本格的比較試聴: 13/48 VS 11/96 @伊豆のメインシステム―「オルゴール博物館」でのAuro-3D音源無料Archiveを使って
子供のころから、「有言実行」をモットーとしております、Auro3Dです(笑)。
前回の記事のコメント欄で宣言しました通り、台風の中(汗)、今、伊豆に来ておりまして、「宿題」について真剣に比較試聴をしてみました。
以下、科学的レポートのノリ(笑)で:
1.問題意識
Auro-3DのNativeソースのハイエンドLine Upには現在、①13.1chにDiscreetで音が割り当てられている(ハイトセンターと、トップの2chにも、それ以外の11chと同様、マイキング時点で高い位置に設置したマイクで拾った音をエンジニアリング段階で割り当てて再生させている)、48Khzのバージョン(以下、13/48)と、②11.1ch(7+4)に音が割り当てられている、96kHz のバージョン(以下、11/96)がある。後者を、Auro-3DのExtend機能を使って、疑似的に13.1chとした場合(ハイトセンターと、トップの2chからの音は、エンジニアの意図とは無関係に、他の11chソースから人工的に生成されたものが再生される)、果たして両者にはどのような「音」の違いがでるのだろうか?
2.方法論
2-1.使用機材
詳しくはここにある通りであるが、第一層7ch (内、メインの5chはSonetto VIIIのチャンデバ・マルチアンプ駆動)、第二層5ch、第三層1ch2台、SW3台による、13.1ch環境で、VOGのDynaudio以外はすべてSonusのSonettoシリーズの同一ツイーターで揃えている。AVプリはStorm のISP MK2。
2-2. テスト環境
床面積は約25畳程度、空間容積は通常家屋の40畳の部屋程度。平行する壁の少ない、アシンメトリーな部屋であるが、SP配置はAuroマニュアル通りのほぼ完ぺきなセッティング。なお、スクリーンは使用せず、LCRを同一スピーカー環境として「音」だけを聴き比べた。
2-3.入出力条件
出力に際しては、Dirac LiveのARTを適用している。入力に関しては、2台のPC(Mac &Windows)をHDMI接続し、それぞれブラウザーからKORGのLive ExtremeのTest Site にある「オルゴール博物館」での自動ピアノ・マリンバ・巨大オルゴールの演奏録音ソースに接続し、 Macでは「13/48」を、
Windowsでは「11/96」を
再生できるように調整し、それぞれをLPで操作できるPC画面上のクリック一つで切り替えれるようにしたうえで、両方のPCで同時に再生を開始した。
これにより、いちいちPCのセッティングを変えることなく、同じ曲の同じ部分を1,2秒の間で切り替えて二つのフォーマットで比較試聴することを可能にした。11.1ch版は13.1ch再生にExtendし、再生時には音量などのパラメーターには一切手を触れず、同一条件とした。
3.実験結果
3-1.MCの声
Onマイクで拾われているMCの声はCのみから出ており、11/96の方が声そのもののリアリティが高い。
曲と曲の間での、ややOff マイク的になる司会と奏者とのやり取りや、「準備をしている会場音」(ロールの巻き戻し音やコンプレッサーの音、スタッフの足音や咳払いなどの暗騒音)の空間感は13/48の方がリアルであった。
3-2.Pianoの音
このPianoの音は、現場で生演奏を聴いてきているので、「本物」の音の記憶を頼りに試聴した。
マスカーニ 「間奏曲」にて
13/48の方がピアノ自体に奥行きが感じられ、「音像」に関しては圧倒的にリアリティがある。
「音質」は11/96の方が、ハンマーが弦を叩く瞬間の音などはよりくっきりしていて、解像度の高い音がする。ただ、打鍵音が空間に収まって、徐々に減衰して倍音が重なっていく「音場感」は、13/48の方が優れている。
3-3.マリンバの音
①ラフマニノフ 「くまんばちの飛行」にて
LとCの間に定位している感じはどちらも同様。音質としては、強く叩いている打鍵音に耳を傾けると、11/96の方がより実体感がある。
