装置である。

 

「チャルダッシュ」にて

 

13/48の方が立体感が増し、上部のシンバル?音も11/96よりはっきりと聴こえる。

 

さらになぜか?低音も13/48の方がしっかり伝わってきた。

 

4.考察

 

今回の結果は、先日、東京の書斎のボロシステムでの結果と大筋では大差が無かったが、やはり「音質」の差についてはこちらのシステムの方がはっきりわかるので、音源によっては11/96のアドバンテージが感じられた。

 

しかし、私の駄耳では、「音質」の差はブラインドだったらどちらがどちらと100%は当てる自信は無いが、「音像・音場」の差であれば100%ブラインドでも当てる自信があるほどの差があった。これは、書斎のシステムが11.1ch5+5+1)であるのに対し、伊豆のシステムはフルシステムなので、より奥行き感などの表現に優れるのかもしれない(SP配置が書斎に比して正確であることも大きい可能性大)。

 

東京の書斎に比して意外な発見であったのは、特に最後のリモネールと2台のマリンバの共演において、低域の再現性に明らかな差があったこと(書斎のシステムでは気が付かなかった)。低音の質も量も、明らかに13/48の方が上回っていた。今回の二つのソースはどちらもLFEには音の入っていない13.0ch11.0chソースであるため、ミキシングの段階で両者のLFEの音量が異なっているということはあり得ない。拙宅ではARTによって3台のSWも低域再生に寄与しているのだが、その出力がNative13ch Extend 13ch で変わるということも考えられない。

 

ゆえに、この原因は、もしかすると、Native13chの方が、「平面波」がより正確に形成されるためかもしれない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回の実験レポートは以上ですが、前回も書いたように、私の「Auro耳」は、かなり「空間表現」に敏感で、それを高く評価する傾向にあることは否めません。Donguriさんも指摘されておられたように、機材や部屋が違うと(さらに「耳」が違うと=ご自分の耳で拙宅での実験を追試したい方はいつでも再現できますのでご連絡を!)、異なる結果になる可能性は十分にあるため、同様の実験をされた「友の会会員」の方のレポートをお待ちしたいと思います。特に、Stormでは、Auro信号を検知するとすべて13chにExtendする仕様になっているため、「では、11.1chのNativeソースを、11.1chで再生した場合との音の違いはどうか?」との問題意識を私のシステムでは実験することができませんので、是非、デノマラのハイエンドAVアンプをお持ちの方はこれもやってみていただきたいと思います。

ただ、11chをExtendして13ch化するというのは、素人の勘では(汗)、HCの音は、HLRから半分ずつ、TOPの音は、SHLRから半分ずつ取ってきて合成しているのだろうと思っているので(つまり両サイドのSPのセンターにファントム再生させるつもりの「音」を抽出し、実SPからも再生させている)、11chとそのExtend版である13chの「音質、音像、音場」は、HCやTOPに使用しているSP2台に他に比してよほど性能の低いものを使っているのではない限り、大差ないのではないかと私は見ております。

ゆえに私の<研究結果と考察>を是とするのであれば、ATMOSのスピーカーレイアウト(つまり、HCTOPが無い)でAuro-3Dソースを聴いても、その(個人的には)最大の魅力である、空間表現力は十全には発揮しきれない、ということが言えると思います。

私自身は、<Auro聴くなら、Native 13ch一択>であることを再確認した次第です(笑)。

2024年8月25日 (日)

Auroの上原さんのPianoの位置&48/13ch VS 96/11ch-書斎のシステムでの気づき

今月23日の金曜日の夜にて、前回紹介したAuro-3Dフルスケール13.1chの配信が終了しました。皆さんのご感想はいかがでしたでしょうか? 聴かれた方はここにレスを入れていただけると、入交さんも喜ばれると思います!

 

私は、残念なことに、1週間の配信期間のうち、初日金曜日の夜一晩だけ伊豆で、日曜日の夜から二晩だけ東京の書斎で聴くことができただけでしたが、「何とか元を取ろう」と貧乏人根性丸出しで(笑)、この間は繰り返し真剣に聴き込みをしました。

 

そこで二つほど、Auroシステム的な<気づき>がありましたので、参考になればと紹介したいと思います。

 

その1. 

