シューベルトの歌曲「菩提樹」にみる、Auro-3Dのマイキングと、LCR同一SPの威力?
先日、『第九』のAuro-3D版を紹介しましたが、その反応の多さに気を良くし(笑)、今研究中のオーディオネタを後回しにして何と音楽ネタ三連荘を決行することとし、今回は、「菩提樹」を取り上げます。これは交響曲なら『第九』でしょうが、歌曲ならシューベルトの『冬の旅』の「菩提樹」、というぐらい(?)、これを知らない日本人はいないと断言できる、名曲中の名曲です(私は「名曲」好き=笑)。で、そもそも皆さん、これがAuro-3D化されているのをご存知でしたか?
それは以下のサイトからダウンロード販売がされています(リアルのDiscがあるかどうかは調べていません・・・)。この方はもしかすると、Classic初心者の私が知らないだけで(汗)、すでに有名な歌手かもしれませんが、個人的には彼の歌声は好きです。これ、たぶん(汗)テノールだと思います。結構この歌曲はバリトンやバスが歌うことも多いのですが、シューベルトのオリジナルスコアは、テノール指定であったという蘊蓄をかじったことがあります。
https://www.nativedsd.com/product/ttk0078-schubert-winterreise/
いうまでもなく、ピアノの伴奏による、ソロですから、「それって、Auro-3Dにする価値があるの?」という疑問を持たれるのは、むしろある程度Auro-3Dをご存知の方なら当然だと思います。実は私も最初はそう思って、購入をちょっとhesitateしました(笑)。単なるボーカル曲に、高さ感や奥行き感に特徴のある、Auro-3DはOver Specではないかと。
しかし、このソース、結構Auro-3D的に興味深い現象が観察されたので、Auro-3D的システムチェックにはよい音源かも、と思ってご紹介する気になりました。
いきなりですが、皆さん、「東海林太郎」って昭和の歌手、ご存じでしょうか?はっきり言って、私の世代よりかなり上でないと、この方が「流行歌手であった時代」を同時代体験しておられないと思います(汗)。私にとってはこの方は、小学生の頃に、大みそかの『紅白歌合戦』が終わった後、日付が変わったころにどっかの民放でたいていやっていた、音楽好きであった両親とともに見た「懐かしのメロディ」みたいな番組の常連のおじいちゃんでした。私はこの方の歌より、実はその歌い方がとても記憶に残っているんです。
この人、大英博物館の彫像のように(笑)、1ミリも動かずに歌うんです(口以外)。司会に紹介されて、カメラが振られてこの方がマイクを口元に動かしてから、歌い終わるまで顔は正面を向いたまま。目線もまっすぐで、マイクを持った手も動かない。表情一つ変えないんです。他の普通の歌手が表情豊かに、さらに前後左右上下に体をゆすって、時には舞台を動き回り、マイクを上げたり下げたり離したり近づけたりして、「視覚的にも」歌心(?)を伝えようとしているのに比して、「別格」の趣がある方でした。父や母は、「ラジオの頃のスターだから、<見せる>ような歌い方をしないのだろう」と言っていました。
さて、前置きが長くなりましたが(汗)、皆さんが普段ご自分のシステムで聴かれるソロボーカル曲で、しかもLiveではなくStudio録音のソースで、「口」はどの程度移動していますでしょうか?
少なくともPopsやRockのスタジオ録音なら、確実に東海林太郎の如く「微動だにしない」はずです。よくPVなんかで録音風景を使ったものがありますが、ボーカルって、狭いブースに入って、ヘッドフォンをして(演奏を聴きながら)、上から吊るしてある「一本のマイク」に向かって歌ってません?
もちろん、その歌い方はLiveと同様、前後左右上下に動くことで、「情感を込めて」いるはずです(PVを見れば明らか)。決して「東海林太郎」のような「直立不動」という歌い方はしていません。にもかかわらず、ステレオ再生する際に、ボーカルがピタッと微動だにしないのは、それを録音しているマイクがモノラルだからだ、ということをかつて音楽雑誌で読んだ記憶があります。1次元で収録して、それを電子的に(?)LRに分離して収録してど真ん中にピタッと定位させている。1次元録音だから、歌手本人が前後左右に動こうが、音像が揺らぎようがない(マイクとの距離が変われば音量は変わるが、それは簡単に補正できるそうです)。
ゆえに、それをご自宅のシステム(特に2ch)で聴くと、「口」がピタッと定位し、「唇は動くが、歌手=口=は動かない」。これを<理想的な再生>と目標にし、それを目指して血のにじむようなセッティング(笑)を日々行っている方がいかに多いことか!