②2台のマリンバ ドビュッシー 「アラベスク」にて
これは13/48の方が奥行き感が出るのがはっきりわかった。
音質は、①とは異なり、やわらかいマリンバの音だとほとんど11/96と13/48の違いが分からない。
3-4.リモネール (超大型オルゴール)の音
これは現場で本物を見てきているが、2階までの高さがある、見上げる感じの装置である。
「チャルダッシュ」にて
13/48の方が立体感が増し、上部のシンバル?音も11/96よりはっきりと聴こえる。
さらになぜか?低音も13/48の方がしっかり伝わってきた。
4.考察
今回の結果は、先日、東京の書斎のボロシステムでの結果と大筋では大差が無かったが、やはり「音質」の差についてはこちらのシステムの方がはっきりわかるので、音源によっては11/96のアドバンテージが感じられた。
しかし、私の駄耳では、「音質」の差はブラインドだったらどちらがどちらと100%は当てる自信は無いが、「音像・音場」の差であれば100%ブラインドでも当てる自信があるほどの差があった。これは、書斎のシステムが11.1ch(5+5+1)であるのに対し、伊豆のシステムはフルシステムなので、より奥行き感などの表現に優れるのかもしれない(SP配置が書斎に比して正確であることも大きい可能性大)。
東京の書斎に比して意外な発見であったのは、特に最後のリモネールと2台のマリンバの共演において、低域の再現性に明らかな差があったこと(書斎のシステムでは気が付かなかった)。低音の質も量も、明らかに13/48の方が上回っていた。今回の二つのソースはどちらもLFEには音の入っていない13.0chと11.0chソースであるため、ミキシングの段階で両者のLFEの音量が異なっているということはあり得ない。拙宅ではARTによって3台のSWも低域再生に寄与しているのだが、その出力がNative13ch とExtend 13ch で変わるということも考えられない。
ゆえに、この原因は、もしかすると、Native13chの方が、「平面波」がより正確に形成されるためかもしれない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回の実験レポートは以上ですが、前回も書いたように、私の「Auro耳」は、かなり「空間表現」に敏感で、それを高く評価する傾向にあることは否めません。Donguriさんも指摘されておられたように、機材や部屋が違うと(さらに「耳」が違うと=ご自分の耳で拙宅での実験を追試したい方はいつでも再現できますのでご連絡を!)、異なる結果になる可能性は十分にあるため、同様の実験をされた「友の会会員」の方のレポートをお待ちしたいと思います。特に、Stormでは、Auro信号を検知するとすべて13chにExtendする仕様になっているため、「では、11.1chのNativeソースを、11.1chで再生した場合との音の違いはどうか?」との問題意識を私のシステムでは実験することができませんので、是非、デノマラのハイエンドAVアンプをお持ちの方はこれもやってみていただきたいと思います。
ただ、11chをExtendして13ch化するというのは、素人の勘では(汗)、HCの音は、HLRから半分ずつ、TOPの音は、SHLRから半分ずつ取ってきて合成しているのだろうと思っているので(つまり両サイドのSPのセンターにファントム再生させるつもりの「音」を抽出し、実SPからも再生させている)、11chとそのExtend版である13chの「音質、音像、音場」は、HCやTOPに使用しているSP2台に他に比してよほど性能の低いものを使っているのではない限り、大差ないのではないかと私は見ております。
ゆえに私の<研究結果と考察>を是とするのであれば、ATMOSのスピーカーレイアウト(つまり、HCとTOPが無い)でAuro-3Dソースを聴いても、その(個人的には)最大の魅力である、空間表現力は十全には発揮しきれない、ということが言えると思います。
私自身は、<Auro聴くなら、Native 13ch一択>であることを再確認した次第です(笑)。
最近のコメント