伊豆のシステムでの印象は大まかには前回書いた通りですが、その<耳の音も乾かぬうちに?>、東京に戻って書斎の寄せ集めシステムで、今回の演目の自分なりの目玉であった上原ひろみさんのピアノ演奏(1曲目)を聴いた時、「えっ、これ、ピアノの位置が違うんだけど…」と。

 

前回の記事で明示的に書いたように、この1曲目のYahamaのピアノ曲(ちなみに、最近知ったのですが、彼女は浜松出身だそうです。だから、Yamahaに拘っているんだな、と超納得!子供のころから弾きなれているでしょうし、長じてからもプロになるまでに相当な支援を本社から受けたであろうと想像)は、<入交流>の音像配置である、LCの「ど真ん中」に中心が置かれています。

 

ここで、私がピアノの定位位置を「断定的に書いている」のに首をかしげる方がいるかもしれませんので、ご存知の方には繰り返しになりますが(汗)、なぜ、ここまで<客観的・普遍的>に(つまり、「自分のシステムでは」という主観的・条件限定的な書き方ではなく)言えるのかを。

 

それは、私の伊豆のメインシステムは、今回のストリーミング配信の音楽制作監督をされておられる、入交英雄氏(WOWOWエグゼクティブ・クリエイター=前回紹介した評論家の生形三郎氏の記事に出てくる方!)の再三の訪問を受け、彼が制作した音源を再生しながら「2度」(汗)の角度の狂いまでを正すクリニック済みのものだからです。

 

ゆ・え・に、私は一応学者の端くれですので(汗)、普段は断定的にものを言うのには慎重な態度を示しているつもり(笑)なんですが、こと、伊豆の拙宅のシステムの「音像定位」に関してだけは、それが特に入交さんの作品であれば、ほぼ絶対の自信をもって、「Director’s intention通りに再現されている」と言い切ることができます!(「音場」に関しては部屋も変形だし、Dirac Live使っているしでそこまでの自信はない・・・汗、さらに「音質」は言うまでもなく、人それぞれのシステムに好みが反映されているのでMonitorの音と違うのは当たり前で、Directorが聴いている「音質」がベストかどうかは意見が別れるのは当然)

 

ということで、伊豆のReferenceのピアノ位置に比して、東京の書斎で聴いた上原さんのピアノは、かなりCに寄って聴こえてしまいました。

 

「これはマズい。どこかが狂っている=断定!=笑。Dirac Live適用しているのになあ・・・」

 

私はバリバリの(笑)「Dirac Live信者」ではありますが、Dirac Liveをかなり使いこなしてきてその「限界」も理解しているつもりです。これはもう何度か書いていますが、Dirac Liveには「スピーカーの位置Virtualに補正する機能」は、ありませんTrinnovや、YamahaYPAOはこの機能がある、と「カタログ的には」書いてある。ただし、自分の耳で確認したことはない)。つまり、いくらDirac Liveでも、Auroシステムがそのマニュアルで厳格に定義している、設置上の開き角と仰角はごまかせないのです。

 

私の書斎では、実はLR30度の開き角を確保できておりません(22度くらい=泣)。これは物理的にLRを今の位置より外側に置いたり、LPを現状以上に前に出したりすることができない部屋の構造になっているからです(人が通れなくなる…)。専用ルームではない、書斎兼用の悲しさですが、このような「配置上の制約」のあるセッティング環境の方は少なくないのではないでしょうか。

Photo_20240826084901

(例えば、このRスピーカーをこれ以上右に移動すると、勉強机に行けなくなってしまう=汗)

 

しかし、だからといって、「泣き寝入り」というのも癪なので(笑)、開き角の狭さを補う「物理的な」(電子的な、ではなく)方法はないか、と腕を組むこと5分(=ホントはすぐに思いついた=笑)。

 

恐らく多くの方がそうしていると思いますし、確かAuroのマニュアルにもそのような指示があったと記憶していますが、皆さん、SPLRのみならず、LPに向けてませんか?