でもこの「菩提樹」、伊豆のシステムで聴くと、「お、今、これ右向いたな」とか、「あ、今、後ろに離れたな」とかが、<見える>のです(汗)。
実はこの音源をダウンロードして最初に聴いたのは東京の書斎のAuroシステムだったのですが、その時は正直言ってこの「現象」に気が付かなかったのです。書斎のSPシステムは「センター1点豪華主義」(笑)なので、そのSonetto VIIIから「生々しい声」が再生され、「さすが最新のものだけある、クオリティの高い録音だなあ」ぐらいにしか感じておりませんでしたので、伊豆でこの曲を聴いたときは、「ヤバい、どっかケーブルが外れているか緩んでいるに違いない」と思って、見て回ったほどです。
でも、「どうやらこれはこういう録音になっているらしい」ということが分かってきたのですが、もしかしたらこれ、「私の空耳」、つまり「単にお前の耳が悪くて、揺れて聴こえるんじゃない?」(=耳の乱視のようなもの?)という可能性も全くは否定できないな(笑)、と思い至り、記事にする前に誰か第三者にも確認してもらおうと思っていた矢先のこと。
法事のために早朝に伊豆入りして、伊豆のシステムで上述したように「菩提樹」のチェックを終えた後、朝食をすましちょっと仮眠をとろうかなと思っていたところに電話が。「今日、どこにいます?」「伊豆ですけど」「これから入交さんと一緒に行っていいですか?」…入交さんのお知り合いのMさんからでした!元々、入交さんには「またいろいろご相談したいこともありますので、一度是非いらしてください」とはお声がけしていたのですが、ちょうどMさんもこちらの方に来る用事があり、時間ができたので急遽一緒にどうかということになったようです。
内心、「明日の法事の準備があるんだけど・・・」と思いながらも、オーディオ的好奇心の方が勝り、「おお、渡りに船!」と快諾。プロの耳で確認していただければ、誰も「お前の空耳だろう」とは言うまい!!!
ということで、また「入交クリニック」(これについては後日、別稿にて)を受けた後、「ちょっとこれ、聴いていただきたいのですが」と恐る恐る(笑)お願いしました。例によって、目を瞑られて、完全に「職人モード」で姿勢を正して数分お聴きになられた後、以下のようなコメントをいただきました。
///////////////////////////////////
この「菩提樹」のボーカル部の録音は、オンマイクがない録音方式で、Auro用のTreeのみで録音されています。ですから3次元に配置されたAuro用のマイキングが正確に音像を3次元的に記録しています。ゆえにシステムの再現能力が高ければ、「口」が動くのがはっきりとわかるのです。どうやらこの歌手は歌いながらかなり動きを入れるタイプのようですね(笑)。一方、ピアノにはオンマイクが何台か入っていて、ピアノの音像をはっきりさせようとして、Mixをしているようです。しかし、ちょっとやりすぎていて、これだとピアノの上に歌手が座って歌っているように聴こえてしまいますね。私ならもう少しピアノが奥、歌手が手前に立っているように、明瞭度を分けたミキシングをすると思います。
///////////////////////////////////
凄くないですか!!!(私は将棋好き。同郷の藤井君のファン。ココ、わかる人だけわかればよいです=爆)
入交さんによる太鼓判をいただき、東京の書斎では気が付かなかったのは単に向こうのシステムのクオリティが低い、特にLCRが同一SPではないからではないか、と考えるに至りました。また、特に「前後感」の表現はこれまでの経験からハイトSP群の影響が無視できないため、東京の書斎はここがメーカーすらバラバラなのに対し(汗)、伊豆では同じメーカーの同じシリーズで揃えていることも寄与しているのだろうと分析してみました。
ということは、このソース、皆さんのご自宅のAuro-3Dシステムの完成度のチェックに使えると思いません? LCRが同一SPで揃っていれば左右の動きが、第一層と第二層の音色や定位がきっちりそろっていれば(もしかするとサラウンドSPも関係あるかも)、前後の動きがはっきりと<見える>でしょう。
是非、お試しあれ!!!(自分のAuroシステムの完成度に自信のある方は入交さんに最終チェックしてもらうといいですよ。でも、「ショック」を受けますよ、きっと=泣=続報を待て!)