 

私も伊豆でも書斎でも、AuroシステムはすべてLPSPを向けてセッティングをしているのですが、よく考えてみると、私の2chシステムの方は、書斎にある1000Mも、伊豆のAmator IIIも、どちらも「平行法」セッティングなんですよね。一般に2chの世界では、JazzVocalを中心に聴く場合は「内振り法(正対とは限らない、微妙なテクニックがあるみたいですねェ=笑)」で、広がり感の欲しいClassic主体で、特にあまりSP間の距離が取れない場合は「平行法」というのが<教科書的>に語られているのはよくご存じの通りです。

 

で、まだ歴史の浅い?Auroシステムの世界では、<LPと正対>させるという「マニュアル」通り以外のオプションは、私の知る限りではその効果検証などはされていないと思います。

 

しかし、「2chで有効なテクニックなら、応用できるんじゃない?同じLRなんだし…」ということで、やってみました、「平行法」!まだ上原さんのAuro-3Dでの演奏を聴ける時間内に。

2_20240826084901

結果はというと、「お、ちょっとピアノが左に寄ったな」とは感じられました。これを書いている今は書斎にいるのですが、残念ながらもう上原さんのピアノは聴けないので、他のAuro-3Dソースを流しています。ダウンロードしたものはほとんどClassicばかりで、元々Classicは音像定位に関してはそこまで厳密な聴き方を私はしてこなかった(特に編成が大きくなればなるほど)ので、はっきりとしたBefore/Afterの違いまでは断定的には言えませんが、マル秘(爆)の13chソース(オルゴール博物館とか)などを聴いても、伊豆並み(ちょっと盛ってる???)とまでは行きませんが(汗)、結構空間が広がって、3D感が向上したような(書斎のシステムは、「Center突出型」なので、元々センターの存在感が強く、音が集まりやすい傾向にあったから、余計に効果があったかも?)

 

LRの開き角がマニュアル通りの60度を確保できていない方は、ちょっと「AuroシステムにおけるLRの平行設置」の追試をしてみてくださいな!

 

その2.

 

これは、Donguriさんがすでに記事にしているものと全く同じ問題意識で、私もやっていました。

 

今回のストリーミング配信では、48/13ch 96/11chを切り替えて聴くことができるようになっていました。これはとても珍しいフォーマットで、普段我々が手にするBD版は96/11chはあるが、13chはないので、この二つを聴き比べることは今までほとんどできなかったのです(先日Mさんが紹介してくれた、「オルゴール博物館」のArchiveソースは今でもできるようです!追試をしたい方は是非!)。

Img_0261

(CHとTS=VOGに入力がある、48/13.1chソース)

 

Img_0262

ここでのポイントは、Native 13chLow Res VS Native 11chHi Res13ch拡張したもの、という比較だということです。つまり、音が出ているSP数は同じで、片や48Native Discreet 13ch, 片や96だけどArtificial 13ch。で、どっちが音がいいか?好みか?

Img_0263 Img_0264_20240825192901 Img_0265

(CHとTS=VOGに入力がない、96/11.1chソース。この両チャンネルを人工的に創出してOutputさせている)

 

残念ながら伊豆では時間が無かったうえに、ついつい「音楽」を聴いてしまった(オーオタ的に「音」を聞こうとは考えもしなかった…)ので、伊豆のシステムでは比較試聴していないのですが、書斎の寄せ集めシステムでは、聴き比べしてみましたよ!(ただし、書斎のシステムはリアサラウンドが無い11ch。ただ、9611chCHTopDiscreetに音が振られていない11chなので、この「2ch」分を人工的に合成したものとの比較という点では13chでの比較と同じ条件)。

 

まず、Donguriさんの感想を引用すると、

 

>楽器やボーカルの生々しさとしては、わずかな差ですがAuro 13.1 48kよりAuro 11.1 96kの方が良いと思われました。上方・前方の空間の広がりとしては、Auro 13.1の方がわずかに良いかもしれないが、Auro 11.1を拡張モードにすると音質の劣化は感じないまま空間表現がアップした感がありAuro 13.1でなくていいかとも思えました。