« 今年の年末は、Auro-3Dで『第九』を聴こう!!! | トップページ | 書斎のDenon 3800に、ついにDLBCを導入し、SW2台体制にしました! »
「東京書斎のAuro-3D」カテゴリの記事
- Eversolo DMP-A6 Master Edition VS Roon Bridge(2024.12.15)
- Auroの上原さんのPianoの位置&48/13ch VS 96/11ch-書斎のシステムでの気づき(2024.08.25)
- アンプのセパレート化と蓄電機の威力を再確認しました!(2024.07.18)
- Auro-3D(Matic)の奥行き表現と、サラウンドハイトSPとの関係(2024.06.13)
- 書斎のDenon 3800に、ついにDLBCを導入し、SW2台体制にしました!(2023.12.23)
「伊豆リビングのAuro-3D」カテゴリの記事
- And in the End…(2025.03.14)
- 5chソースの、Auro-Matic化 再論(2025.02.26)
- 改めて、WOWOWのセミナーでの入交氏の「結論」の確認と、Auro-3Dの第一層のSP配置について(2025.02.21)
- 「画竜点睛」を、ついに描きました!(2025.02.12)
- 今年の仕上げ3連発―Magnetar導入、チャンデバ調整(またまた・・・)&Amator III再配置(その2)(2024.12.26)
「音楽・コンサート関連」カテゴリの記事
- Carmenにハマってしまった・・・(笑)―オーディオ的には「センターSP考」かな?(2024.10.24)
- ATMOS Music用のセッティングを詰めました!-「灯台下暗し」的なATMOS 9.1.6フル音源も発見!!!(2024.09.02)
- Auro-3D 13.1chの、有料ストリーミング配信を聴きました!!!(恐らく、世界初の商業クオリティのもの?)(2024.08.17)
- Live 3連荘!―Jazz、Rock、Classic!!!(2024.08.02)
- 入交氏のAuro-3D 13ch 音源の「現場と演奏」を確認してきました!(2024.07.24)
「Auro-3Dソフト関連」カテゴリの記事
- 5chソースの、Auro-Matic化 再論(2025.02.26)
- Chopinのピアノ・Bachのオルガンー王道のAuro-3Dソフト登場!(2025.01.18)
- 『Mr. Big』のAuro-3D、正しく再生できていますか?(2024.12.22)
- 「音楽の秋」?-Auro-3Dソフト3連発(2024.10.06)
- Auro-3Dに関する、中上級者向けFAQ集-入交氏とのDiscussionから(2024.09.10)
コメント
« 今年の年末は、Auro-3Dで『第九』を聴こう!!! | トップページ | 書斎のDenon 3800に、ついにDLBCを導入し、SW2台体制にしました! »
このアルバム、見たことはあったのですが、入手はしていませんでした。で、Tidalにあった音源を早速Auro-Maticで聴いてみると、なんだかそれだけでも、歌い手が動いているのがわかるみたいです。元々Auro3Dの音源をミックスしてあるのでAuro-Matic的にはうまく再分解してくれているんでしょうか?今度ぜひ本ちゃん版を聴いてみます。
ちなみに、この歌手はテノールでなくてバリトンだと思いますです。
投稿: cmiyaji | 2023年12月19日 (火) 13時01分
cmiyajiさん
コメントありがとうございます!
>
>このアルバム、見たことはあったのですが、入手はしていませんでした。で、Tidalにあった音源を早速Auro-Maticで聴いてみると、なんだかそれだけでも、歌い手が動いているのがわかるみたいです。元々Auro3Dの音源をミックスしてあるのでAuro-Matic的にはうまく再分解してくれているんでしょうか?今度ぜひ本ちゃん版を聴いてみます。
なるほど、Tidalの2ch音源を、Auro-Maitcで聴いても、ちゃんと「動き」が分かる、ということですね!確かに、「Maitc映え」するソースというのは明らかにあるのですが、元々Auro-3Dで録音してあるのであれば、さすがに「映える」でしょうね! ただ、恐らく本物のAuro-3Dはもっとすごい解像度ですよ(ただし、K2をセンターに入れれば=爆)
>ちなみに、この歌手はテノールでなくてバリトンだと思いますです。
マジですか・・・恥(笑)。まあ、でも本文は修正せずに置きます、今後の自らの戒めとして(笑)。
投稿: Auro3D | 2023年12月19日 (火) 19時01分