 

なのですが、拙宅書斎のシステムで聴いた私の感想はちょっと違ってまして(汗)。

 

ここでいう「生々しさ」というのは、「音像」と「音質」に分節化できると思います。

 

書斎のシステムで聴く限り、「楽器の生々しさ」(私はボーカルは聴いていない。上原の生ピアノのみでの比較)のうちの<音像=実体感>は「13.1 48k」の方が感じられたんです。「11.1 96k」の方は、なんとなく、ピアノが「空間に溶け込んでしまってやや実体感が薄らいでいる」感じに駄耳には聴こえました。

 

「生々しさ」のうちの、<音質=この演奏だと特にピアノのハンマーと弦の衝撃音>は書斎のシステムでは、優劣は私には聴き分けられなかったです(チャンデバ化した伊豆でやってみたかった…)。ここは、Donguri邸のシステムはBWのハイエンドシリーズで構成されているうえに、最近AVアンプやパワーアンプもBeef UPされたので、レゾリューションの違いが書斎のボロシステムとは異なり、はっきり聴き分けられるのだろうな、と思いました。

 

空間表現」については、上原さんの演奏では書斎のシステムでは違いが分かりにくかったので、これを書くにあたって、念のため、「オルゴール博物館」の音源でも両者を比較試聴してみましたが、これは特に巨大オルゴールの上方からの音のリアリティで断然、13ch Nativeが優れていました。11chの拡張モードでは、前方上方からのチャイムとかの音が全くボケてしまっていました。この部分は前方上部にはっきりとした音源があり、これはHCTopの出番ですから、まず当然の結果かと。

 

結論的にいうと、書斎の寄せ集めシステムでは、「音質」より「音像」の違いに敏感に反応するので、「音像・音場重視派」の私的には13chの勝ち、です!

 

皆さんのシステムではどうでしたか?

2024年8月17日 (土)

Auro-3D 13.1chの、有料ストリーミング配信を聴きました!!!(恐らく、世界初の商業クオリティのもの?)

すでにここでも何度も紹介しているWOWOWKORGのコラボ?のプロジェクト、Jazz not only Jazz 公演のLiveAuro-3D13chフォーマットで収録したものを、解禁日の昨晩、無事伊豆のシステムで聴くことができました!

Img_2749 Img_2750

 

 

Img_2751

11.1chのハイレゾAuro-3DソースならBDであまたあるが、13.1chフォーマットの音楽ソフトは私の知る限り未だ販売されていない(実験的なものは存在するが、商業ベースに乗るクオリティのものはまだないはず)ので、私的には13.1ch一択!!!

13ch_20240817022101

技術的な詳しいことは、オーディオ評論家の生形三郎氏が記事にしているので、そちらを読んでみてください。

 

録音を担当・指揮された、WOWOW技術センターのエグゼクティブ・クリエイターである入交英雄さんは、常々、「Auro-3Dで最も重要なスピーカーは、センター」と言い続けておられるだけあって、彼が手掛けるAuro-3DソフトはLCR3台が同じSPであることを前提にエンジニアリングされているようで、このストリーミング配信でも彼の<哲学>が垣間見れたような気がします。

 

まず第一部?は、JazzというよりはPopsみたいに私には思えたのですが、ボーカルはセンターだけに入力がある、という「入交流」(笑)。

 

次にピアノ好きな私の本命の上原ひろみは第二部(1時間40分過ぎから、2時間5分あたりまで、約25分間の出演)のトップバッターだったんですが、Lとセンターの間に彼女のYAMAHAのピアノを定位させている(これも入交さんがよくやるテクニック!)。

 

彼女はシンセサイザーも演奏することがあるのですが、これはセンターを中心に左右上下に広がりのある音像になっていました。

Img_0256 Img_0258 Img_0257

これ、最初のゲストのボーカルも上原のピアノも、センターレスか、センターがLRと異なるSPの場合は、「Director’s intention通り」には再生できない録音になっています。この辺は入交流は<容赦ない>というか(笑)。SACDマルチやLive映像付きの音楽BDなんかだと、センターレスのユーザーやセンターがLRとは異なるものを使っているユーザーが少なくないのを<勘案して>(笑)、センター<だけ>に音を入れたりL(またはR)とCとの<間>に主要な楽器の音像を定位させるようなことはせず、モノによってはボーカルをCには全く入れず2chと全く同様にLRだけに振ることでセンターに定位させたりピアノやドラムをLかRのいずれかを中心に配置したりして、<センターSPはただのアンビエント音しか入っていない!=センターが無くても違和感が無いように、その役割を最小限に留める>、なんてソフトも少なくないのですが・・・(汗)。

 

言うまでもなく、今回の配信サービスはLive映像付きなので、拙宅には一応スクリーンもありますから、スクリーンとプロジェクターを使って、「映像を見ながら音楽を楽しむ」というスタイルを取ることもできるのですが、そうすると拙宅の場合はセンターSPがスクリーンで隠れてしまい、サウンドスクリーンではないので「センター」はスクリーンの上下に設置してある小型ブックシェルフでVirtual Centerになる設定になってしまいます。つまり、スクリーンを出すと、CをLRと同じものを使うことができないのです。


私は最初のゲストのボーカルがセンター「だけ」から出ていることを確認したので、スクリーンを使うことなく、LCR同一SPという「正しいAuro-3Dのスピーカーレイアウトによる13.1ch再生」で<聴く>ことに徹しました(笑)。

 

目を瞑って耳に集中して「音楽だけを聴く」と、何度も足を運んだことのある、NHKホールの空間感が正しく表現されていることに気が付きます。まさにこれは「臨場感」、つまり実際にこのコンサートに行って聴いた気分が味わえました。

 

これ、有料でそこまでは安くはありませんが(汗)、23日まで配信していて期間中繰り返し聴けます(週明けには東京の書斎のシステムでも聴いてみよう!)から、興味のある方は是非! 特にATMOSには無いSPである、センターハイトとトップ(VOG)の2台をAuro-3D用に設置している方にとっては、世にも希少な、<ホンモノのNative Auro-3D 13.1ch>ソースですよ!!! Don't miss it!

2024年8月 2日 (金)

Live 3連荘!―Jazz、Rock、Classic!!!

今回は、Liveコンサート(まあ、一つは「Auro-3D版Live」だが)に3日連続で、しかもJazz、Rock、Classicの3大ジャンルを横断するという、自分の短くもない(汗)人生の中でも初めての経験を(笑)、「オーディオ的観点から」紹介してみたいと思います。

 

まず、初日は、これ。

 

P (HPより引用)

_  

実は上原さんのコンサートは、個人的には今回が2回目で、1年ほど前にTomyさんとご一緒しています(その時は、矢野顕子とのDuo Piano)。で、今回はSiltechさんとご一緒しました(笑)。いうまでもなく、上原さんも出演する、来たるLive収録のAuro-3D 13.1ch配信(8月16日―23日)の<予習>(本物のLiveと、伊豆のシステムでの「Auro-3D Live」の比較検証のため!)を兼ねての参戦です。

 

場所はBlue Note Tokyoで、Siltechさんが取ってくれた席は、なんと!下記の写真の角度(上原さんがばっちり見える!)で、ピアノまでの距離約2M!!!

 

PImg_2724

 

前回Tomyさんとご一緒させていただいたコンサートは、確か有楽町の国際フォーラムの大ホールで、ステージまでこの何十倍の距離があったので、当然、PAを通しての音を聴いたわけですから、まあ個人的な判断基準では、「音楽を聴きに行った」というより、「上原・矢野のPLAYを見に行った」(笑)という感じでしたが、今回は違います!

 

ピアノはピカピカに磨き上げられたYamahaのコンサートサイズのもので、蓋の反射版の角度も、心なしかClassicのコンサートよりは閉じめ?に見えました(先日の清里でのPianoコンサートに比して)。

 

ただ、Blue Note Tokyoに行かれたことのある方はご存知と思いますが、ここはPA(JBL)も入っています。ステージの中央上部(4−5Mぐらいの高さ)に、Line Arrayスピーカーが2台並んでいましたので、私の勘だと恐らくピアノの音はここから後部座席に届くように再生されていたと思います。ここ以外にもステージの奥と左右にもありますが、ここからは恐らく、エレクトリックベースの音を中心に再生されていたように感じました。ただ、2Mの近さでしたので、我々の席は多分、ピアノとドラムスはほとんど、PAを通さない直接音で満たされていました。

 

上原さんの演奏は相変わらずEnergeticで、直接音主体の「Jazzらしい」音質・音像・音場が楽しめました。私はまだたった2回しか彼女のコンサートに参戦していない「にわか」ファンですが、前回と同様に<とても楽しそうに>、活き活きとニコニコとPLAYされているのを再確認できました。彼女が日本以上に、特にアメリカで人気があるのは、作品(基本、彼女のオリジナルです)や演奏の素晴らしさもさることながら、この「キャラクター」がアメリカではMustな資質だよなあ、と、米国留学の最初に自動車免許を取りに行った時、写真撮影の際に、やたら、「Smile!!!」と声をかけられた記憶が蘇りました(日本の免許証の写真は笑って歯が見えると撮り直しになるのに=笑)。

 

・・・・・・・・・・・・

 

翌日は、これです。

P (HPより引用)

1215457020240508075603_b663ab1836ea3a

Mr.BIGというアメリカのロックバンドの日本公演のLiveを、WOWOW(入交さん)がAuro-3D録音をしたBDが、9月6日に発売されるそうで(私の知る限り、Rock のAuro-3D録音版が出るのは初めてかと)、その「完成披露試写会」に来ないかと入交さんにお招きを受け、初日の初回に、私とグランドスラムさんとCmiyajiさんの3人で参戦してまいりました(笑)。

 

正直申し上げますと、私はこのバンド、全く知らなかったのですが(汗)、このLiveで34年に渡る活動を終えるとかで、「ベストアルバム」的なLine Upだったらしいのですが、私でも「聴いたことあるな」という曲が2曲はあったので、結構Smash Hitsをかつては飛ばしたバンドのようです(別の日に参加されたSiltechさんはよくご存知のようでした)。

 

WOWOWのスタジオにお邪魔するのは今回が3回目ですが(2回目は事実上、「Auro-3D友の会」設立の契機となったもの)、前回同様、ムジークのプロ用アクティブスピーカーに囲まれた、VOGのDelay以外は無補正で機能するように距離や角度を完璧に調整してある、作品を市場に出す前にチェックを行う「モニタースタジオ」です。

 

Live会場は武道館で、私はこのMr. Bigのコンサートには参戦していませんでしたが、もちろんここでのロックコンサートは大学進学で上京してきて以来、何十回?と行っている、聴き馴染みのある「空間」です。この「空間感」が、かなり忠実に記録されているようで、目を瞑ると、武道館のあの巨大な空間の中にいる感じが極めて精緻に再現されているのに驚きました。これは是非、BDが発売されたら、伊豆のセットで再生して記憶の中で聴き比べたいと思います!

 

上演終了後、Q&Aタイムがありましたので、元記者・現学者として、このような機会に沈黙するタイプではない私(笑)は、挙手の上、入交さんと以下のやりとりをしました。

PImg_2726

 

Q: 発売されるBDのフォーマットは、96/24の11.1chだと思うのですが、今日聴かせていただいている13.1ch版のレゾルーションは48/24?

 

A: 96/24です。

 

Q: この作品は、最初からAuro-3Dで録音するためのマイキングをして臨んだのか?それとも、Bob JamesのBDのように、通常の録音ソースを活用してAuro-3D化したものなのか?

 

A: 最初からAuro-3Dのマイキングで収録したものです。

 

Q: 途中で、ギターサウンドが空間をぐるっと回ったり、サブボーカルがサラウンドSPから再生されたりしましたが、これは実際のLiveでもこのような演出がされていたのか、それともAuro-3D化する際に入交さんのミキシングで入れたのか?

 

A: 実際のLiveではあのような音像にはなっていません。Auro-3D用に私のミキシングで入れたものです。

 

・・・・・・・・・・・

 

さて、さらにその翌日(笑)。最後はこれ

 

P (最後のカーテンコールは写真撮影が許可されていた)

Img_2731

「交響曲の王道」と題されているだけあって、普通はどちらか1曲で客を釣って(笑)、もう一曲は渋―い、玄人受けする、私レベルではさっぱり聴いたのことのない(汗)曲を組み合わせるものですが、今回の2曲は、天丼と鰻丼がセットになっているような(笑)。有名曲好きで(というかそれしか知らない…)、さらに甘口好きな私に取っては、自分の中の好きな交響曲ベスト5に両方入っている選曲で、高校生ぐらいの頃から死ぬほど(笑)聴いている2曲なので、一音たりとも「知らない音」は無く、指揮者代われそう(実際、客席で指だけで「振ってました」=爆)。

 

今回、このコンサートに足を運んだのは、演目もさることながら、会場が、「ミューザ川崎シンフォニーホール」だったということも大きいです。関東地方にお住まいの方でClassic好きの方なら、「知らぬものはいない」ホールで、その理由は「音が良い」とされているからですね。

 

恥ずかしながら実は私は今回、ここのホールに行くのは初めて。東京の西部に住んでいるものにとって、「川崎」って、ものすごく遠いイメージなので、「そんな遠くまではるばる行かなくても都心にいいホールはいっぱいあるし」(笑)という感じで、これまでわざわざこのホールに行こうとは全然思わなかったのです。でも、演目に惹かれて調べてみると、川崎って東京駅から東海道線で15分ぐらいで着いちゃうんですよね。しかも駅から雨に濡れずに1、2分で歩いて行ける。「こりゃ、仕事帰りでも7時からのコンサートに間に合うわ」と認識を改めました。

 

ということで、今回の目的は音楽鑑賞に加えて、「ホール鑑賞」(笑)。ここが「音が良い」と言われる秘密は、絶対にオーディオ(ルームアコースティック)にも活かせるだろうと、会場を見て回ってきました。

P

まずすぐに気がつくのは、オケが「すり鉢の底」のようなところにある。オペラのオケピのようだ、というとちょっと言い過ぎですが、<オーディオ的に考えると>これは「音量」の確保、という点ではメリットが大でしょう。音の逃げ場が少ないですから。

Img_2729 Img_2733

その代わり、オケと同じ高さのフロアの面積が比較的小さく、さらに「第一層」(笑)の一番後ろの客席のすぐ後ろが壁になってしまっています。<オーディオ的に考えると>ここはマズイ。LPのすぐ後ろに壁、というのがダメだというのは、どのオーディオの教科書にも書いてありますよね。確実に反射音で音が濁ります(距離が短いので、「ホール音」として分離して知覚できず、ただ直接音をゴースト化してしまう)。一応、この「壁」はQRD風の、音を拡散させる工夫がされていましたが。

 

Classicに造詣の深い友人から、「ミューザで聴くなら2階席」と聞いていたので、今回は2階のやや右サイドの席を確保していました。ここだと、後ろの壁からは遠く、左右の壁との距離もたっぷりあるので、反射の悪影響は少なそうでした。

 

もう一つ、ルームアコースティック的に興味深かったのは、天井の「穴」(笑)

PImg_2730

 

エアコンのダクトにしては大きすぎるしたくさんありすぎるので、これは恐らく吸音トラップなんでしょう。「天井吸音」というのはかつてGRF邸でも体験していますが、もしかすると「いい音響」の一つのKeyかもしれませんね。ただ<個人的には>天井からのホール音が好きだからAuro-3Dというフォーマットに惹かれているのですが(笑)。

 

最後に、音楽的に興味深かった点を一つ。

 

今回のブラームスの1番はもう何度かLiveで聴いていますが、モーツァルトの40番は、たぶん、中学生の頃に母親に連れられて行って以来のLive。その頃には全く気がつかなかった、「現場ならではの発見?」があったんです。

 

私は中でも、ちょっと幻想的な感じがする第二楽章が好きなのですが、あの冒頭のパッセージって、3小節がセットになっていると思うんですが(音楽的素養がないので、間違っていたらご指摘ください=汗)、あれ、最初の1小節がビオラ、次の1小節が第二バイオリン、最後の1小節が第一バイオリンという風に、弾き分けているのをご存知でした?これ、全部同じ音程なので、普段映像レスの音源しか聴かない私は、完全に3小節全部同じように演奏(例えば、第一、二、ビオラの合奏とか)されているものだと思い込んでいました(ビオラのド、とバイオリンのドの音色の違いに気が付かなかったワタシ=汗)。

 

ご存知のように、一般的なオケの楽器の配置だと、ビオラが指揮者の右サイド、第二バイオリンがほぼ正面、第一バイオリンが左サイドになってますよね。ということは、このパッセージ、音が右から左に流れていくんですよ。このパッセージは何度か途中でも出てくるのですが、なるほど、だからなんか幻想的な感じ(「牧神」と通じるところがある。当日配布されていたパンフには、この曲はロマン派に片足突っ込んでいる、というような紹介のされ方がされていたが、さもありなん!)がするんだな、と。

 

で、改めて手持ちの40番を伊豆システムで聴いてみました。定番のベームのウィーンフィルのと、ラトルのベルリンフィルを(どちらも2ch)。と、確かにどちらも最初の1小節(つまり、ビオラパート)は、右サイドから音がするようにエンジニアリングされています。次の2つの小節は私の駄耳(または拙システム)では、はっきりと「中央と左」のようには分かれては聴こえませんでした。

 

でもミューザでは、目を瞑って聴いてもこのパートがはっきりと右から左に音が流れているのがわかったんです。<オーディオ的に考えると>私の席はオフセンターでしたからこのような音像定位はセンターに陣取らない限り(特に2chなら)はっきりとはわからないはずなのですが、こういうところがミューザが「音がいい」と言われる所以の一つなのかもしれないなあ、と思いました。

 

これは是非Auro-3D録音版が出て欲しいところですね。恐らくRCLの順にきっちりと1小節ずつ主音が割り当てられるでしょう。そうするとオフセンターで聴いても右から左に音が流れるのがわかるはずです。サービスエリアが広いのが、Auro-3Dというフォーマットのメリットの一つ、というのは、入交さんが常々おっしゃっていることですから。

 

さて、3日連続で異なる種類のLiveを聴いて、「Auro-3D」聴き(笑)の私の耳には、やはり小さなLiveハウスでのJazzはあまりAuro映えしないだろうな、と感じざるを得ませんでした。最近、すっかり「前からの音より横や後ろからの音に敏感」(笑)になっている<Auro耳>には、大きな空間にこだまする、観衆の拍手や叫び声を含めた大音響(RockやPopsかな?)による包まれ感や、中規模な空間に漂う倍音(Classicのホール音)の乱反射して消え入る様が、その音楽性のキモになっているような音源は、Auro-3Dと親和性が高いのは間違いないと三日連続のLive体験で改めて思いました。Jazz ClubのLiveも確かにオーディエンスのプレゼンス感などは2chよりSACDマルチの方がよく出ていて好きなんですが、Auro-3Dの強みの一つである、「高さ感」の演出はそこまで重要ではないので、キースの「ケルンコンサート」のようなもの以外は、Auro-3D(Matic含め)のメリットをそこまでは活かせないかな、と感じました。ただ、「奥行き感」はAuro-3Dだと確実に2chより出るので、たとえばピアノの立体感、のような部分に耳が行く方はAuroにメリットを感じるでしょうが、まあ、Jazz好きの方はたいてい、JBL+マッキン的な(笑)、「音が前にずんずん出てくる、かぶりつきで聴いているかのような音場・音像」を好まれるので、「ピアノがちょっと遠くで鳴って、余韻がホールに吸い込まれる」ような音場・音像はお好きでない方が多い気がします。

いつか、Jazzの素晴らしさを最大限に発揮しているNative Auro-3Dソース、というのが出てくると、Auro-3DファンをJazz好きの領域にも増やせるキラーコンテンツとしてとてもいいのですが!

« 2024年7月 | トップページ | 2024年9月 »